特許第6682655号(P6682655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6682655燃料噴射システム用の切換弁ならびに燃料高圧ポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682655
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】燃料噴射システム用の切換弁ならびに燃料高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/36 20060101AFI20200406BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   F02M59/36 F
   F02M59/36 E
   F02M59/44 U
   F02M59/44 S
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-555730(P2018-555730)
(86)(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公表番号】特表2019-515172(P2019-515172A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2017058999
(87)【国際公開番号】WO2017186516
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2018年10月24日
(31)【優先権主張番号】102016206996.9
(32)【優先日】2016年4月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェアク ベアンハート
(72)【発明者】
【氏名】ヤヴズ クアト
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−139010(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0094215(US,A1)
【文献】 特開平07−217515(JP,A)
【文献】 特開2004−316858(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第04237726(DE,A1)
【文献】 特開2001−141336(JP,A)
【文献】 特開2012−241877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料噴射システム(10)用の切換弁(30)であって、
弁ハウジング(38)を有し、該弁ハウジング(38)は、弁座(40)を形成しており、該弁座(40)は、前記切換弁(30)の開閉のために、長手方向軸線(50)に沿って可動の弁エレメント(42)と協働し、
前記弁ハウジング(38)は、円錐状に形成された周壁面(58)を有し、
前記弁ハウジング(38)は、軸方向にばね弾性を有するように形成された、半径方向に延びるばね突出部(62)を有し、該ばね突出部(62)は、半径方向で前記周壁面(58)を超えて突出しており
前記弁ハウジング(38)が、前記周壁面(58)に、半径方向の流出環状溝(68)を有し、該流出環状溝(68)は、前記弁ハウジング(38)を、第1の円錐状リングエレメント(74)と、第2の円錐状リングエレメント(76)とに分割しており、前記第1の円錐状リングエレメント(74)の第1の周壁面(78)と、前記第2の円錐状リングエレメント(76)の第2の周壁面(80)とが、それぞれ前記長手方向軸線(50)に対して等しい開き角(α)を成していて、かつ、互いに同一平面上に配置されていることを特徴とする、切換弁(30)。
【請求項2】
前記ばね突出部(62)が前記第1の円錐状リングエレメント(74)に形成されており、前記ばね突出部(62)は、半径方向の載着面(84)と、該載着面(84)とは反対の側に配置された進出面(86)とを有していることを特徴とする、請求項記載の切換弁(30)。
【請求項3】
前記進出面(86)は、前記長手方向軸線(50)に対して傾けられて配置されていて、かつ前記流出環状溝(68)に移行していることを特徴とする、請求項2記載の切換弁(30)。
