特許第6682557号(P6682557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6682557石炭を原料としてグラフェンを調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682557
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】石炭を原料としてグラフェンを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/184 20170101AFI20200406BHJP
   H01G 11/44 20130101ALI20200406BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20200406BHJP
   H01M 4/587 20100101ALN20200406BHJP
【FI】
   C01B32/184
   H01G11/44
   H01G11/86
   !H01M4/587
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-559116(P2017-559116)
(86)(22)【出願日】2016年5月13日
(65)【公表番号】特表2018-523623(P2018-523623A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】CN2016081961
(87)【国際公開番号】WO2016184355
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2017年12月13日
(31)【優先権主張番号】201510257435.9
(32)【優先日】2015年5月19日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518272511
【氏名又は名称】イーエヌエヌ グラフェン テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼雨虹
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−517274(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103771403(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103288076(CN,A)
【文献】 特開昭51−116194(JP,A)
【文献】 特開平02−153813(JP,A)
【文献】 特開2012−101948(JP,A)
【文献】 特開2010−092690(JP,A)
【文献】 特開2013−208597(JP,A)
【文献】 特開2012−082134(JP,A)
【文献】 特開平08−321306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00−32/991
H01G 11/44
H01G 11/86
H01M 4/587
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を原料としてグラフェンを調製する方法であって、
石炭塊または石炭粒子を微細化し、微細化石炭粉を得る微細化ステップ、
前記微細化ステップで得られた石炭粉を活性化溶液に浸漬するとともに常温下で10〜36時間攪拌した後、石炭粉と活性化溶液の混合液を得、前記混合液を乾燥し、石炭粉と活性化溶液との溶融混合物を得る活性化ステップ、
前記活性化ステップで得られた前記溶融混合物を水素ガスと不活性雰囲気との混合雰囲気下で炭化させてから自然降温させ、炭化生成物を得る炭化ステップ、及び
前記炭化生成物を酸洗および水洗し、乾燥させて多孔質グラフェンを得る洗浄乾燥ステップ、
を含む方法。
【請求項2】
前記活性化溶液はアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物またはその混合物の溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の、グラフェンを調製する方法。
【請求項3】
前記石炭粉と前記活性化溶液に含まれる活性化剤との質量比は1:0.1〜1:10であることを特徴とする、請求項1に記載の、グラフェンを調製する方法。
【請求項4】
前記水素ガスと不活性雰囲気との混合雰囲気においてH2が占める体積分率が0%を超え100%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の、グラフェンを調製する方法。
【請求項5】
前記炭化ステップにおける炭化温度が500℃〜1200℃であり、炭化滞留時間が0〜10hであることを特徴とする、請求項1に記載の、グラフェンを調製する方法。
【請求項6】
前記炭化ステップにおける昇温速度が0.1〜15℃/minであることを特徴とする、請求項1に記載の、グラフェンを調製する方法。
【請求項7】
前記活性化溶液の濃度が0mol/Lを超え10mol/L以下であることを特徴とする、請求項1に記載の、グラフェンを調製する方法。
【請求項8】
前記酸洗は希塩酸または硝酸を採用し、かつ、酸洗液の濃度は0.5mol/L〜2mol/Lであることを特徴とする、請求項1に記載の、グラフェンを調製する方法。
【請求項9】
前記混合液の乾燥温度は60〜200℃であることを特徴とする、請求項1に記載の、グラフェンを調製する方法。
【請求項10】
前記不活性雰囲気は窒素ガスまたはアルゴンガスであることを特徴とする、請求項1に記載の、グラフェンを調製する方法。
【請求項11】
前記石炭粉の固定炭素含有量は40〜70%であり、揮発分の含有量は20〜50%であり、水分含有量は0〜30%であり、灰分含有量は0〜10%であり;石炭種の元素分析要求炭素元素含有量は50〜80%であり、水素元素含有量は0〜10%であり、酸素元素含有量は0〜30%であることを特徴とする、請求項1に記載の、グラフェンを調製する方法。
【請求項12】
前記石炭粉中の灰分が、CaO、MgO、KO、NaO、SiO、Al、Fe、TiO、MnO、Pの1種または複数種を含むことを特徴とする、請求項11に記載の、グラフェンを調製する方法。
【請求項13】
前記石炭粉中の灰分が、CaO、MgO、KO、NaOの1種または複数種を含むことを特徴とする、請求項12に記載の、グラフェンを調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラフェンの調製方法に関し、特に、石炭を炭素源として多孔質グラフェンを一段階合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェン(GraPhene)、すなわち、sp炭素原子が下から上へ組み立てられて形成される2次元単層炭素ナノ構造材料は、優れた導電、熱伝導、機械的性能および化学的安定性のため、高性能ナノ電子デバイス、センサ、ナノ複合材料、電気化学的エネルギー貯蔵等の分野で幅広く応用されている。
【0003】
