特許第6682568号(P6682568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682568
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】血液浄化器及びその製法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/18 20060101AFI20200406BHJP
   B01D 61/24 20060101ALI20200406BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20200406BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20200406BHJP
   B01D 71/44 20060101ALI20200406BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20200406BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20200406BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20200406BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20200406BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20200406BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A61M1/18 500
   B01D61/24
   B01D69/08
   B01D71/68
   B01D71/44
   B01D71/40
   B01J20/08 C
   B01J20/10 C
   B01J20/28 A
   B01D69/02
   B01J20/06 A
   B01J20/06 B
   B01J20/08 A
   B01J20/10 A
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-68843(P2018-68843)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-177042(P2019-177042A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2019年5月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】大石 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】松山 慶太朗
(72)【発明者】
【氏名】森田 直喜
(72)【発明者】
【氏名】田島 洋
(72)【発明者】
【氏名】小泉 智徳
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−086563(JP,A)
【文献】 特開2011−212233(JP,A)
【文献】 特開2010−233999(JP,A)
【文献】 特開2016−077570(JP,A)
【文献】 特開2011−193987(JP,A)
【文献】 特開2012−016595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機イオン吸着体を含む中空糸膜を有する血液浄化器であって、牛血清に生理食塩水を加えて総タンパク質濃度を6.5g/dLに調整した原液を、該中空糸膜に60分間通液し、膜間圧力差25mmHgの圧力下で濾液を採取し、アルブミンの濃度をBCG法で測定するとき、下記式(1):
アルブミン透過率(%)=濾液のアルブミン濃度/原液のアルブミン濃度×100 ・・・(1)
で表されるアルブミンの透過率が5%以下であり、該血液浄化器内に注射用生理食塩液を封入してから3月後及び6月後における該注射用生理食塩液1mL中の10μm以上の微粒子数が25個以下であり、かつ、25μm以上の微粒子数が3個以下であり、該中空糸膜は、膜形成ポリマーと親水性ポリマーと無機イオン吸着体から構成され、該膜形成ポリマーは、湿式製膜により多孔性中空糸膜を形成することができるポリマーであり、該親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)系ポリマーであり、該無機イオン吸着体は、金属酸化物、多価金属の塩又は不溶性の含水酸化物であり、かつ、該中空糸膜は、生体適合性ポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)系ポリマー及びポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)により被覆されていることを特徴とする前記血液浄化器。
【請求項2】
記中空糸膜の孔径は、内表面から外表面に向かって大きくなる、請求項1に記載の血液浄化器。
【請求項3】
前記PVP系ポリマーの架橋度が80%以上100%未満である、請求項1又は2に記載の血液浄化器。
【請求項4】
リンのクリアランス値が膜面積1.5m当たり190ml/分以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の血液浄化器。
【請求項5】
尿素のクリアランス値が膜面積1.5m当たり195ml/分以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の血液浄化器。
【請求項6】
クレアチニンのクリアランス値が膜面積1.5m当たり186ml/分以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の血液浄化器。
【請求項7】
ビタミンB12のクリアランス値が膜面積1.5m当たり142ml/分以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の血液浄化器。
【請求項8】
前記無機イオン吸着体を含む中空糸膜を超臨界流体又は亜臨界流体で洗浄した後に、該中空糸膜の表面を生体適合性ポリマーで被覆する工程を含む、請求項のいずれか1項に記載の血液浄化器の製造方法。
【請求項9】
前記中空糸膜の内表面側からPVP系ポリマーと架橋度調整剤溶液を順次注入し、次いで該架橋度調整剤溶液を除去し、その後該中空糸膜に放射線を照射することによってPVP系ポリマーの架橋度を80%以上100%未満とする工程を含む、請求項のいずれか1項に記載の血液浄化器の製造方法。
【請求項10】
前記放射線を照射する際に血液浄化器内の酸素濃度を0.01体積%以上0.1体積%以下にする、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機イオン吸着体を含む中空糸膜を有する血液浄化器及びその製法に関する。より詳しくは、本発明は、リン吸着能が高く安全に使用可能な、無機イオン吸着体を含む多孔性中空糸膜を有する血液浄化器及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎不全患者に対する維持療法として血液透析が行われてきている。また、近年、急性腎不全や敗血症などの重篤な病態の患者に対して、急性血液浄化療法として、持続血液濾過、持続血液濾過透析、持続血液透析などの療法の実施例が増大しつつある。これらの療法に使用される血液浄化膜の素材としては、セルロース、セルロース誘導体などの天然由来の素材と、ポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体などの合成高分子素材が利用されている。中でも、ポリスルホン系樹脂からなる膜は、良好な機械的特性、耐熱性、生体適合性などの長所を持つことから、近年特に注目されている。
ポリスルホン系樹脂は比較的疎水性が強いため、血液と接触した際に、血漿タンパク質を吸着しやすい傾向がある。このためポリスルホン系樹脂で血液浄化膜を製造する場合には、親水性を付与して血液適合性を向上させるため、親水性高分子(以下、親水性ポリマーともいう。)を添加するのが一般的である。
【0003】
また、前述のとおり疎水性の強い材料は血漿タンパクを吸着しやすいので、長時間にわたって血液と接触して使用した場合には、表面に吸着した血漿タンパクの影響で膜性能が経時的に低下してしまう。親水性の付与によって血漿タンパクの吸着が低減されるので、親水性高分子の添加は血液適合性(生体適合性)の向上のほか、膜として安定した溶質除去性能を発揮するためにも有効である。
このような的で使用される親水性高分子としては、ポリビニルピロリドン(以下、PVPともいう。)が一般的である。しかしながら、親水性高分子を用いると水溶液中で膨潤し膜の孔を閉塞して、透過性能が低下する傾向にある。
【0004】
以下の特許文献1には、膜の基材ポリマーであるポリスルホン系ポリマーのみを残存させて、PVPの一部を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で分解除去してしまう膜の製造方法が記載されているが、この方法では、親水化剤であるPVPが除去されてしまうので、膜の親水性が低下してしまうという問題がある。
【0005】
血液浄化用中空糸膜においては、主に中空糸膜の膜構造、膜組成、及び膜物性を検討することにより、特定物質の透過性を改善することが数多くなされている。具体的には、尿毒症蛋白質(低分子量蛋白質とも称される。)を除去するための膜の大孔径化、さらには、生体に有用なアルブミンの透過又はロスを抑制しつつ、それより分子量の小さい低分子量蛋白質を透過させるような分画性の改善、あるいは、低分子量蛋白質に限らず、荷電を有する低分子の非蛋白性尿毒症物質をより選択的に透過させるための膜表面特性の改善等を例示することができる。
【0006】
透析治療の長期化により顕在化する合併症で、尿毒性の低分子量蛋白質に起因する合併症の代表的な例としては、透析アミロイドーシスがよく知られている。これに対しては、生体に有用なアルブミンの透過を抑制しつつ、透析アミロイドーシスの原因物質であるβ2−マイクログロブリンの除去性能を向上させるべく、中空糸膜の分画性をシャープにするための改善が種々検討されている。
