(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682569
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】光電センサ及び物体検出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
G01S7/481 A
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-74429(P2018-74429)
(22)【出願日】2018年4月9日
(65)【公開番号】特開2018-197742(P2018-197742A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】10 2017 107 666.2
(32)【優先日】2017年4月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムート ギンペル
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー ブーザー
【審査官】
東 治企
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−253460(JP,A)
【文献】
特開平04−225113(JP,A)
【文献】
特開2015−203697(JP,A)
【文献】
特開2001−033719(JP,A)
【文献】
特開平02−008709(JP,A)
【文献】
特開2002−323561(JP,A)
【文献】
特開昭62−184381(JP,A)
【文献】
特開平01−098984(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102004014041(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/131080(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48−7/51
G01S 17/00−17/95
G01C 3/00−3/32
G01B 11/00−11/30
G02B 26/10−26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域(20)内の物体を検出するための光電センサ(10)であって、互いに分かれた複数の送出光線(26a〜d)を送出するための少なくとも1つの発光器(22)と、前記センサ(10)内の基本配置に従ってそれぞれ前記送出光線(26a〜d)の1本に割り当てられた、該送出光線(26a〜d)を本来的に受光すべき複数の受光器(34a〜d)であって、自身に割り当てられ且つ前記物体の表面で反射された光線(26、30)から受光信号を生成するための複数の受光器(34a〜d)と、各送出光線(26a〜d)に割り当てられた受光器(34a〜d)の受光信号から、該送出光線(26a〜d)の当たった箇所における前記物体に関する情報を取得するように構成された評価ユニット(46)と、を備え、
前記送出光線(26a〜d)がそれぞれ、該送出光線(26a〜d)に割り当てられた受光器(34a〜d)と共に監視光線を形成し、
前記物体の距離が近い場合の受光スポットが、前記基本配置に従って割り当てられた受光器(34a〜d)にもはや位置しない、
光電センサにおいて、
前記評価ユニット(46)が更に、各送出光線(26a〜d)に割り当てられた受光器(34a〜d)の受光信号に加えて該送出光線(26a〜d)に割り当てられていない少なくとも1つの受光器(34a〜b)の受光信号からも、該送出光線(26a〜d)の当たった箇所における前記物体に関する情報を取得するように構成され、
各送出光線(26a〜d)に割り当てられていない受光器(34a〜b)が、該送出光線(26a〜d)に割り当てられた受光器(34a〜d)の近接領域検出器として機能し、該送出光線(26a〜d)の評価に寄与すること
を特徴とする光電センサ(10)。
【請求項2】
前記評価ユニット(46)が、前記送出光線(26a〜b)の送出から前記反射光線(30)の受光までの光伝播時間から前記物体の距離を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
レーザスキャナとして構成され、可動式の偏向ユニット(12)を備え、該ユニットにより前記送出光線(26a〜d)が周期的に前記監視領域(20)内を通過するように案内されて複数の走査平面を成すことを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
前記偏向ユニット(12)が回転式の偏向ユニット(12)として構成され、該ユニット内に前記発光器(22)が収納されていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ(10)。
【請求項5】
前記受光器(34a〜d)の配置が2次元的なパターンを成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項6】
前記送出光線(26a〜d)が横断面において2次元的なパターンを成していることを特徴とする請求項5に記載のセンサ(10)。
【請求項7】
前記送出光線(26a〜d)が、拡大縮小も含めて前記受光器(34a〜d)の配置と同じ2次元的なパターンを成していることを特徴とする請求項6に記載のセンサ(10)。