【請求項4】
前記弁座(40)と弁流入部(82)とが前記第1の円錐状リングエレメント(74)に形成されておりかつ/または、前記第2の円錐状リングエレメント(76)が、アクチュエータアッセンブリ(48)を取り付けるための、軸方向の、央に配置された取付け用孔(102)を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の切換弁(30)。
【請求項5】
前記弁流入部(82)は、前記第1の円錐状リングエレメント(74)に設けられた少なくとも1つの軸方向の孔によって形成されていることを特徴とする、請求項4記載の切換弁(30)。
【請求項6】
前記第1の円錐状リングエレメント(74)が、前記第1の周壁面(78)に、シールエレメント(64)を備えた、全周にわたって延びる第1のシール溝(88)を有し、前記第2の円錐状リングエレメント(76)は、前記第2の周壁面(80)に、シールエレメント(64)を備えた、全周にわたって延びる第2のシール溝(100)を有していることを特徴とする、請求項からまでのいずれか1項記載の切換弁(30)。
【請求項7】
前記両シール溝(88,100)が、前記両リングエレメント(74,76)の前記周壁面(78,80)に対して平行に配置されていることを特徴とする、請求項6記載の切換弁(30)。
【請求項8】
燃料噴射システムハウジング(34)に設けられた収容孔(32)内に前記弁ハウジング(38)を位置固定するための、円筒状の外面(106)を有する位置固定リング(98)が設けられており、該位置固定リング(98)は、前記弁ハウジング(38)とは別個の構成エレメントとして形成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の切換弁(30)。
【請求項9】
前記位置固定リング(98)は、前記弁ハウジング(38)の最大外径(D)よりも大きい位置固定リング外径(D)を有することを特徴とする、請求項8記載の切換弁(30)。
【請求項10】
前記弁ハウジング(38)が、前記アクチュエータアッセンブリ(48)に向けられた側に、前記位置固定リング(98)に設けられた対応位置固定面(96)と協働するための、半径方向の位置固定面(94)を有することを特徴とする、請求項4を引用する請求項8または9記載の切換弁(30)。
【請求項11】
燃料噴射システム(10)内の燃料(12)に高圧を付与するための燃料高圧ポンプ(18)であって、ポンプハウジング(36)と、請求項1から10までのいずれか1項記載の切換弁(30)とを有し、前記ポンプハウジング(36)が、前記切換弁(30)の少なくとも1つの弁ハウジング(38)を収容するための収容孔(32)を有し、該収容孔(32)の孔壁(60)が、少なくとも所定の領域において、前記ポンプハウジング(36)内に向かって円錐状に先細りになるように形成されている、燃料高圧ポンプ(18)。
【請求項12】
前記孔壁(60)と前記切換弁(30)の長手方向軸線(50)とが成す開き角(α)が、前記弁ハウジング(38)の周壁面(58)と前記切換弁(30)の前記長手方向軸線(50)とが成す開き角(α)に等しいことを特徴とする、請求項11記載の燃料高圧ポンプ(18)。
【請求項13】
前記孔壁(60)の、前記ポンプハウジング(36)内に向かって円錐状に先細りに形成された領域に、前記ばね突出部(62)を収容するための収容溝(66)が配置されていることを特徴とする、請求項11または12記載の燃料高圧ポンプ(18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射システム用の切換弁、ならびにこのような切換弁を有する、燃料噴射システム内で燃料を加圧するための燃料高圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射システムに設けられている燃料高圧ポンプは、燃料に高い圧力を付与するために使用される。この場合、圧力は、例えばガソリン内燃機関の場合には250バール〜400バールの範囲、ディーゼル内燃機関の場合には1500バール〜3000バールの範囲になる。いずれの燃料においても、形成され得る圧力が高くなればなるほど、燃焼室内での燃料の燃焼時に発生するエミッションはますます少なくなる。このことは、特にエミッションの低減がますます強く望まれているという背景に鑑みて、有利である。