例えば、以下の特許文献2には、膜内表面近傍の緻密層に親水性高分子を集中させ、膜の透過のバランスを改善し、高い透水性を有するにもかかわらず蛋白のリークが少ない膜が開示されている。
また、以下の特許文献3には、アルブミン透過率とリンのクリアランス性能が具体的に開示されているが、ビタミンB12のクリアランス性能は不明である。
また、下の特許文献4と特許文献5には、ポリスルホン系ポリマー、PVP、溶剤、及び水からなる4成分の製膜原液から得られた中空糸膜からなる透析器が開示されている。製膜原液中に水を添加することはポリスルホン系ポリマー中の不純物であるサイクリックダイマーを析出しやすくする。したがって、製膜原液中の不純物が多くなるので長期間安定的に製造するには不適である。これらの透析器のリンのクリアランスとビタミンB12のクリアランス性能は開示されているが、透水性能だけが異常に高い膜である。
さらに、以下の特許文献6には、尿素のクリアランスとビタミンB12のクリアランス性能が開示されているが、リンのクリアランス性能は不明である。
【0007】
このように、今日まで、リン、尿素、及びビタミンB12の全てについて高いクリアランス性能を有し、高い透水性性能を有し、かつ、安全に使用可能な血液浄化器は提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−161833号公報
【特許文献2】特開平4−300636号公報
【特許文献3】特許第4126062号公報
【特許文献4】特開2001−170172号公報
【特許文献5】特開2001−170167号公報
【特許文献6】国際公開第2004/094047号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記した従来技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、リン吸着能が高く、かつ、安全に使用可能な多孔性中空糸膜を有する血液浄化器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、中空糸膜にリン吸着能が高い無機イオン吸着体を含有させつつ、超臨界流体又は亜臨界流体で洗浄し該中空糸膜を有する血液浄化器から発生する微粒子を完全に除去することで、リンのクリアランス値が高く、かつ、安全に使用可能な血液浄化器とすることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]無機イオン吸着体を含む中空糸膜を有する血液浄化器であって、牛血清に生理食塩水を加えて総タンパク質濃度を6.5g/dLに調整した原液を、該中空糸膜に60分間通液し、膜間圧力差25mmHgの圧力下で濾液を採取し、アルブミンの濃度をBCG法で測定するとき、下記式(1):
アルブミン透過率(%)=濾液のアルブミン濃度/原液のアルブミン濃度×100 ・・・(1)
で表されるアルブミンの透過率が5%以下であり、該血液浄化器内に注射用生理食塩液を封入してから3月後及び6月後における該注射用生理食塩液1mL中の10μm以上の微粒子数が25個以下であり、かつ、25μm以上の微粒子数が3個以下であり、該中空糸膜は、膜形成ポリマーと親水性ポリマーと無機イオン吸着体から構成され、該膜形成ポリマーは、湿式製膜により多孔性中空糸膜を形成することができるポリマーであり、該親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)系ポリマーであり、該無機イオン吸着体は、金属酸化物、多価金属の塩又は不溶性の含水酸化物であり、かつ、該中空糸膜は、生体適合性ポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)系ポリマー及びポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)により被覆されていることを特徴とする前記血液浄化器。
[2]前記中空糸膜の孔径は、内表面から外表面に向かって大きくなる、前記[1]に記載の血液浄化器。
[3]前記PVP系ポリマーの架橋度が80%以上100%未満である、前記[1]又は[2]に記載の血液浄化器。
[4]リンのクリアランス値が膜面積1.5m当たり190ml/分以上である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の血液浄化器。
[5]尿素のクリアランス値が膜面積1.5m当たり195ml/分以上である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の血液浄化器。
[6]クレアチニンのクリアランス値が膜面積1.5m当たり186ml/分以上である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の血液浄化器。
[7]ビタミンB12のクリアランス値が膜面積1.5m当たり142ml/分以上である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の血液浄化器。
[8]前記無機イオン吸着体を含む中空糸膜を超臨界流体又は亜臨界流体で洗浄した後に、該中空糸膜の表面を生体適合性ポリマーで被覆する工程を含む、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の血液浄化器の製造方法。
[9]前記中空糸膜の内表面側からPVP系ポリマーと架橋度調整剤溶液を順次注入し、次いで該架橋度調整剤溶液を除去し、その後該中空糸膜に放射線を照射することによってPVP系ポリマーの架橋度を80%以上100%未満とする工程を含む、前記[3]〜[7]のいずれかに記載の血液浄化器の製造方法。
[10]前記放射線を照射する際に血液浄化器内の酸素濃度を0.01体積%以上0.1体積%以下にする、前記[9]に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る血液浄化器は、リン吸着能が高く、かつ、安全に使用可能である。また、本発明に係る血液浄化器は、尿素、クレアチニン、及びビタミンB12についても高いクリアランス性能を有している。
具体的には、本発明の血液浄化器は、体外循環治療時の高い血液流速の場合であっても、血液中のリンの選択性、吸着性に優れており、血液中の他の成分に影響を及ぼすことなく、血液中のリンを必要量排除することができ、また、血液中のリンを体外循環によって有効に除去できるため、副作用のあるリン吸着剤経口薬等を飲用することなく、血液中のリン濃度を適切に管理することができる。
したがって、本発明の血液浄化器を用いることで、透析患者が、リン吸着剤経口薬を服用しないか、少量の服用(補助的な使用)に留めても、透析患者の副作用を起こさずに、体内血液中のリン濃度を適切に管理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の血液浄化器は、無機イオン吸着体を含む中空糸膜を有する血液浄化器であって、牛血清に生理食塩水を加えて総タンパク質濃度を6.5g/dLに調整した原液を、該中空糸膜に60分間通液し、膜間圧力差25mmHgの圧力下で濾液を採取し、アルブミンの濃度をBCG法で測定するとき、下記式(1):
アルブミン透過率(%)=濾液のアルブミン濃度/原液のアルブミン濃度×100 ・・・(1)
で表されるアルブミンの透過率が5%以下であり、かつ、該血液浄化器内に注射用生理食塩液を封入してから3月後及び6月後における該注射用生理食塩液1mL中の10μm以上の微粒子数が25個以下であり、かつ、25μm以上の微粒子数が3個以下であることを特徴とする。
【0014】
[無機イオン吸着体]
本実施形態の中空糸膜は、無機イオン吸着体を含み、好ましくは膜形成ポリマーと親水性ポリマーと無機イオン吸着体から構成される。
本実施形態の中空糸膜に含有される又はこれを構成する無機イオン吸着体とは、イオン吸着現象又はイオン交換現象を示す無機物質を意味する。
天然物系の無機イオン吸着体としては、例えば、ゼオライト、モンモリロナイト等の各種の鉱物性物質等が挙げられる。
各種の鉱物性物質の具体例としては、アルミノケイ酸塩で単一層格子をもつカオリン鉱物、2層格子構造の白雲母、海緑石、鹿沼土、パイロフィライト、タルク、3次元骨組み構造の長石、ゼオライト及びモンモリロナイト等が挙げられる。
合成物系の無機イオン吸着体としては、例えば、金属酸化物、多価金属の塩及び不溶性の含水酸化物等が挙げられる。金属酸化物としては、複合金属酸化物、複合金属水酸化物、金属の含水酸化物等を含む。
【0015】
無機イオン吸着体は、吸着対象物、中でも、リンの吸着性能の観点で、下記式(2):
MN・mHO ・・・(2)
{式中、xは、0〜3であり、nは、1〜4であり、mは、0〜6であり、そしてMとNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb、及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。}で表される少なくとも一種の金属酸化物を含有することが好ましい。
金属酸化物としては、式(2)中のmが0である未含水(未水和)の金属酸化物であってもよいし、mが0以外の数値である金属の含水酸化物(水和金属酸化物)であってもよい。
式(2)中のxが0以外の数値である場合の金属酸化物は、含有される各金属元素が規則性を持って酸化物全体に均一に分布し、金属酸化物に含有される各金属元素の組成比が一定に定まった化学式で表される複合金属酸化物である。
具体的には、ペロブスカイト構造、スピネル構造等を形成し、ニッケルフェライト(NiFe)、ジルコニウムの含水亜鉄酸塩(Zr・Fe・mHO、ここで、mは0.5〜6である。)等が挙げられる。
無機イオン吸着体としては、式(2)で表される金属酸化物を複数種含有していてもよい。
【0016】
無機イオン吸着体としての金属酸化物は、吸着対象物、中でも、リンの吸着性能に優れているという観点から、下記(a)〜(c)群:
(a)水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、及び水和酸化イットリウム;
(b)チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、及びイットリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素と、アルミニウム、珪素、及び鉄からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素との複合金属酸化物;
