特許第6682579号(P6682579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6682579カテーテルのすべて又は一部を製造するための、長いブロックを有するPEBAの使用
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  • 特許6682579-カテーテルのすべて又は一部を製造するための、長いブロックを有するPEBAの使用 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682579
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】カテーテルのすべて又は一部を製造するための、長いブロックを有するPEBAの使用
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/06 20060101AFI20200406BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20200406BHJP
   A61L 29/02 20060101ALI20200406BHJP
   A61L 29/16 20060101ALI20200406BHJP
   A61L 29/12 20060101ALI20200406BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20200406BHJP
   C08G 69/40 20060101ALI20200406BHJP
   C08G 69/44 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A61L29/06
   A61L29/14
   A61L29/02
   A61L29/14 200
   A61L29/16
   A61L29/12 100
   A61M25/10
   A61M25/10 502
   C08G69/40
   C08G69/44
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-145180(P2018-145180)
(22)【出願日】2018年8月1日
(62)【分割の表示】特願2016-561833(P2016-561833)の分割
【原出願日】2015年4月13日
(65)【公開番号】特開2019-661(P2019-661A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2018年8月29日
(31)【優先権主張番号】1453224
(32)【優先日】2014年4月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウスターシュ, ルネ−ポール
(72)【発明者】
【氏名】マレ, フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ギャマシュ, エリク
(72)【発明者】
【氏名】レイナ−バレンシア, アレハンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ローリン, ダミアン
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00156035(EP,A1)
【文献】 特表2001−516621(JP,A)
【文献】 特開2000−197704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/18
A61M 25/10
C08G 69/40
C08G 69/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された破裂強度を有する、カテーテルバルーン等の膨張可能なカテーテル要素を製造するための、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含有するコポリマーの使用であって、コポリマーが、以下の特性:
− 600から2000g/molの範囲内のPEブロックの数平均分子量
− 12000から32000g/molの範囲内のPAブロックの数平均分子量
を有し、コポリマーが主にPTMGをベースに構成されるポリエーテルブロックを含む、使用。
【請求項2】
前記PEブロックが、コポリマーの総重量に対して1重量%〜10重量%であり、前記PAブロックが、コポリマーの総重量に対して80重量%〜99重量%、好ましくは90重量%〜99重量%である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
コポリマーのショアD硬度(ISO 868)が72以上、好ましくは72から76の範囲内である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
コポリマーの曲げ弾性率(ISO 178)が525MPa超、好ましくは600から900MPaの範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
PEブロックの数平均分子量が、650から1000g/molの範囲内である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
PAブロックの数平均分子量が、13000から25000g/molの範囲内である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
