特許第6682625号(P6682625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682625
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】関節運動アシストシステム
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20200406BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A61H1/02 K
   B25J11/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-518250(P2018-518250)
(86)(22)【出願日】2017年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2017017819
(87)【国際公開番号】WO2017199834
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2018年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-100245(P2016-100245)
(32)【優先日】2016年5月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502265286
【氏名又は名称】山本 圭治郎
(73)【特許権者】
【識別番号】508013766
【氏名又は名称】桑原 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】110002332
【氏名又は名称】特許業務法人綾船国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭治郎
【審査官】 小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/060611(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/043308(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/043095(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/165880(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対象物の関節運動をアシストする関節運動アシストシステムであって、
前記第1対象物に装着されるスレーブ装置と;
マスタ装置と;
前記スレーブ装置及び前記マスタ装置に取り付けられる配管と;を備え、
前記スレーブ装置は、前記第1対象物における関節運動をアシストすべき関節ごとに用意され、前記関節の回動運動の回動軸に対して垂直方向の関節部分に配置された場合に、前記関節運動をアシストする力を発生させる伸縮自在なベローズを備え、
前記マスタ装置は、
前記ベローズ内への作動流体の供給に使用され、先端部が閉塞されている可撓性の第1のパイプ状部材と;
前記ベローズ内からの作動流体の排出に使用され、先端部が閉塞されている可撓性の第2のパイプ状部材と;
前記第1のパイプ状部材の先端側部分、及び、前記第2のパイプ状部材の先端側部分を平行配置して収納し、前記配管を介して前記ベローズの内部空間と連通する内部空間を形成する可撓性の収納部材と;を備え、
前記第1のパイプ状部材の先端側部分には少なくとも1つの第1の切り込みが、前記第1のパイプ状部材が延びる方向と垂直な方向に形成され、
前記第1のパイプ状部材の先端側部分が直線状となっているときには、前記第1の切り込みが閉口して前記第1のパイプ状部材の内部空間と前記収納部材の内部空間とを離隔させ、前記第1のパイプ状部材の先端側部分が第1所定軸を軸にして所定方向に屈曲したときには、前記第1の切り込みが開口して前記第1のパイプ状部材の内部空間と前記収納部材の内部空間とを連通させ、
前記第2のパイプ状部材の先端側部分には少なくとも1つの第2の切り込みが、前記第2のパイプ状部材が延びる方向と垂直な方向に形成され、
前記第2のパイプ状部材の先端側部分が直線状となっているときには、前記第2の切り込みが開口して前記第2のパイプ状部材の内部空間と前記収納部材の内部空間とを連通させ、前記第2のパイプ状部材の先端側部分が前記第1所定軸と平行な第2所定軸を軸にして前記所定方向に屈曲したときには、前記第2の切り込みが閉口して前記第2のパイプ状部材の内部空間と前記収納部材の内部空間とを離隔させ
前記第1所定軸は、前記第1のパイプ状部材の先端側部分が直線状となっているときの前記第1のパイプ状部材の先端側部分が延びる方向と垂直であり、かつ、前記第1の切り込みの切込み方向と平行であり、前記第1のパイプ状部材を通る軸であり、
前記第2所定軸は、前記第2のパイプ状部材の先端側部分が直線状となっているときの前記第2のパイプ状部材の先端側部分が延びる方向と垂直であり、かつ、前記第2の切り込みの切込み方向と平行であり、前記第2のパイプ状部材を通る軸であり、
前記所定方向は、
前記第1のパイプ状部材の先端側部分が直線状態から屈曲すると、前記第1の切り込みが、閉口状態から開口状態となる方向であり、
前記第2のパイプ状部材の先端側部分が直線状態から屈曲すると、前記第2の切り込みが、開口状態から閉口状態となる方向である、
ことを特徴とする関節運動アシストシステム。
【請求項2】
前記第1の切り込みは、前記第1のパイプ状部材の先端側部分が、前記第1所定軸を軸にして前記所定方向に屈曲したときにV字状開口を形成し、前記第1のパイプ状部材の先端側部分が、直線状となったときに閉口状態になる切り込みであり、
前記第2の切り込みは、前記第2のパイプ状部材の先端側部分が、直線状となったときにV字状開口を形成し、前記第2のパイプ状部材の先端側部分が、前記第2所定軸を軸にして前記所定方向に屈曲したときに閉口状態になる切り込みである、
ことを特徴とする請求項1に記載の関節運動アシストシステム。
【請求項3】
前記第1のパイプ状部材及び前記配管を介した前記ベローズへの作動流体の供給、及び、前記配管及び前記第2のパイプ状部材を介した前記ベローズからの作動流体の排出を行う流体給排装置を更に備え、
前記第1のパイプ状部材の末端部は、前記作動流体を供給する前記流体給排装置の吐出口に接続され、
前記第2のパイプ状部材の末端部は、前記作動流体を排出する前記流体給排装置の吸引口に接続されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の関節運動アシストシステム。
【請求項4】
前記関節運動には、関節伸展状態から関節屈曲状態へ向かう第1回転方向に沿った第1関節運動、及び、関節屈曲状態から関節伸展状態へ向かう第2回転方向に沿った第2関節運動が含まれ、
前記第1のパイプ状部材の内部空間と前記ベローズの内部空間とを連通させ、かつ、前記第2のパイプ状部材の内部空間と前記ベローズの内部空間とを離隔させたときには、前記第1関節運動のアシストが行われ、
前記第1のパイプ状部材の内部空間と前記ベローズの内部空間とを離隔させ、かつ、前記第2のパイプ状部材の内部空間と前記ベローズの内部空間とを連通させたときには、前記第2関節運動のアシストが行われる、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の関節運動アシストシステム。
【請求項5】
前記マスタ装置は、前記第1対象物と合同対称性、相似対称性及び左右対称性のいずれかの対称性を有する構造の第2対象物に装着され
前記第1の切り込みの切り込み方向及び前記第2の切り込みの切り込み方向は、前記関節運動をアシストすべき前記第1対象物における関節に対応する前記第2対象物における関節の回動軸と平行である、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の関節運動アシストシステム。
【請求項6】
前記第1所定軸及び前記第2所定軸の双方は、前記第1対象物における関節運動をアシストすべき関節の回動運動の回動軸に対応する前記第2対象物の関節の回動運動の回動軸と平行であり、
前記所定方向は、前記第2対象物の関節を関節伸展状態から関節屈曲状態にする方向であり、
前記第1の切り込み部分及び前記第2の切り込み部分は、前記第2対象物の関節の回動運動の回動軸に対して垂直方向の関節部分に配置される、
ことを特徴とする請求項5に記載の関節運動アシストシステム。
【請求項7】
前記第1のパイプ状部材の先端側部分及び前記第2のパイプ状部材の先端側部分は、前記関節部分の伸展側に配置され、
前記第1の切り込み部分は、前記関節部分の伸展側と対向する側とは反対側に形成され、前記第2の切り込み部分は、前記関節部分の伸展側と対向する側に形成される、
ことを特徴とする請求項6に記載の関節運動アシストシステム。
【請求項8】
前記第1対象物には、人体の一方の手部における手指の少なくとも1つが含まれ、
前記第2対象物には、前記人体の他方の手部における手指の少なくとも1つが含まれる、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の関節運動アシストシステム。
【請求項9】
前記第1対象物には、人体の手部における手指の少なくとも1つが含まれ、
前記第2対象物には、前記人体とは異なる人体の手部における手指の少なくとも1つが含まれる、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の関節運動アシストシステム。
【請求項10】
前記第1対象物には、人体の一方の手首部が含まれ、
前記第2対象物には、前記人体の他方の手首部が含まれる、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の関節運動アシストシステム。
【請求項11】
前記第1対象物には、人体の手首部が含まれ、
前記第2対象物には、前記人体とは異なる手首部が含まれる、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の関節運動アシストシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節運動アシストシステムに係り、より詳しくは、所定対象物の関節運動をアシストする関節運動アシストシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リハビリテーションに用いられる様々な装置が提案されている。こうした装置の中には、理学療法士や家族員等に代って、患者の基本的動作の機能の回復を図るための治療運動をアシストするものがある。
【0003】
