特許第6682678号(P6682678)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6682678
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】草刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/64 20060101AFI20200406BHJP
   A01D 34/86 20060101ALI20200406BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20200406BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20200406BHJP
【FI】
   A01D34/64 M
   A01D34/86
   A01B69/00 303M
   G05D1/02 H
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-75713(P2019-75713)
(22)【出願日】2019年4月11日
【審査請求日】2019年11月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】南方 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 翔
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−017735(JP,A)
【文献】 特開2007−053974(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0013721(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/64
A01B 69/00
A01D 34/86
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に設けられた走行装置と、
前記機体に設けられた草刈装置と、
前記機体の姿勢として少なくとも当該機体のピッチ角を検出可能な姿勢検出装置と、
基準ラインに沿って前記機体が走行するように前記走行装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
少なくとも前記機体を前記基準ラインに沿って走行させる前に、前記走行装置を制御することで前記機体の向きを変える第1姿勢変更部であって、前記機体のピッチ角が予め定められた範囲に当該機体がある状態から、斜面の谷側及び山側のいずれかの方向に前記機体の向きを変更する第1姿勢変更部と、
前記第1姿勢変更部によって前記機体の向きを変更したときの前記姿勢検出装置で検出された複数のピッチ角に基づいて、前記機体が斜面に位置する場合の前記斜面の等高線を演算する等高線演算部と、
前記等高線演算部で演算された等高線を、前記基準ラインとして設定するライン設定部と、
前記ライン設定部で設定された前記基準ラインに沿って走行するように前記機体の向きを変更する第2姿勢変更部と、
を備え、
前記等高線演算部は、前記第1姿勢変更部によって前記機体の前部が所定位置から前記斜面の谷側及び山側のいずれかの方向に変更したときのピッチ角である第1ピッチ角と、前記第1姿勢変更部によって前記機体の前部を前記方向とは反対側に変更したときのピッチ角である第2ピッチ角とに基づいて、前記等高線を求めるものであって、前記第1ピッチ角は、前記機体の前部を前記所定位置よりも前記谷側に向けたときの角度であり、前記第2ピッチ角は、前記機体の前部を前記所定位置よりも前記山側に向けたときの角度であり、
さらに、前記等高線演算部は、前記機体の前部を前記第1ピッチ角に対応する位置である谷側から山側に向けて前記第2ピッチ角に達するまでの第1経過時間を保持し、前記機体の前部を前記第2ピッチ角に対応する位置である山側から谷側に向けて向きを変えたときの第2経過時間が前記第1経過時間の略半分を経過したときの前記機体2の方位と一致する線を前記等高線とする草刈機。
【請求項2】
前記第1姿勢変更部は、草刈が予め行われた位置で前記機体の向きを変更する請求項1に記載の草刈機。
【請求項3】
前記等高線演算部は、前記第2姿勢変更部によって前記機体が基準ラインに沿って走行しているときの機体のピッチ角に基づいて、前記等高線を補正する請求項1又は2に記載の草刈機。
【請求項4】
前記機体の位置を測定可能な測位装置を備え、
