特許第6682574号(P6682574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6682574自動操縦装置が作動している自動車両において通信端末を使用する方法及び自動車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682574
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】自動操縦装置が作動している自動車両において通信端末を使用する方法及び自動車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20200406BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20200406BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20200406BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20200406BHJP
【FI】
   B60W50/08
   G08G1/16 C
   B60W50/14
   B60W50/10
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-106384(P2018-106384)
(22)【出願日】2018年6月1日
(62)【分割の表示】特願2016-530517(P2016-530517)の分割
【原出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2018-162061(P2018-162061A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年6月6日
(31)【優先権主張番号】102013012777.7
(32)【優先日】2013年7月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】パトリス、ライラック
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−507673(JP,A)
【文献】 特開2013−121804(JP,A)
【文献】 特開2012−213141(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0189373(US,A1)
【文献】 特開2013−086750(JP,A)
【文献】 特開2007−145207(JP,A)
【文献】 特開平07−251754(JP,A)
【文献】 特開2007−221843(JP,A)
【文献】 特開2002−260174(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0045677(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0117021(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0105613(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 60/00
B60R 16/02
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
B60R 1/00 − 1/04
B60R 1/08 − 1/12
B60R 11/00 − 11/06
G01C 21/00 − 21/36
G08G 1/00 − 99/00
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両(1)を操作するための方法であって、
前記自動車両(1)は、前記自動車両(1)が運転者により誘導される手動運転モードと、前記自動車両(1)の長手方向の誘導及び横手方向の誘導が前記自動車両(1)の制御装置(3)により自動的に実施される自動運転モードとの間で切り替えられ、
少なくとも手動運転モードにおいて、前記自動車両(1)の車両固有の表示装置(4)が、前記自動車両(1)の操舵ハンドル(7)に配設された入力装置(27)によって操作される方法において、
通信接続(15)が、一方では、前記自動車両(1)の通信装置(13)と、前記自動車両(1)から離間している携帯通信端末(14)との間に確立され、
前記自動車両(1)の自動運転モードにおいて娯楽モードが起動され、
娯楽モードにおいて、前記通信接続(15)を介して、前記操舵ハンドル(7)の前記入力装置(27)により生成された入力データが、前記通信端末(14)に送信され、及び/又は、前記通信端末(14)により生成された、前記表示装置(4)で表示されるための画像データが、前記自動車両(1)の通信装置(13)に送信され、これにより、前記入力装置(27)が通信端末(14)に対して入力を行うように使用され、及び/又は、前記表示装置(4)が前記通信端末(14)の画像データを表示するために使用され、
