【実施例17】
【0049】
ボールミルにかけてふるい分けた後の粒径が80〜200メッシュの褐炭石炭粉を3g秤量し、600μLの、濃度が6mol/LのNaOH溶液と、430μLの、濃度が6mol/LのKOH溶液の混合液に加え(石炭粉とNaOH+KOHの質量比は1:0.1)、常温下で20時間攪拌した後、石炭粉と混合液を150℃で乾燥させて石炭粉と強アルカリの溶融混合物を得;溶融混合物を管状炉内に配置して昇温炭化させ:室温から1000℃まで昇温させ、昇温速度を15℃/minに制御し、1000℃の温度で10h恒温活性化した後、自然降温させて炭化生成物を得;得られた炭化生成物を2mol//Lの塩酸で2〜3回洗浄し、さらに脱イオン水で2〜3回洗浄し、最後に200℃で乾燥させ、目標生成物である多孔質グラフェンを得る。本実施例で得られる微孔グラフェンの比表面積は92m
2/gであり、細孔容積は0.05cm
3/gである。
【0050】
[実施例の効果]
ラマンスペクトル、透過型電子顕微鏡、N
2吸着、X線光電子分光(XPS)スペクトル、X線回折(XRD)等の手段を用いて、実施例で得られる微孔グラフェン材料のグラファイト化度、ミクロモルホロジーおよび細孔構造パラメータについて詳細に特性評価する。詳細な分析は次の通りである。
【0051】
図1(a)および(b)はそれぞれ、実施例1で得られる微孔グラフェンのラマンスペクトルデータおよび透過型電子顕微鏡画像である。ラマンスペクトルにおける明確な2Dピークは、本実施例で合成された微孔グラフェンの内部に大量の単層または多層グラフェン構造単位が含まれていることを示しており;さらに、TEM画像から、微孔グラフェンは主に大量の単層ガーゼ状のグラフェンシート層構造からなり、無作為に配列されたこれらのグラフェンシート層構造内に、孔径が約2nmの微孔が高密度に分布していることが分かる。
【0052】
図2(a)、(b)中の実施例1、2、3で得られる微孔グラフェンの吸着等温線および孔径分布曲線は、本発明で得られる微孔グラフェンの比表面積が3345m
2/gであり、細孔容積は1.7cm
3/gであり、孔径の分布が狭く、主に1〜2nmの間にある。
【0053】
図3は実施例1で得られる多孔質グラフェン空気雰囲気下での熱重量曲線であり、その重量減少ピークが500〜600℃の間に集中しており、ヘテロ原子含有量が多い従来の活性炭の焼失温度よりも高く、かつ炭素構造の純度がより高いことが分かる。
【0054】
図4(a)、(b)は実施例1で得られる多孔質グラフェンのX線光電子分光(XPS)分析の結果であり、得られる多孔質グラフェンの炭素含有量が多く、酸素信号が相対的に弱いことが分かり、
図4(b)におけるC1sのピーク分離結果は、SP
2がメインであり、酸素含有官能基が占める比率が低いことを示しており、さらに、XPS元素分析の結果は、実施例1で得られる多孔質グラフェンの炭素含有量が98.25%にまで達することを示しており、本発明の方法で得られる多孔質グラフェンの高い炭素構造純度を十分に証明しており、電気化学反応において高いサイクル安定性を有する。
【0055】
図5は、実施例1で得られる多孔質グラフェンのX線回折パターン(XRD)であり、小さい角度の高強度回折が、高度に発達した細孔構造を証明しており、明確な(002)ピークがグラフェン構造の存在を証明している。
【0056】
実施例で得られる多孔質グラフェンを水系スーパーキャパシタ材料とし、下記のテストを採用して性能を試験する:微孔グラフェン材料、カーボンブラック、およびPTFE乳液を8:1:1の比率で無水エタノールに加えて研磨して自立薄膜を形成し、切断品質が完全に同じ(1〜2mgの作用)である2枚の膜が乳鉢の中で押し伸ばされて、面積が約1cm
2のシート状電極シートとなり、ニッケルフォーム集電体上で押圧されて静電容量性能試験の電極シートとなる。電極シートは、120℃、真空の環境で12h加熱乾燥して使用に備える。6M KOHと1M H
2SO
4の電解液、飽和カロメル電極およびAg/AgCl電極をリファレンスとし、Ptシートがペア電極であり、三電極系でのサイクリックボルタンメトリー特性曲線およ
び定電流充放電曲線を試験する。ここで、多孔質グラフェン材料の比容量Cの計算方法は次の通りである:C=IΔt/mΔV、ここで、Iは放電流密度であり;Δtは1回の放電時間であり;mは正極電極シートに含まれる活性材料の多孔質グラフェンの質量であり;ΔVは、電圧ドロップIR
dropを差し引いた後の放電圧範囲である。
【0057】
ここで、
図6は、実施例1で得られる多孔質グラフェンの、6M KOH電解液系におけるスーパーキャパシタンス性能の結果である。本発明で得られる多孔質グラフェンは6M KOH系において、高い比静電容量、速度能力、およびサイクル安定性を有することが分かる。
図6(a)中のサイクリックボルタンメトリー特性曲線は、高い走査速度500mV/sの下でも良好な矩形静電容量行為を保っていることを示しており;1A/gの電流密度における比静電容量は350F/gに達することが可能であり、極めて高い100A/gの電流密度における比静電容量も200F/g近くあり;