多孔質グラフェン材料は、高導電性のグラフェンシート層構造および豊富な細孔構造を同時に有するため、電気化学的エネルギー貯蔵の方向で、特に、電気二重層吸着原理に基づくスーパーキャパシタの分野が、重要な応用価値を有する。現在の多孔質グラフェン調製方法は主に、化学的活性化法、テンプレート合成法、および、グラフェンと金属酸化物との間の炭素熱に基づく還元法を含む。そのうち化学的活性化法は、グラファイトまたは酸化グラファイトを原料とし、マイクロ波または化学剥離の後に、KOH、HPO、ZnCl等の活性化剤の活性化エッチング作用によって、多孔質グラフェン材料を形成する。[「Science」、vol.332、1537、(2011)]は、KOH活性化マイクロ波剥離後の酸化グラフェンで微孔グラフェンを調製する方法を提供しており、最高比表面積は3100m/gに達することが可能であり、優れた有機静電容量性能を示す。多孔質グラフェンのテンプレート合成法は、MgO、ZnS、SiO、Al等をベースとし、炭素源の析出および後続のテンプレート除去過程を通じて多孔質グラフェン材料を形成する。代表的なのは、異なる形態のMgO(シート状、球状、柱状)をベーステンプレートとし、小分子の炭化水素化合物(CH、C)等を気相炭素源とし、MgOテンプレート上での炭素源の触媒分解および後続のMgOテンプレートの除去によって、異なる形態の細孔を有する多孔質グラフェン材料を得る[「Nat.Commun」、5、3410(2014)]ことである。代表的なのは、異なる形態のMgO(シート状、球状、柱状)をベーステンプレートとし、小分子の炭化水素化合物(CH、C)等を気相炭素源として、MgOテンプレート上での炭素源の触媒分解および後続のMgOテンプレートの除去によって、異なる形態の細孔を有する多孔質グラフェン材料を得る[「Nat.Commun」、5、3410(2014)]ことである。炭素熱反応に基づいて多孔質グラフェンを調製する主な過程は、酸化グラファイトをグラフェン原料とし、NaMoO、NaWO、NaVO、NaAlO、NaSnO、KTiOなどの酸素含有金属塩をエッチング剤とし、高温(650℃)の炭素熱還元反応および後続の酸洗によって金属酸化物を除去してから、1〜50nmの細孔構造を有する多孔質グラフェン材料を得る[「Nat.Commun」、5、4716(2014)]。しかしながら、上記で列挙した多孔質グラフェン材料の調製方法には、原料コストが高い、調製プロセスに時間がかかる、煩わしくかつ大量生産が困難であるといった問題がいずれも存在している。しかしながら、上記で列挙した多孔質グラフェン材料の調製方法には、原料コストが高い、調製プロセスに時間がかかる、煩わしくかつ大量生産が困難であるといった問題がいずれも存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、低コストであり、大量生産可能な多孔質グラフェン材料の調製方法を開発することには重要な意義があり、そのうち、低コストであり埋蔵量の多いグラフェン原料の探査が極めて重要である。石炭の内部構造は、芳香族炭化水素、芳香族多環式炭化水素を基本単位とする大量の天然系グラファイト層状構造を含み、多孔質炭素材料の大量かつ低コストな調製の重要な原料の一つと一貫して見なされてきた。現在、石炭を原料として多孔質炭素材料を生産する場合、主に、石炭化度が高い瀝青炭、無煙炭を原料とし、炭化および活性化(物理的活性化または化学的活性化)によって処理して石炭ベースの活性炭素材料を調製して得る。ここで、石炭種の特性、活性化剤の種類、および活性化条件が、多孔質炭素の細孔構造に影響する重要な影響要因である。しかしながら、現在は、石炭を原料として調製して得られる石炭ベースの活性炭素材料における炭素の存在形式は主にアモルファス構造であり、かつ、物理的または化学的活性化法によって調製して得られる多孔質炭素は、細孔が少なく(比表面積<1500m/g)、ヘテロ原子含有量が高いことにより、ガス分子の効率のよい吸着および電気化学的エネルギー貯蔵の面での応用を制約している。褐炭は、わが国で多くの埋蔵量を有しており、他の石炭種に比べ、価格が安く、特に、中国新疆ジュンガル東部では今年、埋蔵量の豊富な低品位炭資源(ジュンガル東部褐炭)が発見されており、予想資源埋蔵量は3900億トンに達する。一方で、褐炭は、低い石炭化度、高いアルカリ金属および水分含有量のため、石炭火力発電の分野で大規模に応用することについては大きな技術的ボトルネックがある。しかしながら他方では、褐炭を多孔質炭素材料として調製される原料が、次のような顕著な強みを有する:(1)褐炭は揮発分の含有量が高く、高温で熱分解する過程で、より発達した細孔構造を形成するのに有利である;(2)褐炭の石炭化度は低く、内部の芳香構造内に大量の酸素含有基を含んでおり、高い反応活性を持たせており、多孔質炭素材料を調製するにあたって炭素構造の変化および細孔の生成過程を調節することが、より容易である。現在、褐炭は主に、水処理および石炭燃焼排煙の除去のための低品質(細孔率が低く、非石炭不純物の含有量が高く、構造が不安定である)の活性コークスを調製するために用いられており、カリウム含有活性化剤を用いた化学的活性化過程によって褐炭ベースの活性炭を調製する研究が少し報告されており、比較的高い比表面積の活性炭を得ることができるが、採用する原料炭の構造的特性および活性化条件の制約のため、得られる多孔質炭素材料は依然としてアモルファスであり、ヘテロ原子含有量が高い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、低コストであり、大規模に工業生産可能な多孔質グラフェン材料の調製方法を提供している。具体的には、特殊な石炭化度および構造的特性を有する褐炭を原料とし、内部にある程度形成されたグラフェン様シート層構造および適量の触媒金属含有量を利用し、一段階化学的活性化法によって多孔質グラフェン材料を調製して得るが、本発明に係るグラフェン材料の調製方法はプロセスが簡単であり、コストが低く、大規模に大量生産しやすく;該方法で調製された多孔質グラフェンは、細孔構造が発達しており比表面積が制御可能であり炭素構造の純度が高い等の利点を有しており、電気化学的エネルギー貯蔵(電気二重層静電容量電極材料、リチウムイオン静電容量正極材料)とガス吸着分野(COの吸着とCHの吸着)で、極めて大きな応用上の強みを有する。
【0006】
本発明は、従来の多孔質グラフェン調製技術に存在する、原料コストが高い、調製プロセスが煩雑である、比表面積が低い等の問題を解決するため、わが国新疆ジュンガル東部地区の高埋蔵量の褐炭を炭素源とし、簡単な一段階化学的活性化法を用いて、高比表面積であり孔構造が制御可能な多孔質グラフェン材料を調製する方法を提供する。具体的には以下のステップを含む:
石炭塊または石炭粒子を微細化し、微細化石炭粉を得る微細化ステップ;
微細化ステップで得られた石炭粉を活性化溶液に浸漬するとともに常温下で10〜36時間攪拌した後、石炭粉と活性化溶液の混合液を得、前記混合液を乾燥し、石炭粉と活性化溶液との溶融混合物を得る活性化ステップ;
活性化ステップで得られた溶融混合物を不活性ガスまたは水素ガスと不活性雰囲気との混合雰囲気下で炭化させてから自然降温させ、炭化生成物を得る炭化ステップ;
前記炭化生成物を酸洗および水洗し、乾燥させて多孔質グラフェンを得る洗浄乾燥ステップ。
【0007】
好ましくは、前記活性化溶液はアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物またはその混合物の溶液であり;活性化ステップは、アンモニアガスを活性化剤として用いることも含む。
【0008】
好ましくは、前記石炭粉と前記活性化溶液との質量比は1:0.1〜1:10である。
【0009】
好ましくは、前記水素ガスと不活性雰囲気との混合雰囲気においてHが占める体積分率が0〜100%である。
【0010】