(c)活性アルミナ
から選ばれることがより好ましい。
(a)〜(c)群のいずれかの群から選択される材料であってもよく、(a)〜(c)群のいずれかの群から選択される材料を組み合わせて用いてもよく、(a)〜(c)群のそれぞれにおける材料を組み合わせて用いてもよい。組み合わせて用いる場合には、(a)〜(c)群のいずれかの群から選ばれる2種以上の材料の混合物であってもよく、(a)〜(c)群の2つ以上の群から選ばれる2種以上の材料の混合物であってもよい。
【0017】
無機イオン吸着体は、安価で吸着性が高いという観点から、硫酸アルミニウム添着活性アルミナを含有してもよい。
無機イオン吸着体としては、式(2)で表される金属酸化物に加え、上記M及びN以外の金属元素がさらに固溶したものは、無機イオンの吸着性や製造コストの観点から、より好ましい。
例えば、ZrO・mHO(mが0以外の数値である。)で表される水和酸化ジルコニウムに、鉄が固溶したものが挙げられる。
多価金属の塩としては、例えば、下記式(3):
2+(1−p)3+(OH(2+p−q)(An−q/r ・・・(3)
{式中、M2+は、Mg2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca2+、及びCu2+からなる群から選ばれる少なくとも一種の二価の金属イオンであり、M3+は、Al3+及びFe3+からなる群から選ばれる少なくとも一種の三価の金属イオンであり、An−は、n価のアニオンであり、0.1≦p≦0.5であり、0.1≦q≦0.5であり、そしてrは、1又は2である。}で表されるハイドロタルサイト系化合物が挙げられる。
式(3)で表されるハイドロタルサイト系化合物は、無機イオン吸着体として原料が安価であり、吸着性が高いことから好ましい。
不溶性の含水酸化物としては、例えば、不溶性のヘテロポリ酸塩及び不溶性ヘキサシアノ鉄酸塩等が挙げられる。
本実施形態における中空糸膜を構成する無機イオン吸着体は、その製造方法等に起因して混入する不純物元素を、中空糸膜の機能を阻害しない範囲で含有していてもよい。混入する可能性がある不純物元素としては、例えば、窒素(硝酸態、亜硝酸態、アンモニウム態)、ナトリウム、マグネシウム、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、銅、亜鉛、臭素、バリウム、ハフニウム等が挙げられる。
【0018】
[微粒子の除去]
本実施形態の血液浄化器は、中空糸が前記した無機イオン吸着体を含有しているにも拘わらず、以下に説明する厚生労働省の定める人工腎臓装置承認基準を満たしていることを特徴とする。具体的には、本実施形態の血液浄化器は、血液浄化器内に注射用生理食塩液を封入してから3月後及び6月後における前記注射用生理食塩液1mL中の10μm以上の微粒子数が25個以下であり、かつ、25μm以上の微粒子数が3個以下であり、さらに、溶出物試験液の吸光度が0.1以下であり、かつ、該試験液中に膜孔保持剤を含まない。
本発明者らは、本実施形態の血液浄化器の製造においては、中空糸が無機イオン吸着体を含んでいるにも拘わらず、これを超臨界流体又は亜臨界流体で洗浄することにより血液浄化器から発生する微粒子を完全に除去することができることを見出した。
超臨界流体とは、臨界圧力(以下、Pcともいう。)以上、かつ、臨界温度(以下、Tcともいう。)以上の条件の流体を意味する。亜臨界流体とは、超臨界状態以外の状態であって、反応時の圧力、温度をそれぞれP、Tとしたときに、0.5<P/Pc<1.0、かつ、0.5<T/Tc、又は0.5<P/Pc、かつ、0.5<T/Tc<1.0の条件の流体を意味する。亜臨界流体の好ましい圧力、温度の範囲は、0.6<P/Pc<1.0、かつ、0.6<T/Tc、又は0.6<P/Pc、かつ、0.6<T/Tc<1.0である。但し、流体が水である場合には、亜臨界流体となる温度、圧力の範囲は、0.5<P/Pc<1.0、かつ、0.5<T/Tc、又は0.5<P/Pc、かつ、0.5<T/Tc<1.0であることができる。ここで温度は摂氏を表すが、Tc又はTのいずれかがマイナスである場合には、亜臨界状態を表す式はこの限りではない。
超臨界流体又は亜臨界流体としては、水やアルコール等の有機媒体、二酸化炭素、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン、空気等の気体、又はこれらの混合流体が用いられる。二酸化炭素は、常温程度の温度下でも超臨界状態にでき、様々な物質を良く溶解することから、最も好ましい。
【0019】
[膜形成ポリマー]
本実施形態の血液浄化器に用いる中空糸を構成する膜形成ポリマーは、湿式製膜により多孔性中空糸膜を形成することができるポリマーであればよく、例えば、ポリスルホン系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメタクリル酸系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリエーテルイミド系ポリマー、酢酸セルロース系ポリマー等が挙げられる。中でも芳香族ポリスルホンは、その熱安定性、耐酸、耐アルカリ性及び機械的強度に優れるため好ましい。
芳香族ポリスルホンとしては、下記式(4):
−O−Ar−C(CH−Ar−O−Ar−SO−Ar− ・・・(4)
{式中、Arは、パラ位での2置換のフェニル基である。}又は下記式(5):
−O−Ar−SO−Ar− ・・・(5)
{式中、Arは、パラ位での2置換のフェニル基である。}で表される繰り返し単位を有するものが挙げられる。尚、芳香族ポリスルホンの重合度や分子量については特に限定しない。
【0020】
[親水性ポリマー]
中空糸膜を構成することができる親水性ポリマーとしては、水中で膨潤するが、水に溶解しない生体適合性ポリマーであればよく、特に限定しないが、スルホン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基、リン酸基、オキシエチレン基、イミノ基、イミド基、イミノエーテル基、ピリジン基、ピロリドン基、イミダゾール基、4級アンモニウム基等を単独で又は複数種有するポリマーを例示することができる。
膜形成ポリマーが芳香族ポリスルホンである場合、親水性ポリマーとしてはポリビニルピロリドン(以下、PVPともいう。)系ポリマーが最も好ましい。
ポリビニルピロリドン系ポリマーとしては、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合ポリマー、ビニルピロリドン・ビニルカプロラクタム共重合ポリマー、ビニルピロリドン・ビニルアルコール共重合ポリマー等が挙げられ、これらのうち少なくとも1種を含んでいることが好ましい。中でも、ポリスルホン系ポリマーとの相溶性という観点から、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合ポリマー、ビニルピロリドン・ビニルカプロラクタム共重合ポリマーが好適に用いられる。
【0021】
本実施形態の血液浄化器に用いる中空糸膜は、生体適合性ポリマーにより被覆されていることが好ましく、該生体適合性ポリマーは、好ましくは、ポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)及びポリビニルピロリドン(PVP)系ポリマーからなる群から選ばれる。
[ポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)]
PMEAの生体適合性(血液適合性)については、田中 賢,人工臓器の表面を生体適合化するマテリアル,BIO INDUSTRY,Vol20,No.12,59−70 2003に詳細に述べられている。
その中で、PMEAとその比較のために側鎖構造の異なるアクリレート系ポリマーを作製し、血液を循環させたときの血小板、白血球、補体、凝固系の各種マーカーを評価したところ、「PMEA表面は他の高分子に比べて血液成分の活性化が軽微であった。また、PMEA表面はヒト血小板の粘着数が有意に少なく粘着血小板の形態変化が小さいことから血液適合性に優れる」と記載されている。
このように、PMEAは、単に構造中にエステル基があり親水性であるから血液適合性が良いというのではなく、その表面に吸着した水分子の状態が血液適合性に大きな影響を与えると考えられている。
ATR−IR法においては、試料に入射した波は試料に僅かにもぐり込んで反射するため、このもぐり込み深さ領域の赤外吸収を測定できることが知られているところ、本発明者らは、このATR−IR法の測定領域が、中空糸膜の表面に相当する「表層」の深さとほぼ等しいことも見出した。すなわち、ATR−IR法の測定領域とほぼ等しい深さ領域における血液適合性が、中空糸膜の血液適合性を支配し、その領域にPMEAを存在させることで、一定の血液適合性を有する血液浄化器を提供できることを見出した。PMEAを中空糸膜の表面にコートすることで、長期保管後の血液浄化器からの微粒子の発生も抑制可能である。
【0022】
ATR−IR法による測定領域は、空気中での赤外光の波長、入射角、プリズムの屈折率、試料の屈折率等に依存し,通常、表面から1μm以内の領域である。
PMEAが中空糸膜の表面に存在することは、中空糸膜の熱分解ガスクロマトグラフ質量分析により確認できる。PMEAの存在は中空糸膜の表面に対する全反射赤外吸収(ATR−IR)測定で、赤外吸収曲線の1735cm−1付近にピークが見られれば推定されるが、この付近のピークは他の物質に由来する可能性もある。そこで、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析を行い、PMEA由来の2−メトキシエタノールを確認することでPMEAの存在を確認することができる。
PMEAの溶媒に対する溶解性は特異なものがある。例えば、PMEAは100%エタノール溶媒には溶解しないが、水/エタノール混合溶媒にはその混合比によって溶解する領域がある。そして、その溶解する領域内の混合比では、水の量が多いほど、PMEA由来のピーク(1735cm−1付近)のピーク強度は強くなる。
