(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682634
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】短絡装置を備えた電気保護素子
(51)【国際特許分類】
H01T 1/14 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
H01T1/14 A
【請求項の数】13
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-529142(P2018-529142)
(86)(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公表番号】特表2018-537821(P2018-537821A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2016078447
(87)【国際公開番号】WO2017097584
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年6月5日
(31)【優先権主張番号】102015121438.5
(32)【優先日】2015年12月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キー・コン,ラウ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー,フランク
【審査官】
関 信之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−047088(JP,U)
【文献】
特開2007−301570(JP,A)
【文献】
特表2011−511406(JP,A)
【文献】
特表2001−511943(JP,A)
【文献】
実開昭59−095592(JP,U)
【文献】
米国特許第04866563(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短絡装置を備えた電気保護素子であって、
電極(3、5、7)を備えた過電圧避雷器(1)と、
クリップ(12)を具備する熱短絡装置であって、前記クリップの第1部分(13)は前記過電圧避雷器(1)上にパチンと留められていて、前記クリップの第2部分(15)は短絡バー(17)を有する、熱短絡装置とを有し、
前記クリップ(12)の前記短絡バー(17)は、溶融素子(19)によって、前記電極(3、5、7)のうちの少なくとも1つから距離を取っていて、
前記短絡バー(17)が、前記溶融素子(19)の溶融時に、前記電極(3、5、7)のうちの2つを互いに導電接続する電気保護素子において、
前記溶融素子(19)の融点が少なくとも摂氏300度であることを特徴とする、電気保護素子。
【請求項2】
前記溶融素子(19)は、鉛フリー粒ハンダとして形成されている、請求項1に記載の短絡装置を備えた電気保護素子。
【請求項3】
前記溶融素子(19)は、ビスマス、錫およびアンチモンを含む、請求項1または2に記載の短絡装置を備えた電気保護素子。
【請求項4】
前記溶融素子(19)が形成されている材料は、25〜35%のビスマスと、25〜35%の錫と、30〜50%のアンチモンとを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気保護素子。
【請求項5】
前記溶融素子が形成されている前記材料は、27〜31%のビスマスと、27〜31%の錫と、38〜46%のアンチモンとを含む、請求項4に記載の電気保護素子。
【請求項6】
前記クリップ(12)は一体的に形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気保護素子。
【請求項7】
前記第1部分(13)が、前記過電圧避雷器(1)の周囲の半分より多くを取り囲む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気保護素子。
【請求項8】
前記第2部分(15)は、前記クリップ端部の軸方向の広がりにより形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気保護素子。
【請求項9】
前記過電圧避雷器(1)の前記電極(3、5、7)は、1つの中央電極(3)と、正面に配置されている2つの側方電極(5、7)とを含み、前記クリップ(12)は、前記中央電極(3)の領域中で、前記過電圧避雷器(1)上にパチンと留められている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気保護素子。
【請求項10】
前記第1部分(13)の間隙の幅は、前記中央電極(3)の幅に相当する、請求項9に記載の電気保護素子。
【請求項11】
前記溶融素子(19)は、前記第2部分(15)と前記中央電極(3)との間に配置されている、請求項10に記載の電気保護素子。
【請求項12】
前記第2部分(15)は、前記溶融素子(19)用の止め具(25)を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電気保護素子。
【請求項13】