【請求項8】
前記受光素子(34a〜d)の並ぶ方向が前記送出光線(26a〜d)の配置に対して一定の角度(β)だけ捻転していることを特徴とする請求項6又は7に記載のセンサ(10)。
【請求項9】
前記受光器(34a〜d)の2次元的なパターン及び/又は前記送出光線(26a〜d)の2次元的なパターンが行列配置であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項10】
前記行列配置が斜めになっていることを特徴とする請求項9に記載のセンサ(10)。
【請求項11】
前記行列配置が、走査平面が互いに等間隔に配置されるような一定の角度(α)だけ斜めになっていることを特徴とする請求項10に記載のセンサ(10)。
【請求項12】
前記評価ユニット(46)が、前記発光器(22a〜d)及び前記受光器(34a〜d)を多重化方式で順次作動させ、ある送出光線(26a〜d)が送出されている間は該送出光線(26a〜d)に割り当てられた受光器(34a〜d)に加えて該送出光線(26a〜d)に対して割り当てられていない少なくとも1つの別の受光器(34a〜d)も作動状態とするように構成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項13】
前記評価ユニット(46)が、前記送出光線(26a〜d)に割り当てられた受光器(34a〜d)の受光信号及び該送出光線(26a〜d)に割り当てられていない少なくとも1つの受光器(34a〜b)の受光信号を個別に評価して、その結果の比較若しくは差し引き計算を行う、又は、それらから共通の信号を生成して評価するように構成されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項14】
前記受光器(34a〜d)の前方に共通の受光レンズ(32)が配置されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項15】
監視領域(20)内の物体を検出する方法であって、互いに分かれた複数の光線(26a〜d)が前記監視領域(20)内へ送出され、前記物体により反射された光線(30)が、センサ(10)内の基本配置に従って前記送出光線(26a〜d)にそれぞれ割り当てられた、該送出光線(26a〜d)を本来的に受光すべき受光器(34a〜d)で受光されることでそれぞれの受光信号が生成され、該受光信号から、前記送出光線(26a〜d)の当たった箇所における前記物体に関する情報が取得され、
前記送出光線(26a〜d)がそれぞれ、該送出光線(26a〜d)に割り当てられた受光器(34a〜d)と共に監視光線を形成し、
前記物体の距離が近い場合の受光スポットが、前記基本配置に従って割り当てられた受光器(34a〜d)にもはや位置しない、
方法において、
前記送出光線(26a〜d)にそれぞれ割り当てられた受光器(34a〜d)の受光信号に加えて該送出光線(26a〜d)に割り当てられていない少なくとも1つの受光器(34a〜b)の受光信号からも、該送出光線(26a〜d)の当たった箇所における前記物体に関する情報が取得され、
各送出光線(26a〜d)に割り当てられていない受光器(34a〜b)が、該送出光線(26a〜d)に割り当てられた受光器(34a〜d)の近接領域検出器として機能し、該送出光線(26a〜d)の評価に寄与すること
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は14のプレアンブルに記載の光電センサ及び監視領域内の物体の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの光電センサは、監視領域内へ光線を送出し、物体により反射された光線を再び受光して、受光信号を電子的に評価する、という検知原理により作動する。その評価結果としては二値的な物体の確認が考えられる。また、公知の位相法又はパルス法を用いて光伝播時間を測定し、検出された物体の距離を測定することも多い。
【0003】
測定範囲を広げるために、まず、レーザスキャナで行われるように走査光線を動かすことが考えられる。この場合、レーザから発せられた光線が偏向ユニットを介して周期的に監視領域を掃引する。測定された距離情報に加えて、偏向ユニットの角度位置から監視領域内での物体の位置が推定され、以て監視領域内での物体の位置が2次元極座標で検出される。
【0004】
測定範囲を広げる別の可能性として、複数の走査光線で複数の測定点を同時に検出することが挙げられる。これをレーザスキャナと組み合わせることもできる。そうすれば、単一の監視平面だけでなく、多数の監視平面を通じて3次元空間領域が捕らえられる。
【0005】
大抵のレーザスキャナでは走査運動が回転鏡によって達成される。ただし、複数の走査光線を用いる場合については、例えば特許文献1に記載されているように、発光器と受光器を有する測定ヘッド全体を回転させるという方法も従来技術で知られている。
【0006】
複数の測定点を生成するために、従来技術では発光器と受光器が一列に配置されている。例えば、特許文献2では一列のLEDが、また特許文献3ではレーザアレイが設けられ、その光が光学系を通じて周囲に投影される。これにはまず、発光器又は受光器がそれぞれ専用のケーシングを持つ個別の電子部品である場合に構造的な欠点がある。その場合、それらの部品をどこまで近付けられるかがケーシングの大きさにより制限される。ところが、共通のレンズを用いる場合は密な配置が有利である。