表面にPMEAを含む中空糸膜においては、表面の細孔径の変化が小さいので、透水性能の変化があまりなく製品設計が簡単である。本実施形態においては、PMEAを中空糸膜の表面に有するが、例えば、PMEAを中空糸膜にコートした場合、PMEAが極薄膜状に付着し、細孔をほぼ塞がない状態で中空糸膜表面をコートしていると考えられる。特に、PMEAは分子量が小さく、分子鎖が短いことから、被膜の構造が厚くなりにくく、中空糸膜の構造を変化させにくいため好ましい。また、PMEAは他の物質との相溶性が高く、中空糸膜の表面に均一に塗布することができ、血液適合性を向上させることができるため好ましい。
PMEAの重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)などにより測定することができる。
中空糸膜の内表面にPMEA被覆を形成する方法としては、例えば、中空糸膜を充填した血液浄化器の上部からPMEAの溶解液を流してコーティングする方法等が好適に用いられる。
【0023】
[ポリビニルピロリドン(PVP)系ポリマー]
ポリビニルピロリドン(PVP)系ポリマーは、特に制限はないが、ポリビニルピロリドン(PVP)が好適に用いられる。
PVP系ポリマーの架橋度は、80%以上100%未満であることが好ましく、より好ましくは80%以上99%以下、さらに好ましくは85%以上95%以下である。
中空糸膜中のPVP系ポリマーの架橋度が80%未満であると、中空糸膜の親水性化に寄与しているPVP系ポリマーが膜から溶出するおそれがある。他方、PVP系ポリマーの架橋度を100%にしてしまうと、溶出量を低減できるものの、透析時にロイコペニア症状が観察されることがある。
PVP系ポリマーの架橋度は、下記式(6):
PVP系ポリマーの架橋度(%)=水に不溶であるPVP系ポリマー量/全PVP系ポリマー量×100・・・(6)
で定義される。
ここで、水に不溶であるPVP系ポリマー量とは、全PVP系ポリマー量から水に可溶であるPVP系ポリマー量を差し引いたものである。例えば、中空糸膜中のポリビニルピロリドンPVPの架橋度は、単位重量の中空糸膜に含まれる、全PVP量と、(そのうちの)水に不溶であるPVP量から求めることができる。単位重量の中空糸膜中の全PVP量は、乾燥した中空糸膜0.2〜0.5mgを横型反応炉(800〜950℃)で気化・酸化させ生成した一酸化窒素の濃度を化学発光法で測定し(装置は三菱化学製TN−10を使用)、得られた濃度から単位重量の中空糸膜中に含まれるPVP量に換算する。定量に際しては、含窒素ポリマーの標準試料を用いて予め作成した検量線を用意し、これを用いて濃度を決定する。
【0024】
水に可溶であるPVP量は、以下の方法により求めることができる。
すなわち、単位質量の中空糸膜を水分量が0.3重量%以下になるように乾燥し、これをN−メチル−2−ピロリドンに、2.5重量%の濃度になるように溶解し、溶液を作製する。その溶液に、その体積の1.7倍の量の水を添加して10分間攪拌することにより、中空糸膜中のポリスルホン系ポリマーを十分に析出させる。水に可溶であるPVPは、析出したポリスルホン微粒子とともに溶液中に含まれる。次いで、溶液中のポリスルホン微粒子をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)用の非水系フィルター(東ソー製、孔径:2.5μm)で濾過して除去し、濾液中に含まれるポリビニルピロリドンをHPLCにて定量する(装置:Waters、GPC−244、カラム:TSKgelGMPWXL2本、溶媒:0.1M塩化アンモニウム(0.1Nアンモニア)、pH9.5の塩化アンモニウム水溶液,流速:1.0ml/分、温度:23℃)。以上のようにして定量した濾液中に含まれるポリビニルピロリドンの量が、中空糸膜の単位重量当たりに含まれる水に可溶であるPVP量である。尚、PVPの架橋度を算出する際の水に可溶であるPVP量としては、上記の測定を10回測行い、最大値と最小値を除いた8点の値の平均値を用いる。
【0025】
PVPの架橋度は、例えば、中空糸膜の内表面側からPVP系ポリマーと架橋度調整剤溶液を順次注入し、次いで該架橋度調整剤溶液を除去し、その後該中空糸膜に放射線を照射することによって80%以上100%未満とする工程を経ることによって調整することができる。また、放射線を照射する際に血液浄化器内の酸素濃度を0.01体積%以上10体積%以下にすること好ましい。
【0026】
中空糸膜の形態は特に限定する必要はなく、いわゆるストレート糸であってもよいが、血液透析に用いる際の拡散効率の観点から、クリンプが付与されているものが好ましい。
本実施形態における血液浄化器においては、上記のとおりPVPの架橋度を調整することにより、PVPを不溶化し、血液浄化器に封入した溶液中のPVP由来の溶出が抑制され、血液浄化器中に溶液を封入後、6ヶ月経過後の前記溶液中のPVP濃度を10ppm以下にすることができる。透析用途の血液浄化器では、ノンリンス型(生理食塩水等によるプライミング洗浄を行わないで人体に接続する血液浄化器)が広く使用されつつある。したがって、血液浄化器に存在する不純物の低減要求があり、PVPのみならず、膜に残存する溶剤(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等)を可能な限り除去した血液浄化器が求められている。本実施形態の血液浄化器は、血液浄化器中に溶液を封入後、3ヶ月経過時と6ヶ月経過時のいずれにおいても前記溶液中の前記溶剤濃度も10ppm以下である。尚、透析用途の血液浄化器の約7割近くが製造・出荷してから3ヶ月以上6ヶ月以下の間で使用されている。
【0027】
血液浄化器中に封入した溶液中のPVP濃度及び溶剤濃度の測定方法は、以下の通りである。
(1)ウエットタイプの血液浄化器における測定方法
ウエットタイプの血液浄化器は、出荷直前に溶液(例えば、UF濾過膜水等)を封入して、溶液中で放射線滅菌を行い、そのまま出荷される。このようなウエットタイプの血液浄化器では、該溶液(充填液)中のPVP濃度及び溶剤濃度を測定する。ウエットタイプの場合、血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月以上6ヶ月以下の時点は、製造番号に記載されている製造月(製造番号から読み取れる製造年/月)から翌月末時点を1ヶ月経過時点として算出する。尚、血液浄化器は、入手してから25℃±1℃に保温して静置状態で保管する。溶液(充填液)のサンプリングは、血液浄化器から全ての溶液(充填液)を可能な限り取り出した後、均一に混合してから行う。例えば、3ヶ月時点の測定の為のサンプリング後、残りの全溶液(充填液)を元の血液浄化器の中に入れ密封して更に3ヶ月間保管し、6ヶ月時点の測定に用いる。
(2)ドライタイプの血液浄化器における測定方法
ドライタイプの血液浄化器では放射線滅菌を溶液中で行わない場合が多く、乾燥状態で出荷されることが多い。したがって、血液浄化器に純水を封入した時点から、3ヶ月以上6ヶ月以下の経過時点を算出する。血液浄化器に純水を封入する際には、中空糸膜の中空部にも純水を注入して全中空糸膜の内表面及び外表面が常に純水に25℃±1℃で浸漬して静置状態で保管する。但し、製造番号に記載されている製造月(製造番号から読み取れる製造年/月)から1年以内の血液浄化器を使用する。溶液(充填液)のサンプリングは、血液浄化器から全ての溶液(充填液)を可能な限り取り出した後、均一に混合してから行う。例えば、3ヶ月時点の測定の為のサンプリング後、残りの全溶液(充填液)を元の血液浄化器の中に入れ密封して更に3ヶ月間保管し、6ヶ月時点の測定に用いる。
【0028】
サンプリングした溶液(又は充填液)中のPVP濃度及び溶剤濃度は、液体クロマトグフィーにカラム(旭化成社製ASAHIPAK GS−620H又は同等性能カラム)を接続した装置を用いて分離したものを紫外分光計(東ソー社製UV8010又は同等性能機)で測定することにより求めることが可能である。使用条件は、例えば、PVPの場合、移動相:純水、カラム温度:38℃、測定波長:208nmで行うことができる。
【0029】
一般に、血液浄化器は、血液中の尿素、水分等の不要物の除去並びに血液、血漿からの病気原因物質等の除去のために用いられる。例えば、高脂血病患者であれば、血液から血漿のみを取り出して、該血漿から脂質を除去することも可能である。本実施形態の血液浄化器は、特に透析用途に用いることが好ましい。
透析用途の血液浄化器が透析型人工腎臓装置の製造(輸入)承認を得るためには、厚生労働省の定める人工腎臓装置承認基準を満たす必要がある。したがって、本実施形態の血液浄化器は、人工腎臓装置承認基準に記載の溶出物試験の基準を満たし、かつ、該試験における溶出物試験液中に膜孔保持剤を含まないことが必要である。具体的には、本実施形態の血液浄化器は、血液浄化器内に注射用生理食塩液を封入してから3月後及び6月後における前記注射用生理食塩液1mL中の10μm以上の微粒子数が25個以下であり、かつ、25μm以上の微粒子数が3個以下であり、さらに、溶出物試験液の吸光度が0.1以下であり、かつ、該試験液中に膜孔保持剤を含まない。
【0030】
血液浄化器中に封入した注射用生理食塩液中の微粒子数の測定方法は、以下の通りである。
(1)ウエットタイプの血液浄化器における測定方法
ウエットタイプの血液浄化器は、出荷直前に溶液(例えば、UF濾過膜水等)を封入して、溶液中で放射線滅菌を行い、そのまま出荷される。このようなウエットタイプの血液浄化器では、溶液を完全に除去した後、10Lの注射用生理食塩液で血液浄化器中の中空糸膜の膜内表面側から膜外表面側に濾過した後、新たな注射用生理食塩液を封入してから25℃±1℃に保温して3ヶ月間静置状態で保管する。血液浄化器から食塩液のサンプリングは、血液浄化器から全ての溶液(充填液)を可能な限り取り出した後、均一に混合してから行う。例えば、3ヶ月時点の測定の為のサンプリング後、残りの食塩液を元の血液浄化器の中に入れ密封して更に3ヶ月間保管し、6ヶ月時点の測定に用いる。
(2)ドライタイプの血液浄化器における測定方法
ドライタイプの血液浄化器では放射線滅菌を溶液中で行わない場合が多く、乾燥状態で出荷されることが多い。10Lの注射用生理食塩液で血液浄化器中の中空糸膜の膜内表面側から膜外表面側に濾過した後、新たな注射用生理食塩液を封入してから25℃±1℃に保温して3ヶ月間静置状態で保管する。血液浄化器から食塩液のサンプリングは、血液浄化器から全ての溶液(充填液)を可能な限り取り出した後、均一に混合してから行う。例えば、3ヶ月時点の測定の為のサンプリング後、残りの食塩液を元の血液浄化器の中に入れ密封して更に3ヶ月間保管し、6ヶ月時点の測定に用いる。