【0003】
内燃機関の燃料噴射システムにおいては、種々の位置に弁が設けられていることが考えられ、この場合、弁は例えば、燃料を燃料高圧ポンプの圧力室へ流入させる流入弁として、あるいはまた、燃料高圧ポンプ内で燃料に高圧が付与された後に、例えば燃料高圧ポンプの下流側に接続されたレールへ燃料を導く流出弁として、あるいはまた、例えばレール内の圧力を調節できるようにするための逃し弁として、設けられている。
【0004】
これらの弁のすべては、アクティブな切換弁、例えば、デジタル式に作動し、かつアクティブに制御され得る電磁弁として形成されていてよいので、これらの切換弁は、必要に応じて意図的に開放または閉鎖することができる。
【0005】
例えば、ガソリン燃料高圧ポンプの場合には、いわゆる「デジタル式の流入弁」を設けることが知られている。デジタル式の流入弁は、相応に制御されたときに一定の横断面を開放し、燃料高圧ポンプに供給された燃料は、この横断面を通って、低圧領域から、高圧領域、例えば燃料高圧ポンプ内の圧力室へ、流れることができる。相応するコンポーネント、すなわちこの場合には高圧領域に対するコンタクトを有するコンポーネントには、運転中に極めて大きな力が作用する。第1には、これらのコンポーネントが、この高い圧力に対して耐性を有することが重要であり、第2には、各コンポーネント間のシール性を確保できることが重要である。
【0006】
したがって、例えば、流入弁板が燃料高圧ポンプのポンプハウジング内へ締まり嵌め式に圧入されて、追加の位置固定リングを用いて位置固定され、この位置固定リングがポンプハウジングに溶接されるような流入弁を提供することが知られている。したがって、ポンプハウジングと流入弁板とのインターフェースにおける、高圧領域と低圧領域との間のシーリングは、ポンプハウジングと流入弁板との間の締まり嵌めによって行われる。外部、すなわち周囲環境に対する、低圧領域のシーリングは、この場合、溶接シームによって行われる。
【0007】
しかし、システム圧の連続的な増大に基づいて、流入弁板にかかる負荷も増大するので、流入弁板の位置固定、ならびにポンプハウジングと流入弁板との間のシール性を、より高いシステム圧においても確保するための構造的な手段が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、燃料噴射システム内に形成されるシステム圧に対して耐性を有するコンポーネントを有すると同時に、燃料噴射システムハウジングに密に取り付けできるような、切換弁を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、独立形式の請求項1に記載の諸特徴の組み合わせを有する、燃料噴射システム用の切換弁によって解決される。
【0010】
このような切換弁を有する、燃料噴射システム用の燃料高圧ポンプが、別の独立形式の請求項の対象である。
【0011】
本発明の有利な態様は、従属請求項の対象である。
【0012】
内燃機関の燃料噴射システム用の切換弁が、弁ハウジングを有し、この弁ハウジングは、弁座を形成しており、この弁座は、切換弁の開閉のために、長手方向軸線に沿って可動の弁エレメントと協働する。弁ハウジングは、円錐状に形成された周壁面を有し、弁ハウジングは、軸方向にばね弾性を有するように形成された、半径方向に延びるばね突出部を有し、このばね突出部は、半径方向で周壁面を超えて突出している。
【0013】
「半径方向」という用語は、実質的に、切換弁の長手方向軸線に対して垂直な配置を意味し、「軸方向」という用語は、実質的に、切換弁の長手方向軸線に対して平行な配置、またはそれどころか、切換弁の長手方向軸線と合致した軸線を意味する。
【0014】
弁ハウジングを円錐状に形成することにより、例えば、切換弁と燃料噴射システムハウジングとの接続部をシールするためのシールエレメントを配置するために設けられている導入面取部を不要にすることができる。ばね突出部は、軸方向でのばね弾性的な特性に基づいて、弁ハウジングで切換弁をシールするために配置されているシールエレメントを、軸方向で負荷軽減することができるので、作用する高い圧力に基づくシールエレメントの損傷が回避される。
【0015】
有利な態様では、ばね突出部が、弁ハウジングの全周壁面を巡って全周にわたって延びるように形成されており、これにより、場合によっては同じく全周にわたって延びているシールエレメントを、有利に支持することができる。
