特許第6682700号(P6682700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682700
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】密栓装置及び密栓方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/00 20060101AFI20200406BHJP
   F16L 41/06 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   F16L55/00 S
   F16L55/00 C
   F16L41/06
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-505587(P2019-505587)
(86)(22)【出願日】2017年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2017010425
(87)【国際公開番号】WO2018167874
(87)【国際公開日】20180920
【審査請求日】2019年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀川 剛
(72)【発明者】
【氏名】東 修平
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−113489(JP,A)
【文献】 特開2002−087328(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3035600(JP,U)
【文献】 特開2001−139053(JP,A)
【文献】 特開2017−141847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/00
F16L 55/11−55/115
F16L 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管の側面に設けられた穿孔口に装着される密栓装置において、
栓本体に固着されたシールゴムが、
前方に向かって内周側へ傾斜した外周面を有し、前記穿孔口の周縁に沿って延びている内リップと、
前記内リップの外周側に形成されており、前記穿孔口の外面側エッジが入り込むスリットと、
前記内リップの外周側に前記スリットを介して形成されており、外周側に拡がり変形して前記穿孔口の周縁の外面に密着する外リップと、を有し、
前記シールゴムが、前記外リップの後方に配置され且つ前記外リップよりも硬いゴムで形成された背面ゴムを有することを特徴とする密栓装置。
【請求項2】
流体管の側面に設けられた穿孔口に装着される密栓装置において、
栓本体に固着されたシールゴムが、
前方に向かって内周側へ傾斜した外周面を有し、前記穿孔口の周縁に沿って延びている内リップと、
前記内リップの外周側に形成されており、前記穿孔口の外面側エッジが入り込むスリットと、
前記内リップの外周側に前記スリットを介して形成されており、外周側に拡がり変形して前記穿孔口の周縁の外面に密着する外リップと、を有し、
前記流体管の管軸方向から見たときに、前記外リップが前記内リップよりも前方に突出していることを特徴とする密栓装置。
【請求項3】
前記シールゴムが、前記内リップの内周側に形成された凹溝を有する請求項1又は2に記載の密栓装置。
【請求項4】
前記シールゴムの外周面が、装着方向に対して傾斜した傾斜面により形成されている請求項1〜3いずれか1項に記載の密栓装置。
【請求項5】
前記栓本体の側面がゴムライニングされている請求項1〜いずれか1項に記載の密栓装置。
【請求項6】
流体管の側面に設けられた穿孔口に密栓装置を装着する密栓方法において、
内リップと外リップを有するシールゴムが栓本体に固着された密栓装置を前記穿孔口に押し当て、前方に向かって内周側へ傾斜した外周面を有する前記内リップを前記穿孔口に挿入するとともに、前記内リップと前記外リップとの間に形成されたスリットに前記穿孔口の外面側エッジを入り込ませ、前記外リップを外周側に拡がり変形させて前記穿孔口の周縁の外面に密着させ、
前記シールゴムが、前記外リップの後方に配置され且つ前記外リップよりも硬いゴムで形成された背面ゴムを有することを特徴とする密栓方法。