かかる患者の運動をアシストする装置の一つとして、脳梗塞などの中枢神経障害により手指が麻痺して拘縮してしまった場合等に、ベローズの伸縮を利用して、手指の関節運動をアシストする装置がある(特許文献1参照:以下、「従来例1」と呼ぶ)。かかる従来例1のように、ベローズを用いた関節運動アシスト装置は、モータ及びワイヤにより駆動するアクチュエータを用いる方式の装置よりも軽量であるため、実用性が高い。また、ベローズを用いた関節運動アシスト装置は、低圧力での駆動が可能であるため、ダイヤフラム式ポンプやベーン式ポンプなどの低振動、低騒音のポンプを使用することができる。こうした点からも、伸縮可能なベローズを用いた関節運動アシスト装置は、実用性が高いといえる。
【0004】
この従来例1の技術では、伸縮可能なベローズがアシスト対象となる関節に配置される。そして、当該ベローズの一方側端部に接続された一方側伝達部材が、アシスト対象となる関節に接続された一方側部位に装着される。また、当該ベローズの他方側端部に接続された他方側伝達部材が、アシスト対象となる関節に接続された他方側部位に装着される。こうした装着状態のもとで、ベローズからの空気の強制的排出が行われた場合には、ベローズが収縮することにより、関節屈曲状態から関節伸展状態へと変化する関節運動のアシストを行う。また、ベローズへの空気の強制的供給が行われた場合には、ベローズが膨張することにより、関節伸展状態から関節屈曲状態へと変化する関節運動のアシストを行うようになっている。
【0005】
この関節運動アシスト装置を動作させる方法の一つとして、当該関節運動アシスト装置をスレーブ装置とし、マスタ装置がスレーブ装置を遠隔操作するマスタ・スレーブ方式が考えられる。こうしたマスタ・スレーブ方式を採用する場合には、例えば、健常な手部にマスタ装置を装着し、マスタ装置を装着した手部の手指の動きを、スレーブ装置である関節運動アシスト装置がトレースする構成が考えられる。そして、マスタ装置がスレーブ装置を遠隔操作する構成の一つとして、マスタ装置を装着した手部における手指の関節の屈曲角度を検出し、検出された屈曲角度に応じて、ベローズ内の空気圧を制御するものが考えられる。
【0006】
ここで、手指の関節の屈曲角度を検出する技術として、シート状の角度センサを手指の関節部分に装着し、当該角度センサにより、手指の関節の屈曲角度を検出するものがある(特許文献2参照:以下、「従来例2」と呼ぶ)。この従来例2の技術では、角度センサにより検出された屈曲角度に基づいて、演算装置が屈曲角速度を演算し、屈曲角度、屈曲角速度及び関節状態の予測判定の基準値となる参照角度データに基づいて、関節の状態を予測するようになっている。
【0007】
この従来例2の技術を、従来例1の関節運動アシスト装置の技術に適用する場合には、以下の構成が考えられる。まず、マスタ装置を装着する手部における手指の関節の状態を予測する。そして、関節状態の予測結果に基づき、マスタ装置側の手指が関節屈曲状態から関節伸展状態へと変化する際には、制御装置が、ベローズからの空気の強制的排出を行う制御を実行する。また、関節状態の予測結果に基づき、マスタ装置側の手指が関節伸展状態から関節屈曲状態へと変化する際には、制御装置が、ベローズへの空気の強制的供給を行う制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2011/043095号
【特許文献2】特開2009−112540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来例2の技術的思想を適用し、従来例1の関節運動アシスト装置をスレーブ装置として動作させる場合には、制御装置が、マスタ装置側での関節状態の予測結果に基づき、スレーブ装置の動きを制御することになる。この結果、従来例2の技術的思想を適用したマスタ・スレーブ方式では、電子制御装置が必須の構成要素となる。
【0010】
ここで、関節運動アシストシステムにおいて、電子制御で関節運動アシスト装置を動作させる場合には、電子制御を行わない構成の場合と比べて、一般的に、関節運動アシストシステムの構成が複雑になり、製造コストが高価なものとなりやすい。また、関節運動アシストシステムにおけるマスタ装置及びスレーブ装置は、人体等に装着するため、清掃、洗浄、除菌(殺菌)を行い、サニタリ性を向上させておく必要がある。しかしながら、電子部品は、一般に水に弱い。この結果、電子部品を有する関節運動アシストシステムでは、例えば、機械的制御によりスレーブ装置を動作させる関節運動アシストシステムに比べて、メンテナンスに手間が掛かることがある。また、電子部品を有する関節運動アシストシステムでは、機械的制御によりスレーブ装置を動作させる関節運動アシストシステムに比べて、故障が発生しやすい。
【0011】
このため、電子制御を行わずに、マスタ・スレーブ方式により、スレーブ装置である関節運動アシスト装置を動作させることができる技術が望まれている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0012】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、関節運動アシスト装置を遠隔動作させ、関節運動を適切にアシストすることができる新たな関節運動アシストシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1対象物の関節運動をアシストする関節運動アシストシステムであって、前記第1対象物に装着されるスレーブ装置と;マスタ装置と;前記スレーブ装置及び前記マスタ装置に取り付けられる配管と;を備え、前記スレーブ装置は、前記第1対象物における関節運動をアシストすべき関節ごとに用意され、前記関節の回動運動の回動軸に対して垂直方向の関節部分に配置された場合に、前記関節運動をアシストする力を発生させる伸縮自在なベローズを備え、前記マスタ装置は、前記ベローズ内への作動流体の供給に使用され、先端部が閉塞されている可撓性の第1のパイプ状部材と;前記ベローズ内からの作動流体の排出に使用され、先端部が閉塞されている可撓性の第2のパイプ状部材と;前記第1のパイプ状部材の先端側部分、及び、前記第2のパイプ状部材の先端側部分を平行配置して収納し、前記配管を介して前記ベローズの内部空間と連通する内部空間を形成する可撓性の収納部材と;を備え、前記第1のパイプ状部材の先端側部分には少なくとも1つの第1の切り込みが、前記第1のパイプ状部材が延びる方向と垂直な方向に形成され、前記第1のパイプ状部材の先端側部分が直線状となっているときには、前記第1の切り込みが閉口して前記第1のパイプ状部材の内部空間と前記収納部材の内部空間とを離隔させ、前記第1のパイプ状部材の先端側部分が第1所定軸を軸にして所定方向に屈曲したときには、前記第1の切り込みが開口して前記第1のパイプ状部材の内部空間と前記収納部材の内部空間とを連通させ、前記第2のパイプ状部材の先端側部分には少なくとも1つの第2の切り込みが、前記第2のパイプ状部材が延びる方向と垂直な方向に形成され、前記第2のパイプ状部材の先端側部分が直線状となっているときには、前記第2の切り込みが開口して前記第2のパイプ状部材の内部空間と前記収納部材の内部空間とを連通させ、前記第2のパイプ状部材の先端側部分が前記第1所定軸と平行な第2所定軸を軸にして前記所定方向に屈曲したときには、前記第2の切り込みが閉口して前記第2のパイプ状部材の内部空間と前記収納部材の内部空間とを離隔させ、前記第1所定軸は、前記第1のパイプ状部材の先端側部分が直線状となっているときの前記第1のパイプ状部材の先端側部分が延びる方向と垂直であり、かつ、前記第1の切り込みの切込み方向と平行であり、前記第1のパイプ状部材を通る軸であり、前記第2所定軸は、前記第2のパイプ状部材の先端側部分が直線状となっているときの前記第2のパイプ状部材の先端側部分が延びる方向と垂直であり、かつ、前記第2の切り込みの切込み方向と平行であり、前記第2のパイプ状部材を通る軸であり、前記所定方向は、前記第1のパイプ状部材の先端側部分が直線状態から屈曲すると、前記第1の切り込みが、閉口状態から開口状態となる方向であり、前記第2のパイプ状部材の先端側部分が直線状態から屈曲すると、前記第2の切り込みが、開口状態から閉口状態となる方向である、ことを特徴とする関節運動アシストシステムである。
【0014】
この関節運動アシストシステムでは、スレーブ装置が、第1対象物に装着される。そして、第1対象物にスレーブ装置が装着された場合に、関節運動をアシストすべき関節ごとに用意されたベローズが、対応する関節の回動運動の回動軸に対して垂直方向の関節部分に配置される。マスタ装置は、ベローズ内への作動流体の供給に使用される第1の切り込みが形成された第1のパイプ状部材と、ベローズ内からの作動流体の排出に使用される第2の切り込みが形成された第2のパイプ状部材と、第1のパイプ状部材の先端側部分及び第2のパイプ状部材の先端側部分の双方を収納する収納部材とを備えている。
【0015】
そして、第1のパイプ状部材の先端側部分が直線状になっているときには、第1の切り込みが閉口して、第1のパイプ状部材の内部空間と収納部材の内部空間とを離隔させる。また、第2のパイプ状部材の先端側部分が直線状になっているときには、第2の切り込みが開口して、第2のパイプ状部材の内部空間と収納部材の内部空間とを連通させる。この結果、収納部材が直線状になっているときには、収納部材の内部空間及び配管を介して、第2のパイプ状部材の内部空間とベローズの内部空間とが連通し、ベローズ内からの作動流体の排出が行われる。こうしてベローズ内から作動流体が排出されると、ベローズが収縮する。
【0016】
一方、第1のパイプ状部材の先端側部分が第1所定軸を軸にして所定方向に屈曲したときには、第1の切り込みが開口して、第1のパイプ状部材の内部空間と収納部材の内部空間とを連通させる。また、第2のパイプ状部材の先端側部分が第2所定軸を軸にして所定方向に屈曲したときには、第2の切り込みが閉口して第2のパイプ状部材の内部空間と収納部材の内部空間とを離隔させる。この結果、収納部材が所定方向に屈曲しているときには、収納部材の内部空間及び配管を介して、第1のパイプ状部材の内部空間とベローズの内部空間とが連通し、ベローズ内への作動流体の供給が行われる。こうしてベローズ内へ作動流体が供給されると、ベローズが膨張する。
【0017】
こうしたベローズの膨張行程及び収縮行程により、ベローズが、関節運動をアシストする力を発生する。このため、収納部材の形状を変形させることにより、スレーブ装置である関節運動アシスト装置を遠隔動作させることができる。
【0018】
したがって、本発明の関節運動アシストシステムによれば、簡易な構成で、関節運動アシスト装置を遠隔動作させ、関節運動を適切にアシストすることができる。
【0019】
なお、軽量の柔らかい樹脂製のベローズを構成要素とすれば、スレーブ装置の重さの軽量化を図ることができ、関節運動アシスト装着を装着する者の身体的負担を軽減することができる。
【0020】