PAブロックが、6、11、12、4.6、4.12、4.14、4.18、6.6、6.10、6.12、6.14、6.18、Pip.10、9.6、9.12、10.10、10.12、10.14、10.18、10.36、10.T、6.T、9.T、MXD.6、MXD.10、B.10、B.12、B.14、B.18、B.36、P.10、P.12、P.14、P.18、P.36、それらのランダム及び/又はブロックコポリマー並びにそれらの混合物から選択される少なくとも一のモノマーから形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記少なくとも一のPEブロックが、PEG、PPG、PO3G、PTMG等のポリアルキレンエーテルポリオール、NH2鎖末端を有するポリオキシアルキレン配列を含有するポリエーテル、それらのランダム及び/又はブロックコポリマー並びにそれらの混合物から選択される少なくとも一のポリエーテルを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
コポリマーが、PTMG単独で構成されるポリエーテルブロックを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
ポリアミドベースの熱可塑性ポリマー組成物であって、
− 30重量%から100重量%の、改善された破裂強度を有する、膨張可能なカテーテル要素を製造するための、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含有するコポリマーであって、以下の特性:
− 600から2000g/molの範囲内のPEブロックの数平均分子量
− 12000から32000g/molの範囲内のPAブロックの数平均分子量
を有し、主にPTMGをベースに構成されるポリエーテルブロックを含む、コポリマー;
− 0から70重量%の、ポリアミド、TPU、COPE、PVC、ABS、PS、PET、PETE、PVDF、ETFE、ポリイミド、PEEK、PEKK、シリコーンから選択される少なくとも一のその他のポリマー
− 組成物の総重量に対して0から40%の添加剤
を含む、組成物。
【請求項11】
添加剤が、BaSOタイプ及び/又はWCタイプのトレーサー、抗菌剤若しくは殺菌剤又はレーザー・マーカー、着色剤、特に顔料、染料、回折顔料、真珠層などの干渉顔料、反射顔料、及びそれらの混合物等の効果を有する顔料;UV安定剤、抗老化剤、酸化防止剤;流動化剤、耐摩耗剤、離型剤、安定剤;可塑剤、耐衝撃性改良剤;界面活性剤;光学的漂白剤;シリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、膨張グラファイト、酸化チタン又はガラスビーズ等の充填剤;繊維;ロウ;並びにそれらの混合物から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
顆粒又は粉末を構成するための、請求項10又は11に記載の組成物の使用。
【請求項13】
改善された破裂強度を有する膨張可能なカテーテルバルーンを製造するための、請求項12に記載の顆粒の使用。
【請求項14】
以下の工程:
− 改善された破裂強度を有する、膨張可能なカテーテル要素を製造するための、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含有するコポリマーであって、以下の特性:
− 600から2000g/molの範囲内のPEブロックの数平均分子量
− 12000から32000g/molの範囲内のPAブロックの数平均分子量
を有し、主にPTMGをベースに構成されるポリエーテルブロックを含む、コポリマーを提供する工程;
− 少なくとも一の他のポリマー及び/又は少なくとも一の添加剤と、前記コポリマーとを混合し、請求項9又は10に記載の組成物を製造する任意選択の工程;
− 200から300℃の範囲内の温度T0で、前記コポリマー又は前記組成物を提供する工程;
− Tm(融点)未満のコポリマーの温度でバルーンを形成する工程;
− バルーンを回収する工程
を含む、耐破裂性カテーテルバルーンを製造するための方法。
【請求項15】
少なくとも一の次の工程:ドライブレンド、押出成形、特に共押出成形、管押出成形、オーバーモールド、ブロー成形、及びそれらの組み合わせを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項10又は11に記載の組成物の一又は複数の層を含むカテーテルバルーンを製造するための、改善された破裂強度を有する、膨張可能なカテーテル要素を製造するための、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含有するコポリマーの使用であって、コポリマーが、以下の特性:
− 600から2000g/molの範囲内のPEブロックの数平均分子量
− 12000から32000g/molの範囲内のPAブロックの数平均分子量
を有し、主にPTMGをベースに構成されるポリエーテルブロックを含む、コポリマーの使用。
【請求項17】
耐破裂性の膨張可能なカテーテル要素、特にカテーテルバルーンであって、カテーテル要素の組成物が請求項10又は11に記載の組成物である、カテーテル要素。
【請求項18】
1から250μmの範囲内、好ましくは2から60μm、好ましくは3から50μm、好ましくは4から40μmの壁厚を含む、請求項17に記載のカテーテル要素
【請求項19】
請求項17又は18に記載のカテーテル要素を含むカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に、バルーン又はカフのような、膨張式の血管内カテーテル要素に関する。
【0002】
本発明は特に、下記に記載のような、良好な「コンプライアンス」と破裂強度を兼ね備えた医療用カテーテルバルーンの製造のための新規の熱可塑性ポリマー組成物の使用に関する。とはいえ、本発明の組成物を用いてカテーテルの他の部分又はすべてを作ることが想定されうる。
【背景技術】
【0003】
以下に、本発明がカテーテルバルーン、それに特有の問題、及びその機能性との関連で提供されるが、本発明の組成物はカテーテルの他の部分、特にステムの技術的要件を満たすことが可能であることが明らかに理解される。
【0004】