【請求項7】
流体管の側面に設けられた穿孔口に密栓装置を装着する密栓方法において、
内リップと外リップを有するシールゴムが栓本体に固着された密栓装置を前記穿孔口に押し当て、前方に向かって内周側へ傾斜した外周面を有する前記内リップを前記穿孔口に挿入するとともに、前記内リップと前記外リップとの間に形成されたスリットに前記穿孔口の外面側エッジを入り込ませ、前記外リップを外周側に拡がり変形させて前記穿孔口の周縁の外面に密着させ
前記流体管の管軸方向から見たときに、前記外リップが前記内リップよりも前方に突出していることを特徴とする密栓方法。
【請求項8】
前記内リップによって前記穿孔口の端面の全体を覆う請求項6又は7に記載の密栓方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管の側面に設けられた穿孔口を密栓するための密栓装置と密栓方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の水道管(流体管の一例)を更新する工事では、水道水の利用者に対する利便性を考慮し、通水状態を保持しながら施工できる不断水工法が有用である。不断水工法としては、既設の水道管の途中に仕切弁を介して分岐管を接続し、それによりバイパスを形成する手法が知られている。従来、かかる手法を用いた工事では、施工後に分岐管を撤去するに際して仕切弁を残置させていたため、将来同じ場所を掘削したときに重機で仕切弁を引っ掛けてしまう恐れがあった。
【0003】
それ故、上記のような工事では、分岐管だけでなく仕切弁も撤去することが好ましく、そのためには通水状態を保持しながら密栓を施す必要があった。特許文献1,2では、通水状態を保持したままT字管の分岐部を密栓して、分岐管を仕切弁ごと撤去する手法が開示されている。これらの手法によれば、簡便に且つ確実に密栓できるものの、T字管の分岐部の内面にバヨネット溝を設ける必要があるため、汎用性に優れているとは言えない。
【0004】
特許文献3には、流体管の側面に設けられた穿孔口を密栓するための密栓装置が記載されているが、コスト低減の観点などから、より簡易な構造の密栓装置が望まれる場合があった。また、穿孔口が多少の位置ずれを生じて設けられることがあるため、穿孔口を密栓する作業では、装着時の密栓装置の位置決め、特に芯出し(中心位置の調整)がシビアになりがちであるとともに、装着した密栓装置を固定する際に位置ずれを生じないことも求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−96241号公報
【特許文献2】特開2010−117029号公報
【特許文献3】特開2014−134223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構造を有しながら、装着時の位置決めや位置ずれ防止を可能とした穿孔口の密栓装置及び密栓方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る密栓装置は、流体管の側面に設けられた穿孔口に装着される密栓装置において、栓本体に固着されたシールゴムが、前方に向かって内周側へ傾斜した外周面を有し、前記穿孔口の周縁に沿って延びている内リップと、前記内リップの外周側に形成されており、前記穿孔口の外面側エッジが入り込むスリットと、前記内リップの外周側に前記スリットを介して形成されており、外周側に拡がり変形して前記穿孔口の周縁の外面に密着する外リップと、を有するものである。
【0008】
この密栓装置では、シールゴムのスリットに穿孔口の外面側エッジが入り込むので、そのスリットの内周側に形成された内リップが穿孔口に挿入され、スリットの外周側に形成された外リップは穿孔口の周縁の外面に密着する。また、穿孔口の外面側エッジをスリットに入り込ませた密栓装置が穿孔口に強く押し当てられると、穿孔口の端面側に内リップが寄せられ、それにより穿孔口の端面とその穿孔口の周縁の外面とがシールゴムによって密封され得る。
【0009】
内リップの外周面が前方に向かって内周側へ傾斜しているため、穿孔口が多少の位置ずれを生じて設けられていても内リップが適切に挿入され、その結果、穿孔口に対する穿孔装置の芯出し(中心位置の調整)が行われる。それでいて、内リップと外リップとが穿孔口の外面側エッジを挟み込むようにして配置されるので、装着した密栓装置を固定する際の位置ずれを防止することができる。よって、この密栓装置によれば、簡易な構造を有しながら、装着時の位置決めや位置ずれ防止が可能となる。
