(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塊状窒化ホウ素粒子表面中に存在する有機官能基は、置換基を有してもよいエポキシ基、置換基を有してもよいスチリル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアセチルアセテート基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいイソシアネート基、置換基を有してもよいシクロヘキシル基及び置換基を有してもよいテトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)基から選ばれる1種又は2種以上である、請求項8又は9記載の塊状窒化ホウ素粉末。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0018】
本発明の第一実施形態及び第二実施形態は、窒化ホウ素塊状粒子、その製造方法及びそれを用いた熱伝導樹脂組成物に関するものである。
本発明の第一実施形態及び第二実施形態は、より具体的には窒化ホウ素(BN)粉末、その製造方法及びその用途に関する。特に、本発明の第一実施形態及び第二実施形態は、窒化ホウ素粉末、その製造方法及びそれを用いた熱伝導樹脂組成物に関する。
【0019】
<1−1.本発明の第一実施形態に係る窒化ホウ素粉末>
本発明の第一実施形態は、以下の(A)一次粒子が鱗片状の六方晶窒化ホウ素が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素からなる窒化ホウ素粉末である(例えば、
図1〜
図3参照)。
窒化ホウ素粉末の炭素量は、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下である。
【0020】
(A)鱗片状の六方晶窒化ホウ素の一次粒子の長辺長さの平均が1.5μm以上3.5μm以下で、標準偏差が1.2μm以下であることが好ましい。
(B)塊状窒化ホウ素粒子の塊状粒子における累積破壊率63.2%時の粒子強度が8.0MPa以上であり、かつ累積破壊率20.0%時の粒子強度が4.5MPa以上であることが好ましい。
(C)窒化ホウ素粉末の平均粒径が20μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0021】
<1−1.(A)鱗片状の六方晶窒化ホウ素(一次粒子)>
本発明の第一実施形態の「(A)鱗片状の六方晶窒化ホウ素(一次粒子)」について、一次粒子の長辺長さの平均が、好ましくは1.5μm以上3.5μm以下、より好ましくは1.7μm以上3.2μm以下、さらに好ましくは2.0μm以上3.0μm以下である。
一次粒子の長辺長さの平均が3.5μm超えの場合、一次粒子が凝集して塊状になる塊状粒子の内部が疎な構造となることで、粒子強度が低下する恐れがある。また、一次粒子の長辺長さの平均が1.5μm未満の場合、一次粒子が小さいことで、熱伝導率が低下する恐れがある。
【0022】
本発明の第一実施形態の「(A)鱗片状の六方晶窒化ホウ素(一次粒子)」について、一次粒子の長辺長さの標準偏差が1.2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下である。標準偏差1.2μm超でこの値より大きいと粒子が均一な構造にならず粒子強度が低下する恐れがある。また、一次粒子の長辺長さの標準偏差の下限値は特に限定はないが、粒子があまりにも均一で密な構造になると樹脂が浸透せずボイド等の原因となり絶縁破壊特性の低下につながる恐れがあることから、一次粒子の長辺長さの標準偏差0.2μm以上が好ましく、より好ましくは0.4μm以上である。
【0023】
<1−1.(B)塊状窒化ホウ素粒子>
本発明の第一実施形態の「(B)塊状窒化ホウ素粒子」について、塊状粒子の累積破壊率63.2%時の粒子強度が8.0MPa以上であること、かつ、累積破壊率20.0%時の粒子強度が4.5MPa以上であることが好ましい。この粒子強度値未満では、樹脂との混練時やプレス時などに応力で凝集粒子が崩れてしまい、熱伝導率が低下する恐れがある。
塊状粒子の累積破壊率63.2%時の粒子強度が、より好ましくは8.0MPa以上、さらに好ましくは9.0MPa以上である。
また、塊状粒子の累積破壊率63.2%時の粒子強度の上限値は、特に制限はないが、例えば、50MPa、40MPa、30MPa、20MPa等と作製可能である。
塊状粒子の累積破壊率20.0%時の粒子強度が、より好ましくは4.5MPa以上、さらに好ましくは5.0MPa以上である。また、塊状粒子の累積破壊率20.0%時の粒子強度の上限値は、特に制限されないが、例えば20MPa、13MPa等と作製可能である。
なお、後述の<2−1.本発明の第三実施形態に係る塊状窒化ホウ素微粉末>において表面改質処理をするための原料として用いる場合、強度の強い塊状窒化ホウ素粒子が好ましく、塊状粒子の累積破壊率63.2%時の粒子強度が20MPa〜50MPaのような、強度がより強い塊状窒化ホウ素粒子が、好ましい。
【0024】
<1−1.(C)窒化ホウ素粉末>
本発明の第一実施形態の「(C)窒化ホウ素粉末」について、窒化ホウ素粉末の平均粒径が、好ましくは20μm以上、より好ましくは22μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。
また、窒化ホウ素粉末の平均粒径が、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。
また、窒化ホウ素粉末の平均粒子径が、好ましくは20μm以上100μm以下であり、より好ましくは30μm以上80μm以下である。
この平均粒径が20μm未満の場合、この平均粒径が小さいため、熱伝導率が低下する恐れがある。また、この平均粒径が100μmを超える場合、窒化ホウ素粉末の平均粒子径と放熱シートとの厚みの差が少なくなる影響があるので、シートの作製が難しくなる恐れがある。
【0025】
本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末は、10W/mK以上の熱伝導率を有するものが好適である。
本発明の第一実施形態は、熱伝導率と凝集粒子強度に優れた窒化ホウ素粉末を提供することができる。
本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末は、例えば、パワーデバイス等の発熱性電子部品の放熱部材の原料として好適に用いられ、特にプリント配線板の絶縁層及び熱インターフェース材の樹脂組成物に充填されるものとして好適に用いられる。
【0026】
<1−2.本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末の製造方法>
本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末は、(a)炭化ホウ素を加圧窒化焼成すること、(b)焼成後に脱炭結晶化すること、により製造することができる。
本発明の窒化ホウ素粉末の製造方法は、以下の(a)及び(b)を含む。
(a)平均粒径が6μm以上55μm以下で炭素量18%以上21%以下の炭化ホウ素を加圧窒化焼成すること、及び
(b)加圧窒化焼成後の脱炭結晶化工程において、脱炭開始可能な温度に上昇させた後昇温温度5℃/min以下で保持温度になるまで昇温を行い、1750℃以上の温度で0.5時間超40時間未満保持する熱処理を行うこと。
【0027】
<1−2.(a)加圧窒化焼成工程>
本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末の製造方法における「(a)加圧窒化工程」において、平均粒径が6μm以上55μm以下で炭素量18%以上21%以下の炭化ホウ素を、特定の焼成温度及び加圧条件の雰囲気にて、加圧窒化焼成を行い、これにより、炭窒化ホウ素を得ることができる。
【0028】
<1−2.(a1)加圧窒化工程に使用する原料の炭化ホウ素>
前記加圧窒化工程で使用する原料の炭化ホウ素の粒径が最終的にできる塊状窒化ホウ素に強く影響するため、適切な粒径のものを選択する必要があり、平均粒径7μm以上45μm以下の原料を使用することが望ましい。その際不純物のホウ酸や遊離炭素が少ないことが望ましい。
【0029】
前記炭化ホウ素の平均粒径の下限値は、好ましくは6μm以上、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。
前記炭化ホウ素の平均粒径の上限値は、好ましくは55μm以下、より好ましくは、50μm以下、さらに好ましくは45以下μmである。
前記炭化ホウ素の平均粒径は、好ましくは7〜50μmであり、より好ましくは7〜45μmである。
【0030】
前記加圧窒化工程で使用する原料の炭化ホウ素の炭素量は組成上のB4C(21.7%)より低いことが望ましく、18.0%以上20.5%以下の炭化ホウ素を使用することが望ましい。
前記炭化ホウ素の炭素量の下限値は、好ましくは18%以上、より好ましくは19%以上である。
前記炭化ホウ素の炭素量の上限値は、好ましくは21%以下、より好ましくは、20.5%以下である。
前記炭化ホウ素の炭素量は、好ましくは18.0%〜20.5%である。
これは脱炭工程の際に揮発する炭素量が少ない方が、緻密な塊状窒化ホウ素が生成されるためであり、最終的にできる窒化ホウ素の炭素量を低くするためでもある。また炭素量18%未満の安定な炭化ホウ素を作製することは理論組成との乖離が大きくなり過ぎて困難である。
【0031】
前記炭化ホウ素の製造方法は、公知の製造方法を適用することができ、所望の平均粒径及び炭素量の炭化ホウ素を得ることができる。
例えば、ホウ酸とアセチレンブラックとを混合したのち、雰囲気中、1800〜2400℃にて、1〜10時間加熱し、炭化ホウ素塊を得ることができる。この素塊を、粉砕後、篩分けし、洗浄、不純物除去、乾燥等を適宜行い、炭化ホウ素粉末を作製することができる。
炭化ホウ素の原料であるホウ酸とアセチレンブラックとの混合は、ホウ酸100質量部に対して、アセチレンブラック25〜40質量部であるのが好適である。
炭化ホウ素を製造する際の雰囲気は、不活性ガスが好ましく、不活性ガスとして、例えば、アルゴンガス及び窒素ガスが挙げられ、これらを適宜単独で又は組み合わせて使用することができる。このうち、アルゴンガスが好ましい。
また、炭化ホウ素塊の粉砕は、一般的な粉砕機又は解砕機を用いることができ、例えば0.5〜3時間程度粉砕を行う。
粉砕後の炭化ホウ素は、篩網を用いて粒径75μm以下に篩分けすることが好適である。
【0032】
<1−2.(a2)加圧窒化焼成工程>
前記加圧窒化工程における焼成温度の下限値は、好ましくは1700℃以上、より好ましくは1800℃以上である。また、焼成温度の上限値は、好ましくは2400℃以下、より好ましくは2200℃である。当該焼成温度は、より好ましくは、1800〜2200℃である。
前記加圧窒化工程における圧力の下限値は、好ましくは0.6MPa以上、より好ましくは0.7MPa以上である。また、焼成温度の上限は、好ましくは1.0MPaであり、さらに好ましくは0.9MPaである。当該圧力は、より好ましくは0.7〜1.0MPaである。
【0033】
前記加圧窒化工程における焼成温度及び圧力条件として、好ましくは、焼成温度1800℃以上で、0.7〜1.0MPaである。
これは焼成温度1800℃で、圧力0.7MPa未満の場合、炭化ホウ素の窒化が十分進まないためである。また、工業的には1.0MPa以下で生産を行うほうが望ましい。
【0034】
前記加圧窒化工程における雰囲気として、窒化反応が進行するガスが求められ、例えば、窒素ガス及びアンモニアガス等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。このうち、窒素ガスが窒化のため、またコスト的に好適である。当該雰囲気中に少なくとも窒素ガス95%(V/V)以上、さらに99.9%以上が好ましい。
前記加圧窒化工程における焼成時間は、好ましくは6〜30時間であり、より好ましくは8〜20時間である。
【0035】
<1−2.(b)脱炭結晶化工程>