前記第2姿勢変更部は、前記測位装置で測定された前記機体の位置と前記基準ラインとの偏差が小さくなるように前記走行装置を制御する請求項1〜3のいずれかに記載の草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、斜面の草刈等を行うことができる草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、草刈機として特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1の草刈機は、機体を備え、機体には車輪、草刈装置及び受信機等が設けられており、遠隔操縦装置から受信機に操縦の信号を送信することによって機体の操縦を行いながら草刈を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−17269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の草刈機では、例えば、当該草刈機を斜面(法面)に設置して、オペレータが遠隔操縦装置を操作することによって、草刈機を法面で走行させながら草刈を行うことができる。このように傾斜している法面の草刈機を、遠隔操作(手動操作)によって、法面に沿ってさせながら草刈を行うことは難しいことがある。
そこで本発明は、上記課題に鑑み、斜面(法面)において簡単に草刈を行うことができる草刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の構成を達成するために以下の技術的手段を採用している。
草刈機は、機体と、前記機体に設けられた走行装置と、前記機体に設けられた草刈装置と、前記機体の姿勢として少なくとも当該機体のピッチ角を検出可能な姿勢検出装置と、基準ラインに沿って前記機体が走行するように前記走行装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、少なくとも前記機体を前記基準ラインに沿って走行させる前に、前記走行装置を制御することで前記機体の向きを変える第1姿勢変更部であって、前記機体のピッチ角が予め定められた範囲に当該機体がある状態から、斜面の谷側及び山側のいずれかの方向に前記機体の向きを変更する第1姿勢変更部と、前記第1姿勢変更部によって前記機体の向きを変更したときの前記姿勢検出装置で検出された複数のピッチ角に基づいて、前記機体が斜面に位置する場合の前記斜面の等高線を演算する等高線演算部と、前記等高線演算部で演算された等高線を、前記基準ラインとして設定するライン設定部と、前記ライン設定部で設定された前記基準ラインに沿って走行するように前記機体の向きを変更する第2姿勢変更部と、を備え、前記等高線演算部は、前記第1姿勢変更部によって前記機体の前部が所定位置から前記斜面の谷側及び山側のいずれかの方向に変更したときのピッチ角である第1ピッチ角と、前記第1姿勢変更部によって前記機体の前部を前記方向とは反対側に変更したときのピッチ角である第2ピッチ角とに基づいて、前記等高線を求めるものであって、前記第1ピッチ角は、前記機体の前部を前記所定位置よりも前記谷側に向けたときの角度であり、前記第2ピッチ角は、前記機体の前部を前記所定位置よりも前記山側に向けたときの角度であり、
さらに、前記等高線演算部は、前記機体の前部を前記第1ピッチ角に対応する位置である谷側から山側に向けて前記第2ピッチ角に達するまでの第1経過時間を保持し、前記機体の前部を前記第2ピッチ角に対応する位置である山側から谷側に向けて向きを変えたときの第2経過時間が前記第1経過時間の略半分を経過したときの前記機体2の方位と一致する線を前記等高線とする

【0006】
前記第1姿勢変更部は、前記機体のピッチ角が予め定められた範囲に当該機体がある状態から、前記斜面の谷側及び山側のいずれかの方向に前記機体の向きを変更し、前記等高線演算部は、前記機体の前部の向きを前記斜面の谷側及び山側のいずれかの方向に変更した場合の前記複数のピッチ角に基づいて、前記等高線を求める。
前記等高線演算部は、前記第1姿勢変更部によって前記機体の前部が所定位置から前記斜面の谷側及び山側のいずれかの方向に変更したときのピッチ角である第1ピッチ角と、前記第1姿勢変更部によって前記機体の前部を前記方向とは反対側に変更したときのピッチ角である第2ピッチ角とに基づいて、前記等高線を求める。
【0007】
前記第1ピッチ角は、前記機体の前部を前記所定位置よりも前記谷側に向けたときの角度であり、前記第2ピッチ角は、前記機体の前部を前記所定位置よりも前記山側に向けたときの角度であり、前記等高線演算部は、前記機体の前部を前記第1ピッチ角に対応する位置である谷側から山側に向けて前記第2ピッチ角に達するまでの第1経過時間を保持し、前記機体の前部を前記第2ピッチ角に対応する位置である山側から谷側に向けて向きを変えたときの第2経過時間が前記第1経過時間の略半分を経過したときの機体2の方位と一致する線を前記等高線とする。