【0016】
好適には、弁ハウジングとアクチュエータアッセンブリとは、長手方向軸線に沿って相前後して配置されており、弁ハウジングは、アクチュエータアッセンブリを起点として、アクチュエータアッセンブリから離れる方向に向かって先細りになっている。
【0017】
燃料噴射システムハウジングは、例えば燃料高圧ポンプのポンプハウジングによって形成されていてよい。しかしまた、燃料噴射システムハウジングが、例えばレールによって形成されていることも可能である。この場合、切換弁は、有利には、この燃料噴射システムハウジングに設けられた収容孔内に取り付けられる。
【0018】
有利な態様では、弁ハウジングが、周壁面に、半径方向の流出環状溝を有しており、この流出環状溝は、弁ハウジングを、第1の円錐状リングエレメントと、第2の円錐状リングエレメントとに分割する。この場合、第1の円錐状リングエレメントの第1の周壁面と、第2の円錐状リングエレメントの第2の周壁面とは、それぞれ長手方向軸線に対して等しい開き角を成す。特に有利には、第1の周壁面と第2の周壁面とは、互いに同一平面上に配置されている。
【0019】
特に、等しい開き角および同一平面上の配置によって、有利には、第1の円錐状リングエレメントから第2の円錐状リングエレメントまで弁ハウジングの一貫した周壁面が得られる。
【0020】
特に有利な態様では、両円錐状リングエレメントが、特にばね突出部も含めて、全体として一体の構成部分として形成されている。
【0021】
好適には、半径方向の流出環状溝を起点として、弁ハウジングの内部へ少なくとも1つの流出孔が突入しており、この流出孔を介して流体が弁ハウジングから流出することができる。このために、複数の流出孔が弁ハウジングに設けられていてもよい。これらの流出孔は、有利には、長手方向軸線に対して垂直に配置されている。流出孔は、有利には、例えば切換弁がデジタル式の流入弁として、例えば燃料高圧ポンプに配置されている場合には、流入孔として働くこともできる。
【0022】
好適には、ばね突出部が第1のリングエレメントに形成されており、ばね突出部は、半径方向の載着面と、この載着面とは反対の側に配置された進出面とを有し、この進出面は、特に、長手方向軸線に対して傾けられて配置されていて、かつ流出環状溝に移行している。
【0023】
有利には、弁座と弁流入部とが第1のリングエレメントに形成されており、弁流入部は、特に、第1のリングエレメントに設けられた少なくとも1つの軸方向の孔によって形成されている。
【0024】
さらに有利には、第2のリングエレメントが、アクチュエータアッセンブリを取り付けるための、軸方向の、ほぼ中央に配置された取付け用孔を有していてよい。
【0025】
したがって、弁ハウジングの種々異なる機能が、弁ハウジングの種々異なる領域に割り当てられている。有利には、第1の円錐状リングエレメントは、弁座を有するので、切換弁が開閉される領域として用いられ、かつ、第1の円錐状リングエレメントにはばね突出部が配置されているので、第1の円錐状リングエレメントは、組み込まれた切換弁のシールを実施する領域として用いられる。
【0026】
第2のリングエレメントは、有利には、アクチュエータアッセンブリを弁ハウジングに取り付けるために用いられる。
【0027】
有利には、第1のリングエレメントが、第1の周壁面に、シールエレメントを備えた、全周にわたって延びる第1のシール溝を有しており、第2のリングエレメントは、第2の周壁面に、シールエレメントを備えた、全周にわたって延びる第2のシール溝を有している。特に有利には、両方のシール溝が、特にリングエレメントの周壁面に対して平行に配置されている。
【0028】
したがって有利には、シールエレメントは、シール溝内部に配置されており、それにより、収容孔内で切換弁をシールするための簡単なシール配置構成を提供することができる。この場合、特に有利には、一方では周囲環境に対するシーリングを提供し、他方では、例えば高圧領域に対するシーリングを提供するために、それぞれ1つのシールエレメントを備えた2つのシール溝が設けられている。
【0029】
弁ハウジング全体の有利な円錐状の周壁面を維持するためには、シール溝が、有利には、同じく傾けられていて、したがって周壁面に対して平行に配置されており、これにより、シール溝内に収納されるシールエレメントも傾けられており、これによって弁ハウジングの一貫して整合した周壁面が得られる。