本発明の窒化ホウ素粉末の製造方法における「(b)脱炭結晶化工程」において、前記加圧窒化工程にて得られた炭窒化ホウ素を、常圧以上の雰囲気にて、特定の昇温温度で保持温度になるまで昇温を行い、特定の温度範囲で一定時間保持する熱処理を行うことにより、一次粒子(一次粒子が鱗片状の六方晶窒化ホウ素)が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素粒子を得ることができる。
この脱炭結晶化工程において、上述の如き、調製された炭化ホウ素から得られた炭窒化ホウ素を、脱炭化させるとともに、所定の大きさの鱗片状にさせつつ、凝集させて塊状の窒化ホウ素粒子とする。
【0036】
前記脱炭結晶化工程として、好適には、常圧以上の雰囲気にて、脱炭開始可能な温度に上昇させた後昇温温度5℃/min以下で保持温度になるまで昇温を行い、1750℃以上の温度で0.5時間超40時間未満保持する熱処理を行うことである。
さらに、前記脱炭結晶化工程として、より好適には、常圧以上の雰囲気にて、脱炭開始可能な温度に上昇させた後昇温温度5℃/min以下で昇温を行い、1800℃以上の温度で1時間以上30時間以下保持する熱処理を行うことである。
【0037】
前記脱炭結晶化工程において、当該工程の原料として、前記加圧窒化工程で得られた炭窒化ホウ素と、ホウ酸及び/又は酸化ホウ素(さらに、必要に応じて他の原料)とを混合したのち、脱炭結晶化を行うことが望ましい。
前記炭窒化ホウ素とホウ酸及び/又は酸化ホウ素との混合割合は、炭窒化ホウ素100質量部に対して、好ましくはホウ酸・酸化ホウ素100〜300質量部、より好ましくはホウ酸・酸化ホウ素150〜250質量部である。
【0038】
前記脱炭結晶化工程における「常圧以上の雰囲気」の圧力条件は、好ましくは常圧以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上である。また、雰囲気の圧力条件の上限値は、特に限定されないが、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。当該圧力条件は、好ましくは0.2〜0.4MPaである。
前記脱炭結晶化工程における「雰囲気」は、窒素ガスが好適であり、雰囲気中窒素ガス90%(V/V)以上が好適であり、より好ましくは高純度窒素ガス(99.9%以上)である。
【0039】
前記脱炭結晶化工程における「昇温」は、1段階又は多段階のいずれでもよい。脱炭開始可能な温度にまで上昇させる時間を短縮するため、多段階を選択することが望ましい。
多段階における「第1段階の昇温」として、「脱炭開始可能な温度」にまで昇温を行うことが好ましい。
前記「脱炭開始可能な温度」は、特に限定されず、通常行っている温度であればよく、例えば800〜1200℃程度(好適には、約1000℃)であればよい。
前記「第1段階の昇温」は、例えば、5〜20℃/minの範囲で行うことができ、好適には8〜12℃/minである。
【0040】
第1段階の昇温後に、第2段階の昇温を行うことが好ましい。前記「第2段階の昇温」は、「所望の保持温度になるまで昇温を行う」ことが、より好ましい。
前記「第2段階の昇温」の上限値は、好ましくは5℃/min以下、より好ましくは4℃/min以下、さらに好ましくは3℃以下、よりさらに好ましくは2℃以下である。昇温温度が低い方が、粒成長が均一になりやすいので好ましい。
前記「第2段階の昇温」の下限値は、好ましくは0.1℃/min以上、より好ましくは0.5℃/min以上、さらに好ましくは1℃/min以上である。1℃以上の場合、製造時間を短縮できるので、コストの点で、好ましい。
前記「第2段階の昇温」は、好適には、0.1〜5℃/minである。
前記第2段階の昇温速度が5℃/min超えの場合、粒成長が不均一に起きてしまい、均一な構造をとれず粒子強度が低下する恐れがある。
【0041】
前記「特定の温度範囲(昇温後の保持温度)」の下限値は、好ましくは1750℃以上、より好ましくは1800℃以上、さらに好ましくは2000℃以上である。また、前記「保持温度」の上限値は、好ましくは2200℃以下、より好ましくは2100℃以下である。
昇温後の保持温度が1750℃未満では粒成長が十分起こらず、熱伝導率が低下する恐れがある。保持温度が1800℃以上では粒成長が良好に起こりやすく、熱伝導率が向上しやすい。
【0042】
前記「一定時間保持(昇温後の保持時間)」は、好ましくは、0.5時間超え40時間未満である。
前記「保持時間」は、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上、さらにより好ましくは10時間以上である。
前記「保持時間」の上限値は、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間である。
前記保持時間は、好適には1〜30時間であることが望ましい。
昇温後の保持時間が1時間以上の場合は粒成長が良好に起こり、30時間以下であると、粒成長が進みすぎて粒子強度が低下することを低減でき、また、焼成時間が長いことで工業的にも不利になることも低減できる。
【0043】
そして、前記(a)加圧窒化焼成工程及び前記(b)脱炭結晶化工程を経て、本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末を得ることができる。
さらに、塊状粒子間の弱い凝集をほぐす場合には、前記脱炭結晶化工程にて得られた塊状窒化ホウ素粒子を、粉砕又は解砕し、さらに分級することが望ましい。
粉砕及び解砕は、特に限定されず、一般的に使用されている粉砕機及び解砕機を用いればよく、また、分級は、平均粒径が20μm以上100μm以下になるような一般的な篩分け方法を用いればよい。例えば、ヘンシェルミキサーや乳鉢により解砕をおこなった後、振動篩機による分級をする方法などが挙げられる。
本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末の製造方法にて得られた塊状窒化ホウ素粒子からなる窒化ホウ素粉末の特徴は、上述の<1−1.本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末>のとおりである。
なお、本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末の製造方法を用いて得られた塊状窒化ホウ素粒子又は当該塊状窒化ホウ素粒子からなる窒化ホウ素粉末は、以下の本発明の第二実施形態の原料として使用することも可能である。
【0044】
<1−3.熱伝導樹脂組成物>
本発明の第二実施形態の熱伝導樹脂組成物は、本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末又は本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末の製造方法により得られた窒化ホウ素粉末を含有して成ることにより得ることができる。この熱伝導樹脂組成物の製造方法は、公知の製造方法を用いることができる。得られた熱伝導樹脂組成物は、放熱部材等に幅広く使用することができる。
なお、後述する第三実施形態の窒化ホウ素粉末を、本発明の効果が損なわない範囲で、本発明の第一実施形態の窒化ホウ素粉末と配合して、熱伝導樹脂組成物に使用してもよい。また、本発明の窒化ホウ素粉末は、熱伝導樹脂組成物の無機フィラーとして使用することができる。
【0045】
<樹脂>
本発明の窒化ホウ素粉末を含有してなる熱伝導樹脂組成物に使用する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリアミド(例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等)、ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂等を用いることができる。
特にエポキシ樹脂(好適にはナフタレン型エポキシ樹脂)は、耐熱性と銅箔回路への接着強度が優れていることから、プリント配線板の絶縁層として好適である。
また、シリコーン樹脂は耐熱性、柔軟性及びヒートシンク等への密着性が優れていることから熱インターフェース材として好適である。
【0046】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、具体的には、フェノールノボラック樹脂、酸無水物樹脂、アミノ樹脂、イミダゾール類が挙げられる。このうち、イミダゾール類が好ましい。
硬化剤の配合量は、0.5質量部以上15質量部以下が好ましく、さらに好ましくは1.0質量部以上10質量部以下である。
【0047】
エポキシ樹脂と硬化剤の合量に対し、熱伝導樹脂組成物100体積%中の窒化ホウ素粉末の使用量は、30体積%以上85体積%以下が好ましく、40体積%以上80体積%以下がより好ましい。
窒化ホウ素粉末の使用量が30体積%以上の場合、熱伝導率が向上し、十分な放熱性能が得られやすい。また、六方晶窒化ホウ素2の含有量が85体積%以下の場合、成形時に空隙が生じやすくなることを低減でき、絶縁性や機械強度が低下することを低減できる。
【0048】
本発明の第一実施形態及び第二実施形態は、特に好ましくは、プリント配線板の絶縁層及び熱インターフェース材の樹脂組成物に充填される、熱伝導率に優れた窒化ホウ素粉末、その製造方法及びそれを用いた熱伝導樹脂組成物である。
本発明の第一実施形態及び第二実施形態は、詳しくは、パワーデバイスなどの発熱性電子部品の放熱部材の原料として好適に用いられる。
本発明の第二実施形態の熱伝導樹脂組成物は、放熱部材などに幅広く使用することができる。
【0049】
本発明の別の実施形態は、塊状窒化ホウ素粉末、その製造方法及びそれを用いた熱伝導樹脂組成物に関するものである。
本発明の別の実施形態は、より具体的には表面処理を施し、樹脂への充填性に優れた塊状窒化ホウ素粉末、その製造方法及びそれを用いた熱伝導樹脂組成物に関する。
【0050】
ところで、上述したように、高熱伝導率、高絶縁性、比誘電率が低いこと等、電気絶縁材料として優れた性質を有している、六方晶窒化ホウ素(hexagonal Boron Nitride(以下、「h−BN」ともいう。))粉末が注目されている。
【0051】
特許文献1では、六方晶窒化ホウ素粒子の面内方向(a軸方向)を高熱伝導シートの厚み方向に配向させたものが提案されている。
特許文献2では、一次粒子の六方晶窒化ホウ素粒子が同一方向に配向せずに凝集した窒化ホウ素粉末の使用が提案されている。
その他凝集窒化ホウ素を製造する方法として、炭化ホウ素を原料として、窒化処理中又は上記脱炭処理後に、炉内圧を100kPa未満に保持する減圧処理を施し、製造した凝集体の窒化ホウ素(特許文献6)が知られ、またプレスと破砕を繰り返し製造した凝集窒化ホウ素(特許文献7)が知られている。
また、凝集窒化ホウ素を表面処理した例として特許文献8が知られており、また、窒化ホウ素では、表面処理による充填性向上にはペイントコンディショナーなどによる処理により表面改質を行った特許文献9が知られている。
【0052】
しかし、特許文献1では、六方晶窒化ホウ素粒子の形状が鱗片形状であるため、六方晶窒化ホウ素粉末を樹脂に充填すると、粒子同士が同一方向に揃って配向する傾向がある。このため、六方晶窒化ホウ素粒子を樹脂に充填する際に粘度が増加し、流動性が悪くなるため、樹脂への高充填が困難であった。
【0053】
また、特許文献2、6及び7において作製した凝集窒化ホウ素は同粒径の酸化アルミニウム等に比べ充填性が悪く、樹脂への充填性の改善が求められていた。
【0054】
また、凝集窒化ホウ素を表面処理した例として特許文献8等が知られているが、いわゆるインテグラル処理であり、投入したカップリング剤の量に対して実際にカップリングしたカップリング剤が少なく、また表面処理の効果が十分とはいえなかった。
また、窒化ホウ素では、表面処理による充填性向上にはペイントコンディショナーなどによる処理により表面改質を行った特許文献9が知られているが、従来の凝集窒化ホウ素粉末ではこれらの処理を行うと凝集がくずれてしまうため、樹脂への充填性の向上は認められなかった。
【0055】
そこで、さらに、本技術は、表面処理を施し、樹脂への充填性に優れた塊状窒化ホウ素粉末、その製造方法及びそれを用いた熱伝導樹脂組成物を提供することを主な目的とする。
【0056】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