前記操舵ハンドル(7)の前記入力装置(27)はタッチセンサ式表面(29)を備え、
前記入力データは、運転者が前記タッチセンサ式表面(29)に接触している位置に応じて生成され
前記自動車両(1)の分離装置(38)により、娯楽モードにおいて操舵ハンドル(7)が、前記自動車両(1)の操縦可能な車輪の操縦動作から完全に分離されてゼロ位置に維持される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記車両(1)が前記自動運転モードから前記手動運転モードに切り替わるとき、前記娯楽モードが解除される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記通信端末(14)から前記通信装置(13)に伝達される画像データは、前記通信端末(14)の現在の画面内容を含み、
前記表示装置(4)により表示される表示内容(25)は、前記通信端末(14)の画面内容に沿って生成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
センサ(31)により、前記操舵ハンドル(7)の前記タッチセンサ式表面(29)上の運転者の身体部分の位置が前記タッチセンサ式表面(29)に対して検出され、
前記表示装置(4)により表示されている表示内容(25)にカーソル(32)が挿入され、
前記カーソル(32)の位置は、前記タッチセンサ式表面(29)上の前記身体部分の位置に応じて設定される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記自動車両(1)の複合計器(18)の表示部(23、24)が前記表示装置(4)として使用される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ヘッドアップ表示部(24)及び/又は前記操舵ハンドル(7)に配設された表示部が前記表示装置(4)として使用される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記自動車両(1)に配設された少なくとも1つのカメラ(33、34)により提供された画像データに基づく画像が、娯楽モードにおいて前記表示装置(4)により表示される、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
手動運転モードと自動運転モードとの間で切り替え可能な自動車両(1)であって、
前記自動車両(1)は、自動運転モードにおいて前記自動車両(1)の長手方向の誘導及び横手方向の誘導を自動的に実施するように設計された制御装置(3)と、表示装置(4)と、入力装置(27)と、を備え、
前記入力装置(27)は、前記自動車両(1)の操舵ハンドル(7)に配設されるとともに、少なくとも手動運転モードにおいて前記表示装置(4)を操作する機能を果たし、
通信装置(13)は、携帯通信端末(14)に対して通信接続(15)を確立するよう設計されており、
前記自動車両(1)は制御ユニット(12)を備え、
前記制御ユニット(12)は、前記自動車両(1)の自動運転モードにおいて娯楽モードを起動し、娯楽モードにおいて前記通信接続(15)を介して、前記操舵ハンドル(7)の前記入力装置(27)により生成された入力データを前記通信端末(14)に送信し、及び/又は、前記通信端末(14)により生成された画像データを受信して画像データを前記表示装置(4)により表示するように設計されており、
前記自動車両(1)は分離装置(38)を備え、前記分離装置(38)により、娯楽モードにおいて操舵ハンドル(7)が、前記自動車両(1)の操縦可能な車輪の操縦動作から完全に分離されてゼロ位置に維持される、
自動車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両が運転者により誘導される手動運転モードと、自動車両の長手方向の誘導と横手方向の誘導が自動車両の制御装置により自動的に実施される自動運転モードとの間で切り替わる自動車両を操作するための方法に関する。本発明の方法においては、少なくとも手動運転モードにおいて、自動車両の車両固有の表示装置が、自動車両の操舵ハンドルに配設された入力装置により操作される。また、本発明は、このような方法を実施する自動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両を自動的に誘導するための運転者支援装置は、従来技術より既知である。この場合、このような自動操縦装置は、自動車両の長手方向の誘導制御と横手方向の誘導制御の両方を実施することができる。このことは、加速や制動そして操舵角が、自動車両の制御装置により自動的に制御されるということを意味する。この目的のために、制御装置は、対応する制御信号を自動車両の操舵システムと動力伝達装置とに出力できる。この場合、自動車両の自動的な誘導は、運転者が関わることなく実施される。
