特許第6682567号(P6682567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘンケルジャパン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682567
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】酸化染毛剤又は毛髪脱色剤の第1剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/362 20060101AFI20200406BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20200406BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A61K8/362
   A61Q5/10
   A61Q5/08
   A61K8/92
   A61K8/19
   A61K8/41
   A61K8/86
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-68684(P2018-68684)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-178104(P2019-178104A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】松谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】永渕 章子
(72)【発明者】
【氏名】町田 昌治
(72)【発明者】
【氏名】高田 耕二
(72)【発明者】
【氏名】宮本 麻生
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0246094(US,A1)
【文献】 特表2004−519446(JP,A)
【文献】 特開2017−088579(JP,A)
【文献】 特開2011−063588(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0021601(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0202763(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/86
A61K 8/362
A61K 8/19
A61K 8/41
A61K 8/92
A61Q 5/08
A61Q 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒドロキシル基を有しない多価カルボン酸又はその塩;
(B)(B1)カチオン界面活性剤及び(B2)非イオン界面活性剤を含む界面活性剤;
(C)油性成分;
(D)アルカリ剤(但し、モノエタノールアミンは除く。);及び

を含有する乳化物である、酸化染毛剤又は毛髪脱色剤の第1剤であって、
成分(A)を0.01〜3重量%の量で含有し、
成分(B)を1〜15重量%の量で含有し、
成分(C)として、常温で液体であるもの(CL)及び常温で固体の高級アルコール(C1)を含有し、
成分(C1)に対する成分(C)全体の重量比(C)/(C1)が1.1〜3である第1剤。
【請求項2】
前記ヒドロキシル基を有しない多価カルボン酸がコハク酸、マレイン酸及びフマル酸から成る群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載の第1剤。
【請求項3】
成分(A)に対する成分(B)の重量比(B)/(A)が3〜100である請求項1又は2に記載の第1剤。
【請求項4】
成分(B1)に対する成分(B2)の重量比(B2)/(B1)が1〜10である請求項1〜のいずれか一項に記載の第1剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化性の染毛剤又は毛髪脱色剤に関し、特に、これらの第1剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ剤、酸化剤等の共存下での酸化反応によって毛髪を染色ないし脱色する、酸化性の染毛剤又は毛髪脱色剤は広く使用されている。酸化性の染毛剤又は毛髪脱色剤は、一般に、アルカリ剤を含む組成物である第1剤と酸化剤を含む組成物である第2剤とを有し、使用直前に両者が混合される。
【0003】
酸化染毛剤の第1剤は更に酸化染料を含有する。酸化染毛剤の第1剤及び第2剤が混合されると、酸化染料は酸化されて発色し、毛髪が染色される。他方、毛髪脱色剤の第1剤は染料を含有しない。毛髪脱色剤の第1剤及び第2剤が混合されると酸素を発生し、この酸素により毛髪中のメラニンを分解することで脱色される。
【0004】
アルカリ剤及び酸化剤は毛髪組織に作用して色素の脱離及び染料の浸入を促進する。そのため、酸化性の染毛剤又は毛髪脱色剤は毛髪を傷めることがある。毛髪の傷みを防止して、染毛後の毛髪にもまとまり感及びハリ・コシ感を維持するため、従来からカチオン性ポリマーが使用されてきた(例えば、特許文献1)。しかしながら、十分な効果を得るためには相当量のカチオン性ポリマーを配合する必要があり、酸化染毛剤又は毛髪脱色剤の粘度が高くなり、塗布時に伸び難くなり、毛髪に均一に塗布することが困難になる。更に、髪質によっては硬さやきしみを感じることもある。
【0005】
特許文献2には、コハク酸を配合し、毛髪の延伸時のキューティクルの剥離を抑制し、仕上がりのツヤ、まとまり性を向上しうる毛髪化粧料が記載されている。毛髪化粧料として、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパックが記載されている。しかしながら、ここには染毛剤又は毛髪脱色剤は記載されていない。