具体的には、塊状窒化ホウ素粉末に対し樹脂への充填性を向上させることを目的に鋭意検討を行った。その結果、非常に強度の強い原料の塊状窒化ホウ素粉末を原料として用い、これに特殊な表面処理を施すことで、従来より効果的な表面処理が可能になり、塊状窒化ホウ素粉末の樹脂への充填性が向上されることを見出した。斯様にして、本発明者は、本発明の別の実施形態を完成するに至った。
【0057】
すなわち、本発明の別の実施形態は、以下の(A)〜(D)を有することを特徴とする塊状窒化ホウ素粉末を提供することができる。
(A)六方晶のh−BN一次粒子が凝集してなること;(B)塊状窒化ホウ素粒子表面10nm中の組成において、0.1atm%以上3.0atm%以下のSi、Ti、Zr、Ce、Al、Mg、Ge、Ga及びVのいずれか1種又は2種以上が存在すること;(C)塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度(63.2%時)が5MPa以上であること;(D)塊状窒化ホウ素粉末の平均粒径20μm以上100μm以下であること。
前記塊状窒化ホウ素粉末は、さらに(E)塊状窒化ホウ素粒子の表面に有機官能基が存在することを特徴としてもよい。
また、本発明の別の実施形態は、原料である、平均粒径20μm以上100μm以下で圧壊強度(63.2%時)が10MPa以上の塊状ホウ素粒子に、酸化剤を加えて湿式粉砕又は湿式解砕にて粒子の表面改質処理を施し、さらに金属カップリング剤を反応させることを特徴とする、表面処理塊状窒化ホウ素粉末の製造方法を提供することができる。
また、本発明の別の実施形態の表面処理塊状窒化ホウ素粉末の製造方法は、前記表面改質処理のときに、酸化剤と水溶性溶媒を添加することができる。
前記表面処理塊状窒化ホウ素粉末の製造方法は、金属カップリング剤が、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤から選ばれる1種又は2種以上であってもよい。
また、本発明の別の実施形態は、原料である、平均粒径20μm以上100μm以下で圧壊強度(63.2%時)が10MPa以上の塊状窒化ホウ素粉末に、酸化剤を加えて湿式粉砕又は湿式解砕にて粒子の表面改質処理を施すことを特徴とする、表面改質の塊状窒化ホウ素粉末の製造方法を提供することができる。
また、前記表面改質の塊状窒化ホウ素粉末の製造方法にて得られた、表面改質された塊状窒化ホウ素粉末を提供することができる。
また、前記塊状窒化ホウ素粉末を含有してなる熱伝導樹脂組成物を提供することができる。
【0058】
本技術によれば、樹脂への充填性に優れた塊状窒化ホウ素粉末、その製造方法及びそれを用いた熱伝導樹脂組成物を提供することができる。
【0059】
<2−1.本発明の第三実施形態に係る塊状窒化ホウ素微粉末>
本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、以下の(A)〜(D)を有することを特徴とする。本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、樹脂への充填性に優れるものである。
(A)六方晶のh−BN一次粒子が凝集して成る塊状窒化ホウ素粒子であること;
(B)塊状窒化ホウ素粒子表面10nm中の組成において、0.1atm%以上3.0atm%以下のSi、Ti、Zr、Ce、Al、Mg、Ge、Ga及びVのいずれか1種又は2種以上が存在すること;
(C)塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度が、5MPa以上であること;
(D)塊状窒化ホウ素粉末の平均粒径が、20μm以上100μm以下であること
【0060】
本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、「(A)六方晶のh−BN一次粒子が凝集して成る塊状窒化ホウ素粒子であること」を特徴とする。
本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、金属カップリング剤にて表面処理が施された塊状窒化ホウ素粒子から成る粉末である。
この表面処理が施された塊状窒化ホウ素粒子は、六方晶のh−BN一次粒子が凝集して塊状と成った塊状窒化ホウ素粒子から成りかつ特定の圧壊強度を有する塊状窒化ホウ素粉末を原料として、得ることができる。この原料の六方晶のh−BN一次粒子が凝集して塊状と成った塊状窒化ホウ素粒子は、後述する<(a)加圧窒化焼成工程>及び<(b)脱炭結晶化工程>により得ることができる。
【0061】
本発明の第三実施形態の「六方晶のh−BN一次粒子」の形状は、鱗片状であるのが好ましい。
本発明の第三実施形態の「六方晶のh−BN一次粒子」の大きさについて、一次粒子の長辺長さの平均が、好ましくは1.5〜3.5μm、より好ましくは1.7〜3.2μm、さらに好ましくは2.0〜3.0μmである。
一次粒子の長辺長さの平均が3.5μm超えの場合、一次粒子が凝集して塊状になる塊状粒子の内部が疎な構造となることで、粒子強度が低下するおそれがある。また、一次粒子の長辺長さの平均が1.5μm未満の場合、一次粒子が小さいことで、熱伝導率が低下するおそれがある。
本発明の第三実施形態の「六方晶のh−BN一次粒子」について、一次粒子の長辺長さの標準偏差が、好ましくは0.2〜1.2μm、より好ましくは0.4〜1.0μm、さらに好ましくは0.8μm以下である。
標準偏差1.2μm超えより大きいと粒子が均一な構造にならず粒子強度が低下するおそれがある。また、一次粒子の長辺長さの標準偏差の下限値は特に限定はないが、標準偏差0.2μm未満より小さいと粒子があまりにも均一で密な構造になると樹脂が浸透せずボイド等の原因となり絶縁破壊特性の低下につながるおそれがある。
【0062】
本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、本発明の第三実施形態の「(B)塊状窒化ホウ素粒子表面10nm中の組成において、0.1atm%以上3.0atm%以下のSi、Ti、Zr、Ce、Al、Mg、Ge、Ga及びVのいずれか1種又は2種以上が存在すること」を特徴とする。
本発明の第三実施形態の「塊状窒化ホウ素粒子表面10nm中の組成」において、金属元素が0.1atm%未満だと充填性向上の効果が十分でないおそれがあり、3.0atm%を超えるとフィラーとして用いた時に熱伝導率の低下が起こるおそれがある。
本発明の第三実施形態は、塊状窒化ホウ素粒子表面10nm中の組成において、0.1atm%以上3.0atm%以下のSi、Ti、Zr及びAlのいずれか1種又は2種以上が存在することが好ましい。
【0063】
本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、本発明の第三実施形態の「(C)塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度が、5MPa以上であること」を特徴とする。なお、「圧壊強度」又は「圧壊強度(63.2%時)」とは、「粒子強度(累積破壊率63.2%時)」ともいう。
本発明の第三実施形態の「塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度」が、好ましくは5MPa以上、より好ましくは6MPa以上である。粒子強度(63.2%時)が5MPa未満の場合、樹脂との混練の際に凝集がくずれることで、熱伝導率及び充填性が低下してしまうおそれがある。また、本発明の第三実施形態の「塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度」の上限値は、特に限定されないが、例えば、30MPa、20MPa、10MPa等を製造することが可能である。
【0064】
本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、本発明の第三実施形態の「(D)塊状窒化ホウ素粉末の平均粒径が、20μm以上100μm以下であること」を特徴とする。
本発明の第三実施形態の「塊状窒化ホウ素粉末の平均粒径」が、好ましくは20μm以上、より好ましくは22μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。また、塊状窒化ホウ素粉末の平均粒径が、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。
この平均粒径が20μm未満の場合、この平均粒径が小さいため、熱伝導率が低下するおそれがある。また、この平均粒径が100μmを超える場合、窒化ホウ素粉末の平均粒子径と放熱シートとの厚みの差が少なくなる影響があるので、シートの作製が難しくなるおそれがある。
【0065】
本発明の第三実施形態において、窒化ホウ素粉末の平均粒径20μm以上100μm以下の圧壊強度が6MPa以上の塊状窒化ホウ素粉末であることが望ましい。より好ましくは、窒化ホウ素粉末の平均粒径が30μm以上80μm以下である。
【0066】
本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、さらに本発明の第三実施形態「(E)塊状窒化ホウ素粒子の表面に有機官能基が存在すること」を特徴とすることが望ましい。
前記塊状窒化ホウ素粒子表面中に存在する有機官能基は、置換基を有してもよいエポキシ基、置換基を有してもよいスチリル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアセチルアセテート基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいイソシアネート基、置換基を有してもよいシクロヘキシル基及び置換基を有してもよいテトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)基等が挙げられる。これらは、置換基を有する又は置換基を有さない有機官能基であってもよい。これらから選ばれる1種又は2種以上である。
【0067】
前記置換基を有してもよいエポキシ基として、例えば、エポキシ基等が挙げられる。
前記置換基を有してもよいアリール基として、例えば、置換基を有してもよいスチリル基等が挙げられる。
前記置換基を有してもよいアルキル基として、例えば、置換基を有してもよいプロピル基(例えば、メタクリロキシプロピル基、アクリロキシプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基、グリシドキシプロピル基、フェニルアミノプロピル基等)、直鎖炭素数が5以上のアルキル基(好適には、直鎖炭素数5〜25)等が挙げられる。
前記置換基を有してもよいビニル基として、例えば、ビニル基、スチリル基、アセチルアセトナート基、メタクリロイル基等が挙げられる。
前記置換基を有してもよいアセチルアセトナート基として、例えば、アセチルアセトナート基等が挙げられる。
前記置換基を有してもよいアシル基として、例えば、アセチルアセトナート基、イソプロピルトリイソステアロイル基、メタクリル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
前記置換基を有してもよいイソシアネート基として、例えば、イソシアネート基等が挙げられる。
置換基を有してもよいシクロヘキシル基として、例えば、シクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいテトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)基として、例えば、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)基等が挙げられる。
これらから1種又は2種以上選択することができる。
【0068】
塊状窒化ホウ素粉末表面に有機官能基として、例えば、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシプロピル基、アクリロキシプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基、グリシドキシプロピル基、フェニルアミノプロピル基、アセチルアセトナート基、ビニル基、メタクリル基、メタクリロイル基、イソプロピルトリイソステアロイル基、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)基、シクロヘキシル基、イソシアネート基、直鎖炭素数が5以上のアルキル基等が挙げられる。これらから1種又は2種以上選択することができる。