カフ付き拡張カテーテルは、冠動脈疾患の治療のために広く用いられる方法である、経皮的冠動脈形成術(PTCA)において使用される。PTCA処置では、カフ付き拡張カテーテルを患者の冠動脈内に進め、カテーテルカフを患者の動脈の狭窄領域内で膨張させて動脈通路を開き、結果として血流を増大させる。一般的に、膨張したカフの形状及び直径は、予め定められており、動脈を広げるが、その壁をさらに広げることがないように、通常は広がった動脈の内腔の元の直径にほぼ相当する。こうして広がった動脈内の血流が、カフが収縮すると再開し、拡張カテーテルをそこから取り外すことができる。
【0005】
再狭窄の進行を防止し、こうして拡大されたスペースを補強するために、医師は多くの場合、病変部位の動脈の内側に、一般的にステントとして知られている血管内プロテーゼを埋め込む。ステントは、血管を修復するため、又は血管の弱くなった部分を補強するためにも使用されうる。一般的に、ステントは、血管形成術用カテーテルのバルーンに類似するカテーテルバルーンを用いて、収縮した冠状動脈内部の目的の位置に配置され、バルーンを拡張することにより、より大きな直径に広げられる。バルーンは、その後カテーテルを取り外すために収縮され、ステントは、このように拡張された病変部位の動脈内に配置される。
【0006】
血管形成術において一般的に使用される、先行技術の拡張カテーテルバルーンは、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィンアイオノマー、及びポリアミド(PA)などの非弾性ポリマー材料から形成される。カテーテルバルーンで使用される場合、これらの非弾性材料の利点の一つは、バルーンの引張強度及びその結果としての平均破壊圧力が高いことである。
【0007】
特に、患者の血行路を効率的に開くのに十分な圧力を狭窄血管にかけるには、カテーテルバルーンは高い引張強度を有していなければならない。さらに、高引張力のバルーンは、加圧中にバルーン破裂のリスクなしに高い圧力まで膨張させることができる。破裂のリスクなしにカテーテルの輪郭が小さくなるように、最終的に高強度バルーンの壁厚を薄くすることができる。具体的には、破裂圧力と引張応力との間に直接的な関係がある(これに関して、Byron Flagg(Putnam Plastics)による「Medical Device and Diagnostic Industry:New extrusion techniques advance catheter design」、http://www.mddionline.com/article/new−extrusion−techniques−advance−catheter−designを参照)。
【0008】
最低限の弾性を有するこれらの非弾性材料の欠点は、「コンプライアンス」の欠如である。つまり、これらの材料は、「非コンプライアント」材料及び「半コンプライアント」材料に分類され、特にPET及びポリアミドを包含する。非コンプライアント材料は、膨張圧の増加レベルに応じてわずかな拡張しか示さない。これらの非コンプライアント材料の場合、バルーンの、その直径を広げる能力が限られていることから、膨張バルーンは、膨張したら、狭窄を圧縮し、患者の血行路を開くのに十分は作業直径をバルーンが有するように、十分に大きくなければならない。しかし、大型の非コンプライアントバルーンは、カテーテルが患者の狭い血管系に進むのを難しくすることがある。なぜなら、このようなバルーンは、膨張していない状態では、半径方向外側に延びる(パンケーキのような)平板状の翼を形成するからである。したがって、本発明の目的は、より良好なコンプライアンスを有するカテーテルバルーンの材料を提供することである。コンプライアント材料から形成されるバルーンは、患者の曲がりくねった血管系をたどって狭窄を通過し、カフが狭窄部位に正しく配置されるのを可能にするようなプローブの能力を向上させる、増大した弾力性を有する。バルーンの弾力性は、カフの曲げ弾性率により表される。比較的弾力のある(又は柔らかい)バルーンは、比較的低い曲げ弾性率、すなわち約1000MPa未満を有する。
【0009】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロック(PEBA)とを含有する特定のコポリマー中のその他のポリマー材料は、カテーテルの製造において滑剤面を改善するために使用され、それにより患者の血管内へのより快適な挿入が可能になる。PEBAはまた、カテーテルバルーンを製造するためにも使用することができ、高い引張強度、高伸度、及び低曲げ弾性率といった有利な特性を有するこの材料は、上記の要件を部分的に満たすことを可能にする。
【0010】
現在用いられているPEBA材料のコンプライアンスは、応力(MPa) -ひずみ(%)曲線により示され、その輪郭は、一般的に線形である第一の「コンプライアント」セグメント及び応力-ひずみ曲線の閾値に対応する遷移セグメントにより分離されている第二の「非コンプライアント」セグメント(線形ひずみの後に続かない)により特徴付けられる。
【0011】
PEBAバルーンは、多くの場合、その膨張時の破裂のリスクのためにカテーテル用途には許容されない不均一な壁厚を有することがわかる。
【0012】
したがって、本発明の目的は、PEBAベースのバルーン又はカフが可能な限り最も均一な壁厚を有するように、それらの製造を改善し容易にするための方法を提供することである。この特性は、該バルーン又はカフの製造中であれ使用中であれ、それらの膨張時の破裂のリスクを制限するのに望ましい。
【0013】
本発明は特に、カテーテルバルーンの壁厚の均一性のより良好な制御を可能にし、したがって不良バルーンの量を削減する「コンプライアント」材料を提供することに関する。本発明の目的はまた、脈管への挿入中に可能な限り非侵襲的なバルーンカテーテルを使用することと、より少ないポリマー出発物質を使用しながらも、このようなバルーンの破裂のリスクを制限することによりその使用の安全性を向上させることの両方を可能にする、可能な限り薄い壁を有するバルーン又はカフを製造することである。
【0014】
本出願人は今回、特定の輪郭曲線を有するPEBAの特別な選択がバルーンの壁厚の均一性をその製造時に容易に制御することを可能にすることを見出した。驚くべきことに、中間セグメントがコンプライアントセグメントと非コンプライアントセグメントとの間で可能な限り短いか又は存在しないコンプライアンス曲線を有する特定のPEBA材料は、均一な壁厚のバルーンを容易に製造することを可能にする。用語「均一な壁厚」とは、その表面全体にわたって同じ厚さを有する壁を意味する。