【0010】
前記シールゴムが、前記内リップの内周側に形成された凹溝を有することが好ましい。これによって内リップが内周側に逃げるスペースが形成され、穿孔口の周縁の外面と外リップとの間で内リップが挟まれることなく、穿孔口に内リップを適切に挿入できる。このことは、穿孔口が多少の位置ずれを生じて設けられている場合において特に有用である。
【0011】
前記シールゴムが、前記外リップの後方に配置され且つ前記外リップよりも硬いゴムで形成された背面ゴムを有することが好ましい。これにより、穿孔口の周縁の外面に対して外リップが十分に押し当てられるとともに、シールゴムに水圧が作用しても外リップの形状が崩れにくくなって密封性能が高められる。
【0012】
前記シールゴムの外周面が、装着方向に対して傾斜した傾斜面により形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、管内を通じて密栓装置を穿孔口に接近させる際に、その管内との接触抵抗を小さくして作業性を高めることができる。
【0013】
前記流体管の管軸方向から見たときに、前記外リップが前記内リップよりも前方に大きく突出していることが好ましく、それにより密封性能が高められる。
【0014】
栓本体の側面がゴムライニングされていることが好ましい。かかる構成によれば、密栓装置を穿孔口に強く押し当てたときに、拡がり変形した外リップが裏返ることを防いで、密封性能を適切に発揮することができる。
【0015】
また、本発明に係る密栓方法は、流体管の側面に設けられた穿孔口に密栓装置を装着する密栓方法において、内リップと外リップを有するシールゴムが栓本体に固着された密栓装置を前記穿孔口に押し当て、前方に向かって内周側へ傾斜した外周面を有する前記内リップを前記穿孔口に挿入するとともに、前記内リップと前記外リップとの間に形成されたスリットに前記穿孔口の外面側エッジを入り込ませ、前記外リップを外周側に拡がり変形させて前記穿孔口の周縁の外面に密着させるものである。
【0016】
この密栓方法では、シールゴムのスリットに穿孔口の外面側エッジを入り込ませるとともに、そのスリットの内周側に形成された内リップを穿孔口に挿入し、スリットの外周側に形成された外リップを穿孔口の周縁の外面に密着させる。また、穿孔口の外面側エッジをスリットに入り込ませた密栓装置が穿孔口に強く押し当てられると、穿孔口の端面側に内リップが寄せられ、それにより穿孔口の端面とその穿孔口の周縁の外面とがシールゴムによって密封され得る。
【0017】
内リップの外周面が前方に向かって内周側へ傾斜しているため、穿孔口が多少の位置ずれを生じて設けられていても内リップが適切に挿入され、その結果、穿孔口に対する穿孔装置の芯出し(中心位置の調整)が行われる。それでいて、内リップと外リップとが穿孔口の外面側エッジを挟み込むようにして配置されるため、装着した密栓装置を固定する際の位置ずれを防止することができる。よって、この密栓方法によれば、密栓装置が簡易な構造を有しながらも、装着時の位置決めや位置ずれ防止が可能となる。
【0018】
前記内リップによって前記穿孔口の端面の全体を覆う場合には、密栓装置のシールゴムによって穿孔口の端面を防食することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】穿孔口に密栓装置を装着する前の状態を示す断面図
図2】穿孔口に密栓装置を押し当てた状態を示す断面図
図3】密栓装置の(a)平面、(b)正面視半断面、及び、(c)側面視半断面を示す三面図
図4】密栓装置の要部を示す(a)正面視断面図と(b)側面視断面図
図5】密栓装置を穿孔口に押し当てたときの要部を拡大して示す断面図
図6】別実施形態における密栓装置の要部を示す(a)正面視断面図と(b)側面視断面図
図7図6の密栓装置を穿孔口に押し当てたときの要部を拡大して示す断面図
図8】別実施形態における密栓装置の要部を示す(a)正面視断面図と(b)側面視断面図
図9図8の密栓装置を穿孔口に押し当てたときの要部を拡大して示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、流体管の一例である水道管の側面に設けられた穿孔口に密栓装置を装着する例を示す。