【0006】
ヘアリンス等の毛髪化粧料は、毛髪の全体に付着させ、毛髪の全体に浸透させる毛髪処理剤である。これに対し、染毛剤又は毛髪脱色剤は、色の調節が必要な部分に選択的に適用されるものである。毛髪化粧料には塗り分けを可能にする塗布性が必要とされないのに対し、染毛剤又は毛髪脱色剤には、毛髪の必要部分にのみ塗布し易いという良好な塗布操作性が必要とされる点で、両者は特性を異にする毛髪処理剤である。ここで、良好な塗布操作性とは、粘りがあるために垂れにくく、それでいて伸びがよいため、毛髪の必要部分にのみ均一に塗布しやすい特性をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−23023号公報
【特許文献2】特開2017−88579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、酸化染毛剤又は毛髪脱色剤を使用して染毛又は毛髪脱色を行った後の毛髪にまとまり易さ及びしなやかさを付与することができる、酸化染毛剤又は毛髪脱色剤の第1剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)ヒドロキシル基を有しない多価カルボン酸又はその塩;
(B)(B1)カチオン界面活性剤及び(B2)非イオン界面活性剤を含む界面活性剤;
(C)油性成分;及び
(D)アルカリ剤;
を含有する、酸化染毛剤又は毛髪脱色剤の第1剤を提供する。
【0010】
ある一形態においては、前記ヒドロキシル基を有しない多価カルボン酸がコハク酸、マレイン酸及びフマル酸から成る群から選択される少なくとも一種である。
【0011】
ある一形態においては、染毛剤第1剤全体に対して0.01〜3質量%の前記ヒドロキシル基を有しない多価カルボン酸を含有する。
【0012】
ある一形態においては、成分(A)に対する成分(B)の重量比(B)/(A)が3〜100である。
【0013】
ある一形態においては、上記いずれかの第1剤は、成分(C)として、染毛剤第1剤全体に対して2〜12質量%の常温で固体の高級アルコール(C1)を含有する。
【0014】
また、本発明は、上記いずれかの第1剤と、酸化剤を含有する酸化染毛剤又は毛髪脱色剤の第2剤とを、有する酸化染毛剤又は毛髪脱色剤を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、酸化染毛剤又は毛髪脱色剤を使用して染毛又は毛髪脱色を行った後の毛髪にまとまり易さ及びしなやかさを付与することができ、また、塗布操作性に優れた酸化染毛剤又は毛髪脱色剤の第1剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、各成分の具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本明細書において文言「染毛剤」は、第1剤及び第2剤を有する酸化染毛剤又は毛髪脱色剤を意味する。
【0017】
(成分(A):ヒドロキシル基を有しない多価カルボン酸又はその塩)
多価カルボン酸は複数のカルボキシル基を有する化合物である。多価カルボン酸は脂肪族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸及び芳香族多価カルボン酸のいずれでもよい。多価カルボン酸は実質的に特定の分子量を有する化合物であり、ポリマーは含まれない。多価カルボン酸はヒドロキシル基を有しないものである。ヒドロキシル基を有する多価カルボン酸を使用すると、毛髪のまとまりやすさ及びしなやかさ、塗布操作性の点で不十分である。多価カルボン酸は2〜16個、好ましくは2〜10個、より好ましくは3〜6個の炭素原子を有する。
【0018】
ここで用いられる多価カルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ドデカンジオン酸、グルタル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、1,4−ナフタール酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジグリコール酸、チオジプロピオン酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、コハク酸、マレイン酸、フマル酸が好ましい。特に好ましい多価カルボン酸はコハク酸である。
【0019】
多価カルボン酸の塩を構成するカチオン成分としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のカチオン、及び、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸由来のカチオンなどが挙げられる。
【0020】
成分(A)の多価カルボン酸又はその塩は、酸として、染毛剤第1剤全体に対して0.01〜3質量%の量で配合される。多価カルボン酸の配合量を上記範囲に調節することで、染毛又は毛髪脱色を行った後の毛髪のまとまり易さ及びしなやかさが向上し、また、塗布操作性が向上する。多価カルボン酸の配合量は、好ましくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.3〜1.5質量%である。
【0021】
(成分(B):界面活性剤)
本発明においては、毛髪の感触と安定性の向上のため、成分(B)の界面活性剤として、カチオン界面活性剤(B1)と非イオン界面活性剤(B2)を併用する。
【0022】
成分(B1)のカチオン界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム等が挙げられ、好ましくは塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、剤の安定性や仕上がりの感触の点で、より好ましくは塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウムを使用する。これらカチオン界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