好ましくは、炭化ステップにおける炭化温度が500℃〜1200℃であり、炭化滞留時間が0〜10hであり;
【0011】
好ましくは、炭化ステップにおける昇温速度が0.1〜15℃/minであり;
【0012】
好ましくは、前記活性化溶液の濃度が0〜10mol/Lであり;
【0013】
好ましくは、前記酸洗は希塩酸または硝酸を採用し、かつ、酸洗液の濃度は0.5mol/L〜2mol/Lであり;
【0014】
好ましくは、前記乾燥温度は60〜200℃であり;
【0015】
好ましくは、前記不活性雰囲気は窒素ガスまたはアルゴンガスであり;
【0016】
好ましくは、前記石炭粉が要求する石炭種の工業分析要求固定炭素含有量は40〜70%であり、揮発分の含有量は20〜50%であり、水分含有量は0〜30%であり、灰分含有量は0〜10%であり;石炭種の元素分析要求炭素元素含有量は50〜80%であり、水素元素含有量は0〜10%であり、酸素元素含有量は0〜30%であり;ここで、石炭中の灰分は、CaO、MgO、KO、NaOの1種または複数種の組み合わせを必ず含んでいなければならず、他の成分は、SiO、Al、Fe、TiO、MnO、Pの1種または複数種の組み合わせを含み得る。
【0017】
他方、本発明は、上述の方法で調製されたグラフェン材料も開示している。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有益な効果は次の通りである:
【0019】
(1)本発明は、埋蔵量の多い、低コストの褐炭を炭素源とし、強アルカリ化学に基づく活性化法で高比表面積の微孔グラフェン材料を得、得られるグラフェンは、単層の大量のグラフェンシート層構造を有し、表面には、2nm未満の微孔が密に分布しており、大きな比表面積(最高3345m/gに達する)を有しており、グラフェンの孔構造と比表面積の制御は、炭化導入する雰囲気の種類、石炭粉と活性化剤の比率および炭化温度の調節によって実現可能である;
【0020】
(2)本発明の方法で得られる多孔質グラフェンは炭素構造の純度が高く、ヘテロ原子基の含有量が低い(3−wt%未満)。高純度の炭素構造は多孔質グラフェンの化学的安定性を高め、それを電気化学的エネルギー貯蔵電極材料または吸着材料とするときに、サイクル寿命を著しく向上させることができる;
【0021】
(3)従来の石炭ベースの活性炭の調製過程は通常、予備炭化処理を行うことで、大まかな細孔構造を有する炭化材料を得、さらに、炭化材料と活性化剤を混合して高温活性化過程を経て活性炭素材料を得なければならない。本発明が採用する炭素源は変質の度合いが低く、炭素骨格の可塑性が高い若い褐炭であり、予備炭化過程が不要であり、一段階化学的活性化法のみによって高比表面積のグラフェン材料を得ることができ、調製プロセスを大幅に簡略化しており、調製コストを引き下げている;
【0022】
(4)本発明が採用する石炭ベースの原料は褐炭であり、他の石炭種に比べ、内部の灰分(主にアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物)の含有量が高く、水分含有量が高いのが特徴である。多孔質グラフェンを一段階活性化で形成する過程で、内部のMg、Ca等の金属が触媒グラファイト化作用を果たしており、水分が、活性化細孔形成作用をある程度果たしている;
【0023】
(5)単純な不活性雰囲気の条件下での多孔質炭素の活性化方法に比べ、本発明は、活性化過程でHを導入する技術手法を提供しており、活性化過程のHの導入は、一方では、褐炭表面の炭素ベース構造の還元分解を強化し、揮発成分の析出および活性化細孔形成作用を加速することができ;他方では、搬送ガスにHを導入することは、褐炭表面の酸素含有基のさらなる還元除去に有利であり、生成物中の炭素構造の純度を高める;
【0024】
(6)従来のグラフェンおよび多孔質グラフェン調製方法に比べ、本発明は低コストの褐炭を炭素源としており、調製過程が簡単であり、大規模な工業生産に適しており、ガス吸着や電気化学的エネルギー貯蔵等の分野で直接的な応用価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)は実施例1で得られる微孔グラフェンのラマンスペクトルであり、(b)は実施例1で得られる微孔グラフェンの透過型電子顕微鏡画像である。
図2】(a)は実施例1、2、3で得られる微孔グラフェンの吸着等温線であり、(b)は実施例1、2、3で得られる微孔グラフェンの孔径分布曲線である。
図3】実施例1で得られる多孔質グラフェンの空気雰囲気下での熱重量曲線である。
図4】(a)は実施例1で得られる多孔質グラフェンのX線光電子分光(XPS)スペクトルであり、(b)は実施例1で得られる多孔質グラフェンのX線光電子分光(XPS)スペクトルである。
図5】実施例1で得られる多孔質グラフェンのX線回折パターン(XRD)である。
図6】(a)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、6M KOH電解液系におけるサイクリックボルタンメトリー特性曲線であり、(b)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、6M KOH電解液系における充放電特徴曲線であり、(c)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、6M KOH電解液系における電流密度−体積比静電容量曲線であり、(d)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、6M KOH電解液系における5A/gサイクル安定性曲線である。
図7】(a)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、1M HSO電解液系におけるサイクリックボルタンメトリー特性曲線であり、(b)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、1M HSO電解液系における充放電特徴曲線であり、(c)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、1M HSO電解液系における電流密度−体積比静電容量曲線であり、(d)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、1M HSO電解液系における5A/gサイクル安定性曲線である。
図8】(a)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、商用電解液1mol/L ETNBF/PCにおけるサイクリックボルタンメトリー特性曲線であり、(b)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、商用電解液1mol/L ETNBF/PCにおける充放電特徴曲線であり、(c)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、商用電解液1mol/L ETNBF/PCにおけるパワー密度−エネルギー密度曲線であり、(d)は実施例1で得られる多孔質グラフェンの、商用電解液1mol/L ETNBF/PCにおける2A/gサイクル安定性曲線である。
図9】(a)は実施例1で得られる多孔質グラフェンがリチウムイオンスーパーキャパシタの正極材料となる場合のサイクリックボルタンメトリー特性曲線であり、(b)は実施例1で得られる多孔質グラフェンがリチウムイオンスーパーキャパシタの正極材料となる場合の2A/gサイクル安定性曲線である。
