特許第6682670号(P6682670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

6682670発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法及び装置
<>
  • 6682670-発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法及び装置 図000027
  • 6682670-発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法及び装置 図000028
  • 6682670-発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法及び装置 図000029
  • 6682670-発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法及び装置 図000030
  • 6682670-発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法及び装置 図000031
  • 6682670-発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法及び装置 図000032
  • 6682670-発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法及び装置 図000033
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682670
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20200406BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   H02J3/46
   H02J3/16
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-3730(P2019-3730)
(22)【出願日】2019年1月11日
(65)【公開番号】特開2019-176715(P2019-176715A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年1月11日
(31)【優先権主張番号】201810272081.9
(32)【優先日】2018年3月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515249628
【氏名又は名称】サングロー パワー サプライ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】パン ニアナン
(72)【発明者】
【氏名】タオ レイ
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−034739(JP,A)
【文献】 特開2017−041980(JP,A)
【文献】 特開2011−234620(JP,A)
【文献】 特開平06−161576(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0274946(US,A1)
【文献】 特開2017−99254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された条件を満たす場合に、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得することと、
有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流に基づいて、電力網インピーダンスを算出することと、
前記電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて、無効電力補償係数を算出することと、
前記無効電力補償係数に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力を算出して発電所内の各インバータに発行することと、
を含むことを特徴とする発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法。
【請求項2】
前記した、予め設定された条件を満たす場合に、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得することは、
予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の有効電力差分が第1の閾値よりも大きいと、前記予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の電圧をそれぞれ前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧とし、前記予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の電流をそれぞれ前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電流とし、
又は、発電所の共通接続点の有効電力が第2の閾値よりも大きい場合、制限コマンドを発電所内の各インバータに発行して、発電所の共通接続点の有効電力の変化差分を前記第1の閾値よりも大きくし、取得した入力情報に基づいて、前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得する、
ことを含むことを特徴とする請求項1に記載の発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法。
【請求項3】
前記した、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流に基づいて、電力網インピーダンスを算出することは、
p1=Vd1+jVq1、Vp2=Vd2+jVq2、Ip1=Id1+jIq1、Ip2=Id2+jIq2及びα=[(Vd1-Vd2)×(Id1-Id2)+(Vq1-Vq2)×(Iq1-Iq2)]÷[(Vq1-Vq2)×(Id1-Id2)-(Vd1-Vd2)×(Iq1-Iq2)]に基づいて電力網インピーダンス角αを算出することと、
r=α×(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)- (Iq1-Iq2)]に基づいて電力網インピーダンスrを算出することと、
x=(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)- (Iq1-Iq2)]に基づいて電力網インピーダンスxを算出することと、を含み、