【0007】
また、測定光線毎にそれぞれ1つの受光素子が帰属している。加えて、最大測定距離からの極めて微弱な光でも十分に検出できるようにそれを配置しなければならない。測定対象物が近付くと受光スポットが大きくなるため、同軸構造の場合はスポットの中心が暗くなり、二軸構造の場合はスポットが側方に動いてしまう。故に、最小距離より下では、より近くにある物体はもはや検出されない。従来これは、近接領域からの光をも受光素子へと偏向させる近接領域帯を受光レンズに設けることにより補償されている。しかし、複数光線用の受光レンズ上に近接領域帯に形成することは容易ではなく、少なくともコストが増大する。
【0008】
未公開の特許文献4には、特殊な形状の発光光学系とそれに対応する発光器アレイにより、発射光スポットで2次元的な網目(ラスタ)を形成することが特に提案されている。これは直線を等間隔に配置したものの代わりに提案されたものであり、従って、レーザスキャナにおける一様な監視とは別の用途に適しているということは容易に分かる。この代案は前記特許出願においてそれ以上深く議論されていない。また、近接領域の問題への言及はない。
【0009】
特許文献5は背景隠蔽型センサに関するものである。受光器配列が三角測量の配置で発光器と並置されている。受光器配列上での光スポットの位置が、検出された物体の距離に応じて変わる。個々の受光素子が近接用素子と遠隔用素子にまとめられており、近接領域において物体の存在が確認された場合にのみスイッチ信号が生成され、遠隔領域にある物体は隠蔽される。この従来のセンサは単一の測定光線でしか作動しない。
【0010】
特許文献6には電気光学的な距離測定器が記載されている。この装置は、それぞれ異なる測定対象の距離領域に割り当てられた少なくとも2つの受光素子を備えている。これによれば、特殊な近接領域帯を有する受光レンズなしで済むが、その代償として少なくとも1つの追加の受光素子が必要である。また、特許文献6の装置にも単一の測定光線しかない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE 197 57 849 B4
【特許文献2】US 4 656 462
【特許文献3】DE 10 2004 014 041 A1
【特許文献4】ドイツ特許出願第10 2015 121 839号
【特許文献5】DE 197 21 105 A1
【特許文献6】EP 2 998 700 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
故に、本発明の課題は、複数の光線を用いた光電センサによる物体の検出を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1又は14に記載の光電センサ及び監視領域内の物体の検出方法により解決される。本発明に係るセンサは、少なくとも1つの発光器で複数の発射光線を送出する多重センサと解釈することができる。即ち、複数の発光器が設けられるか、1つの発光器の光が複数の発射光線に分割されるか、あるいは両者の混合型である。発射光線は、より大きな光束の内部にある光線光学的な意味での光線ではなく、互いに分かれた光束であって、それぞれが監視領域内で物体に当たり、互いに離れた別々の光スポットを形成する別々の走査光線と理解すべきものである。他方では、監視領域において物体の表面での反射後の各光線を受光するために複数の受光器が設けられる。これは1つの列状又は行列状の受光器の複数の画素領域でもよい。1本の送出光線とそれに割り当てられた1つの受光器の各対が独自の監視光線を形成し、その結果、複数の監視光線から成る光束が生じ、走査運動の場合には一群の監視平面が生じる。
【0014】
本発明の出発点となる基本的な考え方は、ある監視光線の評価のために、その送出光線に割り当てられていない受光器の受光信号も一緒に参照する、ということにある。つまり、少なくとも1本の送出光線について、その評価の際、それに割り当てられた受光器の受光信号と同様に追加の受光器の受光信号も利用するのである。加えて、当該追加の受光器は追加の近接領域検出器として機能することが好ましい。更に、該追加の受光器が同時に別の送出光線に割り当てられた受光器であればより好ましい。その場合、前記追加の近接領域検出器は、装置としては追加のコストなしで二重の機能を果たす。そうすれば受光器が互いに近接領域検出器として補助し合うことができる。
【0015】
本発明には、複数の測定光線又は監視光線を用いるセンサにおいて近接領域の検出性能が高まるという利点がある。受光器とちょうど同数の監視光線が生成されながらも、それらの監視光線のうち少なくとも1本については検出範囲が近接領域にまで拡大される。その際、受光光学系又は受光レンズに特殊な近接領域帯は必要ない。故に、近接領域帯の代償として光学的な損失が生じる可能性がある複雑な光学設計を行わずに済む上、高いコストがかかる複雑なレンズの製造及び調整の必要もなくなる。
【0016】
本発明の評価ユニットは、前記送出光線の送出から前記反射光線の受光までの光伝播時間から物体の距離を測定するように構成されていることが好ましい。これにより本センサは距離測定型となる。複数の送出光線により距離が位置分解的に複数の走査点で測定されるため、平均化又は他の共通の評価を行うことが考えられる。あるいは、単に物体の存在を確認し、それを例えばスイッチ信号として出力する。
【0017】
