(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682571
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】動静脈奇形の領域における血流に影響を与えるインプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/95 20130101AFI20200406BHJP
A61F 2/86 20130101ALI20200406BHJP
A61F 2/07 20130101ALI20200406BHJP
【FI】
A61F2/95
A61F2/86
A61F2/07
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-89462(P2018-89462)
(22)【出願日】2018年5月7日
(62)【分割の表示】特願2016-28048(P2016-28048)の分割
【原出願日】2011年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-134477(P2018-134477A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年6月6日
(31)【優先権主張番号】102010044746.3
(32)【優先日】2010年9月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513058079
【氏名又は名称】フェノックス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Phenox GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ロラ
(72)【発明者】
【氏名】カルステン アポルタ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】ヘアマン モンシュタット
【審査官】
今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0152834(US,A1)
【文献】
特表2009−514593(JP,A)
【文献】
特開2002−272855(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/105710(WO,A1)
【文献】
特表2006−522668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/95−2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別のフィラメント(2)から成る1つの壁を備えており、前記複数の個別のフィラメント(2)は、近位側から遠位側へと軸方向で延びるほぼ管状の1つの編組体を形成するように纏められており、前記個別のフィラメント(2)は相互に交差し互いに交点(3)を形成しており、前記インプラント(1)は、導入カテーテル内では減じられた直径を有する形状を成し、埋め込み個所では血管直径に適合しながら拡張するように変形可能であって、前記編組体の近位端部及び/又は遠位端部ではフィラメント端部がそれぞれ少なくとも対になってまとめられ互いに永続的に結合されており、互いに結合されたフィラメント端部は非外傷的に成形される、血管用のインプラント(1)と、
導入ワイヤ(14)と、から成る組み合わせ体であって、前記インプラント(1)は、保持エレメント(15)を介して前記導入ワイヤ(14)に連結されている、組み合わせ体において、
前記インプラント(1)の近位端部に膨大部(6)が位置しており、該膨大部(6)は前記保持エレメント(15)によって形状接続的に保持され、前記保持エレメント(15)の一区分(16)は電解腐食可能に形成されており、
電解的に腐食可能に形成された前記区分(16)は、前記膨大部(6)の間に配置されてこれら膨大部を隔離するピンであり、
前記区分(16)が電解的に溶解された後、前記インプラント(1)の近位端部が解放されることを特徴とする、インプラント(1)と導入ワイヤ(14)とから成る組み合わせ体。
【請求項2】
複数の個別のフィラメント(2)から成る1つの壁を備えており、前記複数の個別のフィラメント(2)は、近位側から遠位側へと軸方向で延びるほぼ管状の1つの編組体を形成するように纏められており、前記個別のフィラメント(2)は相互に交差し互いに交点(3)を形成しており、前記インプラント(1)は、導入カテーテル内では減じられた直径を有する形状を成し、埋め込み個所では血管直径に適合しながら拡張するように変形可能であって、前記編組体の近位端部及び/又は遠位端部ではフィラメント端部がそれぞれ少なくとも対になってまとめられ互いに永続的に結合されており、互いに結合されたフィラメント端部は非外傷的に成形される、血管用のインプラント(1)と、
導入ワイヤ(14)と、から成る組み合わせ体であって、前記インプラント(1)は、保持エレメント(15)を介して前記導入ワイヤ(14)に連結されている、組み合わせ体において、
前記インプラント(1)の近位端部に膨大部(6)が位置しており、該膨大部(6)は前記保持エレメント(15)によって形状接続的に保持され、前記保持エレメント(15)の一区分(16)は電解腐食可能に形成されており、
前記保持エレメント(15)の腐食可能に形成された前記区分(16)は、開口を備えたプレート(17)であって、前記インプラント(1)の近位端部に位置する前記膨大部(6)は前記開口を通って延びており、前記開口の直径は前記膨大部(6)に合わせて調整されており、即ち、前記プレート(17)が損傷されていない状態では前記膨大部(6)は前記開口を通り抜けないようになっており、
前記区分(16)が電解的に溶解された後、前記インプラント(1)の近位端部が解放されることを特徴とする、インプラント(1)と導入ワイヤ(14)とから成る組み合わせ体。
【請求項3】
腐食可能に形成された前記区分(16)は、特殊鋼、マグネシウム、マグネシウム合金、又はコバルト・クロム合金から成っている、請求項1または2記載の組み合わせ体。
【請求項4】
前記フィラメント(2)の近位端部(10)側の最も近くに位置する交点(3)で互いに交差する前記フィラメント(2)が、それぞれ互いに結合されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の組み合わせ体。
【請求項5】
前記フィラメント(2)は、前記インプラント(1)の近位端部(10)に位置する交点(3)で、前記インプラント(1)に固定されたワイヤ(9)によって形成されるループ(8)を通して案内されている、請求項4記載の組み合わせ体。
【請求項6】
前記ループ(8)を形成する前記ワイヤ(9)は、前記インプラント(1)の近位端部(10)に固定されている、請求項5記載の組み合わせ体。
【請求項7】