このうち、エポキシ基、スチリル基、グリシドキシプロピル基、アセチルアセトナート基、ビニル基、イソプロピルトリイソステアロイル基、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)基、シクロヘキシル基及びイソシアネート基が、より好適である。
これらから1種又は2種以上選択することができる。
【0069】
<2−2.本発明の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末の製造方法>
本発明の第三実施形態の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末の製造方法は、(1)原料である強度の強い塊状窒化ホウ素粒子から構成される塊状窒化ホウ素粉末(以下、「第1の塊状窒化ホウ素粉末」ともいう。)を得ること、(2)この塊状窒化ホウ素粉末(原料)に、特殊な表面改質処理を行い、金属カップリング反応を行うことを含むものである。
これにより、本発明の第三実施形態の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末(以下、「第2の塊状窒化ホウ素粉末」ともいう。)を得ることができる。
【0070】
<本発明の第三実施形態で原料として用いる塊状窒化ホウ素粉末(第1の塊状窒化ホウ素粉末)>
本発明の第三実施形態で原料として用いる塊状窒化ホウ素粉末は、粒子強度が極めて高い必要があり、例えば、以下製法で作製されることが好ましい。以下の製法にて、例えば、
図1〜3のような、窒化ホウ素粉末を得ることができる。また、上述した第一実施形態の窒化ホウ素粉末又は第一実施形態の窒化ホウ素粉末の製造方法により得られた窒化ホウ素粉末を原料として用いることができる。
本発明の第三実施形態で原料として用いる塊状窒化ホウ素粉末は、(a)炭化ホウ素を加圧窒化焼成すること、(b)焼成後に脱炭結晶化すること、により製造することが可能である。
本発明の第三実施形態で原料として用いる塊状窒化ホウ素粉末の製造方法は、以下の(a)及び(b)を含む。
(a)平均粒径が6μm以上55μm以下の炭化ホウ素を加圧窒化焼成すること、及び
(b)加圧窒化焼成後の脱炭結晶化工程において、脱炭開始可能な温度に上昇させた後昇温温度5℃/min未満で保持温度になるまで昇温を行い、1750℃以上の温度で0.5時間超20時間未満保持する熱処理を行うこと。
【0071】
<2−2.(a)加圧窒化焼成工程>
本発明の第三実施形態の原料として用いる窒化ホウ素粉末の製造方法における「(a)加圧窒化工程」において、平均粒径が6μm以上55μm以下の炭化ホウ素を、特定の焼成温度及び加圧条件の雰囲気にて、加圧窒化焼成を行い、これにより、炭窒化ホウ素を得ることができる。
【0072】
<2−2.(a1)炭化ホウ素>
前記炭化ホウ素の平均粒径の下限値は、好ましくは6μm以上、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。
前記炭化ホウ素の平均粒径の上限値は、好ましくは55μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは45以下μmである。
前記炭化ホウ素の平均粒径は、好ましくは7〜50μmであり、より好ましくは7〜45μmである。
前記炭化ホウ素の炭素量は、好ましくは18.0%〜20.5%である。
【0073】
前記炭化ホウ素の製造方法は、公知の製造方法を適用することができ、所望の平均粒径及び炭素量の炭化ホウ素を得ることができる。
例えば、ホウ酸とアセチレンブラックとを混合したのち、雰囲気中、1800〜2400℃にて、1〜10時間加熱し、炭化ホウ素塊を得ることができる。この素塊を、粉砕後、篩分けし、洗浄、不純物除去、乾燥等を適宜行い、炭化ホウ素粉末を作製することができる。
炭化ホウ素の原料であるホウ酸とアセチレンブラックとの混合は、ホウ酸100質量部に対して、アセチレンブラック25〜40質量部であるのが好適である。
炭化ホウ素を製造する際の雰囲気は、不活性ガスが好ましく、不活性ガスとして、例えば、アルゴンガス及び窒素ガスが挙げられ、これらを適宜単独で又は組み合わせてしようすることができる。このうち、アルゴンガスが好ましい。
また、炭化ホウ素塊の粉砕は、一般的な粉砕機又は解砕機を用いることができ、例えば0.5〜3時間程度粉砕を行う。
粉砕後の炭化ホウ素は、篩網を用いて粒径75μm以下に篩分けすることが好適である。
【0074】
<2−2.(a2)加圧窒化焼成工程>
前記加圧窒化工程における焼成温度の下限値は、好ましくは1700℃以上、より好ましくは1800℃以上である。また、焼成温度の上限値は、好ましくは2400℃以下、より好ましくは2200℃以下である。当該焼成温度は、より好ましくは、1800〜2200℃である。
前記加圧窒化工程における圧力の下限値は、好ましくは0.6MPa以上、より好ましくは0.7MPa以上である。また、圧力の上限値は、好ましくは1.0MPa以下であり、さらに好ましくは0.9MPa以下である。当該圧力は、より好ましくは0.7〜1.0MPaである。
【0075】
前記加圧窒化工程における焼成温度及び圧力条件として、好ましくは、焼成温度1800℃以上で、0.7〜1.0MPaである。
これは焼成温度1800℃で、圧力0.7MPa未満の場合、炭化ホウ素の窒化が十分進まないためである。また、工業的には1.0MPa以下で生産を行うほうが望ましい。
【0076】
前記加圧窒化工程における雰囲気として、窒化反応が進行するガスが求められ、例えば、窒素ガス及びアンモニアガス等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。このうち、窒素ガスが窒化のため、またコスト的に好適である。当該雰囲気中に少なくとも窒素ガス95%(V/V)以上、さらに99.9%以上が好ましい。
前記加圧窒化工程における焼成時間は、好ましくは6〜30時間であり、より好ましくは8〜20時間である。
【0077】
<2−2.(b)脱炭結晶化工程>
本発明の第三実施形態で原料として用いる塊状窒化ホウ素粉末の製造方法における「(b)脱炭結晶化工程」において、前記加圧窒化工程にて得られた炭窒化ホウ素を、常圧以上の雰囲気にて、特定の昇温温度で保持温度になるまで昇温を行い、特定の温度範囲で一定時間保持する熱処理を行うことにより、一次粒子(一次粒子が鱗片状の六方晶窒化ホウ素)が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素粒子を得ることができる。
この脱炭結晶化工程において、上述の如き、調製された炭化ホウ素から得られた炭窒化ホウ素を、脱炭化させるとともに、所定の大きさの鱗片状にさせつつ、凝集させて塊状の窒化ホウ素粒子とする。
【0078】
前記脱炭結晶化工程として、好適には、常圧以上の雰囲気にて、脱炭開始可能な温度に上昇させた後昇温温度5℃/min未満で保持温度になるまで昇温を行い、1750℃以上の温度で0.5時間超20時間未満保持する熱処理を行うことである。
さらに、前記脱炭結晶化工程として、より好適には、常圧以上の雰囲気にて、脱炭開始可能な温度に上昇させた後昇温温度5℃/min未満で昇温を行い、1800℃以上の温度で1時間以上20時間以下保持する熱処理を行うことである。
【0079】
前記脱炭結晶化工程において、当該工程の原料として、前記加圧窒化工程で得られた炭窒化ホウ素と、ホウ酸及び/又は酸化ホウ素(さらに、必要に応じて他の原料)とを混合したのち、脱炭結晶化を行うことが望ましい。
前記炭窒化ホウ素とホウ酸及び/又は酸化ホウ素との混合割合は、炭窒化ホウ素100質量部に対して、好ましくはホウ酸・酸化ホウ素100〜300質量部、より好ましくはホウ酸・酸化ホウ素150〜250質量部である。
【0080】
前記脱炭結晶化工程おける「常圧以上の雰囲気」の圧力条件は、好ましくは常圧以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上である。また、雰囲気の圧力条件の上限値は、特に限定されないが、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。当該圧力条件は、好ましくは0.2〜0.4MPaである。
前記脱炭結晶化工程における「雰囲気」は、窒素ガスが好適であり、雰囲気中窒素ガス90%(V/V)以上が好適であり、より好ましくは高純度窒素ガス(99.9%以上)である。
【0081】
前記脱炭結晶化工程における「昇温」は、1段階又は多段階のいずれでもよい。脱炭開始可能な温度にまで上昇させる時間を短縮するため、多段階を選択することが望ましい。
多段階における「第1段階の昇温」として、「脱炭開始可能な温度」にまで昇温を行うことが好ましい。
前記「脱炭開始可能な温度」は、特に限定されず、通常行っている温度であればよく、例えば800〜1200℃程度(好適には、約1000℃)であればよい。
前記「第1段階の昇温」は、例えば、5〜20℃/minの範囲で行うことができ、好適には8〜12℃/minである。
【0082】
第1段階の昇温後に、第2段階の昇温を行うことが好ましい。前記「第2段階の昇温」は、「所望の保持温度になるまで昇温を行う」ことが、より好ましい。
前記「第2段階の昇温」の上限値は、好ましくは5℃/min未満、より好ましくは4℃/min以下、さらに好ましくは3℃/min以下、よりさらに好ましくは2℃/min以下である。昇温温度が低い方が、粒成長が均一になりやすいので好ましい。
前記「第2段階の昇温」の下限値は、好ましくは0.1℃/min以上、より好ましくは0.5℃/min以上、さらに好ましくは1℃/min以上である。1℃/min以上の場合、製造時間を短縮できるので、コストの点で、好ましい。
前記「第2段階の昇温」は、好適には、0.1〜5℃/minである。
前記第2段階の昇温速度が5℃/min超えの場合、粒成長が不均一に起きてしまい、均一な構造をとれず粒子強度が低下するおそれがある。
【0083】
前記「特定の温度範囲(昇温後の保持温度)」の下限値は、好ましくは1750℃以上、より好ましくは1800℃以上、さらに好ましくは2000℃以上である。また、前記「保持温度」の上限値は、好ましくは2200℃以下、より好ましくは2100℃以下である。
昇温後の保持温度が1750℃未満では粒成長が十分起こらず、熱伝導率が低下するおそれがある。保持温度が1800℃以上では粒成長が良好に起こりやすく、熱伝導率が向上しやすい。
【0084】
前記「一定時間保持(昇温後の保持時間)」は、好ましくは、0.5時間超え20時間未満である。
前記「保持時間」は、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上、さらにより好ましくは10時間以上である。
前記「保持時間」の上限値は、好ましくは20時間以下、より好ましくは15時間以下である。
前記保持時間は、好適には1〜20時間であることが望ましい。
昇温後の保持時間が1時間以上の場合は粒成長が良好に起こり、20時間以下であると、粒成長が進みすぎて粒子強度が低下することを低減でき、また、焼成時間が長いことで工業的にも不利になることも低減できる。
【0085】
そして、前記(a)加圧窒化焼成工程及び前記(b)脱炭結晶化工程を経て、本発明の窒化ホウ素粉末を得ることができる。
さらに、塊状粒子間の弱い凝集をほぐす場合には、前記脱炭結晶化工程にて得られた塊状窒化ホウ素粒子を、粉砕又は解砕し、さらに分級することが望ましい。
粉砕及び解砕は、特に限定されず、一般的に使用されている粉砕機及び解砕機を用いればよく、また、分級は、平均粒径が20μm以上100μm以下になるような一般的な篩分け方法を用いればよい。例えば、ヘンシェルミキサーや乳鉢により解砕をおこなった後、振動篩機による分級をする方法などが挙げられる。
【0086】