【0008】
前記第1姿勢変更部は、草刈が予め行われた位置で前記機体の向きを変更する。
前記等高線演算部は、前記第2姿勢変更部によって前記機体が基準ラインに沿って走行しているときの前記ピッチ角に基づいて、前記等高線を補正する。
草刈機は、前記機体の位置を測定可能な測位装置を備え、前記第2姿勢変更部は、前記測位装置で測定された前記機体の位置と前記基準ラインとの偏差が小さくなるように前記走行装置を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、斜面(法面)において簡単に草刈を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】作業機の制御システムを示す図である。
図2】各種モードを示す図である。
図3】アシスト制御を説明する説明図である。
図4】等高線J1の設定及び等高線J1に沿って草刈を行う流れを示す図である。
図5】第1姿勢変更部31における機体の姿勢変更の流れを示す図である。
図6】草刈機(機体)の姿勢変更の状態を示す図である。
図7】草刈機の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図7は、草刈機の概略図を示している。
図7に示すように、草刈機1は、機体2と、走行装置3と、草刈装置4と、原動機5とを備えている。走行装置3は、機体2の左側及び右側に設けられた一対のクローラ装置3L、3Rを有している。
【0012】
草刈装置4は、原動機5の動力によって駆動可能であり、例えば、原動機5の動力により駆動して草刈を行う。草刈装置4は、機体2等に回転自在に支持された回転軸10と、回転軸10に設けられた刈刃(カッター)11とを有している。
原動機5は、動力を発生する機械であって、少なくとも電力によって駆動する電動モータである。なお、原動機5は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関と電動モータとを有するハイブリッド型であってもよい。
【0013】
原動機5は、走行装置3に動力を伝達する第1電動モータ8と、草刈装置4に動力を伝達する第2電動モータ9とを含んでいる。第1電動モータ8は、左側のクローラ装置3Lに動力を伝達する左モータ8Lと、右側のクローラ装置3Rに動力を伝達する右モータ8Rとを含んでおり、クローラ装置3Lとクローラ装置3Rとを独立して駆動回転可能である。第2電動モータ9は、回転軸10に接続されて、回転軸10を回転させる。
【0014】
草刈機1は、原動機5に電力を供給可能な蓄電装置15を備えている。蓄電装置15は、第1電動モータ8(左モータ8L、右モータ8R)及び第2電動モータ9にインバータ16(図1参照)を介して電力を供給する。
図1は、草刈機1における制御システムを示している。
図1に示すように、草刈機1は、測位装置20と、姿勢検出装置21と、無線機(通信機)22とを備えている。測位装置20、姿勢検出装置21及び無線機22は、機体2に設けられている。
【0015】
測位装置20は、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、機体(自己)の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。例えば、測位装置20は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて位置(例えば、緯度、経度)を検出する。
【0016】
姿勢検出装置21は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を含んでいる。慣性計測装置は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等により構成されている。姿勢検出装置21、即ち、慣性計測装置によって、機体2のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
無線機22は、様々な外部機器からの信号を受信可能である。この実施形態では、外部機器は、遠隔操作を行うことができる遠隔操縦装置23である。無線機22は、遠隔操縦装置23から送信された操縦信号、操縦信号とは異なる制御信号を無線によって受信する。遠隔操縦装置23は、前進又は後進の指令をする第1操作レバー23Aと、左旋回(左操舵)又は右旋回(右操舵)の指令をする第2操作レバー23Bとを含んでいる。
【0017】
第1操作レバー23Aを操作することにより前進又は後進の指令が行われると、遠隔操縦装置23は、操作信号として、機体2の前進を示す前進信号、機体2の後進を示す後進信号を出力し、無線機22は、前進信号、後進信号を受信する。また、第2操作レバー23Bを操作することにより左旋回又は右旋回の指令が行われると、遠隔操縦装置23は、操作信号として、機体2の左旋回を示す左旋回信号、機体2の右旋回を示す右旋回信号を出力し、無線機22は、左旋回信号、右旋回信号を受信する。