本センサは、レーザスキャナとして構成され、可動式の偏向ユニットを備え、該ユニットにより送出光線が周期的に監視領域内を通過するように案内されて複数の走査平面を成すものであることが好ましい。送出光線は互いに平行に走っている必要はなく、例えば互いに角度間隔を空けた光束を成していてもよい。この場合に生じる面は、厳密には走査平面ではなく、円錐又はその一部の側面であるが、本願では簡単のため走査平面と呼ぶ。偏向ユニットは、少なくとも発光器が収納され、更に可能であれば受光器と評価ユニット又はその一部が収納された、事実上1つの可動式の測定ヘッドを成す回転可能な偏向ユニットの形で構成されていることが好ましい。
【0018】
受光器の配置は2次元的なパターンを成していることが好ましい。つまり受光器は、列状の配置のように一軸上にのみ配置されているのではなく、平面上に配置されている。このようにすれば、受光器の総数が同じ場合に該受光器の配置の直径をより小さくすることができる。ここで直径とは、2つの受光器間の最大の距離という、よく言われる一般化した意味での距離である。この配置はよりコンパクトであり、より小さな共通レンズと組み合わせることができる。2次元的な配置は、受光素子が比較的大きい場合や、各素子がケーシングを備えているため一列に密に配置できない場合に特に有利である。
【0019】
送出光線が横断面において2次元的なパターンを成すこと、特に拡大縮小も含めて受光器の配置と同じ2次元的なパターンを成すことが好ましい。送出光線の横断面とは、該送出光線に対して垂直に保持された紙片の表面に形成される光線像のことだと考えればよい。本発明の好ましい実施形態では、2次元パターンに関わらず、各送出光線が専用の発光器から発せられる。このようにすれば、横断面における送出光線の2次元的なパターンが受光器の配置とちょうど一致する。発光器と受光器のパターンが同じなら、監視光線のパターンもそれに相応したものとなる。「拡大縮小も含めて同じ」とは、幾何学的には、発光側及び受光側の2次元パターンが相似形であるという意味であり、合同つまり倍率が1でもよいことは明白である。
【0020】
受光素子の並ぶ方向は送出光線の配置に対して一定の角度だけ捻転していることが好ましい。前記角度は2次元的なパターンが同一又は幾何学的に相似であってもなお存在する自由度である。例えば、受光素子の配置内の隙間が、送出光線の配置内の隙間をまっすぐに延長したところにあってもよい。この場合、前記角度はゼロである。また、他のやり方で角度を選ぶことで、近接領域検出器として機能し得るような適切な隣接関係を持っているのはどの受光器かを確定することができる。
【0021】
受光器の2次元的なパターン及び/又は送出光線の2次元的なパターンは行列配置であることが好ましい。これは何より、全体が1つの行列であることは必須ではないということを意味する。例えば、行列配置の上方、下方又は側方から監視領域に関する追加の情報を更に取得するために、それらの方向に少し離れた少なくとも1つ追加の監視光線がある場合がある。好ましくは2次元的なパターンの全体が行列状である。ただし、外側より中心部の方で監視光線を多くするなど、密度に差をつけることはなお可能である。
【0022】
前記行列配置は斜めになっている又は捻転していることが好ましい。これは通例のことではない。なぜなら行列は通常、その行方向が水平になるように方向付けられるからである。レーザスキャナの場合、その基準は周期運動の回転軸、又は回転平面若しくは真ん中の走査平面である。本実施形態では、行列の行及びそれに対応する隙間は回転軸及び回転平面のいずれにも平行ではなく、また直交してもいない。その結果、1つの行にある複数の受光器が異なる平面を走査する。
【0023】
前記行列配置は、走査平面が互いに等間隔に配置されるような一定の角度だけ斜めになっていることがより好ましい。これにより、コンパクトな2次元配置であっても列状の配置を用いる場合と同様の走査が可能となる。「等間隔」と言えばまず、発光器又は受光器の垂直方向の間隔が最も重要である。走査平面は平行に広がるとは限らず、距離とともに互いに離れてゆくこともある。しかし、中心までの距離を固定して見れば、どの位置でも走査平面は互いに等間隔のままである。等間隔の配置には一定の許容差が含まれる。少なくとも、その許容差により角度方向でのみ誤差が生じ、典型的な物体距離ではその誤差が測定精度の範囲内で距離方向の誤差となる、というような許容差がそれに当てはまる。必要となる角度は、配置が与えられれば幾何学的に計算できる。あるいは、角度が適正であれば光路上の紙片等の投影面上に平行線群を描くような、可視光を使った発光装置を使用する等の方法により、実験的に角度を決定してもよい。
【0024】
前記評価ユニットは、ある送出光線が送出されている間はそれに割り当てられた受光器が作動状態となり、少なくとも1本の送出光線については該送出光線に対して割り当てられていない少なくとも1つの別の受光器が追加的に作動状態となるように、発光器及び受光器を多重化方式で順次作動させるように構成されていることが好ましい。まさにこのような実施形態では送出光線毎に専用の発光器が設けられていることが好ましい。なぜなら、光学系により分離される光線は個別に作動させることが不可能であるか、可能であっても制限があるからである。多重化方式には同時に2つの利点がある。まず、発光器及び受光器には駆動段又はアナログ若しくはデジタルの評価段(増幅器又はフィルタ等)が設けられるが、多重化方式を用いなければそのような段を全ての発光器及び受光器に一つ一つ設けなければならず、スイッチ構造が複雑になる上に消費電力が大きくなる。また、多重化方式によれば、ある別の受光器にとって追加的な受光器となる受光器が、割り当てられた送出光線以外に対して機能することができる。なぜなら、割り当てられた送出光線がオフになる空き段階が繰り返し出現するからである。