本発明の関節運動アシストシステムでは、前記第1の切り込みは、前記第1のパイプ状部材の先端側部分が、前記第1所定軸を軸にして前記所定方向に屈曲したときにV字状開口を形成し、前記第1のパイプ状部材の先端側部分が、直線状となったときに閉口状態になる切り込みであり、前記第2の切り込みは、前記第2のパイプ状部材の先端側部分が、直線状となったときにV字状開口を形成し、前記第2のパイプ状部材の先端側部分が、前記第2所定軸を軸にして前記所定方向に屈曲したときに閉口状態になる切り込みである、ようにすることができる。この場合には、第1の切り込みの形状、及び、第2の切り込みの形状は、非常に簡単なものとなる。このため、マスタ装置の製作者は、第1のパイプ状部材に第1の切り込みを容易に形成し、第2のパイプ状部材の第2の切り込みを容易に形成することができる。
【0021】
また、本発明の関節運動アシストシステムでは、前記第1のパイプ状部材及び前記配管を介した前記ベローズへの作動流体の供給、及び、前記配管及び前記第2のパイプ状部材を介した前記ベローズからの作動流体の排出を行う流体給排装置を更に備え、前記第1のパイプ状部材の末端部は、前記作動流体を供給する前記流体給排装置の吐出口に接続され、前記第2のパイプ状部材の末端部は、前記作動流体を排出する前記流体給排装置の吸引口に接続されている、ようにすることができる。この場合には、流体給排装置が作動流体を吐出することにより、マスタ装置及び配管を介して、スレーブ装置のベローズ内への作動流体の供給を行うことができる。また、この場合には、流体給排装置が作動流体を吸引することにより、配管及びマスタ装置を介して、スレーブ装置のベローズからの作動流体の排出を行うことができる。
【0022】
本発明の関節運動アシストシステムでは、前記関節運動には、関節伸展状態から関節屈曲状態へ向かう第1回転方向に沿った第1関節運動、及び、関節屈曲状態から関節伸展状態へ向かう第2回転方向に沿った第2関節運動が含まれ、前記第1のパイプ状部材の内部空間と前記ベローズの内部空間とを連通させ、かつ、前記第2のパイプ状部材の内部空間と前記ベローズの内部空間とを離隔させたときには、前記第1関節運動のアシストが行われる、ようにすることができる。また、前記第1のパイプ状部材の内部空間と前記ベローズの内部空間とを離隔させ、かつ、前記第2のパイプ状部材の内部空間と前記ベローズの内部空間とを連通させたときには、前記第2関節運動のアシストが行われる、ようにすることができる。この場合には、関節伸展状態から関節屈曲状態への関節運動、及び、関節屈曲状態から関節伸展状態へ関節運動を、アシストすることができる。
【0023】
また、本発明の関節運動アシストシステムでは、前記マスタ装置は、前記第1対象物と合同対称性、相似対称性及び左右対称性のいずれかの対称性を有する構造の第2対象物に装着され、前記第1の切り込みの切り込み方向及び前記第2の切り込みの切り込み方向は、前記関節運動をアシストすべき前記第1対象物における関節に対応する前記第2対象物における関節の回動軸と平行である、ようにすることができる。この場合には、マスタ装置を装着した第2対象物の動きを、スレーブ装置を装着した第1対象物にトレースさせることができる。

【0024】
本発明の関節運動アシストシステムでは、マスタ装置を第2対象物に装着する場合に、前記第1所定軸及び前記第2所定軸の双方は、前記第1対象物における関節運動をアシストすべき関節の回動運動の回動軸に対応する前記第2対象物の関節の回動運動の回動軸と平行であり、前記所定方向は、前記第2対象物の関節を関節伸展状態から関節屈曲状態にする方向であり、前記第1の切り込み部分及び前記第2の切り込み部分は、前記第2対象物の関節の回動運動の回動軸に対して垂直方向の関節部分に配置される、ようにすることができる。この場合には、第1対象物におけるベローズの配置位置に対応する第2対象物の位置に、マスタ装置を配置することができる。
【0025】
また、本発明の関節運動アシストシステムでは、マスタ装置を第2対象物に装着する場合に、前記第1のパイプ状部材の先端側部分及び前記第2のパイプ状部材の先端側部分は、前記関節部分の伸展側に配置され、前記第1の切り込み部分は、前記関節部分の伸展側と対向する側とは反対側に形成され、前記第2の切り込み部分は、前記関節部分の伸展側と対向する側に形成される、ようにすることができる。この場合には、マスタ装置を、配置が容易な関節部分の伸展側に配置することができる。また、この場合には、第2対象物の関節を関節伸展状態にしたときに、第1のパイプ状部材の先端側部分及び第2のパイプ状部材の先端側部分を直線状にすることができる。また、この場合には、第2対象物の関節を関節屈曲状態にしたときに、第1のパイプ状部材の先端側部分及び第2のパイプ状部材の先端側部分を所定方向に屈曲させることができる。
【0026】
本発明の関節運動アシストシステムでは、マスタ装置を第2対象物に装着する場合に、前記第1対象物には、人体の一方の手部における手指の少なくとも1つが含まれ、前記第2対象物には、前記人体の他方の手部における手指の少なくとも1つが含まれる、ようにすることができる。この場合には、関節運動アシスト装置を装着する者の一方の手部の手指のみが拘縮し、他方の手部の手指が拘縮していない場合に、適用される。すなわち、スレーブ装置を、関節運動をアシストすべき人体の手部に装着する。そして、マスタ装置を、当該人体の手指が拘縮していない手部に装着する。このため、他者の支援を得ることなく、関節運動アシスト装置を装着する者自身で、手指の関節運動をアシストすることができる。
【0027】
また、本発明の関節運動アシストシステムでは、マスタ装置を第2対象物に装着する場合に、前記第1対象物には、人体の手部における手指の少なくとも1つが含まれ、前記第2対象物には、前記人体とは異なる人体の手部における手指の少なくとも1つが含まれる、ようにすることができる。この場合には、スレーブ装置を、関節運動をアシストすべき人体の手部に装着し、マスタ装置を、当該人体とは異なる人体の手指が拘縮していない手部に装着する。このため、理学療法士や家族員等の他者の支援を得て、手指の関節運動をアシストすることができる。
【0028】
本発明の関節運動アシストシステムでは、マスタ装置を第2対象物に装着する場合に、前記第1対象物には、人体の一方の手首部が含まれ、前記第2対象物には、前記人体の他方の手首部が含まれる、ようにすることができる。この場合には、関節運動アシスト装置を装着する者の一方の手部の手首のみが拘縮し、他方の手部の手首が拘縮していない場合に、適用される。すなわち、スレーブ装置を、関節運動をアシストすべき人体の手部に装着する。そして、マスタ装置を、当該人体の手指が拘縮していない手部に装着する。このため、他者の支援を得ることなく、関節運動アシスト装置を装着する者自身で、手首の関節運動をアシストすることができる。
【0029】
また、本発明の関節運動アシストシステムでは、マスタ装置を第2対象物に装着する場合に、前記第1対象物には、人体の手首部が含まれ、前記第2対象物には、前記人体とは異なる手首部が含まれる、ようにすることができる。この場合には、スレーブ装置を、関節運動をアシストすべき人体の手部に装着し、マスタ装置を、当該人体とは異なる人体の手指が拘縮していない手部に装着する。このため、理学療法士や家族員等の他者の支援を得て、手首の関節運動をアシストすることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明の関節運動アシストシステムによれば、電子制御を行わずに、非常に簡易な構成のマスタ装置を用いて、スレーブ装置である関節運動アシスト装置を遠隔動作させ、関節運動を適切にアシストすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る関節運動アシストシステムの構成を説明するための図である。
図2図1の関節運動アシスト装置の外観図である。
図3図2の母指関節運動アシスト部の構成を説明するための図である。
図4図2の示指用の手指関節運動アシスト部の構成を説明するための図である。
図5図1のマスタ装置の外観図である。
図6図5の母指マスタ部の構成を説明するための図である。
図7図5の示指用の手指マスタ部の構成を説明するための図である。
図8図6の関節運動マスタ部の構成を説明するための図(その1)である。
図9図6の関節運動マスタ部の構成を説明するための図(その2)である。
図10図6の関節運動マスタ部の構成を説明するための図(その3)である。
図11図1の関節運動アシスト装置とマスタ装置との間の配管を説明するための図である。
図12図1の流体給排装置の構成を説明するための図である。
図13】関節運動アシスト装置、マスタ装置及び流体給排装置の接続関係を説明するための図である。
図14】関節伸展時の関節運動マスタ部の状態を説明するための図である。
図15】関節屈曲時の手指マスタ部の状態を説明するための図である。
図16】関節屈曲時の関節運動マスタ部の状態を説明するための図である。
図17図15の状態の手指マスタ部をトレースした手指関節運動アシスト部の状態を説明するための図である。
図18】手首の関節運動をアシストする変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0032】
100…関節運動アシストシステム、200…関節運動アシスト装置(スレーブ装置)、210…手部装着部、2301…母指関節運動アシスト部(手指関節運動アシスト部)、2302,2303,2304,2305…手指関節運動アシスト部、321j(j=1,…,5)…伝達部材、322k(k=2,…,5)…伝達部材、323j,324j(j=1,…,5)…伝達部材、331k(k=2,…,5)…配管、341k(k=2,…,5)…ベローズ、342k,m (j=1,…,5;m=1,2)…ベローズ、3901…母指装着部、390k(k=2,…,5)…手指装着部、391j(j=1,…,5)…装着部材、392j(j=1,…,5)…指サック、393j(j=1,…,5),396k(k=2,…,5)…バンド部材、500…マスタ装置、510…手部装着部、5301…母指マスタ部(手指マスタ部)、5302,5303,5304,5305…手指マスタ部、610j,m(j=1,…,5;m=1,2)…関節運動マスタ部、620j,m(j=1,…,5;m=1,2)…収納部材、621j,m(j=1,…,5;m=1,2)…第1のパイプ状部材、622j,m(j=1,…,5;m=1,2)…第2のパイプ状部材、690j(j=1,…,5)…手指装着部、691j(j=1,…,5)…装着部材、692j(j=1,…,5)…指サック、693j(j=1,…,5),696k(k=2,…,5)…バンド部材、800…配管、821k,m(j=1,…,5;m=1,2)…配管、900…流体給排装置、911…加圧ポンプ、912…減圧ポンプ、921,922…配管、1342…ベローズ、1620…収納部材、1621…第1のパイプ状部材、1622…第2のパイプ状部材、CU1…第1の切り込み、CU2…第2の切り込み、HB1,HB2…人体、HDR1…右手(第1対象物),HDR2…右手(第2対象物)
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態を、図1図17を参照して説明する。なお、本実施形態においては、人体の右手に装着される関節運動アシスト装置、及び、当該関節運動アシスト装置を装着する人体とは異なる人体の右手に装着されるマスタ装置を有する関節運動アシストシステムを例示して説明する。また、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0034】