【0030】
シールエレメントは、例えばOリングによって形成されていてよい。このことは、シールエレメントを形成するための、特に簡単な配置構成である。
【0031】
第1のシール溝は、例えばばね突出部の載着面によって画定されていてもよいし、この載着面によって一緒に規定されていて、ばね突出部が第1のシール溝に移行していてもよい。これは、弁ハウジングにおけるばね突出部の特に安定的な形成となる。
【0032】
有利には、燃料噴射システムハウジングに設けられた収容孔内に弁ハウジングを位置固定するための、円筒状の外面を有する位置固定リングが設けられている。この位置固定リングは、弁ハウジングとは別個の構成エレメントとして形成されており、かつ、特に、弁ハウジングの最大外径よりも大きい位置固定リング外径を有している。
【0033】
有利には、弁ハウジングが、アクチュエータアッセンブリに向けられた側に、位置固定リングに設けられた対応位置固定面と協働するための、半径方向の位置固定面を有している。
【0034】
位置固定面と対応位置固定面との協働により、弁ハウジングには、切換弁の長手方向軸線に対してほぼ垂直に作用し、かつ、アクチュエータアッセンブリから離れる方向に向けられた力が加えられる。
【0035】
これにより、弁ハウジングは、燃料噴射システムハウジング内に組み込まれた状態で、燃料噴射システムハウジングに設けられた収容孔内にしっかりと位置固定される。
【0036】
位置固定のために、例えば位置固定リングが、有利には雄ねじ山を有しており、その場合、位置固定リングを、この雄ねじ山によって、例えば燃料噴射システムハウジングにねじ込むことができる。
【0037】
好適には、アクチュエータアッセンブリが収容される、弁ハウジングに設けられた取付け用孔が、アクチュエータアッセンブリを保持する案内壁を有する。この案内壁は、長手方向軸線に対してほぼ平行に配置されており、かつ、アクチュエータアッセンブリに向かう方向に、弁ハウジングの位置固定面を超えて延びている。
【0038】
燃料噴射システム内の燃料に高圧を付与するための燃料高圧ポンプが、ポンプハウジングと、上で説明した切換弁とを有する。ポンプハウジングは、切換弁の少なくとも1つの弁ハウジングを収容するための収容孔を有し、この収容孔の孔壁が、少なくとも所定の領域において、ポンプハウジング内に向かって円錐状に先細りになるように形成されている。
【0039】
したがって、孔壁は、実質的に弁ハウジングと同じ形状を有しており、したがって、収容孔内で切換弁を良好にシールするために、弁ハウジングの周壁面と確実に協働することができる。
【0040】
特に好適には、孔壁と切換弁の長手方向軸線とが成す開き角が、弁ハウジングの周壁面と切換弁の長手方向軸線とが成す開き角に等しい。
【0041】
このことにより、弁ハウジングを、例えば簡単に締まり嵌めによって、収容孔内に取り付けることができる。
【0042】
有利には、収容孔が、円錐状に形成された領域に加えて、円筒状に形成された領域を有しており、この円筒状の領域には、位置固定リングも収容することができる。特に有利には、この領域に雌ねじ山が設けられており、この雌ねじ山は、位置固定リングを取り付けるために、位置固定リングの雄ねじ山と協働することができる。
【0043】
特に有利には、円筒状の領域と円錐状の領域との間の移行領域に、孔壁に負荷軽減溝が設けられている。
【0044】
特に有利な態様では、孔壁の、ポンプハウジング内に向かって円錐状に先細りに形成された領域に、ばね突出部を収容するための収容溝が配置されている。
【0045】
さらに有利には、ポンプハウジングに供給孔が配置されており、この供給孔は、切換弁が組み込まれている状態で、流出環状溝と整合するように配置されている。
【0046】
切換弁は、特に有利には、燃料高圧ポンプの高圧領域と、燃料高圧ポンプの低圧領域、すなわち供給領域とを分離する、デジタル式の流入弁として形成されている。
【0047】
以下に、本発明の有利な態様を添付の図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】燃料高圧ポンプを有する、内燃機関の燃料噴射システムであって、種々の潜在的な位置に切換弁が配置されている燃料噴射システムを示す概略図である。
