(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するために用いられ、トングレールに取り付けられた転てつ棒に連結される腕金具に、基本レールの外側から内側に渡るロッド部が通されたスイッチアジャスタであって、
前記ロッド部が通された前記腕金具の内側に、当該腕金具と前記ロッド部との相対的な変位を検知する第一検知部が取り付けられた、
ことを特徴とするスイッチアジャスタ。
【背景技術】
【0002】
はじめに、鉄道車両の進路を選択する分岐器構造の一般的な構成を
図1に基づいて説明する。分岐器のポイント部を担う転てつ器として、例えば下記非特許文献1に記載された転てつ装置がある(
図1参照。)。この転てつ装置は転換装置と鎖錠装置とから構成され、電気転てつ機101によって稼働する。ここで転換装置は、固定された基本レール109に対してトングレール110を密着させ、または離反させるものであり、一方、鎖錠装置はトングレール110と基本レール109との密着状態を保持するものである。
【0003】
電気転てつ機101は、軌間外側(一対の基本レール109間の外側)に延びた枕木100上に設置されている。この電気転てつ機101は、駆動源である交流モータ108からの駆動力を、摩擦クラッチ、減速歯車および転換ローラ付転換歯車(それぞれ図示省略。)の順に伝導し、転換ローラにより動作かん102を移動させる。
【0004】
動作かん102は、この動作かん102に接続されたカム(図示省略。)が転換ローラによって移動することで、基本レール109と直交する方向に直線運動する。電気転てつ機101は、動作かん102に接続されたスイッチアジャスタ103、このスイッチアジャスタ103の腕金具111、この腕金具111に接続された転てつ棒104、および、トングレール110に固定された連結金具112によって、トングレール110を転換し、その転換されたトングレール110の先端が正常な位置にあるか否かを、フロントロッド105、接続かん106および鎖錠かん107によって照査する。トングレール110の先端が正常な位置にあれば、動作かん102および鎖錠かん107がカムバー(ロックピース)(図示省略。)で鎖錠される。
【0005】
スイッチアジャスタ103は、軌間外側から、基本レール109の下を潜って、軌間内側(一対の基本レール109間の内側)のトングレール110に連結されるため、スイッチアジャスタ103のロッド部113の一部は、動作かん102から基本レール109の下に向けて傾斜している。また、動作かん102のストロークと、それによって転換するトングレール110の行程量との間に、いわゆる遊びを設けるために、ロッド部113は、スイッチアジャスタ103の腕金具111に対してスライドできる構成である。
【0006】
上記したような分岐器構造では、様々な点検や測定が行われている。例えば、下記特許文献1に記載された転てつ機の状態監視装置では、スイッチアジャスタの歪みが経時的に検出されて値が解析される。
【0007】
一方で、トングレールの転換試験などでは、転換するトングレールの変位を観測するために、基本レールに対する転てつ棒の変位量が測定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記したトングレールの転換試験などでは、転てつ棒および基本レールにセンサーが取り付けられるため、センサーの着脱を要する。また、一般的に、このようなセンサーは、基本レールの踏面よりも上方に取り付けられることから、鉄道車両の走行に支障するため、このような転換試験は、鉄道車両が走行しない夜間などに限定して行われ、作業時間や観測時間が限られている。
【0011】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、レールに直接センサーを取り付けることなく、トングレールの転換の観測を、任意の時間帯に行うことができるスイッチアジャスタおよび分岐器構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るスイッチアジャスタは、車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するために用いられ、トングレールに取り付けられた転てつ棒に連結される腕金具に、基本レールの外側から内側に渡るロッド部が通されたスイッチアジャスタであって、前記ロッド部が通された前記腕金具の内側に、当該腕金具と前記ロッド部との相対的な変位を検知する第一検知部が取り付けられた、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るスイッチアジャスタは、前記第一検知部が、検出部と被検出部とから構成され、前記ロッド部に、前記被検出部が取り付けられ、前記腕金具に、前記検出部が埋められた、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るスイッチアジャスタは、前記第一検知部が、検出部と被検出部とから構成され、前記ロッド部が通されると共に前記腕金具に通された筒部に、前記被検出部が取りけられ、前記腕金具に、前記検出部が埋められた、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係るスイッチアジャスタは、前記筒部が、当該筒部に対して回転可能であるナット部と、前記腕金具と嵌合する筒部側レール部とを有し、前記腕金具が、前記筒部側レール部と嵌合する腕金具側レール部を有する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る分岐器構造は、トングレールの前方側、および、前方側よりも手前側のそれぞれに、上記したスイッチアジャスタが備えられた、ことを特徴とする。