[構成]
図1には、一実施形態に係る関節運動アシストシステム100の構成が示されている。図1に示されるように、関節運動アシストシステム100は、関節運動アシスト装置200と、マスタ装置500と、配管800とを備えている。また、関節運動アシストシステム100は、流体給排装置900を備えている。ここで、関節運動アシスト装置200は、スレーブ装置に対応している。
【0035】
<関節運動アシスト装置200の構成>
上記の関節運動アシスト装置200の構成ついて、説明する。
【0036】
図2には、関節運動アシスト装置200の外観図が示されている。図2は、第1対象物としての「人体HB1の右手HDR1」に装着された関節運動アシスト装置200を、手指の関節が伸展状態にあるときに手背側から眺めた外観図である。図2に示されるように、関節運動アシスト装置200は、手部装着部210と、母指関節運動アシスト部2301と、手指関節運動アシスト部2302,2303,2304,2305とを備えている。
【0037】
なお、以下の説明では、母指関節運動アシスト部2301及び手指関節運動アシスト部2302,2303,2304,2305を総称して、「手指関節運動アシスト部230j(j=1,…,5)」とも記す。また、以下の説明では、母指関節運動アシスト部2301以外の手指関節運動アシスト部2302,2303,2304,2305を総称する場合には、「手指関節運動アシスト部230k(k=2,…,5)」とも記す。また、以下の説明では、母指、示指、中指、薬指及び小指を、単に「手指」とも記す。さらに、示指、中指、薬指及び小指を、「四指」とも記す。
【0038】
《手部装着部210》
上記の手部装着部210について、説明する。手部装着部210は、例えば、布製の部材であり、右手HDR1の手背及び手掌に装着される。手部装着部210には、母指関節運動アシスト部2301の一方側の部分が取り付けられる。
【0039】
また、手部装着部210には、手指関節運動アシスト部2302,2303,2304,2305の一方側の部分が取り付けられる。そして、手部に手部装着部210が装着されている状態では、手指関節運動アシスト部230j(j=1,…,5)は、手背側の指部に配置されるようになっている。
【0040】
《母指関節運動アシスト部2301の構成》
上記の母指関節運動アシスト部2301の構成について、説明する。
【0041】
母指関節運動アシスト部2301は、母指の関節運動をアシストする。母指関節運動アシスト部2301は、手部装着部210が手部に装着されている状態で、母指の指(末節部位、基節部位)及び中手部位上に装着される。
【0042】
母指関節運動アシスト部2301は、図2及び図3(A),(B)により総合的に示されるように、ベローズ3421,1,3421,2と、伝達部材3211,3231,3241とを備えている。また、母指関節運動アシスト部2301は、母指装着部3901を備えている。
【0043】
なお、図3(A),(B)における座標系(X1,Y1,Z1)は、母指が伸びている状態で、指先方向を+Y1方向、指の手掌側である指の腹(以下、「指腹」とも記す)側から指の手背側である指の背(以下、「指背」とも記す)側へ向かう方向を+Z1方向、Y1方向及びZ1方向に直交し、小指側へと向かう方向を+X1方向とする座標系である。ここで、図3(A)は、母指に装着された母指関節運動アシスト部2301を、+Z1方向側から視た図である。また、図3(B)は、母指に装着された母指関節運動アシスト部2301を、−X1方向側から視た図である。
【0044】
上記のベローズ3421,1は、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、母指の第1関節の関節軸の周りに沿って、指背側に配置される。ベローズ3421,1の一方側(図3における「−Y1方向側」)端部は、伝達部材3231の他方側の端部側(図3における「+Y1方向側」)に形成された他方側接続部に接続される。ベローズ3421,1の他方側端部は、伝達部材3211の一方側の端部側に形成された接続部に接続される。こうして配置されたベローズ3421,1は、第1関節の関節運動をアシストする力を発生する。
【0045】
上記のベローズ3421,2は、ベローズ3421,1と同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、母指の第2関節の関節軸の周りに沿って、指背側に配置される。ベローズ3421,2の一方側端部は、伝達部材3241の他方側(ベローズ3421,2側)の端部側に形成された接続部に接続される。ベローズ3421,2の他方側端部は、伝達部材3231の一方側の端部側に形成された一方側接続部に接続される。こうして配置されたベローズ3421,2は、第2関節の関節運動をアシストする力を発生する。
【0046】
ここで、ベローズ3421,1には、可撓性を有する樹脂製の配管8211,1が取り付けられ、当該ベローズ3421,1は、配管8211,1を介してマスタ装置500と連通している。そして、ベローズ3421,1内の空気圧が変化すると、当該ベローズ3421,1が膨縮する。この結果、ベローズ3421,1が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
【0047】
また、ベローズ3421,2には、可撓性を有する樹脂製の配管8211,2が取り付けられ、当該ベローズ3421,2は、配管8211,2を介してマスタ装置500と連通している。そして、ベローズ3421,2内の空気圧が変化すると、当該ベローズ3421,2が膨縮する。この結果、ベローズ3421,2が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
【0048】
上記の伝達部材3211は、例えば、鋼鉄製の部材であり、Y1軸方向に沿って延びる長板部を有している。そして、当該長板部には、一方側の端部に略直立して指背の方向に沿って延びる板状の接続部が形成されている。伝達部材3211の長板部の一方側の端部には、ベローズ3421,1を介して、伝達部材3231が接続されている。そして、伝達部材3211の一方側の端部の接続部は、ベローズ3421,1の他方側端部に接続されている。ここで、伝達部材3211の長板部の一方側の端部は、右手に関節運動アシスト装置200が装着されている時において、母指の第1関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に伝達部材3231に接続されるようになっている。この伝達部材3211の長板部は、母指装着部3901の後述する装着部材3911を介して、母指の末節部位に装着される。
【0049】
上記の伝達部材3231は、例えば、鋼鉄製の部材であり、Y1軸方向に沿って延びる長板部を有している。そして、当該長板部の一方の端部には、略直立して指背の方向に沿って延びる板状の一方側接続部が形成されている。また、当該長板部の他方の端部には、略直立して指背の方向に沿って延びる板状の他方側接続部が形成されている。この他方側接続部には、配管8211,1を挿入する挿入穴が成型されている。
【0050】
伝達部材3231の長板部の一方側の端部には、ベローズ3421,2を介して、伝達部材3241が接続されている。そして、伝達部材3231の一方側接続部は、ベローズ3421,2の他方側端部に接続されている。ここで、伝達部材3231の長板部の一方側の端部は、右手に関節運動アシスト装置200が装着されている時において、母指の第2関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に伝達部材3241に接続されるようになっている。
【0051】
また、伝達部材3231の長板部の他方側の端部には、ベローズ3421,1を介して、伝達部材3211が接続されている。そして、伝達部材3231の他方側接続部は、ベローズ3421,1の一方側端部に接続されている。この伝達部材3231の長板部は、母指装着部3901の後述する装着部材3911を介して、母指の基節部位に装着される。
【0052】
上記の伝達部材3241は、例えば、鋼鉄製の部材であり、Y1軸方向に沿って延びる長板部を有している。そして、当該長板部には、他方側の端部に略直立して指背の方向に沿って延びる板状の接続部が形成されている。この接続部には、配管8211,2を挿入する挿入穴が成型されている。伝達部材3241の長板部の他方側の端部には、ベローズ3421,2を介して、伝達部材3231が接続されている。そして、伝達部材3241の他方側の端部の接続部は、ベローズ3421,2の一方側端部に接続されている。この伝達部材3241の長板部は、母指装着部3901の後述する装着部材3911を介して、母指の中手部位に装着される。
【0053】
上記の母指装着部3901は、母指の指(末節部位、基節部位)及び中手部位上に装着される。母指装着部3901は、装着部材3911と、指サック3921と、バンド部材3931とを備えている。
【0054】
上記の装着部材3911は、弾力性を有する長形状の部材であり、母指が延びる方向に沿って、母指の指及び中手部位の手背側に配置される。装着部材3911の+Z1方向側には、伝達部材3211,3231,3241の長板部が固定されている。また、装着部材3911における伝達部材3241が固定されている面の反対側(−Z1方向側)には、手部装着部210が取り付けられている。
【0055】
上記の指サック3921は、例えば、皮製の部材であり、装着部材3911の指先側に固定される。そして、指サック3921は、母指関節運動アシスト部2301を母指に装着する際に、母指の指先に固定される。上記のバンド部材3931は、例えば、長形状の布製の部材であり、基節部位と伝達部材3231の長板部とを固定する。
【0056】
《手指関節運動アシスト部230k(k=2,…,5)の構成》
上記の手指関節運動アシスト部230k(k=2,…,5)の構成について、説明する。
【0057】
手指関節運動アシスト部2302は、示指の関節運動をアシストする。また、手指関節運動アシスト部2303は、中指の関節運動をアシストする。また、手指関節運動アシスト部2304は、薬指の関節運動をアシストする。また、手指関節運動アシスト部2305は、小指の関節運動をアシストする。手指関節運動アシスト部230k(k=2,…,5)のそれぞれは、手部装着部210が手部に装着されている状態で、対応する手指の指(末節部位、中節部位、基節部位)及び中手部位上に装着される。
【0058】
図4(A),(B)には、手指関節運動アシスト部230kの代表として、手指関節運動アシスト部2302の構成図が示されている。なお、図4(A),(B)における座標系(X2,Y2,Z2)は、示指が伸びている状態で、指先方向を+Y2方向、指腹側から指背側へ向かう方向を+Z2方向、Y2方向及びZ2方向に直交し、小指側へと向かう方向を+X2方向とする座標系である。