前記溶融素子(19)がまだ溶融していない限りは、前記短絡バー(17)は、前記中央電極(3)からも、前記側方電極(5、7)からも距離を取っている、請求項9〜12のいずれか1項に記載の電気保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡装置を備えた過電圧避雷器を具備する電気保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
短絡装置により、素子の電極を導電接続すなわち短絡することが可能になる。2電極避雷器および3電極避雷器用の短絡機構が存在する。これは、直流の場合には、避雷器を継続的な過負荷から保護する。短絡機構は溶融可能な元素を有しえ、この元素が比較的高い温度で溶融し、これに続いて、例えば3電極避雷器の中央電極が、避雷器の側方電極の1つまたは双方と短絡する。
【0003】
短絡装置は、バーを有することができ、これが、短絡時に電極を接続する。短絡装置のトリガ前には、電極の電気接続が、溶融可能なプラスチックフィルムまたはポリマーフィルムを用いて遮断されていて、このフィルムが、短絡装置のトリガ時に過負荷に伴う加熱により溶融し、これにより電極間の電気接続が可能になる。DE 10 2008 035 903号およびDE 196 22 461号は、3電極避雷器用の短絡装置を備えた保護素子を示す。
【0004】
3電極避雷器用の短絡装置は、2つのアームを備えたバネ接点を具備可能で、このバネ接点は中央電極上に置かれまたは溶接されている。薄い絶縁性材料は、アームと側方電極との接触を防ぐ。この薄い絶縁性材料は、例えばポリマーフィルムでありえる。過電圧が生じた際には、この絶縁性材料は、少なくとも1つのアームの下で溶融し、その結果中央電極と側方電極との間での短絡が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の課題は、これに代わる短絡装置を備えた電気保護素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この短絡装置を備えた電気保護素子は、電極を備えた過電圧避雷器と、クリップを具備する熱短絡装置とを有し、このクリップの第1部分は過電圧避雷器上にパチンと留められていて、クリップの第2部分は短絡バーを有する。クリップの短絡バーは、溶融素子によって、上述の電極のうちの少なくとも1つから距離を取っていて、溶融素子の溶融時に、短絡バーが電極のうちの2つを互いに電気的に接続する。前記溶融素子の融点は少なくとも摂氏300度である。
【0007】
保護素子のために、溶融温度が高く好ましくは摂氏300度以上の溶融素子と、クリップ機構との組み合わせが設けられている。このクリップ機構は、信頼性のある短絡装置のための短絡機能を提供するために、高温度耐性を有し、安定した締め付け力をかけるのに適している。クリップは弾性変形可能なクリップであり、これは、少なくとも部分的に過電圧
避雷器を取り囲む際に生じる変形に由来するバネ力を用いて過電圧
避雷器に固定されている。
【0008】
この種の短絡装置を備えた保護素子は、寸法がより小さく小型形成可能である。過電圧避雷器を継続的な過負荷から保護することが可能になるが、これは、このような場合には溶融素子が溶融し、短絡が生じることにより行われる。溶融素子により、短絡バーが電極から距離を取ることができ、その際にクリップのバネ力が対抗する。溶融時には、クリップのバネ力が、短絡バーを電極に向かって動かし、これが電気接触および短絡を引き起こす。有利な場合、この溶融素子は粒ハンダである。粒ハンダはフィルムとは異なり、3つの全ての空間方向に伸張する広がりを有する。この形状は例えば球体形状、楕円形状、円板形状または平行六面体形状でありえる。しかし、この形状はこのような基本形状に限定されず、より複雑な構造でもありえる。
【0009】
この溶融素子の融点が高いことにより、より高い電流での交流電圧負荷の際に素子を保護することも可能である。さらに溶融体の融点が高いことにより、短絡機能が、非常に高温で初めて引き起こされることが可能になる。この保護部材は、所定の溶融調整テストおよび仕様(例えば、テルコーディア(Telcordia)GR−974−CORE部)を満たすのにも適している。
【0010】
溶融素子、例えば鉛フリー粒ハンダの形態での溶融素子の材料は、ビスマス(蒼鉛とも称される、元素記号Bi)、錫(元素記号Sn)およびアンチモン(元素記号Sb)の組み合わせを含みうる。これらの割合は、それぞれ25〜35%のビスマスおよび錫と、50〜70%のアンチモンとでありえる。有利な場合、これらは、27〜31%のビスマスと、27〜31%の錫と、46〜38%のアンチモンとであり、これにより、材料の高融点と、粒ハンダ用の良好な機械的特性が達成されうる。
【0011】
クリップは一体的に形成されうるが、これにより製造が単純になる。第1部分は、ある実施形態では、過電圧避雷器の周囲の半分より多くを取り囲み、これにより、確実な固定が達成される。第2部分はクリップ端の軸方向の広がりとして形成可能であり、この結果短絡されるべき電極上に架けられている。
【0012】
