(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の塞栓除去装置において、前記管状体が径方向に萎んだ送達形態にあるときに、前記第2のストラットは前記第1のストラット上で拘束され、前記管状体が径方向に拡張した展開形態にあるときに、又は前記管状体が径方向に萎んだ送達形態から径方向に拡張した展開形態に移行する間に、前記第2のストラットは前記整列形態から前記非整列形態に自動移行するように解放されることを特徴とする塞栓除去装置。
請求項2に記載の塞栓除去装置において、前記第2のストラットは機械的構造により前記第1のストラット上で拘束され、前記管状体が径方向に萎んだ送達形態から径方向に拡張した展開形態に移行する間に、前記第2のストラットは前記機械的構造から解放され、それにより前記第1のストラットから解放されることを特徴とする塞栓除去装置。
請求項2に記載の塞栓除去装置において、前記管状体が血管部位で展開されるときに溶解して前記第2のストラットを前記第1のストラットから解放する接着剤により、前記第2のストラットが前記第1のストラット上で拘束されることを特徴とする塞栓除去装置。
請求項2に記載の塞栓除去装置において、前記第2のストラットは、前記管状体が血管部位で展開されるときに電気分解で溶解可能なそれぞれのリンクにより前記第1のストラット上で拘束されることを特徴とする塞栓除去装置。
請求項1に記載の塞栓除去装置において、前記管状体が血管部位で展開されるときに、前記第2のストラットは温度の変化により、又は前記管状体に電流を流すことにより、前記整列形態から前記非整列形態に自動移行することを特徴とする塞栓除去装置。
請求項1に記載の塞栓除去装置において、それぞれの第1のストラット及び第2のストラットの異なる物理的特性により、前記第2のストラットは、前記第1のストラットが径方向に萎んだ送達形態から径方向に拡張した展開形態に自動移行するよりも遅く、前記整列形態から前記非整列形態に自動移行することを特徴とする塞栓除去装置。
【背景技術】
【0002】
血栓が血管内に形成されることは珍しいことではない。そのような血栓は血流内で無害に分解される場合がある。しかし、あるときには、そのような血栓が血管内にとどまり、部分的又は完全に血流を閉塞することがある。部分的又は完全に閉塞した血管から、例えば脳、肺又は心臓等の敏感な組織に血液を送り込む場合、深刻な組織損傷をもたらすことがある。そのような虚血性事象は、アテローム性動脈硬化症という、血管を狭くし、曲がりくねった状態にする血管疾患により悪化することもある。血管が狭くなり、又はより曲がりくねると、場合によっては、体内で更に合併症を引き起こす可能性があるアテローム動脈硬化症プラークの形成につながることがある。動脈又は静脈等の血管から血栓又は異物を除去するために、膨張カテーテルやクロットプラー等の塞栓除去装置が様々な用途に用いられる。
【0003】
患者の血管から血栓を除去する塞栓除去の処置では、いわゆる低侵襲技術により、送達カテーテル又はシースは典型的に、例えば大腿静脈、頸静脈、又は肘前中静脈を介して患者の血管構造に経皮的に挿入され、血栓を含む血管内の標的部位に進められる。血管内の血栓の正確な位置を確かめるため、放射線不透過性色素が血管内に注入して、閉塞した血管をX線透視装置によるX線撮影で視覚化することができる。例えば、塞栓除去装置を血栓部位の遠位の萎んだ位置に送るのに、Fogartyカテーテル又は他の適した送達装置を用いてよい。多くの送達装置は、シース又はカテーテル、及び送達部材を含み、送達部材は塞栓除去装置に固定され、シースとカテーテルとを通じて塞栓除去装置を押したり引いたりする。カテーテル及び送達部材は、曲がりくねった脈管構造を通り抜ける間に壊れることなく曲がるように構成してよい。カテーテルは、患者の皮膚を通して、又は関連する血管を簡単な外科的手段により露出させる「静脈切開法」の技術により、必要とされる部位に送達される。
【0004】