【0025】
原理的には、全ての受光器を常に作動状態にして、ちょうど作動状態にある送出光線に対する追加的な受光器として機能させることも可能であるが、その場合、それら追加的な受光器の多くは単にノイズを出力するに過ぎない。また、全ての送出光線を複数の受光器で受光することは必要でない上、必ずしも有意義ではない。なぜなら、規則的な配置においては、幾つかの監視光線に対しては近接領域信号を生成できるような適切な位置に受光器が存在しないからである。これは大した欠点ではない。というのも、近くの物体の場合、そもそも監視光線の密度がまだ非常に高いため、どの監視光線が物体を捕らえるかは測定精度にとって大して重要ではないからである。回路段と消費電力に関する前述の利点を得るため、前記多重化は時間多重化であることが好ましい。ただし、特に近接領域の検出に関しては、例えば送出光線毎に異なる周波数を用いて振幅変調を行い、フーリエ分析又はロックイン増幅器の原理により周波数に基づいて受光信号を分離する等、別の可能性も考えられる。
【0026】
前記評価ユニットは、送出光線に割り当てられた受光器の受光信号及び少なくとも1つの追加的に考慮される受光信号を個別に評価して、その結果の比較若しくは差し引き計算を行う、又は、それらから共通の信号を生成して評価するように構成されていることが好ましい。何度も述べたように、前記追加的な受光器は近接領域検出器として機能する。従って、通常は、検知された物体の距離に応じて、送出光線に割り当てられた本来の担当の受光器と追加的な受光器のいずれかがより良い結果を出す。そこで、評価の開始時に、例えば信号レベルに基づいて、どの受光信号を更に評価するかが決められる。別の実施形態では、距離又はその他の評価結果のレベルで個別の評価並びに比較又は差し引き計算が行われる。受光信号を未処理の状態で組み合わせて、例えば総和信号にすることも考えられる。
【0027】
前記評価ユニットは、送出光線に割り当てられた受光器の受光信号及び少なくとも1つの追加的に考慮される受光信号を三角測量の原理により評価して距離を見積もるように構成されていることが好ましい。ここまでは追加的な受光器を補助的な近接領域検出器として説明してきた。しかし、特定の送出光線を用いた監視に関与する各受光器は三角測量型センサのようにまとめて評価することもできる。つまり、どの受光器上で受光スポットが記録されたかを分析し、その位置から三角測量の原理により物体の距離を見積もるのである。この見積もりは比較的粗くてもよく(例えば、2つの受光器が関与する場合は単に近いか遠いかである)、関与する受光器の数とともに精度が高くなる。その結果は独自の測定値としてもよいし、光伝播時間法により求められた測定値の妥当性検査のために参照してもよい。
【0028】
受光器の前方には共通の受光レンズが配置されていることが好ましい。受光レンズはより複雑な受光光学系の一部でもよい。また、受光素子のうち特定の一部グループにのみ帰属する共通の受光レンズも考えられる。本発明では追加的な又は追加的に作動状態となる受光器により近接領域がカバーされるため、受光レンズを簡素化することができ、近接帯が不要となるが、近接帯を排除するものではなく、近接領域を更に良好に捕らえて、より近い距離を検出可能にすることができる。
【0029】
発光側ではそれに応じた共通の発光レンズ又は発光光学系が考えられ、特にそれはまた一つの発光器の光を複数の送出光線に分割するように構成される。
【0030】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような有利な特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に記載されているが、それらに限定されるものではない。
【0031】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】レーザスキャナとして構成された光電センサの断面図。
【
図2a】等間隔の走査を行うために捻転させた行列状の発光器配列の模範例の概略図。
【
図2b】等間隔の走査を行うために捻転させた行列状の発光器配列の別の模範例の概略図。
【
図3】
図2a又は2bに示した発光器配列による光線の進路の模範例を示す図。
【
図4】
図2aに示す捻転させた行列に必要とされる捻転角を計算するための幾何学的な量を具体的に示す略図。
【
図5】
図2bのような発光器配列とそれに対応する受光器配列を用いた場合の各受光器の模範的な受光信号。
【
図6a】
図2bのような発光器配列とそれに対してずれを持つ同様の受光器配列であって、互いに捻転していないものを示す概略図。
【
図6b】
図6aと同様の配列であって互いに45度捻転したものを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1はレーザスキャナとしての実施形態で構成された光電センサ10の概略断面図である。本センサ10は大きく分けて可動式の走査ユニット12と台座ユニット14を含む。走査ユニット12は光学的な測定ヘッドである一方、台座ユニット14には、給電部、評価用電子機器、接続部等、その他の要素が収納されている。稼働時には、監視領域20を周期的に走査するために、台座ユニット14にある駆動装置16を用いて走査ユニット12が回転軸18を中心として回転駆動される。