【発明の概要】
【0015】
これは、PA及びPEブロックの数平均分子量に応じて以下に定義されているような、「長いブロック」として知られている、本発明のポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含有するコポリマーの、本発明に従った使用により得られる。
【0016】
したがって、本発明の一つの主題は、改善された破裂強度を有する膨張可能なカテーテル要素(例えばカテーテルバルーン)を製造するための、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含有するコポリマーの使用であり、ここで、前記コポリマーは以下の特性を有する。
− 500g/molを超える、PEブロックの数平均分子量
− 10000g/molを超える、PAブロックの数平均分子量
【0017】
本結果は、ブロックの長さに応じて高くなるブロックの不適合性(すなわちポリマー鎖(より正確にはこの場合PE及びPA)が長いほど、それらの不適合性が増す)のために長いブロックエラストマー性熱可塑性ポリマーを合成するのが一般的には一層難しく、従来の短いブロックエラストマーに対するかなりの優位性を提示せずに実施することが困難である限りにおいて、とりわけ驚くべきことである。
【0018】
当業者の一般的な教示に反して、本発明者らは、このような特に長いPA及びPEブロックの存在が、実施に関して影響を与えることなく、同等の分子量に対する破裂強度及び剛性を向上させることを可能にすることを指摘してきた。
【0019】
本発明は、カテーテルバルーンにおける使用のために求められる、以下に定義されている三つの特性、すなわち弾力性、破裂強度、及び「コンプライアンス」を含む材料の製造のための、特定の型のエラストマー性熱可塑性ポリマーの使用によって先行技術の欠点を克服することを可能にする。
−国際規格ISO 178に従って測定された、1000MPa未満、525MPa超の弾力性すなわち曲げ弾性率;
−国際規格ISO 527に従って測定された、破裂強度(特に引張強度)すなわち20MPa超の限界応力及び22%超の限界ひずみ;
−「コンプライアンス」、すなわちそのために限界応力とフロープラトー時のひずみの差が0.5MPa未満であり、そのために限界ひずみとフロープラトー時のひずみの比率が0.5超であり、応力とひずみがISO規格 527に従って測定されている。
【0020】
ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含有するコポリマーとして知られ、「PEBA」と略されるアミドブロックコポリエーテルに関しては、それらは、特に以下のような、反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの重縮合から生じる。
1) ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ジカルボキシル鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック
2) ポリエーテルジオールとして知られる脂肪族アルファ−オメガジヒドロキシル化ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化及び水素化によって得られる、ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックとジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック
3) ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテルジオール(特にこの場合に得られる生成物はポリエーテルエステルアミドである)
【0021】
ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えば連鎖制限ジカルボン酸の存在下でのポリアミド前駆体の縮合から得られる。ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えば連鎖制限ジアミンの存在下での ポリアミド前駆体の縮合から得られる。
【0022】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むポリマーはまた、ランダムに分布した単位を含みうる。
【0023】
三つの型のポリアミドブロックを有利に使用することができる。
【0024】
第一の型によると、ポリアミドブロックは、ジカルボン酸、特に4から20個の炭素原子を含むもの、好ましくは6から18個の炭素原子を含むものと、脂肪族又は芳香族ジアミン、特に2から20個の炭素原子を含むもの、好ましくは6から14個の炭素原子を含むものとの重縮合から得られる。
【0025】
挙げることができるジカルボン酸の例は、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、並びにテレフタル及びイソフタル酸、さらに二量体化脂肪酸を含む。
【0026】
挙げることができるジアミンの例は、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、及び2−2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体、及びパラ−アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、及びイソホロンジアミン(IPDA)、2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、及びピペラジン(Pip)を含む。
【0027】
有利には、PA4.12、PA4.14、PA4.18、PA6.10、PA6.12、PA6.14、PA6.18、PA9.12、PA10.10、PA10.12、PA10.14、及びPA10.18ブロックが存在する。