【0003】
原則として、自動運転は、所定の運転状況においてのみ可能である。自動車両が手動運転モードから自動運転モードへ切り替えられてこれにより制御装置により自律的に誘導され得るかどうかということは、制御装置によって常にチェックされている多数のパラメータに依存している。自動操縦装置を起動するための所定の基準が現在のところ満足されているか否かを確認すべく、制御装置によりチェックが継続的になされている。このような基準の1つは、長手方向のマークが車道に適用されて、これがカメラからの画像データに基づいて制御装置により検出され得ることを前提としてもよい。別の基準は、例えば、所定の目的地に対して計画されたルートについて、自動運転の基礎とされ得る十分に正確な道路地図が利用可能である、ということであってもよい。更に別の条件は、例えば、車道の状態や現在の天候条件や現在の交通密度に関するものであり得る。
【0004】
制御装置により基準が満たされていると確認されたら、自動運転モードに切り替わる可能性が、対応する出力装置によって、すなわち具体的には光によって及び/又は音によって、運転者に合図される。このようにして、自動操縦装置の起動の可能性を知らされると、運転者は例えば、自動車両にこの目的のために設けられた操作装置に、対応する入力を行うことにより、運転者自身で自動運転モードに切り替えることができる。自動運転モードが起動された状態において、運転者には、自動操縦装置を再び解除して自動車両が運転者自身により制御される手動運転モードに自動車両を再び切り替える可能性が常にあることとなる。この目的のために必要なのは、例えば運転者が操舵ハンドルを再度把持して操縦可能な車輪を運転者自身で操縦することだけである。このような手順は、例えばUS2010/0228417号、DE102011013023A1号及びUS2012/089294号の文献に記載されている。これらの文献は、いかにして運転者が自分の車両に対する制御を再び有し得る(回復し得る)かという点について様々な方法を提案している。
【0005】
自動車両が制御装置により自動的に誘導されているとき、特定の場合において、自動車両の制御を再び運転者に自動的に返す必要がある。このことは、例えば、衝突の危険性が検出された場合や、周囲条件が急激に変わって雨等が検出された場合に必要である。しかしながら、このような状況における自動車両と運転者との間の通信が問題であることがわかっている。車両の制御が運転者に返された場合、これに対応してこの事実が運転者に合図されなければならず、また、運転者が自動車両の制御を特に迅速且つ確実に有し得る(回復し得る)ことが保証されなければならない。このようなことは従来技術においては困難であるとされている。これは、特に、自動運転モード中において、運転者が通常は現在の道路状況に集中していないため、更には運転者が操舵ハンドルを握っていないためである。例えば、自動運転モード中に、運転者が携帯電話やいわゆるタブレットPCやノートパソコン等の携帯通信端末を操作していると、このような事態が発生する。運転者がこのような状況において自動車両を再び制御しなくてはならない場合、運転者が操舵ハンドルを再び握って視線を道路の前方に再び向けるまでに比較的長い時間がかかり得ることが経験的にわかっている。したがって、まず運転者に対して自動運転モード中において何ら制限なく自分の通信端末を使用できるという可能性を与え、次いで自動運転モードから手動運転モードに切り替わる際に運転者の注意が道路上の事象に特に迅速に向けられることを保証する手段を講じるという特別な課題が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、序論で述べた一般的な方法において、自動運転モードから手動運転モードに切り替わる際に、いかにして運転者の注意を特に迅速に自動車両の誘導に再び向け得るかということに関する解決策を示すことである。
【0007】
この目的は、本発明に従い各独立特許請求項に記載の特徴を有する方法及び自動車両により達成される。本発明の有利な実施形態は、従属特許請求項、発明の詳細な説明及び図面の対象である。
【0008】