図10】実施例1で得られる多孔質グラフェンのメタン吸着等温線である。
図11】実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンからなるリチウムイオン電池の、0.2mVs−1の走査速度におけるサイクリックボルタンメトリー特性曲線である。
図12】実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンからなるリチウムイオン電池の、0.2Ag−1の電流密度における定電流充放電曲線である。
図13】実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンからなるリチウムイオン電池の速度能力曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、具体実施例によって、本発明の利点についてさらに説明するが、本発明の保護範囲は下記の実施例のみに限定されない。
【0027】
本発明の実施例では、下記表1、表2中の成分を含むジュンガル東部産の原炭を選択使用する。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【実施例1】
【0030】
本実施形態の微孔グラフェン調製方法は、下記のステップにより実現される:
(1)ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が80〜100メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、35.7mLの、濃度が6mol/LのKOH溶液中に加え(石炭粉とKOHの質量比は1:4)、常温下で24時間攪拌した後、石炭粉とKOHの混合液を120℃で乾燥させて石炭粉とKOHの溶融混合物を得;
(2)ステップ(1)で得られた石炭粉とKOHの溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から900℃まで昇温させ、昇温速度を5℃/minに制御し、900℃の温度で3h恒温炭化させた後、自然降温させて炭化生成物を得;
(3)ステップ(2)で得られた炭化生成物を2mol//Lの希塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に80℃で乾燥させ、目標生成物である微孔グラフェンを得る。
【実施例2】
【0031】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が100〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、35.7mLの、濃度が6mol/LのKOH溶液中に加え(石炭粉とKOHの質量比は1:4)、常温下で10時間攪拌した後、石炭粉とKOHの混合液を60℃で乾燥させて石炭粉とKOHの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から800℃まで昇温させ、昇温速度を5℃/minに制御し、800℃の温度で4h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を2mol//Lの希塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に100℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られた多孔質グラフェンについて構造および性能の特性評価を行い、実施例2の方法で調製された多孔質グラフェンを、電流密度0.5A/gにおける比静電容量が140F/gである有機系スーパーキャパシタ電極材料として得る。
【実施例3】
【0032】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が100〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、35.7mLの、濃度が6mol/LのKOH溶液中に加え(石炭粉とKOHの質量比は1:4)、常温下で15時間攪拌した後、石炭粉とKOHの混合液を80℃で乾燥させて石炭粉とKOHの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から700℃まで昇温させ、昇温速度を8℃/minに制御し、700℃の温度で4h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を2mol//Lの希硝酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に80℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られた多孔質グラフェンについて構造および性能の特性評価を行い、実施例3の方法で調製された多孔質グラフェンを、電流密度0.5A/gにおける比静電容量が100F/gである有機系スーパーキャパシタ電極材料として得る。
【実施例4】
【0033】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が100〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、26.8mLの、濃度が6mol/LのKOH溶液中に加え(石炭粉とKOHの質量比は1:3)、常温下で36時間攪拌した後、石炭粉とKOHの混合液を200℃で乾燥させて石炭粉とKOHの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から900℃まで昇温させ、昇温速度を2℃/minに制御し、900℃の温度で4h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を2mol//Lの希塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に80℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。
【0034】
実施例1に記載の微孔グラフェン構造および性能試験方法を用いて、本実施例で得られた多孔質グラフェンを特性評価する。実施例4で得られた多孔質グラフェンの比表面積は2219m/gに達し、細孔容積は1.86m/gである。実施例4の方法で調製された多孔質グラフェンは、有機系スーパーキャパシタ電極材料として、電流密度0.5A/gにおける比静電容量が130F/gである。
【実施例5】
【0035】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が100〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g取り、17.8mLの、濃度が6mol/LのKOH溶液中に加え(石炭粉とKOHの質量比は1:2)、常温下で8時間攪拌した後、石炭粉とKOHの混合液を150℃で乾燥させて石炭粉とKOHの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から900℃まで昇温させ、昇温速度を2℃/minに制御し、900℃の温度で4h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を2mol//Lの希塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に80℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。