【0034】
走査ユニット12では、例えばLED、又は端面発光レーザ若しくはVCSELの形をしたレーザを有する発光器22が発光光学系24を用いて互いに角度のずれた複数の発射光線26を生成し、該光線が監視領域20内へ送出される。センサ10内の迷光を避けるため、光を通さない鏡胴28により内部の発射光線26の光路を遮蔽してもよい。発射光線26が監視領域20内で物体に当たると、それに対応する反射光線30がセンサ10まで戻ってくる。反射光線30は受光光学系32により受光器34へ導かれる。受光器34は複数の受光素子34a〜dを備えており、従って、各反射光線30から独自の電気的な受光信号を生成することができる。それには複数のフォトダイオード又はAPD(アバランシェダイオード)の使用が考えられるが、適切に割り当てられた個々の画素又は画素グループを備える画像センサでもよい。別の実施形態として、多数のSPAD(シングルフォトンアバランシェダイオード)を有するSPAD受光器も考えられる。SPADは比較的受光面が広いため、個々の光線センサより大きく拡散し得るような光線に好適である。
図1の断面図では発光器22及び受光器34内の配置がいずれも一列である。後で
図2a〜4及び
図6bに基づいて別の2次元的な配置について説明する。
【0035】
受光器34は回路基板36上に配置されている。該基板は回転軸18にあり且つ駆動装置16のシャフト38に結合されている。受光光学系32は回路基板36上の脚部40により支えられ、発光ユニット22用の別の回路基板42を保持している。2つの回路基板36及び42は互いに結合されており、両者を共通のフレキシブル回路基板として構成することもできる。
【0036】
重ねて配置された2つの回路基板36、42又は回路基板領域と受光光学系32の内部の中心に配置された共通の発光光学系24とを持つ
図1の構造は単なる模範例と理解すべきである。例えば、偏向鏡又はビームスプリッタの使用等、一次元光電センサやレーザスキャナに関して公知である他のいかなる配置でも代替可能である。図示した同軸構造の代わりとして、特に二軸構造について述べる。この場合、発光器22と受光器34は共通の軸上ではなく並べて配置される。同軸構造では、距離が近いと受光スポットが大きくなり、中心部分が発光光学系24に隠れてしまう。二軸構造では、距離が近ければやはり受光スポットが大きくなるが、それと同時に発光器22と受光器34の接続軸上を移動する。三角測量効果とも呼ばれるこのような物体の距離と受光スポットの位置との依存関係は有効に利用することができる。
【0037】
更に、発光器22と受光器34を共通の回路基板上に搭載すること、しかも
図1と違った配置であれば、単一の平面内にある共通の回路基板上に搭載することが考えられる。
【0038】
非接触式の給電及びデータインターフェイス44が可動式の走査ユニット12と静止した台座ユニット14を接続している。台座ユニット14内には制御及び評価ユニット46があるが、少なくともその一部は走査ユニット12内の回路基板36又は他の箇所に収納してもよい。制御及び評価ユニット46は発光器22を制御し、受光器34の受光信号を受け取って更に評価する。また、同ユニットは駆動装置16を制御し、レーザスキャナに関して公知である角度測定ユニット(図示せず)から信号を受け取る。角度測定ユニットは各時点における走査ユニット12の角度位置を特定する。
【0039】
前記評価のため、好ましくは、検知された物体までの距離が公知の光伝播時間法で測定される。これを角度測定ユニットから得られる角度位置に関する情報と合わせれば、走査平面内にある全ての対象点の2次元極座標が各走査周期の完了毎に角度と距離で利用可能となる。各時点の走査平面はその都度の発射光線26又は反射光線30の識別情報及び該光線の受光器34上での検出位置から同様に分かるから、全体として3次元的な空間領域が走査される。
【0040】
これにより物体の位置又は輪郭が分かり、それをセンサインターフェイス48経由で出力することができる。センサインターフェイス48又は別の接続部(図示せず)は逆にパラメータ設定用インターフェイスとして機能する。また、センサ10は危険の発生源(例えば危険な機械)を監視するための安全技術に用いられる安全センサとして構成することもできる。その場合、機械の稼働中に操作者の進入を許してはならない防護区域が監視される。操作者の脚等の防護区域への許可なき侵入を認識すると、センサ10は機械の緊急停止を発動する。安全技術に用いられるセンサ10は特に高い信頼性で作動しなければならないため、例えば機械の安全に関する規格EN13849や非接触型防護装置(beruehrungslos wirkende Schutzeinrichtungen;BWS)に関する機器規格EN61496といった高い安全要求を満たさなければならない。その場合、防護区域への物体の侵入時に安全確保用の電源停止信号を出力するために、特にセンサインターフェイス48を安全な出力インターフェイス(Output Signal Switching Device;OSSD)として構成することができる。
【0041】
図示したセンサ10は回転式の測定ヘッドつまり走査ユニット12を有するレーザスキャナである。別の形態として、回転鏡を用いて周期的な偏向を行うことも考えられる。しかし、発射光線26が複数ある場合にそのようにすると、該発射光線26の監視領域20への入射の仕方がその都度の回転位置に依存してしまうという欠点がある。なぜなら、公知の幾何学で考えれば分かるように、回転鏡を経由すると光線の配置が回転するからである。更に別の実施形態では、前述の回転の代わりに、又はそれに加えて、該回転の軸に垂直な第2の軸を中心として走査ユニット12を上下に揺動させることで、仰角方向にも走査運動を生じさせる。