本発明の第三実施形態の「第1の塊状窒化ホウ素粉末」の平均粒径は、好ましくは20μm以上、より好ましくは22μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。また、窒化ホウ素粉末の平均粒径が、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。
また、「第1の窒化ホウ素粉末」の平均粒子径が、好ましくは20μm以上100μm以下であり、より好ましくは30μm以上80μm以下である。
この平均粒径が20μm未満の場合、この平均粒径が小さいため、熱伝導率が低下するおそれがある。また、この平均粒径が100μmを超える場合、窒化ホウ素粉末の平均粒子径と放熱シートとの厚みの差が少なくなる影響があるので、シートの作製が難しくなるおそれがある。
【0087】
本発明の第三実施形態で使用する「第1の塊状窒化ホウ素粉末」の粒子強度(累積破壊率63.2%時)は好ましくは9MPa以上、より好ましくは10MPa以上、さらに好ましくは15MPa以上、よりさらに好ましくは20MPa以上である。
粒子強度が9MPa未満の場合、樹脂との混練の際に凝集がくずれることで熱伝導率及び充填性が低下してしまう。
また、「第1の塊状窒化ホウ素粉末」の粒子強度(累積破壊率63.2%時)の上限値は、特に制限はないが、例えば、50MPa、40MPa、30MPa等と作製可能である。
【0088】
また、本発明の第三実施形態で原料として使用する「第1の塊状窒化ホウ素粉末」の粒子強度(累積破壊率20.0%時)が、より好ましくは4.5MPa以上、さらに好ましくは5.0MPa以上である。また、「第1の塊状窒化ホウ素粉末」の粒子強度(累積破壊率20.0%時)の上限値は、特に制限されないが、例えば20MPa、13MPa等と作製可能である。
なお、本発明の第三実施形態で原料として使用する「第1の塊状窒化ホウ素粉末」の「鱗片状の六方晶窒化ホウ素(一次粒子)」の「一次粒子の長辺長さの平均」及び「一次粒子の長辺長さの標準偏差」については、上述の「六方晶窒化ホウ素のh−BN一次粒子」にて述べたとおりである。
【0089】
<本発明の第三実施形態の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末(第2の塊状窒化ホウ素粉末)>
本発明の第三実施形態で用いる表面処理方法は、(c)第1の塊状窒化ホウ素粉末(原料)に酸化剤を加えて湿式にて粒子の表面改質処理を施すこと、(d)表面改質処理後に、金属カップリング剤にて反応させることを含むことが好ましい。これにより、表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末(第2の塊状窒化ホウ素粉末)を得ることができる。
【0090】
表面処理を施す原料は、平均粒径20μm以上100μm以下であり、かつ圧壊強度(粒子強度(累積破壊率63.2%時))が10MPa以上である塊状窒化ホウ素粉末(第1の塊状窒化ホウ素粉末)を原料とすることが望ましい。
原料の圧壊強度(63.2%時)が10MPa未満の場合、粉砕機もしくは解砕機を用いて表面改質処理を施した際に、塊状粒子がくずれてしまい、塊状構造が維持できないおそれがある。その結果熱伝導率及び充填性が低下するおそれがある。
表面改質処理として、粉砕機もしくは解砕機を用いて、酸化剤を加えて湿式にて粒子の表面改質処理を施すことが望ましい。
金属カップリング反応として、表面改質処理した後に、金属アルコキシド、金属キレート又は金属ハロゲン化物等を含有する金属カップリング剤を反応させることが望ましい。
【0091】
<2−2.(c)表面改質処理工程>
本発明の第三実施形態で用いる表面処理方法では、前記「第1の塊状窒化ホウ素粉末」に酸化剤を加えて湿式にて粒子の表面改質処理を施すこと」を含むことが望ましい。
これにより、粉砕・解砕処理に酸化剤を併用させることで、粒子表面が効率よく改質され、分散性を向上させると共に表面官能基も増大して、カップリング反応が効率よく進行する。そして、金属カップリング剤処理を施す前の表面改質処理された塊状窒化ホウ素粒子を得ることができる。当該表面改質処理された粒子の状態は、特に限定されず、スラリー状であってもよいし、粉末状であってもよい。
【0092】
使用する酸化剤としては、特に制限はないが、例えば、過酸化水素、硝酸、過マンガン酸塩等が挙げられる。このうちで、溶媒に可溶でありかつ処理後に除去が行いやすい酸化剤が、望ましい。さらに、過酸化水素、及び過酸化水素と同等以上の酸化力を有し、溶媒に可溶でありかつ処理後に除去が行いやすい化合物(例えば硝酸)等が望ましい。これらから1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。選択する酸化剤によって溶媒を水のみで行うことが望ましい。
粉砕・解砕処理に酸化剤を併用することで、表面がより効率よく改質され、分散性を向上させるとともに表面官能基も増大し、カップリング反応が効率よく進行する。
【0093】
前記酸化剤の使用量として、窒化ホウ素100部に対し、好ましくは30〜200部、より好ましくは50〜150部である。
前記酸化剤と混合する溶媒として、水溶性溶媒が好ましい。水溶性溶媒として、例えば、水、アルコール及びジオキサン等から選ばれる1種又は2種以上のものが挙げられる。水単体及び/又はアルコールが好ましい。アルコールは、直鎖及び分岐鎖のアルキル基を有するものが好ましく、当該アルキル基は炭素数1〜3(例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等)が好ましい。より好ましくは、水、炭素数1〜3のアルコール及びこれらの混合液である。
前記酸化剤と溶媒との混合比は、溶媒100部に対し好ましくは1〜10部、より好ましくは2〜7部である。
【0094】
本発明の第三実施形態に用いる湿式粉砕及び湿式解砕は、公知の湿式可能な粉砕機又は解砕機を用いることができる。
粉砕機又は解砕機として、特に限定されないが、例えば、ロッキングミル、ピースミル、ボールミル、ヘンシェルミキサー、ジェットミル、スターバースト、ペイントコンディショナー等、湿式で表面処理改質が行えるものであればよい。
【0095】
粉砕機又は解砕機の処理時間は、10分以上5時間以内が望ましい。10分未満の処理時間では、粉砕又は解砕による表面改質の効果が十分得られない可能性があり、5時間超えで処理を行うと、生産性が低下し、また粒子強度が低下するため好ましくない。
【0096】
<2−2.(d)金属元素及び有機官能基の付加工程>
本発明の第三実施形態で用いる表面処理方法では、「(d)前記特殊な表面改質処理を施した塊状窒化ホウ素粒子の表面に、有機官能基を有する金属カップリング剤で反応させること」を含むことが望ましい。
これにより、窒化ホウ素粉末の粒子表面に金属元素及び有機官能基が存在する、本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末(「第2の塊状窒化ホウ素粉末」又は「表面処理塊状窒化ホウ素粉末」ともいう)を得ることができる。
本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、前記表面処理された塊状窒化ホウ素粒子から成るものである。
【0097】
金属カップリング反応前に、粒子表面の改質処理後の窒化ホウ素粒子を、通篩したスラリーを濾過し、洗浄することが望ましい。洗浄液は、特に限定されず、例えば、前記酸化剤と混合する溶媒を使用すればよい。
カップリング反応条件の温度は、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜70℃である。
カップリング反応条件の時間は、好ましくは0.2〜5時間、より好ましくは0.5〜3時間である。
金属カップリング反応の溶媒として、特に限定されないが、例えば、アルコール(好適には炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖)、アセトン、フラン等が挙げられる。このうち、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びアセトンが好ましい。これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
金属カップリング反応の溶媒の使用量として、窒化ホウ素100部に対して、好ましくは100〜2000部、より好ましくは600〜1200部である。
金属カップリング剤の使用量として、特に限定されないが、窒化ホウ素100部に対して、好ましくは0.5〜10部、より好ましくは1〜5部である。
【0098】
本発明において、金属カップリング剤は、特に限定されない。後記〔実施例〕に示すように、様々な金属カップリング剤を使用しても塊状窒化ホウ素粒子の表面に金属元素及び有機官能基を存在させることができたことから、本発明において、適宜、所望の金属カップリング剤を使用することができる。
さらに、使用する樹脂に応じたカップリング剤を選択することが好ましい。これにより、熱伝導樹脂組成物に使用する樹脂と相溶性のよい塊状窒化ホウ素粉末を得ることができる。
【0099】
本発明の第三実施形態で用いる金属カップリング剤としては、金属アルコキシド、金属キレート、金属ハロゲン化物として、Si、Ti、Zr、Al含有の金属カップリング剤があり、特に限定されるものではなく、使用する樹脂に応じたカップリング剤を選択することが好ましい。
また、直鎖のアルキル基を付与する場合には5以上の炭素数を持つものが好ましい。
カップリング剤の処理量は、X線光電子分光分析による値で、本発明の塊状窒化ホウ素粉末表面10nm中の組成において、0.1atm%以上3.0atm%以下のSi、Ti、Zr、Alのいずれかが存在するように添加することが望ましい。0.1atm%未満だと充填性向上の効果が十分でないおそれがあり、3.0atm%を超えるとフィラーとして用いた時に熱伝導率の低下が起こるおそれがある。
【0100】
前記チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
このうち、好ましくは、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート(金属アルコキシド)、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート(金属キレート)、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート(金属キレート)である。
【0101】
前記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;および、その他のシランカップリング剤として、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
このうち、好ましくは、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン(金属アルコキシド)、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(金属アルコキシド)、ビニルトリメトキシシラン(金属アルコキシド)、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(金属アルコキシド)である。
【0102】
前記ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−ブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、テトラキス(2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウムが挙げられる。
このうち、好ましくは、テトラキス(2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウム(金属アルコキシド)である。
【0103】
前記アルミ二ウムカップリング剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテエートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトアセテート)、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート等が挙げられる。