少なくとも幾つかのフィラメント(2)は前記インプラント(1)の前記近位端部(10)に位置する前記交点(3)でアイレット(12)を形成しており、この交点(3)でそれぞれ前記フィラメント(2)に交差する別のフィラメント(2)が前記アイレット(12)を通って延びている、請求項4記載の組み合わせ体。
【請求項8】
前記インプラント(1)の近位端部(10)に位置する交点(3)の領域で交差する前記フィラメント(2)が、この個所で互いに結束又は接着又はろう接又は溶接されている、請求項4記載の組み合わせ体。
【請求項9】
前記インプラント(1)の近位端部及び/又は遠位端部でまとめられた前記フィラメント(2)の端部に、X線不透過性マーキングが設けられている、請求項1から8までのいずれか1項記載の組み合わせ体。
【請求項10】
前記X線不透過性マーキングは、まとめられた前記フィラメント(2)を取り囲むスリーブ(5)である、請求項9記載の組み合わせ体。
【請求項11】
隣接して位置する、まとめられた前記フィラメント(2)を取り囲む前記スリーブ(5)は、軸方向で互いにずらされている、請求項10記載の組み合わせ体。
【請求項12】
前記導入ワイヤ(14)はガイドワイヤ先端(18)を有しており、該ガイドワイヤ先端は、前記導入ワイヤ(14)の遠位端部からさらに遠位側の方向へ、前記インプラント(1)の内室内へと延びており、または該端部を超えて延びている、請求項1から11までのいずれか1項記載の組み合わせ体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に動静脈奇形の領域における血流に影響を与える、血管用のインプラントであって、複数の個別のフィラメントから成る1つの壁を備えており、前記複数の個別のフィラメントは、手術する医師から見て近位側から遠位側へと軸方向で延びるほぼ管状の1つの編組体を形成するように纏められており、前記個別のフィラメントは相互に交差し互いに交点を形成し、前記インプラントは、導入カテーテル内では減じられた直径を有する形状を成し、埋め込み個所では血管直径に適合しながら拡張するように変形可能であって、前記編組体の近位側端部及び/又は遠位側端部ではフィラメント端部がそれぞれ少なくとも対になってまとめられ互いに永続的に結合されており、互いに結合されたフィラメント端部は非外傷的に成形される、血管用のインプラントに関する。このインプラントは特に、例えば動静脈瘻や動静脈瘤のような動静脈奇形の領域における血流に影響を与えるために使用される。また、このインプラントは、虚血性発作の処置のために、例えば血流の回復、増加、維持のために使用することもできる。このインプラントは回収可能に設計することができる。
【0002】
動静脈奇形は、患者に著しい障害や死に到る程の危険をもたらす恐れがある。これは特に脳領域で生じた場合の動静脈瘻及び動静脈瘤にも該当する。通常、このような奇形には、インプラントによる閉鎖が試みられる。このようなインプラントは、通常、血管内の経路を経てカテーテルを用いて留置される。
【0003】
特に動脈瘤では、プラチナコイルのインプラントが有効であることが実証されている。プラチナコイルは動脈瘤を多かれ少なかれ完全に充填し、血液の流入をほぼ遮断し、動脈瘤を充填し最終的には閉鎖する局所的な血栓を形成する。しかしながらこのような処置は一般的に、その血管系までのアクセスが比較的狭く、いわゆるぶどう状動脈瘤と言われる動脈瘤の場合にのみ適している。血管までのアクセスが比較的広い血管隆起部では、挿入されたコイルが再び浮動し、血管系の他の領域の損傷を引き起こす危険がある。
【0004】
このような場合、動脈瘤の開口部を「格子で塞ぎ」、これにより閉塞コイルの浮動を阻止する一種のステントを設置することが既に提案されている。しかしながら比較的目の粗い壁を有するこのような形式のステントはいくつかの欠点を有している。
【0005】
1つには、このような目の粗い構造は、動脈瘤への血流の進入を阻止しないことにある。従って動脈瘤に閉塞手段が十分に充填されていないならば、血管壁に沿った圧力は変わらずに存在し続ける。しかしながらこのような状態では後からの処置は極めて困難である。何故ならば、ステントが動脈瘤へのアクセスを阻害し、さらなる閉塞手段の挿入を妨げるからである。
【0006】
別の欠点は、ステントが挿入個所に適合しにくいことである。良好な機能のためには、ステントは血管壁に密着すべきであるが、この場合、壁への過剰な圧力は加えられてはならない。狭窄症の場合に血管の拡張のために働くステントとは異なり、このようなステントは、むしろ、血管内腔と血管の内皮壁にできるだけ影響を与えない一種のスリーブと考えるべきである。その結果、このステントは、使用目的に特別に合わせて選択された場合であってもごく限られた要求にしか合わせることはできない。
【0007】
ワイヤ編組体から成るステントは特に、冠状領域での使用が数年来公知である。このようなステントは通常、筒状編組体として形成されており、個々のワイヤフィラメントは、互いに逆方向に延びる螺旋状、若しくは弦巻状で側壁を形成する。これにより半径方向で支持され、血液を通過させることができるメッシュ編組体が生じる。
【0008】
円形編組体として形成されたこのようなステントの問題点は、自由端部で生じるルーズな端部が、その小さな直径により外傷的に作用する恐れがあることにある。
【0009】
US−A−4655771号明細書(Wallsten)によると、このような円形編組体として形成されたステントの端部領域は、ルーズな端部間に配置されたU字形の結合部材によって非外傷性に形成されている。しかしながらこのようなU字形の結合部材により、ステントの変形を引き起こす張力が生じる。
【0010】
US−A−5061275(Wallsten他)によれば、このようなワイヤステントのルーズな端部をレーザー処理により円形になるように溶融させて、外傷発生を防止している。ここで記載されているステントは同様に筒状編組体から成っており、個々のワイヤは、結び目領域で、壁内での応力のない固定を可能にするために凹部を有している。
【0011】
複数のフィラメントから筒状編組体として形成されるこのような形式のステントは、狭窄症の処置のために使用される際には、挿入個所でバルーンを使用して液体により膨張されて、血管壁に固定される。挿入中は、導入ワイヤに取り付けられたバルーンは、上にステントがクランプ固定されている搬送媒体として働く。しかしながらこのような搬送媒体は、脳領域における血流に影響を与えるための若しくは誘導するためのインプラントには使用できない。この場合はむしろ、自力で血管直径に適合し、血管壁に密着するインプラントが有利である。
【0012】
ワイヤ編組体から成るステント又はインプラントの別の問題点はその製造にある。所望のサイズに裁断される編まれたエンドレスチューブとして製造するのが有利である。この場合、裁断されたチューブの両端部の領域にルーズなワイヤ端部が生じ、このワイヤ端部は、例えば上述したような結合部材によって手間をかけて鋭さをなくす必要がある。
【0013】
