特許第6682543号(P6682543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6682543アークを処理する装置およびアークを処理する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682543
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】アークを処理する装置およびアークを処理する方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/00 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   H05H1/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-541035(P2017-541035)
(86)(22)【出願日】2016年1月26日
(65)【公表番号】特表2018-504760(P2018-504760A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】EP2016051532
(87)【国際公開番号】WO2016124440
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2018年3月5日
(31)【優先権主張番号】15461509.0
(32)【優先日】2015年2月3日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508142413
【氏名又は名称】トゥルンプフ ヒュッティンガー スプウカ ズ オグラニショナ オドポヴィヂャルノスツィア
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Huettinger Sp. z o. o.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】ピオトル ラハ
(72)【発明者】
【氏名】マルツィン ジェレホフスキ
【審査官】 関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−226839(JP,A)
【文献】 国際公開第02/072912(WO,A1)
【文献】 特表2011−527379(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/064958(WO,A1)
【文献】 特開2008−047292(JP,A)
【文献】 特表2010−510633(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/023276(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00−1/54
H02M 7/00−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク処理装置(14)において、
a.プラズマチャンバ(30)内に存在しているアークを検出する、アーク検出装置(21)と、
b.前記アークが前記プラズマチャンバ(30)内に存在している間に、前記プラズマチャンバ(30)に供給されたエネルギに対応する値であるアークエネルギ値を求める、アークエネルギ確定装置(22)と、
c)求められた前記アークエネルギ値から中断時間(4)を決定する中断時間決定装置(24)と、
を備え
前記中断時間決定装置(24)は、前記中断時間(4)を、求められた前記エネルギ値および所定の係数(ncoef)に基づいて決定し、前記係数(ncoef)を、所定の期間内に発生したアークの数に基づいて決定する、
アーク処理装置(14)。
【請求項2】
プラズマプロセスに関連する信号を受信する入力端(23)が設けられている、請求項1記載のアーク処理装置。
【請求項3】
前記アーク検出装置(21)から電源制御装置(27)にアーク検出信号を伝送するデータ伝送装置(26)が設けられている、請求項1または2記載のアーク処理装置。
【請求項4】
プラズマプロセスがプラズマチャンバ(30)内で実行されている間に発生するアークを処理する方法において、
a.前記プラズマチャンバ(30)内に存在しているアークを検出するステップと、
b.前記アークが前記プラズマチャンバ(30)内に存在している間に、前記プラズマチャンバ(30)に供給されたエネルギに対応する値であるアークエネルギ値を求めるステップと、
c.求められた前記アークエネルギ値から中断時間(4)を決定するステップと、
を備え
前記中断時間(4)を、求められた前記エネルギ値および所定の係数(ncoef)に基づいて決定し、前記係数(ncoef)を、所定の期間内に発生したアークの数に基づいて決定する、
方法。
【請求項5】
前記プラズマチャンバ(30)内に存在しているアークの検出は、電源装置(10)から前記プラズマチャンバ(30)に供給された信号の測定および解析に基づく、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記中断時間(4)が開始される時点(t3)を識別する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記エネルギ値は、前記識別された時点および前記プラズマチャンバ(30)に供給された信号に基づく、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記中断時間(4)を継続的に調整する、請求項4から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