成分(B2)の非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという)アルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・ポリオキシプロピレン(以下、POPという)アルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中でも酸やアルカリ剤に強いことからPOEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類等が好ましく、POEアルキルエーテル類がより好ましい。POEアルキルエーテル類の具体例としては、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEセトステアリルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル等が挙げられる。これら非イオン界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
成分(B)における(B2)/(B1)の重量比は、塗布性に優れた粘度を得るため、1〜10とされ、好ましくは2〜7、更に好ましくは3〜6とされる。成分(B)の合計含有量は、組成物の安定性の点から、本発明の染毛剤第1剤中の1〜15重量%とされ、好ましくは2〜12重量%、更に好ましくは4〜10重量%とされる。また、(B)/(A)の重量比は、組成物の安定性の点から、3〜100とされ、好ましくは5〜50とされる。
【0025】
(成分(C):油性成分)
成分(C)の油性成分は、安定性を向上させるとともに、仕上り後の毛髪に潤いを持たせるために配合される。油性成分としては、常温における性状により、液体であるもの( CL)と固体(ペースト状を含む)であるもの(CS)とが挙げられる。常温で固体の油性成分(CS)には、常温で固体の高級アルコール(C1)が含まれる。
【0026】
本発明においては、保存安定性及び粘度調整の点から、成分(C)の油性成分として、少なくとも常温で固体の高級アルコール(C1)を、好ましくは本発明の染毛剤第1剤中の2〜12重量%、より好ましくは3〜10重量%、更に好ましくは4〜8重量%使用する。
【0027】
成分(C1)の高級アルコールとしては、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
成分(C)の油性成分のうち、常温で液体のもの(CL)としては、炭化水素油、動植物油、高級アルコール、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油等が挙げられる。炭化水素油としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ポリブテン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等が挙げられる。動植物油としては、オリーブ油、ツバキ油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アルモンド油、アボカド油、カロット油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油、ホホバ油等が挙げられる。高級アルコールとしては、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、2−ヘキシルデカノール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール等が挙げられる。高級脂肪酸としては、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。エステル油としては、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリル酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル等が挙げられる。シリコーン油としては、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン等が挙げられる。
【0029】
成分(C)の油性成分のうち、常温で固体のもの(CS)としては、成分(C1)以外に、炭化水素、動物脂、ロウ類、高級脂肪酸、エステル類等が挙げられる。炭化水素としては、オゾケライト、セレシン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等、動物脂としては、牛脂、カカオ脂等、ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、リシノレイン酸等が挙げられる。エステル類としては、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル等が挙げられる。
【0030】
成分(C)の油性成分としての総含有量は、適度な粘度を得るため、本発明の染毛剤第1剤中の2〜20重量%とされ、5〜15重量%、特に8〜13重量% が好ましい。また、成分(C)の油性成分は、操作性及び保存安定性の点から、常温で固体の高級アルコール(C1)に対する(C)全体の重量比(C)/(C1)が1.1〜3、特に1.5〜2であることが好ましい。(C)/(A)の重量比は、組成物の安定性の点から、5〜100とされ、好ましくは8〜50とされる。

【0031】
(成分(D):アルカリ剤)
