【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、以下の特徴を備えているアーク処理装置によって解決される:
a)プラズマチャンバ内に存在しているアークを検出する、アーク検出装置;
b)アークがプラズマチャンバ内に存在している間に、プラズマチャンバに供給されたエネルギに対応する値であるアークエネルギ値を求める、アークエネルギ確定装置;
c)求められたアークエネルギ値から中断時間を決定する中断時間決定装置。
【0007】
したがって、本発明によれば、プロセス毎に、アークエネルギ値を求めることによって、各アークに対して個別の中断時間を決定することができる。
【0008】
アークエネルギ値は、アークがプラズマチャンバ内に存在している間に、プラズマチャンバに供給されたエネルギであってよい。選択的に、アークエネルギ値は、アークがプラズマチャンバ内に存在している間にプラズマチャンバに供給されたエネルギおよび他の値に基づいて計算された値であってよい。計算された値は、係数が乗算された、または所定のオフセット分だけ増大/低減された、アークがプラズマチャンバ内に存在している間にプラズマチャンバに供給された総エネルギまたはエネルギの一部であってよい。
【0009】
アークエネルギ値を、所定の期間中にプラズマチャンバに供給されたエネルギに基づいて求めることができる。この期間は、アーク総持続時間と同じ長さであってもよいし、もしくはそれよりも長くても、または短くてもよい。有利には、アークのその期間内に発生する。
【0010】
例として以下のことが挙げられる:
−アークの発生からアークの消失までの間の期間中にエネルギが求められる場合には、アークエネルギ値は、アークが存在している間にプラズマチャンバに供給された総エネルギであってよい、または
−エネルギが以下の期間中、すなわち
○アークの検出の時点から、アークの消失の時点までの期間中、または
○アークの検出に応答した時点から、アークの消失の時点までの期間中、または
○アークの検出の時点から、アークエネルギまたはアーク電流が事前に定められた閾値を下回った時点までの期間中、または
○アークの検出に応答した時点から、アークエネルギまたはアーク電流が事前に定められた閾値を下回った時点までの期間中、または
○類似の期間中、
に求められる場合には、アークエネルギ値は、アークが存在している間にプラズマチャンバに供給されたエネルギの一部であってよい。
−期間は、アークが発生する前の所定の期間前に開始されてもよい。
−期間は、アーク消失後の所定の期間後に終了してもよい。
【0011】
中断時間決定装置を、アークエネルギ値に基づいて中断時間を計算するように構成することができる。
【0012】
アークエネルギ値毎に、アークを消弧させるためにどれ程の長さの中断時間が必要とされるかを決定することができる。したがって、中断時間はユーザによって設定された中断時間に比べて短くなる可能性がある。何故ならば、ユーザは各アークを消弧させるには十分な長さである中断時間を設定しなければならないからである。したがって、設定される中断時間は、実際に必要とされる中断時間よりも遙かに長くなることが多い。何故ならば、ユーザは、見込まれる最大アーク持続時間または見込まれる最大エネルギを有するアークに基づいて中断時間を選択しなければならないからである。発生したアーク毎に個別の中断時間が計算または決定される場合には、より短い中断時間を実現することができ、これによってより高い堆積速度が得られる。したがって、収量を改善することができる。
【0013】
アーク処理装置は、プラズマプロセスに関連する信号を受信するための入力端を有することができる。例えば、電流、電圧または電力を、アーク処理装置に入力することができる。しかしながら、アークを検出するために使用することができる光学センサをプラズマチャンバに設けることもでき、そのようなセンサは、アーク処理装置の入力端に信号を供給することができる。
【0014】
アーク検出信号をアーク検出装置から電源制御装置に伝送するために、データ伝送装置を設けることができる。したがって、アーク検出装置がプラズマチャンバ内に存在しているアークを検出すると、信号を電源制御装置に出力することができ、続けて、電源制御装置は、アーク検出信号の受信に応答して電源を遮断する。他方、電源制御装置は、例えばアーク処理装置から信号を受信し、これによって、中断時間の経過後に電源を再び投入接続することができる。
【0015】
アークエネルギ値をアーク処理装置から電源制御装置に伝送するために、別のデータ伝送装置を設けることができる。
【0016】
中断時間情報をアーク処理装置から電源制御装置に伝送するために、付加的なデータ伝送装置を設けることができる。
【0017】
データ伝送装置、別のデータ伝送装置および付加的なデータ伝送装置は、3つの別個の伝送装置であってもよいし、2つまたは単一の伝送装置に組み込まれてもよい。
【0018】
アーク処理装置は、電源制御装置の一部であってもよい。
【0019】
本発明の課題はまた、以下のステップを備えている、プラズマプロセスがプラズマチャンバ内で実行されている間に発生するアークを処理する方法によって解決される:
a)プラズマチャンバ内に存在しているアークを検出するステップ;
b)アークがプラズマチャンバ内に存在している間に、プラズマチャンバに供給されたエネルギに対応する値であるアークエネルギ値を求めるステップ;
c)求められたアークエネルギ値から中断時間を決定するステップ。
【0020】