【0036】
実施例1に記載の微孔グラフェン構造および性能試験方法を用いて、本実施例で得られた多孔質グラフェンを特性評価する。実施例5で得られた多孔質グラフェンの比表面積は2009m/gに達し、細孔容積は1.47m/gである。実施例5の方法で調製された多孔質グラフェンは、スーパーキャパシタ電極材料として、電流密度0.5A/gにおける比静電容量が100F/gである。
【実施例6】
【0037】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が80〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g取り、8.9mLの、濃度が6mol/LのKOH溶液中に加え(石炭粉とKOHの質量比は1:1)、常温下で20時間攪拌した後、石炭粉とKOHの混合液を150℃で乾燥させて石炭粉とKOHの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から900℃まで昇温させ、昇温速度を5℃/minに制御し、900℃の温度で4h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を0.5mol//Lの希塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に80℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。
【0038】
実施例1に記載の微孔グラフェン構造および性能試験方法を用いて、本実施例で得られた多孔質グラフェンを特性評価する。実施例6で得られた多孔質グラフェンの比表面積は1885m/gに達し、細孔容積は1.43m/gである。実施例6の方法で調製された多孔質グラフェンは、スーパーキャパシタ電極材料として、電流密度0.5A/gにおける比静電容量が90F/gである。
【実施例7】
【0039】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が100〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、71.4mLの、濃度が3mol/LのKOH溶液中に加え(石炭粉とKOHの質量比は1:4)、常温下で10時間攪拌した後、石炭粉とKOHの混合液を200℃で乾燥させて石炭粉とKOHの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から600℃まで昇温させ、昇温速度を1℃/minに制御し、600℃の温度で6h恒温炭化させた後自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を2mol//Lの希塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に100℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は2071m/gであり、細孔容積は1.47cm/gである。
【実施例8】
【0040】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が80〜100メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、50mLの、濃度が6mol/LのNaOH溶液中に加え(石炭粉とNaOHの質量比は1:4)、常温下で15時間攪拌した後、石炭粉とNaOHの混合液を120℃で乾燥させて、石炭粉とNaOHの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から1000℃まで昇温させ、昇温速度を5℃/minに制御し、1000℃の温度で4h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を2mol//Lの希塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に80℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は2081m/gであり、細孔容積は1.57cm/gである。
【実施例9】
【0041】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が100〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、25mLの、濃度が6mol/LのNaOH溶液中に加え(石炭粉とNaOHの質量比は1:2)、常温下で24時間攪拌した後、石炭粉とNaOHの混合液を120℃で乾燥させて、石炭粉とNaOHの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から600℃まで昇温させ、昇温速度を10℃/minに制御し、600℃の温度で6h恒温炭化させた後自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を2mol//Lの硝酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に100℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は1061m/gであり、細孔容積は0.67cm/gである。
【実施例10】
【0042】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が80〜100メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、12mLの、濃度が6mol/LのNaOH溶液中に加え(石炭粉とNaOHの質量比は1:1)、常温下で24時間攪拌した後、石炭粉とNaOHの混合液を200℃で乾燥させて、石炭粉とNaOHの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から1100℃まで昇温させ、昇温速度を8℃/minに制御し、1100℃の温度で2h恒温炭化させた後、自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を0.5mol//Lの塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に80℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は756m/gであり、細孔容積は0.24cm/gである。
【実施例11】
【0043】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が60〜100メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、12mLの、濃度が6mol/LのNaOH溶液と、8.6mLの、濃度が6mol/LのKOH溶液の混合液中に加え(石炭粉とNaOH+KOHの質量比は1:2)、常温下で20時間攪拌した後、石炭粉と混合液を150℃で乾燥させて石炭粉と強アルカリの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から900℃まで昇温させ、昇温速度を8℃/minに制御し、900℃の温度で5h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を2mol//Lの塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に60℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は1021m/gであり、細孔容積は0.48cm/gである。