【0021】
図1に示した水道管1は管路の一部を構成し、その周囲が割りT字管11によって取り囲まれている。水道管1の側面には穿孔口10が設けられており、上方に向けて開口している。この穿孔口10は、不断水工法によって設けられたものであり、より具体的には、仕切弁12を介して接続されていた分岐管によりバイパスを形成する過程で穿設されたものである。図1では、既に所要の作業(例えば、水道管の更新)を終えて分岐管を撤去した段階にあり、これから通水状態を保持したまま穿孔口10に密栓を施して仕切弁12の撤去作業を行う。
【0022】
割りT字管11には仕切弁12が接続され、その仕切弁12の端部は蓋部材14によって密閉されている。密栓装置2は、操作具3の先端に取り付けられた状態で、仕切弁12の内部に配置されている。操作具3は、密栓装置2を装着方向に沿って変位自在に構成されている。本明細書において、装着方向は、密栓装置2を装着するための移動方向、即ち図1における上下方向を指し、前方及び後方は、それぞれ装着方向の前方及び後方、即ち図1における下方及び上方を指す。
【0023】
操作具3は、ハンドル31の操作を介して回転される固定軸32と、蓋部材14を貫通して摺動可能に支持された可動軸33とを備え、固定軸32の回転に応じて可動軸33が上下動するように構成されている。可動軸33は、筒体33aと、その筒体33aに挿入された中軸33bとを有する。筒体33aから突出した中軸33bの前方端部には雄ねじが形成され、密栓装置2に螺合されている。この操作具3によって、図2に示すように密栓装置2を穿孔口10に押し当てることができる。
【0024】
穿孔口10は、穿孔時の振動に起因して割りT字管11の分岐部や仕切弁12に対する芯ずれ(中心位置のずれ)を起こすなど、多少の位置ずれを生じて設けられることがある。それ故、装着時の密栓装置2の位置決め、特に芯出し(中心位置の調整)がシビアになりがちである。特に、この密栓装置2は、穿孔口10を通じて水道管1の内部に進入するものではなく、穿孔口10の表面に押し当たって止水する形式であるため、芯出しがよりシビアになる。また、密栓装置2を固定する際に位置ずれを生じないことも求められる。そこで、装着時の位置決めや位置ずれ防止を可能とするべく、密栓装置2を下記の如き構成にしている。
【0025】
図3は、密栓装置2の三面図である。図3(b),(c)の半断面は、それぞれA−A,B−B矢視の半断面に相当する。図4(a),(b)は、それぞれ図3のX部,Y部の拡大図である。密栓装置2は、栓本体4と、その栓本体4に固着されたシールゴム5とを備え、全体として前方表面が湾曲した円盤状に形成されている。栓本体4は、金属などの剛性体により形成され、シールゴム5は、その栓本体4の前方にライニングされている。栓本体4の後方には、操作具3が着脱される取付部41が設けられている。本実施形態の取付部41には、中軸33bの前方端部が螺合される雌ねじが形成されている。
【0026】
シールゴム5は、穿孔口10の周縁に沿って延びている内リップ51と、内リップ51の外周側に形成されており、穿孔口10の外面側エッジが入り込むスリット52と、内リップ51の外周側にスリット52を介して形成されており、外周側に拡がり変形して穿孔口10の周縁の外面に密着する外リップ53とを有する。本実施形態のシールゴム5は栓本体4の前方表面の全体を覆っているが、密栓装置2と穿孔口10との間を密封するのは、穿孔口10の周縁に対向する環状の部位であり、その部位に沿って湾曲しながら内リップ51と外リップ53が環状に延びている。
【0027】
スリット52は、後方に向かって凹んだ環状溝として形成され、そのスリット52の底から前方に向かって内リップ51と外リップ53が突出している。内リップ51は、前方に向かって内周側へ傾斜した外周面51aを有している。外リップ53は、前方に向かって外周側へ傾斜した内周面53aを有し、水道管1の管軸方向から見ると、図4(a)のように前方に向かって先細りとなる形状をしている。また、外リップ53は、水道管1の管軸方向から見たときに、内リップ51よりも前方に大きく突出しており、このことは密封性能を高めるうえで有用である。
【0028】