このうち、好ましくは、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート(金属キレート化合物)である。
【0104】
本発明の第三実施形態の窒化ホウ素粉末の製造方法にて得られた本発明の塊状窒化ホウ素粉末(第2の塊状窒化ホウ素粉末)の特徴は、上述の<2−1.本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素微粉末>のとおりである。
【0105】
<2−3.熱伝導樹脂組成物>
本発明の第四実施形態の熱伝導樹脂組成物は、上述した本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末又は本発明の第三実施形態の製造方法により得られた塊状窒化ホウ素粉末を含有して成ることにより得ることができる。この熱伝導樹脂組成物の製造方法は、公知の製造方法を用いることができる。得られた熱伝導樹脂組成物は、放熱部材等に幅広く使用することができる。
また、原料として使用する樹脂と相溶性の高い本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末を用いるのが好ましい。本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、その粒子表面中に有機官能基が存在するので、その有機官能基と原料樹脂との相溶性の程度を考慮し、好適な塊状窒化ホウ素粉末を選択したり、製造すればよい。
また、本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、熱伝導樹脂組成物を製造する際の粘度が高くなるのを抑制することができるので、高粘度の原料樹脂にも適用することができる。このように、本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末は、幅広い原料樹脂に使用することができる。
なお、上述した第一実施液体の窒化ホウ素粉末を、本発明の効果が損なわない範囲で、本発明の第三実施形態の窒化ホウ素粉末と配合して、熱伝導樹脂組成物に使用してもよい。 また、本発明の窒化ホウ素粉末は、熱伝導樹脂組成物の無機フィラーとして使用することができる。
【0106】
<樹脂>
本発明の第三実施形態の塊状窒化ホウ素粉末を含有してなる熱伝導樹脂組成物に使用する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリアミド(例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等)、ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂等を用いることができる。
特にエポキシ樹脂(好適にはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等)は、耐熱性と銅箔回路への接着強度が優れていることから、プリント配線板の絶縁層として好適である。
また、シリコーン樹脂は耐熱性、柔軟性及びヒートシンク等への密着性が優れていることから熱インターフェース材として好適である。
【0107】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、具体的には、フェノールノボラック樹脂、酸無水物樹脂、アミノ樹脂、イミダゾール類が挙げられる。このうち、イミダゾール類が好ましい。
硬化剤の配合量は、0.5質量部以上15質量部以下が好ましく、さらに好ましくは1.0質量部以上10質量部以下である。
【0108】
エポキシ樹脂と硬化剤の合量に対し、熱伝導樹脂組成物100体積%中の前記塊状窒化ホウ素粉末の使用量は、30体積%以上85体積%以下が好ましく、40体積%以上80体積%以下がより好ましい。
前記塊状窒化ホウ素粉末の使用量が30体積%以上の場合、熱伝導率が向上し、十分な放熱性能が得られやすい。また、塊状窒化ホウ素粉末の含有量が85体積%以下の場合、成形時に空隙が生じやすくなることを低減でき、絶縁性や機械強度が低下することを低減できる。
【0109】
本発明の別の実施形態の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末は、放熱部材等に幅広く使用することができる。
【0110】
各種測定方法は、以下の通りである。
(1)平均粒径
平均粒径の測定にはベックマンコールター製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置、(LS−13 320)を用いた。得られた平均粒径は測定処理の前にホモジナイザーをかけずに測定したものを平均粒径値として採用した。また、得られた平均粒径は体積統計値による平均粒径である。
【0111】
(2)粒子強度
JIS R1639−5に準じて測定を実施した。測定装置としては、微小圧縮試験器(「MCT−W500」島津製作所社製)を用いた。粒子強度(σ:MPa)は、粒子内の位置によって変化する無次元数(α=2.48:−)と圧壊試験力(P:N)と粒子径(d:μm)からσ=α×P/(π×d2)の式を用いて20粒子以上で測定を行い、累積破壊率20%及び/又は63.2%それぞれの値を算出した。表3及び4において、累積破壊率63.2%の値を、粒子強度(圧壊強度)として表示した。
【0112】
(3)一次粒子径評価法
作製した塊状窒化ホウ素に対し、観察の前処理として、窒化ホウ素粒子をエポキシ樹脂で包埋後、CP(クロスセクションポリッシャー)法により加工し、試料台に固定した後にオスミウムコーティングを行った。
断面観察は走査型電子顕微鏡(例えば「JSM−6010LA」(日本電子社製))を用いて観察倍率2000〜5000倍で観察した。得られた断面粒子像を画像解析ソフトウェア、例えば「Mac−view」に取り込み粒子の長辺長さを計測し、任意の断面粒子100個の長辺長さを求めその平均値を長辺長さの平均値とした。長辺長さの標準偏差も同様に見積もった。実施例1のSEM像を
図3に示す。
【0113】
(4)熱伝導率評法
熱伝導率(H;W/(m・K))は、熱拡散率(A:m
2/sec)と比重(B:kg/m
3)、比熱容量(C:J/(kg・K))から、H=A×B×Cとして、算出した。
熱拡散率は、測定用試料としてシートを幅10mm×10mm×厚み0.5mmに加工し、レーザーフラッシュ法により求めた。測定装置はキセノンフラッシュアナライザ(「LFA447NanoFlash」NETZSCH社製)を用いた。比重はアルキメデス法を用いて求めた。比熱容量は、DSC(「ThermoPlus Evo DSC8230」リガク社製)を用いて求めた。
なお、本発明での熱伝導率の合格値は10W/mK以上である。
【0114】
(5)塊状BN粒子残存率
塊状BN粒子残存率は得られた窒化ホウ素粉末の樹脂に充填した時の粒子強度の特性を評価するため、エポキシ樹脂(「エピコート807」三菱化学社製)と硬化剤(「アクメックスH−84B」日本合成化工社製)に対し窒化ホウ素粉末が10体積%となるように混合した。
混合後、永瀬スクリーン印刷製の三本ロール「M−50」をギャップ100μmにて通した混合物を、PET製シートの上に厚みが1.0mmになるように塗布した後、500Paの減圧脱泡を10分間行った。その後、温度150℃、圧力160kg/cm2条件で60分間のプレス加熱加圧を行って0.5mmのシートとした。
一次粒子径評価法と同様に断面観察をおこない、倍率200〜1000倍で20視野観察した時の凝集粒子数を算出し、三本ロールを通していない時のものも同様に塊状粒子数を算出しその比から塊状粒子の残存率が80%以上のものを合格として○と記載し、残存率が80%以下のものを不合格として×と記載した。
【0115】
(6)炭素量測定
炭素量は炭素/硫黄同時分析計「CS−444LS型」(LECO社製)にて測定した。
【0116】
(7)粘度評価:粘度用サンプルの作成方法としては、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、HP4032)100部、硬化剤としてイミダゾール類(四国化成社製、2E4MZ−CN)10部を用い、窒化ホウ素粉末を加え、自転公転式ミキサー(シンキー製ARV−310)を用いて混練を行い、評価用のサンプルとした。窒化ホウ素粉25vol%の充填量でサンプルを作製し、低せん断速度領域を比較することで評価できる。粘度評価はレオメータを用い、アントンパール社製のMCR300で測定し、せん断速度0.1 1/secの粘度の値を評価値とした。粘度値が低いほど充填性が高いと判断でき、50Pa・sec以下の値を合格値とした。
【0117】
(8)X線光電子分光分析:窒化ホウ素表面の金属量の分析は処理粉末をサーモフィッシャー製のK−Alpha型X線光電子分光装置によって励起源モノクロメータ付きAl−X線源、測定領域:400×200μmにて測定を行った。検出された元素B、N、C、O、各金属の積分値から検出金属元素の半定量値を見積もった、この値は通常原子数比率(atm%)で表される。なおX線光電子分光装置の検出深さは表面10nmである。
【0118】
(9)飛行時間型二次イオン質量分析TOF−SIMS:窒化ホウ素表面の官能基分析はアルバック・ファイ株式会社製の飛行時間型二次イオン質量分析装置PHI nanoTOF IIによって行った。質量分析の結果から、カップリング剤由来の複数のフラングメントピークが検出されている場合は表面官能基の検出項目に○、検出されていない場合は×と記載した。
【実施例】
【0119】
以下、本発明について、実施例、試験例及び比較例により、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0120】
〔実施例1〕
実施例1は、以下のように、炭化ホウ素合成、加圧窒化工程、脱炭結晶化工程にて、窒化ホウ素粉末を合成し、樹脂に充填した。
【0121】
(炭化ホウ素合成)
日本電工製オルトホウ酸(以下ホウ酸)100部と、デンカ株式会社製アセチレンブラック(HS100)35部とをヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、黒鉛ルツボ中に充填し、アーク炉にて、アルゴン雰囲気で、2200℃にて5時間加熱し炭化ホウ素(B
4C)を合成した。合成した炭化ホウ素塊をボールミルで1時間粉砕し、篩網を用いて粒径75μm以下に篩分け、更に硝酸水溶液で洗浄して鉄分等不純物を除去後、濾過・乾燥して平均粒径20μmの炭化ホウ素粉末を作製した。得られた炭化ホウ素粉末の炭素量は20.0%であった。
【0122】
(加圧窒化工程)
合成した炭化ホウ素を窒化ホウ素ルツボに充填した後、抵抗加熱炉を用い、窒素ガスの雰囲気で、2000℃、9気圧(0.8MPa)の条件で10時間加熱することにより炭窒化ホウ素(B
4CN
4)を得た。
【0123】
(脱炭結晶化工程)
合成した炭窒化ホウ素100部と、ホウ酸200部とをヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、窒化ホウ素ルツボに充填し、抵抗加熱炉を用い0.3MPaの圧力条件で、窒素ガスの雰囲気で、室温から1000℃までの昇温速度を10℃/min、1000℃からの昇温速度を2℃/minで昇温し、保持温度2000℃、保持時間10時間で加熱することにより、一次粒子が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素を合成した。
合成した塊状窒化ホウ素を乳鉢により10分解砕をおこなった後、篩網を用いて、篩目75μmのナイロン篩にて分級を行った。
焼成物を解砕及び分級することより、一次粒子が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末(以下、「凝集窒化ホウ素粉」ともいう)を得た。
作製した塊状窒化ホウ素の炭素量は0.08%であった。
【0124】
(樹脂への充填)
得られた窒化ホウ素粉末の樹脂への充填材としての特性を評価するため、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、HP4032)100部、硬化剤としてイミダゾール類(四国化成社製、2E4MZ−CN)10部、に対し窒化ホウ素粉末が50体積%となるように混合し、PET製シートの上に厚みが1.0mmになるように塗布した後、500Paの減圧脱泡を10分間行った。その後、温度150℃、圧力160kg/cm