【0017】
なお、本発明は次の構成でもよい。すなわち、スイッチアジャスタは、前記ロッド部のうち、当該ロッド部の途中に形成された傾斜部と、この傾斜部のうち低い側に連接された直線部との境界部に、当該ロッド部への荷重を検知する第二検知部が取り付けられた、ことを特徴とする。
【0018】
スイッチアジャスタは、前記第二検知部のコネクタ部が、前記傾斜部の下方に配置された、ことを特徴とする。
【0019】
スイッチアジャスタは、前記傾斜部に取り付けられる取付部と、前記第二検知部を覆うカバー部と、前記取付部の下方で前記第二検知部の出力ケーブルが接続されるコネクタ部と、を備えた検知部保持具を有する、ことを特徴とする。
【0020】
分岐器構造は、上記したスイッチアジャスタが備えられ、トングレールの先端に取り付けられたフロントロッドの肘金具に、第三検知部が取り付けられた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るスイッチアジャスタは、ロッド部が通された腕金具の内側に、当該腕金具とロッド部との相対的な変位を検知する第一検知部が取り付けられている。この構成により、第一検知部が、ロッド部と腕金具との相対的な変位量(以下、ロッド部と腕金具との相対的な変位量を「遊び量」と記す。)を検知する。動作かん(ロッド部)のストロークと遊び量との差から、トングレールの行程量が求まる。したがって、基本レールに直接センサーを取り付けることなく、トングレールの転換の観測を、鉄道車両が走行しない夜間に限らず任意の時間帯に行うことができる。
【0022】
本発明に係るスイッチアジャスタは、第一検知部が、検出部と被検出部とから構成され、ロッド部に、被検出部が取り付けられ、腕金具に、検出部が埋められている。この構成により、ロッド部が、腕金具に対してスライドすると、検出部に対する被検出部の位置が変化し、その変位量が検知される。すなわち、この変位量が遊び量となる。したがって、基本レールに直接センサーを取り付けることなく、トングレールの転換の観測を、任意の時間帯に行うことができる。
【0023】
ところで、トングレールの行程量が少ない分岐器構造では、必然的に遊び量が多いため、動作かん(ロッド部)の直線運動によって、筒部が腕金具から脱落する。この状態で動作かん(ロッド部)が直線運動すると、腕金具とロッド部とが擦れ、ロッド部のネジ溝が摩耗する。このことを防ぐために、腕金具から脱落しない程度に長尺の筒部が用いられた場合、ロッド部と腕金具の内側とが対面する面積が小さいため、被検出部を、ロッド部に取り付ける場所がない。
【0024】
そこで、本発明に係るスイッチアジャスタは、第一検知部が、検出部と被検出部とから構成され、ロッド部が通されると共に腕金具に通された筒部に、被検出部が取り付けられ、腕金具に、検出部が埋められている。この構成により、遊び量が多い場合であっても、トングレールの転換の観測を行うことができる。また、ロッド部の筒部が、腕金具に対してスライドすると、検出部に対する被検出部の位置が変化し、その変位量が検知される。すなわち、この変位量が遊び量となる。したがって、基本レールに直接センサーを取り付けることなく、トングレールの転換の観測を、任意の時間帯に行うことができる。
【0025】
一般的に、筒部はナット部が溶接され、筒部とナット部とは一体の部材であり、ナット部が筒部に対して回転する構造ではない。しかし、筒部に被検出部を有する場合、ナット部と一体の筒部をロッド部に螺合させると、被検出部が、腕金具の検出部に対して適切な配置とならない場合がある。
【0026】
そこで、本発明に係るスイッチアジャスタは、筒部が、当該筒部に対して回転可能であるナット部と、腕金具と嵌合する筒部側レール部とを有し、腕金具が、筒部側レール部と嵌合する腕金具側レール部を有している。この構成により、ロッド部に対して、ナット部のみが回転し、筒部が回転しない。したがって、筒部の被検出部を、腕金具の検出部に対して適切な配置とすることができる。また、筒部の筒部側レール部と腕金具の腕金具側レール部とで、レール構造が実現し、各レール部が嵌合して沿うことで、筒部が腕金具に対して真っ直ぐにスライドする。したがって、筒部の被検出部を、腕金具の検出部に対して適切な配置とすることができる。
【0027】
トングレールが長い分岐器構造の場合、複数のスイッチアジャスタがトングレールに接続され、クランク装置を介して連動する。しかし、いずれかの動作かん(ロッド部)の動作が遅れると、片方のスイッチアジャスタに負荷が偏重し、転換不良となる場合がある。そこで、本発明に係る分岐器構造は、トングレールの前方側、および、前方側よりも手前側のそれぞれに、上記したスイッチアジャスタが備えられている。この構成により、複数のスイッチアジャスタが、適切なタイミングで共働できているか検知することができる。すなわち、第一検知部、第二検知部により、各スイッチアジャスタに加えられた負荷、各スイッチアジャスタの動作のズレ、転換後のトングレールをスイッチアジャスタが押す強さなどを測ることができる。なお、トングレールの前方側では、例えば、油圧シリンダーなどをトングレールの先端側から挿入し、この油圧シリンダーによってトングレールを基本レールから無理やり離す外力を加えることで、スイッチアジャスタがトングレールを押す強さを測ることもできる。しかし、前方側よりも手前側のスイッチアジャスタの場合、前方側のような方法で油圧シリンダーを挿入することができないため、スイッチアジャスタがトングレールを押す強さを測ることができない。
【0028】