実際の中断時間を、決定された前記中断時間(4)に所定の付加的な値を加算することによって決定する、請求項4からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
決定された前記中断時間(4)が基準時間よりも短い場合にのみ、付加的な値を、決定された前記中断時間(4)に加算する、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記中断時間(4)の開始または前記実際の中断時間の開始を選択する、請求項4から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1から3までのいずれか1項記載のアーク処理装置(14)および電源制御装置を備えている、電源装置(10)。
【請求項13】
プラズマチャンバ(30)に接続されている電源装置(10)および請求項1から3までのいずれか1項記載のアーク処理装置(14)を備えている、プラズマシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマプロセスがプラズマチャンバ内で実行されている間に発生するアークを処理する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマプロセスにおけるカソードスパッタリングによる基板の、例えばガラスのコーティングは周知である。スパッタリングを慣例のように実施することができるか、または反応性ガスを使用して実施することができる。この場合、スパッタリングは、反応性スパッタリングと呼ばれる。このために、電源がプラズマを生成し、このプラズマはターゲットから材料を取り出し、次いでその材料が基板の上に、例えばガラス基板の上にコーティングされる。反応性プロセスが使用される場合、所望のコーティングに応じて、ターゲットの原子をガスの原子または分子と組み合わせることができる。
【0003】
特に、反応性プロセスが使用されている場合、プラズマプロセスにおいてアークが発生する可能性がある。そのようなアークは、プラズマプロセスにとって有害である可能性があり、それどころかコーティングを破壊する可能性もある。したがって、アークを迅速かつ確実に検出することが必要である。アークは、電源の出力電圧を監視することによって検出されることが多い。出力電圧が急速に低下した場合、アークが検出される。選択的に、電流を監視してもよい。出力電流が瞬間的に上昇した場合、このこともまたアークを示唆している。特に、電源の出力電流および出力電圧を監視し、それぞれを閾値と比較することができる。
【0004】
アークが検出されると、多くの場合には電源が遮断され、それによってアークが消弧される。電源が遮断された結果、堆積速度は低下する。したがって、電力の遮断は可能な限り短くあるべきであるが、しかしながらさらなるアークの発生を回避するために必要とされる長さも有していなければならない。以下では、電力が再び投入されるまでの遮断時間を中断時間と記す。使用されるプロセスおよびカソードが異なれば、アークが検出された後に必要とされる中断時間も異なる。ユーザによって中断時間が設定されることが公知である。しかしながら、適切な中断時間を設定することは困難である。上記において述べたように、新たなアークの発生を回避するために、ホットスポットを冷却するための中断時間は十分な長さであるべきである。他方、プラズマプロセス中の不必要な電力損失を回避するために、中断時間は可能な限り短くあるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、アークの確実な消弧を保証するにもかかわらず、高い堆積速度も保証する、アーク処理装置およびアークを処理する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、以下の特徴を備えているアーク処理装置によって解決される:
a)プラズマチャンバ内に存在しているアークを検出する、アーク検出装置;
b)アークがプラズマチャンバ内に存在している間に、プラズマチャンバに供給されたエネルギに対応する値であるアークエネルギ値を求める、アークエネルギ確定装置;
c)求められたアークエネルギ値から中断時間を決定する中断時間決定装置。
【0007】
したがって、本発明によれば、プロセス毎に、アークエネルギ値を求めることによって、各アークに対して個別の中断時間を決定することができる。
【0008】
アークエネルギ値は、アークがプラズマチャンバ内に存在している間に、プラズマチャンバに供給されたエネルギであってよい。選択的に、アークエネルギ値は、アークがプラズマチャンバ内に存在している間にプラズマチャンバに供給されたエネルギおよび他の値に基づいて計算された値であってよい。計算された値は、係数が乗算された、または所定のオフセット分だけ増大/低減された、アークがプラズマチャンバ内に存在している間にプラズマチャンバに供給された総エネルギまたはエネルギの一部であってよい。
【0009】
アークエネルギ値を、所定の期間中にプラズマチャンバに供給されたエネルギに基づいて求めることができる。この期間は、アーク総持続時間と同じ長さであってもよいし、もしくはそれよりも長くても、または短くてもよい。有利には、アークのその期間内に発生する。
【0010】
例として以下のことが挙げられる:
−アークの発生からアークの消失までの間の期間中にエネルギが求められる場合には、アークエネルギ値は、アークが存在している間にプラズマチャンバに供給された総エネルギであってよい、または
−エネルギが以下の期間中、すなわち
○アークの検出の時点から、アークの消失の時点までの期間中、または
○アークの検出に応答した時点から、アークの消失の時点までの期間中、または
○アークの検出の時点から、アークエネルギまたはアーク電流が事前に定められた閾値を下回った時点までの期間中、または
○アークの検出に応答した時点から、アークエネルギまたはアーク電流が事前に定められた閾値を下回った時点までの期間中、または
○類似の期間中、
に求められる場合には、アークエネルギ値は、アークが存在している間にプラズマチャンバに供給されたエネルギの一部であってよい。
−期間は、アークが発生する前の所定の期間前に開始されてもよい。
−期間は、アーク消失後の所定の期間後に終了してもよい。
【0011】
中断時間決定装置を、アークエネルギ値に基づいて中断時間を計算するように構成することができる。
【0012】
アークエネルギ値毎に、アークを消弧させるためにどれ程の長さの中断時間が必要とされるかを決定することができる。したがって、中断時間はユーザによって設定された中断時間に比べて短くなる可能性がある。何故ならば、ユーザは各アークを消弧させるには十分な長さである中断時間を設定しなければならないからである。したがって、設定される中断時間は、実際に必要とされる中断時間よりも遙かに長くなることが多い。何故ならば、ユーザは、見込まれる最大アーク持続時間または見込まれる最大エネルギを有するアークに基づいて中断時間を選択しなければならないからである。発生したアーク毎に個別の中断時間が計算または決定される場合には、より短い中断時間を実現することができ、これによってより高い堆積速度が得られる。したがって、収量を改善することができる。
【0013】
アーク処理装置は、プラズマプロセスに関連する信号を受信するための入力端を有することができる。例えば、電流、電圧または電力を、アーク処理装置に入力することができる。しかしながら、アークを検出するために使用することができる光学センサをプラズマチャンバに設けることもでき、そのようなセンサは、アーク処理装置の入力端に信号を供給することができる。
【0014】
アーク検出信号をアーク検出装置から電源制御装置に伝送するために、データ伝送装置を設けることができる。したがって、アーク検出装置がプラズマチャンバ内に存在しているアークを検出すると、信号を電源制御装置に出力することができ、続けて、電源制御装置は、アーク検出信号の受信に応答して電源を遮断する。他方、電源制御装置は、例えばアーク処理装置から信号を受信し、これによって、中断時間の経過後に電源を再び投入接続することができる。
【0015】
アークエネルギ値をアーク処理装置から電源制御装置に伝送するために、別のデータ伝送装置を設けることができる。
【0016】
中断時間情報をアーク処理装置から電源制御装置に伝送するために、付加的なデータ伝送装置を設けることができる。
【0017】
データ伝送装置、別のデータ伝送装置および付加的なデータ伝送装置は、3つの別個の伝送装置であってもよいし、2つまたは単一の伝送装置に組み込まれてもよい。
【0018】
アーク処理装置は、電源制御装置の一部であってもよい。
【0019】
本発明の課題はまた、以下のステップを備えている、プラズマプロセスがプラズマチャンバ内で実行されている間に発生するアークを処理する方法によって解決される:
a)プラズマチャンバ内に存在しているアークを検出するステップ;
b)アークがプラズマチャンバ内に存在している間に、プラズマチャンバに供給されたエネルギに対応する値であるアークエネルギ値を求めるステップ;
c)求められたアークエネルギ値から中断時間を決定するステップ。
【0020】
この方法によれば、プラズマチャンバ内でアークが確認される度に、個別の中断時間が計算または生成される。中断時間を決定することは、求められたアークエネルギ値から中断時間を計算することを意味していてよい。中断時間中にアークの消弧が保証されるように、中断時間を決定することができる。中断時間の経過後に、電力を再び投入することができる。プラズマチャンバへの電力の遮断および供給は、広い意味で解されるべきである。電力の遮断および停止は、電源装置を遮断すること、電源装置からプラズマチャンバを切断すること、またはプラズマチャンバに供給される電力を逸らし、それによって電源装置によって生成された電力をアークに到達させなくし、アークを維持させなくすること、のうちの少なくとも1つを含むと考えられる。電力の投入または供給は、電源装置を投入接続すること、プラズマチャンバを電源装置に接続すること、または電源装置によって生成された電力をプラズマチャンバに誘導すること、のうちの少なくとも1つを含むと考えられる。
【0021】
プラズマチャンバ内に存在しているアークの検出は、電源装置からプラズマチャンバに供給された信号の測定および解析に基づくものであってよい。例えば、プラズマチャンバに供給された電圧または電流が、解析される信号であってよい。
【0022】
中断時間が開始される時点を識別することができる。この時点は、アークが検出された時点であってよい。
【0023】
また、上記の時点を、アークが存在している間にプラズマチャンバに供給されたエネルギを計算するための開始点として使用することができる。特に、エネルギ値を、識別された時点およびプラズマチャンバに供給された信号に基づいて求めることができる。特に、アークエネルギ値を、アークが検出されたことが識別された時点、電源装置が遮断された時点、および識別された時点から電源装置が遮断された時点までの期間にプラズマチャンバに供給された信号と、に基づいて求めることができ、特に計算することができる。