除去すべき血栓に隣接して配置させるために、塞栓除去装置は径方向内向きに圧縮され、カテーテルを通して送達される。その後、塞栓除去装置がカテーテルに対して遠位に押し込められるか、又はカテーテルが塞栓除去装置(又はそれぞれの一部)に対して近位に引っ張られ、塞栓除去装置がカテーテルから血管の中に展開し、径方向の拘束がなくなった塞栓除去装置が、血管内で所定の直径まで径方向に拡張することを可能とする。次に、血管壁から血栓を捕捉して除去するため、拡張した塞栓除去装置が近似方向に進められる。塊を血管壁から取り除くときに、血栓を捕えるのにワイヤバスケット、コイル、膜、又は他の収集要素を使用することができる。血栓捕捉方法は、径方向の膨張力による軸方向摩擦の増加、捕捉/収容/挟み込み、一体化、及び包囲を含む。血栓の特性、血管位置、及び除去装置により、それぞれの血栓除去で用いる方法、又は複数の方法の組み合わせを決定する。収集要素により捕えられると、次に塞栓除去装置及び捕えられた血栓は回収装置に入れられ、患者の身体から取り出される。特定の用途では、血管内の異物の除去により、塞栓が下流に移動し、身体内の他の分岐通路に入る可能性がある。塞栓の下流への移動を防ぐには、塞栓除去装置を回収する間に、一時的に治療部位の遠位にある血液の流れを妨げるか、又は遮断することが必要な場合がある。
【0005】
塞栓除去装置は一般的に、身体内腔に挿入するための管状装置である。しかし、塞栓除去は多様なサイズ及び形状で提供してよいことに留意すべきである。自己拡張型塞栓除去装置は、拘束のない場合に更なる入力を要することなく拡張する。自己拡張型塞栓除去装置は、送達カテーテルからの解放時に拡張し、及び/又はステントが所定の状況により拡張することを可能とする、形状記憶型コンポーネントを含むように付勢されてよい。自己拡張型塞栓除去装置は、拡張した形態に付勢される。塞栓除去装置は、金属及びポリマーを含む多種の材料から作ることができる。塞栓除去装置は、形状記憶型金属(例えば、ニチノール)及びポリマー(例えば、ポリウレタン)等の形状記憶型材料から作ることができる。そのような形状記憶型塞栓除去装置は、治療部位への送達後に形状(例えば、径方向に拡張した形状)を取るように(例えば、温度、電場又は磁場、又は光により)誘導できる。他の塞栓除去装置は、ステンレス鋼及びElgiloyを含む。
【0006】
塞栓除去装置は典型的に、1組の細長い要素(つまり、ストラット)から形成される円筒の骨組みである。ストラットは、繰り返しパターン又はランダムに互いに連結できる。骨組みは、ワイヤから編まれ、管から切り取られ、又は後で管状に巻かれる材質のシートから切り取られる。ステントが切り取られる管及びシートは、ステントの「プリフォーム」としても知られている。塞栓除去装置のストラットを互いに連結する方法により、その長手方向及び径方向の剛性及び柔軟性が決定する。血栓を係合するのに必要な径方向の力を与えるのに径方向の剛性が必要であるが、送達用のステントの径方向の圧縮を容易にするのに径方向の柔軟性が必要である。長手方向の剛性は、塞いだ血栓を血管から引くのに必要だが、長手方向の柔軟性は、(例えば、曲がりくねった脈管構造を通して)ステントの送達を容易にするのに必要である。塞栓除去装置のパターンは典型的に、塞栓除去装置の長手及び径方向の剛性と柔軟性との最適なバランスを維持するように設計される。
【0007】
塞栓除去装置は、多様な技術を用いて管又はシートから切り取られ、その技術には、管又はシートをレーザーカットして、又は管又はシート上にパターンをエッチングして、残りの材料からストラットを形成することが含まれる。レーザーカット又はエッチングは、後で管状に巻かれるシートで実行されてよく、又は所望のパターンが直接切り取られ、又はエッチングして管にしてよい。他の技術では、化学的エッチング又は放電加工によりシート又は管に所望のパターンを形成することを伴う。塞栓除去装置に構造上類似するステントのレーザーカットは、Saundersによる米国特許第5,780,807号、Richterによる米国特許第5,922,005号及び第5,906,759号、及びShapovalovによる米国特許第6,563,080号を含む多数の刊行物に記載されている。塞栓除去装置は、溶接、接合、又は互いに係合した構成要素を含んでよい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に定義する用語について、特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所で異なる定義がされない限りは、これらの定義を適用する。
【0017】