また、スイッチアジャスタは、ロッド部のうち、当該ロッド部の途中に形成された傾斜部と、この傾斜部のうち低い側に連接された直線部との境界部に、当該ロッド部への荷重を検知する第二検知部が取り付けられていてもよい。すなわち、スイッチアジャスタは、軌間外側から、基本レールの下を潜って、軌間内側のトングレールに連結されるため、ロッド部は、動作かんから基本レールの下に向けて傾斜(または、動作かんから伸びて軌間内側において上に向けて傾斜)した傾斜部を有しているところ、この傾斜部と直線部との境界部に、第二検知部が配置されている。この構成により、第二検知部が転てつ機から離れた位置に配置され、転てつ機の動作において、第一検知部が動作かんのカバー、バラスト、枕木などに接触しない。したがって、転換時などにトングレールに作用する荷重を正確に測定することができる。このように、第二検知部が、スイッチアジャスタの動作と干渉しない位置に配置されているため、鉄道車両の走行中であっても測定することができる。換言すれば、頻繁な着脱を要しない。また、本発明に係るスイッチアジャスタは、第二検知部が直接取り付けられているため、トングレールに作用する荷重を正確に測定することができる。
【0029】
スイッチアジャスタは、第二検知部のコネクタ部が、傾斜部の下方に配置されていてもよい。すなわち、第二検知部から検知情報を出力するためのコネクタ部がスイッチアジャスタに備えられている。したがって、第二検知部による検知情報を、外部の制御装置などに記憶させて管理し、トングレールの転換時に作用する荷重を解析することができる。すなわち、設置工事や保守作業などの際、第二検知部による検知情報を確認するためのモニターツールをコネクタ部に接続することで、その場で値を確認することができる。また、コネクタ部の配置が、傾斜部の下方であるため、コネクタ部が、枕木やバラストと接触しない。したがって、転換時などにトングレールに作用する荷重を正確に測定することができる。また、コネクタ部を介してモニターツールの着脱が容易である。
【0030】
スイッチアジャスタは、傾斜部に取り付けられる取付部と、第二検知部を覆うカバー部と、取付部の下方で第二検知部の出力ケーブルが接続されるコネクタ部と、備えた検知部保持具を有していてもよい。この構成により、検知部保持具が傾斜部に取り付けられることで、第二検知部が外界から保護され、コネクタ部の配置が確定する。すなわち、コネクタ部の配置が、傾斜部の下方であり、ケーブルがロッド部の下側で接続される。したがって、コネクタ部が、枕木やバラストと接触せず、転換時などにトングレールに作用する荷重を正確に測定することができ、また、ケーブルをロッド部の下側に沿わせて配線することで、ケーブルが転換時の動作の妨げとならない。
【0031】
レールの経年劣化によって、トングレールの先端付近において、トングレールと基本レールとの間に僅かな隙間が生じる場合がある。この事象に対応するために、作業現場では、フロントロッドを伸長させることで、トングレール間でフロントロッドを張ってトングレールを開き、トングレールの先端を基本レールに密着させる手段が採られる場合がある。この手段は、フロントロッドの本来の用途ではないため、想定外の負荷がフロントロッドに加わる。
【0032】
さらに、上記の手段によれば、フロントロッドが張ることでトングレールを基本レールに密着させていることから、転換したトングレールを押す力は、フロントロッドにも加えられる。詳説すれば、トングレール間でフロントロッドが張った状態では、スイッチアジャスタが押し引きする転てつ棒の押し当て金具と、トングレールに固定された連結金具との間がわずかに開くことになる。この隙間がある状態でトングレールが転換すると、スイッチアジャスタは、構造的に、基本レールから離れる側のトングレールを引くことはできるが、基本レールに密着する側のトングレールを押すことができない。
【0033】
そこで、分岐器構造は、トングレールの先端に取り付けられたフロントロッドの肘金具に、第三検知部が取り付けられていてもよい。したがって、フロントロッドに加わった負荷を、第三検知部によって測定することができる。さらに、第三検知部による測定結果に加えて、転換時などにトングレールに加えられた荷重である第一検知部による測定結果を精査することで、分岐器構造の状態を知ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の実施形態に係るスイッチアジャスタおよび分岐器構造を図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の第一実施形態に係るスイッチアジャスタ1が用いられた第一実施形態に係る分岐器構造が示され、
図3は、スイッチアジャスタ1が示されている。なお、以下の説明では、トングレール110の先端側を前方とし、反対側を後方とし、基本レール109の幅のうち軌間内側を内方側、軌間外側を外方側とし、基本レール109の高さ方向を上方または下方とする。
【0036】
図2に示されているとおり、スイッチアジャスタ1は、トングレール110の前方側に取り付けられ、トングレール110を転換するためのものである。スイッチアジャスタ1は、動作かん102に接続されて基本レール109の外側から内側に渡るロッド部10と、このロッド部10の先端側に取り付けられた腕金具22と、この腕金具22に取り付けられた第一検知部32とを有している。腕金具22は、転てつ棒104に接続されている。
【0037】