図6(d)中の5A/gのサイクル安定性曲線は、10000回のサイクルの後、容量がほとんど減衰していないことを示している。
【0058】
ここで、
図7は、実施例1で得られる多孔質グラフェンの、1M H
2SO
4電解液系におけるスーパーキャパシタンス性能の結果である。本発明で得られる多孔質グラフェンは、1M H
2SO
4系において、高い比静電容量、速度能力、およびサイクル安定性を有することが分かり:
図7(a)中のサイクリックボルタンメトリー特性曲線は、高い走査速度500mV/sの下でも良好な矩形静電容量行為を保っていることを示しており;0.5A/gの電流密度における比静電容量は350F/gに達することが可能であり、極めて高い100A/gの電流密度における比静電容量も200F/g近くあり;
図7(d)中の5A/gのサイクル安定性曲線は、10000回のサイクルの後、容量がほとんど減衰していないことを示している。
【0059】
実施例で得られる微孔グラフェンを有機系電気二重層スーパーキャパシタンス電極材料とし、下記のテストを採用して性能を試験する:微孔グラフェン材料、カーボンブラック、およびPTFE乳液を8:1:1の比率で無水エタノールに加えて研磨して自立薄膜を形成し、切断品質が完全に同じ(1〜2mgの作用)である2枚の薄膜が乳鉢の中で押し伸ばされて、面積が約1cm2のシート状電極シートとなり、炭素被覆アルミニウム箔集電体上で押圧されて静電容量性能試験の電極シートとなる。電極シートは、120℃、真空の環境で12h加熱乾燥して使用に備える。これにより形成される2つの同じ電極シートは、1mol/LのET
4NBF
4/PCを電解液とし、Celgard(登録商標)3501イオン多孔膜をセパレータとして組み立ててボタン電池にし、その有機系スーパーキャパシタンス定電流充放電性能を試験する。微孔グラフェン材料の比容量Cの計算方法は次の通りである:2IΔt/mΔV、ここで、Iは放電流密度であり;Δtは1回の放電時間であり;mは1つの電極シートの活性材料の質量であり;ΔVは、電圧ドロップIR
dropを差し引いた後の放電圧範囲である。
【0060】
ここで、
図8は、実施例1で得られる多孔質グラフェンの、商用電解液1mol/L ET
4NBF
4/PCのスーパーキャパシタンス性能の結果である。
図8(a)から、本発明で得られる多孔質グラフェンの、1Mol/L ET
4NBF
4/PC系における電位窓は4Vに達することが可能でありかつ明確な分極がないことが分かり;3.5Vの動作電圧下で、充放電流密度が0.5A/gであるとき、実施例1で得られる多孔質グラフェンの比静電容量は176F/gに達することが可能であり、2A/gの電流密度下で10000回のサイクル充放電を経た後にも96%の容量を有しており、構成して得られるスーパーキャパシタのエネルギー密度が最高97.2Wh/kgに達することが可能であり、現在の市場における活性炭ベースの商用スーパーキャパシタよりもはるかに高い。
【0061】
実施例で得られる多孔質グラフェンをリチウムイオンスーパーキャパシタの正極材料とし、金属リチウムシートを負極として半電池を構成し、リチウムイオンスーパーキャパシタンスの性能を試験する。具体的には下記のテスト過程を採用する:微孔グラフェン材料、カーボンブラック、およびPTFE乳液(質量分数60%)を8:1:1の比率で無水エタノールに加えて研磨して自立薄膜を形成し、切断品質が1mg前後の薄膜が乳鉢の中で押し伸ばされて、面積が約1cm
2のシート状電極シートとなり、炭素被覆アルミニウム箔集電体上で押圧されて正極材料性能試験の電極シートとなる。電極シートは、120℃、真空の環境で12h加熱乾燥して使用に備える。1M LiPF
6(1:1のEC−DMCを溶媒とする)を電解液とし、Whatmanのガラス繊維膜をセパレータとして構成され、金属リチウムシートを負極としてボタン電池を構成し、そのサイクリックボルタンメトリー特性曲線および定静電容量定電流充放電曲線を試験する。ここで、多孔質グラフェン材料の比容量Cの計算方法は次の通りである:C=IΔt/mΔV、ここで、Iは放電流密度であり;Δtは1回の放電時間であり;mは正極電極シートに含まれる活性材料の多孔質グラフェンの質量であり;ΔVは、電圧ドロップIR
dropを差し引いた後の放電圧範囲である。
【0062】
ここで、
図9は、実施例1で得られる多孔質グラフェンがリチウムイオンスーパーキャパシタの正極材料となる場合の電気化学的性能のデータであり、2.8〜4.2V(vs Li/Li
+)の動作電圧下で異なる電流密度下の定電流充放電曲線および2A/g下の長サイクル性能曲線を含む。充放電性能曲線および速度能力は次のことを示している:電流密度が0.5A/gであるとき、実施例1で調製された多孔質グラフェンの比静電容量が182F/gに達することが可能であり、2A/gの電流密度下で5000回のサイクル充放電を経た後にも95%以上の容量を保っている。
【0063】