WO2008/107172A1号明細書に記載されたインプラントでは、編組体は導入カテーテル内で、直径が減じられた伸張された形状を有しており、埋め込み個所では血管直径に適合しながら、かつ編組体密度を増大させながら拡張する。この際、インプラント端部で突出するフィラメント端部は少なくとも対になって一緒に案内され、互いに結合されている。このようにして、その都度の血管直径に適合することができ、かつフィラメント端部が非外傷性であるインプラントが提供される。
【0014】
DE102009006180A1号明細書により、同様に非外傷性の特性を目的としたインプラントが公知である。この場合、ワイヤ端部は第1の編組体端部を成すようにまとめられ、このワイヤ端部は次いで第2の編組体端部を成すようにまとめられる。
【0015】
しかしながらこれら全てのインプラントの埋め込みにおいては、インプラントの解放の際に近位側端部におけるフィラメント端部がしばしば十分に血管壁に向かって拡張しないという問題が生じている。このような作用は文献では部分的には「魚口作用(fish mouth effect)」とも言われ、とりわけ、インプラントの近位側端部では、遠位側端部よりも小さい半径方向の力が作用することに起因するものである。解放の際にはまず、インプラントの上側に位置するカバーが取り除かれ、これにより遠位側端部が拡張するが、近位側端部は依然として分離機構と結合している。分離機構から解放されて初めて近位側端部も拡張する。しかしながら、拡張は付加的な支持なしに行われなければならないので、近位側端部を半径方向外側に向かって押す力は、遠位側端部や中央領域よりも僅かである。
【0016】
魚口作用は、近位側端部におけるフィラメント端部が血管内腔内に突入し、血流を阻害するという結果をもたらす。従ってこのインプラントは、場合によっては十分に非外傷的であるとは言えない。例えば、カテーテルがこのインプラントを通過しなければならないといったさらなる介入は困難であり、又は阻害される。
【0017】
本発明の課題は、近位側端部におけるインプラントの半径方向の拡開が保証されているような冒頭で述べた形式のインプラントを提供することである。
【0018】
この課題は、本発明によれば、特に動静脈奇形の領域における血流に影響を与える、血管用のインプラントであって、複数の個別のフィラメントから成る1つの壁を備えており、前記複数の個別のフィラメントは、近位側から遠位側へと軸方向で延びるほぼ管状の1つの編組体を形成するように纏められており、前記個別のフィラメントは相互に交差し互いに交点を形成し、前記インプラントは、導入カテーテル内では減じられた直径を有する形状を成し、埋め込み個所では血管直径に適合しながら拡張するように変形可能であって、前記編組体の近位側端部及び/又は遠位側端部ではフィラメント端部がそれぞれ少なくとも対になってまとめられ互いに永続的に結合されており、互いに結合されたフィラメント端部は非外傷的に成形される、血管用のインプラントにおいて、フィラメント端部の遠位側に位置する交点で互いに交差する前記フィラメントが、インプラントの近位側端部でそれぞれ直接的又は間接的に互いに結合されていることにより解決される。
【0019】
近位側端部の交点領域でフィラメントを相互に固定することにより、インプラントはこの端部でも十分に半径方向に拡開し、従ってフィラメント端部は血管壁に密着することがわかった。上記先行技術のインプラントにおいてフィラメントの半径方向の拡開が不十分であるのはとりわけ、フィラメント間の交点において拡開を妨げる摩擦が生じることに起因している。このような摩擦は、交点領域においてフィラメントを相互に固定することによりなくされる。むしろ交点は、インプラントの近位側端部に対して相対的に所定の軸方向位置で保持されるので、拡開の際にフィラメントの相互の干渉となる個々の交点のずれはもはや生じない。
【0020】
インプラントの近位側端部における交点とは即ち、フィラメントが互いに交差するがフィラメント端部自体は交差していない交点であり、この交点ではフィラメントが継続的に互いに結合されているものと理解されたい。従って、近位側に位置する交点は、近位側のフィラメント端部から見て僅かに遠位側に位置している。本発明によれば、インプラントの近位側端部における交点とは、インプラントの長手方向に対して直交方向に位置する最初の3つの交点平面における交点であると理解されたい。即ち、最も近位側に位置する交点と、その次に近位側に位置する交点と、3番目に近位側に位置する交点である。有利には、少なくとも最も近位側に位置する交点で互いに交差するフィラメントが互いに結合されているが、それよりもやや遠位側に位置する交点において互いに交差するフィラメントも結合されていると有利である。インプラントの遠位側領域における交点で互いに交差するフィラメントの結合も考えられる。
【0021】
近位側に位置する交点におけるフィラメントの相互結合は異なる形式で行うことができる。即ち、1つの構成では、フィラメントは、別個のワイヤによって形成されたループに通される。この別個のワイヤはインプラントに固定されていて、好ましくはインプラントの近位側端部に固定されている。交点で互いに交差するフィラメントはループを通って案内されるので、交点の軸方向の位置はほぼ固定され、フィラメントは互いに滑動することはできない。従ってフィラメント間の摩擦はなくなる。他方では、フィラメントは、著しく制限されているとは言え、まだ互いに可動性を有しているので、インプラントの拡開は阻害されない。
【0022】
ループを形成するワイヤは特に、近位側端部でフィラメントがまとめられている点を起点として延びていて良い。結合は例えば、レーザー溶接、硬ろう接、接着等により可能である。個々のワイヤは、近位側の固定点から遠位側の方向で伸び、フィラメントの近位側交点の周りに巻き付けられる。
【0023】
選択的には、少なくとも幾つかのフィラメント自体が、最も近位側に位置する交点でアイレットを形成することもでき、アイレットを有するこのフィラメントとこの交点で交差するそれぞれ1つの又は複数の別のフィラメントが、このアイレットを通って延びる。この別のフィラメント自体もこの個所で、相互の固定を保証するためにアイレットを有していても良い。このような構成では、フィラメントを固定するための別個のワイヤは不要である。
【0024】
近位側の交点の領域でフィラメントを結合する選択的な構成も可能である。特にこの場合、フィラメントを互いに結びつける、又は接着する、又はろう接する、又は溶接することができる。そのほかの形状接続的又は材料接続的な結合の形式も考えられる。しかしながらこのような結合は、交点でフィラメントが交差する角度の変更が引き続き可能であるように所定のフレキシブル性を有していなければならない。
【0025】
本発明による筒状編組体は少なくとも円形の組み紐であって、近位側端部又は遠位側端部から見て円形の横断面を有している。しかしながら基本的には円形でなくても良く、例えば楕円形の横断面であっても良い。
【0026】
編組構造体を形成するフィラメントは、金属から成る個別のワイヤであって良いが、より線、即ち、纏められて1つのフィラメントを成し、有利には互いにより合わせられる、直径の小さい複数のワイヤから成っていても良い。
【0027】