図2図1に示したこのような切換弁の長手方向断面図である。
図3図2に示した切換弁の、弁ハウジングの領域を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、燃料噴射システム10の概略図を示す。燃料噴射システム10によって、燃料12は、一方では高圧を付与され、他方では噴射のために蓄えられて、次いで、必要に応じて内燃機関の燃焼室内に噴射される。燃料噴射システム10は、燃料12を貯蔵するためにタンク14を有しており、燃料12は、このタンク14から、プレフィードポンプ16を介して、燃料高圧ポンプ18に供給される。燃料12の流れ方向で見て燃料高圧ポンプ18の上流側に流入弁20が配置されており、この流入弁20は、燃料12を燃料高圧ポンプ18へ流入させるか、または流入を阻止することができる。
【0050】
燃料12は、次いで、燃料高圧ポンプ18内で高圧を付与され、次いで、「レール」と呼ばれる蓄圧器22に供給される。高圧付与された燃料12は、この蓄圧器22に蓄えられる。蓄圧器22は、複数のインジェクタ24に燃料12を供給し、次いで、インジェクタ24を介して、内燃機関の燃焼室内に燃料12を噴射することができる。
【0051】
燃料高圧ポンプ18には、流入弁20のほかに、流出弁26も設けられており、流出弁26は、開放された状態において、燃料高圧ポンプ18の圧力室を、蓄圧器22に、流体が流通するように接続する。
【0052】
加えて、蓄圧器22内の過圧を回避するために、蓄圧器22に、同じく、開ループ制御式の圧力制御弁または閉ループ制御式の圧力制御弁28が設けられていてもよい。
【0053】
上に挙げたすべての弁、すなわち流入弁20、流出弁26および開ループ制御式の圧力制御弁または閉ループ制御式の圧力制御弁28は、アクティブな切換弁30として形成されていてよく、したがって、制御装置を介してアクティブに開放または閉鎖することができる。
【0054】
図1に示す実施形態では、流入弁20、流出弁26、開ループ制御式の圧力制御弁または閉ループ制御式の圧力制御弁28のいずれも、切換弁30により形成することができる。しかし、特に流入弁20がこのような切換弁30によって形成されていると、特に好適である。
【0055】
図2は、このような切換弁30の長手方向断面図を示す。切換弁30は、燃料噴射システムハウジング34に設けられた収容孔32内に配置されている。燃料噴射システムハウジング34は、例えば燃料高圧ポンプ18のポンプハウジング36であってよいが、燃料噴射システムハウジング34は、例えば蓄圧器22によって形成されていてもよい。
【0056】
図2の長手方向断面図から判るように、切換弁30は弁ハウジング38を有しており、この弁ハウジング38には、弁座40が形成されている。本実施形態では、切換弁30を開閉するために弁座40と協働する弁エレメント42が、弁プレート44によって形成されている。この弁プレート44は、弁リフタ46によって弁座40から押し離され、それによって切換弁30は開放される。しかし、弁座40と協働し、これによって切換弁30を開閉することのできる別形式の弁エレメント42も考えられる。
【0057】
弁ハウジング38には、アクチュエータアッセンブリ48が取り付けられている。このアクチュエータアッセンブリ48を介して、弁エレメント42を、切換弁30の長手方向軸線50に沿ってアクティブに動かすことができる。本実施形態では、このために、コイル52に電圧が印加され、それにより、位置固定の磁極片54と、可動のアーマチュア56とが、長手方向軸線50に沿って、互いに相対的に運動する。これによって、アーマチュア56に固定的に取り付けられている弁リフタ46は、同じく長手方向軸線50に沿って動かされ、これにより、弁リフタ46は弁プレート44に影響を与えることができる。
【0058】
弁ハウジング38は、ポンプハウジング36に設けられた収容孔32内に配置されている。弁ハウジング38は、周壁面58を有し、この周壁面58は、円錐状に形成されていて、アクチュエータアッセンブリ48から離れる方向に向かって先細りになっている。
【0059】
収容孔32も孔壁60を有しており、この孔壁60も同じく円錐状にポンプハウジング36の内部へ向かって先細りになるように形成されている。
【0060】
特に、弁ハウジング38の周壁面58と、切換弁30の長手方向軸線50とが成す開き角αは、孔壁60と、切換弁30の長手方向軸線50とが成す開き角αに等しい。