【0024】
中断時間を継続的に調整することができる。したがって、プラズマプロセスにおける変化に対して非常にフレキシブルに応答することができる。中断時間の決定が、ディジタル領域で行われる場合には、これを、電源装置に供給されるクロックと同じクロックまたはサイクルで行うことができる。
【0025】
求められたエネルギ値および所定の係数に基づいて、中断時間を決定することができる。係数を事前に決定することができる。特に、係数をインタフェースから提供することができる。例えば、求められたエネルギ値を係数と乗算することができる。係数は、固定値であってもよいし、顧客によって調整された値であってもよいし、動的な値であってもよいし、出力電力、ターゲットのタイプ、ターゲットの長さ等に基づいて計算された値であってもよい。
【0026】
選択的に、係数を、以前に発生したアークに関する量に基づいて決定してもよい。例えば、この量を所定の期間内に発生したアークの数に基づいて決定することができる。
【0027】
実際の中断時間を、決定された中断時間に付加的な値を加算することによって決定することができる。この付加的な値は所定の値であってよく、特に、インタフェースを介して提供することができる。付加的な値を加算することによって、電源装置が再び投入接続される前にアークが実際に消弧することを保証することができる。
【0028】
決定された中断時間が基準時間よりも短い場合にのみ、付加的な値を、決定された中断時間に加算することができる。したがって、最短の中断時間を達成することができる。
【0029】
中断時間の開始または実際の中断時間の開始を選択することができる。例えば、中断時間の開始として、アークが存在していることを示す基準値と信号が交差した時点を選択することができる。さらに、中断時間の開始として、アーク検出信号がアーク検出装置から出力された時点を設定することができる。
【0030】
選択的に、中断時間の開始として、プラズマチャンバのための電源装置が遮断された時点を設定することができる。さらに、中断時間の開始は、プラズマプロセスへの電力供給が実際に終了した時点であってもよい。
【0031】
プラズマチャンバに供給された電圧における急激な低下が存在するときに、アークを検出することができる。さらに、電圧が最大電圧を上回るか、または最小電圧を下回ると、アークを検出することができる。さらに、電流における急激な上昇が存在すると、または電流が最大電流を上回ると、アークを検出することができる。
【0032】
例えば、電源装置の制御装置およびアーク処理装置がディジタル論理ユニットに統合される場合には、データ伝送装置は、そのようなディジタル論理ユニットにおける電気的なコネクション、信号経路またはデータ伝送であってよい。
【0033】
電源装置の制御装置は、アーク処理装置の一部であってもよいし、アーク処理装置とは別個のものであってもよい。
【0034】
上記において述べた、またそれとは別の本発明の課題、特徴および利点ならびに本発明自体は、以下の例示的な説明を添付の図面を参照しながら読めば、いっそう良く理解される。
【0035】
上記の課題は、また、上記のアーク処理装置のうちの1つおよび電源制御装置を備えている電源装置によって解決される。
【0036】
電源装置は、電流調整型および/または電圧調整型および/または電力調整型の電源装置であってよい。例えば、電源装置は双極性のものであってよく、DC電源、または電流駆動型ブリッジインバータを備えたパルス化DC電源であってよい。
【0037】
この課題は、また、プラズマチャンバに接続されている上記の電源装置のうちの1つおよび上記のアーク処理装置のうちの1つを備えているプラズマシステムによって解決される。
【0038】
上記のすべてのアーク処理装置を、上記のアークを処理する方法のうちの1つを実行するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】中断時間の決定を説明するためのグラフを示す。
図2】アーク処理装置を有している電源装置を備えたプラズマシステムのブロック図を示す。
図3】代替的なプラズマ電源装置が設けられている図を示す。
図4】プラズマ電源装置の別の例が設けられている図を示す。
図5】プラズマ電源装置の別の例が設けられている図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、プラズマ電源装置10によって、プラズマチャンバ30内のプラズマプロセスに時間tにわたり供給される電流Iおよび電圧Uのグラフを示す。測定された電圧信号2および電流信号1がグラフに示されている。時点t1において、アークが発生し始め、このことは、電圧信号2が急激に降下し、かつ電流信号1が急激に上昇していることから見て取れる。時点t2では、アークの発生を検出するために使用される電流信号1が、アーク検出閾値3を上回る。時点t2から時点t3までの期間は、アーク検出時間である。この時間は、アーク検出装置21がアークを検出するために必要とする時間である。時点t3では、アーク検出装置21の出力端にアーク検出信号が存在する。時点t4では、電源装置10がプラズマプロセスへの電力供給を停止する。時点t3から時点t4までの期間は、ハードウェア応答時間である。つまり、ハードウェアがアーク検出信号の存在に応答して、プラズマチャンバ30内のプラズマプロセスに供給される電力を遮断するために必要とする時間である。
【0041】