図3に示されているとおり、スイッチアジャスタ1のロッド部10は、このロッド部10の途中に形成された傾斜部11と、この傾斜部11よりもトングレール110側である直線部12とを有している。傾斜部11は、軌間外側における電気転てつ機101側から視して、軸方向に対して下向きに傾斜している。傾斜部11によって、ロッド部10は、高い側と低い側とがあり、低い側に直線部12が連接されている。ロッド部10のうち、傾斜部11における高い側であって動作かん102に接続される後端側は、ジョーピンが通された二股のジョー部13が形成されている。また、傾斜部11における低い側であって転てつ棒104が接続される先端側は、ネジ溝が形成され、先端に向けて、緩み止めナット14、筒ナット16、腕金具22、ナット15、緩み止めナット14の順にネジ溝に螺合されている。ナット15は、大きさの異なる二つのナットが同軸上に連接されている。
【0038】
筒ナット16は、内側にネジ溝が形成されたナット部17と、内側にネジ溝を有しない筒状の筒部18とが一体の構成である。詳説すれば、ナット部17と筒部18とは、同軸上に揃った状態で連接されている。ナット部17は、大きさの異なる二つのナットが同軸上に連接されている。
【0039】
腕金具22は、平板状の腕連結部23と、内側にネジ溝を有しない筒状の腕筒部24とが一体の構成である。詳説すれば、腕筒部24の外周面に腕連結部23が連接されている。
【0040】
筒ナット16の筒部18は、腕金具22の腕筒部24に挿入されている。ナット部17と、ナット15との間は、腕筒部24の全長よりも広いため、ナット部17とナット15との間において、腕金具22はスライドする。すなわち、スライドによるロッド部10と腕金具22との相対的な変位量が、遊び量Xとなる。
【0041】
ここで、遊び量Xとトングレール110の行程量との関係を図面に基づいて説明する。
図4は、トングレール110が転換する過程におけるスイッチアジャスタ1の動作が示されている。なお、
図4において、第一検知部32は省略されている。
【0042】
図4(a)に示されているとおり、ナット15が、腕金具22の腕筒部24に寄せられ、筒ナット16のナット部17と腕筒部24との間に遊び量Xの間隔が開いている。この状態で、動作かん102が作動してロッド部10が矢印の方向に押されると、
図4(b)に示されているとおり、ナット部17が腕筒部24に寄せられ、腕筒部24とナット15との間に遊び量Xの間隔が開く。すなわち、ロッド部10は、遊び量Xの分だけ腕金具22に対してスライドするが、その間、腕金具22は動かない。この状態で、さらにロッド部10が矢印の方向に押されると、
図4(c)に示されているとおり、ナット部17が腕筒部24を押すことで、腕金具22が押され、このことにより転てつ棒104が押されると共にトングレール110が転換する。すなわち、トングレール110の行程量S
2は、動作かん102(ロッド部10)のストロークS
1と遊び量Xとの差に相当する。なお、逆向きへの転換の場合も、動作は上記と同じである。
【0043】
図3に示されているとおり、スイッチアジャスタ2の腕金具22は、トングレール110に取り付けられた転てつ棒104に連結され(
図2参照。)、かつ、筒ナット16の筒部18と共にロッド部10が通された状態で、内側に第一検知部32を有している。第一検知部32は、遊び量Xを検知するもの(換言すれば、腕金具22に対するロッド部10の絶対位置を検知するもの)であり、例えば磁気センサー、エンコーダーなどである。第一検知部32は、検出部33と被検出部34とから構成され、磁気センサーであれば、センサーが検出部33であり、マグネットが被検出部34である。
【0044】
検出部33は、腕金具22の腕筒部24に埋め込まれ、腕筒部24の内側において、ロッド部10に対面している。被検出部34は、ロッド部10の外周面に取り付けられている。検出部33と被検出部34とは対面して配置されている。なお、被検出部34は、ロッド部10のネジに取り付けられ、または、ネジの一部が平坦に削られた箇所に取り付けられる。第一検知部32のコネクタ部27は、腕金具22の外側に配置されている。
【0045】
以上のとおり、第一実施形態に係るスイッチアジャスタ1および分岐器構造が構成されている。次に、本発明の第二実施形態に係るスイッチアジャスタ2および分岐器構造を図面に基づいて説明する。
図5は、本発明の第二実施形態に係るスイッチアジャスタ2が示されている。なお、以下の説明では、第一実施形態と異なる構成が説明され、同じ構成は説明が適宜省略されている。
【0046】
図5に示されているとおり、スイッチアジャスタ2の検出部33は、腕金具222の腕筒部224に埋め込まれ、腕筒部224の内側において、筒ナット216の筒部218に対面している。被検出部34は、筒部218の外周面に取り付けられている。検出部33と被検出部34とは対面して配置されている。
【0047】
筒ナット216は、筒部218とナット部217とが別々の部材であり、互いに回転可能な状態で連結されている。詳説すれば、筒部218は、端部の外周に環状のフランジ19が形成され、このフランジ19がナット部217の内側において嵌合したことで、筒部218とナット部217とが連結された状態で、回転が可能である。筒部218は、外面から外側に向けて突出した筒部側レール部としての突出部20を有している。筒部218の長さは、第一実施形態に係るスイッチアジャスタ1の筒部18よりも長い。
【0048】
腕金具222は、筒部218の突出部20が配置された腕金具側レール部としてのガイド溝部25が形成されている。ガイド溝部25は、腕筒部224の内周面の上面側において、長手方向に渡って直線状に形成されている。すなわち、筒部218の突出部20が腕金具222のガイド溝部25に嵌合した状態で、ロッド部10と腕金具222とが相対的にスライドする。なお、突出部20は、筒部218の上面側において、長手方向に渡って直線状に形成されていてもよい。筒部側レール部がガイド溝部であり、腕金具側レール部が突出部であってもよい。他の構成は、第一実施形態と同じである。