なお、Vp1は有効電力の変化前の発電所の共通接続点の電圧であり、Vp2は有効電力の変化後の発電所の共通接続点の電圧であり、Ip1は有効電力の変化前の発電所の共通接続点の電流であり、Ip2は有効電力の変化後の発電所の共通接続点の電流である、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法。
【請求項4】
前記した、前記電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて、無効電力補償係数を算出することは、
及び
に基づいて、無効電力補償係数Kを算出することを含み、
なお、r及びxは前記電力網インピーダンスであり、Pはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の有効電力であり、VPはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧の絶対値である、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法。
【請求項5】
前記した、前記無効電力補償係数に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力を算出することは、
に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力Qを算出することを含み、
なお、Kは前記無効電力補償係数であり、Pはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の有効電力である、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法。
【請求項6】
発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置であって、
予め設定された条件を満たす場合に、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得するための取得ユニットと、
有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流に基づいて、電力網インピーダンスを算出するための第1の算出ユニットと、
前記電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて、無効電力補償係数を算出するための第2の算出ユニットと、
前記無効電力補償係数に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力を算出するための第3の算出ユニットと、
前記発電所の出力する必要がある無効電力を発電所内の各インバータに発行するための発行ユニットと、
を含むことを特徴とする発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置。
【請求項7】
前記取得ユニットは、
予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の有効電力差分が第1の閾値よりも大きい場合に、前記予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の電圧をそれぞれ前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧とし、前記予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の電流をそれぞれ前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電流とするための自動取得ユニットと、
発電所の共通接続点の有効電力が第2の閾値よりも大きい場合に、前記発行ユニットが制限コマンドを発電所内の各インバータに発行することによって、発電所の共通接続点の有効電力の変化差分を前記第1の閾値よりも大きくし、取得した入力情報に基づいて前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得するための手動取得ユニットと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置。
【請求項8】
前記第1の算出ユニットは、
p1=Vd1+jVq1、Vp2=Vd2+jVq2、Ip1=Id1+jIq1、Ip2=Id2+jIq2及びα=[(Vd1-Vd2)×(Id1-Id2)+(Vq1-Vq2)×(Iq1-Iq2)]÷[(Vq1-Vq2)×(Id1-Id2)-(Vd1-Vd2)×(Iq1-Iq2)]に基づいて、電力網インピーダンス角αを算出するための第1のサブ算出ユニットと、
r=α×(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)- (Iq1-Iq2)]に基づいて、電力網インピーダンスrを算出するための第2のサブ算出ユニットと、
x=(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)- (Iq1-Iq2)]に基づいて、電力網インピーダンスxを算出するための第3のサブ算出ユニットと、
を含み、
なお、Vp1は有効電力の変化前の発電所の共通接続点の電圧であり、Vp2は有効電力の変化後の発電所の共通接続点の電圧であり、Ip1は有効電力の変化前の発電所の共通接続点の電流であり、Ip2は有効電力の変化後の発電所の共通接続点の電流である、
ことを特徴とする請求項6に記載の発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置。
【請求項9】
前記第2の算出ユニットが前記電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて無効電力補償係数を算出する際に、具体的に、
及び
に基づいて、無効電力補償係数Kを算出し、
なお、rとxは前記電力網インピーダンスであり、Pはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の有効電力であり、VPはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧の絶対値である、
ことを特徴とする請求項6に記載の発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置。
【請求項10】
前記第3の算出ユニットが前記無効電力補償係数に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力を算出する際に、具体的に、
に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力Qを算出し、
なお、Kは前記無効電力補償係数であり、Pはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の有効電力である、