本発明の方法において、自動車両は手動運転モードと自動運転モードとの間で切り替えられる。手動運転モードにおいて、自動車両は運転者により、すなわち具体的には自動車両のペダルを使用しつつ操舵ハンドルを使用しながら誘導される。これに対して、自動運転モードにおいては、自動車両の長手方向の誘導及び横手方向の誘導は自動車両の制御装置により自律的又は自動的に実施される。このことは、制御装置が、自動車両の操舵角や自動車両の加速及び制動作用を自動的に、つまり運転者が関わることなく制御するということを意味する。少なくとも手動運転モードにおいて、自動車両の車両固有の表示装置が、操舵ハンドルに配設されている入力装置を利用して操作される。このような表示装置は、自動車両に固定的に組み込まれている。こうして、運転者は対応する入力を操舵ハンドルの入力装置に対して行うことができ、これにより表示装置を制御することができる。通信接続が、自動車両の通信装置と、自動車両から分離した携帯通信端末との間に確立される。自動運転モードにおいて娯楽モードが起動される。娯楽モードにおいて、通信接続を介して、操舵ハンドルの入力装置により生成された入力データが通信端末に伝達され、これにより、通信端末が操舵ハンドルの入力装置により制御されるか、又は入力装置が通信端末に対する入力を行うように使用される。これに補足して或いはこれに代えて、娯楽モードにおいて、通信端末により生成されて車両固有の表示装置における表示となる画像データが自動車両の通信装置に伝達され、これにより表示装置が通信端末の画像データを表示するように利用され得る。
【0009】
したがって、本発明は、自動運転モードにおいて通信端末を操作するためのインターフェースとして利用される自動車両の車両固有のユーザーインターフェースを提供する。一方、運転者は自分の通信端末を操舵ハンドルの入力装置を介して、正確には運転者の手を操舵ハンドルから放す必要なく操作することができる。他方において、運転者は携帯通信端末の表示部を見る必要はない。なぜならば、携帯通信端末の画面内容は車両固有の表示装置に表示され得るからである。このようにして、運転者は、手動で自動車両を誘導しているときに通常とっている姿勢を維持することができる。これにより、自動運転モードから手動運転モードに切り替わる際に、運転者は既に操舵ハンドルを握っており、及び/又は運転者の視線は既に走行方向の前方に向けられているということが実現され、この結果、貴重な時間が確保される。自動運転モードから手動運転モードに切り替わるとき、このようにして運転者は特に迅速に自動車両を制御するため(自動車両の制御を回復するため)、危険な状況が回避され得る。本発明による更なる利点は、通信端末の使い勝手の良さにある。具体的には、運転者は、通信端末を、使い勝手の良い車両のユーザーインテーフェースであって多くの場合より便利で人間工学的なものを用いて操作でき、これにより例えば通信端末にインストールされたアプリを利用することができる。この点において、例えば、通信端末に比較してかなり大きい自動車両の表示部及び/又は操舵ハンドルの人間工学に基づく入力装置が使用されている。娯楽モードにおいて、運転者は自動車両のユーザーインターフェースを介して通信端末を制御する可能性を有している。
【0010】
本例において、携帯通信端末は、他の端末と通信するよう設計された可動端末を意味するものとして理解される。例えば、通信端末は、表示部を有する携帯電話(いわゆるスマートホン)、タブレットPC、ノートパソコンや他の端末であり得る。このような通信端末には、任意の操作システムがインストールされており、且つ別のアプリがインストールされ得る。
【0011】
例えば、車両固有の通信装置は、標準通信プロトコルを用いて携帯通信端末への通信接続を設立するように設計され得る。好適には、このような通信接続は、無線データ交換接続であり、これを介して入力データ及び/又は画像が無線で送信される。通信接続のための通信規格として、例えばいわゆる「Bluetooth(登録商標) Low Energy」規格、及び/又は例えばいわゆる「Miracast」等の「WLAN」又は「WiFi」ファミリーの通信規格、及び/又はAirplay規格及び/又はWiDi規格等のメーカー固有通信規格が使用され得る。
【0012】
車両において、通信装置が、例えばマイクロコントローラの形態にある制御ユニットに割り当てられる。制御ユニットは、通信端末との通信、ひいては通信端末とのデータ交換を制御する。制御ユニットは、入力データを提供してこのデータを制御信号として通信端末に伝達し、及び/又は、通信端末の画像データを受信して、この画像データに対応する表示内容を車両内の表示装置により表示させることができる。
【0013】
好適には、自動運転モードにおいてのみ、運転者は、通信端末を車両のユーザーインターフェースを介して操作する可能性を有し得る。一実施形態において、自動車両が自動運転モードから手動運転モードに切り替わると、娯楽モードが解除され得る。こうして手動運転モードにおいて、画像データ及び/又は入力データの伝達が阻止される。例えば、このモードでは、自動車両と通信端末との間の通信も中断される。このようにして、運転者は道路上の事象に再び集中することができ、通信端末の操作により道路状況から注意が逸れてしまわないことが保証される。自動車両が自動運転モードから手動運転モードに切り替わると、したがって娯楽モードが解除されると、操舵ハンドルの入力装置を再び従来の態様で使用して表示装置を制御することができる。手動運転モードにおいて、好適には、例えばカーナビゲーションの指示や車両の消費価値等の運転固有事項又は車両関連事項の情報のみが表示装置に表示される。