【0061】
円錐状に形成されていることにより、弁ハウジング38を、特に容易に収容孔32内へ嵌め込むことができる。
【0062】
弁ハウジング38はさらに、ばね突出部62を有する。ばね突出部62は、半径方向に延在しており、しかも、この場合、ばね突出部62は、半径方向で、弁ハウジング38の周壁面58を超えて突出している。このばね突出部62は、軸方向にばね弾性を有するように形成されており、したがって弁ハウジング38におけるシールエレメント64のための支持エレメントとして用いることができる。
【0063】
ばね突出部62が有効に作用できるようにするために、孔壁60は、孔壁60がポンプハウジング36の内部に向かって円錐状に先細りになるように形成されている箇所に、ばね突出部62と協働する収容溝66を有している。ばね突出部62は、この収容溝66内に係合して、この収容溝66内に、切換弁30の軸方向においてばね弾性的に支持されることができる。
【0064】
弁ハウジング38は、流出環状溝68を有する。流出環状溝68は、弁ハウジング38の周壁面58に半径方向に配置されており、この流出環状溝68を起点として、流出孔70が、弁ハウジング38内部へ突入して延びている。ポンプハウジング36は、流出環状溝68と協働するために、正確にこの高さに供給孔72を有しており、この供給孔72は、切換弁30が収容孔32内に組み込まれている状態で、流出環状溝68と整合するように配置されている。切換弁30が、例えば流入弁20として形成されている場合には、この流入弁20を介して燃料12を燃料高圧ポンプ18へ流入させるために、この供給孔72を介して、燃料12を供給することができる。しかし、流入弁20が開放されているときに、燃料を、燃料高圧ポンプ18から供給孔72へ逆流させることも可能である。
【0065】
流出環状溝68によって、弁ハウジング38は、2つの領域、すなわち第1の円錐状リングエレメント74と、第2の円錐状リングエレメント76と、に分割されている。
【0066】
図3は、図2に示した弁ハウジング38の拡大図を示す。
【0067】
第1の円錐状リングエレメント74は、第1の周壁面78を有し、第2の円錐状リングエレメント76は、第2の周壁面80を有する。両円錐状リングエレメント74、76ならびにばね突出部62は、唯一つの構成部分として一体に形成されており、こうして一緒になって1つの弁ハウジング38を形成しているので、第1の周壁面78は、第2の周壁面80と共に、弁ハウジング38の全体の周壁面58を形成している。弁ハウジング38に一貫した周壁面58を形成するために、第1の周壁面78と第2の周壁面80とは互いに同一平面上に配置されていて、それぞれ切換弁30の長手方向軸線50に対して、等しい開き角αを成している。
【0068】
両リングエレメント74、76は、弁ハウジング38の互いに異なる機能を引き受ける。
【0069】
すなわち、弁座40ならびに弁流入部82は、第1のリングエレメント74に形成されている。弁流入部82は、特に軸方向に延びる複数の孔によって形成されており、これらの孔は、弁プレート44によって閉鎖される。さらに、ばね突出部62も、第1の円錐状リングエレメント74に形成されている。
【0070】
ばね突出部62は、特に、第1の円錐状リングエレメント74と一体に形成されている。ばね突出部62は、半径方向の載着面84を有し、この載着面84を介して収容溝66と協働する。ばね突出部62はさらに、載着面84とは反対の側に進出面86を含んでおり、この進出面86は、長手方向軸線50に対して傾けられて配置されているので、進出面86は弁ハウジング38の流出環状溝68に移行している。
【0071】
第1の円錐状リングエレメント74の第1の周壁面78には、さらに第1のシール溝88が配置されており、この第1のシール溝88は、第1の周壁面78の全周にわたって延びるように形成されている。第1のシール溝88は、図2から判るように、Oリングの形のシールエレメント64を収納するために設けられている。第1のシール溝88は、この場合、第1の周壁面78に対して平行に形成されている。すなわち、第1のシール溝88は、切換弁30の長手方向軸線50に対して傾けられて配置されている。
【0072】