【0049】
以上のとおり、第二実施形態に係るスイッチアジャスタ2および分岐器構造が構成されている。次に、本発明の第三実施形態に係るスイッチアジャスタ3および分岐器構造を図面に基づいて説明する。
図6は、本発明の第三実施形態に係るスイッチアジャスタ3が示されている。なお、以下の説明では、第一実施形態および第二実施形態と異なる構成が説明され、同じ構成は説明が適宜省略されている。
【0050】
図6に示されているとおり、スイッチアジャスタ3の検出部33は、腕金具322の腕筒部324に埋め込まれ、腕筒部324の内側において、筒ナット316の筒部318に面している。複数の被検出部34は、筒部318の外周面に取り付けられている。詳説すれば、各被検出部34は、筒部318の軸方向に向けて揃えられ、かつ、筒部318の円周方向にほぼ等間隔に配置されている。したがって、いずれかの被検出部34と検出部33とが対面して配置されている。
【0051】
筒ナット316は、第一実施形態に係るスイッチアジャスタ1と同様に、筒部318とナット部317とが一体の構成である。筒部318の長さは、スイッチアジャスタ1の筒部18よりも長い。
【0052】
スイッチアジャスタ3は、筒ナット316を止めて回転を防ぐ回り止め部材345を有している。回り止め部材345は、長手の平板状である連結上面部349と、この連結上面部349の両端に連接された挟持部350とから構成されている。挟持部350は、互いに対面した前面部346および後面部347と、各面部346,347の上端に連接された上面部348とから、断面がほぼU字状に形成されている。回り止め部材345は、ロッド部10の先端側において、挟持部350が筒ナット316およびナット15の上側に嵌合され、筒ナット316のナット部317およびナット15が各面部346,347,348の間に配置される。なお、他の構成は、第一実施形態および第二実施形態と同じである。
【0053】
以上のとおり、第三実施形態に係るスイッチアジャスタ3および分岐器構造が構成されている。次に、本発明の第四実施形態に係るスイッチアジャスタ4および分岐器構造を図面に基づいて説明する。
図7は、本発明の第四実施形態に係るスイッチアジャスタ4が用いられた第四実施形態に係る分岐器構造が示され、
図8は、スイッチアジャスタ4が示されている。なお、以下の説明では、第一実施形態と異なる構成が説明され、同じ構成は説明が適宜省略されている。
【0054】
図8に示されているとおり、スイッチアジャスタ4は、ロッド部10に第二検知部26および検知部保持具29が取り付けられている。第二検知部26は、ロッド部10に作用する荷重を検知するものであり、例えば歪センサーなどである。第二検知部26は、ロッド部10の傾斜部11と直線部12との境界部に取り付けられている。第二検知部26は、検知した情報を出力するためのコネクタ部27が接続され、このコネクタ部27は、傾斜部11の下方であって、直線部12のほぼ延長線上に配置されている。換言すれば、第二検知部26は、例えば、動作かん102のカバー、枕木100、バラスト(図示省略。)、基本レール109、モータ108などと接触しない位置であって、第二検知部26の出力ケーブル28の整線が容易な位置に取り付けられている。
【0055】
検知部保持具29は、ロッド部10の傾斜部11に取り付けられた取付部30と、第二検知部26と共に傾斜部11および境界部近傍の周囲を覆うカバー部31と、取付部30の下方で第二検知部26の出力ケーブル28が接続されるコネクタ部27とを有している。出力ケーブル28は、ケーブルプラグ21を有し、このケーブルプラグ21がコネクタ部27に接続される。取付部30は、例えばバンドやクランプなどのように着脱される構造、または、溶接によって固定される構造である。カバー部31は、傾斜部11および境界部近傍の周囲を覆い、第二検知部26を収容することで保護する。
【0056】
図9および
図10に示されているとおり、上記した各実施形態の変形例に係るスイッチアジャスタ1aは、傾斜部11aが、軌間外側における電気転てつ機101側から視して、基本レール109の下を潜って軌間内側において、軸方向に対して上向きに傾斜している。この場合、ロッド部10のうち、傾斜部11aにおける低い側である直線部12aが動作かん102に接続される。したがって、直線部12aの後端側に、ジョーピンが通された二股のジョー部13が形成され、傾斜部11aにおける高い側であって転てつ棒104が接続される先端側に、緩み止めナット14、筒ナット16、腕金具22、ナット15、緩み止めナット14の順にネジ溝に螺合されている。他の構成は、第一実施形態に係るスイッチアジャスタ1と同じである。
【0057】
以上のとおり、第四実施形態に係るスイッチアジャスタ4および分岐器構造が構成されている。
【0058】
なお、第四実施形態に係るスイッチアジャスタ4および変形例に係るスイッチアジャスタ1aの他の変形例として、検知部保持具29を有さず、第二検知部26のみを有する構成であってもよい。
【0059】
なお、本発明の参考例として、
図11および
図12に示されているとおり、スイッチアジャスタ9が、第二検知部26のみを有し、第一検知部32を有していない構成もある。
【0060】
次に、本発明の第五実施形態に係る分岐器構造を図面に基づいて説明する。
図13は、本発明の第五実施形態に係る分岐器構造が示されている。なお、以下の説明では、第一実施形態と異なる構成が説明され、同じ構成は説明が適宜省略されている。