【0014】
好適には、通信端末から通信装置に対して伝達された画像データは、通信端末の現在の画面内容を含んでいる。こうして、自動車両の表示装置により表示される表示内容が通信端末の画面内容に沿って生成され得る。これは、具体的には、表示装置により表示される表示内容は、受信した画像データに基づく通信端末の画面内容に常に同期しているということを意味している。換言すれば、通信端末の表示部に今現在表示されているのと同じ表示内容が車両の表示装置によって表示される。したがって、運転者は通信端末を見る必要が全くないし、通信端末のデータ内容にアクセスできるように通信端末を実際に手に取る必要もない。これは、通信端末が運転者の手の届く範囲にないという状況、例えば荷物入れの中にあるというような状況において特に有利であるとわかっている。更に、これにより、運転者は常に間断なく車両固有の表示装置に視線を向けることができ、これにより手動運転モードに切り替わる際に、道路状況を即座に把握することができる。
【0015】
操舵ハンドルの入力装置がタッチセンサ式の表面、すなわちいわゆる「タッチパッド」を備え、入力データが、運転者がタッチセンサ式表面に接触している位置に応じて生成されれば有利である。運転者は、操舵ハンドルの入力装置を介して、従来の通信端末の通常の場合と同様の態様で、すなわちタッチセンサ式表面を用いて通信端末を操作できる。したがって、操作性が特に良い。
【0016】
以下のような事項が問題であると見出だされている。例えば携帯電話等の通常の通信端末においては、いわゆるタッチスクリーンが使用されており、この場合、ユーザーは、表示部上のどのシンボルに自分が実際に接触しているか常にわかっている。このことは、表示装置から空間的に分離されたタッチセンサ式表面には当てはまらない。このため、所望の機能を選択できるように、運転者にタッチセンサ式表面におけるどの位置に接触すべきかを報知することを保証する追加の手段を講じる必要がある。
【0017】
この問題を解決するために、操舵ハンドルのタッチセンサ式表面上において当該表面に対する運転者の身体部分(具多的には指)の位置をセンサによって検出し、カーソルを今現在表示装置により表示されている表示内容に挿入することが提案されている。カーソルの位置はタッチセンサ式表面上の身体部分の位置に応じて設定される。したがって、本実施形態において、タッチセンサ式表面へのアプローチの間に身体部分の位置は既に計測されており、表示装置上のカーソルの位置がタッチセンサ式表面に対する身体部分の現在の位置に対応するように、カーソルの表示がなされる。したがって、所望の機能を選択するために、例えば表示装置上の所望のオブジェクトを選択して割り当てられたアプリを起動するために、自分の身体部分をどの方向に移動させるべきかを、運転者は即座に把握することができる。タッチセンサ式表面に対する接触がなされたら、タッチセンサ式表面に対する接触を示すようにカーソルは表示装置上において拡大表示され得る。
【0018】
これに補足して或いはこれに代えて、操舵ハンドルに配設された表示部であって、タッチセンサ式表面を備えた表示部を表示装置として使用することもできる。このような表示部は、入力装置及び表示装置として同時に機能するタッチスクリーンとなる。これに補足して或いはこれに代えて、いわゆるヘッドアップ表示部すなわちプロジェクタを表示装置として使用することもできる。このプロジェクタにより、表示内容はフロントガラスに投影される。
【0019】
運転者の直前に配置されるか又は進行方向において運転席の前に配置されている、自動車両の複合計器の表示部が表示装置として使用されることは、非常に一般的であり得る。
これにより自動運転モードにおいても、運転者の視線が常に進行方向において前方に向けられているということが達成される。既に説明したように、このことは、手動運転モードに切り替わる際に、運転者が特に迅速に道路上の事象を再び良好に概観できるという点において有利である。
【0020】
一実施形態において、自動車両の分離装置により、娯楽モードにおいて自動車両の操縦可能な車輪の操縦動作から完全に操舵ハンドルが分離され得る。このような分離装置により、娯楽モードにおいて、操舵ハンドルが常に同じ角度位置(具体的にはゼロ位置)に維持され得る、正確には自動車両の操縦可能な車輪が今現在配置されている角度位置から独立して維持され得る、ということが達成される。したがって、車輪の操縦が操舵ハンドルの旋回をもたらすことはない。これは、娯楽モードにおいて通信端末を操作する場合に運転者が悪影響を受けないということとともに、操舵ハンドルの角度位置を絶えず適切にする必要なく且つこれに応じて姿勢を合わせる必要もなく、入力装置を常に使用することができる点において有利である。
【0021】