【実施例12】
【0044】
炭化過程の搬送ガスにおけるHの導入は、活性化過程のカリウム単体の発生量を高めることで細孔形成作用を高めることを期待できるほか、Hと表面ヘテロ原子の反応が多孔質グラフェンの純度を高めることができ、本実施形態/実施例は炭化雰囲気においてHを導入して多孔質グラフェンを調製する。ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が100〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、35.7mLの、濃度が6mol/LのKOH溶液中に加え(石炭粉とKOHの質量比は1:4)、常温下で24時間攪拌した後、石炭粉とKOHの混合液を200℃で乾燥させて石炭粉とKOHの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から800℃まで昇温させ、昇温速度を5℃/minに制御し、800℃の温度で6h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得、炭化過程の雰囲気は、5%のHと体積分率が90%のアルゴンガスとの混合ガスであり;得られた炭化生成物を2mol//Lの希塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に100℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は2003m/gであり、細孔容積は0.97cm/gである。
【実施例13】
【0045】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が80〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、50mLの、濃度が6mol/LのNaOH溶液中に加え(石炭粉とNaOHの質量比は1:4)、常温下で24時間攪拌した後、石炭粉とNaOHの混合液を100℃で乾燥させて、石炭粉とNaOHの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から900℃まで昇温させ、昇温速度を8℃/minに制御し、900℃の温度で4h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得、炭化過程の雰囲気は、50%のHと体積分率が50%のアルゴンガスとの混合ガスであり;得られた炭化生成物を2mol//Lの硝酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に100℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は1941m/gであり、細孔容積は1.01cm/gである。
【実施例14】
【0046】
炭化過程の搬送ガスにおけるNHの導入は、窒素ドープ多孔質グラフェンを調製することを期待することができ、ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が80〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、12mLの、濃度が6mol/LのNaOH溶液と、8.6mLの、濃度が6mol/LのKOH溶液の混合液中に加え(石炭粉とNaOH+KOHの質量比は1:2)、常温下で15時間攪拌した後、石炭粉と混合液を120℃で乾燥させて溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から900℃まで昇温させ、昇温速度を8℃/minに制御し、900℃の温度で4h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得、炭化過程の雰囲気は、50%のNHと体積分率が50%のアルゴンガスとの混合ガスであり;得られた炭化生成物を2mol//Lの塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に100℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は1051m/gであり、細孔容積は0.45cm/gである。
【実施例15】
【0047】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が80〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、24mLの、濃度が6mol/LのNaOH溶液と、17.2mLの、濃度が6mol/LのKOH溶液の混合液中に加え(石炭粉とNaOH+KOHの質量比は1:4)、常温下で20時間攪拌した後、石炭粉と混合液を200℃で乾燥させて溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から1200℃まで昇温させ、昇温速度を8℃/minに制御し、1200℃の温度で4h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得、炭化過程の雰囲気は10%のNHと体積分率が90%のアルゴンガスとの混合ガスであり;得られた炭化生成物を2mol//Lの塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に80℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は1081m/gであり、細孔容積は0.64cm/gである。
【実施例16】
【0048】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が60〜100メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、60mLの、濃度が6mol/LのNaOH溶液と、43mLの、濃度が6mol/LのKOH溶液の混合液中に加え(石炭粉とNaOH+KOHの質量比は1:10)、常温下で20時間攪拌した後、石炭粉と混合液を150℃で乾燥させて石炭粉と強アルカリの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から900℃まで昇温させ、昇温速度を0.1℃/minに制御し、900℃の温度で1h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を2mol//Lの塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に50℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は1061m/gであり、細孔容積は0.49cm/gである。
【実施例17】