ことを特徴とする請求項6に記載の発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムの技術分野に関し、特に、発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、発電所の共通接続点の電圧変動を抑制するために、一般的に、無効電力の補償によって電圧変動の抑制を実現し、具体的には、無効電力による有効電力の電圧変動を線形補償する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電力網インピーダンスが大きい弱い網の場合に、無効電力による有効電力の電圧変動は非線形であるため、上記の方式は、発電所の共通接続点の電圧変動に対して抑制效果が限られ、電圧変動を根本的に完全に抑制することができず、発電所の共通接続点に電力変動がある場合に、電圧に依然として一定の変動がある。
【0004】
本発明は、従来技術における弱い網の場合に抑制效果が限られる問題を解決するために、発電所の共通接続点の電圧変動の方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本出願によって提供される技術的方案は以下のようである。
【0006】
発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法であって、
予め設定された条件を満たす場合に、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得することと、
有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流に基づいて、電力網インピーダンスを算出することと、
前記電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて、無効電力補償係数を算出することと、
前記無効電力補償係数に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力を算出して発電所内の各インバータに発行することとを含む。
【0007】
好ましくは、前記した予め設定された条件を満たす場合に有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得することは、
予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の有効電力差分が第1の閾値よりも大きいと、前記予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の電圧をそれぞれ前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧とし、前記予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の電流をそれぞれ前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電流とし、
又は、発電所の共通接続点の有効電力が第2の閾値よりも大きい場合、制限コマンドを発電所内の各インバータに発行して、発電所の共通接続点の有効電力の変化差分を前記第1の閾値よりも大きくし、取得した入力情報に基づいて、前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得することとを含む。
【0008】
好ましくは、前記した有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流に基づいて、電力網インピーダンスを算出することは、
p1=Vd1+jVq1、Vp2=Vd2+jVq2、Ip1=Id1+jIq1、Ip2=Id2+jIq2及びα=[(Vd1.Vd2)×(Id1-Id2)+(Vq1-Vq2)×(Iq1-Iq2)]÷[(Vq1-Vq2)×(Id1-Id2)-(Vd1-Vd2)×(Iq1-Iq2)]に基づいて、電力網インピーダンス角αを算出することと、
r=α×(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)-(Iq1-Iq2)]に基づいて、電力網インピーダンスrを算出することと、
x=(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)- (Iq1-Iq2)]に基づいて、電力網インピーダンスxを算出することと、を含み、
なお、Vp1は有効電力の変化前の発電所共通接続点の電圧であり、Vp2は有効電力の変化後の発電所の共通接続点の電圧であり、Ip1は有効電力の変化前の発電所の共通接続点の電流であり、Ip2は有効電力の変化後の発電所の共通接続点の電流である。
【0009】
好ましくは、前記した前記電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて無効電力補償係数を算出することは、
及び
に基づいて、無効電力補償係数Kを算出することを含み、
なお、rとxは前記電力網インピーダンスであり、Pはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の有効電力であり、VPはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧の絶対値である。
【0010】
好ましくは、前記した前記無効電力補償係数に基づいて発電所の出力する必要がある無効電力を算出することは、
に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力Qを算出することを含み、
なお、Kは前記無効電力補償係数であり、Pはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の有効電力である。
【0011】
発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置であって、
予め設定された条件を満たす場合に、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得するための取得ユニットと、
有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流に基づいて、電力網インピーダンスを算出するための第1の算出ユニットと、
前記電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて、無効電力補償係数を算出するための第2の算出ユニットと、
前記無効電力補償係数に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力を算出するための第3の算出ユニットと、
前記発電所の出力する必要がある無効電力を発電所内の各インバータに発行するための発行ユニットとを含む。
【0012】
好ましくは、前記取得ユニットは、