【0061】
図13に示されているとおり、分岐器構造は、複数のスイッチアジャスタ1,2,3,4がトングレール110に接続されている。スイッチアジャスタ1,2,3,4は、クランク装置41に接続され、このクランク装置41にストレートリンク42やアジャストリンク43が接続されている。各リンク42,43は、リンクキャリア装置44に支持されて電気転てつ機101に接続されている。
【0062】
第五実施形態に係る分岐器構造は、トングレール110の前方側、および、前方側よりも手前側のそれぞれに、第一実施形態から第四実施形態に係るスイッチアジャスタ1,2,3,4のいずれかが備えられている。なお、スイッチアジャスタ1,2,3,4の数は任意である。すなわち、トングレール110の前方側に複数のスイッチアジャスタ1,2,3,4が備えられ、手前側に複数のスイッチアジャスタ1,2,3,4が備えられていてもよい。
【0063】
以上のとおり、第五実施形態に係る分岐器構造が構成されている。次に、本発明の第六実施形態に係る分岐器構造を図面に基づいて説明する。
図14は、本発明の第六実施形態に係る分岐器構造が示され、
図15は、分岐器構造に用いられるフロントロッド35が示されている。なお、以下の説明では、第一実施形態と異なる構成が説明され、同じ構成は説明が適宜省略されている。
【0064】
図14および
図15に示されているとおり、フロントロッド35はトングレール110の先端に取り付けられている。フロントロッド35は、トングレール110間に配置された本体ロッド部36と、この本体ロッド部36に取り付けられたブラケット37と、本体ロッド部36の両端に球面軸受38を介して接続された肘金具39と、この肘金具39に取り付けられた第三検知部40とを有している。
【0065】
第三検知部40は、肘金具39に作用する荷重を検知するものであり、例えば歪センサーなどである。第三検知部40は、肘金具39のうち、本体ロッド部36との接続箇所の近傍であって、かつ、トングレール110との接続箇所の近傍に取り付けられている。第三検知部40は、検知した情報を出力するためのコネクタ部(図示省略。)が接続されている。
【0066】
第六実施形態係る分岐器構造は、第四実施形態に係るスイッチアジャスタ4が備えられている。他の構成は、第一実施形態と同じである。なお、第一実施形態、第二実施形態または第三実施形態に係るスイッチアジャスタ1,2,3が備えられていてもよい。
【0067】
以上のとおり、第六実施形態に係る分岐器構造が構成されている。次に、上記した各実施形態に係るスイッチアジャスタ1,2,3,4および分岐器構造の効果を説明する。
【0068】
上記したとおり、第一実施形態に係るスイッチアジャスタ1および分岐器構造の腕金具22は、トングレール110に取り付けられた転てつ棒104に連結され、かつ、筒ナット16の筒部18と共にロッド部10が通された状態で、内側に、遊び量Xを検知する第一検知部32を有している(
図3参照。)。第一検知部32の検出部33は、腕金具22の腕筒部24に埋め込まれ、一方で、第一検知部32の被検出部34は、ロッド部10の外周面に取り付けられ、検出部33と被検出部32とは対面して配置されている。この構成により、ロッド部10が、腕金具22に対してスライドすると、検出部33に対する被検出部34の位置が変化し、その変位量が検知され、この変位量が遊び量Xとなる。すなわち、第一検知部32が、ロッド部10と腕金具22との相対的な変位量である遊び量Xを検知する。この遊び量Xと動作かん102(ロッド部10)のストロークS
1との差が、トングレール110の行程量S
2となる(
図4参照。)。したがって、基本レール109に直接センサーを取り付けることなく、トングレール110の転換の観測を、鉄道車両が走行しない夜間に限らず任意の時間帯に行うことができる。
【0069】
第二実施形態に係るスイッチアジャスタ2および分岐器構造では、検出部33は、腕金具222の腕筒部224に埋め込まれ、一方で、被検出部34は、筒ナット216の筒部218の外周面に取り付けられ、検出部33と被検出部34とは対面して配置されている(
図5参照。)。したがって、トングレール110の行程量S
2が少ない分岐器構造において、遊び量Xが多いことから長尺の筒部218が用いられた場合であっても、被検出部34が筒部218に取り付けられたことで、トングレール110の転換の観測を行うことができる。
【0070】
第二実施形態に係るスイッチアジャスタ2および分岐器構造の筒ナット216は、筒部218とナット部217とが別々の部材であり、互いに回転可能な状態で連結されている(
図5参照。)。この構成により、ロッド部10に対して、ナット部217のみが回転し、筒部218が回転しない。すなわち、筒部218に被検出部34を有する場合であっても、筒ナット216をロッド部10に螺合させる際、被検出部34を腕金具222の検出部33に対して適切な配置で対面させたまま、ナット部217のみを回転させることができる。したがって、筒部218の被検出部34を、腕金具222の検出部33に対して適切な配置とすることができる。
【0071】
第二実施形態に係るスイッチアジャスタ2および分岐器構造の筒ナット216では、筒部218は、外面から外側に向けて突出した突出部20を有している。一方で、腕金具222は、筒部218の突出部20が配置されたガイド溝部25が形成され、このガイド溝部25は、腕筒部224の内周面の上面側において、長手方向に渡って直線状に形成されている(