【0028】
第二の型によると、ポリアミドブロックは、ジアミン又は4から12個の炭素原子を含むジカルボン酸の存在下で、6から12個の炭素原子を含む一若しくは複数のラクタム及び/又は一若しくは複数のアルファ,オメガ−アミノカルボン酸の縮合から生じる。挙げることができるラクタムの例は、カプロラクタム、オエナントラクタム、及びラウリルラクタムを含む。挙げることができるアルファ,オメガ−アミノカルボン酸の例は、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸を含む。
【0029】
有利には、第二の型のポリアミドブロックは、ポリアミド11、ポリアミド12又はポリアミド6から作られる。
【0030】
第三の型によると、ポリアミドブロックは、少なくとも一のアルファ,オメガ−アミノカルボン酸(又はラクタム)と、少なくとも一のジアミンと、少なくとも一のジカルボン酸との縮合から生じる。
【0031】
この場合、ポリアミドポリアミドブロックPAは、
− X個の炭素原子を含む直鎖脂肪族又は芳香族ジアミン(複数可)と、
− Y個の炭素原子を含むジカルボン酸(複数可)と、
− Z個の炭素原子を有するアルファ,オメガ−アミノカルボン酸及びラクタム、並びにX1個の炭素原子を有する少なくとも一のジアミンとY1個の炭素原子を有する少なくとも一のジカルボン酸(ここで、(X1、Y1)は(X、Y)とは異なる)との等モル混合物から選択されるコモノマー{Z}(複数可)
との重縮合であって;
− 前記コモノマー{Z}(複数可)が、ポリアミド前駆体モノマー全体に対して50%まで、好ましくは20%まで、より有利には10%までの範囲の重量割合で導入され;
− 上記重縮合が、ジカルボン酸から選択される連鎖制限剤の存在下における
重縮合により調製される。
【0032】
有利には、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸は、連鎖制限剤として使用され、ジアミン(複数可)の化学量論に対して過剰に導入される。
【0033】
この第三の型の一変形例によると、ポリアミドブロックは、必要に応じて連鎖制限剤の存在下で、6から12個の炭素原子を有する少なくとも二のラクタムの縮合又は少なくとも二のアルファ,オメガ−アミノカルボン酸の縮合、又は異なる数の炭素原子を有するラクタムとアミノカルボン酸との縮合から生じる。挙げることができる脂肪族アルファ,オメガ−アミノカルボン酸の例は、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸を含む。挙げることができるラクタムの例は、カプロラクタム、オエナントラクタム、及びラウリルラクタムを含む。挙げることができる脂肪族ジアミンの例は、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリメチルヘキサメチレンジアミンを含む。挙げることができる脂環式二酸の例は、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸である。挙げることができる脂肪族二酸の例は、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、二量化脂肪酸(この二量化脂肪酸は、好ましくは少なくとも98%のダイマー含有量を有し、好ましくは水素化されており、Uniqema社から商標名Pripol(登録商標)で、又はHenkel社から商標名Empol(登録商標)で市販されている)、及びα、ω−ポリアルキレン二酸を含む。挙げることができる芳香族二酸の例は、テレフタル酸(T)及びイソフタル酸(I)を含む。挙げることができる脂環式ジアミンの例は、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、及び2−2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体、並びにパラ−アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)を含む。一般に用いられるその他のジアミンは、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、及びピペラジンである。
【0034】
挙げることができる第三の型のポリアミドブロックの例は以下の通りである:
− 6,6/6(6,6はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を表し、6はカプロラクタムの縮合から生じる単位を表す)
− 6.6/6.10/11/12(6.6はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを表す。6.10はセバシン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを表す。11はアミノウンデカノン酸の縮合から生じる単位を表す。12はラウリルラクタムの縮合から生じる単位を表す。)
【0035】
ポリアミドセグメントは芳香族ポリアミドを含んでもよいが、この場合、著しく劣ったコンプライアンス特性が予測される。
【0036】
ポリエーテルブロックは、アルキレンオキシド単位から構成される。この単位は、例えばエチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位又はテトラヒドロフラン単位であってもよい(ポリテトラメチレングリコール配列となる)。ゆえに、PEG(ポリエチレングリコール)ブロック、すなわちエチレンオキシド単位から構成されるもの、PPG(プロピレングリコール)ブロック、すなわちプロピレンオキシド単位から構成されるもの、PO3G(ポリトリメチレングリコール)ブロック、すなわちポリトリメチレングリコールエーテル単位から構成されるもの(ポリトリメチレンエーテルブロックを有するこのようなコポリマーは、米国特許第6590065号に記載されている)、及びPTMGブロック、すなわちポリテトラヒドロフランとしても知られるテトラメチレングリコール単位から構成されるものが用いられる。PEBAコポリマーは、その鎖中に複数の型のポリエーテル、ブロック又はランダム型のコポリエーテルを含んでもよい。ビスフェノール、例えばビスフェノールAのオキシエチル化により得られるブロックを用いることもできる。後者の生成物は、欧州特許(EP)第613919号に記載されている。