本発明によるインプラントは、動静脈奇形をできるだけ血流から遮断するように、血管中の血流に影響を与えることができる。これは、腫瘍に供給する血管であるので、例えば血液循環系から分離すべき血管の閉鎖にも相当する。インプラントは、血管直径に対してインプラント直径を最良に選択する場合、各血管直径に適合させることができなければならない。インプラントは拡張領域及び隆起領域で最大の公称直径を有している。
【0028】
このインプラントはさらに、非外傷的な形式で留置することができ、即ち、バルーンを使用せずに設置することができる。設置装置は、インプラントを、カテーテルから最終的に解放されるまで確実に保持しなくてはならず、特に、完全な解放が行われない限りはインプラントをカテーテル内に引き戻すこともできるのが望ましい。
【0029】
本発明によるインプラントの材料としては特に、高い戻り力若しくはばね作用を有した材料が重要である。これは、超弾性特性又は形状記憶特性を備えた特別な材料、例えばニチノールである。この場合、個々のフィラメントには、種々異なる直径を有するワイヤを使用することもできる。比較的大きな直径を有するワイヤは十分な半径方向の力を有し、比較的小さな直径を有するワイヤは十分に高いメッシュ密度を生ぜしめる。異なる横断面を有するワイヤの利点及び欠点はこのようにして組み合わせる若しくは相殺することができる。ワイヤの横断面は多くの場合、円形であるが、楕円形又は多角形状の横断面又はこれらを組み合わせた横断面を有するワイヤであっても良い。
【0030】
この明細書の範囲では、近位側端部の概念は、処置する医師に対面する端部であると理解されたい。即ち、近位側端部は人体の外部に面している。逆に、遠位側端部とは医師から離れている側であり、即ち人体の内部の方向に進む側である。相応に、近位側及び遠位側は、設置システムの導入ワイヤに面した側、若しくは導入ワイヤから離れた側と理解されたい。
【0031】
本発明によるインプラントは、動脈瘤を封鎖するための編組体について記載されている。このような編組体は、特に動静脈奇形とは異なる形式のもののために、種々様々な目的で使用できることを理解されたい。
【0032】
本発明によるインプラントは、通常のステントの場合のように、必ずしも支持機能を有する必要はない。本発明によるインプラントはむしろまず第一に、奇形領域における血流の誘導のために働く。また、本発明によるインプラントは例えば、動脈瘤内に配置された閉栓手段が血管路内へ浮動することを防止するものである。さらに、血液の動脈瘤への流入及び/又は動脈瘤からの流出を阻止することができる。これは一種のインラインエレメント、内部のスリーブ、又は分流加減器である。しかしながら基本的には本発明のインプラントによって、従来のステントの形式の支持機能を奏することもできる。
【0033】
本発明によるインプラントは複数のフィラメントから成る編組体として形成されており、この編組体は原則的にはエンドレスチューブを成している。その都度必要なインプラント長さを、このエンドレスチューブから裁断することができる。このために個々のフィラメントは螺旋状又はコイル状に巻き付けられており、個々のフィラメントは編み細工として、即ち、互いに上下に交差して取り付けられる。この場合、通常、個々のフィラメントは、一定の角度で交差する2つの方向で巻き付けられていて、これらの方向は互いに例えば90°の角度で交差している。本発明によれば、この角度は、応力のない通常状態で、90°よりも大きく、特に90°〜160°であり、この場合、インプラントの軸方向端部に向かって開かれた角度を意図している。個々のフィラメントのこのような急勾配の巻き付けは、フィラメントが十分に密であるならば、高い表面積密度を有した編組体となり、これは軸方向での延伸の際に極めて小さい直径となるまで引き延ばすことができる。延伸力がなくなり、フィラメント材料の十分な戻し力がある場合、この編組体は公称直径、即ち張力のないもともとの状態に再び近づき、拡張する。これにより埋め込み個所における血管壁に密着し、壁におけるメッシュ構造は密になる。このことは特に血管拡大領域でも該当する。付加的に、編組体の表面密度は使用されている編技術によっても変更可能である。例えば、インプラントを、典型的には動脈瘤をカバーする真ん中の領域で、端部領域よりも密に編むことができ、これにより動脈瘤ネックの十分なカバーが保証されている。他方では、端部領域における表面密度が低いことにより十分なフレキシブル性が保証される。
【0034】
本発明による編組体では、インプラント端部で突出するフィラメント端部は少なくとも対になって案内され、互いに永続的に結合される。これは例えば溶接によって行うことができるが、機械的なクランプ固定、撚かけ、ろう接又は接着によっても可能である。フィラメント端部における結合は被せ嵌められたスリーブによって行うこともできる。このスリーブはフィラメント端部に材料接続的な結合によって、例えば溶接又はクランプ固定により結合することができる。選択的には、フィラメント端部に位置する膨大部が、スリーブを通り抜けて滑脱しないようにスリーブの寸法を設定することもできる。従って、スリーブはフィラメントに対して軸方向で摺動可能であるが完全には引き抜かれない。さらに、スリーブが軸方向で互いにずらされていると好ましい。これにより、スリーブはインプラントの圧縮時に直接上下に位置しないので、インプラントは全体として比較的小さな直径を有する。
【0035】
DE102009006180A1号明細書に記載されているように、フィラメントを第1の編組体端部を成すようにまとめて案内し、この第1の編組体端部をさらに第2の編組体端部を成すように結合させることもできる。
【0036】
フィラメント端部にループを設ける、即ち、フィラメント端部を近位側端部及び/又は遠位側端部でまとめ合わせて、180°戻すように屈曲させることもできる。このようにしてフィラメント端部を非外傷的にできる。これらのフィラメント端部は被せられたスリーブ又は差し込まれたコイルを介してまとめて保持することができる。この結合は、クランプ固定、接着等によって行われる。
【0037】
この場合、又は付加的に、結合されたフィラメント端部は非外傷的に変形される。特にフィラメント端部は遠位側及び近位側で非外傷性の膨大部を有することができ、これは例えばほぼ球状である。膨大部は、レーザー溶接、硬ろう接、接着、クランプ固定等によりフィラメント端部から成形することができる、又はフィラメント端部に取り付けることができる。
【0038】
本発明によるインプラントの設置は実際にはX線コントロール下で行われる。このような理由から、インプラントは、インプラント自体がX線不透過材料から製造されないならば、X線不透過マーカー材料を有しているのが望ましい。このようなX線不透過材料は特に、タンタル、金、タングステン、白金、Pt−Ir合金であり、特にPt−Ir合金は好適である。このようなマーカーは例えばマーカーエレメントとして公知の形式でフィラメント端部に付着させることができるが、マーカーフィラメントとしてインプラントの編組体構造に編み込むこともできる。個々のフィラメントに、白金のようなX線不透過材料から成る螺旋又はワイヤを巻き付けることも可能である。この螺旋若しくはワイヤは、フィラメントに溶接又は接着等することができる。さらに別の構成では、フィラメントにX線不透過材料を被覆又は充填することができる。