【0059】
ここで、図4(A)は、示指に装着された手指関節運動アシスト部2302を、+Z2方向側から視た図である。また、図4(B)は、示指に装着された手指関節運動アシスト部2302を、−X2方向側から視た図である。本実施形態では、手指関節運動アシスト部2303,2304,2305についても、手指関節運動アシスト部2302と同様に構成されている。
【0060】
手指関節運動アシスト部230k(k=2,…,5)のそれぞれは、図2及び図4(A),(B)により総合的に示されるように、ベローズ341k,342k,1,342k,2と、配管331kと、伝達部材321k,322k,323k,324kとを備えている。また、手指関節運動アシスト部230kのそれぞれは、手指装着部390kを備えている。
【0061】
上記のベローズ341kは、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、第1関節の関節軸の周りに沿って、指背側に配置される。ベローズ341kの一方側(図4における「−Yk方向側」)端部は、伝達部材322kの他方側の端部側(図4における「+Yk方向側」)に形成された他方側接続部に接続される。ベローズ341kの他方側端部は、伝達部材321kの一方側の端部側に形成された接続部に接続される。こうして配置されたベローズ341kは、第1関節の関節運動をアシストする力を発生する。
【0062】
上記のベローズ342k,1は、ベローズ341kと同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、第2関節の関節軸の周りに沿って、指背側に配置される。ベローズ342k,1の一方側端部は、伝達部材323kの他方側の端部側に形成された他方側接続部に接続される。ベローズ342k,1の他方側端部は、伝達部材322kの一方側の端部側に形成された一方側接続部に接続される。こうして配置されたベローズ342k,1は、第2関節の関節運動をアシストする力を発生する。
【0063】
上記のベローズ342k,2は、ベローズ341k,342k,1と同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、第3関節の関節軸の周りに沿って、指背側に配置される。ベローズ342k,2の一方側端部は、伝達部材324kの他方側(ベローズ342k,2側)の端部側に形成された接続部に接続される。ベローズ342k,2の他方側端部は、伝達部材323kの一方側の端部側に形成された一方側接続部に接続される。こうして配置されたベローズ342k,2は、第3関節の関節運動をアシストする力を発生する。
【0064】
ここで、ベローズ341kの内部空間とベローズ342k,1の内部空間とは、可撓性を有する樹脂製の配管331kを介して、連通している。また、ベローズ342k,1には、可撓性を有する樹脂製の配管821k,1が取り付けられ、当該ベローズ342k,1は、配管821k,1を介してマスタ装置500と連通している。そして、ベローズ341k,342k,1内の空気圧が変化すると、当該ベローズ341k,342k,1が膨縮する。この結果、ベローズ341k,342k,1が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
【0065】
また、ベローズ342k,2には、可撓性を有する樹脂製の配管821k,2が取り付けられ、当該ベローズ342k,2は、配管821k,2を介してマスタ装置500と連通している。そして、ベローズ342k,2内の空気圧が変化すると、当該ベローズ342k,2が膨縮する。この結果、ベローズ342k,2が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
【0066】
上記の伝達部材321kは、例えば、鋼鉄製の部材であり、Yk軸方向に沿って延びる長板部を有している。そして、当該長板部には、一方側の端部に略直立して指背の方向に沿って延びる板状の接続部が形成されている。伝達部材321kの長板部の一方側の端部には、ベローズ341kを介して、伝達部材322kが接続されている。そして、伝達部材321kの一方側の端部側の接続部は、ベローズ341kの他方側端部に接続されている。ここで、伝達部材321kの長板部の一方側の端部は、右手に関節運動アシスト装置200が装着されている時において、第1関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に伝達部材322kに接続されるようになっている。この伝達部材321kの長板部は、手指装着部390kの後述する装着部材391kを介して、手指の末節部位に装着される。
【0067】
上記の伝達部材322kは、例えば、鋼鉄製の部材であり、Yk軸方向に沿って延びる長板部を有している。そして、当該長板部の一方の端部には、略直立して指背の方向に沿って延びる板状の一方側接続部が形成されている。また、当該長板部の他方の端部には、略直立して指背の方向に沿って延びる板状の他方側接続部が形成されている。この一方側接続部及び他方側接続部には、配管331kを挿入する挿入穴が成型されている。
【0068】
伝達部材322kの長板部の一方側の端部には、ベローズ342k,1を介して、伝達部材323kが接続されている。そして、伝達部材322kの一方側接続部は、ベローズ342k,1の他方側端部に接続されている。ここで、伝達部材322kの長板部の一方側の端部は、右手に関節運動アシスト装置200が装着されている時において、第2関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に伝達部材323kに接続されるようになっている。
【0069】
また、伝達部材322kの長板部の他方側の端部には、ベローズ341kを介して、伝達部材321kが接続されている。そして、伝達部材322kの他方側接続部は、ベローズ341kの一方側端部に接続されている。この伝達部材322kの長板部は、手指装着部390kの後述する装着部材391kを介して、手指の中節部位に装着される。
【0070】
上記の伝達部材323kは、例えば、鋼鉄製の部材であり、Yk軸方向に沿って延びる長板部を有している。そして、当該長板部の一方の端部には、略直立して指背の方向に沿って延びる板状の一方側接続部が形成されている。また、当該長板部の他方の端部には、略直立して指背の方向に沿って延びる板状の他方側接続部が形成されている。この他方側接続部には、配管821k,1を挿入する挿入穴が成型されている。
【0071】
伝達部材323kの長板部の一方側の端部には、ベローズ342k,2を介して、伝達部材324kが接続されている。そして、伝達部材323kの一方側接続部は、ベローズ342k,2の他方側端部に接続されている。ここで、伝達部材323kの長板部の一方側の端部は、右手に関節運動アシスト装置200が装着されている時において、第3関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に伝達部材324kに接続されるようになっている。
【0072】
また、伝達部材323kの長板部の他方側の端部には、ベローズ342k,1を介して、伝達部材322kが接続されている。そして、伝達部材323kの他方側接続部は、ベローズ342k,1の一方側端部に接続されている。この伝達部材323kの長板部は、手指装着部390kの後述する装着部材391kを介して、手指の基節部位に装着される。
【0073】
上記の伝達部材324kは、例えば、鋼鉄製の部材であり、Yk軸方向に沿って延びる長板部を有している。そして、当該長板部には、他方側の端部に略直立して指背の方向に沿って延びる板状の接続部が形成されている。この接続部には、配管821k,2を挿入する挿入穴が成型されている。伝達部材324kの長板部の他方側の端部には、ベローズ342k,2を介して、伝達部材323kが接続されている。そして、伝達部材324kの他方側の端部の接続部は、ベローズ342k,2の一方側端部に接続されている。この伝達部材324kの長板部は、手指装着部390kの後述する装着部材391kを介して、手指の中手部位上に装着される。
【0074】
上記の手指装着部390k(k=2,…,5)は、手指の指(末節部位、中節部位、基節部位)及び中手部位上に装着される。手指装着部390k(k=2,…,5)のそれぞれは、装着部材391kと、指サック392kと、バンド部材393k,396kとを備えている。
【0075】
上記の装着部材391kは、弾力性を有する長形状の部材であり、手指が延びる方向に沿って、手指の指及び中手部位の手背側に配置される。装着部材391kの+Zk方向側には、伝達部材321k,322k,323k,324kの長板部が固定されている。また、装着部材391kにおける伝達部材324kが固定されている面の反対側(−Zk方向側)には、手部装着部210が取り付けられている。
【0076】
上記の指サック392kは、例えば、皮製の部材であり、装着部材391kの指先側に固定される。そして、指サック392kは、手指関節運動アシスト部230kを手指に装着する際に、手指の指先に固定される。上記のバンド部材393k,396kは、例えば、長形状の布製の部材である。そして、バンド部材393kは、中節部位と伝達部材322kの長板部とを固定する。バンド部材396kは、基節部位と伝達部材323kの長板部とを固定する。
【0077】
<マスタ装置500の構成>
上記のマスタ装置500の構成ついて、説明する。
【0078】
図5には、マスタ装置500の外観図が示されている。図5は、第2対象物としての「人体HB2の右手HDR2(関節運動アシスト装置200が装着される人とは別の人の右手)」に装着されたマスタ装置500を、手指の関節が伸展状態にあるときに手背側から眺めた外観図である。図5に示されるように、マスタ装置500は、手部装着部510と、母指マスタ部5301と、手指マスタ部530k(k=2,…,5)とを備えている。本実施形態では、「人体HB2の右手HDR2」は、「人体HB1の右手HDR1」と合同対称性を有している。この「合同対称性」とは、完全な合同以外にほぼ合同である場合も含む。
【0079】
なお、以下の説明では、母指マスタ部5301及び手指マスタ部530k(k=2,…,5)を総称して、「手指マスタ部530j(j=1,…,5)」とも記す。
【0080】
《手部装着部510》
上記の手部装着部510について、説明する。手部装着部510は、例えば、布製の部材であり、右手HDR2の手背及び手掌に装着される。手部装着部510には、母指マスタ部5301の一方側の部分が取り付けられる。
【0081】
また、手部装着部510には、手指マスタ部530k(k=2,…,5)の一方側の部分が取り付けられる。そして、手部に手部装着部510が装着されている状態では、母指マスタ部5301及び手指マスタ部530k(k=2,…,5)は、手背側の指部に配置されるようになっている。
【0082】
《手指マスタ部530j(j=1,…,5)の構成》
上記の手指マスタ部530j(j=1,…,5)の構成について、説明する。