娯楽モードにおいて、自動車両に配設された少なくとも1つのカメラにより提供された画像イメージに基づく画像が、表示装置により表示され得る。例えば、自動車両の側面に配設されて例えばサイドミラーに組み込まれたカメラであって、自動車両に沿った側方周囲領域を捕捉するカメラが関与し得る。次いで記録された画像が表示装置に表示され、これにより運転者は自動車両の周囲の状況を知る。特に、本例において、一方では左側の外部ミラーに組み込まれたカメラにより記録され、他方では右側の外部ミラーに組み込まれたカメラにより記録されたビデオデータを表示することが可能である。したがって、運転者は、表示装置における自動車両の左側及び右側の状況に関する表示をそのまま受信できるため、表示装置から視線を外す必要がない。
【0022】
また、本発明は、手動運転モードと自動運転モードとの間で切り替え可能である自動車両であって、自動運転モードにおいて自動車両の長手方向の誘導と横手方向の誘導とを自動的に実施する制御装置を備えた自動車両に関する。自動車両は、更に表示装置と入力装置とを有する。入力装置は、操舵ハンドルに配設されて少なくとも手動運転モードにおいて表示装置を操作する機能を果たす。自動車両は、携帯通信端末に対する通信接続を確立するように設計された通信装置と、制御ユニットと、を備えている。制御ユニットは、自動運転モードにおいて娯楽モードを起動し、娯楽モードにおいて、通信接続を介して操舵ハンドルの入力装置により生成された入力データを通信端末に送信し、及び/又は、通信端末により生成された画像データを受信してこれを表示装置により表示する。
【0023】
本発明による方法に関して呈示された好適な実施形態とこれに対応する利点が、本発明による自動車両に適用される。
【0024】
本発明の更なる特徴は、請求の範囲、図面及び図面の説明から明らかとなる。上記の全ての特徴とこれらの特徴の組合せ、及び図面の説明及び/又は図面に記載の下記の全ての特徴とこれらの特徴の組合せは、それぞれ特定された組み合わせにおいてのみならず他の組合せ又はそれらにより利用され得る。
【0025】
本発明を、例示的な実施形態に基づいて添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態による自動車両の概略図である。
図2】複合計器と操舵ハンドルとを含む自動車両の内部の前方領域の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示す自動車両1は、例えば車である。自動車両1は運転者支援装置2を備えている。運転者支援装置2は、自動車両1を自動的に誘導するように設計され、これにより自動操縦装置として機能する。運転者支援装置2は、制御装置3と、自動車両1内に固定的に設置された表示装置4とを備えている。制御装置3は自動車両1の操舵装置5に連結されており、自動車両1を例えば事前に定めたナビゲーションルートに沿って誘導するよう自動車両1の操舵角を自律的に又は自動的に制御するために、操舵装置5に制御信号を出力することができる。
【0028】
更に、操舵ハンドル7が操舵装置5に接続されている。制御装置3は、また、自動車両1の長手方向の誘導を制御するように、対応する制御信号8を自動車両1の動力伝達装置9に出力することができる。制御信号8の動力伝達装置9への出力の結果、自動車両1は制御装置3により自動的に加速したり制動を加えたりすることができる。
【0029】
また、制御装置3は、複数のセンサを備え得るセンサ装置10から検出データを受信する。例えば、センサ装置10は、例えば超音波センサ及び/又は電波センサ及び/又は光学センサ等の、障害物を検出するための環境センサを備え得る。これに補足して或いはこれに代えて、センサ装置10は、自動車両1の周囲の現在の環境条件を検出するためのセンサをも備え得る。例えば、これには雨センサが含まれる。
【0030】
更に、センサ装置10は、自動車両1の現在の地理的位置を特徴付ける位置データを提供するように設計されたナビゲーション受信機も備え得る。
【0031】
運転者支援装置2又は自動車両1は、手動運転モードから自動運転モードに切り替え可能であって、言うなればこの結果自動操縦装置が起動される。この自動運転モードにおいては、制御装置3が操舵角、ひいては自動車両1の横手方向の誘導及び長手方向の誘導を制御する。
【0032】
自動車両1が手動運転モードにある場合、制御装置3は、自動運転モードを起動する所定の基準が満足されているか否かを常にチェックしている。このような基準は、センサ装置10のセンサデータに基づいてチェックされる。制御装置3が、現時点において自動運転モードを起動可能であると確認すると、このことが運転者に合図され、運転者は、対応する入力装置に入力を行いつつ最新の運転モードを起動できる。或いは、運転者は、運転モードを手動運転モードのままにして自動車両1を自分自身で誘導し続けることもできる。自動運転モードが起動されると、自動車両1は制御装置3によって自律的に誘導される。
【0033】