【0039】
さらに選択的には、X線不透過性マーキングは、まとめられた前記フィラメントを取り囲むスリーブとして形成されている。このスリーブも同様にフィラメント端部に溶接又はクランプ固定することもできる。X線不透過性のスリーブは、フィラメント端部をまとめて保持するための上記スリーブと同一であって良く、従って二重機能を果たしている。
【0040】
本発明によるインプラントは、通常、バルーンを使用せずに液圧的に拡開され、設置される。それでもインプラントを確実に案内することができるように、導入ワイヤにインプラントを結合させる必要がある。これは本発明によれば、設置のために必要な導入ワイヤの保持エレメントと協働する結合エレメントを介して行われる。このような結合エレメントとして、編組体の互いに結合されたフィラメント端部を設けることができる。
【0041】
血管の分岐部(bifurcations)は本発明によるインプラントでは、例えば、メッシュ密度が比較的低い領域によって生じ得る。
【0042】
編組体は実際には、公知の形式で組まれていて良い。1本組及び/又は多本組がある。特に密な組み物における狭い組み方は個々のフィラメントの高い負荷に通ずる。そういった意味では、多本組の構成は、組み物から張力を得るのに適しているが、高すぎる組み方は編組体における結合部の悪化につながる。組み方とは、1つの所定のフィラメントが、このフィラメントと交差するいくつのフィラメントを、同じ側で通過するか、を意味している。同じ側での通過後、側は変更され、別の側で、相応する数の交差するフィラメントが通過される。例えば2本組の構成では、1つのフィラメントが、このフィラメントに交差する2つの連続したフィラメントの上方を案内されてから、このフィラメントに交差する2つの連続したフィラメントの下側を案内される。
【0043】
フィラメントは特に多層に形成することもできる。層とは、まとめられた平行に延びる個別のフィラメントの数を意味する。一層又は多層であってよく、それぞれ1つの個別のフィラメント又は複数の個別のフィラメントが平行に延びている。編組体の製造時にはボビンから供給されるので、このことは、相応のボビンから1つの個別のフィラメント若しくは複数の個別のフィラメントが同時に、編組体が製造される芯棒に供給されることを意味する。各個別のフィラメントは、1つの個別のワイヤ、又は、纏められ有利には互いに撚り合わせられた複数の個別のワイヤから成る1つのより線から成っていて良い。
【0044】
個別ワイヤは、同じ直径並びに異なる直径を有していて良い。ワイヤは異なる材料(ニチノール、コバルト・クロム合金、白金合金)から成っていて良い。例えばX線不透過材料から成るワイヤは、インプラントのX線可視性を提供する。
【0045】
本発明によれば、フィラメント端部は特に対になって互いに結合されており、多層フィラメントにおいて対であるとはそれぞれ、複数の個別のフィラメントから成る2つの束がまとめられることを意味する。このような結束はこの場合、コンパクトに行うことができ、全てのワイヤが、ほぼ円形の1つの束となるように纏められて、全てのワイヤの端面は一緒に溶融されて、これにより統一的な半円形端部が生じる。これにより、ワイヤの互いに材料接続的な結合が形成され、束の端部は非外傷的に整えられる。
【0046】
選択的に複数のワイヤを平行に案内し、扇形として端面で互いに溶融結合させることができる。このような構成の利点は、フィラメントの結束よりも結合領域における直径が僅かであることである。
【0047】
最後に、別の実施例として、個々のフィラメントの段状の配置が考えられる。即ち、複数のワイヤはずらされて裁断される。各ワイヤは、端面を介して、その隣接して位置するワイヤに結合される。最も長いワイヤが結合体の機能を果たす。段状の配置は、個別のワイヤの扇形のガイド又はコンパクトなガイドと共に行われる。
【0048】
上述したように、編組体において個別のフィラメントが張力をもたずに配置されている場合、インプラント表面をできるだけ密に形成するのが重要である。編組体の柔軟性を維持しなければならないので、フィラメントによる100%の表面カバー率は近似的に可能ではある。しかしながら使用例によっては、比較的僅かな表面カバーも形成され、比較的僅かな表面カバーであっても十分である。
【0049】
表面カバーを改善するために、編組体に、例えば、テフロン、シリコン又は別の人体に無害のプラスチックから成るフィルムを巻き付けることができる。柔軟性及び膨張性を高めるためにこのようなプラスチックフィルムにスリットを設けることができる。この場合、スリットの配置は互い違いになっていて、スリットの長手方向は、インプラントの周方向に沿って延びている。このようなフィルムは例えば、相応の液状のフィルム材料(分散液又は溶液)にインプラントを浸漬し、次いでスリットを、例えばレーザーによって形成することによって得られる。浸漬により例えばメッシュを完全に又は部分的に充填することもできる。
【0050】
選択的には、インプラントの個々のフィラメントをプラスチック分散液又はそのようなプラスチックを含む溶液内へ浸漬することにより被覆し、これによりフィラメント横断面を大きくすることも可能である。この場合、開かれたメッシュは残るが、メッシュサイズは著しく小さくなる。
【0051】
本発明によるインプラントは、戻り特性を備えた通常のインプラント材料から製造され、好ましくは、ばね特性を有した医療用スチール、コバルト・クロム合金、又は形状記憶特性を有する材料から成る。形状記憶特性を有する材料としてはニチノールが重要である。この場合重要であるのは、一方ではインプラントが、導入カテーテルに通すために圧縮形状をとることができることであり、他方では、導入カテーテルによる外的な拘束から解放する際に自動的に拡開し、挿入部位で血管内壁に密着することである。複合材料、例えばニチノールで被覆された白金ワイヤからインプラントを製造することもできる。このようにしてニチノールの形状記憶特性が白金のX線可視性に組み合わされる。
【0052】
インプラントは公知の形式でコーティングすることができる。コーティング材料としては特に、ステントについて記載したのと同様に、増殖抑制性、抗炎性、抗血栓性、成長促進性及び/又は沈着防止性、血液適合性を備えた材料が重要である。インプラントの成長と新規内膜形成を促すコーティングが好ましい。インプラントの外部をこのようにコーティングし、内部には付着を低減する物質、例えば、ヘパリン又は誘導体、ASS又はこのために適したオリゴ糖及びキチン質誘導体を使用するのが有利である。この場合さらに、ナノ粒子から成る層、例えば付着を減じるポリマSiO2から成る超薄層が適している。
【0053】
本発明によれば、互いに結合されたフィラメント端部を結合エレメントとして形成することができる。これは例えば、この結合エレメントに、規定された直径を有する膨大部を配置することにより行われる。この場合、この膨大部はレーザーによる融解により形成することができる。膨大部は球状、楕円状、長方形、正方形等の形状を有していて良く、このために、導入ワイヤに結合する保持エレメントからインプラントが分離しないよう形状接続的に保持される。