【0042】
レーザスキャナとしての実施形態もまた模範例である。周期運動のない一次元センサも考えられ、その場合、センサは事実上、台座ユニット14を持たず、静止した走査ユニット12とそれに対応する電子機器のみから成る。
【0043】
センサ10の回転中、各発射光線26によりそれぞれ1つの面が走査される。偏向角が0°の場合、つまり
図1にはない水平な発射光線によってのみ、監視領域20の平面が走査される。他の発射光線は、偏向角に応じて異なる鋭さで形成される円錐の側面を走査する。上方及び下方に異なる角度で偏向される複数の発射光線26の場合、全体的な走査構造は複数の砂時計を入れ子にしたようなものになる。本明細書では時折これらの面も単に走査平面と呼ぶ。
【0044】
図2aは発光素子22a〜dの概略図である。この例では4個の発光素子が正方形状に配置されている。各発光素子22a〜dはケーシング50に囲まれている。ケーシング50があるため、発光素子22a〜bを互いに詰めて配置する密度には限界がある。図から分かるように、列状ではなく2次元的な配置にすれば明らかにコンパクトな配置が達成できる。
【0045】
発光素子22a〜dから成る正方形は適切な角度(この例では26.57度)だけ捻転しているため、最初の直観に反し、列状の配置でなくても等間隔の走査平面が生成され、それらの平面により監視空間が均一な角度分解能で捕らえられる。これが矢印52で示されている。各矢印は走査線を表しており、等間隔且つ平行である。各矢印52は回転軸に垂直であり、また正方形の捻転の大きさを示す角度の基準となる。
【0046】
図2bは別の例を示している。
図2aとは異なり、こちらは4つの発光素子22a〜dが正方形状ではなく、2辺の比が2:1である長方形状に配置されている。従って、今度は角度を45度に合わせれば同様に等間隔の走査平面が生成される。
【0047】
図3は結果的に生じる発射光線26a〜dの横断面図である。これらの光線は期待通り互いに均等な角度間隔を有している。捻転方向(ここでは紙面に垂直な方向)にも間隔があるが、これは測定結果には何ら寄与しないものであり、評価の際に補償することができる。
【0048】
図4は幾何学的な略図である。この図に基づいて、
図2a〜bの発光素子22a〜dから成る配置を捻転させる角度αの計算法について説明する。
図4に示した変数に関し、矢印52に対応して光線が互いに等間隔となる角度、つまりd
1=d
2となる角度αを求める。切片定理(Strahlensatz)によれば、これは前記配置の垂直辺が中点で分割されるというのと同じ意味である。従って、発光素子22bをはさむ2辺を隣辺とする直角三角形において、tanα=b/(2a)という関係が成り立つ。
図2aの正方形状の配置の場合、a=bであるから、α=arctan(1/2)=26.57度となる。
図2bに示した2辺の比が2:1である長方形状の配置の場合、2a=bであるから、α=arctan(1)=45度となる。
【0049】
図2〜4の例はいずれも4つの発光素子を備えているが、本発明は特定の数に限定されない。任意のn×mの行列配置に対し、1/2ではなく、発光素子22a〜dの数及び配置により与えられる別の比率で該配置の垂直辺を分割することにより前記角度を計算することができる。規則性があるため、この場合でも一定の適切な角度がある。計算を行う代わりに、様々な捻転位置で探索を行うことにより角度を見出してもよい。測定分解能を均一にするため、適正な角度により等間隔の測定平面を選ぶことが有利ではあるが、他の実施形態ではその条件から意図的に外れてもよい。いずれにせよ、行列とは異なる他の2次元配置も考えられる。例えば、外側に数本だけ発射光線26を追加した行列や、外側へ行くほど密度が低くなる行列など、あくまで行列をベースとした配置もあるが、一般的な2次元配置でもよい。
【0050】
受光素子34a〜dの配置についても同様である。加えて、更なる適合化のため、例えばリング状の受光素子を用いるなど、受光素子34a〜dの形状及び大きさを変更してもよい。
【0051】
センサ10内の基本配置は、発光素子22a〜dがそれぞれ1本の発射光線を送出し、該光線が反射光線30として1つの受光素子34a〜dに入射する、というものである。従って、発射光線22a〜dが発光光学系24内での分割により初めて生じるのでない限り、各受光素子34a〜dが特定の発射光線22a〜dつまり発光素子26a〜dに割り当てられる。既に説明したように、二軸構造では受光スポットが物体の距離に応じて受光器34上で移動し、同軸構造ではそのサイズが大きくなる。その結果、距離が近い場合、受光スポットは基本配置で割り当てられた受光素子34a〜dにもはや入射しなくなる。
【0052】
そこで本発明は、受光スポットの移動先となる隣の受光素子34a〜dが受光素子34a〜dの配列内にあるという事実を利用する。つまり、特定の発射光線22a〜dを受光すべき本来の受光素子34a〜dとは別の受光素子が、該本来の受光素子34a〜dの追加的な近接領域検出器として機能する。そのために発光素子22a〜dより多くの受光素子34a〜dを設けることも原理的には考えられるが、それには余分なコストがかかる。
【0053】