自動運転モードの作動中、自動運転モードが解除されて手動運転モードに切り替わる2つの可能性がある。1つ目として、運転者自身が、自動車両1を自動運転モードから手動運転モードに再び切り替える可能性を常に有している。これは、例えば上述の入力装置により実施され得る。しかしながら、2つ目の可能性として、制御装置3が上述の基準のうちの1つがもはや満足されていないと確認した場合、自動運転モードが自動的に制御装置3によって自律的に、すなわち運転者から独立した態様で再び解除されることがあり得る。例えば、このような事態は、センサ装置10の検出データに基づいて障害物への衝突に関する多大な危険度及び/又は雨が検出された場合、及び/又は自動運転モードの起動から所定の時間が経過した場合、及び/又は自動車両1のナビゲーションのための正確な道路地図が利用できなくなった場合等に発生し得る。このような場合、自動運転モードが解除されて手動運転モードが再起動される前に、車両の誘導制御を運転者に返すことが意図される移行モードが起動され得る。この移行モードにおいて、制御装置3は運転者が操舵ハンドル7を作動して自動車両1に対する制御を有しているか否かをチェックする。この目的のために、例えば、操舵ハンドル7が運転者自身によって旋回されているかどうかについて確認するチェックがなされ得る。これに補足して或いはこれに代えて、操舵ハンドル周縁部に対する接触を検出し得るタッチセンサが操舵ハンドルに配設され得る。更にこれに補足して或いはこれに代えて、以下に詳しく述べるようにカメラを使用することもできる。
【0034】
表示装置4に関して、以下の実施形態が提供され得る。表示装置4は、原則として自動車両1の複合計器の一部であり、以下の部品のうちの1つを備えている。
−自動車両1のフロントガラス11に取付けられた透明表示部であって、運転席の直前、すなわち車両の中央長手方向軸に対して運転者側に配設された透明表示部、及び/又は
−フロントガラス11に表示内容を投影するヘッドアップ表示部(15°乃至50°の比較的広い水平開口角を有するいわゆるパノラマ・ヘッドアップ表示部を使用することもできる)、及び/又は
−運転席の前の複合計器又はダッシュボードに直接的に組み込まれた表示部、及び/又は−例えば入力装置の一部としてのタッチセンサ式表面を有するタッチスクリーンである、操舵ハンドル7上の表示部。
【0035】
図1を参照すると、自動車両1は、表示装置4に連結されるとともにこれを駆動する電子制御ユニット12も備えている。制御ユニット12は、更に操舵ハンドル7に配設された前記入力装置に連結されている。この入力装置は図1に特に記載されていない。制御ユニット12は、更に制御装置3に連結されてこれと交信する。また、制御ユニット12は、通信端末14と無線通信することが意図された車両固有の通信装置13に連結されている。一方の通信装置13と他方の通信端末14との間で、通信接続15を設立することができる。この通信接続15は無線であり既知の通信規格のうちの1つを利用可能である。
通信端末14は、例えば、タッチスクリーンとして具体化され得る表示部16を有する携帯電話として具体化される。
【0036】
図1の制御ユニット12は制御装置3から離間するようにして具体化された部品として示されているが、制御ユニット12と制御装置3が、操舵装置5及び動力伝達装置9を駆動し且つ表示装置4を駆動する同一のコントローラにより形成されていてもよい。
【0037】
図2は、フロントガラス11と、操舵ハンドル7と、複合計器18とを含む自動車両1の内部の前方領域の概略図である。本例において、図2は運転者の視点からの操舵ハンドル7を示している。それ自体公知の態様で、操舵ハンドル7はフロントガラス11の前に、すなわち一方のフロントガラス11と他方の運転席との間に配設されている。複合計器18は、操舵ハンドル7とフロントガラス11との間に配置されて、選択的にタコメータ、オドメータ、適切であればエンジン回転計等を有し得る。
【0038】
操舵ハンドル7は、例えばリング形状において具体化された操舵ハンドル周縁部19を有している。操舵ハンドル周縁部19は、ハブ21に操舵ハンドルスポーク20を介して連結されている。適切であれば、操作要素が操舵ハンドルスポーク20上に配設され得る。ハブ21は、このハブ21に組み込まれたエアバッグ(図示せず)用のカバー22を保持している。カバー22は運転者に面しており外部から見ることができる。カバー22及び/又はハブ21は、原則として多様な幾何学的形状を有し得る。例えば、円形状、矩形状、楕円形状、及び図2に示すD字形状が例として挙げられ得る。
【0039】
上述のように、表示装置4は、例えば、複合計器8に組み込まれた表示部23及び/又はヘッドアップ表示部24を有し得る。表示部23は、例えばLCD表示部であり得る。
ヘッドアップ表示部24は、フロントガラス11に表示内容を投影することが意図されたプロジェクタである。このような表示内容を図2において25で示す。カメラ26が選択的にヘッドアップ表示部24に組み込まれる。このカメラは運転者と一列に並んでおり、これにより運転者が撮像されている画像を提供する。このような画像を制御装置3に伝達することができる。この画像に基づいて、自動運転モードから手動運転モードに切り替わる際に、制御装置3は運転者が上述の移行モードにおいて運転者が操舵ハンドル7に対する制御を有しているか否かをチェックすることができる。更に、運転者の疲労度が選択的に判定され得る。