【0018】
また、遠隔操縦装置23は、草刈スイッチ23Cと、モードスイッチ23Dとを有している。草刈スイッチ23Cは、ON/OFFの切換スイッチである。遠隔操縦装置23は、草刈スイッチ23CがONである場合、制御信号として、草刈を開始する草刈開始信号を出力し、草刈スイッチ23CがOFFである場合、制御信号として、草刈を終了する草刈終了信号を出力する。無線機22は、草刈開始信号、草刈終了信号を受信する。
【0019】
モードスイッチ23Dは、手動操作モード(ラジコンモード)、アシストモード、スイッチバックモードに切り換えることができるスイッチである。遠隔操縦装置23は、モードスイッチ23Dの操作に応じて、ラジコンモード、アシストモード、スイッチバックモードを示す信号を制御信号として出力し、無線機22は、モード(ラジコンモード、アシストモード、スイッチバックモード)を示す信号を受信する。
【0020】
草刈機1は、制御装置25を備えている。制御装置25は、草刈機1における様々な制御を行う。
図2に示すように、制御装置25は、無線機22がラジコンモードを受信した場合、ラジコン制御を実行し、無線機22がアシストモードを受信した場合、アシスト制御等を実行し、無線機22がスイッチバックモードを受信した場合、スイッチバック制御を実行する。
【0021】
制御装置25は、ラジコン制御においては、遠隔操縦装置23から送信された操作信号(前進信号、後進信号、左旋回信号、右旋回信号)に応じて、機体2(走行装置3)の操縦を行う。
具体的には、無線機22が前進信号を受信した場合、制御装置25は、左モータ8L及び右モータ8Rを正転(クローラ装置3L、3Rを正転)させることで機体2を前進させる。無線機22が後進信号を受信した場合、制御装置25は、左モータ8L及び右モータ8Rを逆転(クローラ装置3L、3Rを逆転)させることで機体2を後進させる。また、無線機22が左旋回信号を受信した場合、制御装置25は、左モータ8Lの回転数よりも右モータ8Rの回転数を大きくする(クローラ装置3Lの回転数よりもクローラ装置3Rの回転数を大きくする)ことによって機体2を左旋回(左操舵)させる。また、無線機22が右旋回信号を受信した場合、制御装置25は、右モータ8Rの回転数よりも左モータ8Lの回転数を大きくする(クローラ装置3Rの回転数よりもクローラ装置3Lの回転数を大きくする)ことによって機体2を右旋回(右操舵)させる。
【0022】
図2に示すように、制御装置25は、アシストモードにおいては、等高線J1の設定が行われている場合は、アシスト制御を実行し、等高線J1が設定されていない場合は等高線演算制御を実行する。
図3に示すように、アシスト制御では、基準ラインR1に沿って機体2が走行するように走行装置3を制御する。具体的には、測位装置20によって検出された機体の位置(機体位置)P1が、基準ラインR1とズレている場合、ズレを解消する方向に機体2(走行装置3)を左又は右に旋回(操舵)する。即ち、制御装置25は、機体位置P1と基準ラインR1との位置偏差ΔL1が小さくなるように、機体2(走行装置3)の向きを変える。なお、アシストモード制御において、機体2(走行装置3)の進行方向の方位と、基準ラインR1の方位とが一致するように、機体2(走行装置3)の向きを変えてもよい。
【0023】
等高線演算制御は、後述するように、斜面50において、機体2の向きを変更することにより斜面50の等高線を求める。
制御装置25は、スイッチバック制御においては、複数の基準ラインR1が設定されている場合に、機体2を、刈取り(走行)を完了した基準ラインR1から、刈取り(走行)をしていない基準ラインR1に移動させる。
【0024】
さて、斜面(法面)50において、草刈を行うにあたっては、草刈機1は等高線J1に沿って草刈を行うことが可能である。図4は、等高線J1の設定及び等高線J1に沿って草刈を行う流れを示している。
図4に示すように、まず、制御装置25をラジコンモードに設定して、オペレータが草刈機1を操作して、草刈機1を斜面50の山側(上側)に移動させる(S1)。草刈機1を斜面の山側に移動した後は、法面50において一部のエリアの草刈をオペレータの操作等によって行い、草刈を完了した(草刈済エリア)A1を形成する(S2)。草刈済エリアA1において、草刈機1(機体2)の前部の向きを、斜面50の谷側及び山側のいずれかの方向に向きを変更する(S3:姿勢変更動作)。姿勢変更動作S3を行ったときの姿勢検出装置21で検出した複数のピッチ角θを用いて、等高線J1を演算する(S4:等高線演算)。等高線J1を、基準ラインR1に設定する(S5)。設定した基準ラインR1(等高線J1)に沿うように、草刈機1を走行させながら草刈を行う(S6)。