予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の有効電力差分が第1の閾値よりも大きい場合、前記予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の電圧をそれぞれ前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧とし、前記予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の電流をそれぞれ前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電流とするための自動取得ユニットと、
発電所の共通接続点の有効電力が第2の閾値よりも大きい場合、前記発行ユニットが制限コマンドを発電所内の各インバータに発行することによって、発電所の共通接続点の有効電力の変化差分を前記第1の閾値よりも大きくし、取得した入力情報に基づいて前記有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得するための手動取得ユニットとを含む。
【0013】
好ましくは、前記第1の算出ユニットは、
p1=Vd1+jVq1、Vp2=Vd2+jVq2、Ip1=Id1+jIq1、Ip2=Id2+jIq2及びα=[(Vd1-Vd2)×(Id1-Id2)+(Vq1-Vq2)×(Iq1-Iq2)]÷[(Vq1-Vq2)×(Id1-Id2)-(Vd1-Vd2)×(Iq1-Iq2)]に基づいて、電力網インピーダンス角αを算出するための第1のサブ算出ユニットと、
r=α×(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)- (Iq1-Iq2)]に基づいて、電力網インピーダンスrを算出するための第2のサブ算出ユニットと、
x=(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)- (Iq1-Iq2)]に基づいて、電力網インピーダンスxを算出するための第3のサブ算出ユニットと、を含み、
なお、Vp1は有効電力の変化前の発電所の共通接続点の電圧であり、Vp2は有効電力の変化後の発電所の共通接続点の電圧であり、Ip1は有効電力の変化前の発電所の共通接続点の電流であり、Ip2は有効電力の変化後の発電所の共通接続点の電流である。
【0014】
好ましくは、前記第2の算出ユニットが前記電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて無効電力補償係数を算出する際に、具体的に、
及び
に基づいて、無効電力補償係数Kを算出し、
なお、rとxは前記電力網インピーダンスであり、Pはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の有効電力であり、VPはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧の絶対値である。
【0015】
好ましくは、前記第3の算出ユニットが前記無効電力補償係数に基づいて発電所の出力する必要がある無効電力を算出する際に、具体的に、
に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力Qを算出し、
なお、Kは前記無効電力補償係数であり、Pはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の有効電力である。
【0016】
本発明によって提供される発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法は、まず、予め設定された条件を満たす場合に、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得し、その後、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流に基づいて、電力網インピーダンスを算出し、さらに、前記電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて、無効電力補償係数を算出し、最後に、前記無効電力補償係数に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力を算出して発電所内の各インバータに発行し、電力網インピーダンスが大きい弱い網に適用される場合であっても、電圧変動を抑制するための無効電力補償係数は、電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて算出されるものであり、即ち、本出願の無効電力係数の算出は、適用される電力網インピーダンスに直接関係して、電圧変動を根本的に抑制することができ、従来技術における問題が解決される。
【0017】
本発明の実施例又は従来技術の技術的方案をより明確に説明するために、以下、実施例や従来技術の説明に用いられる図面について簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施例に過ぎない。当業者であれば、これらの図面に基づいて創造的な作業を行うことなく他の図面を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例による発電所のシステム構成の概略図である。
図2】本発明の実施例による発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法のフローチャートである。
図3】本発明の実施例による有効電力の変化のサンプリング時点の概略図である。
図4】本発明の実施例による発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法を実施する実験結果の概略図である。
図5】本発明の実施例による発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法を実施する別の実験結果の概略図である。
図6】本発明の別の実施例による発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置構成の概略図である。
図7】本発明の別の実施例による発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置構成の別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本出願の実施例における技術的方案について、本出願の実施例における添付図面を参照しながら、明確かつ完全に説明する。記載される実施例は本出願の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではないことは明らかである。本出願の実施例に基づいて当業者によって創作努力をすることなく得られる他の全ての実施例は、いずれも本出願の保護範囲内に属する。
【0020】
本発明は、従来技術における弱い網の場合に抑制效果が限られる問題を解決するために、発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法を提供する。