成分(D)のアルカリ剤は、毛髪を膨潤させ、染料を毛髪へ浸透させ、毛髪の脱色力を向上するために配合される。アルカリ剤としては、アンモニア;モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノブタノール等のアルカノールアミン;1,3−プロパンジアミン等のアルカンジアミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基が挙げられる。
【0032】
上記アルカリ剤のうち、アンモニア及びアルカノールアミンが好ましく、アルカノールアミンとしてはモノエタノールアミンが好ましい。更には、それらの塩を併用することが好ましく、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウムが特に好ましい。
【0033】
これらのアルカリ剤は、2種以上を併用してもよく、またその含有量は、十分な脱色・染毛効果の点、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、本発明の染毛剤第1剤中の0.05〜15重量%が好ましく、更には0.1〜10重量%、特に0.2〜8重量%が好ましい。
【0034】
(成分(E):毛髪保護剤)
成分(E)の毛髪保護剤は、洗髪時の泡立ち、髪の毛の指通り、乾燥時のまとまり及び保湿性を改善するために、必要に応じて配合される。毛髪保護剤には、カチオンポリマー(E1)及びアミノ変性シリコーン(E2)が含まれる。
【0035】
成分(E1)のカチオンポリマーとは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーをいい、全体としてカチオン性となる両性ポリマーも含まれる。すなわち、カチオンポリマーとしては、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基又はアンモニウム基を含むか、又はジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む水溶液のもの、例えばカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらのうち、特にシャンプー時の柔らかさ、滑らかさ及び指の通り易さ、乾燥時のまとまり易さ及び保湿性という効果及び剤の安定性の点から、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含むポリマー、4級化ポリビニルピロリドン誘導体、カチオン化セルロース誘導体が好ましく、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、カチオン化セルロース誘導体がより好ましく、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体が最も好ましい。
【0036】
成分(E2)のアミノ変性シリコーンとしては、アミノ基、イミノ基又はアンモニウム基を有するものであればよい。例えば、例えばアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)、及びアミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(トリメチルシリルアモジメチコン)が挙げられる。
【0037】
成分(E)の含有量は、本発明の染毛剤第1剤中の0.1〜5重量%、特に0.2〜3重量%が好ましい。
【0038】
(成分(F):酸化染料中間体又は直接染料)
本発明が毛髪脱色剤である場合には、第1剤は成分(F)を含有せず、酸化染毛剤である場合には、染毛剤第1剤は成分(F)を含有する。
【0039】
酸化染料中間体としては、通常染毛剤に使用されている公知のプレカーサー及びカプラーを用いることができる。プレカーサーとしては、例えばパラフェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、2−クロロ−パラフェニレンジアミン、N−メトキシエチル−パラフェニレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、2−(2−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、2,6−ジメチル−パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、1,3−ビス(N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(4−アミノフェニル)アミノ)−2−プロパノール、PEG−3,3,2’−パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−アミノメチル−4−アミノフェノール、2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−4−アミノフェノール、2−アミノ−5−メチルフェノール、2−アミノ−6−メチルフェノール、2−アミノ−5−アセタミドフェノール、3,4−ジアミノ安息香酸、5−アミノサリチル酸、2,4,5,6−テトラアミノピリミジン、2,5,6−トリアミノ−4−ヒドロキシピリミジン、4,5−ジアミノ−1−(4’−クロロベンジル)ピラゾール、4,5−ジアミノ−1−ヒドロキシエチルピラゾールとこれらの塩等が挙げられる。
【0040】