【0083】
母指マスタ部5301は、母指の指(末節部位、基節部位)及び中手部位上に装着され、人体HB1における右手HDR1の母指の関節運動をアシストする手指関節運動アシスト部2301を制御する。また、手指マスタ部5302は、示指の指(末節部位、基節部位)及び中手部位上に装着され、人体HB1における右手HDR1の示指の関節運動をアシストする手指関節運動アシスト部2302を制御する。また、手指マスタ部5303は、中指の指(末節部位、基節部位)及び中手部位上に装着され、人体HB1における右手HDR1の中指の関節運動をアシストする手指関節運動アシスト部2303を制御する。
【0084】
手指マスタ部5304は、薬指の指(末節部位、基節部位)及び中手部位上に装着され、人体HB1における右手HDR1の薬指の関節運動をアシストする手指関節運動アシスト部2304を制御する。また、手指マスタ部5305は、小指の指(末節部位、基節部位)及び中手部位上に装着され、人体HB1における右手HDR1の小指の関節運動をアシストする手指関節運動アシスト部2305を制御する。
【0085】
図6(A),(B)には、母指マスタ部5301の構成図が示されている。また、図7(A),(B)には、手指マスタ部530k(k=2,…,5)の代表として、手指マスタ部5302の構成図が示されている。
【0086】
なお、図6(A),(B)における座標系(U1,V1,W1)は、母指が伸びている状態で、指先方向を+V1方向、指腹側から指背側へ向かう方向を+W1方向、V1方向及びW1方向に直交し、小指側へと向かう方向を+U1方向とする座標系である。ここで、図6(A)は、母指に装着された母指マスタ部5301を、+W1方向側から視た図である。また、図6(B)は、母指に装着された母指マスタ部5301を、−U1方向側から視た図である。
【0087】
また、図7(A),(B)における座標系(U2,V2,W2)は、示指が伸びている状態で、指先方向を+V2方向、指腹側から指背側へ向かう方向を+W2方向、V2方向及びW2方向に直交し、小指側へと向かう方向を+U2方向とする座標系である。ここで、図7(A)は、示指に装着された手指マスタ部5302を、+W2方向側から視た図である。また、図7(B)は、示指に装着された手指マスタ部5302を、−U2方向側から視た図である。本実施形態では、手指マスタ部5303,5304,5305についても、手指マスタ部5302と同様に構成されている。
【0088】
手指マスタ部530j(j=1,…,5)のそれぞれは、図5図6(A),(B)及び図7(A),(B)により総合的に示されるように、関節運動マスタ部610j,1,610j,2と、手指装着部690jを備えている。
【0089】
(手指装着部690j(j=1,…,5)の構成)
上記の手指装着部690j(j=1,…,5)の構成について、説明する。
【0090】
上記の手指装着部6901は、母指の指(末節部位、基節部位)及び中手部位上に装着される。また、上記の手指装着部690k(k=2,…,5)のそれぞれは、示指、中指、薬指及び小指の指(末節部位、中節部位、基節部位)及び中手部位上に装着される。ここで、母指装着部6901は、図6(A),(B)に示されるように、装着部材6911と、指サック6921と、バンド部材6931とを備えている。また、手指装着部690k(k=2,…,5)のそれぞれは、図7(A),(B)に示されるように、装着部材691kと、指サック692kと、バンド部材693k,696kとを備えている。
【0091】
上記の装着部材691jは、弾力性を有する長形状の部材であり、手指が延びる方向に沿って、手指の指及び中手部位の手背側に配置される。装着部材691jの+Wj方向側には、関節運動マスタ部610j,1,610j,2が固定されている。また、装着部材691jの−Wj方向側には、手部装着部510が取り付けられている。
【0092】
上記の指サック692jは、例えば、皮製の部材であり、装着部材691jの指先側に固定される。そして、指サック692jは、手指マスタ部530jを手指に装着する際に、手指の指先に固定される。
【0093】
上記のバンド部材6931は、例えば、長形状の布製の部材であり、母指の基節部位と装着部材6911とを固定する(図6(A),(B)参照)。
【0094】
上記のバンド部材693kは、例えば、長形状の布製の部材であり、四指の中節部位と装着部材691kとを固定する。また、上記のバンド部材696kは、例えば、長形状の布製の部材であり、四指の基節部位と装着部材691kとを固定する(図7(A),(B)参照)。
【0095】
(関節運動マスタ部610j,m(j=1,…,5;m=1,2)の構成)
上記の関節運動マスタ部610j,m(j=1,…,5;m=1,2)の構成について、説明する。
【0096】
ここで、関節運動マスタ部6101,1は、母指の第1関節の関節軸の周りに沿って、指背側(関節部分の伸展側)に装着される。また、関節運動マスタ部6101,2は、母指の第2関節の関節軸の周りに沿って、指背側に装着される(図6(A),(B)参照)。また、関節運動マスタ部610k,1(k=2,…,5)のそれぞれは、示指、中指、薬指、小指の第2関節の関節軸の周りに沿って、指背側に装着される。また、関節運動マスタ部610k,2のそれぞれは、示指、中指、薬指、小指の第3関節の関節軸の周りに沿って、指背側に装着される(図7(A),(B)参照)。
【0097】
本実施形態では、関節運動マスタ部610j,m(j=1,…,5;m=1,2)のそれぞれは、全てが同様に構成されている。以下の説明では、関節運動マスタ部6101,1の構成図を参照して、関節運動マスタ部610j,mの構成を説明する。
【0098】
関節運動マスタ部610j,m(j=1,…,5;m=1,2)のそれぞれは、図8(A),(B)〜図10(A),(B)により総合的に示されるように、収納部材620j,mと、第1のパイプ状部材621j,mと、第2のパイプ状部材622j,mとを備えている。
【0099】
ここで、図8(A)には、図6(A)に示した関節運動マスタ部6101,1を拡大した図が示されている。また、図8(B)には、図6(B)に示した関節運動マスタ部6101,1を拡大した図が示されている。
【0100】
また、図9には、関節運動マスタ部6101,1のB−B(図8(B)参照)断面図が示されている。さらに、図10(A),(B)には、関節運動マスタ部6101,1のA−A(図8(A)参照)断面図が示されている。ここで、図10(A)では、収納部材6201,1及び第1のパイプ状部材6211,1を図示し、第2のパイプ状部材6221,1の図示を省略している。また、図10(B)では、収納部材6201,1及び第2のパイプ状部材6221,1を図示し、第1のパイプ状部材6211,1の図示を省略している。
【0101】
上記の収納部材620j,mは、内部空間を有する可撓性の樹脂製の部材であり、Uj方向及びVj方向に延びる略直方体のシート状に形成されている。そして、収納部材620j,mは、内部空間に、第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分及び第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分をUV平面上で平行配置して、収納する。また、収納部材620j,mの内部空間は、配管821j,mと連通している。
【0102】
上記の第1のパイプ状部材621j,mは、先端部が閉塞されている可撓性の円筒形状のパイプ部材であり、先端側部分が収納部材620j,mに収納されている。そして、第1のパイプ状部材621j,mの末端部は、流体給排装置900に接続されている。
【0103】
この第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分の+Wj方向側(関節部分の伸展側と対向する側とは反対側)には、第1の切り込みCU1が形成されている。第1の切り込みCU1は、第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分が直線状となったときに閉口状態になる切り込みであり、第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分が直線状となっているときには、第1の切り込みCU1が閉口し、第1のパイプ状部材621j,mの内部空間と収納部材の内部空間620j,mとを離隔させるようになっている(図9図10(A)参照)。この第1のパイプ状部材621j,mは、関節運動アシスト装置200におけるベローズ342j,m内への空気の供給に使用される。
【0104】
上記の第2のパイプ状部材622j,mは、先端部が閉塞されている可撓性の円筒形状のパイプ部材であり、先端側部分が収納部材620j,mに収納されている。そして、第2のパイプ状部材622j,mの末端部は、流体給排装置900に接続されている。
【0105】
この第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分の−Wj方向側(関節部分の伸展側と対向する側)には、第2の切り込みCU2が形成されている。第2の切り込みCU2は、第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分が直線状となったときにV字状開口を形成する切り込みであり、第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分が直線状となっているときには、第2の切り込みCU2が開口し、第2のパイプ状部材622j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを連通させるようになっている(図9図10(B)参照)。この第2のパイプ状部材622j,mは、関節運動アシスト装置200におけるベローズ342j,m内からの空気の排出に使用される。
【0106】
<配管800>
上記の配管800の構成ついて、説明する。
【0107】
配管800は、関節運動アシスト装置200及びマスタ装置500に取り付けられる。配管800は、図11に示されるように、配管821j,m(j=1,…,5;m=1,2)を備えている。
【0108】
上記の配管821j,m(j=1,…,5;m=1,2)の一方の端部は、手指関節運動アシスト部230jのベローズ342j,mに取り付けられている。そして、配管821j,mの他方の端部は、手指マスタ装置530jの関節運動マスタ部610j,m(より詳しくは、収納部材620j,m)に取り付けられている。
【0109】
<流体給排装置900の構成>
上記の流体給排装置900の構成について、説明する。
【0110】
流体給排装置900は、第1のパイプ状部材621j,m(j=1,…,5;m=1,2)を介してマスタ装置500と連通している。また、流体給排装置900は、第2のパイプ状部材622j,mを介してマスタ装置500と連通している。流体給排装置900は、図12に示されるように、加圧ポンプ911と、減圧ポンプ912とを備えている。また、流体給排装置900は、配管921,922を備えている。