【0021】
当該発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法は、図1に示す発電所システム構成に適用され、その中、PCCは発電所の共通接続点であり、Vpは発電所の共通接続点の電圧の絶対値であり、Ipは発電所の共通接続点の電流であり、rとxは電力網インピーダンスであり、Vsは電力網の電圧である。
【0022】
具体的に、当該発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法は図2に示すように、以下のステップを含む。
【0023】
S101は、予め設定された条件を満たす場合に、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得する。
【0024】
電力網インピーダンスの計算結果の正確性を保証するために、適切なサンプリング時点を選択する必要があり、具体的な実際の適用では、このサンプリング処理を自動検出モード又は手動トリガーモードによって実現することができる。
【0025】
自動検出モードでは、予め設定された時間(例えば、10min)内の2つの時点(図3に示すt1時点とt2時点であり、t1時点とt2時点との間の時間間隔Tが10minよりも小さい)における発電所の共通接続点の有効電力差分abs(P1-P2)が第1の閾値(例えば、0.1Pnであり、Pnは発電所の定格電力である)よりも大きい場合、当該予め設定された時間内の2つの時点(即ち、t1時点とt2時点)における発電所の共通接続点の電圧をそれぞれ、有効電力の変化の前後の発電所の共通接続点の電圧として、当該予め設定された時間内の2つの時点(即ち、t1時点とt2時点)における発電所の共通接続点の電流をそれぞれ、有効電力の変化の前後の発電所の共通接続点の電流とする。
【0026】
手動トリガーモードでは、発電所の共通接続点の有効電力が第2の閾値(例えば、0.2Pn)よりも大きい場合、制限コマンドを発電所内の各インバータに発行して、発電所の共通接続点の有効電力の変化差分を第1の閾値(例えば、0.1Pn)よりも大きくさせる。その後、取得した入力情報に基づいて有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得する。具体的には、発電所の共通接続点の有効電力の変化前後の有効電力が最も安定している時点を選択時点として、電圧及び電流を取得することができる。
【0027】
具体的な実際の適用では、発電所の共通接続点に設置された変流器によって発電所の共通接続点の電流を取得し、発電所の共通接続点に設置された電圧センサーによって発電所の共通接続点の電圧を取得することができる。
【0028】
S102は、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流に基づいて、電力網インピーダンスを算出する。
【0029】
図1から分かるように、Vp=Ip×Z+Vsであり、その中、Vp=Vd+jVq、Ip=Id+jIq、Vs=Vsd+jVsq、Z=r+jxであり、そのため、Vd=r×Id-x×Iq +Vsd、Vq=r×Iq+x×Id +Vsqである。
【0030】
図3におけるt1時点の電圧Vp1=Vd1+jVq1と電流Ip1=Id1+jIq1、及びt2時点の電圧Vp2=Vd2+jVq2と電流Ip2=Id2+jIq2を上記の式にそれぞれ代入すると、Vd1=r×Id1-x×Iq1+Vsd、Vq1=r×Iq1+x×Id1+Vsq、Vd2=r×Id2-x×Iq2+Vsd、Vq2=r×Iq2+x×Id2 +Vsqが得られる。
【0031】
さらに、Vd1-Vd2=r×(Id1-Id2)-x×(Iq1-Iq2)、Vq1-Vq2=r×(Iq1-Iq2)+x×(Id1-Id2)が得られ、また、電力網インピーダンス角α=r/xであるので、
α=[(Vd1-Vd2)×(Id1-Id2)+(Vq1-Vq2)×(Iq1-Iq2)]÷[(Vq1-Vq2)×(Id1-Id2)-(Vd1-Vd2)×(Iq1-Iq2)];
r=α×(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)- (Iq1-Iq2)];
x=(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)- (Iq1-Iq2)]となる。
【0032】
従って、具体的は実際の計算過程では、t1とt2時点の電圧及び電流に基づいて、当該電力網インピーダンス角αを算出し、当該電力網インピーダンス角αの具体的な数値と、t1とt2時点の電圧及び電流とに基づいて、電力網インピーダンスrとxを算出することができる。
【0033】
S103は、電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて、無効電力補償係数を算出する。
【0034】
図1では、発電所の共通接続点の電圧をリアルタイムで取得することができ、発電所の共通接続点の電圧値
と有効電力P、無効電力Q、電力網インピーダンスrとx及び電力網電圧Vsとの間の関係は、
であり、
従って、発電所の共通接続点の電圧の絶対値の算出式は、
であり、
であるので、
となり、
によって、
が得られる。
【0035】
発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法の目的は、発電所の共通接続点の電圧と電力網の電圧とを一致させることであるので、この時、
であり、これにより、
が得られる。
【0036】
具体的な実際の計算過程では、既知の電力網インピーダンスrとxと、リアルタイムで取得する発電所の共通接続点の有効電力Pと、リアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧の絶対値VPとに基づいて、上記の式に代入して、無効電力補償係数Kを算出することができる。
【0037】
S104は、無効電力補償係数に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力を算出して発電所内の各インバータに発行することができる。
【0038】
具体的に、
に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力Qを算出することができ、当該無効電力Qは発電所の共通接続点の電圧と電力網電圧とを一致させることを前提として算出されたものであるので、必然的に、有効電力の変動による発電所の共通接続点の電圧変動を効果的に抑制することができる。図4及び図5に示す実験結果から分かるように、本実施例によって提案される方法によれば、発電所の共通接続点における電力変動による電圧変動を理論的に完全的抑制することができる。
【0039】
当該無効電力Qは、全てのインバータが一緒に出力する無効電力であるので、具体的な実際の適用では、平均配分方式又は重み配分方式に従って各インバータの出力する必要がある無効電力を得て、各インバータに発行することができる。ここで具体的に限定せず、具体的な適用環境に応じて決定し、全て本出願の保護範囲内に属する。