この方法によれば、プラズマチャンバ内でアークが確認される度に、個別の中断時間が計算または生成される。中断時間を決定することは、求められたアークエネルギ値から中断時間を計算することを意味していてよい。中断時間中にアークの消弧が保証されるように、中断時間を決定することができる。中断時間の経過後に、電力を再び投入することができる。プラズマチャンバへの電力の遮断および供給は、広い意味で解されるべきである。電力の遮断および停止は、電源装置を遮断すること、電源装置からプラズマチャンバを切断すること、またはプラズマチャンバに供給される電力を逸らし、それによって電源装置によって生成された電力をアークに到達させなくし、アークを維持させなくすること、のうちの少なくとも1つを含むと考えられる。電力の投入または供給は、電源装置を投入接続すること、プラズマチャンバを電源装置に接続すること、または電源装置によって生成された電力をプラズマチャンバに誘導すること、のうちの少なくとも1つを含むと考えられる。
【0021】
プラズマチャンバ内に存在しているアークの検出は、電源装置からプラズマチャンバに供給された信号の測定および解析に基づくものであってよい。例えば、プラズマチャンバに供給された電圧または電流が、解析される信号であってよい。
【0022】
中断時間が開始される時点を識別することができる。この時点は、アークが検出された時点であってよい。
【0023】
また、上記の時点を、アークが存在している間にプラズマチャンバに供給されたエネルギを計算するための開始点として使用することができる。特に、エネルギ値を、識別された時点およびプラズマチャンバに供給された信号に基づいて求めることができる。特に、アークエネルギ値を、アークが検出されたことが識別された時点、電源装置が遮断された時点、および識別された時点から電源装置が遮断された時点までの期間にプラズマチャンバに供給された信号と、に基づいて求めることができ、特に計算することができる。
【0024】
中断時間を継続的に調整することができる。したがって、プラズマプロセスにおける変化に対して非常にフレキシブルに応答することができる。中断時間の決定が、ディジタル領域で行われる場合には、これを、電源装置に供給されるクロックと同じクロックまたはサイクルで行うことができる。
【0025】
求められたエネルギ値および所定の係数に基づいて、中断時間を決定することができる。係数を事前に決定することができる。特に、係数をインタフェースから提供することができる。例えば、求められたエネルギ値を係数と乗算することができる。係数は、固定値であってもよいし、顧客によって調整された値であってもよいし、動的な値であってもよいし、出力電力、ターゲットのタイプ、ターゲットの長さ等に基づいて計算された値であってもよい。
【0026】
選択的に、係数を、以前に発生したアークに関する量に基づいて決定してもよい。例えば、この量を所定の期間内に発生したアークの数に基づいて決定することができる。
【0027】
実際の中断時間を、決定された中断時間に付加的な値を加算することによって決定することができる。この付加的な値は所定の値であってよく、特に、インタフェースを介して提供することができる。付加的な値を加算することによって、電源装置が再び投入接続される前にアークが実際に消弧することを保証することができる。
【0028】
決定された中断時間が基準時間よりも短い場合にのみ、付加的な値を、決定された中断時間に加算することができる。したがって、最短の中断時間を達成することができる。
【0029】
中断時間の開始または実際の中断時間の開始を選択することができる。例えば、中断時間の開始として、アークが存在していることを示す基準値と信号が交差した時点を選択することができる。さらに、中断時間の開始として、アーク検出信号がアーク検出装置から出力された時点を設定することができる。
【0030】
選択的に、中断時間の開始として、プラズマチャンバのための電源装置が遮断された時点を設定することができる。さらに、中断時間の開始は、プラズマプロセスへの電力供給が実際に終了した時点であってもよい。
【0031】
プラズマチャンバに供給された電圧における急激な低下が存在するときに、アークを検出することができる。さらに、電圧が最大電圧を上回るか、または最小電圧を下回ると、アークを検出することができる。さらに、電流における急激な上昇が存在すると、または電流が最大電流を上回ると、アークを検出することができる。
【0032】
例えば、電源装置の制御装置およびアーク処理装置がディジタル論理ユニットに統合される場合には、データ伝送装置は、そのようなディジタル論理ユニットにおける電気的なコネクション、信号経路またはデータ伝送であってよい。
【0033】
電源装置の制御装置は、アーク処理装置の一部であってもよいし、アーク処理装置とは別個のものであってもよい。
【0034】
上記において述べた、またそれとは別の本発明の課題、特徴および利点ならびに本発明自体は、以下の例示的な説明を添付の図面を参照しながら読めば、いっそう良く理解される。
【0035】
上記の課題は、また、上記のアーク処理装置のうちの1つおよび電源制御装置を備えている電源装置によって解決される。
【0036】
電源装置は、電流調整型および/または電圧調整型および/または電力調整型の電源装置であってよい。例えば、電源装置は双極性のものであってよく、DC電源、または電流駆動型ブリッジインバータを備えたパルス化DC電源であってよい。
【0037】
この課題は、また、プラズマチャンバに接続されている上記の電源装置のうちの1つおよび上記のアーク処理装置のうちの1つを備えているプラズマシステムによって解決される。
【0038】
上記のすべてのアーク処理装置を、上記のアークを処理する方法のうちの1つを実行するように構成することができる。