【0054】
近位側及び/又は遠位側のフィラメント端部には、近位側方向又は遠位側方向でさらに延び、その端部に膨大部が位置している結合エレメントを取り付けることもできる。この結合エレメントは例えば、2つまたはそれ以上のフィラメント端部が結び付けられた点に取り付けられ、さらに軸方向で延びているワイヤであって良い。特に、近位側端部に膨大部を設けるのが重要であり、ここでは膨大部は、保持エレメントによって形状接続的に保持されるように設けられている。保持エレメントを介してインプラントは導入補助体、特に導入又はガイドワイヤに連結されている。インプラントを分離する際には、膨大部と保持エレメントとの間の形状接続は解消され、インプラントは解放される。また、インプラントの遠位側端部に保持エレメントを付加的に設けることもできる。
【0055】
球状ではない結合エレメントの形状、例えばアンカー、長方形又は別の形状部分も可能である。結合エレメントはキー・ロック原理で機能し、即ち、外面に設けられた相応の切欠又は受容部を有する保持エレメントと協働する。延伸され直径が減径された形状で取り付けられたインプラントを備えた保持エレメントが、カテーテル内部でガイドされている限りは、両者はカテーテル壁によって強制的に結合保持される。保持エレメントがカテーテルから出ると、インプラントは最終直径になるまで拡開し、これにより保持エレメントの受容部から解放される。しかしながら保持エレメントによる結合エレメントの固定と分離は別の形式でも可能である。通常、保持エレメントは回転対称的であって、例えば特殊鋼又はニチノールから製造することができる。
【0056】
保持エレメントの切欠又は受容部へのインプラントの固定は、別個のホース状のカバーによって行うこともでき、このカバーは嵌め込まれた結合エレメント若しくは結合体を備えた保持エレメントの上に形状接続的に被せられる。カバーはインプラントの最終位置に達した後に引き戻され、これによりインプラントを解放する。次いで、保持エレメントは導入ワイヤ、カバー、カテーテルと共に引き戻される。カバーは、プラスチック製のチューブ、プラスチック又は金属から成るスリーブ、金属又はこれらの組み合わせ体から成る螺旋体であって良い。クランプ装置によって、例えばトルクを加えて、不都合な摺動に抗して導入ワイヤにカバーを固定することができる。カバーは導入ワイヤ全体をカバーする必要はなく、保持エレメントと導入ワイヤの遠位側部分上にカバーが延びていれば十分である。カバーの後退はこの場合、カバーから近位側の方向に延びる導入ワイヤに平行な第2のワイヤ又は糸によって行われる。
【0057】
本発明は相応に、上記形式のインプラントと、保持エレメントを介してインプラントが連結されている導入ワイヤから成る組み合わせ体にも関する。
【0058】
上述したように、保持エレメントとインプラントの組み合わせ体は、血管内のカテーテルを通して案内される。このために保持エレメントの外面に、インプラントの結合エレメントを受容するための切欠を設けることができる。この場合、保持エレメントの直径は、保持エレメントが通常のカテーテルを難なく通ってガイドされるが、結合エレメントはカテーテルの内壁によって切欠内に保持されるように寸法設定されている。従って、結合エレメントを球状に形成するのは有利である。何故ならば、通常のカテーテルの内壁とのコンタクト面を、ひいては摩擦とガイド抵抗とを僅かに維持することができるからである。
【0059】
好ましい構成によれば、前記インプラントの近位側端部に膨大部が位置しており、該膨大部は前記保持エレメントによって形状接続的に保持され、前記保持エレメントの一区分は電解的に腐食可能に形成されており、前記区分が電解的に溶解された後、前記インプラントの近位側端部が解放される。この場合、インプラントの分離は単に、カテーテルからの取り外し若しくはカバーの引き戻しによって行われるだけでなく、少なくとも保持エレメントの一区分が電解的に腐食される必要がある。この場合、腐食可能な区分は、保持エレメント内に突入する膨大部の離脱を防止するように配置されている。それは例えば、両膨大部間に配置されていて、両膨大部を隔離するピンであってよく、これにより近位側端部におけるインプラントの直径は保持エレメントから離脱するには大きすぎる。形状接続による保持エレメントへのインプラントの固定を、保持エレメントの一区分の電解分離を介して制御することは、設置の確実な制御性及び場合によってはインプラントの再配置又は引き戻しという観点で特に有利である。勿論、先行技術におけるステント及びコイルについて公知であるような保持エレメントからのインプラントの純粋に電解的な分離も考えられる。
【0060】
別の構成では、腐食可能に形成された前記保持エレメントの前記区分として、開口を備えたプレートが使用され、前記インプラントの近位側端部に位置する前記膨大部は前記開口を通って延びており、前記開口の直径は前記膨大部に合わせて調整されており、即ち、前記開口を通る前記膨大部の通り抜けが、前記プレートが損傷ない状態では行われないようになっている。電圧を加えることによりプレートが少なくとも部分的に溶解することにより、インプラントの膨大部が保持エレメントから外れることができる。
【0061】
電解的に腐食可能な区分のためには、迅速な電解可能性を保証し、さらには医療的に協調性のある種々様々な材料を使用することができる。例えば、特殊鋼、マグネシウム、マグネシウム合金、コバルト・クロム合金である。
【0062】
保持エレメントへのインプラントの形状接続的な取り付けと、インプラントの解放のために行われる保持エレメントの一区分の電解的な溶解とを組み合わせることは、近位側の交点で交差するフィラメントを結合するという上記本発明とは独立して行うこともでき、即ち、請求項1の上位概念の形式のインプラントでも行うことができる。このような変化実施例も本願の対象である。
【0063】
保持エレメントは互いに間隔を置いて配置された2つの固定エレメントから成っていて良く、これらの固定エレメントの間にインプラントは張設されて収容される。この場合、両固定エレメントはインプラントの結合エレメントのために相応の受容部を有しており、インプラントは、その近位側端部及び遠位側端部に相応の結合エレメントを有している。
【0064】
2つの固定エレメントを備えた相応に形成された保持エレメントは、両固定エレメントを、規定された間隔を置いて同じ1つの導入ワイヤ上に有しており、これによりインプラントは所定の長さで、規定された延伸と張力を有する。このようにして、過剰な延びが生じないことや、血管内で解放後に戻り力が完全に有効であることが保証される。しかしながら選択的には固定エレメントを別個の導入ワイヤに固定することもでき、これにより処置医又は相応の固定装置によるインプラントの調節又は延伸が可能である。第2の導入ワイヤはガイド管として形成されていても良い。
【0065】