サンプリングした溶液(又は充填液)中の微粒子数はパーティクルカウンターにて測定可能である。
【0031】
膜孔保持剤とは、血液浄化器製造の際、乾燥工程における性能低下を防ぐために、乾燥前までの製造過程で膜中の空孔部分に詰めておく物質である。膜孔保持剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−ブチン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400等のグリコール系又はグリセロール系化合物及び蔗糖脂肪酸エステル等の有機化合物、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化亜鉛等の無機塩を挙げることができる。
膜孔保持剤を含んだ溶液に湿潤膜を浸漬することによって、膜中の空孔部分に膜孔保持剤を詰めることが可能である。乾燥後に膜孔保持剤を洗浄・除去さえすれば、膜孔保持剤の効果により湿潤膜と同等の透水量、阻止率等の性能を保持することが可能である。しかしながら、膜孔保持剤が、膜中及び/又は血液浄化器封入液中に微量に存在することにより、膜孔保持剤との化学反応で様々な誘導体が生成することを問題視する報告がある。本実施形態の血液浄化器は、膜孔保持剤を製造工程で使用しない。より具体的には、本実施形態の血液浄化器では、まず、最終的に目的とする孔径よりも大きな孔径を有する膜を作製し、その後の乾燥工程において、最終的に目的とする孔径となるように乾燥収縮させるため、膜孔保持材を製造工程で使用する必要がない。したがって、本実施形態の血液浄化器は、人工腎臓装置承認基準に記載の溶出物試験における溶出物試験液中に膜孔保持剤を含まない。
【0032】
前記した溶出物試験における溶出物試験液とは、人工腎臓装置承認基準に基づき調整したものであり、2cmに切断した乾燥中空糸状膜1.5gと注射用蒸留水150mLを日本薬局方の注射用ガラス容器試験のアルカリ溶出試験に適合するガラス容器に入れ、70±5℃で1時間加温し、冷却後膜を取り除いた後蒸留水を加えて150mLとしたものである。溶出物試験液の吸光度は、220〜350nmでの最大吸収波長を示す波長にて紫外吸収スペクトルで測定する。人工腎臓装置承認基準では吸光度を0.1以下にすることが定められているが、本実施形態の血液浄化器は膜孔保持剤を含まず、0.04未満の吸光度を達成することが可能である。また、溶出物試験液中の膜孔保持剤の有無については、該溶出物試験液を濃縮又は水分除去後、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、示差屈折計、紫外分光光度計、赤外線吸光光度法、核磁気共鳴分光法、及び元素分析等の公知の方法により測定することにより検出可能である。血液浄化器の中空糸膜中に膜孔保持剤を含むか否かについてもこれらの測定方法により検出可能である。
【0033】
本実施形態の血液浄化器の容器(ハウジング)の素材に限定はなく、例えば、ポリスチレン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエチレン系ポリマー、ポリプロピレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、スチレン・ブタジエンブロックコポリマーの様な混合樹脂等を用いることができる。素材のコストの観点からポリエチレン系ポリマー、ポリプロピレン系ポリマーが好ましく用いられる。ポリウレタン系の接着剤と相性と容器の強度から特にポリプロピレン系ポリマーが好ましい。ポリプロピレン系ポリマーを容器の素材に用いる場合、ポリウレタン系の接着剤との接着性を向上させるためには、容器をコロナ放電処理することが好ましい。さらに接着性を向上させるには、容器のみならず糸束にもコロナ放電処理することがより好ましい。糸束へのコロナ放電は、接着部位のみを行う。
【0034】
本実施形態の血液浄化器は、アルブミンの透過率が5%以下であり、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.35%以下である。血液中の尿素、水分等の不要物の除去等の透析器としては、0.35%以下が好ましい。血液、血漿からの病気原因物質等の除去のために用いられる血液浄化器においては、アルブミンの透過率が5%以下であってもよい。例えば、高脂血病患者であれば、血液から血漿のみを取り出して、該血漿から脂質を除去することも可能である。本実施形態において、アルブミンの透過率が5%を超える血液浄化器は微粒子の発生において好ましくない。本実施形態の血液浄化器は、特に透析用途に用いることが好ましい。
アルブミン(以下、単に「Alb.」ともいう。)の透過率は、以下のような方法で測定することができる。血液浄化器から取り出した中空糸膜を100本束ねて有効長18cmのミニモジュールを作製する。生理食塩水を加えて総タンパク質濃度を6.5g/dLに調整した牛血清を原液とし、そのアルブミンの濃度を予めBCG法によって求めておく。これを線速0.4cm/秒でミニモジュールに通液し、膜間圧力差25mmHgの圧力をかけて濾液を採取する。原液と測定環境の温度は25℃とする。尚、ミニモジュールを構成する中空糸膜は湿潤状態でも乾燥状態でも構わない。続いて、濾液のアルブミンの濃度をBCG法によって求め、次の式(1):
Alb.透過率(%)=濾液のAlb.濃度/原液のAlb.濃度×100 ・・・(1)
で求められる値をアルブミンの透過率と定義する。ここで、透過率は60分間通液後の値を使用する。
【0035】
本実施形態の血液浄化器のリンのクリアランスは、膜面積1.5m当たり、又は膜面積1.5m換算値で190ml/分以上であり、好ましくは、195ml/分以上である。中空糸膜中に無機イオン吸着体を含有させることによって血液浄化器のリンのクリアランスを膜面積1.5m当たり、又は膜面積1.5m換算値で190ml/分以上にすることが可能である。
本実施形態の血液浄化器のリンの除去量は、膜面積1.5m当り900mg以上であり、好ましくは1.5m当り1,000mg以上である。血液浄化器のリンの除去量は、血液中のリン濃度の影響を受けるが膜中に無機イオン吸着体を含むことによって膜面積1.5m当り900mg以上にすることが可能である。
【0036】
本実施形態の血液浄化器の尿素のクリアランスは、膜面積1.5m当たり、又は膜面積1.5m換算値で195ml/分以上であり、好ましくは198ml/分以上であるため、中空糸膜中に無機イオン吸着体を含むにも拘わらず、従来のIV型透析器と同等の性能を有する。
【0037】
本実施形態の血液浄化器のクレアチニンのクリアランスは、膜面積1.5m当たり、又は膜面積1.5m換算値で186ml/分以上であり、好ましくは190ml/分以上であるため、中空糸膜中に無機イオン吸着体を含むにも拘わらず、従来のIV型透析器と同等の性能を有する。
【0038】
本実施形態の血液浄化器のビタミンB12のクリアランスは、膜面積1.5m当たり、又は膜面積1.5m換算値で142ml/分以上であり、好ましくは150ml/分以上であるため、中空糸膜中に無機イオン吸着体を含むにも拘わらず、従来のIV型透析器と同等の性能を有する。
【0039】
血液浄化器のリンのクリアランスの測定は、中空糸膜を所定の膜面積になるような血液浄化器とした上で、ダイアライザー性能評価基準(昭和57年9月日本人工臓器学会編)に準じて実施する。製品についてはそのまま測定する。
血液側に無機リンの5mEq/L生理食塩水溶液(燐酸一ナトリウムとリン酸二ナトリウムの各5mEq/L溶液を1:4の比率で混合したpH7.4の水溶液)を血液側流量200mL/分で循環し、透析液側には生理食塩水を透析液側流量500mL/分で流して濾過がない条件で透析を行い、血液入口側及び出口側から循環液をサンプリングする。サンプリングした液中のリン濃度の測定は、モリブデンブルー発色法により行い、下記式(7):
クリアランス(mL/分)={(CB(in)−CB(out))/CB(in)}×QB ・・・(7)
{式中、CB(in):血液浄化器入口側のリン濃度、CB(out):血液浄化器出口側のリン濃度、QB:血液側流量(mL/分)=200。}によりクリアランスを算出する。尚、乾燥状態にある血液処理器については、前掲のダイアライザー性能評価基準に準じて湿潤化処理を行い60分経過した後測定に使用する。
【0040】
血液浄化器の尿素、クレアチニン、及びビタミンB12のクリアランス測定は、それぞれ、血液側に尿素60g、クレアチニン12g、及びビタミンB121.2gを生理食塩水60リットルに溶解した溶液を血液側流量200mL/分で循環し、透析液側には生理食塩水を透析液側流量500mL/分で流して濾過がない条件で透析を行う以外は、リンのクリアランス測定と同様に行う。尚、サンプリングした液中の尿素、クレアチニン、及びビタミンB12の濃度は、それぞれ190nm、230nm、360nmの吸光度で測定する。
【0041】
クリアランスの換算(膜面積換算)は、下記式(8)〜(10)により行う:
L’=(1−Z)/(1/QD’−Z/QB’) ・・・(8)
式中、Z=exp[K×A’×(1/QB’−1/QD’)] ・・・(9)
K=ln[(1−CL/QD)/(1−CL/QB)]/[A×(1/QB−1/QD)] ・・・(10)
L:測定して得られたクリアランス値(mL/分)
L’:換算して求めたいクリアランス値(mL/分)
A:クリアランス測定に使用した血液浄化器の有効膜面積(cm
A’:換算する血液浄化器の有効膜面積(cm)、本実施形態では1.5m
B:クリアランス測定に使用した血液浄化器の血液側流量(mL/分)
B’:換算する血液浄化器の血液側流量(mL/分)、本実施形態では200mL/分
D:クリアランス測定に使用した血液浄化器の透析液側流量(mL/分)
D’:換算する血液浄化器の透析液側流量(mL/分)、本実施形態では500mL/分
【0042】
血液浄化器の性能(例えば、透析用の血液浄化器であれば不純物除去性能)は、血液浄化器の形状によって大きく変化する。例えば、血液浄化器の両端間の距離が極端に短くて中空糸膜の本数が多いタイプと、血液浄化器の両端間の距離が極端に長くて中空糸膜の本数が少ないタイプとでは、同一の膜面積にしても全く異なる血液浄化器性能となる。これは、濾過時において、血液浄化器の形状が流体の圧力分布に影響を及ぼすからである。したがって、本実施形態では、糸束を容器に装填して、その両端部をウレタン樹脂で接着固定し、両端面を切断して得られた中空糸膜の2つの開口端の間の距離と該2つの開口端(円形状)の平均直径との関係が、下記式(11):