【0040】
本実施例によって提供される当該発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する方法は、電圧変動を抑制するための無効電力補償係数は、電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて算出されたものであり、即ち、本出願の無効電力係数の計算は、適用される電力網インピーダンスに直接関係するので、電力網インピーダンスが大きい弱い網に適用される場合であっても、電圧変動を根本的に抑制することができ、従来技術における弱い網の場合に抑制效果が限られる問題が解決される。
【0041】
本発明の別の実施例は、発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置をさらに提供し、図6を参照して、取得ユニット101、第1の算出ユニット102、第2の算出ユニット103、第3の算出ユニット104及び発行ユニット105を含み、その中、
取得ユニット101は、予め設定された条件を満たす場合、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得し、
第1の算出ユニット102は、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流に基づいて、電力網インピーダンスを算出し、
第2の算出ユニット103は、電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて、無効電力補償係数を算出し、
第3の算出ユニット104は、無効電力補償係数に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力を算出し、
発行ユニット105は、発電所の出力する必要がある無効電力を発電所内の各インバータに発行し、図6における破線は、当該発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置と各インバータとを接続する通信回線を表す。
【0042】
好ましくは、図7を参照して、取得ユニット101は、
予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の有効電力差分が第1の閾値よりも大きい場合、予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の電圧をそれぞれ、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧として、予め設定された時間内の2つの時点における発電所の共通接続点の電流をそれぞれ、有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電流とする自動取得ユニット201と、
発電所の共通接続点の有効電力が第2の閾値よりも大きい場合、発行ユニット105が制限コマンドを発電所内の各インバータに発行することによって、発電所の共通接続点の有効電力の変化差分を第1の閾値よりも大きくし、取得する入力情報に基づいて有効電力の変化前後の発電所の共通接続点の電圧及び電流を取得する手動取得ユニット202と、を含む。
【0043】
好ましくは、図7を参照して、第1の算出ユニット102は、
p1=Vd1+jVq1、Vp2=Vd2+jVq2、Ip1=Id1+jIq1、Ip2=Id2+jIq2及びα=[(Vd1-Vd2)×(Id1-Id2)+(Vq1-Vq2)×(Iq1-Iq2)]÷[(Vq1-Vq2)×(Id1-Id2)-(Vd1-Vd2)×(Iq1-Iq2)]に基づいて電力網インピーダンス角αを算出する第1のサブ算出ユニット301と、
r=α×(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)- (Iq1-Iq2)]に基づいて電力網インピーダンスrを算出する第2のサブ算出ユニット302と、
x=(Vd1-Vd2) ÷[α×(Id1-Id2)- (Iq1-Iq2)]に基づいて電力網インピーダンスxを算出する第3のサブ算出ユニット303と、を含み、
その中、Vp1は有効電力の変化前の発電所の共通接続点の電圧であり、Vp2は有効電力の変化後の発電所の共通接続点の電圧であり、Ip1は有効電力の変化前の発電所の共通接続点の電流であり、Ip2は有効電力の変化後の発電所の共通接続点の電流である。
【0044】
好ましくは、第2の算出ユニット103が電力網インピーダンスとリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧と有効電力との関係に基づいて無効電力補償係数を算出する際に、具体的に、
及び
に基づいて、無効電力補償係数Kを算出し、
その中、rとxは電力網インピーダンスであり、Pはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の有効電力であり、VPはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の電圧の絶対値である。
【0045】
好ましくは、第3の算出ユニット104が無効電力補償係数に基づいて発電所の出力する必要がある無効電力を算出する際に、具体的に、
に基づいて、発電所の出力する必要がある無効電力Qを算出し、
その中、Kは無効電力補償係数であり、Pはリアルタイムで取得する発電所の共通接続点の有効電力である。
【0046】
具体的な原理は、前述の実施例と同じであり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施例によって提供される当該発電所の共通接続点の電圧変動を抑制する装置は、従来技術における弱い網の場合に抑制效果が限られる問題を解決することができるだけでなく、論理が簡単であり、計算量が小さく、実現が容易である。
【0048】
本発明における各実施例は、漸進的に記載されており、各実施例は、主に他の実施例との相違点について説明し、各実施例の間の同じ又は類似の部分について、互いに参照すればよい。実施例に開示された装置は、実施例に開示された方法に対応するため、その説明は比較的簡単であり、関連部分はその説明を参照すればよい。
【0049】
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。本発明は、好ましい実施例によって以上のように説明したが、本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、本発明の技術的方案から逸脱することなく、上記の方法と技術内容を用いて、本発明の技術的方案に多くの可能な変形及び修正を加えることができ、又は、それらを同等の変形例に変更することができる。従って、本発明の技術的方案から逸脱することなく、本発明の技術的本質に基づく上記の実施例に対する任意の単純な改変、均等物、及び変形は全て、本発明の保護の範囲内に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7