【0025】
次に、等高線J1の演算について詳しく説明する。
図1に示すように、制御装置25は、第1姿勢変更部31と、等高線演算部32とを備えている。第1姿勢変更部31、等高線演算部32は、制御装置25に設けられた電気・電子部品、当該制御装置25に格納されたプログラム等から構成されている。
第1姿勢変更部31は、少なくとも機体2を基準ラインR1に沿って走行させる前、即ち、草刈済エリアA1に機体2が位置している場合に、走行装置3を制御することで機体2の向きを変える。具体的には、第1姿勢変更部31は、左モータ8L及び右モータ8Rを駆動することによって、機体2の姿勢を変更する。
【0026】
図5は、第1姿勢変更部31における機体の姿勢変更の流れを示し、図6は、機体の姿勢変更の状態を示している。
図5に示すように、草刈機1が草刈済エリアA1に置かれている状態において、第1姿勢変更部31は、現在の草刈機1のピッチ角θ(現在ピッチ角θ)を参照し、参照した現在ピッチ角θが、予め定められた範囲(±α°(deg))であるか否かを判断する(S10)。現在ピッチ角θが±α°(deg)以内であれば、図6に示すように、第1姿勢変更部31は、現在の草刈機1の位置を所定位置P10に設定し(S11)、現在ピッチ角θが±α°(deg)以内でなければ、クローラ装置3L、3Rのいずれかを駆動させることにより草刈機1の向きを変えることで、現在ピッチ角θが±α°(deg)に入る所定位置P10を設定する(S12)。
【0027】
所定位置P10の設定が完了すると、第1姿勢変更部31は、草刈機1を所定位置P10に停止させた状態からクローラ装置3L、3Rを駆動させることにより、草刈機1の前部の向きを斜面50の谷側に向ける(S13)。第1姿勢変更部31は、草刈機1を谷側に向ける際に、ピッチ角θを参照し、当該ピッチ角θが、予め設定された1番目のピッチ角θβ(第1ピッチ角θβ)に達した谷側位置(第1位置)P11にて、谷側への向きの変更を停止する。
【0028】
そして、第1姿勢変更部31は、草刈機1を谷側位置(第1位置)P11に停止させた状態から、クローラ装置3L、3Rを駆動させることにより、草刈機1の前部の向きを斜面50の谷側から山側に向ける(S14)。第1姿勢変更部31は、草刈機1を谷側から山側に向ける際に、ピッチ角θを参照し、当該ピッチ角θが、予め設定された2番目のピッチ角θγ(第2ピッチ角θγ)に達した山側位置(第2位置)P12にて、山側への向きの変更を停止する。なお、第2ピッチ角θγは、第1ピッチ角θβを絶対値換算で2倍にした値である(第2ピッチ角θγ=第1ピッチ角θβ×2)。また、S14において、後述するように、等高線演算部32は、草刈機1を谷側位置(第1位置)P11から山側位置(第2位置)P12に向けるまでの経過時間(第1経過時間)T1を計測する。
【0029】
第1姿勢変更部31は、草刈機1を山側位置(第2位置)P12に停止させた状態から、クローラ装置3L、3Rを駆動させることにより、草刈機1の前部の向きを再び、斜面50の谷側に向ける(S15)。
第1姿勢変更部31は、草刈機1を再び山側から谷側に向ける際は、山側位置(第2位置)P12からの向きの変更を開始してから所定時間(第2経過時間)T2が経過したとき、草刈機1の向きの変更を停止する。第2経過時間T2は、第1経過時間T1(第1位置)P11から第2位置P12に向けるまでに係った時間)の略半分である。なお、上述したS13〜S15において、第1姿勢変更部31によって、機体2を山側及び谷側に向きを変える場合、即ち、姿勢変更を行う場合の左モータ8L、右モータ8Rの回転速度の割合を一定(同じ)にすることが好ましい。即ち、第1姿勢変更部31は、草刈機1を左旋回するときの左モータ8L及び右モータ8Rの回転速度の割合と、草刈機1を右旋回するときの左モータ8L及び右モータ8Rの回転速度の割合とを同じにする。言い換えれば、左旋回するときの左モータ8L及び右モータ8Rのそれぞれの回転速度と、右旋回するときの左モータ8L及び右モータ8Rのそれぞれの回転速度とを同じにする。
【0030】
このように、第1姿勢変更部31は、機体2を基準ラインR1に沿って走行させる前において、草刈機1の前部を山側及び谷側に向ける制御を行う。なお、上述した実施形態では、第1姿勢変更部31は、草刈機1を所定位置P10から谷側に向けた後、山側に向け、続いて、山側から谷側に向きをかえていたが、これに限定されず、例えば、草刈機1を所定位置P10から山側に向けた後、谷側に向け、続いて、谷側から山側に向きを変えてもよいし、山側及び谷側に向ける手順は限定されない。
【0031】