【0037】
ポリエーテルブロックは、エトキシル化一級アミンから構成されていてもよい。挙げることができるエトキシル化一級アミンの例は、下記式:
(式中、m及びnは1と20の間であり、xは8と18の間である)の生成物を含む。このような生成物は、CECA社から商標名Noramox(登録商標)で、Clariant社から商標名Genamin(登録商標)で市販されている。
【0038】
軟質ポリエーテルブロックは、NH2鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックを含んでもよく、該ブロックは場合によりポリエーテルジオールとして知られる脂肪族アルファ−オメガジヒドロキシル化ポリオキシアルキレンブロックのシアノアセチル化により得ることができる。特に、Huntsman社の市販品であるJeffamine製品(例えばJeffamine(登録商標)D400、D2000、ED2003及びXTJ542;日本国特許(JP)第2004346274号、日本国特許(JP)第2004352794号、及び欧州特許(EP)第1482011号に記載)を用いることができる。
【0039】
ポリエーテルジオールブロックは、得られた状態で用いられ、カルボキシ末端基を有するポリアミドブロックと共重縮合されるか、アミノ化されてポリエーテルジアミンに変換され、カルボキシ基を有するポリアミドブロックと縮合される。PAブロックとPEブロックとの間にエステル結合を有するPEBAコポリマーを2工程で調製するための一般的な方法は周知であり、例えばフランス特許(FR)第2846332号に記載されている。PAブロックとPEブロックとの間にアミド結合を有する本発明のPEBAコポリマーを調製するための一般的な方法は周知であり、例えば欧州特許(EP)第1482011号に記載されている。ポリエーテルブロックはまた、ランダムに分布した単位を有する、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーを生成するために、ポリアミド前駆体及び二酸連鎖制限剤と混合することもできる(1工程法)。
【0040】
無論、本発明の本明細書における名称PEBAは、Arkemaより販売されているPebax(登録商標)製品、Evonikより販売されているVestamid(登録商標)製品、EMSより販売されているGrilamid(登録商標)製品、DSMより販売されているKellaflex(登録商標)製品又は他の供給者からのその他任意のPEBAを等しく指す。
【0041】
有利には、PEBAコポリマーは、PA6、PA11、PA12、PA6.12、PA6.6/6、PA10.10及び/又はPA6.14、好ましくはPA11及び/又はPA12ブロックから作られるPAブロック、並びにPTMG、PPG、及び/又はPO3Gから作られるPEブロックを含有する。主にPEGから構成されるPEブロックをベースとするPEBAは、親水性PEBAの範囲内に分類される。主にPTMGから構成されるPEブロックをベースとするPEBAは、親水性PEBAの範囲内に分類される。
【0042】
有利には、本発明の組成物に使用される前記PEBAは、少なくとも部分的には生物由来の出発材料から得られる。
【0043】
用語「再生可能源からの出発材料」又は「生物由来の出発材料」は、生物由来の炭素又は再生可能源の炭素を含む材料を意味する。具体的には、化石原料から得られる材料とは異なり、再生可能な出発材料から構成される材料は14Cを含有する。「再生可能源の炭素含有量」又は「生物由来炭素の含有量」は、ASTM規格 D 6866(ASTM D 6866−06)及びASTM規格 D 7026(ASTM D 7026−04)の適用により決定される。例として、ポリアミド11をベースとするPEBAは、少なくとも部分的は生物由来の出発材料から生じ、少なくとも1%の生物由来炭素の含有量を有し、これは少なくとも1.2´101412C/14C同位体比に相当する。好ましくは、本発明によるPEBAは、炭素の総質量に対して少なくとも50質量%の生物由来炭素を含み、これは少なくとも0.6´10−1212C/14C同位体比に相当する。再生可能源からの出発材料から生じる、PA11ブロック並びにPO3G、PTMG及び/又はPPGを含むPEブロックを含有するPEBAの場合、この含有率は有利に高く、特に最大100%であり、これは1.2´10−1212C/14C同位体比に相当する。
【0044】
有利には、前記PEブロックは、コポリマーの総重量に対して1〜20重量%、好ましくは1−10重量%であり、前記PAブロックは、コポリマーの総重量に対して80〜99重量%、好ましくは90〜99重量%である。
【0045】
有利には、コポリマーのショアD硬度(国際規格ISO 868に従う)は72以上、好ましくは72から76の範囲内である。
【0046】
本発明に用いられるPEBA中のポリエーテルに対するポリアミドの重量比率は、9から50、好ましくは15超である。
【0047】
PEブロックの数平均分子量は、有利には600g/mol超、好ましくは600から2000g/molの範囲内、好ましくは650から1000g/molである。
【0048】
PAブロックの数平均分子量は、有利には12000から32000g/mollの範囲内、好ましくは13000から25000g/molである。この分子量範囲は、本発明の組成物の所望の弾力性レベルを維持することができるように選択される。本発明によるこれらのポリマーの固有粘度は、1.5を超える。
【0049】
該コポリマーの曲げ弾性率は、有利には525MPaを超える(ISO規格 178に従って測定)。該コポリマーの曲げ弾性率は、好ましくは600から900MPaの範囲内である。該コポリマーの曲げ弾性率に関するこれらの値の範囲は、第一にカテーテルを動脈に進めることを可能にするため、第二に、カテーテルと一体のステントの目的留置部位での前記ステントの位置決めのためのバルーン膨張時に、前記ステントの展開を可能にするために特に適切であるように選択される。