2つの開口端の間の距離/2つの開口端の平均直径=4.5〜6.5 ・・・(11)
の関係にあることが好ましい。
【0043】
PVPを含む中空糸膜を有する血液浄化器において、PVPの架橋度が高くなると、血液適合性が低くなる傾向にある。血液浄化器では一般的に膜の内表面に血液を流す。本実施形態の血液浄化器は、好ましくは、中空糸膜の内部に、例えば、PVPのコーティング層を有する。このコーティング層により、PVPの架橋度が高くても膜内表面に存在するPVPの量が多いため、血液適合性が向上する傾向にある。
【0044】
本実施形態の血液浄化器は、透析用途に用いることができる。透析用途では血液を中空部(膜内表面側)に流すことが主流である。膜内表面に血液中のタンパク質等が膜の孔を塞ぎ難いように、膜内表面に高濃度のPVPを保持させると同時に透析による濾過における物質移動を促進させるために中空糸膜の構造を膜の内表面から外表面に向かって孔径が連続的に大きくなる構造にすることが好ましく、さらに、中空糸膜の構造はスポンジ構造であることが好ましい。ここで、スポンジ構造とは、膜断面に孔径(二軸平均径、すなわち、短径と長径の平均値をいう。ここで、短径、長径とは、それぞれ、ボイドに外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺とする。)が5μm以上であるボイドを有さない構造をいう。ここで、ボイドとは、以下の説明する、例えば、ポリマーからなる網目状の骨格部分であるフィブリルの隙間である、該ポリマーの欠損部位を意味する。
【0045】
血液浄化器に用いる中空糸膜が内表面から外表面に向かって孔径が連続的に大きくなるスポンジ構造は、膜厚部の大部分に「フィブリル」という網目状の骨格部分を有する。中空糸膜中に存在する全フィブリルの平均太さは100nm以上200nm以下であることが好ましい。全フィブリルの平均太さが100nm未満では、破断強度と破断伸度が低下する傾向にあるので好ましくない。他方、全フィブリルの平均太さが200nmを超えると、透析使用時にアルブミンの透過率が0.35%を超えるので好ましくない。人体に有用であるアルブミン(分子量:67,000)をほとんど透過させない分画性を有する膜が求められているが、本実施形態の中空糸膜は、牛血漿アルブミンの透過率が0.35%以下であることを実現することができる。アルブミンの透過率が0.35%を超えることは体内に有効なアルブミンを大きく損失することを意味することから透析用の膜としては好ましくない。アルブミンの生体内貯蔵量は、成人男子で約300g(4.6g/kg)であり、全体の約40%は血管内に、残りの約60%は血管外に分布し、相互に交換しながら平衡状態を保っている。アルブミンの分解は筋肉、皮膚、肝臓、腎臓などで行われ、1日のアルブミンの分解率は生体内貯蔵量のほぼ4%(0.18g/kg/日)である。また生体内でのアルブミンの半減期は約17日である。他方、アルブミンの生成は主に肝臓(0.20g/kg/日)で行われている。したがって、生体内でのアルブミンの収支は±0に近い状態である。一般に透析患者は週に3回の人工透析により血液浄化を受けている。したがって、アルブミン透過率が0.35%の膜で人工透析を受けると約0.02g/kg/週のアルブミン損失となる。故に、アルブミン透過率が0.35%を超えると生体内でのアルブミンの平衡状態が崩れ、他の疾病を引き起こす原因ともなり、好ましくない。
【0046】
フィブリル(網目状の骨格)の太さは、以下の方法により測定することができる。
尚、膜の孔径、すなわち、膜断面における前記したボイドの孔径(二軸平均径、すなわち、短径と長径の平均値をいう。ここで、短径、長径とは、それぞれ、ボイドに外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺とする。)も、フィブリルの太さと同様に測定することができる。
対象となる中空糸膜を水で膨潤させた後、−30℃で凍結させた状態で長手方向に垂直に割断することにより、横断面割断試料を得る。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られた試料の断面を撮影する。撮影は、加速電圧10kV、撮影倍率10,000倍で行う。この条件により、膜厚方向の断面の部の幅15μm相当の構造を観察できる。
膜厚部の最内側(膜内表面側)を視野の端に合わせてSEM写真を撮影し、これを用いて、膜厚方向の内側にあるフィブリルの平均太さを測定する。次に、最外側を視野の端に合わせてSEM写真を撮影し、これを用いて、膜厚方向の外側にあるフィブリルの平均太さを測定する。
全フィブリルの平均太さは、膜厚が30μm以下の中空糸膜の場合には、上記の2枚の写真を用いて測定する。他方、膜厚が30μmを超える中空糸膜の場合には、上記2枚の写真ではカバーされない(撮影できていない)部分があるので、膜厚方向において膜内表面と膜外表面からの距離が等しい点である中心点を決めた後、視野の中央をその中心点に合わせてSEM写真を撮影することによって上記2枚の写真で撮影ができない部分を撮影し、これを用いて膜厚方向の中心部にあるフィブリルの平均太さを測定する。
但し、膜厚方向の中心部にあるフィブリルの太さを求めるときは、膜内表面と膜外表面側の写真に含まれない部分を用いる。
ここで定義するフィブリル(網目状の骨格)の太さとは、前記写真で観察される各フィブリルの中央部付近の最も細くなっている部分の太さ、すなわちフィブリル同士の接合部と接合部の間で最も幅が狭い部分の太さを、フィブリルの長手方向に対して垂直の角度で読み取ったものである。
フィブリルの太さを測定する部位は、幅15μm相当を撮影した各部位の断面SEM写真において、膜厚方向の中央部幅5μm相当の領域帯とし、その領域帯にあるフィブリルを任意に100本選択して太さを測定する。これを各部位の断面SEM写真それぞれについて実施する。それぞれの100本の値の平均値を、各部位(膜厚方向の外側、内側及び中心部(膜厚が30μmを超えるときのみ))のフィブリルの平均太さとする。また各平均値を相加平均した値を全フィブリルの平均太さとする。
【0047】
以下、本実施形態の中空糸膜の製造方法について説明する。
中空糸膜の製膜原液は、温調可能な容器に、必要に応じて超音波振動を加えながら、親水性ポリマー溶解液(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)系ポリマー)と、その他の材料(例えば、膜形成ポリマー、粉砕した無機イオン吸着体)を入れ、攪拌機又はヘンシルミキサー等の混合機を用いて溶解・混合することにより製造することができる。
膜形成ポリマー等中にも不純物等が混入している可能性があることから、製膜原液を調製後、不純物又は未溶解物等を取り除くために孔径40μm以下程度のフィルターで濾過することも可能である。
親水性ポリマー(例えば、PVP系ポリマー)の溶解液や製膜原液の溶剤としては、親水性ポリマー(例えば、PVP系ポリマー)とその他の膜の材料を溶解するものであればよく、膜形成ポリマー(例えば、ポリスルホン系ポリマー)を用いる場合であれば、溶剤はN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等が用いられる。
親水性ポリマーの重量平均分子量は、1,000〜2,000,000の範囲であることが好ましく、10,000〜1,300,000の範囲であることがより好ましい。
製膜原液中の膜形成ポリマー(例えば、ポリスルホン系ポリマー等)の濃度は、該原液からの製膜が可能で、かつ、得られた膜が膜としての性能を有するような濃度の範囲であれば特に制限されず、1〜50重量%、好ましくは10〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%である。高い透水性能又は大きな分画分子量を達成するためには、ポリマー濃度は低い方がよく、10〜25重量%が好ましい。また、製膜原液には、原液粘度、溶解状態を制御する目的で、水、塩類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、グリコール類等の非溶剤を複数添加することも可能であり、その種類、添加量は組み合わせにより随時決定すればよい。
【0048】
製膜原液中の粉砕した無機イオン吸着体(例えば、水和酸化セリウム)の濃度は、1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%である。血液浄化器のクリアランス値と無機イオン吸着性能とのバランスから無機イオン吸着体濃度は低い方がよく、2〜8重量%が好ましい。
製膜原液中の親水性ポリマーの量は、1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%であるが、用いる親水性ポリマーの分子量により最適濃度が決定される。
無機イオン吸着体を親水性ポリマーと膜形成ポリマーの溶剤中で湿式粉砕混合することにより、無機イオン吸着体を粉砕することができる。
粉砕混合手段は、無機イオン吸着体及び親水性ポリマーと膜形成ポリマーの溶剤を合わせて粉砕、混合できるものであれば、特に限定されるものではない。
粉砕混合手段として、例えば、加圧型破壊、機械的磨砕、超音波処理等の物理的破砕方法に用いられる手段を用いることができる。
粉砕混合手段の具体例としては、ジェネレーターシャフト型ホモジナイザー、ワーリングブレンダー等のブレンダー、サンドミル、ボールミル、アトライタ及びビーズミル等の媒体撹拌型ミル、ジェットミル、乳鉢と乳棒、らいかい器、超音波処理器等が挙げられる。中でも、粉砕効率が高く、粘度の高いものまで粉砕できることから、媒体撹拌型ミルが好ましい。
媒体撹拌型ミルに使用するボール径は、特に限定されるものではないが、0.1〜10mmであることが好ましい。ボール径が0.1mm以上であれば、ボール質量が充分あるので粉砕力があり粉砕効率が高く、ボール径が10mm以下であれば、微粉砕する能力に優れる。
媒体攪拌型ミルに使用するボールの材質は、特に限定されるものではないが、鉄やステンレス等の金属、アルミナやジルコニア等の酸化物類、窒化ケイ素や炭化ケイ素等の非酸化物類の各種セラミック等が挙げられる。中でも、耐摩耗性に優れ、製品へのコンタミネーション(摩耗物の混入)が少ない点で、ジルコニアが優れている。
粉砕後は親水性ポリマーと膜形成ポリマーの溶剤に無機イオン吸着体が十分に分散した状態で焼結フィルター等を用いて濾過精製することが好ましい。