全ての数値は、明示的に示すか否かに関わらず、「約」という用語により修正されることが本明細書において想定される。「約」という語は一般的に、記載した値と同等とみなす数値範囲を指す(つまり、同一の機能又は結果を有する)。多くの例では、「約」という用語は、最も近い有効な数字に切り上げた数字を含んでよい。終点による数値範囲の記載は、その範囲内の全ての数字を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられるように、「a」、「an」及び「the」を伴う単数形は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられるように、「又は(or)」という用語は一般的に、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、「及び/又は(and/or)」を含む意味で用いられる。
【0019】
様々な実施形態を、図面に照らして本明細書で説明する。図面は必ずしも一定の比率に縮小して描かれておらず、選択要素の相対的な大きさを明確にするために誇張されることがあり、類似の構造又は機能の要素は図面を通して同様の参照番号で表される。図面は実施形態の説明を容易にすることを意図するのみで、発明の包括的説明、又は添付の請求の範囲及び等価物によってのみ規定される発明の範囲の限定として意図するものではないことも理解すべきである。更に、図示する実施形態は、示された態様及び利点の全てを有する必要はない。特定の実施形態と併せて説明される態様又は利点は必ずしもその実施形態に限定されず、図示されていなくても任意の他の実施形態で実行可能である。
【0020】
既存の血栓除去装置は典型的に、隣接する血管閉塞(例えば、塞栓)を捕捉するため、送達後に径方向外向きに拡張する。しかし、捕捉された血管閉塞を除去するために既存の塞栓除去装置を引き込む間に血管閉塞がその塞栓除去装置から外れてしまい、塞栓除去の手順が失敗することがある。血管閉塞を妨げる塞栓除去の手順が失敗すると、塞栓をより遠位にある(及びより小さい)血管に移動させることにより、且つ破砕を通じて追加の塞栓が生じることにより閉塞の発症を悪化させることがある。
【0021】
開示した実施形態に従って構成された塞栓除去装置では、径方向の拡張後、塞栓除去装置の孔のサイズは、(1)ストラットの形態の変化、(2)ストラットのサイズの変化、及び(3)相対的なストラットの移動、を含むがそれらに限定されない1以上のストラットに関連する変化により小さくなる。いくつかの実施形態では、塞栓除去装置の孔のサイズの縮小は、塞栓除去装置による血管閉塞の捕捉を改善し、それにより引き込む間に外れる可能性を低くする。他の実施形態では、塞栓除去装置の孔のサイズの縮小は、塞栓除去装置による血管閉塞の包囲を改善し、それにより包囲した血管閉塞を除去するために塞栓除去装置を引き込む間に血管閉塞の包囲部分が塞栓除去装置から漏れる可能性を低くする。開示した実施形態のそれぞれでは、ストラットに関連する変化が塞栓除去装置の孔のサイズを小さくし、捕捉又は包囲を改善することにより塞栓除去装置を用いて血管閉塞の除去を容易にする。
【0023】
以下の実施形態では、塞栓除去装置の孔のサイズは、塞栓除去装置が径方向に拡張した後に、第1のストラット14の上に重なる位置から孔16に移動して孔16を二分する第2のストラット14によって小さくなる。
図1Aから3Bは、本発明の一実施形態に係る塞栓除去/血栓除去装置10を示し、装置10は血管内の展開中、様々な形態で示される。
図1A及び1Bは、塞栓除去装置10を径方向に圧縮した送達形態で示している。典型的には、塞栓除去装置10は、管状の送達カテーテル内に拘束されるときに、径方向に圧縮した送達形態で維持される。挿入
図1Bに見られるように、塞栓除去装置10が送達形態にあるときに、径方向の圧縮を容易にするため、装置10のそれぞれの第1のストラット12は、装置10のそれぞれの第2のストラット14と整列し、それらと実質的に重なり合う。
【0024】
図2A及び2Bは、送達カテーテルから解放後の塞栓除去装置10を示す。塞栓除去装置10は、送達カテーテル内で圧縮及び拘束されなくなると、
図2Aに示すようにその弾性回復力により径方向に拡張する。径方向の拡張を受けている間、塞栓除去装置10は、第1のストラット12及び第2のストラット14をそれぞれ含む、装置の様々な構成要素により決定される径方向外向きの力を加える。挿入