【0050】
有利には、PAブロックは、次から選択される少なくとも一のモノマーから形成される:6、11、12、4.6、4.12、4.14、4.18、6.6、6.10、6.12、6.14、6.18、Pip.10、9.6、9.12、10.10、10.12、10.14、10.18、10.36、10.T、6.T、9.T、MXD.6、MXD.10、B.10、B.12、B.14、B.18、B.36、P.10、P.12、P.14、P.18、P.36、それらのランダム及び/又はブロックコポリマー並びにそれらの混合物。
【0051】
有利には、本発明に用いられるコポリマーの前記少なくとも一のPEブロックは、ポリアルキレンエーテルポリオール(例えばPEG、PPG、PO3G、PTMG)、鎖末端にNH2基を有するポリオキシアルキレン配列を含有するポリエーテル、それらのランダム及び/又はブロックコポリマー並びにそれらの混合物から選択される少なくとも一のポリエーテルを含む。
【0052】
好ましくは、該コポリマーは、主にPTMGから構成され、好ましくはPTMG単独で構成されるポリエーテルブロックを含む。
【0053】
本発明の主題はまた、ポリアミドベースの熱可塑性ポリマー組成物であり、前記組成物は以下を含む。
− 30重量%から100重量%の本発明のコポリマー
− 0から70重量%の、ポリアミド、本発明に従って使用されるもの以外のPEBA、TPU、COPE、PVC、ABS、PS、PET、PETE、PVDF、ETFE、ポリイミド、PEEK、PEKK、シリコーン、「シリコーンゴム」から選択される少なくとも一のその他のポリマー
− 本発明の組成物の総重量に対して0から40%の添加剤
【0054】
通常の場合、添加剤は、本発明による組成物中に20%を超えて存在しないことに留意すべきである。それでも、特にBaSO(硫酸バリウム)及び/又はWC(タングステンカーバイド)タイプの機能性添加剤(トレーサー)が使用される場合、添加剤の量は、本発明の組成物の20重量%を上回ってもよい。
【0055】
好ましくは、添加剤は、着色剤、特に顔料、染料、効果を有する顔料(例えば回折顔料、真珠層などの干渉顔料、反射顔料、及びそれらの混合物);UV安定剤、抗老化剤、酸化防止剤;流動化剤、耐摩耗剤、離型剤、安定剤;可塑剤、耐衝撃性改良剤;界面活性剤;光学的漂白剤;充填剤(例えばシリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、膨張グラファイト、酸化チタン又はガラスビーズ);繊維;ロウ;並びにそれらの混合物から選択される。抗菌剤若しくは殺菌剤として働く機能性添加剤又はレーザー・マーカーもまた、想定されうる。
【0056】
上に定義した組成物は、有利には、顆粒又は粉末を構成するために使用されうる。
【0057】
前記顆粒は、特に耐破裂性の膨張式カテーテルバルーンを製造するために用いられる。
【0058】
本発明のもう一つの主題は、耐破裂性カテーテルバルーンを製造するための、以下を含む方法である。
− 請求項1から9のいずれか一項の記載に従うコポリマーを提供する工程;
− 少なくとも一の他のポリマー及び/又は少なくとも一の添加剤と、前記コポリマーとを混合し、請求項10に記載の組成物を製造する任意選択の工程;
− 200から300℃の範囲内の温度T0で、前記コポリマー又は前記組成物を提供する工程;
− Tm(融点)未満のコポリマーの温度でバルーンを形成する工程;
− バルーンを回収する工程
【0059】
有利には、本発明の方法は、次の工程の少なくとも一つを含む:「ドライブレンド」、押出成形、特に共押出成形、管押出成形、オーバーモールド、ブロー成形、及びそれらの混合。
【0060】
特定の実施態様によると、本発明のPEBAは、上に記載の組成物の一又は複数の層を含むカテーテルバルーン及びカテーテルステムを製造するために用いられる。
【0061】
好ましい実施態様において、該バルーンは、少なくとも部分的に本発明の「長いブロック」PEBAから形成された単一のポリマー層から形成される。しかしながら、該バルーンはまた、複数の層を含んでもよく、そのうちの少なくとも一つは、少なくとも部分的に本発明のPEBAで構成される層である。
【0062】
好ましいバルーンは、100%本発明のPEBAから形成される。しかしながら、該バルーンは、一又は複数の異なるポリマー材料とPEBAとの混合物から形成されてもよい。本発明の「長いブロック」PEBAと混合するのに適したポリマー材料は、拡張カテーテルバルーンを製造するために一般に使用される前述のポリマー、例えば本発明によらない「短いブロック」PEBA又はポリアミドなどを含む。
【0063】
好ましいポリマー混合物は、本発明のPEBAとポリアミドとの混合物であり、ポリアミドの好ましい重量百分率が総重量の30%から95%の範囲内である。好ましいポリアミドは、ポリアミド11、ポリアミド12又はそれらの混合物である。
【0064】
共押出によって形成された複数の層を含むバルーンの場合、本発明のPEBAは、バルーンの内層であっても又は外層であってよい。
【0065】
したがって、本発明の一つの主題は、膨張可能な要素、特に、本発明の組成物を有する(すなわち本発明に従って選択されたポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含有する特定の範囲のコポリマー(PEBA)から少なくとも部分的に形成された)耐破裂性カテーテルバルーン又はカフである。
【0066】
本発明のバルーンは、有利には、1から250μm、好ましくは2から60μm、好ましくは3から50μm、好ましくは4から40μmの範囲内の壁厚を有する。
【0067】
本発明の主題はまた、先の記載に従うバルーンを含むカテーテルである。
【0068】