等高線演算部32は、第1姿勢変更部31によって機体2の向きを変更したときの複数のピッチ角θ、即ち、機体2の前部の向きを斜面50の谷側及び山側のいずれかの方向に変更した場合の複数のピッチ角θに基づいて、機体2が斜面50に位置する場合の等高線J1を演算する。
具体的には、等高線演算部32は、第1姿勢変更部31によって機体2の前部が所定位置P10から斜面50の谷側及び山側のいずれかの方向に変更したときの第1ピッチ角(1番目のピッチ角)θβと、第1姿勢変更部31によって機体2の前部を方向とは反対側に変更したときの第2ピッチ角(2番目のピッチ角)θγとに基づいて、等高線J1を求める。上述したように、この実施形態では、第1ピッチ角θβは、機体2の前部を所定位置P10よりも谷側に向けたときの角度であり、第2ピッチ角θγは、機体の前部を所定位置P10よりも山側に向けたときの角度である。
【0032】
等高線演算部32は、第1姿勢変更部31によって第1ピッチ角θβに対応する谷側位置(第1位置P11)から、第2ピッチ角θγに対応する山側位置(第2位置P12)に達するまでの第1経過時間T1を保持し、機体2の前部を山側位置(第2位置P12)から再び、谷側に向けて向きを変えたときの第2経過時間T2が第1経過時間T1の略半分に達したときの機体2の方位に一致する線L20を等高線J1とする。即ち、図6のS15に示すように、機体2の前部を山側位置(第2位置P12)から谷側へ向けた場合において、機体2の前部の向きの変更を開始してからの経過時間が、第1経過時間T1の略半分である第2経過時間T2に達したときの機体2の幅方向中心を通る機体ラインL21の延長線上である線L20を等高線J1とする。
【0033】
以上のように、等高線演算部32によれば、第1姿勢変更部31によって機体2の向きを変えたときのピッチ角θに基づいて、等高線J1を求めることができる。
制御装置25は、ライン設定部33と、第2姿勢変更部34とを備えている。ライン設定部33、第2姿勢変更部34は、制御装置25に設けられた電気・電子部品、当該制御装置25に格納されたプログラム等から構成されている。
【0034】
ライン設定部33は、等高線演算部32で演算された等高線J1を、基準ラインR1として設定する。また、ライン設定部33は、斜面50において、当該斜面50に沿った複数の基準ラインR1を設定する。第2姿勢変更部34は、ライン設定部33で設定された基準ラインR1に沿って走行するように、機体2の向きを変更する。第2姿勢変更部34は、アシストモード制御を実行することで、機体2を基準ラインR1に沿って走行させる。
【0035】
なお、第2姿勢変更部34によって走行中に、等高線演算部32は等高線J1を補正してもよい。例えば、等高線演算部32は、機体2の前部を山側位置(第2位置P12)から谷側へ向けた場合において、機体2の前部の向きの変更を開始してからの経過時間が、第1経過時間T1の略半分である第2経過時間T2に達したときのピッチ角θ、即ち、等高線J1を設定したときのピッチ角θ(等高ピッチ角θ)を保持しておく。機体2の走行時におけるピッチ角θ(走行ピッチ角θ)が、予め定められた閾値よりも大きくなる場合、等高線演算部32は、等高線J1の補正が必要と判断する。等高線演算部32は、走行ピッチ角θが等高ピッチ角θに対してマイナス側である場合は、等高線J1の向きを山側に補正し、走行ピッチ角θが等高ピッチ角θに対してプラス側である場合は、等高線J1の向きを谷側に補正する。
【0036】
草刈機1は、機体2と、走行装置3と、草刈装置4と、機体2の姿勢として少なくとも当該機体2のピッチ角を検出可能な姿勢検出装置21と、基準ラインR1に沿って機体2が走行するように走行装置3を制御する制御装置25と、を備え、制御装置25は、少なくとも機体2を基準ラインR1に沿って走行させる前に、走行装置3を制御することで機体2の向きを変える第1姿勢変更部31と、第1姿勢変更部31によって機体2の向きを変更したときの姿勢検出装置23で検出された複数のピッチ角θに基づいて、機体2が斜面50に位置する場合の斜面50の等高線J1を演算する等高線演算部32と、等高線演算部32で演算された等高線J1を、基準ラインR1として設定するライン設定部33と、ライン設定部33で設定された基準ラインR1に沿って走行するように機体2の向きを変更する第2姿勢変更部34と、を備えている。これによれば、例えば、斜面(法面)50に沿って草刈を行う場合に、等高線に対応する基準ラインR1を求めた後に、等高線に沿って簡単に草刈を行うことができる。
【0037】
第1姿勢変更部31は、機体2のピッチ角θが予め定められた範囲に当該機体2がある状態から、斜面50の谷側及び山側のいずれかの方向に機体2の向きを変更し、等高線演算部32は、機体2の前部の向きを斜面50の谷側及び山側のいずれかの方向に変更した場合の複数のピッチ角θに基づいて、等高線J1を求める。これによれば、機体2の向きを山側及び谷側に変更したときの複数のピッチ角θから簡単に等高線J1を求めることができる。