【0049】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が80〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、600μLの、濃度が6mol/LのNaOH溶液と、430μLの、濃度が6mol/LのKOH溶液の混合液に加え(石炭粉とNaOH+KOHの質量比は1:0.1)、常温下で20時間攪拌した後、石炭粉と混合液を150℃で乾燥させて石炭粉と強アルカリの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から1000℃まで昇温させ、昇温速度を15℃/minに制御し、1000℃の温度で10h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を2mol//Lの塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に200℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は92m/gであり、細孔容積は0.05cm/gである。
【0050】
[実施例の効果]
ラマンスペクトル、透過型電子顕微鏡、N吸着、X線光電子分光(XPS)スペクトル、X線回折(XRD)等の手段を用いて、実施例で得られる微孔グラフェン材料のグラファイト化度、ミクロモルホロジーおよび細孔構造パラメータについて詳細に特性評価する。詳細な分析は次の通りである。
【0051】
図1(a)および(b)はそれぞれ、実施例1で得られる微孔グラフェンのラマンスペクトルデータおよび透過型電子顕微鏡画像である。ラマンスペクトルにおける明確な2Dピークは、本実施例で合成された微孔グラフェンの内部に大量の単層または多層グラフェン構造単位が含まれていることを示しており;さらに、TEM画像から、微孔グラフェンは主に大量の単層ガーゼ状のグラフェンシート層構造からなり、無作為に配列されたこれらのグラフェンシート層構造内に、孔径が約2nmの微孔が高密度に分布していることが分かる。
【0052】
図2(a)、(b)中の実施例1、2、3で得られる微孔グラフェンの吸着等温線および孔径分布曲線は、本発明で得られる微孔グラフェンの比表面積が3345m/gであり、細孔容積は1.7cm/gであり、孔径の分布が狭く、主に1〜2nmの間にある。
【0053】
図3は実施例1で得られる多孔質グラフェン空気雰囲気下での熱重量曲線であり、その重量減少ピークが500〜600℃の間に集中しており、ヘテロ原子含有量が多い従来の活性炭の焼失温度よりも高く、かつ炭素構造の純度がより高いことが分かる。
【0054】
図4(a)、(b)は実施例1で得られる多孔質グラフェンのX線光電子分光(XPS)分析の結果であり、得られる多孔質グラフェンの炭素含有量が多く、酸素信号が相対的に弱いことが分かり、図4(b)におけるC1sのピーク分離結果は、SPがメインであり、酸素含有官能基が占める比率が低いことを示しており、さらに、XPS元素分析の結果は、実施例1で得られる多孔質グラフェンの炭素含有量が98.25%にまで達することを示しており、本発明の方法で得られる多孔質グラフェンの高い炭素構造純度を十分に証明しており、電気化学反応において高いサイクル安定性を有する。
【0055】
図5は、実施例1で得られる多孔質グラフェンのX線回折パターン(XRD)であり、小さい角度の高強度回折が、高度に発達した細孔構造を証明しており、明確な(002)ピークがグラフェン構造の存在を証明している。
【0056】
実施例で得られる多孔質グラフェンを水系スーパーキャパシタ材料とし、下記のテストを採用して性能を試験する:微孔グラフェン材料、カーボンブラック、およびPTFE乳液を8:1:1の比率で無水エタノールに加えて研磨して自立薄膜を形成し、切断品質が完全に同じ(1〜2mgの作用)である2枚の膜が乳鉢の中で押し伸ばされて、面積が約1cmのシート状電極シートとなり、ニッケルフォーム集電体上で押圧されて静電容量性能試験の電極シートとなる。電極シートは、120℃、真空の環境で12h加熱乾燥して使用に備える。6M KOHと1M HSOの電解液、飽和カロメル電極およびAg/AgCl電極をリファレンスとし、Ptシートがペア電極であり、三電極系でのサイクリックボルタンメトリー特性曲線および定電流充放電曲線を試験する。ここで、多孔質グラフェン材料の比容量Cの計算方法は次の通りである:C=IΔt/mΔV、ここで、Iは放電流密度であり;Δtは1回の放電時間であり;mは正極電極シートに含まれる活性材料の多孔質グラフェンの質量であり;ΔVは、電圧ドロップIRdropを差し引いた後の放電圧範囲である。
【0057】
ここで、図6は、実施例1で得られる多孔質グラフェンの、6M KOH電解液系におけるスーパーキャパシタンス性能の結果である。本発明で得られる多孔質グラフェンは6M KOH系において、高い比静電容量、速度能力、およびサイクル安定性を有することが分かる。図6(a)中のサイクリックボルタンメトリー特性曲線は、高い走査速度500mV/sの下でも良好な矩形静電容量行為を保っていることを示しており;1A/gの電流密度における比静電容量は350F/gに達することが可能であり、極めて高い100A/gの電流密度における比静電容量も200F/g近くあり;図6(d)中の5A/gのサイクル安定性曲線は、10000回のサイクルの後、容量がほとんど減衰していないことを示している。
【0058】
ここで、図7は、実施例1で得られる多孔質グラフェンの、1M HSO電解液系におけるスーパーキャパシタンス性能の結果である。本発明で得られる多孔質グラフェンは、1M HSO系において、高い比静電容量、速度能力、およびサイクル安定性を有することが分かり:図7(a)中のサイクリックボルタンメトリー特性曲線は、高い走査速度500mV/sの下でも良好な矩形静電容量行為を保っていることを示しており;0.5A/gの電流密度における比静電容量は350F/gに達することが可能であり、極めて高い100A/gの電流密度における比静電容量も200F/g近くあり;図7(d)中の5A/gのサイクル安定性曲線は、10000回のサイクルの後、容量がほとんど減衰していないことを示している。
【0059】
実施例で得られる微孔グラフェンを有機系電気二重層スーパーキャパシタンス電極材料とし、下記のテストを採用して性能を試験する:微孔グラフェン材料、カーボンブラック、およびPTFE乳液を8:1:1の比率で無水エタノールに加えて研磨して自立薄膜を形成し、切断品質が完全に同じ(1〜2mgの作用)である2枚の薄膜が乳鉢の中で押し伸ばされて、面積が約1cm2のシート状電極シートとなり、炭素被覆アルミニウム箔集電体上で押圧されて静電容量性能試験の電極シートとなる。電極シートは、120℃、真空の環境で12h加熱乾燥して使用に備える。これにより形成される2つの同じ電極シートは、1mol/LのETNBF/PCを電解液とし、Celgard(登録商標)3501イオン多孔膜をセパレータとして組み立ててボタン電池にし、その有機系スーパーキャパシタンス定電流充放電性能を試験する。微孔グラフェン材料の比容量Cの計算方法は次の通りである:2IΔt/mΔV、ここで、Iは放電流密度であり;Δtは1回の放電時間であり;mは1つの電極シートの活性材料の質量であり;ΔVは、電圧ドロップIRdropを差し引いた後の放電圧範囲である。
【0060】