図2Bに見られるように、第1のストラット12及び第2のストラット14は、径方向の拡張後、整列して、互いにほぼ重なり合ったままである。重なり合う第1のストラット12及び第2のストラット14は、比較的大きい窓又は孔16を有する粗いメッシュを共に画定し、その結果、血管内の血栓等の閉塞によって生じる、装置10の径方向の拡張に対する抵抗は比較的小さい。
【0025】
図3A及び3Bは、最初に血管に展開後、及び完全な径方向の拡張が生じた塞栓除去装置10を示す。アクチュエータ(つまり、トリガ機構)が作動し、塞栓除去装置10の第2のストラット14は、
図2Aに示す形態から
図3Aに示す形態への立体構造変化を受ける。立体構造変化の間、第2のストラット14が孔16に移動し、それにより孔16を部分的に二分する。立体構造変化の間、塞栓除去装置10の半径は大きく変動しないが、塞栓除去装置10のメッシュはより細かくなり、窓はより小さくなる。挿入
図3Bは、立体構造変化の後、第1のストラット12及び第2のストラット14が整列していないことを示す。
図3Bに示すように、第2のストラット14は、(ノード20で永久的に第1のストラット12に固定した)固定端部18と、自由端部22とを含む。立体構造変化の後、第2のストラット14の自由端部22は、孔16に延び、小さい孔16を有する細かいメッシュを効率的に作成する。孔16が小さくなると、塞栓除去装置10を径方向に通過する血栓等の閉塞への抵抗が増大する。さらに、塞栓除去装置が立体構造変化を受けるにつれて、孔16が比較的大きいサイズから比較的小さいサイズに移行するため、閉塞部分が孔16に捕捉されるようになる。
【0026】
第2のストラット14の立体構造変化のための作動又はトリガ機構は、第2のストラット14への干渉を通じて、周方向に拡張するように付勢された第1のストラット12と整列した状態で、第2のストラット14を拘束する機械的ラッチとすることができる。一例として、トリガ機構は、第2のストラット14の自由端部22から離れるように機械的ラッチを回動させる、塞栓除去装置10の径方向の拡張によって自動的に作動させることができる。径方向の拡張によって立体構造変化を生じるようにトリガ機構を構成することは、装置10の径方向の拡張が完了していなくても少なくともかなり進行する前の、第2のストラット14の早すぎる移動を回避する。代替的には、機械的ラッチを手動で作動させて、患者の外側から第2のストラット14の自由端部22を解放することができる。
【0027】
関連する実施形態では、塞栓除去装置10の第2のストラット14は、閉塞又はその一部が、第1のストラット12により画定される孔16を通り抜けて塞栓除去装置10内に移動することを可能とする一方向の「フラップ」を形成する。このように、閉塞又はその一部が塞栓除去装置10内に移動すると、(第2のストラット14により形成される)フラップは、閉塞の周囲又は内部で閉じ、それにより閉塞を捕獲又は捕捉し、閉塞が塞栓除去装置10から外部に移動するのを阻止する。
【0028】
別の実施形態では、立体構造変化のためのトリガ機構は、異なるストラット設計である。例えば、第1のストラット12及び第2のストラット14は、周方向又は径方向の厚さが異なり、第1のストラット12がより厚いものとすることができる。代替的には、第1のストラット12及び第2のストラット14は、周方向又は径方向に先細となり、かつ先細の程度及び/又は割合が異なり、第2のストラット14がより細く、且つ/又はより急激に細くなる。異なるストラット設計のこれらの例により、第1のストラット12が第2のストラット14よりも弾性変形からより迅速に回復するものとなる。
【0029】
更に別の実施形態では、トリガ機構は第1のストラット12及び第2のストラット14に用いられる異なる材料を活用する。例えば、第1のストラット12は、径方向に圧縮した送達形態に弾性的に変形し(
図1Aを参照)、従って塞栓除去装置10を径方向に拡張するように付勢される(
図2Aを参照)材料から作られてよい。一方、第2のストラット14は形状記憶型材料から作ることができ、第2のストラット14の低温形状が第1のストラット12と整列し、第2のストラット14の高温形状が、第1のストラット12により画定される孔16の中に延びる自由端部22を含むようにしてもよい。第2のストラット14を形成する形状記憶型材料は、その移行温度が通常の体温(37℃)付近であるように選択される。従って、形状記憶型の第2のストラット14は、塞栓除去装置10がカテーテルから血管に送達されて、塞栓除去装置10がその内部の血液により体温に加熱された後に、熱による立体構造変化を開始する。送達後のオーステナイト相への温度によって誘発された遷移の遅れ(加熱時間)は、径方向の拡張が少なくともかなり進む前又は完了する前に第2のストラット14が偶発的に移動するのを回避する。