実施例で得られる多孔質グラフェンを吸着剤とし、重量吸着法を採用して、メタンに対する吸着等温線を試験し、多孔質グラフェンのメタン貯蔵性能を得る。
図10に示すのは、実施例1で得られる多孔質グラフェンのメタン吸着等温線である。本発明の方法で調製して得られる多孔質グラフェンは優れたメタン貯蔵性能を有しており:90bar前後の圧力下で、20%を上回る重量貯蔵比を得ることができることが分かる。
【0064】
実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンをリチウムイオン電池の負極材料とし、その性能試験方法は次の通りである:リチウムシートをペア電極とし、多孔質グラフェンを作用電極の活性物質とし、CR2032ボタン電池を組み立て、リチウムイオン電池の負極材料としての性能を試験する。そのうち作用電極の調製方法は次の通りである:
窒素ドープ多孔質
グラフェン、カーボンブラック、およびPVDFを7:1.5:1.5の質量比でNMPに溶かして研磨して均一なスラリーにした後、スラリーを銅箔に塗布して80℃下の真空で12h加熱乾燥して作用電極の電極シートを得る。加熱乾燥された電極シートが円形シート状に切断され、活性物質の密度を0.5〜1mgcm
−2に保ち、グローブボックス内で新鮮なリチウムシートと組み立てられてボタン電池となり、電解液は1M LiPF
6(溶媒はエチレンカーボネートとジエチルカーボネートが1:1)であり、Whatmanのガラス繊維膜がセパレータである。0.01〜3.0Vvs.Li/Li
+の電圧範囲内における電池のサイクリックボルタンメトリー特性曲線および定静電容量定電流充放電曲線を試験する。
【0065】
ここで、
図11は、実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンからなるリチウムイオン電池の、0.2mVs
−1の走査速度におけるサイクリックボルタンメトリー特性曲線であり、典型的な炭素材料の特徴を具体的に示しており、第1サイクル容量が大きく、2回のサイクルを経てから安定を保ち、これは、SEI層が形成されたためである。
【0066】
ここで、
図12は、実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンからなるリチウムイオン電池の、0.2Ag
−1の電流密度における定電流充放電曲線であり、図
11中のサイクリックボルタンメトリー曲線に対応しており、第1サイクル放電容量は1814mAhg
−1に達することが可能であり、50回のサイクルを経た後、容量は690mAhg
−1で安定し、商用グラファイト材料の2倍前後である。
【0067】
ここで、
図13は、実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンの速度能力曲線であり、実施例14で得られる窒素ドープ多孔質グラフェンは優れた速度能力を示しており、低い電流密度0.1Ag
−1で830mAhg
−1の放電容量を有しており、高い電流密度5Ag
−1でも293mAhg
−1の放電容量を有する。
【0068】
表
3は、実施例1〜17で得られる多孔質グラフェンN
2の吸着細孔構造のパラメータおよびX線光電子分光(XPS)元素分析の結果であり、温度、炭化時間、攪拌時間、昇温速度、原料比、および炭化雰囲気等の多孔質グラファイト合成過程のパラメータを変化させて、得られる多孔質グラフェンの細孔構造および表面化学特性を著しく変化させられることが分かる。
【0069】
【表3】
【0070】
以上から、該調製方法は、石炭粉と活性化溶液の、浸漬乾燥−高温活性化−酸洗および水洗後の乾燥という3つのステップを経れば、本発明に記載の微孔グラフェン材料を得ることができることが分かる。ここで、高温活性化過程では、褐炭内部の小分子の炭化水素化合物および大部分のアモルファス構造が熱分解されて再構成され;この過程で、褐炭構造の内部に存在する、触媒グラファイト化作用を有するMg、Ca等の金属触媒褐炭内に固有のグラファイト様微結晶またはシート層構造が、単層または多層グラフェン構造へ変換され;同時に、活性化剤が高温の条件下で、グラフェンシート層構造に対するエッチングによって豊富な微孔構造を形成する。活性化完了後に、残った活性化剤を洗浄することによって、本発明に記載の、大量の微孔分布を有するグラフェン材料を得られることは、もちろん、高温活性化過程の褐炭構造の熱分解、再構成および細孔形成プロセスで影響を生じる要因がいずれも、最終的に形成される目標生成物である多孔質グラフェンのモルホロジー、細孔構造および炭素構造の純度に影響をもたらし得る。
【0071】
理解しなければならないのは、以上の部分の実施例の説明は、本発明の方法およびその中核的思想を理解するのを助けるためにのみ用いられるという点である。当業者にとっては、本発明の原理から逸脱しない前提の下、本発明に若干の改良と修飾を加えることも可能であり、これらの改良と修飾も、本発明の特許請求の範囲の保護範囲内に収まることを指摘しておかなければならない。