【0111】
上記の加圧ポンプ911は、配管921を介して、関節運動マスタ部610j,m(j=1,…,5;m=1,2)の第1のパイプ状部材621j,mと接続している。加圧ポンプ911は、マスタ装置500への空気の強制的供給を行う際に利用される。
【0112】
上記の減圧ポンプ912は、配管922を介して、関節運動マスタ部610j,mの第2のパイプ状部材622j,mと接続している。減圧ポンプ912は、マスタ装置500からの空気の強制的排出を行う際に、利用される。
【0113】
<関節運動アシストシステム100の全体構成>
上記のようにして構成された関節運動アシスト装置200、マスタ装置500、配管800及び流体給排装置900の接続関係が、図13に示されている。
【0114】
図13に示されるように、収納部材620j,mに先端側部分が収納される第1のパイプ状部材621j,mの末端部は、空気の供給を行う加圧ポンプ911に接続されている。また、収納部材620j,mに先端側部分が収納される第2のパイプ状部材622j,mの末端部は、空気の排出を行う減圧ポンプ912に接続されている。そして、第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分及び第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分を収納する収納部材620j,mは、配管821j,mを介して、関節運動アシスト装置200のベローズ342j,mに接続されている。
【0115】
こうした関節運動アシストシステム100の構成で、第1のパイプ状部材621j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを離隔させ、第2のパイプ状部材622j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを連通させている場合には、関節運動アシスト装置200におけるベローズ342j,m内の空気が、配管821j,m、収納部材620j,m及び第2のパイプ状部材622j,mを介して、減圧ポンプ912により排出される。こうしてベローズ342j,m内から空気が排出されると、ベローズ342j,mが収縮する。
【0116】
また、こうした関節運動アシストシステム100の構成で、第1のパイプ状部材621j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを連通させ、第2のパイプ状部材622j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを離隔させている場合には、加圧ポンプ911から供給された空気が、第1のパイプ状部材621j,m、収納部材620j,m及び配管821j,mを介して、ベローズ342j,m内に供給される。こうしてベローズ342j,m内へ空気が供給されると、ベローズ342j,mが膨張する。
【0117】
[動作]
以上のようにして構成された関節運動アシストシステム100の動作について、マスタ・スレーブ方式による手指の関節運動のアシスト動作を説明する。
【0118】
以下の動作の説明では、マスタ装置500の状態を説明する際に、手指マスタ部530j(j=1,…,5)の代表として、手指マスタ部5302の状態図を参照することがある。また、以下の動作の説明では、関節運動アシスト装置200の状態を説明する際に、手指関節運動アシスト部230j(j=1,…,5)の代表として、手指関節運動アシスト部2302の状態図を参照することがある。
【0119】
また、前提として、流体給排装置900によるマスタ装置500への空気の供給、及び、マスタ装置500からの空気の排出が行われているものとする。
【0120】
<関節運動アシスト装置200の関節伸展状態へのアシスト動作>
まず、マスタ装置500の装着者が、マスタ装置500を装着した手指の全ての関節を伸展状態にしたとする。上述した図5図10(A),(B)には、マスタ装置500を装着する手部の手指が、関節伸展状態となっているときの様子が示されている。
【0121】
こうした伸展状態では、収納部材620j,m(j=1,…,5;m=1,2)に収納された第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分及び第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分の双方は、直線状になる。そして、第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分が直線状となったときには、図14(A)に示されるように、第1の切り込みCU1が閉口して閉口状態を形成し、第1のパイプ状部材621j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを離隔させる。また、第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分が直線状となったときには、図14(B)に示されるように、第2の切り込みCU2がV字状開口を形成して、第2のパイプ状部材622j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを連通させる。
【0122】
かかる連通状態では、関節運動アシスト装置200におけるベローズ342j,m内の空気が、配管821j,m、収納部材620j,m及び第2のパイプ状部材622j,mを介して、流体給排装置900の減圧ポンプ912により排出される。こうしてベローズ342j,m内からの空気の排出が行われると、母指に装着された手指関節運動アシスト部2301では、ベローズ3421,mが収縮する。また、四指に装着された手指関節運動アシスト部230k(k=2,…,5)では、ベローズ342k,m,341kが収縮する。
【0123】
この結果、手指関節運動アシスト部230j(j=1,…,5)を装着した手指の関節は、上述した図2図4(A),(B)に示されるように、伸展状態になる。
【0124】
<関節運動アシスト装置200の関節屈曲状態へのアシスト動作>
引き続き、マスタ装置500の装着者が、手指の全ての関節を、屈曲状態にしたとする(第1回転方向に沿った第1関節運動)。図15には、マスタ装置500を装着する手部の手指が、屈曲状態となっているときの様子が示されている。
【0125】
こうした屈曲状態になると、収納部材620j,m(j=1,…,5;m=1,2)に収納された第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分及び第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分の双方は、所定軸AXj,m(第1所定軸、第2所定軸)を軸にして関節伸展状態から関節屈曲状態にする方向(所定方向)に屈曲する。ここで、所定軸AXj,1は、収納部材620j,1を装着する関節部分の関節軸(関節の回動運動の回動軸)と略平行になっている。また、所定軸AXj,2は、収納部材620j,2を装着する関節部分の関節軸(関節の回動運動の回動軸)と略平行になっている。
【0126】
そして、第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分が所定方向に屈曲したときには、図16(A)に示されるように、第1の切り込みCU1がV字状開口を形成して、第1のパイプ状部材621j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを連通させる。また、第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分が所定方向に屈曲したときには、図16(B)に示されるように、第2の切り込みCU2が閉口して閉口状態を形成して、第2のパイプ状部材622j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを離隔させる。
【0127】
かかる連通状態では、流体給排装置900の加圧ポンプ911から送られた空気が、第1のパイプ状部材621j,m、収納部材620j,m及び配管821j,mを介して、ベローズ342j,m内に供給される。こうしてベローズ342j,m内への空気の供給が行われると、母指に装着された手指関節運動アシスト部2301では、ベローズ3421,mが膨張する。また、四指に装着された手指関節運動アシスト部230k(k=2,…,5)では、ベローズ342k,m,341kが膨張する。
【0128】
この結果、手指関節運動アシスト部230j(j=1,…,5)を装着した手指の関節は、図17に示されるように、屈曲状態になる。
【0129】
以後、マスタ装置500の装着者が、手指の関節を伸展状態(第2回転方向に沿った第2関節運動)、屈曲状態へと順次変化させると、上述したように、収納部材620j,mの形状が変化し、第1のパイプ状部材621j,mと収納部材620j,mとの間の連通状態及び第2のパイプ状部材622j,mと収納部材620j,mとの間の連通状態が変化する。そして、当該連通状態の変化に応じて、関節運動アシスト装置200を装着した手指の関節についても、伸展状態、屈曲状態へと順次アシストされる。
【0130】
以上説明したように、本実施形態では、マスタ側の関節部分に装着される関節運動マスタ部610j,m(j=1,…,5;m=1,2)は、第1のパイプ状部材621j,mと、第2のパイプ状部材622j,mと、収納部材620j,mとを備えている。当該収納部材620j,mは、第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分及び第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分の双方を収納している。
【0131】
ここで、母指に装着される収納部材6201,mは、配管8211,mを介して関節運動アシスト装置200のベローズ3421,m内と連通する内部空間を形成している。また、四指の第2関節に装着される収納部材620k,1(k=2,…,5)は、配管821k,1を介して関節運動アシスト装置200のベローズ342k,1内及びベローズ341k内と連通する内部空間を形成している。また、四指の第3関節に装着される収納部材620k,2は、配管821k,2を介して関節運動アシスト装置200のベローズ342k,2内と連通する内部空間を形成している。
【0132】
そして、第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分には、当該先端側部分が直線状のときに閉口状態になり、所定方向に屈曲したときにV字状開口を形成する第1の切り込みCU1が形成されている。また、第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分には、当該先端側部分が直線状のときにV字状開口を形成し、所定方向に屈曲したときに閉口状態になる第2の切り込みCU2が形成されている。このように、関節運動マスタ部610j,mは、非常に簡易な構成になっている。このため、非常に容易にマスタ装置500を製作することができる。