ここで、図8は、実施例1で得られる多孔質グラフェンの、商用電解液1mol/L ETNBF/PCのスーパーキャパシタンス性能の結果である。図8(a)から、本発明で得られる多孔質グラフェンの、1Mol/L ETNBF/PC系における電位窓は4Vに達することが可能でありかつ明確な分極がないことが分かり;3.5Vの動作電圧下で、充放電流密度が0.5A/gであるとき、実施例1で得られる多孔質グラフェンの比静電容量は176F/gに達することが可能であり、2A/gの電流密度下で10000回のサイクル充放電を経た後にも96%の容量を有しており、構成して得られるスーパーキャパシタのエネルギー密度が最高97.2Wh/kgに達することが可能であり、現在の市場における活性炭ベースの商用スーパーキャパシタよりもはるかに高い。
【0061】
実施例で得られる多孔質グラフェンをリチウムイオンスーパーキャパシタの正極材料とし、金属リチウムシートを負極として半電池を構成し、リチウムイオンスーパーキャパシタンスの性能を試験する。具体的には下記のテスト過程を採用する:微孔グラフェン材料、カーボンブラック、およびPTFE乳液(質量分数60%)を8:1:1の比率で無水エタノールに加えて研磨して自立薄膜を形成し、切断品質が1mg前後の薄膜が乳鉢の中で押し伸ばされて、面積が約1cmのシート状電極シートとなり、炭素被覆アルミニウム箔集電体上で押圧されて正極材料性能試験の電極シートとなる。電極シートは、120℃、真空の環境で12h加熱乾燥して使用に備える。1M LiPF(1:1のEC−DMCを溶媒とする)を電解液とし、Whatmanのガラス繊維膜をセパレータとして構成され、金属リチウムシートを負極としてボタン電池を構成し、そのサイクリックボルタンメトリー特性曲線および定静電容量定電流充放電曲線を試験する。ここで、多孔質グラフェン材料の比容量Cの計算方法は次の通りである:C=IΔt/mΔV、ここで、Iは放電流密度であり;Δtは1回の放電時間であり;mは正極電極シートに含まれる活性材料の多孔質グラフェンの質量であり;ΔVは、電圧ドロップIRdropを差し引いた後の放電圧範囲である。
【0062】
ここで、図9は、実施例1で得られる多孔質グラフェンがリチウムイオンスーパーキャパシタの正極材料となる場合の電気化学的性能のデータであり、2.8〜4.2V(vs Li/Li)の動作電圧下で異なる電流密度下の定電流充放電曲線および2A/g下の長サイクル性能曲線を含む。充放電性能曲線および速度能力は次のことを示している:電流密度が0.5A/gであるとき、実施例1で調製された多孔質グラフェンの比静電容量が182F/gに達することが可能であり、2A/gの電流密度下で5000回のサイクル充放電を経た後にも95%以上の容量を保っている。
【0063】
実施例で得られる多孔質グラフェンを吸着剤とし、重量吸着法を採用して、メタンに対する吸着等温線を試験し、多孔質グラフェンのメタン貯蔵性能を得る。図10に示すのは、実施例1で得られる多孔質グラフェンのメタン吸着等温線である。本発明の方法で調製して得られる多孔質グラフェンは優れたメタン貯蔵性能を有しており:90bar前後の圧力下で、20%を上回る重量貯蔵比を得ることができることが分かる。
【0064】
実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンをリチウムイオン電池の負極材料とし、その性能試験方法は次の通りである:リチウムシートをペア電極とし、多孔質グラフェンを作用電極の活性物質とし、CR2032ボタン電池を組み立て、リチウムイオン電池の負極材料としての性能を試験する。そのうち作用電極の調製方法は次の通りである:窒素ドープ多孔質グラフェン、カーボンブラック、およびPVDFを7:1.5:1.5の質量比でNMPに溶かして研磨して均一なスラリーにした後、スラリーを銅箔に塗布して80℃下の真空で12h加熱乾燥して作用電極の電極シートを得る。加熱乾燥された電極シートが円形シート状に切断され、活性物質の密度を0.5〜1mgcm−2に保ち、グローブボックス内で新鮮なリチウムシートと組み立てられてボタン電池となり、電解液は1M LiPF(溶媒はエチレンカーボネートとジエチルカーボネートが1:1)であり、Whatmanのガラス繊維膜がセパレータである。0.01〜3.0Vvs.Li/Liの電圧範囲内における電池のサイクリックボルタンメトリー特性曲線および定静電容量定電流充放電曲線を試験する。
【0065】
ここで、図11は、実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンからなるリチウムイオン電池の、0.2mVs−1の走査速度におけるサイクリックボルタンメトリー特性曲線であり、典型的な炭素材料の特徴を具体的に示しており、第1サイクル容量が大きく、2回のサイクルを経てから安定を保ち、これは、SEI層が形成されたためである。
【0066】
ここで、図12は、実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンからなるリチウムイオン電池の、0.2Ag−1の電流密度における定電流充放電曲線であり、図11中のサイクリックボルタンメトリー曲線に対応しており、第1サイクル放電容量は1814mAhg−1に達することが可能であり、50回のサイクルを経た後、容量は690mAhg−1で安定し、商用グラファイト材料の2倍前後である。
【0067】
ここで、図13は、実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンの速度能力曲線であり、実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンは優れた速度能力を示しており、低い電流密度0.1Ag−1で830mAhg−1の放電容量を有しており、高い電流密度5Ag−1でも293mAhg−1の放電容量を有する。
【0068】
は、実施例1〜17で得られる多孔質グラフェンNの吸着細孔構造のパラメータおよびX線光電子分光(XPS)元素分析の結果であり、温度、炭化時間、攪拌時間、昇温速度、原料比、および炭化雰囲気等の多孔質グラファイト合成過程のパラメータを変化させて、得られる多孔質グラフェンの細孔構造および表面化学特性を著しく変化させられることが分かる。
【0069】
【表3】
【0070】
以上から、該調製方法は、石炭粉と活性化溶液の、浸漬乾燥−高温活性化−酸洗および水洗後の乾燥という3つのステップを経れば、本発明に記載の微孔グラフェン材料を得ることができることが分かる。ここで、高温活性化過程では、褐炭内部の小分子の炭化水素化合物および大部分のアモルファス構造が熱分解されて再構成され;この過程で、褐炭構造の内部に存在する、触媒グラファイト化作用を有するMg、Ca等の金属触媒褐炭内に固有のグラファイト様微結晶またはシート層構造が、単層または多層グラフェン構造へ変換され;同時に、活性化剤が高温の条件下で、グラフェンシート層構造に対するエッチングによって豊富な微孔構造を形成する。活性化完了後に、残った活性化剤を洗浄することによって、本発明に記載の、大量の微孔分布を有するグラフェン材料を得られることは、もちろん、高温活性化過程の褐炭構造の熱分解、再構成および細孔形成プロセスで影響を生じる要因がいずれも、最終的に形成される目標生成物である多孔質グラフェンのモルホロジー、細孔構造および炭素構造の純度に影響をもたらし得る。
【0071】
理解しなければならないのは、以上の部分の実施例の説明は、本発明の方法およびその中核的思想を理解するのを助けるためにのみ用いられるという点である。当業者にとっては、本発明の原理から逸脱しない前提の下、本発明に若干の改良と修飾を加えることも可能であり、これらの改良と修飾も、本発明の特許請求の範囲の保護範囲内に収まることを指摘しておかなければならない。
図1
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