2条件で60分間のプレス加熱加圧を行って0.5mmのシートとした。
なお、混合後のスラリーの流動性が悪く、塗布ができない場合は、「充填不可」とした。
【0125】
〔実施例2〕
実施例2は炭化ホウ素合成時の粉砕を2時間に強化し篩網を45μmに変更し、「平均粒径8μmの炭化ホウ素(炭素量20.1%)」を合成したこと以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0126】
〔実施例3〕
実施例3は炭化ホウ素合成時の粉砕を0.5時間にし篩網を150μmに変更し、「平均粒径40μmの炭化ホウ素(炭素量19.2%)」を合成したことと脱炭結晶化工程後の篩も150μmに変更した以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0127】
〔実施例4〕
実施例4は脱炭結晶化工程の「昇温速度を5℃/min」に変更したこと以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0128】
〔実施例5〕
実施例5は脱炭結晶化工程の「保持時間を20時間」にしたこと以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0129】
〔実施例6〕
実施例6は脱炭結晶化工程の「保持温度を1800℃」にしたこと以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0130】
〔実施例7〕
実施例7は脱炭結晶化工程の「1000℃からの昇温速度を0.5℃/min」に変更したこと以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0131】
〔比較例1〕
比較例1は脱炭結晶化工程の「1000℃からの昇温速度を10℃/min」に変更したこと以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0132】
〔比較例2〕
比較例2は炭化ホウ素合成時の粉砕時間を10時間に強化し篩網を45μmに変更し、「平均粒径5μmの炭化ホウ素(炭素量20.3%)」を合成したこと以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0133】
〔比較例3〕
比較例3は炭化ホウ素合成時の粉砕時間を0.2時間に変更し篩網を250μmに変更し、「平均粒径60μmの炭化ホウ素(素量20.4%)」を合成したことと脱炭結晶化工程後の篩も250μmに変更した以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0134】
〔比較例4〕
比較例4は脱炭結晶化工程の「保持時間を40時間」にしたこと以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0135】
〔比較例5〕
比較例5は脱炭結晶化工程の「保持温度を1700℃」にしたこと以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0136】
〔比較例6〕
比較例6は炭化ホウ素合成時の条件においてアセチレンブラックを45部にし、「炭素量21.7%の炭化ホウ素(平均粒径20μm)」を合成したこと以外は実施例1と同様の条件で、凝集窒化ホウ素粉を製造した。
【0137】
〔比較例7及び8〕
また、市販の窒化ホウ素粉末2種類(市販品A及びB)についても、実施例1〜7、比較例1〜6と同様に、評価した。市販品Aの結果を比較例7、市販品Bの結果を比較例8として表に示す。
【0138】
表1及び2に示す結果より、以下のことがいえる。
<平均粒径> 実施例1〜7(実施例2、3等参照)において、窒化ホウ素粉末の平均粒径22〜80のときに熱伝導率及び塊状BN粒子の残存率が良好であった。これに対し、比較例2のように、窒化ホウ素粉末の平均粒径が10μm以下のとき良くなく、及び、比較例3のように、窒化ホウ素粉末の平均粒径がの110μm以上のとき良くなかった。
<粒子強度(63.2%)> 実施例1〜7(実施例4等参照)において、粒子強度(63.2%時)が8.0MPa以上のときに熱伝導率及び塊状BN粒子の残存率が良好であった。これに対し、比較例1、4、6〜8のように、粒子強度(63.2%時)が6Mpa以下のときに良くなかった。
<粒子強度(20.0%時)> 実施例1〜7(特に実施例4参照)において、粒子強度(20.0%時)が4.6Mpa以上のときに熱伝導率及び塊状BN粒子の残存率が良好であった。これに対し、比較例1、4、6〜8のように、粒子強度(20.0%時)が3.5Mpa以下のときに良くなかった。
<一次粒子の長辺長さ> 実施例1〜7(実施例6、5等参照)において、一次粒子の長辺長さの平均が1.7〜3.2μmのときに熱伝導率及び塊状BN粒子の残存率が良好であった。これに対し、比較例5のように、一次粒子の長辺長さの平均が1.3μm以下のとき良くなく、及び、比較例4の一次粒子の長辺長さの平均粒径が4.0μm以上のとき良くなかった。
<標準偏差> 実施例1〜7(特に実施例4及び5参照)において、標準偏差が1.0μm以下のとき熱伝導率及び塊状BN粒子の残存率が良好であった。これに対し、比較例1及び4のように、標準偏差が1.3μm以上のとき良くなかった。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
以下、本発明の別の実施形態について、実施例、試験例及び比較例等により、詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0142】
〔実施例8〕
(炭化ホウ素合成)
日本電工製オルトホウ酸(以下ホウ酸)100部と、デンカ株式会社製アセチレンブラック(HS100)35部とをヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、黒鉛ルツボ中に充填し、アーク炉にて、アルゴン雰囲気で、2200℃にて5時間加熱し炭化ホウ素(B
4C)を合成した。合成した炭化ホウ素塊をボールミルで1時間粉砕し、篩網を用いて粒径75μm以下に篩分け、更に硝酸水溶液で洗浄して鉄分等不純物を除去後、濾過・乾燥して平均粒径20μmの炭化ホウ素粉末(炭素量20%)を作製した。
【0143】
(加圧窒化工程)
合成した炭化ホウ素を窒化ホウ素ルツボに充填した後、抵抗加熱炉を用い、窒素ガスの雰囲気で、2000℃、9気圧(0.8MPa)の条件で10時間加熱することにより炭窒化ホウ素(B
4CN
4)を得た。
【0144】
(脱炭結晶化工程)
合成した炭窒化ホウ素100部と、ホウ酸200部とをヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、窒化ホウ素ルツボに充填し、抵抗加熱炉を用い0.3MPaの圧力条件で、窒素ガスの雰囲気で、室温から1000℃までの昇温速度を10℃/min、1000℃からの昇温速度を0.5℃/minで昇温し、保持温度2000℃、保持時間10時間で加熱することにより、一次粒子が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素を合成した。
合成した塊状窒化ホウ素を乳鉢により10分解砕をおこなった後、篩網を用いて、篩目75μmのナイロン篩にて分級を行った。
焼成物を解砕及び分級することより、一次粒子が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末(粒子強度(20.0%)13MPa、平均粒径45μm、一次粒子の長辺長さの平均が2.5μm、標準偏差が0.4μm)を得た。
【0145】
(表面処理条件)
合成した窒化ホウ素粉末を、ヘンシェルミキサーを用いて、窒化ホウ素100部に対し水:過酸化水素=1:0.05 (wt%比)1400部の条件で20分間処理を行い、表面改質処理を行った。処理したスラリーを75μmの篩でメディアのみを分離し、通篩したスラリーをろ過、洗浄した。ろ過後のウエットケーキを窒化ホウ素100部に対しイソプロピルアルコール1000部、カップリング剤として味の素ファインテクノ株式会社製のKR−TTS(イソプロピルトリイソステアロイルチタネート)を4部加え、70℃−3時間処理を行い、カップリング処理を行った。処理した粉末をろ過、洗浄を行った後、80℃で乾燥し、実施例8の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
表面処理を施した塊状窒化ホウ素粒子は、電子顕微鏡による断面観察により、六方晶のh−BN一次粒子が凝集して成るものであり、鱗片状の六方晶窒化ホウ素の一次粒子の長辺長さの平均が2.5μmで、標準偏差が0.4μmであった。
【0146】
(樹脂への充填)
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、HP4032)100部、硬化剤としてイミダゾール類(四国化成社製、2E4MZ−CN)10部に対し、得られた表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末が50体積%となるように混合し、PET製シートの上に厚みが1.0mmになるように塗布した後、500Paの減圧脱泡を10分間行った。その後、温度150℃、圧力160kg/cm
2条件で60分間のプレス加熱加圧を行って0.5mmのシートとした。
【0147】
〔実施例9〕
実施例9は、脱炭結晶化工程の第二段階の昇温速度を2℃/minにして「粒子強度が10MPaの塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末」を原料として用いることを変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例9の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
この原料の塊状窒化ホウ素粉末は、粒子強度(20.0%)7MPa、平均粒径45μm、一次粒子の長辺長さの平均が2.5μm、標準偏差が0.7μmであった。
表面処理を施した塊状窒化ホウ素粒子は、電子顕微鏡による断面観察により、六方晶のh−BN一次粒子が凝集して成るものであり、鱗片状の六方晶窒化ホウ素の一次粒子の長辺長さの平均が2.5μmで、標準偏差が0.7μmであった。
【0148】
〔実施例10〕
実施例10は、実施例8の炭化ホウ素合成において、炭化ホウ素合成時の粉砕を0.5時間にし篩網を150μmに変更して「平均粒径40μmの炭化ホウ素」を合成したことと、脱炭結晶化工程において篩網を150μmに変更した以外は実施例8の炭化ホウ素合成〜脱炭結晶化工程と同様の条件で、実施例10の「平均粒径80μmの塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末」を製造した。
この原料の塊状窒化ホウ素粉末は、粒子強度(63.2%)が20MPa、粒子強度(20.0%)が6.0MPa、平均粒径が80μm、一次粒子の長辺長さの平均が2.5μm、標準偏差値が0.7であった。
さらに、実施例8の表面処理条件において、実施例10の「平均粒径80μmの塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末」に変更した以外は実施例8の表面処理条件と同様の条件で、実施例10の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0149】
〔実施例11〕
実施例11は、実施例8の炭化ホウ素合成において、炭化ホウ素合成時の粉砕を2時間に強化し篩網を45μmに変更して「平均粒径8μmの炭化ホウ素」を合成した以外は実施例8の炭化ホウ素合成〜脱炭結晶化工程と同様の条件で、実施例11の「平均粒径22μmの塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末」を製造した。
この原料の塊状窒化ホウ素粉末は、粒子強度(63.2%)が20MPa、粒子強度(20.0%)が6.0MPa、平均粒径が22μm、一次粒子の長辺長さの平均が2.0μm、標準偏差値が0.7であった。