また、カプラーとしては、例えばメタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、2−アミノ−4−(2−ヒドロキシエチルアミノ)アニソール、2,4−ジアミノ−5−メチルフェネトール、2,4−ジアミノ−5−(2−ヒドロキシエトキシ)トルエン、2,4−ジメトキシ−1,3−ジアミノベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、2,4−ジアミノ−5−フルオロトルエン、1,3−ビス(2,4−ジアミノフェノキシ)プロパン、メタアミノフェノール、2−メチル−5−アミノフェノール、2−メチル−5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2,4−ジクロロ−3−アミノフェノール、2−クロロ−3−アミノ−6−メチルフェノール、2−メチル−4−クロロ−5−アミノフェノール、N−シクロペンチル−メタアミノフェノール、2−メチル−4−メトキシ−5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2−メチル−4−フルオロ−5−アミノフェノール、レゾルシン、2−メチルレゾルシン、4−クロロレゾルシン、1−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、4−ヒドロキシインドール、5−ヒドロキシインドール、6−ヒドロキシインドール、7−ヒドロキシインドール、6−ヒドロキシベンゾモルホリン、3,4−メチレンジオキシフェノール、2−ブロモ−4,5−メチレンジオキシフェノール、3,4−メチレンジオキシアニリン、1−(2−ヒドロキシエチル)アミノ−3,4−メチレンジオキシベンゼン、2,6−ジヒドロキシ−3,4−ジメチルピリジン、2,6−ジメトキシ−3,5−ジアミノピリジン、2,3−ジアミノ−6−メトキシピリジン、2−メチルアミノ−3−アミノ−6−メトキシピリジン、2−アミノ−3−ヒドロキシピリジン、2,6−ジアミノピリジンとこれらの塩等が挙げられる。
【0041】
プレカーサーとカプラーは、それぞれ2種以上を併用してもよく、その含有量は、それぞれ本発明の染毛剤第1剤中の0.01〜8重量%、特に0.1〜5重量%が好ましい。
【0042】
直接染料としては、ニトロ染料、分散染料、塩基性染料等が挙げられる。ニトロ染料としては、2−ニトロ−パラフェニレンジアミン、2−アミノ−6−クロロ−4−ニトロフェノール、3−ニトロ−パラヒドロキシエチルアミノフェノール、4−ニトロ−オルトフェニレンジアミン、4−アミノ−3−ニトロフェノール、4−ヒドロキシプロピルアミノ−3−ニトロフェノール、HCブルーNo.2、HCオレンジNo.1、HCレッドNo.1、HCイエローNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.5、HCレッドNo.3、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2−ニトロ−パラフェニレンジアミン等が挙げられ、分散染料としては、ディスパーズバイオレット1、ディスパーズブルー1、ディスパーズブラック9等が挙げられ、塩基性染料としては、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ベーシックレッド76、ベーシックレッド51、ベーシックイエロー57、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31等が挙げられる。
【0043】
直接染料は、2種以上を併用してもよく、酸化染料中間体と併用してもよい。またその含有量は、本発明の染毛剤第1剤中の0.001〜5重量%、特に0.01〜3重量%が好ましい。
【0044】
(その他の成分)
染毛剤第1剤には、上記の各成分以外にも、必要に応じて、染毛剤第1剤の機能を損なわない範囲で、通常の化粧料に配合されている各種の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、溶剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0045】
本発明の染毛剤第1剤のpH(25℃)は、8〜12であり、特に9〜11が好ましい。pH調整剤としては、前記のアルカリ剤のほか、塩酸、リン酸等の無機酸;クエン酸、グリコール酸、乳酸等の有機酸;リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の無機酸塩又は有機酸塩;炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩類等が挙げられる。
【0046】
(染毛剤第2剤)
染毛剤第2剤としては、染毛剤の分野において用いられている公知の第2剤を使用する。第2剤は、染毛剤の分野において用いられている公知の酸化剤を含有する。
【0047】
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過炭酸ナトリウム、臭素酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に過酸化水素が、十分な染毛力及び脱色力が得られるため好ましい。これらの酸化剤を単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0048】
酸化剤の含有量は、酸化染料をすべて酸化できる量や、求める脱色力などに応じて適宜設定される。特に限定されるものではないが、十分な染毛力、脱色力を得るために、第1剤と第2剤との合計重量に対して0.01重量%以上の含有量が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また、第1剤と第2剤との合計重量に対して15重量%を超えて含有しても、それ以上の染毛力は得られないため、15重量%以下の含有量が好ましく、10重量%以下の含有量がより好ましい。
【0049】
(酸化防止剤、金属封鎖剤)
本発明の染毛剤は、混合して使用する前に酸化染料が酸化され、発色することを抑えるために、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、例えば、チオグリコール酸、チオグリコール酸カルシウム、チオグリコール酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸アンモニウム、没食子酸プロピル、トコフェロール、L−システイン、ホモシステイン、N−アセチル−L−システインなどが挙げられる。また、不純物としての金属イオンの影響を抑えるために、金属封鎖剤を含有してよい。金属封鎖剤としては、例えば、エデト酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0050】