第1のシール溝88内に配置されているシールエレメント64は、燃料高圧ポンプ18の高圧領域90と、燃料高圧ポンプ18の低圧領域92との間のシールとして作用する。高圧領域90と低圧領域92との間には、極めて大きな圧力差が生じているので、第1のシール溝88内のシールエレメント64には、極めて強い力がかけられる。したがって、このシールエレメント64にかけられる負荷を軽減するために、ばね突出部62が設けられている。ばね突出部62は、Oリングの形のシールエレメント64を支持して、大きな圧力差に基づく損傷を回避する。このために、ばね突出部62の半径方向の載着面84が、第1のシール溝88の一方の端部を一緒に規定している。
【0073】
弁ハウジング38の第2の円錐状リングエレメント76は、一方ではアクチュエータアッセンブリ48を収容する機能を引き受け、他方では弁ハウジング38を収容孔32内に位置固定する機能を引き受ける。
【0074】
この場合、第2の円錐状リングエレメント76は、アクチュエータアッセンブリ48に向けられた側に、半径方向の位置固定面94を有する。この位置固定面94は、位置固定リング98に設けられた対応位置固定面96と協働する。位置固定リング98は、収容孔32の円筒状領域へねじ込まれて、それにより弁ハウジング38に位置固定力を加える。
【0075】
周囲環境に対してシールするために、第2の円錐状リングエレメント76も、第2のシール溝100を有しており、第2のシール溝100内には、やはりシールエレメント64が挿入されている。
【0076】
加えて、第2の円錐状リングエレメント76は、中央に取付け用孔102を有しており、この取付け用孔102に、アクチュエータアッセンブリ48を取り付けることができる。アクチュエータアッセンブリ48を確実に案内するために、第2の円錐状リングエレメント76は、この領域に、軸方向で位置固定面94を超えて延びる案内壁104を有しており、アクチュエータアッセンブリ48をこれらの案内壁104に支持することができる。位置固定リング98は、弁ハウジング38とは異なり、円錐形状を有しておらず、円筒状の外面106を有しており、この外面106には雄ねじ山108が配置されていて、この雄ねじ山108は収容孔32に設けられた雌ねじ山110と協働する。
【0077】
位置固定リング98は、弁ハウジング38とは別個の構成部分として形成されている。弁ハウジング38を収容孔32内に確実に位置固定できるようにするために、位置固定リング外径Dが、弁ハウジング38の最大外径Dよりも大きく形成されている。
【0078】
したがって、本発明の思想は、第1の円錐状リングエレメント74が流入弁板を形成することにより、流入弁板を弁ハウジング38に組み込むことである。ポンプハウジング36にねじ込まれる付加的なリング、すなわち位置固定リング98を用いて、弁ハウジングは位置固定される。高圧領域90と低圧領域92との間のシーリングは、Oリングとばね突出部62とによって行われる。ばね突出部62は、Oリングを支持する支持リングとして作用して、それにより、高い圧力に基づく損傷を回避する。外部の周囲環境に対する、低圧領域92のシーリングは、同じくOリングを用いて行われる。
【0079】
従来、支持リングは、別個に形成された構成エレメントとして設けられており、同じくシール溝に、Oリングと一緒に持ち込まれていた。
【0080】
本発明の思想は、弁ハウジング38と、ポンプハウジング36内の収容孔32とを、ほぼ円錐状に形成することにある。このことにより、例えば一方のOリング、またはそれどころか両方のOリングのためにポンプハウジング36に設けられる導入面取部を不要にすることができる。支持リングは、弁ハウジング38に組み込まれた、ばね突出部62の形の皿ばねによって代替される。
【0081】
一方または両方のOリングを組み付けるためにポンプハウジング36に設けられる導入面取部が必要とならないことで、より小さな構成スペースを提供することができ、かつ、材料使用の低減と、ポンプハウジング36および弁ハウジング38における加工手間の低減とによって、コスト節約を達成することができる。従来知られている別体の支持リングを、ばね突出部62の形で弁ハウジング38に組み込むことによっても、コストが節約される。別体の支持リングを備えた設計に比べて、位置固定リング98の組付けのためには小さな締付けトルクしか必要とならず、これにより、ねじ山108、110への力導入のためにも小さな力しか必要とならず、したがってより頑丈な設計を達成することができる。
図1
図2
図3