さらに、実施例8の表面処理条件において、実施例11の「平均粒径22μmの塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末」に変更した以外は実施例8の表面処理条件と同様の条件で、実施例11の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0150】
〔実施例12〕
実施例12は、「カップリング剤の量を30部」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例12の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0151】
〔実施例13〕
実施例13は、「カップリング剤の量を1部」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例13の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0152】
〔実施例14〕
実施例14は、カップリング剤を「味の素ファインテクノ株式会社製のKR−46B(テトラオクチル−ビス(ジトリデジルフォスファイト)チタネート)」に変更した以外は実施例8と同様の条件で合成を行い、実施例14の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0153】
〔実施例15〕
実施例15は、カップリング剤を「信越シリコーン製X12−982S(ポリマー型エポキシシラン系)」に変更した以外は実施例8と同様の条件で合成を行い、実施例15の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0154】
〔実施例16〕
実施例16は、カップリング剤を「東京化成工業株式会社製の3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例16の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0155】
〔実施例17〕
実施例17は、カップリング剤を「東京化成工業株式会社製のテトラキス(2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウム(IV)(和名別名:ジルコニウム(IV) アセチルアセトナート)〕」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例17の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0156】
〔実施例18〕
実施例18は、カップリング剤を「マツモトファインケミカル株式会社製のオルガチックスAL−3200〔アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート((C
5H
7O
2)(C
6H
9O
3)
2)〕」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例18の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0157】
〔実施例19〕
実施例19は、表面処理条件のカップリング剤を「信越シリコーン製KBM−140〔p−スチリルトリメトキシシラン〕」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例19の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0158】
〔実施例20〕
実施例20は、表面処理条件のカップリング剤を「信越シリコーン製KBE−9007〔3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン〕」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例20の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0159】
〔実施例21〕
実施例21は、表面処理条件のカップリング剤を「東レ・ダウコーティング製のZ−6300〔ビニルトリメトキシシラン〕」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例21の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0160】
〔実施例22〕
実施例22は、表面処理条件のカップリング剤を「東レ・ダウコーティング製のZ−6187〔シクロヘキシルメチルジメトキシシラン〕」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例22の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0161】
〔実施例23〕
実施例23は、「窒化ホウ素100部に対し水:過酸化水素=1:0.05(wt%比)1400部」を「窒化ホウ素100部に対し水:亜硝酸=1:0.05(wt%比)1400部」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例23の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0162】
〔実施例24〕
実施例25は、「窒化ホウ素100部に対し水:過酸化水素=1:0.05(wt%比)1400部」を「窒化ホウ素100部に対し水:過マンガン酸塩=1:0.03(wt%比)1400部」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、実施例24の表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0163】
〔試験例1〕
試験例1は、表面改質処理及びカップリング処理を施さなかった以外は実施例8と同様の条件(炭化ホウ素合成〜脱炭結晶化工程まで)で、塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末を得た。
【0164】
〔試験例2〕
試験例2は、表面処理の際、表面改質処理としてヘンシェルミキサー処理を行わずにカップリング処理を行った以外は実施例8と同様の条件で、塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0165】
〔試験例3〕
試験例3は、脱炭結晶化時の第2の焼成速度を5℃/minにして「粒子強度が8MPaの塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0166】
〔試験例4〕
試験例4は、表面処理の際、表面改質処理としてヘンシェルミキサー処理を行わずにカップリング処理を行った以外は実施例14と同様の条件で、塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0167】
〔試験例5〕
試験例5は、表面処理の際、表面改質処理としてヘンシェルミキサー処理を行わずにカップリング処理を行った以外は実施例15と同様の条件で、塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0168】
〔試験例6〕
試験例6は、表面処理の際、表面改質処理としてヘンシェルミキサー処理を行わずにカップリング処理を行った以外は実施例17と同様の条件で、塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0169】
〔試験例7〕
試験例7は、表面処理の際、表面改質処理としてヘンシェルミキサー処理を行わずにカップリング処理を行った以外は実施例18と同様の条件で、塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0170】
〔試験例8〕
試験例8は、表面処理の際、表面改質処理としてヘンシェルミキサー処理を行わなかったことと、カップリング剤を「Kenrich社のKen−React(登録商標)KZ TPP(登録商標)Zirconate、ジルコニウム(IV)2,2−ビス(2−プロペノラトメチル)ブタノラト,シクロ−ジ[2,2−(ビス−2−プロペノラトメチル)ブタノラト]ピロホスファト−O,O」に変更した以外は実施例18と同様の条件で、塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0171】
〔試験例9〕
試験例9は、炭化ホウ素合成において、炭化ホウ素合成時の粉砕時間を10時間に強化し篩網を45μmに変更し、「平均粒径5μmの炭化ホウ素」を合成したこと以外は実施例8と同様の条件で、塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末を製造した。さらに、表面処理条件において、「平均粒径10μmの塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末」に変更した以外は実施例8と同様の条件で、表面処理を施した塊状窒化ホウ素粉末を得た。
【0172】
実施例8〜25及び試験例1〜9について、表3及び4に示した。表3及び4において、粒子強度(累積破壊率63.2%時)の値を、粒子強度(圧壊強度)として表示した。
なお、実施例8及び実施例9で使用した原料の塊状窒化ホウ素粉末は、それぞれ、実施例7及び実施例1の一次粒子が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素から成る窒化ホウ素粉末に相当するものである。
【0173】
表3及び4に示す結果より、以下のことがいえる。
<表面処理> 実施例8〜24の塊状窒化ホウ素粉末は、粘度を少なくとも40Pa・S以下にすることができ、樹脂への充填性に優れたものであった。そして、実施例8〜24の塊状窒化ホウ素粉末は、表面処理を行わなかった試験例1の塊状窒化ホウ素粉末と比較し、粘度を少なくとも半分以下に低下させることができ、試験例1の塊状窒化ホウ素粉末の樹脂への充填性を改善することができた。
また、実施例8〜24に示すように、表面処理によって、塊状窒化ホウ素粒子の表面に各種有機官能基を存在させても、樹脂への充填性は良好であった。
また、実施例8〜24(実施例1、23、24等参照)に示すように、表面処理において、過酸化水素、硝酸、過マンガン酸の酸化剤を使用したときに、樹脂への充填性は良好であった。
<atm%> 実施例8〜24(実施例12、3等参照)において、塊状窒化ホウ素粒子表面10nm中の組成において、0.1atm%以上3.0atm%以下のSi、Ti、Zr、Ce、Al、Mg、Ge、Ga及びVが少なくとも存在することで、樹脂への充填性は良好であった。これに対し、塊状窒化ホウ素粒子表面10nm中の組成において、試験例1、2、4〜8のように、検出下限以下のとき粘度が85Pa・S以上と良くなかった。
<圧壊強度(粒子強度(63.2%時)> 実施例8〜24(実施例9等参照)のように、表面処理後の塊状窒化ホウ素粒子の粒子強度(63.2%時)が5.0Mpa以上のとき、樹脂への充填性は良好であった。これに対し、試験例3のように、表面処理後の塊状窒化ホウ素粒子の粒子強度(63.2%時)が3Mpaのとき、粘度が60Pa・Sと良くなかった。
実施例8〜24のように、処理前の粒子強度(63.2%時)が10MPa以上のとき、試験例1の粘度の半分以下となった。試験例3のように、処理前の粒子強度(63.2%時)が8Mpaのとき、表面処理後の粘度60Pa・Sと、試験例1の粘度の40%減であった。塊状窒化ホウ素粉末の樹脂への充填性をより良好にする場合、より強い粒子強度を有する塊状窒化ホウ素粒子を原料として使用することが望ましいことがいえる。
<平均粒径>
実施例8〜24(実施例10、11等参照)のように、表面処理後の平均粒径が20〜80μmのとき、樹脂への充填性は良好であった。これに対し、試験例9のように、表面処理後の平均粒径が10μmのとき、粘度が60Pa・Sと良くなかった。
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】