【0030】
代替的に、第1のストラット12は形状記憶型材料から作られることもできるが、第2のストラット14を形成する材料よりも低い遷移温度を有することができる。従って、塞栓除去装置10が血液により熱せられると、第2のストラット14のオーステナイト遷移が第2のストラット14の孔16への移動をもたらす前に、第1のストラット12のオーステナイト遷移が径方向の拡張をもたらす。
【0031】
更に別の実施形態では、トリガ機構は第2のストラット14の自由端部を一時的に及び可逆的に第1のストラット12に固定する接着剤を含み、それにより送達及び径方向の拡張の間に、第1のストラット12及び第2のストラット14を整列した状態で保持する。これらの実施形態では、第2のストラット14は第1のストラット12と整列した状態で弾性変形し、その自由端部22は第1のストラット12により画定される孔16内に移動するよう付勢される。塞栓除去装置10がカテーテルから血管内に送達された後、その中にある血液が接着剤を溶解し始める。接着剤が十分に溶解すると、弾性変形した第2のストラット14の付勢力が接着剤の強度に打ち勝ち、第2のストラット14は、その自由端部が孔16内にある弛緩位置に戻る。送達後の接着剤の溶解の遅れは、径方向の拡張が少なくともかなり進む前又は完了する前に第2のストラット14が孔16内に偶発的に移動することを回避する。
【0032】
更に別の実施形態では、トリガ機構は、第2のストラット14に用いられる、圧電効果を有する材料を活用する。第1のストラット12と第2のストラット14は、塞栓除去装置10がカテーテルから血管内に送達されるときに整列する。塞栓除去装置10が送達され、第1のストラット12の付勢により径方向に拡張した後に、(送達ワイヤを介して)電流が塞栓除去装置10に印加される。電流により電界が生じ、その電界が第2のストラット14の自由端部22を、第1のストラット12により画定された孔16内に移動させる。
【0033】
別の関連する実施形態では、送達後に塞栓除去装置10に流れる電流は、形状記憶型材料から形成される第2のストラット14を(抵抗加熱によって)加熱する。形状記憶型の第2のストラット14を加熱することで、第2のストラット14をオーステイン相に遷移させ、それらの自由端部22を、第1のストラット12により画定される孔16内に移動させる。この電流により生じるトリガ機構により、ユーザは、電流を流して第2のストラット14の移動を引き起こす前に、径方向の拡張が完了するまで待機することができる。
【0035】
以下の実施形態では、塞栓除去装置の孔のサイズは、有効なストラットのサイズを大きくすることにより、塞栓除去装置の径方向の拡張後に縮小される。一実施形態では、送達後に塞栓除去装置10に電流が印加され、その電流が第1のストラット12が作られる金属材料に反応するイオンを引き付けて、第1のストラット12を厚くする。これらの実施形態では、第2のストラット14は存在しない。その代り、第1のストラット12の厚さが増すと、第1のストラット12により画定された孔16のサイズが小さくなる。この電流によるトリガ機構によって、ユーザは、電流を流してストラットのサイズの増加及びそれに伴うサイズの減少を引き起こす前に、径方向の拡張が完了するまで待機することができる。
【0036】
別の実施形態では、第1のストラット12が局所凝固剤でコーティングされ、その凝固作用により血液中で第1のストラット12の厚さを増大させる。この実施形態では、第2のストラット14は存在しない。その代り、第1のストラット12の厚さが増すと、第1のストラット12により画定された孔16のサイズが小さくなる。送達後の血栓形成の遅延は、径方向の拡張が少なくともかなり進む前又は完了する前に、ストラットのサイズが偶発的に大きくなることを回避する。凝固は、閉塞(例えば、血栓塞栓)を第1のストラット12に付着させ、それにより、塞栓除去装置10を引き抜くことにより、その除去を容易にすることもできる。
【0038】
以下の実施形態では、塞栓除去装置の孔のサイズは、塞栓除去装置の径方向の拡張後、相対的なストラットの移動により縮小して、より小さい孔16を画定する。