図5は、図2の状態におけるシールゴム5を示している。既述のように、スリット52には穿孔口10の外面側エッジが入り込み、外リップ53は外周側に拡がり変形して穿孔口10の周縁の外面に密着する。スリット52の内周側に形成された内リップ51は、穿孔口10に挿入される。また、穿孔口10の外面側エッジをスリット52に入り込ませた密栓装置2が穿孔口10に強く押し当てられると、穿孔口10の端面側に内リップ51が寄せられ、図5のように穿孔口10の端面とその穿孔口10の周縁の外面とがシールゴム5によって密封される。
【0029】
この密栓装置2によれば、内リップ51の外周面51aが前方に向かって内周側へ傾斜しているため、穿孔口10が多少の位置ずれを生じて設けられていても内リップ51が適切に挿入され、その結果、穿孔口10に対する密栓装置2の芯出しが行われる。これに対し、外周面51aがそのように傾斜していない場合には、位置ずれに伴って内リップ51が水道管1の外面に押し当てられる恐れがある。本実施形態では、外リップ53の内周面53aが前方に向かって外周側へ傾斜しているので、穿孔口10の外面側エッジがスリット52に入り込みやすいうえ、外リップ53を外周側へ円滑に拡げることができる。
【0030】
本実施形態では、穿孔口10に押し当てられた密栓装置2を固定するための固定手段として、止めネジ8が設けられている。止めネジ8は、割りT字管11の分岐部に形成された貫通孔に螺合されており、これを内部に押し込むことにより密栓装置2の離脱を防止できる。止めネジ8は、栓本体4の傾斜面に当接し、それによって密栓装置2を前方に押圧する。そのため、穿孔口10に装着した密栓装置を固定する際には、その捻転や回転などによる位置ずれが懸念される。
【0031】
しかし、この密栓装置2によれば、図5のように内リップ51と外リップ53とが穿孔口10の外面側エッジを挟み込むようにして配置されるので、そのような位置ずれを防止することができる。よって、密栓装置2が簡易な構造を有しながらも、装着時の位置決めや位置ずれ防止が可能となる。なお、捻転による位置ずれとは、図3(b)のように水道管1の管軸方向から見て密栓装置2が右肩下がりまたは左肩下がりに傾く現象を指し、回転による位置ずれとは、図3(a)のように装着方向から見て密栓装置2が軸周りに回転する現象を指す。
【0032】
本実施形態では、シールゴム5が、内リップ51の内周側に形成された凹溝6を有している。凹溝6は、後方に向かって凹んだ環状溝として形成されている。かかる構成によれば、内リップ51が内周側に倒れ込んで逃げるスペースが形成され、穿孔口10の周縁の外面と外リップ53との間で内リップ51が挟まれることなく、穿孔口10に内リップ51を適切に挿入できる。このことは、穿孔口10が位置ずれを生じて設けられている場合において特に有用である。
【0033】
本実施形態では、シールゴム5が、外リップ53の後方に配置され且つ外リップ53よりも硬いゴムで形成された背面ゴム7を有している。これにより、栓本体4からの力が外リップ53に効率的に伝達され、穿孔口10の周縁の外面に対して外リップ53が十分に押し当てられるとともに、シールゴム5に水圧が作用しても外リップ53の形状が崩れにくくなって密封性能が高められる。
【0034】
背面ゴム7は、外リップ53よりも高いゴム硬度を有する。このゴム硬度は、例えばJISA硬度(JISK6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)に準じて25℃で測定した値)である。一例として、外リップ53のJISA硬度を50°とし、背面ゴム7のJISA硬度を70°とした構成が挙げられる。また、本実施形態では、水道管1の管軸方向から見て、外リップ53と背面ゴム7との界面が前方に向かって外周側へ傾斜しており、かかる形状によれば、背面ゴム7による上記作用が効果的に得られる。
【0035】
シールゴム5の外周面5a(外リップ53及び背面ゴム7の外周面)は栓本体4の外周面よりも外周側に位置する。本実施形態では、シールゴム5の外周面5aが、装着方向に対して傾斜した傾斜面により形成されている。具体的には、背面ゴム7の外周面が前方に向かって外周側へ傾斜し、外リップ53の外周面が前方に向かって内周側へ傾斜している。これにより、管内(割りT字管11の分岐部や仕切弁12の内部)を通じて密栓装置2を穿孔口10に接近させる際に、その管内との接触抵抗を小さくして作業性を高めることができる。
【0036】