(溶剤)
本発明の染毛剤は、染料の溶解性を向上させるために、溶剤を含有してよい。溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低分子アルコールが挙げられる。
【0051】
(調製方法)
本発明の染毛剤は、公知の方法により調製することができる。例えば、前述の成分を、水に溶解、混合するか、必要に応じて一部の成分を加温後攪拌混合し、その後冷却して残りの成分を加え攪拌混合することによって、第1剤及び第2剤を調製することができる。水としては通常、精製水が用いられる。水の含有量は、各成分を所定量含有した場合の残部であり、好ましくは第1剤又は第2剤の全重量に対して、それぞれ10重量%以上、95重量%以下程度であるが、各成分の種類、含有量等により適宜調整される。
【0052】
(使用方法)
本発明の染毛剤は、公知の方法、例えば、使用直前に第1剤と第2剤を混合し、これを毛髪に塗布するなどして、染毛に使用することができる。染毛時間は、酸化染料の種類や量、毛髪への塗布量、希望の染着度合によって、適宜調整されるが、5分以上、好ましくは5〜50分、より好ましくは10〜45分である。
【0053】
本発明の染毛剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、クリ−ム状、液状、ゲル状、フォーム状等の剤型にすることができるが、これらの剤型に限定されるものではない。また、第1剤がクリーム状、第2剤が液状など、互いに異なる形態であってもよく、第1剤と第2剤の混合比も問わない。
【実施例】
【0054】
以下の実施例により本願発明を更に具体的に説明するが、本願発明はこれらに限定されるものではない。実施例に示した成分の配合量は、特に表示しない限り、重量部の単位で示す。
【0055】
<実施例1〜9及び比較例1〜10>
(染毛剤第2剤の製造)
表1に示した成分を、混合攪拌装置を用いて所定量均一に混合することにより、染毛剤第2剤を製造した。
【0056】
【表1】
【0057】
(染毛剤第1剤の製造)
表2〜4に示した成分を、混合攪拌装置を用いて所定量均一に混合することにより、実施例1〜9及び比較例1〜10の染毛剤第1剤を製造した。尚、表中、「EO」はエチレンオキシド付加物を意味し、その前の数値はEOの付加数を示す。また、「EDTA−4Na」はエデト酸四ナトリウムを意味する。
【0058】
(染毛剤の性能評価)
製造した染毛剤第1剤及び第2剤を使用して、以下の性能評価を行った。評価結果を表2〜4に示す。
【0059】
(1)乳化状態
第1剤の成分の混合状態を目視にて観察し、優(◎)、良(○)、やや不良(△)及び不良(×)の4段階で判断した。乳化状態でやや不良(△)又は不良(×)となった場合は以降の評価は行わず、(×)評価とする。
【0060】
(2)保存安定性
第1剤をガラス容器中にて、40℃で6ヶ月間保存した後、外観の変化を観察、評価した。優:変化なし(◎)、良(○)、やや不良:粘度低下(△)及び不良:分離(×)の4段階で判断した。
【0061】
(3)塗布操作性
第1剤と第2剤を等量混合した染毛剤を、ハケを用いて人頭に塗布した際、液だれや塗布ムラ等の操作性について官能評価し、優(◎)、良(○)、やや不良(△)及び不良(×)の4段階で判断した。(優:粘りがあるクリームで伸びが良くたれ落ちがなく、ムラなく塗布できる)
【0062】
(4)しなやかさ
第1剤と第2剤を等量混合した染毛剤を、ハケを用いて人頭に適用し、30分放置後、洗い流し、シャンプー、コンディショナー処理後、ドライヤーで乾燥した。その毛髪のしなやかさを評価した。評価は専門パネラー5名により、優(◎)、良(○)、やや不良(△)及び不良(×)の4段階で評価した。(優:髪に弾力があり、しなやかな仕上がりが得られる)
【0063】
(5)毛髪の感触・滑らかさ
染毛処理後の毛髪を手で触れたときの感触を、優(◎)、良(○)、やや不良(△)及び不良(×)の4段階で官能評価した。
【0064】
(6)毛髪のまとまり感
染毛処理後の毛髪のまとまり感を、優(◎)、良(○)、やや不良(△)及び不良(×)の4段階で官能評価した。(優:髪がバサつかず、まとまりのある仕上がりが得られる)
【0065】
(7)染毛力及び均染性
染毛処理後の毛髪の染色の程度及び色ムラの程度を目視にて観察し、優(◎)、良(○)、やや不良(△)及び不良(×)の4段階で評価した。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
<参考例1及び2>
(コハク酸を使用した毛髪処理剤の製造)
表5に示した成分を、混合攪拌装置を用いて所定量均一に混合することにより、毛髪処理剤を製造した。参考例1は特許文献2に実施例5として記載された毛髪化粧料に相当する処方である。参考例2は、参考例1の処方に表2に記載の実施例1と同量の染料、アルカリ剤、酸化防止剤等を加えて染毛剤第1剤にした処方である。
【0070】
(毛髪処理剤の性能評価)
製造した毛髪処理剤を使用すること以外は実施例と同様にして性能評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0071】
【表5】
【0072】
参考例1の毛髪化粧料は染毛性を有しないので染毛力の評価は行わなかった。参考例1の毛髪化粧料はやや固めのクリームで伸びがあまりよくなく、塗布操作性は「△」であった。
【0073】
参考例2の染毛剤第1剤は乳化することができず、均一なクリームにならなかった。(3)塗布操作性以降の評価はできないので「×」評価とする。