別の有利な構成によれば、前記導入ワイヤはガイドワイヤ先端を有しており、該ガイドワイヤ先端は、前記導入ワイヤの遠位側端部からさらに、前記インプラントの内室内へと遠位側に延びており、特に、前記インプラントの遠位側端部にまで、またはそれを超えて延びている。このようにして、導入ワイヤが引き戻されない限り、インプラントの解放後もまずさらに1つの対象物がインプラントの内部で延びることができる。これにより、例えばカテーテルを導入ワイヤ、及びそれに接続された導入ワイヤ先端上でガイドすることにより、カテーテル内で血管若しくはインプラントをさらに検査することができる。カテーテルはこのようにして、解放され伸張されたインプラントを通して動かされる。ガイドワイヤ先端は導入ワイヤの最終的な引き戻しにより初めて取り除かれる。
【0066】
ガイドワイヤ先端は回転対称的なデザインを有していることができる。横断面は円形、楕円形、長方形又は基本的に任意の別の形状に成形することができる。ガイドワイヤ先端を可視的に形成するならばさらに有利である。この場合、例えば、ガイドワイヤ先端自体が少なくとも部分的にX線可視性材料から製造されているか、又は、ガイドワイヤ先端が遠位側端部でX線不透過性マーカーを有している。ガイドワイヤ先端は特殊鋼、ニチノール、又は別の金属から製造することができる。
【0067】
ガイドワイヤ先端と実際の導入ワイヤとは一体的に形成することができ、即ち、一貫したワイヤである。しかしながらガイドワイヤ先端と導入ワイヤとを別個に形成し、後で初めて互いに結合させることもできる。多くの場合、ガイドワイヤ先端は、導入ワイヤよりも小さい直径を有しており、即ち、導入ワイヤからガイドワイヤ先端に向かって横断面は減少している。さらにガイドワイヤ先端が幾分円錐状に形成されているならば、即ちガイドワイヤ先端の直径が遠位側方向で減少しているならば、遠位側の方向で柔軟性が高まるので有利である。
【0068】
上記ガイドワイヤ先端を含む変化実施例は、近位側の交点で交差するフィラメントを結合するという上記本発明とは独立して行うこともでき、即ち、請求項1の上位概念の形式のインプラントでも行うことができる。このような変化実施例も本願の対象である。
【0069】
以下に、本発明を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】本発明で使用される編組体の典型的な例を示した図である。
【
図2】一層のフィラメント及び二層のフィラメントを示した図である。
【
図3】1本組編組体及び2本組編組体を示した図である。
【
図4】本発明による編組体のフィラメント端部の接合形式を示した図である。
【
図5a】フィラメント端部の結合に関する選択的な実施例を示した図である。
【
図5b】フィラメント端部の非外傷性の構成を示した図である。
【
図6】フィラメント端部の結合に関する別の選択的な実施例を示した図である。
【
図8】付加的な結合エレメントを有した実施例を示した図である。
【
図9】交点の固定に関する選択的な実施例を示した図である。
【
図10】軸方向でずらされたスリーブを有する実施例を示した図である。
【
図11】保持エレメントにおけるインプラントの固定並びに分離を示した図である。
【
図12】保持エレメントからのインプラントの分離の選択的な実施例を示した図である。
【
図13】保持エレメントからのインプラントの分離の別の選択的な実施例を示した図である。
【
図14】インプラントを貫通して延びるガイドワイヤ先端を有した実施例を示した図である。
【0071】
図1には、互いに編み合わされた複数のフィラメント2から成る本発明によるインプラント1の編組体構造が示されている。個々のフィラメントは、図示の例では、互いに約120°の角度を成して交差しており、この角度の開放側は編組体の開放端部に向けられている。この編組体は、幾分、緊張された又は伸張された状態で示されており、即ち、減じられた直径を有している。
【0072】
角度θは、長手方向軸線に対する編組体角度を示しており、この角度θは、公称直径で弛緩した状態で80°までのものである。カテーテル内で編組体が伸張している場合、角度θは約7°まで小さくなる。
【0073】
編組体の公称直径は、処置すべき個所における対象である血管の内径に合わせて調整されていることが理解される。
【0074】
この編組体は、コンベンショナルな組み機(編組機)で製造され、エンドレス編組体として提供される。編組は芯棒上で行われ、その芯棒の外寸は、後の製品の内径に相当するものである。
【0075】
組み機とその装備は、編組体の構造、例えば、糸の数、糸経過、全周における交点の数及び区分長さ毎の交点の数を規定する。糸の数は、ボビンの数に依存している。この場合、各ボビンは、編組体コアの周りを両方向へ半分までまわる。
【0076】
フィラメントは通常、金属、例えばスチールワイヤ、X線不透過性の白金、又は白金合金又はニチノールから成っている。必要な柔軟性を有するプラスチック繊維を使用することもできる。フィラメントの太さは理想的には0.01〜0.2mm、特に0.02〜0.1mmである。壁面の高いカバー率を得るために、ワイヤ材料の代わりに、例えば上記の太さでかつ、0.05〜0.5mmの幅、有利には0.1mmの幅を有した、平らな帯材料を使用することもできる。
【0077】
本発明による編組体は、個別のフィラメント(1層)から若しくは、2つ(2層)又はそれ以上の個別のフィラメントから製造することができる。
【0078】
図2には交点3が示されており、この交点では、それぞれ2つの平行にガイドされたフィラメントが互いに交差している(2層)、又は1つだけのフィラメント2が互いに交差している(1層)。2つ又はそれ以上のフィラメントが互いにまとめられた場合、これらのまとめられたフィラメントは、1つの同じボビンを介して供給される。
【0079】
図3には、2層のフィラメント2から成る1本組の構造のパターンと2本組の構造のパターンとが示されている。1本組の構造では、フィラメント対が交互に上下に位置する。2本組の構造では、各フィラメント対は図示したように、対向方向に延びる2つのフィラメント対の上側を案内され、次いで、対向方向に延びる2つのフィラメント対の下方を通される。
【0080】
2層又はそれ以上の多層は、編組体の表面積密度を高くすると同時に、編組体の圧縮中の長さ拡張を減じる。しかしながらこのような高い表面積密度は柔軟性を減じ、摩擦及び張力の上昇によっても柔軟性は減じられる。これには、組み数を増やすことで対処できる。即ち、2本組若しくはそれ以上の組み数の構造により柔軟性は高められる。本発明によれば、2層で2本組が有利である。
【0081】
製品のための特有なユニットとなるように裁断した後、編組体の端部を閉じなければならない。このことは編組体の形状安定性を保証し、血管の損傷を回避するために必要である。このためには、編組体の端部における構造体の整列も必要である。
【0082】
図4には、編組体の端部で2つのフィラメント2,2´が1つのフィラメント対4となるようにまとめられる様子が示されており、この場合、フィラメント2,2´は対向方向に延びるフィラメントである。これらのフィラメントはこのために、軸方向へ屈曲され、遠位側で互いに溶接される。この場合、それぞれ、縁部側交点で互いに重なり合って位置するフィラメントは互いに結合される。これらの交点は例えばA−A線上に位置している。