当分野で知られているカフ付きカテーテルの様々なモデルは、少なくとも部分的にPEBAから形成された本発明のバルーンカテーテルとして使用されうる。本発明のカフ付きカテーテルは、例えば、本発明による「長いブロック」PEBAから少なくとも部分的に形成された膨張可能なバルーンと細長いシャフトとをその先端部に有するカテーテルを含む。
【0069】
例えば、カテーテルは、血管形成用の標準的な拡張カテーテルであってもよい。また、カテーテルは、始めにそのカフに載せたステントを拡げるためにも使用されうる。
【0070】
改善された弾力性及び改善された引張強度を含む本発明のPEBAベースのバルーンにより、患者の血管を開くために、患者の血管系の経路に挿入され、狭窄部を通過し、狭窄を圧縮する優れた性能を有する薄型のバルーンカテーテルを提供することが可能になる。
【0071】
本発明のバルーンは、ブロー成形などの、膨張式カテーテルの要素を製造するための標準的な技術で製造することができバルーンが膨張する前に直管を引くことにより機能を実行することができる。本発明のバルーンは、例えば3から8の円周の比率での拡管により形成されうる。カフのカテーテルへの結合は、標準的な技術(例えば接着剤を用いるもの)を介して、かつ/又は融合により、任意選択的に相溶化剤を用いて実施されうる。カフは、カテーテルの特定の設計に応じて、カテーテルステムに位置する膨張開口部を通じて、又は他の手段により(特にカテーテルステムの外面とバルーンを形成する要素との間に形成された通路を介して)、放射線不透過性流体で膨張させることができる。カフを膨張させるための詳細及び機構は、カテーテルの特定の設計に応じて変化し、カテーテルの分野における当業者によく知られている。カフの長さは、約0.5cmから約6cm、好ましくは約1.0cmから約4.0cmでありうる。カフは、形成されると、公称圧力(例えば6〜8atm)で例えば約0.15cmから約0.4cm、典型的には約0.3cmの外径を有するが、外径約1cmのバルーンを使用することもできる。単一壁厚は、1から250μmの範囲内、好ましくは2から60μm、好ましくは3から50μm、好ましくは4から40μm、例えば約10μmから約40μm、一般的には15μmである。共押出に由来するカフが二つの層を含む実施態様において、PA層は好ましくは5から15μmの単一壁厚を有し、PEBA層は好ましくは2から12μmの厚みを有する。
【0072】
本発明の別の実施態様によると、ステントは、患者の血管の内部に挿入するために、バルーンの周りに配置される。ステント材料は、例えばステンレススチール、NiTi合金、プラスチック材料又はその他の材料でできている。ステントは、患者の血管内への挿入及び前進を可能にするのに十分なほど小さく、かつ患者の内腔への移植のためにより大きな直径に拡張可能な直径を有する。少なくとも部分的にPEBAから形成されている本発明のバルーンは、本発明の「長いブロック」PEBAのおかげで、ステントの挿入に有用な、より良い滑剤(glidance)を有する。カフが少なくとも二つの共押出層を有する本発明の実施態様において、ステントの挿入に用いるカフは、血管内人工装具の挿入時に、より良い滑剤を提供するために好ましくは単一外層としてPEBA層を有する。加えて、カフが共押出により形成される場合、ステントの保持力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1のグラフは、本発明の「長いブロック」PEBAを使ったカテーテルバルーン(実施例1及び実施例2)の応力及びひずみ特性を、先行技術の「短いブロック」PEBA(比較例1)を使った同様の構造と比較して測定した、ISO 527 1A形注入標本の一軸引張試験の結果を示す(試験条件:45℃、ピストン行程速度V=50mm/分(ISO規格 527、Zwick 3光学的伸び計による)。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明を説明する。実施例において、すべてのパーセンテージ及び部分は、別途指定のない限り重量ベースで表されている。
【0075】
以下の表1及び図1のグラフでは、応力及びひずみ特性が、次の試験条件:45℃、ピストン行程速度V=50mm/分(ISO規格 527、Zwick 3光学的伸び計による)でのISO 527 1A形注入標本の一軸引張試験で測定される。
【0076】
以下の表2では、曲げ弾性率が23℃で測定される(調整済み試料)。ここで使用される規格は国際規格ISO 178であり、測定機はZwick 1465、2mm/分、変位センサーで構成される。
【0077】
図1のグラフ並びに表1及び2は、本発明に従った「長いブロック」PEBAを使ったカテーテルバルーン(実施例1及び実施例2)が、先行技術の「短いブロック」PEBA(比較例1)を使った同様の構造と比較した場合:
− より高い弾性率;
− より良好な引張強度、したがってより高い限界応力及び限界ひずみにより測定されるより高い破裂圧力;
− 以下により示される、改善された「コンプライアンス」:
− 「より顕著でない軟化」、すなわち限界応力と限界ひずみ及びフロープラトー時の応力とひずみの間のより小さな差異、及び;
− 可塑性閾値直後のひずみを伴う応力の上昇、すなわち限界応力と100%ひずみ時の応力との比較により表される、応力下でのより高度な硬化(又は流動硬化(rheohardening))
の複数の有利な機械的特性を有することを示す。可塑性閾値は、ISO規格 527:1(フロー閾値領域において最も高いデータ点)に従って測定された。
【0078】
結論として、本発明のPEBA材料が、
− 強い衝撃に耐えられ、特に引張応力耐性があり(すなわちISO 527に従って測定された、22%超の限界ひずみ時で20MPa超の限界応力を有し);
− 「コンプライアント」、すなわちそのために限界応力とフロープラトー時の応力の差が0.5MPa未満であり、そのために限界ひずみとフロープラトー時のひずみの比率が0.5超であり、応力とひずみがISO規格 527に従って測定されている
ことが明らかに確認された。
【0079】
本発明のバルーン、特に実施例1及び実施例2のPEBAを用いて形成されものは、均一な壁厚と、カフを膨張させるのに必要な膨張圧に耐え、かつ患者の血管内の狭窄部を圧縮するのに十分な引張強度とを有する。
図1