【0049】
粉砕・精製した無機イオン吸着体の粒子径は、0.001〜10μm、好ましくは0.001〜2μm、より好ましくは0.01〜0.1μmである。製膜原液中で無機イオン吸着体を均一に分散させるには、無機イオン吸着体粒子径はより小さいことが好ましいが、0.001μm未満の均一した微粒子は製造し難い傾向にある。他方、1μmを超える無機イオン吸着体では、中空糸膜を安定して製造し難い傾向にある。
中空糸膜は、例えば、上記の製膜原液を、内部液とともに2重環状ノズルから凝固浴中に同時に吐出させ、凝固させることにより製造することができる。
中空糸膜の製造に用いられる内部液は、中空糸膜の中空部を形成させるために用いるものである。外表面に緻密層を形成させる場合は、内部液としてジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等からなる群から選ばれる溶剤の高濃度水溶液を用いることができる。内表面に緻密層を形成させる場合は、内部液には後述する凝固浴に記載したものを採用することができる。また、内部液の粘性を制御する目的でテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン等の非溶剤を加えることも可能である。
中空糸膜は、公知のチューブインオリフィス型の2重環状ノズルを用いて製膜することができ、より具体的には、前述の製膜原液と内部液とをこの2重環状ノズルから同時に吐出させ、エアギャップを通過させた後、凝固浴で凝固させることにより得ることができる。
エアギャップとは、ノズルと凝固浴との間の距離(隙間)を意味する。膜の内表面から外表面に向かって孔径が連続的に大きくなるスポンジ構造を有する膜を得るためには、紡速(Vs)(m/分)に対するエアギャップ(m)の比率が極めて重要である。何故ならば膜の内表面から外表面に向かって孔径が連続的に大きくなるスポンジ構造は、内部液中の非溶剤が製膜原液と接触することによって該製膜原液の内表面部位から外表面部位側へと経時的に相分離が誘発され、さらに該製膜原液が凝固浴に入るまでに膜内表面部位から外表面部位までの相分離が完了しなければ、得られないからである。
【0050】
紡速(Vs)に対するエアギャップ(Ga)の比率(Ga/Vs)は、中空糸膜の膜厚が34μm以上である場合、0.01〜0.1m/(m/分)であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.05m/(m/分)である。紡速に対するエアギャップの比率が0.01m/(m/分)未満では、膜の内表面から外表面に向かって孔径が連続的に大きくなるスポンジ構造の膜を得ることが難しく、0.1m/(m/分)を超える比率では、膜へのテンションが高いことからエアギャップ部で膜切れを多発し、製造しにくい傾向にある。他方、膜厚が34μm未満である場合には、製膜原液中の良溶剤量が少ないのでGa/Vsが低くても膜の内表面から外表面に向かって孔径が連続的に大きくなるスポンジ構造を得ることが可能である。膜厚が34μm未満である場合には、Ga/Vsが0.001〜0.01m/(m/分)であることが好ましい。
紡速(Vs)(m/分)とは、ノズルから内部液とともに吐出した製膜原液がエアギャップを通過して凝固浴にて凝固した膜が巻き取られる中空糸膜の一連の製造工程における膜の移動速度をいい、延伸操作がある場合には延伸操作をする前までの中空糸膜の移動速度を意味する。
また、エアギャップを円筒状の筒などで囲み、一定の温度と湿度を有する気体を一定の流量でこのエアギャップに流すと、より安定した状態で中空糸膜を製造することができる。
【0051】
凝固浴としては、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール類;エーテル類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類など重合体を溶解しない、製膜原液に対して相分離を誘発させる液体(非溶剤)が用いられるが、水を用いることが好ましい。また、凝固浴に前記重合体の良溶剤を添加することにより凝固速度をコントロールすることも可能である。
凝固浴の温度は、−30〜100℃、好ましくは0〜98℃、より好ましくは10〜95℃である。凝固浴の温度が100℃を超え、また、−30℃未満であると、凝固浴中の膜の表面の状態が安定しにくい。
【0052】
このようにして得た中空糸膜に、電子線及びガンマー線等の放射線を照射することにより、膜を構成する親水性ポリマーを架橋することが可能である。放射線の照射は、中空糸膜を用いて血液浄化器を作製する前又は血液浄化器を作製した後のどちらでもよい。すなわち、本実施形態の血液浄化器は、通常、製造後、放射線滅菌処理されたものとして商品化されるが、かかる放射線滅菌処理における放射線の照射により親水性ポリマーを架橋させてもよい。
前記したように、中空糸膜に架橋度調整剤を付着した状態で放射線照射することにより、中空糸膜中の親水性ポリマーの架橋度を適宜調整することが可能である。
架橋度調整剤としては、放射線照射に対して親水性ポリマーの架橋反応を阻害するものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、血液浄化用途に用いる際は、その安全性を考慮する必要があるため、生理的水溶液で洗浄しやすく、且つ毒性の低いものが好適に用いられる。なかでも水溶性ビタミン、グリセリン、マンニトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テロラエチレングリコール等のグリコール類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリグリコール類、エタノール等のアルコール類、ポリエチレンイミン、ポリフェノール、トレハロース、グルコースなどの糖類、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩、二酸化炭素などが挙げられ、好適に使用される。これらの架橋度調整剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてよ良い。
中空糸膜に付着させる架橋度調整剤の量や種類並びに中空糸膜の周りに存在させる架橋度調整剤の水溶液中の濃度については、放射線照射線量並びに照射時間、目的とする架橋度により適宜調整することが可能である。
中空糸膜に架橋度調整剤を付着した状態で放射線照射する方法としては、まず、例えば、架橋度調整剤を含む溶液に中空糸膜を浸漬させ、架橋度調整剤を含む溶液中で中空糸膜に放射線を照射する方法が挙げられる。この場合、架橋度調整剤を含む溶液中の酸素を除くことが目的の架橋度を再現良く制御するのに有効である。溶液の脱酸素は窒素、アルゴン等の不活性気体をバブリングすることにより可能である。また、市販のデガッサーを用いることにより、又は加熱、減圧にすることにより脱酸素することも可能である。溶液中の酸素濃度は1気圧下において0.1mg/L以上1mg/L以下(0.01体積%以上0.1体積%以下)であることが好ましい。酸素濃度が0.1mg/L未満では90%未満の架橋度を得るのが難しい傾向にある。他方、1mg/Lを超えると90%以上の架橋度を再現良く得るのが難しい傾向にある。
【0053】
放射線照射とは、電子線、ガンマー線等を用いた放射線照射をいい、その線量は5kGy以上50kGy以下であり、好ましくは15kGy以上30kGy以下、より好ましくは25kGy付近である。
【0054】
本実施形態の血液浄化器は、放射線滅菌済であることができる。放射線滅菌の方法は、特に限定されず、当業者に公知の方法を用いて行うことができる。例えば、血液浄化器に、放射線を照射することによって行うことができる。例えば、上記の親水性ポリマー架橋の際の放射線照射により、簡便に放射線滅菌することも可能である。
【0055】
本実施形態の血液浄化器において、中空糸膜内部に生体適合性ポリマーのコーティング層を有する血液浄化器は、例えば、中空糸膜の内表面に生体適合性ポリマーを接触させた後に中空糸膜を放射線照射することにより得ることができる。簡便には、生体適合性ポリマーを含むコーティング溶液を中空糸膜内に注入し、次いで該コーティング溶液を中空糸膜内から取り除き、その後、中空糸膜に放射線照射することにより得ることができる。このコーティング溶液中の生体適合性ポリマーの分子量は、上述した製膜原液に使用することができる親水性ポリマーと同程度であることが好ましい。コーティング溶液中の生体適合性ポリマーの濃度は、分子量に影響されるが、好ましくは0.01重量%以上20重量%以下であり、より好ましくは0.05重量%以上5重量%以下であり、さらに好ましくは0.1重量%以上5重量%以下である。コーティング溶液中の生体ポリマーの濃度が0.01重量%未満では、コーティング層の効果が得られない傾向にある。他方、コーティング溶液中の生体適合性ポリマーの濃度が20重量%を超えると膜の透過性能が大きく低下する傾向がある。また、中空糸膜内部への生体適合性ポリマーのコーティングの際の放射線照射と、上述の中空糸膜の製造に用いた親水性ポリマー架橋の際の放射線照射を同時に行うべく、生体適合性ポリマーを含むコーティング溶液及び架橋度調整剤溶液をこの順で中空糸膜内に注入し、これらの溶液を中空糸膜内から取り除いた後に、放射線照射を行うこともできる。コーティング溶液と架橋度調整剤溶液の混合液を中空糸膜内に注入し、この混合液を中空糸膜内から取り除いた後に、放射線照射を行うこともできる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例、製造例、比較例(本明細書中において、単に「実施例等」ともいう。)に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例等のみに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
尚、測定サンプルとして使用した中空糸膜は、すべて十分に水を含浸させた状態のものを用いた。
【0057】
尚、以下の測定方法を用いた。
[無機イオン吸着体の平均粒径]
無機イオン吸着体の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製のLA−950(商品名))で測定した。分散媒体は水を用いた。無機イオン吸着体に水和酸化セリウムを使用したサンプルの測定時は、屈折率に酸化セリウムの値を使用して測定した。同様に、無機イオン吸着体に水和酸化ジルコニウムを使用したサンプルを測定する時は、屈折率に酸化ジルコニウムの値を使用して測定した。