【0040】
上述のように、入力装置27が操舵ハンドル7に配設され得る。この入力装置は、タッチセンサ式表面29を有するタッチパッド28を有し得る。特に、タッチセンサ式表面29は、カバー22の表面を形成している。タッチパッド28は、運転者の指がタッチセンサ式表面29に接触している位置を検出するように設計されている。このような情報は、制御ユニット12により記録される。選択的に、入力装置27は、操舵ハンドルスポーク20の少なくとも1つに配設された操作要素を有し得る。このような操作要素が図2において30で示されている。運転者は、例えば操作要素30によって自動運転モードを起動及び/又は解除することができる。
【0041】
運転者自身が自動車両1を誘導する手動運転モードにおいて、表示装置4は、操舵ハンドル7に配設された入力装置27を用いて、すなわちタッチセンサ式表面29によって及び/又は上述の操作要素によって制御され得る。手動運転モードにおいては、マルチメディア・データ等でない運転に関する情報だけが表示装置4に表示され得る。しかしながら、自動運転モードへの切り替えが実施されると、制御ユニット12が娯楽モードを起動し、このモードにおいて表示装置4はマルチメディア・データについても使用され得る。この娯楽モードにおいて、入力装置27と表示装置4とを含む自動車両1のユーザーインターフェースが、通信端末14を操作するインターフェースとして使用され得る。つまり、表示装置4が通信端末14の出力ユニットとして機能するとともに、入力装置27が通信端末14の入力部として機能する。ここに、通信接続15が設立されている。タッチセンサ式表面29は通信端末14を制御するものとして機能し、したがって通信端末14に対して入力を行うものとして機能する。この目的のために、制御ユニット12は入力データを通信端末14に伝達し、これにより通信端末14が制御される。一方、表示部16の現在の画面内容を含む画像データが通信端末14から制御ユニット12に伝達される。換言すれば、表示部16に現在生成されている表示内容を含むデータが、通信端末14から制御ユニット12に無線で伝達される。こうして、この表示内容が表示装置4により表示される。具体的には、表示装置4により生成された表示内容(例えば表示内容25)が通信端末14の表示部16の表示内容に同期してこれに一致するように、制御ユニット12が表示装置4を駆動する。
【0042】
このようにして、通信端末14は、言わば自動車両1の娯楽情報システムの一部となる。タッチセンサ式表面29から表示装置4が空間的に離れていることを考慮して、センサ31を使用することができる。センサ31は、タッチセンサ式表面29上にある運転者の指の位置を、タッチセンサ式表面29に対して、具体的には、表面29に平行な方向において、すなわち面29の長手方向及び横手方向において検出する。次いで、カーソル32が表示内容25中に挿入され得る。表示内容25中のカーソルの位置は、タッチセンサ式表面29上で測定された指の位置に応じて設定される。したがって、表示内容25に対するカーソル32の位置は、表面29又はハブ21に対する指の位置に対応する。このため、運転者は、例えば、入力装置27を用いて通信端末14の所望のアプリを起動できる。
【0043】
図1を参照すると、制御ユニット12は、カメラ33、34により提供される画像データ又はビデオデータを受信することができる。カメラ33、34は、自動車両1に横方向に配設されて、例えば各外部ミラーに組み込まれ得る。カメラ33、34のビデオデータは、表示装置4により表示内容25の環境において表示され得る。この場合、例えば図2に概略的に示すように、表示内容25は3つの領域、すなわち中央領域35と左縁領域36と右縁領域37とに区画される。左側のカメラ33のビデオデータが左縁領域36に表示され得るとともに、右側のカメラ34のビデオデータが右縁領域37に表示され得る。
したがって、運転者は表示装置4による周囲領域の画像の表示を受け、これにより常にフロントガラス11を見ていることができる。このため、自動運転モードが解除される際に、注意が即座に道路状況に向けられる。本例において、ビデオデータは娯楽モードにおいてのみ表示され、手動運転モードに切り替わった後に再び解除される。
【0044】
図1に示すように、自動車両1は分離装置38を備え得る。分離装置38は、娯楽モード又は自動運転モードにおいて操舵ハンドル7が自動車両1の操縦可能な車輪の操縦動作から完全に切り離され、これにより車輪の操縦中に旋回しないように具体化される。分離装置38は、例えば、操舵ハンドル7が常にゼロ位置に維持されることを保証し得る。これにより、入力装置27の操作が簡易なものとなる。
図1
図2