1つの中央電極と正面に配置されている2つの側方電極とを備えた過電圧避雷器の実施形態では、クリップが中央電極の領域中で、過電圧避雷器上にパチンと留められている。有利な場合、第1部分は、中央電極の幅に相当する幅の間隙を有する。このスリット状の間隙により、中央電極がこの間隙を通って伸張するようにクリップをパチンと留めることができる。溶融素子は、第2部分と中央電極との間に配置されていて、これにより短絡バーが電極から距離を取ることができる。第2部分は、溶融素子用に、これを確実に固定するために止め具を有しうる。
【0013】
以下に、本発明を図面に基づいて具体的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】短絡装置を備えた電気保護素子のある実施形態を3次元で図示した図である。
【
図2】短絡装置を備えたこの電気保護素子の実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、短絡装置を備えた電気保護素子のある実施形態を3次元で図示した図である。この実施形態は、
図2中では側面図で図示されている。
【0016】
この実施形態は、過電圧避雷器1を具備するが、この過電圧避雷器は、1つの中央電極3と、正面に配置されている2つの側方電極5、7とを有する。過電圧避雷器1は、絶縁性材料からなる円筒状の本体9を有する。電極3、5、7は、半径方向で本体9を超えて伸張する。これに代わる(不図示の)実施形態では、側方電極の半径方向の伸張は本体の半径方向の伸張に一致し、中央電極のみが突出している。
【0017】
熱短絡装置11は、クリップ12と、溶融素子19とを具備する。クリップ12は、第1部分13と第2部分15とを有する。第1部分13は、過電圧避雷器1上にパチンと留められている。第2部分15は短絡バー17を有し、この短絡バーは、側方電極5、7間で中央電極3の上方で伸張しているが、電極3、5、7とは接触していない。短絡バー17は、過電圧避雷器1と短絡バー17との間で挟まれている溶融素子19により、電極3、5、7から距離を取っていて、その結果短絡バー17を介したこれらの電極間での導電接続は生じない。
【0018】
図3は、短絡装置11のクリップ
12を示す。このクリップ12は一体形成されていて、例えば打ち抜かれた金属薄板から形成可能である。第1部分13は、過電圧避雷器1上でパチンと留められている。
【0019】
第1部分13は、実質的に円形部分形状の断面を有する。第1部分13は、その端部を除くとスリットの入ったスリーブの形状を有する。この第1部分は、クリップ12がパチンと留められている時に、円筒状の過電圧避雷器本体9の半分より多くを取り囲むのに適している。第1部分13は弾性変形可能で、その結果、第1部分はそのバネ力により過電圧避雷器本体9上に張られている。
【0020】
第1部分13は、半径方向で延在する間隙21を有し、その幅は、中央電極3の幅に相当する。パチンと留めた後、中央電極3が間隙21を通って伸張する。これにより、クリップ12を所定の位置すなわち中央電極3に固定することができ、これによりクリップが軸方向で滑り落ちるのを防ぐことができる。
【0021】
第1部分13の一方の端部は半径方向で外側に屈曲し迫台23を有し、この迫台が間隙21をこの端側で限定している。クリップ12をパチンと留めた時には、迫台23は中央電極3の上方で延在する。この迫台23は、安定化に役立つ。これに代わる(不図示の)実施形態では、第1部分は、一方の側で開いた間隙を有し、迫台23はなく、その結果、クリップがパチンと留められた時には、間隙の両側で長く伸張するクリップの領域が、中央電極の両側で延在する。
【0022】
第1部分13の別の端部では、第2部分15があるが、これはクリップ端の軸方向の広がりにより形成されている。この第2部分15は、溶融素子19用の止め具を有する。この止め具は、この実施形態では、リード25として形成されていて、第2部分15中の切り込みにより形成され、かつ屈曲していて、これにより、溶融素子19が上方から中央電極3を押圧するのに適している。これに代わる(不図示の)構成、例えば第2部分中の止まり穴または間隙も、止め具として適切である。
【0023】
図4は、溶融素子19のある実施形態を示すが、この溶融素子は粒ハンダとも称されうる。この溶融素子19は、3次元の構造を有し、空間の3つの方向に有意に伸張している。これは、例えば球体形状、楕円形状、平行六面体形状または円板形状でありえる。様々な形状の組み合わせも可能である。この実施形態は、角すい台形状の上置きを備えた平行六面体の形状を有する。上になるにしたがって細くなる形状により、溶融素子19上を押圧するリード25のような半径方向で溶融素子19の上面に作用する力による固定のみならず、縁領域で先細りする領域に接線方向の成分で作用する挟み込み力による固定も可能になる。
【0024】
溶融素子19は、融点が約摂氏300度以上であり、かつ鉛フリー材料からなる。
溶融素子19の材料は、ビスマスと錫とアンチモンとの組み合わせを含みうる。例えばこの種の溶融素子では、25〜35%のビスマスと、25〜35%の錫とが設けられうる。有利な場合には、溶融素子の材料は、27〜31%のビスマスと、27〜31%の錫と、38〜46%のアンチモンとを含む。パーセントの表記は、体積または質量パーセントに対する表記でありえる。
【符号の説明】
【0026】
1 過電圧避雷器
3 中央電極
5、7 側方電極
9 過電圧避雷器本体
11 短絡装置
12 クリップ
13 第1部分
15 第2部分
17 短絡バー
19 溶融素子
21 間隙
23 迫台
25 リード