【0133】
こうしたマスタ装置500の構成で、マスタ装置500の装着者が、手指の全ての関節を伸展状態にすると、収納部材620j,m(j=1,…,5;m=1,2)に収納された第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分及び第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分の双方は、直線状になる。そして、このときには、第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分における第1の切り込みCU1が閉口して閉口状態を形成し、第1のパイプ状部材621j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを離隔させる。また、このときには、第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分における第2の切り込みCU2がV字状開口を形成し、第2のパイプ状部材622j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを連通させる。
【0134】
かかる連通状態では、関節運動アシスト装置200におけるベローズ342j,m内の空気が、配管821j,m、収納部材620j,m及び第2のパイプ状部材622j,mを介して、流体給排装置900の減圧ポンプ912により排出される。こうしてベローズ342j,m内からの空気の排出が行われると、母指に装着された手指関節運動アシスト部2301では、ベローズ3421,mが収縮する。また、四指に装着された手指関節運動アシスト部230k(k=2,…,5)では、ベローズ342k,m,341kが収縮する。この結果、手指関節運動アシスト部230j(j=1,…,5)を装着した手指の関節は、伸展状態になる。
【0135】
このため、電子制御を行わずに、マスタ・スレーブ方式により、関節運動アシスト装置200を装着した手指を関節伸展状態にすることができる。
【0136】
引き続き、マスタ装置500の装着者が、手指の全ての関節を屈曲状態にすると、収納部材620j,mに収納された第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分及び第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分の双方は、所定軸AXj,mを軸にして関節伸展状態から関節屈曲状態にする方向に屈曲する。そして、このときには、第1のパイプ状部材621j,mの先端側部分における第1の切り込みCU1がV字状開口を形成し、第1のパイプ状部材621j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを連通させる。また、このときには、第2のパイプ状部材622j,mの先端側部分における第2の切り込みCU2が閉口状態を形成し、第2のパイプ状部材622j,mの内部空間と収納部材620j,mの内部空間とを離隔させる。
【0137】
かかる連通状態では、流体給排装置900の加圧ポンプ911から送られた空気が、第1のパイプ状部材621j,m、収納部材620j,m及び配管821j,mを介して、ベローズ342j,m内に供給される。こうしてベローズ342j,m内への空気の供給が行われると、母指に装着された手指関節運動アシスト部2301では、ベローズ3421,mが膨張する。また、四指に装着された手指関節運動アシスト部230k(k=2,…,5)では、ベローズ342k,m,341kが膨張する。この結果、手指関節運動アシスト部230j(j=1,…,5)を装着した手指の関節は、屈曲状態になる。
【0138】
このため、電子制御を行わずに、マスタ・スレーブ方式により、関節運動アシスト装置200を装着した手指を関節屈曲状態にすることができる。
【0139】
したがって、本実施形態によれば、簡易な構成で、関節運動アシスト装置を遠隔動作させ、関節運動を適切にアシストすることができる。
【0140】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0141】
例えば、上記の実施形態では、母指、示指、中指、薬指及び小指のそれぞれに手指関節運動アシスト部を装着し、母指、示指、中指、薬指及び小指の関節運動をアシストするようにした。これに対して、任意の手指に関節運動アシスト部を装着し、当該任意の手指の関節運動をアシストするようにしてもよい。この場合には、当該任意の手指の数と同数の手指マスタ部を用意すればよい。
【0142】
また、上記の実施形態では、四指については、マスタ側の第2関節の部分に関節運動マスタ部610k,1(k=2,…,5)を装着し、第3関節の部分装置に関節運動マスタ部610k,2(k=2,…,5)を装着した。そして、第2関節の部分に装着される関節運動マスタ部610k,1(k=2,…,5)は、関節運動アシスト装置200のベローズ342k,1及びベローズ341kと連通されるようにした。これに対して、マスタ側の第1関節の部分、第2関節の部分、及び、第3関節の部分のそれぞれに、関節運動マスタ部を装着するようにしてもよい。この場合には、第2関節の部分に装着する関節運動マスタ部を、関節運動アシスト装置の四指の第2関節部分に配置されるベローズと連通させ、第1関節の部分に装着する関節運動マスタ部を、関節運動アシスト装置の四指の第1関節部分に配置されるベローズと連通させるようにすればよい。
【0143】
また、上記の実施形態では、収納部材に収納される第1のパイプ状部材の先端側部分に、1つの第1の切り込みが形成されることとしたが、第1の切り込みの数を、2つ以上としてよい。また、上記の実施形態では、収納部材に収納される第2のパイプ状部材の先端側部分に、1つの第2の切り込みが形成されることとしたが、第2の切り込みの数を、2つ以上としてもよい。こうした場合には、マスタ装置を装着した関節部分の屈曲状態及び伸展状態を、関節運動アシスト装置がより正確にトレースすることができる。
【0144】
また、上記の実施形態では、人体の右手の手指の運動をアシストする関節運動アシスト装置を有する関節運動アシストシステムについて説明したが、左手の手指の運動をアシストする関節運動アシスト装置を有する関節運動アシストシステムであってもよいことは勿論である。
【0145】
また、上記の実施形態では、関節運動アシスト装置を右手に装着する場合に、マスタ装置を、関節運動アシスト装置を装着する人体とは異なる人体の右手に装着するようにした。これに対して、マスタ装置を、当該異なる人体の左手(左右対称性)に装着するようにしてもよい。
【0146】
また、上記の実施形態では、マスタ装置を装着する手部は、関節運動アシスト装置を装着する手部と合同対称性を有することとしたが、マスタ装置を装着する手部は、関節運動アシスト装置を装着する手部と相似対称性及び左右対称性の少なくとも1つを有する場合であってもよい。
【0147】
また、人体の一方の手部が拘縮し、他方の手部が健常な場合には、関節運動アシスト装置を当該人体の拘縮している手部に装着し、マスタ装置を当該人体の健常な手部(左右対称性)に装着するようにしてもよい。
【0148】
また、上記の実施形態では、手指の関節運動をアシストするようにした。これに対して、手首の関節運動をアシストするようにしてもよい。この場合には、図18(A),(B)に示されるように、スレーブ装置の手首関節用のベローズ1342に配管1821の一方の端部を取り付け、マスタ装置の収納部材1620に配管1821の他方の端部を取り付ける。そして、収納部材1620に先端側部分が収納される第1のパイプ状部材1621の末端部を加圧ポンプの吐出口に接続すればよい。また、収納部材1620に先端側部分が収納される第2のパイプ状部材1622の末端部を減圧ポンプの吸引口に接続すればよい。
【0149】
なお、手首の関節運動をアシストする際にも、関節運動アシスト装置を右手に装着する場合に、マスタ装置を、関節運動アシスト装置を装着する人体とは異なる人体の右手に装着するようにしてもよい。また、これに対して、マスタ装置を、当該異なる人体の左手(左右対称性)に装着するようにしてもよい。
【0150】
また、手首の関節運動をアシストする際に、マスタ装置を装着する手部は、関節運動アシスト装置を装着する手部と合同対称性、相似対称性及び左右対称性の少なくとも1つを有する場合であってもよい。
【0151】
また、手首の関節運動をアシストする際に、人体の一方の手部が拘縮し、他方の手部が健常な場合には、関節運動アシスト装置を当該人体の拘縮している手部に装着し、マスタ装置を当該人体の健常な手部(左右対称性)に装着するようにしてもよい。
【0152】
また、上記の実施形態では、第1のパイプ状部材及び第2のパイプ状部材を円筒のパイプ部材とした。これに対して、第1のパイプ状部材及び第2のパイプ状部材を、四角の筒状のパイプ部材や三角の筒状のパイプ部材等の他の形状としてもよい。
【0153】
また、上記の実施形態では、第1のパイプ状部材及び第2のパイプ状部材を収納する収納部材を関節部分の伸展側に装着した。これに対して、収納部材を関節部分の屈曲側に配置するようにしてもよい。
【0154】
また、上記の実施形態では、マスタ装置を手部に装着するようにした。これに対して、マスタ装置を手部に装着せずに、例えば、指先やつま先で関節運動マスタ部における収納部材の形状を変化させるようにしてもよい。
【0155】
また、本実施形態においては、樹脂製のベローズを採用したが、伸縮自在であり、人体に装着される装置の重さ等の負担をかけることがない素材であれば、他の素材であってもよい。
【0156】
また、流体給排装置の構成としては、空気の吐出、及び、空気の吸引を行うことのできる手動式ポンプであってもよい。
【0157】
また、本発明の関節運動アシスト装置は、作動流体を空気としたが、他の気体や、水や油等の液体であってもよい。
【0158】
本発明の関節運動アシスト装置は、介護や福祉の分野で利用する場合には、リハビリテーション用として装着するだけでなく、力が弱っている者がパワーアシスト用の装置としても利用することができる。また、本発明の関節運動アシスト装置は、介護や福祉の分野以外で、物を掴む等のパワーアシスト装置としても利用することができる。
【0159】
また、上記の実施形態においては、人体の関節運動をアシストする関節運動アシストシステムに本発明を適用したが、関節機構を有する人体以外の内骨格形の哺乳類、内骨格形のロボット等の所定対象物の関節運動アシストシステムにも本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
以上説明したように、本発明の関節運動アシストシステムは、所定対象物の関節運動をアシストする関節運動アシストシステムに適用することができる。
図1
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