図4Aから6に示す一実施形態では、塞栓除去装置10は、第1のストラット12及び第2のストラット14からそれぞれ作られる同心の外管状体24及び内管状体26を含む。外管状体24及び内管状体26の第1のストラット12及び第2のストラット14は、同様の孔16a及び16bを画定する。
図4Aは、径方向に拡張した形態の塞栓除去装置10を示し、その形態は、塞栓除去装置10が標的部位で送達カテーテルから解放された後に達成される。
図4Aは、(2つの別個の管状体24、26を示すため)外管状体24及び内管状体26が互いから僅かにオフセットされている状態で示すが、好ましい実施形態では、外管状体24及び内管状体26は、最小の径方向プロファイルを表すように整列される。外管状体24及び内管状体26、及びそれぞれの第1のストラット12及び第2のストラット14の整列は、より大きい孔16を有する粗いメッシュをもたらす。同様に、より大きな孔16は径方向の拡張の間、血栓等の閉塞からの抵抗が少なくなる。
【0039】
図4Bは、より小さい孔16を形成させた後の塞栓除去装置10を示す。塞栓除去装置10は、内管状部材26を外管状部材24に対して軸方向に移動させることにより、より小さい孔16を形成する。
図4A及び4B(及び
図6)は、(第1のストラット12及び第2のストラット14によりそれぞれ画定される)外管状部材24及び内管状部材26のそれぞれの一連の3つの「セル」のみを示すが、外管状部材24及び内管状部材26はそれぞれ、軸及び周方向の両方に他の「セル」を具える。
【0040】
図5A及び5Bに示すように、トリガ機構は、外管状部材24に永久的に固定され、かつ送達部材30に一時的且つ可逆的に固定された外管状部材ハブ28を含む。外管状部材ハブ28は、
図5Aに示すように、電気分解又は溶剤(例えば、血液)により除去可能な接続により、一時的且つ可逆的に送達部材30に固定できる。外管状部材ハブ28と送達部材30との接続が除去されると、外管状部材ハブ28が送達部材30に摺動自在に連結されて、
図5Bに示すように、外管状部材ハブ28が送達部材30に沿って摺動することが可能となる。トリガ機構は、内管状部材26と送達部材30との両方に永久的に固定された内管状部材ハブ32も含む。更に、トリガ機構は、送達部材30上の外管状部材ハブ28と内管状部材ハブ32との間に配置されるストッパ34を含む。ストッパ34は、任意選択的には、変形可能な材料から作られてよく、外管状部材ハブ28及び内管状部材ハブ32の互いに対する相対移動を停止するように構成される(つまり、ストッパ34がスペーサとして作用する)。
【0041】
図6に示すように、塞栓除去装置10が径方向に拡張して血管閉塞36(例えば、血栓塞栓)の表面に接触すると、血管閉塞36の一部分が孔を通って突出することができる。血管閉塞36の一部分が孔16を通って突出している状態で塞栓除去装置10が作動されると、孔16のサイズを小さくすることにより、孔16内の血管閉塞36の一部分を捕えることができ、それにより血管閉塞36を捕捉して塞栓除去装置10に固定することができる。ユーザは、径方向の拡張が完了するまで待ってから、塞栓除去装置10を作動させて、内管状部材26を外管状部材24に対して軸方向に移動させることにより、より小さい孔16を形成することができる。
【0042】
別の実施形態では、第1のストラット12が互いに織り合わされ又は編まれて、第1のストラット12が公差する位置又は重なり合う位置に浮動点を有する塞栓除去装置10が形成される。そのような編組の塞栓除去装置10は、大まかに2つの螺旋を画定する2つの逆回転ワイヤにより形成できる。編組は、塞栓除去装置10が径方向に圧縮した送達形態であっても比較的大きい孔16を有するように構成することができる。径方向の拡張後、塞栓除去装置10の遠位端及び近似端を互いに向けて引っ張ることにより、塞栓除去装置10を軸方向に圧縮できる。このことは、それぞれの遠位端及び近似端から延びる細長い部材を操作することにより達成できる。浮動する第1のストラット12を有する編まれた塞栓除去装置10を軸方向に圧縮することで、ストラット12の相対的移動をもたらし、それにより孔16のサイズを小さくする。
【0044】