【0038】
等高線演算部32は、第1姿勢変更部31によって機体2の前部が所定位置から斜面50の谷側及び山側のいずれかの方向に変更したときのピッチ角θである第1ピッチ角θと、第1姿勢変更部31によって機体2の前部を方向とは反対側に変更したときのピッチ角θである第2ピッチ角θとに基づいて、等高線J1を求める。例えば、斜面(法面)50において、機体2の前部を谷側に向けた場合と、機体2を山側に向けた場合とでは、第1ピッチ角θ及び第2ピッチ角θのそれぞれが変化することになるため、第1ピッチ角θ及び第2ピッチ角θの両者から簡単に等高線J1を求めることができる。
【0039】
第1ピッチ角θは、機体2の前部を所定位置よりも谷側に向けたときの角度であり、第2ピッチ角θは、機体2の前部を所定位置よりも山側に向けたときの角度であり、等高線演算部32は、機体2の前部を第1ピッチ角θに対応する位置である谷側から山側に向けて第2ピッチ角θに達するまでの第1経過時間を保持し、機体2の前部を第2ピッチ角θに対応する位置である山側から谷側に向けて向きを変えたときの第2経過時間が第1経過時間の略半分を経過したときの機体2の方位と一致する線を等高線J1とする。例えば、機体2のピッチ角θが零であるときの位置が等高線J1であると仮定した場合、機体2のピッチ角θが零である位置を求めることによって等高線J1の位置を把握することができるものの、実際には、ピッチ角θが零である位置が等高線J1と一致しない場合もあることから、機体2を谷側から山側に向けて第2ピッチ角θに達するまでの第1経過時間を計測しておいたうえで、機体2を山側から谷側に向けて向きを変えたときの第2経過時間が第1経過時間の略半分を経過したときの位置により、比較的正確な等高線J1を求めることができる。
【0040】
第1姿勢変更部31は、草刈が予め行われた位置で機体2の向きを変更する。これによれば、機体2の向きを変えやすくなり、精度よい等高線J1を求めることができる。
等高線演算部32は、第2姿勢変更部34によって機体2が基準ラインR1に沿って走行しているときの機体2のピッチ角θに基づいて、等高線J1を補正する。これによれば、等高線J1を補正しているため、最初に求めた等高線J1に誤差があったとしても比較的、法面50に沿って草刈を行うことができる。
【0041】
草刈機1は、機体2の位置を測定可能な測位装置20を備え、第2姿勢変更部34は、測位装置20で測定された機体2の位置と基準ラインR1との偏差が小さくなるように走行装置3を制御する。これによれば、機体2を基準ラインR1に沿って移動しながら簡単に草刈を行うことができる。
なお、上述した実施形態では、機体2の向きを谷側及び山側に向けた場合における時間に基づいて等高線J1を求めていたが、例えば、複数回にわたって、機体2の向きを谷側及び山側に向けたときのピッチ角θが所定角度、例えば、ピッチ角θが零度になったときの位置を平均化することで、等高線J1を求めてもよい。
【0042】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1 :草刈機
2 :機体
3 :走行装置
4 :草刈装置
5 :原動機
8 :第1電動モータ
9 :第2電動モータ
10 :回転軸
20 :測位装置
21 :姿勢検出装置
22 :無線機
23 :遠隔操縦装置
25 :制御装置
31 :第1姿勢変更部
32 :等高線演算部
33 :ライン設定部
34 :第2姿勢変更部
50 :斜面(法面)
J1 :等高線
R1 :基準ライン
R1a :基準ライン
R1b :基準ライン
T1 :第1経過時間
T2 :第2経過時間
ΔL1 :位置偏差
【要約】
【課題】斜面(法面)において簡単に草刈を行うことができるようにする。
【解決手段】草刈機は、機体と、機体に設けられた走行装置と、機体に設けられた草刈装置と、機体の姿勢として少なくとも当該機体のピッチ角を検出可能な姿勢検出装置と、基準ラインに沿って機体が走行するように走行装置を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、少なくとも機体を基準ラインに沿って走行させる前に、走行装置を制御することで機体の向きを変える第1姿勢変更部と、第1姿勢変更部によって機体の向きを変更したときの姿勢検出装置で検出された複数のピッチ角に基づいて、機体が斜面に位置する場合の斜面の等高線を演算する等高線演算部と、等高線演算部で演算された等高線を、基準ラインとして設定するライン設定部と、ライン設定部で設定された基準ラインに沿って走行するように機体の向きを変更する第2姿勢変更部と、を備えている。
【選択図】図1
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図7