測定の反復周波数を最大限に高めるために、発光器22の複数の発光素子22a〜d又は受光器34の複数の受光素子を同時に駆動することも可能である。有利な実施形態ではその代わりに多重化駆動を行う。例えば、発光素子22a〜dとそれに各々割り当てられた受光素子34a〜dとがペア毎に巡回的に順次作動状態とされ、その都度監視光線が評価される。追加的な近接領域検出器を得るため、少なくとも1つの発光素子22a〜dについては、その作動中、それに割り当てられた受光素子34a〜dの他、少なくとも1つの別の、好ましくは隣接した受光素子が作動状態とされる(即ち、その受光信号が読み出され、評価される)。
【0054】
多重化駆動には幾つかの利点がある。まず、このようにすれば、ある受光信号がどの発光素子22a〜dつまり監視光線に帰属するかという割り当てを一意に決めることができる。加えて、このようなセンサ10は電子部品の数が大幅に少なくて済む。なぜなら、例えば発光素子22a〜dの駆動段及び受光素子34a〜dの増幅段又はフィルタ段を多重化により重複して利用できるからである。これにより消費電力や廃熱も少なくなる。
【0055】
図5は、
図2bに相当する4個配列の受光素子34a〜d上での受光信号の例を示している。4つの個々の図において凡例に記したようにそれぞれ1つの発光素子22a〜dのみが発光する。4つの個々の図はいずれも各受光信号を物体の距離に依存する強度値で示してる。発光器22及び受光器34の配置はここでは二軸型である。距離に応じた受光スポットの移動は発光器22と受光器34の間の軸上で生じるため、個々の受光素子34a〜dへの影響は非常に異なる。全ての受光素子34a〜dが該当の方向に隣接素子を持っているわけではない。故に、例えば第1の発光素子22aの光は、上段左に示したように、第1の受光器34a上でのみ記録される。これに対し、第3の発光素子22cの光は、それに割り当てられた第3の受光素子34cにより中距離又は遠距離領域で検出される他、他の全ての受光素子34a〜b、34dにより近距離領域でも検出される。故に、受光素子34a〜b、34dの少なくとも1つは追加的な近接領域検出器としての役割を果たすことができる。
【0056】
つまり、少なくとも1つの発光素子22a〜dに対し、近接領域の検出に適した位置に受光素子34a〜dが存在する。二軸構造の場合、好適な隣接素子は、発光器22と受光器34の接続軸の上又はその近傍で、発光器22から遠ざかる方向に存在する。なぜなら、物体が近い場合はこの方向に受光スポットが移動するからである。同軸構造の場合、近接領域においてサイズが大きくなる受光スポットを検出するため、周囲にある隣接素子が適している。
【0057】
全ての監視光線を追加的な近接領域検出器で評価できるわけではないことは、一見すると短所でしかない。しかし、そもそも近接領域では監視光線の密度がまだ非常に高いため、多重走査を行っても測定分解能の点で得られるものは比較的少ない。
【0058】
複数の受光信号の具体的な評価は様々な方法で行うことができる。非常に簡単なのは、そのまま最初に総和信号を求めることである。あるいは受光信号を比較し、例えば最も強い受光信号だけを評価する。更に別の例は、受光信号を個々に評価して光伝播時間等を求め、その結果のレベルで比較、平均化又は他の差し引き計算を行うことである。
【0059】
一実施形態では、近接領域におけるレベル曲線の拡大に加えて、又はその代わりに、作動状態の複数の受光素子34a〜d上における受信光の局所的な分布が評価される。そして三角測量の原理により受光スポットの位置から距離が見積もられる。作動状態の受光素子34a〜dの数によってはこの距離は大まかにしか分からないが、少なくともそれを妥当性検査に利用したり、光伝播時間測定が実行されない又は最新の測定値が出力されていない場合に推定値として利用したりできる。また、受光素子34a〜dの数を増やすことで距離分解能を高めることができる。
【0060】
図6a〜bに基づき、発光素子22a〜dと受光素子34a〜dの配置の別の自由度、即ち、受光素子22a〜dの配置に対する受光素子34a〜dの配置の方向について説明する。これは別の角度βにより表され、その選択によって、近接領域検出器として機能する受光素子34a〜dのために適切な隣接関係を作り出すことができる。
【0061】
図6aはβ=0である第1の例を示している。受光素子34a〜dの行列配置の隙間が発光素子22a〜dの延長線上にあり、共通の隙間となっている。従って受光スポット54は隙間の方向に移動する。この例では、発光素子22aの発射光線に対し、それに割り当てられた受光素子34aに加えて受光素子34cが近接領域検出器として適しており、同様に受光素子34bには受光素子34dが適している。βをこのように選ぶと、複数の受光素子34a〜dに対して直接的な隣接関係が作り出されるという利点がある。
【0062】
図6bはβ=45度である別の例を示している。今度は発光素子22a〜dの配列と受光素子34a〜dの配列の主対角線が一直線になっており、対角線上で下方にある受光素子34dが対角線上で上方にある受光素子34aに対する近接領域検出器として適している。これら2つの例は、近接領域検出器が発光器22と受光器34の間の接続軸上で発光器から遠ざかる方向に見出される、という先の一般的な説明を具体的に示したものである。上記2つのβの例は、そのように表現される位置に受光素子34a〜dが実際に存在するような有利な選び方を示している。他にも、発光素子22a〜d及び受光素子34a〜dの様々な配置に対して、βの適切な値を用いて有効な隣接関係を設計することができる。念のために言うと、
図5の模範的な受光信号はβ=45度の配置に基づいて得たものである。