上述した塞栓除去装置のような塞栓除去装置10を製造する方法は、1以上の薄壁の管状部材から塞栓除去装置10を切り取り、その後、そこに塞栓除去装置10の他の部分(例えば、異なる材料から作られる第2のストラット14、接着剤及び送達部材30)をそこに固定するというものである。例示的な管状部材は、ステンレス鋼から作ることができる。管状部材を切り取ることで、管状部材の不要部分を取り除いて、開口を作成し、塞栓除去装置10のパターンを形成する。
【0045】
塞栓除去装置10が切り取られる管は、ステンレス鋼、ニチノール、又は他の金属及びポリマー等の生体適合性材料から作られてよい。複雑な形状を有する塞栓除去装置10は、管が中に挿し込まれる血管の外径とほぼ同じ外径を有する管から切り取られる。典型的な塞栓除去装置10は、未拡張の状態で約0.5mm(約5mmまで)の外径を有し、約2.5mm以上の外径まで拡張できる。従って、塞栓除去装置10が作られる管は、約1.5mm(約5mmまで;未拡張の塞栓除去装置10と同様)の外形を有する必要がある。典型的な塞栓除去装置10の壁の厚さ(及び管の壁の厚さ)は、約0.075mmである。代替的に、塞栓除去装置10は、細長い部材から織られ、又は編まれる。
【0047】
上述の様々な塞栓除去装置10を用いて血管閉塞36(例えば、血栓塞栓)を除去する方法100を、
図7に示す。この方法において標的部位は、曲がりくねった血管経路を介してのみアクセス可能な神経血管部位であってよい。曲がりくねった血管経路は、90°より大きい複数の屈曲部、又は曲がり角を含み、直径が約8mm以下の血管及び直径2mmから3mmの血管を含む。
【0048】
ステップ102では、周知の方法に従って、送達カテーテルを標的部位に配置する。好ましくは、送達カテーテルを、血管閉塞36を少なくとも部分的に横切るように位置決めする。送達カテーテルの位置決めを容易にするために、ガイドワイヤを用いてよい。標的部位に送達カテーテルを配置する典型的な手順では、送達カテーテル及びガイドワイヤは、典型的には血管閉塞36の外面と血管の内面との間にある、最も抵抗が少ない経路の中を進む。
【0049】
ステップ104では、径方向に圧縮した送達形態の塞栓除去装置10を送達カテーテルの近似端に導入して、送達カテーテルの遠位端に前進させる。ガイドワイヤを含む実施形態では、送達カテーテルを介して塞栓除去装置10を前進させる前に、典型的には、ガイドワイヤを送達カテーテルから取り外す。血管閉塞36に隣接した配置を容易にするため、放射線不透過性マーカーを送達カテーテル及び塞栓除去装置10に配置できる。また、視覚化を改善するため、造影剤を標的部位付近の血管に導入することもできる。
【0050】
ステップ106では、塞栓除去装置10を送達カテーテルから展開するため、送達カテーテルを(静止している)塞栓除去装置10上で近似に引っ張る。ステップ108では、展開された塞栓除去装置10を径方向に拡張し、
図6に示すように血管閉塞36の表面に接触させる。
【0051】
図6に示すように、血管閉塞36の一部分は、(孔16のより大きい形態で)孔16を通して、径方向に拡張した塞栓除去装置10内に突出することができる。ステップ108において、塞栓除去装置10の他の部分からのストラット12、14は、血管閉塞36内に移動して一体化することができる。殆どの手順において、(血管閉塞36の一部が孔16を通して塞栓除去装置10内に突出する)捕捉及び(塞栓除去装置10の一部が血管閉塞36内に突出する)一体化の両方が生じる。一体化に対する捕捉の割合は、血管閉塞36、血管、及び塞栓除去装置の物理的特性に依存する。
【0052】
ステップ110では、トリガ機構を作動し、塞栓除去装置10の孔16のサイズを小さくする。トリガ機構の作動は、トリガ機構によって変わる。上述のトリガ機構(自動機械的ラッチ、フラップ、異なるストラット設計、形状記憶型ストラット、接着剤、凝固剤コーティング)のうちいくつかは、送達カテーテルから、体温の血液を含む血管内に塞栓除去装置10を展開した後に、時間の経過により作動する。上述の他のトリガ機構(圧電ストラット、抵抗加熱、イオンによるストラットの厚み増加)は、送達後に(例えば、送達部材30を通して)電流を塞栓除去装置10に流すことを要する。上述の更に他のトリガ機構(手動機械的ラッチ及びデュアル管状部材設計)は、送達後に塞栓除去装置10の一部の移動を要する。どのように達成しようと、孔16のサイズを小さくすることで、血管閉塞36と塞栓除去装置10との間の干渉が増し、それにより血管閉塞36を更に捕捉又は一体化する。
【0053】