【0083】
図5aには、フィラメント2の端部がスリーブ5によって一緒に保持されている様子が示されている。スリーブ5はフィラメントに溶接又はクランプ固定することができる。さらに同時にスリーブ5は、スリーブがX線不透過材料又はX線可視材料から製造されている場合、埋め込み過程の視覚化のために利用することができる。
【0084】
図5bに示されているように、フィラメント端部は非外傷性の膨大部6を有していて良い。これはフィラメント2自体から形成することができる、又は付加的に取り付けることができる。この膨大部6が十分な直径を有しているならば、それだけでスリーブ5は、フィラメント端部から滑脱することがないように保持される。しかしながら勿論、クランプ、溶接、ろう接、接着等によって、スリーブ5を固定することもできる。
図5a、
図5bにはインプラント1の遠位側端部が示されているが、同様のフィラメントの固定は近位側端部においても可能である。
【0085】
図6には、同様に、スリーブ5によるフィラメント2の端部の固定が、特に遠位側端部における固定が示されている。しかしながらこの場合、前記の例とは異なり、フィラメントの端部が、ループ7を形成するようにスリーブ5内へと戻されている。このようにしても非外傷性の端部を形成することができる。
【0086】
図7には、本発明の思想の核心が示されている。即ち、近位側の交点3における互いに交差するフィラメント2の相互の固定である。これは、交点3の周りにループ8を設けることにより達成される。このループ8は、インプラント1の近位側端部10に固定されたワイヤ9によって形成される。このようにして、インプラント1の拡張時に、最も近位側に位置する交点3がずれることは回避され、これにより、個々のフィラメント2が内部に向かって血管内腔内へと入り込まずに完全に拡張することが保証される。
【0087】
図8の実施例では、
図7の実施例に対して付加的にスリーブ5が設けられていて、この場合、これらのスリーブ5はいくつかのフィラメント端部にだけ設けられている。この場合、これらのスリーブ5はX線不透過材料から製造されていて、X線管理下でインプラント1の取り付けを可能にするために、マーキングスリーブとして働く。
【0088】
付加的に
図8には、インプラント1の近位側端部に取り付けられた結合エレメント11が示されており、この結合エレメント11は、その近位側の端部に膨大部6を有している。この膨大部6は、インプラント1の解放を制御するために働く保持エレメント15への係合のために適している。
【0089】
図9には、近位側の交点3の領域でフィラメント2を互いに結合する選択的な構成が示されている。フィラメントは、近位側の交点3の領域でアイレット12を有している。アイレット12を備えたフィラメント2とこの領域で交差するフィラメント2は、アイレット12を通り抜け、このフィラメント2も、長手方向で動くことを回避するためにこの個所でアイレット12を有している。従ってフィラメント2を固定する手段は、この場合、フィラメント2自体の部分である。
【0090】
図10には、インプラント1の近位側端部又は遠位側端部が示されており、スリーブ5はX線不透過性マーカーとしてフィラメント束上に装着されている。これらのスリーブ5は軸方向である程度ずらされている。このようにして、圧縮状態でのインプラント1の半径方向の広がりが、小さく維持される。即ち、全てのスリーブ5を同じ軸方向位置に取り付けた場合よりも、プロフィール高さは小さい。
【0091】
図11には、インプラント1の固定及び分離が示されており、インプラント1は保持エレメント15を介して導入ワイヤ14に結合されている。保持エレメント15と導入ワイヤ14とは1つのホース状のカバー13によって取り囲まれている。保持エレメント15は切欠を有していて、この切欠には、インプラント1の近位側端部における膨大部6が係合する。カバー13が保持エレメント15を取り囲んでいる限り、膨大部6は保持エレメント15から外れない。しかしながらカバー13が引き戻されると、インプラント1は近位側端部で拡張し、膨大部6は保持エレメント15の切欠から外れる。次いで、保持エレメント15を遠位側端部に有する導入ワイヤ14も引き戻される。
【0092】
図12には、保持エレメント15からインプラント1を分離するための選択的な実施例が示されている。この場合、確かに同様に、結合エレメント11に設けられた膨大部6は保持エレメント15に設けられた相応の切欠に係合しているが、解放は、カバーの引き戻しによって行われるのではなく、電解腐食可能に形成された区分16が、稲妻記号で図示したように電圧を加えられることにより溶解除去されることにより行われる。この区分16は、除去前は、保持エレメントから膨大部6が外れるのを阻止している。これに対して除去後は十分なスペースが生じるので、インプラント1は分離され拡張することができる。保持エレメント15におけるインプラント1の形状接続的な固定を、電解的な分離と組み合わせることにより、保持エレメント15の付加的なカバー又は取り囲みを省くことができる。
【0093】
電解的な分離の別の形態が
図13に示されている。この場合、膨大部6は形状接続的に保持エレメント15に保持されており、真ん中に開口を備えたプレート17が膨大部6の離脱を阻止している。この場合、この開口は、結合エレメント11を通すが、結合エレメント11の近位側端部における膨大部6は通さない大きさの直径を有している。しかしながらプレート17が電解的に溶解除去されると、インプラント1は解放され、拡張する。次いで、導入ワイヤ14は保持エレメント15と共に引き戻される。
【0094】
図14に示した実施例では、ガイドワイヤ区分、即ち、導入ワイヤ14の遠位側に接続されたガイドワイヤ先端18がインプラント1内部を通って延びている。ガイドワイヤ先端18はインプラント1全体を通って延びており、遠位側端部でX線不透過材料から成るマーカー19で終わっている。このマーカー19はこの場合、マーカーコイルとして形成されている。ガイドワイヤ先端18は、導入ワイヤ14自体よりも細く、遠位側の方向で円錐形で延びており、これにより一方では、インプラント1の内室は、圧縮状態でもガイドワイヤ先端18のために十分大きく、他方では、遠位側の方向で柔軟性が高まることが保証される。
【0095】
図11につき説明したのと同様に、カバー13を引き戻すことにより、インプラント1は解放され、従ってインプラント1の拡張が行われる。同様に、導入ワイヤ14が引き戻されない限りは、ガイドワイヤ先端18はインプラント1の内部を通って引き続き存在している。インプラント1の拡張、ひいてはこれに伴うインプラント1の短縮に基づき、ガイドワイヤ先端18は解放後、それ以前よりも幾分インプラント1の遠位側端部を超えて突出する。そして、医師の目視により必要とされたなら、矢印で示したように、カテーテル20が導入ワイヤ14とガイドワイヤ先端18の上に被せられインプラント1を通すように押し込まれる。