図5参照。)。すなわち、筒部218の突出部20が腕金具222のガイド溝部25に嵌合した状態で、ロッド部10と腕金具222とが相対的にスライドする。この構成により、筒部218の突出部20と腕金具222のガイド溝部25とで、レール構造が実現し、突出部20がガイド溝部25に沿うことで、筒部218が腕金具222に対して真っ直ぐにスライドする。したがって、筒部218の被検出部34を、腕金具222の検出部33に対して適切な配置とすることができる。
【0072】
第三実施形態に係るスイッチアジャスタ3および分岐器構造は、筒部318の外周面に、複数の被検出部34が取り付けられ、また、筒ナット316の回転を防ぐ回り止め部材345を有している(
図6参照。)。すなわち、回り止め部材345の挟持部350が、ロッド部10の先端側において、筒ナット316およびナット15の上側に嵌合し、筒ナット316が回転しない。したがって、筒部318のいずれかの被検出部34を、腕金具322の検出部33に対面して適切な配置とすることができる。
【0073】
第四実施形態に係るスイッチアジャスタ4および分岐器構造は、ロッド部10の傾斜部11と直線部12との境界部に、ロッド部10に作用する荷重を検知する第二検知部26が取り付けられている(
図8参照。)。すなわち、第二検知部26は、動作かん102のカバー、バラスト、枕木100、基本レール109、モータ108などと接触しない位置に取り付けられている。この構成により、第二検知部26が電気転てつ機101から離れた位置に配置され、電気転てつ機101の動作において、第二検知部26が動作かん102のカバー、バラスト、枕木100などに接触しない。したがって、転換時などにトングレール110に作用する荷重を正確に測定することができる。このように、スイッチアジャスタ4は、第二検知部26が、スイッチアジャスタ4の動作と干渉しない位置に配置されているため、鉄道車両の走行中であっても測定することができる。換言すれば、頻繁な着脱を要しない。また、スイッチアジャスタ4は、第二検知部26が直接取り付けられているため、トングレール110に作用する荷重を正確に測定することができる。
【0074】
第四実施形態に係るスイッチアジャスタ4および分岐器構造の第二検知部26は、検知した情報を出力するためのコネクタ部27が接続されている(
図8参照。)。したがって、第二検知部26による検知情報を、外部の制御装置(図示省略。)などに記憶させて管理し、トングレール110の転換時に作用する荷重を解析することができる。また、コネクタ部27は、傾斜部11の下方であって、直線部12のほぼ延長線上に配置されている(
図8参照。)。すなわち、コネクタ部27は、動作かん102のカバー、バラスト、枕木100などと接触せず、第二検知部26の出力ケーブル28の整線が容易な位置に取り付けられている。したがって、転換時などにトングレール110に作用する荷重を正確に測定することができる。
【0075】
第四実施形態に係るスイッチアジャスタ4および分岐器構造は、検知部保持具29を有している(
図8参照。)。この検知部保持具29は、ロッド部10の傾斜部11に取り付けられる取付部30と、第二検知部26と共に傾斜部11および境界部近傍の周囲を覆うカバー部31と、取付部30の下方で第二検知部26の出力ケーブル28が接続されるコネクタ部27とを有している。この構成により、第二検知部26が外界から保護され、コネクタ部27の配置が確定する。すなわち、コネクタ部27の配置が、傾斜部11の下方であり、出力ケーブル28がロッド部10の下側で接続される。したがって、コネクタ部27が、動作かん102のカバー、バラスト、枕木100などと接触せず、転換時などにトングレール110に作用する荷重を正確に測定することができ、また、出力ケーブル28をロッド部10の下側に沿わせて配線することで、出力ケーブル28が転換時の動作の妨げとならない。
【0076】
さらに、第二検知部26による測定結果を精査することで、転換時などにトングレール110に加えられた荷重がわかるため、第一検知部32による測定結果であるトングレール110の位置と、その位置における第一検知部32による測定結果である荷重とで、例えば転換不良の際に、トングレール110が停止した位置などを把握することができる。
【0077】
第五実施形態に係る分岐器構造は、トングレール110の前方側、および、前方側よりも手前側のそれぞれに、第二検知部26および/または第一検知部32を有する第一実施形態から第四実施形態に係るスイッチアジャスタ1,2,3,4のいずれかが備えられている(
図13参照。)。この構成によって、トングレール110が長い分岐器構造において複数のスイッチアジャスタ1,2,3,4がトングレール110に接続されている分岐器構造であっても、各スイッチアジャスタ1,2,3,4が、適切なタイミングで共働できているか検知することができる。すなわち、第二検知部26、第一検知部32により、各スイッチアジャスタ1,2,3,4に加えられた負荷、各スイッチアジャスタ1,2,3,4の動作のズレ、転換後のトングレール110をスイッチアジャスタ1,2,3,4が押す強さなどを測ることができる。したがって、測定結果に応じて、スイッチアジャスタ1,2,3,4の遊び量Xなどを適切に調節することができる。
【0078】
第六実施形態に係る分岐器構造は、フロントロッド35の肘金具39に第三検知部40が取り付けられている(
図15参照。)。この構成により、経年劣化などによってトングレール110の先端付近で基本レール109との間に生じた僅かな隙間を閉じることを目的とした、フロントロッド35の本来の用途と異なる用途に対して、フロントロッド35に加わった負荷を、第三検知部40によって測定することができる。
【0079】