ステップ112では、塞栓除去装置10により捕捉及び/又は一体化された血管閉塞36とともに、塞栓除去装置10を血管及び患者から近位に引っ張り出して、そこから血管閉塞36を除去する。患者からの取り外しを容易にするため、塞栓除去装置10を送達カテーテル又は別のカテーテル内に引き込むこともできる。閉塞36の破片による塞栓を最小にするために、塞栓除去装置36の除去中に、典型的には吸引が適用される。塞栓除去装置10が近位に引っ張られると、その第1のストラット12及び第2のストラット14は、血管閉塞36と更に係合するように動かされる。
【0054】
塞栓除去装置10での捕捉又は一体化により血管閉塞36を除去する1つの利点は、血管閉塞36から(例えば、側面の血管への)の突起物も血管閉塞36の主要部と共に除去できることである。
【0055】
図8は、上述の様々な塞栓除去装置10を用いて、血管閉塞36(例えば、血栓塞栓)を除去する別の方法200を示す。方法200のステップ202、204、及び206は、
図7に示す上述した方法100の対応するステップ102、104、及び106と同一である。
【0056】
ステップ208で、送達カテーテルを(静止している)塞栓除去装置10上で近位に引っ張って塞栓除去装置10を送達カテーテルから展開した後に、塞栓除去装置10が径方向に拡張する。ステップ208において、塞栓除去装置10は、血管の内径に近い直径まで径方向に拡張し、実質的に血管閉塞36を包囲する。ステップ208の間の大きい孔16のサイズ、及び重なり合う第1のストラット12及び第2のストラット14は、最小の径方向の力で、血管閉塞36の塞栓除去装置10内への通過を容易にする。血管閉塞36が大きい孔16を通過する間、塞栓除去装置36は大きい片に細分化されてよい。塞栓除去装置10は、その物理的特性が血管閉塞36と血管の(手順の前に決まる)特性と組み合わさって、径方向の拡張中の一体化に対する包囲を最大にするように選択される。
【0057】
ステップ210では、トリガ機構をステップ110に関して上述したように作動させて、塞栓除去装置10の孔16のサイズを小さくする。孔16のサイズを小さくすることで、より細かいメッシュを生成し、血管から塞栓除去装置10及び血管閉塞36を除去する間に血管閉塞36の断片の大半が塞栓除去装置10から出ていくのを防ぐ。血管閉塞36の断片を塞栓除去装置10内に保つため、塞栓除去装置10の近似端及び遠位端は、血管閉塞36を包囲するように構成された、塞栓除去装置10の中間部より小さい孔16を有することができる。
【0058】
ステップ212では、塞栓除去装置10及び血管閉塞36の断片を血管及び患者から近位に引っ張り出し、そこから血管閉塞36を除去する。患者からの除去を容易にするため、塞栓除去装置10を送達カテーテル又は別のカテーテルに引き込むこともできる。塞栓除去装置10が近位に引き込められると、近似方向の力のもとで軸方向に長くなり、軸方向の伸長の結果、その直径が小さくなる。直径の縮小により、血管閉塞36の断片を圧縮し、それらが塞栓除去装置10から出てしまうことを更に防ぐとともに、血管からの除去を更に容易にする。
【0059】
上述の塞栓除去装置10の特徴は、周知の装置に対する利点を提供する。径方向の拡張中のより大きい孔16のサイズは、より小さい孔で径方向に拡張する塞栓除去装置10よりもより小さい径方向の力での捕捉、一体化及び包囲を可能とする。孔16のサイズの縮小は、閉塞(血栓又は石灰化)の捕捉又は一体化を高め、血栓包囲の場合に断片が出てしまうことを防ぐ。塞栓除去装置10の開示した実施形態は、閉塞が塞栓除去装置10の外部に転がることが減るよう補助する。包囲方法200は、塞栓が側枝の血管及び元の閉塞36の末端に移動するのを最小にする。包囲方法は、血管閉塞36の除去中の吸引の必要性も減らす(及び潜在的になくす)。径方向の拡張中に第1のストラット12及び第2のストラット14が重なり合うことで、血管閉塞36の破砕及び解離を減らす。径方向の拡張中に第1のストラット12及び第2のストラット14の重なり合いにより、血管閉塞36を包囲するのに必要な径方向力も減らし、それにより血管壁の損傷を減らす。第2のストラット14及びその自由端部22も、径方向力及び血管壁の損傷を減らす。
【0060】
図8は、血管閉塞36を包囲することにより血管閉塞36を除去する塞栓除去の方法200を示したが、塞栓除去の方法は、血管閉塞を除去する様々なレベルへの包囲及び捕捉の両方を含んでよい。