時点t5では、プラズマプロセスへの電力供給が実際上(現実に)終了する。この時点は、アーク消失時点でもある。図示の例では、時点t3が、中断時間4の開始として選択されている。時点t6では、中断時間4が終了し、電力が再びプラズマプロセスに供給され始める。アークの持続時間は、時点t1から時点t5までの時間である。時点t1から時点t5までの任意の時点を、中断時間4の開始として選択することができる。
【0042】
中断時間4は、時点t1から時点t5までにプラズマプロセスに供給されたエネルギに基づいて計算される。例えば、エネルギ値を、
【数1】
として計算することができ、ここでTはサンプリングの時間である。時点t1から時点t3までのいずれかの時点である時点tnから、時点t4からt5までのいずれかの時点である時点tmまでのエネルギ値を計算することも可能である。中断時間4を、E*ncoefとして計算することもでき、但し、ncoefは、固定値、顧客によって調整された値、プラズマチャンバに供給された電力に基づいて計算された動的な値、ターゲットのタイプまたはターゲットの長さであってよい係数である。
【0043】
図2は、給電網12からの給電電圧を受け取るプラズマ電源装置10を示す。プラズマ電源装置10は、その出力端13において出力信号を生成する。出力信号は、通常の場合、出力電流Ioutおよび出力電圧Uoutである。出力電圧Uoutと出力電流Ioutの乗算によって出力電力Poutが得られ、この出力電力Poutも出力信号とみなされる。
【0044】
電源装置10は、制御およびアーク処理装置14を含んでおり、この制御およびアーク処理装置14は、入力として、出力電力に関する設定値Pset、出力電圧に関する設定値Usetおよび出力電流に関する設定値Isetを受け取る。さらに、プラズマ電源装置10は、DC源15を含んでいる。DC源15は、通常の場合はブリッジインバータである出力信号発生器16の入力端に接続されている。出力信号発生器16もまた、制御およびアーク処理装置14によって制御される。さらに、出力信号発生器16は、プラズマチャンバ30に接続されており、このプラズマチャンバにはプラズマ電源装置10から電力が供給される。プラズマチャンバ30内では、プラズマプロセスが行われる。プラズマプロセスにおいて、アークが発生する可能性がある。
【0045】
出力信号発生器16の出力端における信号測定手段18,19は、測定信号を制御およびアーク処理装置14に供給する。
【0046】
制御およびアーク処理装置14は、プラズマチャンバ30内で発生しているアークを検出するアーク検出装置21を含んでいる。このために、アーク検出装置21は、測定手段18および/または測定手段19から信号を受信する。アーク検出装置21は、測定された信号のうちの1つをアーク検出閾値3と比較する比較器を含むことができる。
【0047】
さらに、制御およびアーク処理装置14は、アークがプラズマチャンバ30内に存在している間に、プラズマチャンバ30に供給されたエネルギを求めるアークエネルギ確定装置22を含んでいる。求められたアークエネルギ値から中断時間4を決定するための、中断時間決定装置24が設けられている。プラズマプロセスに関連する信号を受信するための入力端23が設けられている。さらに、求められたアークエネルギ値および係数に基づいて中断時間4を計算するために使用することができる係数ncoefを受け取るための入力端25を設けることができる。アーク検出信号をアーク検出装置21から電源制御装置27に伝送するために、データ伝送装置26を設けることができる。プラズマチャンバ30内に存在しているアークの検出に基づいて、電源装置10を遮断することができ、その結果、プラズマチャンバ30にはもはや電力は供給されない。計算された中断時間4の経過後に、電源装置10を再び投入接続することができる。電源制御装置27が、出力信号発生器16を直接的に制御してもよい。
【0048】
図3図4および図5は、プラズマ電源装置10およびプラズマチャンバ30の代替的な実施の形態を示し、上記において説明した構成要素に対応する構成要素には同一の参照番号を付している。
【0049】
図3においては、出力信号発生器16がインバータとして実現されているのではなく、パルスを生成することができるDC信号処理装置として実現されている。
【0050】
図3および図4においては、出力信号発生器16がアークを消失させるためのユニット31を含んでおり、このユニット31は、アーク検出装置21と接続されている。
【0051】
図5に示した実施の形態においては、出力信号発生器16がフルブリッジインバータとして実現されており、このフルブリッジインバータは、プラズマプロセスにバイポーラ電力を供給する。
【0052】
出力信号発生器16は、フルブリッジとしてのインバータであってもよいし、出力トランスまたは付加的な出力共振回路を備えているフルブリッジとしてのインバータであってもよい。この場合、プラズマチャンバ30内のプラズマプロセスを、図2および図5に示したような、中間周波数(MF)電力が給電されるプラズマプロセスとすることができる。
【0053】
出力信号発生器16は、パルス化ユニットであってもよい。付加的または選択的に、出力信号発生器16は、アークを消失させるためのユニット31を含むことができる。この場合、プラズマチャンバ30内のプラズマプロセスを、図3および図4に示したような、パルス化されたDC電力が給電されるプラズマプロセスとすることができる。
【0054】
図3図4および図5に示した制御およびアーク処理装置14は、それらの図面には示していないにもかかわらず、以下のユニットまたは装置21,22,23,24,25,26,27のうちの1つまたは複数を含むこともできる。
図1
図2
図3
図4
図5