また、第六実施形態に係る分岐器構造は、第二検知部26および/または第一検知部32を有する第一実施形態から第四実施形態に係るスイッチアジャスタ1,2,3,4のいずれかが備えられている。この構成により、トングレール110間でフロントロッド35が張った状態でトングレール110が転換した場合において、フロントロッド35に加わる荷重、および、スイッチアジャスタ1,2,3,4に加わる荷重を測定することができ、各測定結果を精査することで分岐器構造の状態を知ることができる。
【0080】
ここで、第六実施形態に係る分岐器構造の技術的意義を、フロントロッド35の本来の用途と異なる用途と共に、図面に基づいて説明する。
図16は、第六実施形態に係る分岐器構造において、スイッチアジャスタ4とトングレール110との接続の状態が示されている。なお、
図16において、第一検知部32は省略されている。
【0081】
図16に示されているとおり、スイッチアジャスタ4は、腕金具22の腕連結部23が、転てつ棒104に取り付けられている。転てつ棒104は、上面に、U字状の押し当て金具114が溶接されている。この押し当て金具114の間に、連結金具112が挟まれた状態で、ボルト(
図16(b)参照。同図(a)では図示省略。)で連結金具112が押し当て金具114に連結されている。ここで、連結金具112のボルト孔は、押し当て金具114のボルト孔(およびボルトの外径)よりも、遊びYをもたせて若干広く形成されている。このような構造において、経年劣化などによってトングレール110の先端付近で基本レール109との間に生じた僅かな隙間を閉じることを目的として、トングレール110間でフロントロッド35を張ることでトングレール110の先端を基本レール109に密着させようとした場合、遊びYの分だけ、連結金具112と押し当て金具114とが離れ、連結金具112と押し当て金具114との間に隙間Zが生じる。この隙間Zがある状態でトングレール110が転換すると、スイッチアジャスタ4は、基本レール109から離れる側のトングレール110(
図16において右側のトングレール)を引くことはできるが、基本レール109に密着する側のトングレール110(
図16において左側のトングレール)を直接押すことができない。しかし、転てつ棒104の働きには、基本レール109から離れる側のトングレール110(
図16において右側のトングレール)を力F
2で引く作用もあるが、左右一対のトングレール109は、フロントロッド35で繋がっているため、それにより基本レール109に密着する側のトングレール110(
図16において左側のトングレール)は、フロントロッド35を介した力F
3によって先端部が基本レール109に押し当てられる。すなわち、スイッチアジャスタ4によってトングレール110(
図16において左側のトングレール)を基本レール109に密着させる力F
1は、隙間Zがあることによって伝わらず、一方で、トングレール110(
図16において右側のトングレール)を基本レール109から離す力F
2は、フロントロッド35を介して、トングレール110(
図16において左側のトングレール)に伝達され、力F
3が作用する。
【0082】
そこで、第六実施形態に係る分岐器構造では、フロントロッド35に加わる荷重が第三検知部40で測定され、スイッチアジャスタ4に加わる荷重が第二検知部26で測定されるため、各測定結果を精査することで分岐器構造の状態として、例えば、適正な大きさの力を適正な状態でレールに加えることができているかなどを知ることができる。例えば、第三検知部40による測定結果が一般的な値よりも高い場合、フロントロッド35の本来の用途ではない使われ方がなされていることがわかる。すなわち、フロントロッド35の肘金具39に過大な負荷が加わるため、仮に、肘金具39が折損した場合、トングレール110の先端付近と基本レール109との間が大きく開く可能性がある。そこで、下表1に示されているとおり、第二検知部26の測定結果と、第三検知部40の測定結果とから、分岐器構造の総合評価をすることができれば、外部のモニターツールなどに表示させることができ、各測定結果を精査することで分岐器構造の状態を知ることができる。
【0084】
例えば、フロントロッド35の長さを、長すぎる状態から適切な状態に調整した場合、スイッチアジャスタ4に作用する荷重が低下し、トングレール110を適切な力で押すことができていない状態となるため、スイッチアジャスタ4を再調整する必要がある。この場合、第二検知部26および第三検知部40の値を同時に確認することができれば、作業のやり直しを防ぎ、作業効率がよい。
【0085】
フロントロッド35の長さの調整次第では、スイッチアジャスタ4によってトングレール110を支えている状態は、F
1とF
3とに分散しつつ変化する。フロントロッド35が長すぎた場合、トングレール110を押す力はF
3に依拠し、隙間Zが開いた状態となる。そのため、無理な力が加えられていたフロントロッド35が、仮に折損等した場合、トングレール110に、F
3が伝わらなくなるばかりでなく、もともと隙間Zが開いた状態であるため、トングレール110を支える力は、F
1においても適正値より大きく低下する可能性がある。したがって、上記した表1のように、第二検知部26の測定結果と、第三検知部40の測定結果とから、分岐器構造の総合評価をすることに意義がある。
【0086】
なお、本発明の参考例として、第六実施形態に係る分岐器構造のフロントロッド35が備えられ、スイッチアジャスタにおいて任意の位置に第一検知部または/および第二検知部が備えられていてもよい。
【0087】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。