この密栓装置2を用いた密栓方法は、内リップ51と外リップ53を有するシールゴム5が栓本体4に固着された密栓装置2を穿孔口10に押し当て、前方に向かって内周側へ傾斜した外周面51aを有する内リップ51を穿孔口10に挿入するとともに、内リップ51と外リップ53との間に形成されたスリット52に穿孔口10の外面側エッジを入り込ませ、外リップ53を外周側に拡がり変形させて穿孔口10の周縁の外面に密着させるものである。より詳しい手順は、以下の通りである。
【0037】
まずは、密栓装置2を操作具3に取り付けるとともに、仕切弁12に蓋部材14を接続して図1の状態にする。次に、仕切弁12を開いて水を充満させた後、ハンドル31を回して可動軸33を前方に移動させ、図2のように穿孔口10に密栓装置2を押し当てる。その際、穿孔口10の外面側エッジがスリット52に入り込み、穿孔口10に対して密栓装置2が位置決めされる。穿孔口10が多少の位置ずれを生じて設けられていても、内リップ51(の外周面51a)により密栓装置2がガイドされて芯出しが行われる。
【0038】
穿孔口10の外面側エッジがスリット52に入り込むと、内リップ51が穿孔口10に挿入され、外周側に拡がり変形した外リップ53が穿孔口10の周縁の外面に密着した状態となる。また、穿孔口10の外面側エッジをスリット52に入り込ませた密栓装置2が穿孔口10に強く押し当てられることで、内リップ51が穿孔口10の端面側に寄せられ、図5のように穿孔口10の端面と穿孔口10の周縁の外面とがシールゴム5によって密封される。
【0039】
続いて、止水確認用バルブ15を開き、止水されていることを確認した後で止めネジ8を押し込む。その際、捻転や回転などによる密栓装置2の位置ずれを防止できることは、既述した通りである。穿孔口10に装着した密栓装置2を固定したら、筒体33aから突出した中軸33bの後方端部を操作し、中軸33bを回転して密栓装置2との螺合を解除する。穿孔口10は密栓されているので、割りT字管11と仕切弁12との接続を解除すれば仕切弁12や操作具3を撤去できる。仕切弁12を撤去した後の割りT字管11の分岐部には、必要に応じて蓋が被せられる。
【0040】
図6に示した別実施形態では、前述した実施形態と比べて内リップ51が大きく突出しており、それ以外は前述の実施形態と同様の構成である。なお、前述の実施形態で説明した部位と同一の部位には、同一の符号を付している。内リップ51の外周面51aの長さは、穿孔口10の端面の全体を覆い得る寸法に設定されている。この実施形態は、図7のように内リップ51によって穿孔口10の端面の全体を覆うようにしたもので、シールゴム5によって穿孔口10の端面を防食することができる。
【0041】
図8,9に示した別実施形態では、栓本体4の側面がゴムライニングされており、それ以外は図3,4に示した実施形態と同様の構成である。既に説明した部位と同一の部位には、同一の符号を付している。栓本体4の側面には、その全体に亘ってゴムライニング75が接着されている。ゴムライニング75は、薄膜状に形成され、シールゴム5(が有する背面ゴム7)の後方に接するように配置されている。本実施形態では、ゴムライニング75がシールゴム5と一体化されており、そのゴムライニング75の外周面は、シールゴム5の外周面5aとスムーズに連なっている。このように栓本体4の側面がゴムライニングされていることにより、密栓装置2を穿孔口10に強く押し当てたときに、拡がり変形した外リップ53が裏返ることを防ぎ、密封性能を適切に発揮することができる。かかるゴムライニングは、図6に示した実施形態に適用することも可能である。
【0042】
本発明に係る密栓装置と密栓方法は、水道管を更新する工事で分岐管を撤去する場合に限らず、その他の事情により流体管の穿孔口を密栓する場合において適用できる。また、流体管としては水道管に限定されるものではなく、水以外の各種の液体や気体などの流体に用いる流体管に適用できる。
【0043】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 水道管(流体管の一例)
2 密栓装置
3 操作具
4 栓本体
5 シールゴム
6 凹溝
7 背面ゴム
8 止めネジ
10 穿孔口
11 割りT字管
12 仕切弁
51 内リップ
52 スリット
53 外リップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9