【0058】
[微粒子数]
微粒子計測器(リオン社製 KL−04)を用いて、それぞれの評価用サンプルを測定した。測定値は1回目の測定値を廃棄し、2回目以降3回測定し、その平均値を正式な値とした。
【0059】
[実施例1]
(水和酸化セリウムの作製)
硫酸セリウム4水和物(和光純薬(株))2000gを50Lの純水中に投入し、撹拌羽を用いて溶解させた後、8M苛性ソーダ(和光純薬(株))3Lを20ml/minの速度で滴下し、水和酸化セリウムの沈殿物を得た。得られた沈殿物をフィルタープレスにてろ過した後、純水500Lを通液して洗浄し、さらにエタノール(和光純薬(株))80Lを通液して水和酸化セリウムに含まれる水分をエタノールに置換した。このとき、濾過終了時の濾液10mlを採取し、カールフィッシャー水分率計((株)三菱ケミカルアナリテック社製のCA−200(商品名))にて水分率の測定を行ったところ、水分率は5質量%であり、有機液体の置換率は95質量%であった。得られた有機液体を含む水和酸化セリウムを風乾し、乾燥した水和酸化セリウムを得た。
得られた乾燥水和酸化セリウムを、ジェットミル装置(日清エンジニアリング(株)社製のSJ−100(商品名))を用いて、圧気圧力0.8MPa、原料フィード速度100g/hrの条件で粉砕し、粒子径平均0.08μmの水和酸化ヘリウム粉末を得た。
【0060】
(ポリビニルピロリドン溶解液の作製及び該溶解液の濾過)
100℃以下の温度での乾燥により含水率を0.3重量%以下としたポリビニルピロリドン(BASF社製、K90、重量平均分子量1,200,000)84gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学(株))1491gに溶解して均一な溶液(ポリビニルピロリドン溶解液)とした(ポリビニルピロリドン濃度5.63重量%)。
この溶液を70℃に保温して孔径2μmのステンレス製の焼結フィルター(日本精線(株)社製、NS−02S2、有効濾過面積20cm)を用いて濾過流量2mL/(分・cm)にて濾過した。濾過中は焼結フィルターを超音波洗浄機中に浸漬して、ポリビニルピロリドン溶解液に常時59kHz(出力3kW)の超音波振動を付与した。
【0061】
(製膜原液の作製及び製膜)
上記のフィルター濾過後の溶液(ポリビニルピロリドン溶解液)787.5gに平均粒径0.08μmの水和酸化セリウム42.5gをヘンシルミキサーで混合後、芳香族ポリスルホン(Amoco Engineering Polymers社製 P−1700)170gを添加して溶解することにより均一な溶液(製膜原液)を作製した。ポリスルホンの未溶解物等を除去するために、この製膜原液を孔径5μmのフィルター(富士フィルター(株)社製、FD−5、有効濾過面積40cm)を用いて濾過した。芳香族ポリスルホンに対する水和酸化セリウムの重量比は25%であった。
この溶液(製膜原液)を脱泡後60℃に保ち、N−メチル−2−ピロリドン55重量%と水45重量%との混合溶液からなる内部液とともに、紡口(2重環状ノズル 0.1mm−0.2mm−0.3mm)から吐出(内部液は内壁直径0.1mmの環状ノズルから吐出、製膜原液は外壁直径0.2mmと内壁直径0.3mmの間から吐出)させ、380mmのエアギャップを通過させて70℃の水からなる凝固浴に浸漬させた。この時、紡口から凝固浴までを円筒状の筒で囲み、筒の中のエアギャップの湿度を100%、温度を45℃に制御した。紡速は27m/分に固定した。得られた中空糸膜を巻取る前にクリンパー(中空糸膜へのクリンプ付与装置)で波長6mm、振幅0.6mmのクリンプを付与した。クリンパーでの乾燥温度を155℃、乾燥時間を120秒に設定した。製膜原液を常時撹拌した。紡口から吐出した製膜原液中の水和酸化セリウムが均一に分散していることを常時確認した。
【0062】
(血液浄化器の製造)
巻き取った9600本の中空糸膜からなる束を、中空糸膜の有効膜面積が1.5mとなるように設計したポリプロピレン製筒状容器に装填し、その両端部をウレタン樹脂で接着固定し、両端面を切断して中空糸膜の開口端を形成した。さらに、両端部にヘッダーキャップを取り付け、血液浄化器を得た。
【0063】
(超臨界流体による洗浄)
得られた血液浄化器を二酸化炭素からなる超臨界流体(臨界温度304.1K、臨界圧力7.38MPa、株式会社アイテック社製機器)にて1時間洗浄した。
【0064】
(PMEAコーティング)
PMEA(Mn20,000,Mw/Mn2.4)2gをエタノール40g/水60gの溶液1,000g中に溶解させ、コート液を作製した。この溶液を70℃に保温して孔径2μmのステンレス製の焼結フィルター(日本精線(株)社製、NS−02S2、有効濾過面積20cm)を用いて濾過流量2mL/(分・cm)にて濾過した。この溶液を開口端から血液浄化器の中空糸膜の中空部に2.3秒間注入し、0.3MPaのエアーで10秒間フラッシュさせた。次いで、血液浄化器の中空糸膜の外表面にコート液を流速100mL/分で5分間流した。中空糸膜の外表面を純水で洗浄した後、真空乾燥機内に血液浄化器を入れて35℃で15時間真空乾燥させた。
【0065】
(PVPコーティング)
2gのポリビニルピロリドンK90(BASF社製、K90、重量平均分子量1,200,000)を70℃の純水1,998gに溶解した溶液(PVPコーティング溶液)を作製した。この溶液を70℃に保温して孔径2μmのステンレス製の焼結フィルター(日本精線(株)社製、NS−02S2、有効濾過面積20cm)を用いて濾過流量2mL/(分・cm)にて濾過した。尚、濾過中は焼結フィルターを超音波洗浄機中に浸漬して、ポリビニルピロリドン溶解液に常時59kHz(出力3kW)の超音波振動を付与した。この溶液を開口端からPMEAコーティング後の血液浄化器の中空糸膜の中空部に2.3秒間注入し、0.3MPaのエアーで10秒間フラッシュさせた。
さらに、グルコース(和光純薬社製、特級)360gを70℃の純水1,640gに溶解した架橋度調整剤溶液を作製した。この溶液を開口端から血液浄化器の中空糸膜の中空部に2.3秒間注入し、0.3MPaのエアーで10秒間フラッシュさせた後、両端部にヘッダーキャップを取り付けた。血液流出入側ノズルに栓を施した後、滅菌袋に脱酸素剤(三菱ガス化学社製エージレス(登録商標))と共に入れ、酸素濃度を3.5%に調整後、電子線を20kGy照射し、放射線滅菌済血液浄化器を作製した。得られた血液浄化器の各種特性を以下の表1に示す。
【0066】
[実施例2]
前記(ポリビニルピロリドン溶解液の作製及び該溶解液の濾過)においてN−メチル−2−ピロリドンを1406g、(製膜原液の作製及び製膜)においてフィルター濾過後の溶液(ポリビニルピロリドン溶解液)を745gに、平均粒径0.08μmの水和酸化セリウムを85gにして、実施例1と同様に放射線滅菌済血液浄化器を作製した。芳香族ポリスルホンに対する水和酸化セリウムの重量比は50%であった。得られた血液浄化器の各種特性を以下の表1に示す。
【0067】
[実施例3]
内部液濃度を65.0重量%にして、実施例1と同様に放射線滅菌済血液浄化器を作製した。得られた血液浄化器の各種特性を以下の表1に示す。孔径が大きくなりアルブミンの透過率が4.5%に上昇した。
【0068】
[実施例4]
架橋度調整剤溶液中のグルコース濃度を45重量%にした以外は、実施例1と同様に放射線滅菌済血液浄化器を作製した。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は77.9%であった。得られた血液浄化器の各種特性を以下の表1に示す。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの架橋度は80%未満と低いため、この中空糸膜を用いた血液浄化器中に溶液を封入してから3ヶ月経過時点、6ヶ月経過時点での、該溶液中のポリビニルピロリドン濃度を測定したところ、いずれも10ppm以上であった。
【0069】
[実施例5]
内部液濃度を52重量%にした以外は、実施例1と同様に放射線滅菌済血液浄化器を作製した。得られた血液浄化器の各種特性を以下の表1に示す。孔径が僅かに大きくなりアルブミンの透過率が0.38%に上昇した。
【0070】
参考例6]
PMEAコートを行わなかった以外は、実施例1と同様に放射線滅菌済血液浄化器を作製した。得られた血液浄化器の各種特性を以下の表1に示す。
【0071】
参考例7]
PMEAコート、及びPVPコートを行わなかった以外は、実施例1と同様に放射線滅菌済血液浄化器を作製した。得られた血液浄化器の各種特性を以下の表1に示す。
【0072】
[実施例8]
超臨界流体による洗浄前の血液浄化器の500ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を1時間濾過、60℃の純水で1時間濾過、30℃のエタノールで1時間濾過、60℃の純水で1時間濾過の工程を3回繰り返すことにより中空糸膜中のPVP量が0.2重量%未満の血液浄化器を用いてPVPコートを行わなかった以外は、実施例1と同様に放射線滅菌済血液浄化器を作製した。得られた血液浄化器の各種特性を以下の表1に示す。
【0073】
[比較例1]
超臨界流体による洗浄を行わなかった以外は、実施例1と同様に血液浄化器を作製した。得られた血液浄化器の各種特性を以下の表1に示す。
【0074】
[比較例2]
内部液濃度を65.2重量%にした以外は、実施例1と同様に放射線滅菌済血液浄化器を作製した。得られた血液浄化器の各種特性を以下の表1に示す。孔径が大きくなり微粒子数が増えることが分かった。
【0075】
[比較例3]
(ポリビニルピロリドン溶解液の作製及び該溶解液の濾過)においてN−メチル−2−ピロリドンを1576g、(製膜原液の作製及び製膜)においてフィルター濾過後の溶液(ポリビニルピロリドン溶解液)を830gに、(製膜原液の作製及び製膜)において水和酸化セリウムを0gにして、実施例1と同様に放射線滅菌済血液浄化器を作製した。得られた血液浄化器の各種特性を以下の表1に示す。無機イオン吸着体がないため、リン酸のクリアランス値が190ml/分未満となった。
【0076】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る血液浄化器は、リン吸着能が高く、かつ、安全に使用可能であるため、急性血液浄化療法等に好適に利用可能である。