(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682732
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】建造物の地震応答を迅速に評価する光学式層間変位計システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20200406BHJP
G01C 9/00 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
G01B11/00 A
G01C9/00 A
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-521179(P2018-521179)
(86)(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公表番号】特表2018-521333(P2018-521333A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】US2016029537
(87)【国際公開番号】WO2017011056
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年4月24日
(31)【優先権主張番号】62/190,902
(32)【優先日】2015年7月10日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518004679
【氏名又は名称】ローレンス リバモア ナショナル セキュリティ,エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】520065787
【氏名又は名称】チコ ステート エンタープライジズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マッカレン,デビッド ビー.
(72)【発明者】
【氏名】コーツ,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】レパニッチ,ニック
(72)【発明者】
【氏名】ワテンブルグ,ウィラード ハーヴィー
【審査官】
川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−216402(JP,A)
【文献】
特開2011−013095(JP,A)
【文献】
D. A. Skolnik et al. ,INSTURUMENTATION FOR STRUCTURAL HEALTH MONITORING: MEASUREING INTERSTORY DRIFT,The 14th World Conference on Earthquake Engineering,2008年10月
【文献】
W. M. Chen et al.,Laser technique for measuring three dimensional interstory drift,PROCEEDINGS OF SPIE,1998年 8月13日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準フロア、および当該基準フロアに直接隣接する隣接フロアを備える建造物の層間変位を測定するための装置であって、
前記基準フロアに動作可能に接続されたレーザ光線源と、
前記レーザ光線源によって生成され、前記隣接フロアへ向かって扇状に広がる形状を有する回折レーザ光線であるレーザ光線と、
前記隣接フロアに動作可能に接続され、前記建造物の層間変位を測定するために前記レーザ光線を受けるように位置決めされたセンサアレイであって、前記センサアレイは複数の平行なセンサ列を備え、前記扇状に広がる形状を有する前記レーザ光線の測定方向に対してセンサが横方向に部分的に重なり合うように配置されているセンサアレイと、を含み、
前記扇状に広がる形状を有する前記レーザ光線は、前記センサアレイのすべての列を同時に横断する十分な幅を有する装置。
【請求項2】
前記レーザ光線源によって生成された前記レーザ光線は、回折レーザ光線である請求項1に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項3】
前記センサアレイは、ダイオードセンサアレイである請求項1に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項4】
前記センサアレイは、少なくとも3つの密接に隣接する間隔のダイオードセンサ列を含むダイオードセンサアレイである請求項1に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項5】
前記レーザ光線源は、各フロアレベルに位置決めされた、離散的なレーザユニットである請求項1に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項6】
前記レーザ光線源は、集中型レーザユニットに接続された光ファイバである請求項1に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項7】
前記レーザ光線源の回転を検出するために、前記レーザ光線に対してある角度に方向付けられた第2レーザ光線をさらに含む請求項1に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項8】
前記第2レーザ光線源は、前記レーザ光線に対して直角に配置されている請求項7に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項9】
前記基準フロアに動作可能に接続された第2レーザ光線源と、
前記第2レーザ光線源によって生成され、前記隣接フロアへ向けられた第2レーザ光線と、
前記隣接フロアに動作可能に接続され、前記建造物の層間変位を測定するために前記第2レーザ光線を受けるように第2センサアレイと、をさらに含み、
前記第2レーザ光線源、前記第2レーザ光線および前記第2センサアレイは、前記レーザ光線源、前記レーザ光線および前記センサアレイに対してある角度に位置決めされている請求項1に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項10】
前記角度は、直角である請求項9に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項11】
前記センサアレイは、層間変位信号を生成し、
データ収集のためのフィールドプログラマブルゲートアレイと、
前記層間変位信号を分析かつ記憶するためのコンピュータシステムとを、さらに含む請求項1に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項12】
前記センサアレイは、前記層間変位を視覚的に示すデジタル光学式バーを含む請求項1に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項13】
前記デジタル光学式バーは、種々の損傷レベルに対する所定の建造物変位指標によって定義された色分けを用いて層間変位を示す、異なるカラーコードを表す異なる色を表示する請求項12に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項14】
前記建造物は、複数階の建造物であり、前記基準フロアは上方フロアであり、かつ前記隣接フロアは前記基準フロア直下の下方フロアであり、
前記レーザ光線源は、前記上方フロアに接続され、
前記センサアレイは、前記下方フロアに接続されている請求項1に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項15】
前記建造物は、複数階の建造物であり、前記基準フロアは下方フロアであり、かつ前記隣接フロアは前記基準フロア直上の上方フロアであり、
前記レーザ光線源は、前記下方フロアに接続され、
前記センサアレイは、前記上方フロアに接続されている請求項1に記載の建造物の層間変位を測定するための装置。
【請求項16】
基準フロア、および当該基準フロアに直接隣接する隣接フロアを備える各建造物の層間変位を監視するためのシステムであって、
各建造物の前記基準フロアに動作可能に接続されたレーザ光線源と、
それぞれの前記レーザ光線源によって生成され、それぞれが扇状に広がる形状を有すると共に各建造物の前記隣接フロアの各々へ向けられた回折レーザ光線と、
各建造物の前記隣接フロアの各々に動作可能に接続され、前記建造物の層間変位を測定するために前記レーザ光線を受けるように位置決めされ、測定信号を生成するセンサアレイであって、それぞれの前記センサアレイは、複数の平行なセンサ列を備え、前記扇状に広がる形状を有する前記レーザ光線の測定方向に対してセンサが横方向に部分的に重なり合うように千鳥状に並んでいるセンサアレイと、
前記センサアレイに動作可能に接続され、前記測定信号を受信して、前記建造物の層間変位を監視するシステムと、を含み、
前記扇状に広がる形状を有する前記レーザ光線は、前記センサアレイのすべての列を同時に横断する十分な幅を有するシステム。
【請求項17】
前記センサアレイは、層間変位信号を生成し、当該層間変位信号を分析および記憶するコンピュータシステムをさらに含む請求項16に記載の建造物の層間変位を監視するためのシステム。
【請求項18】
基準フロア、および当該基準フロアに直接隣接する隣接フロアを備える建造物の層間変位を監視するための方法であって、
前記建造物の前記基準フロアに、レーザ光線源を動作可能に接続する工程と、
前記建造物の前記隣接フロアへ向けられた扇状に広がる形状を有するレーザ光線を生成するために、前記レーザ光線源を使用する工程と、
前記建造物の前記隣接フロアに、センサアレイを動作可能に接続する工程であって、前記センサアレイは複数の平行なセンサ列を備え、前記センサアレイは前記扇状に広がる形状を有する前記レーザ光線の測定方向に対してセンサが横方向に部分的に重なり合うように千鳥状に並んでおり、かつ、前記扇状に広がる形状を有する前記レーザ光線が前記センサアレイのすべての列を同時に横断する十分な幅を有するように、センサアレイを動作可能に接続する工程と、
前記建造物の層間変位を測定するために、前記レーザ光線を受けるように、測定信号を生成する前記センサアレイを位置決めする工程と、
前記測定信号を受信して前記建造物の層間変位を監視するために、前記センサアレイに監視システムを動作可能に接続する工程と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、「建造物の地震応答を迅速に評価する光学式層間変位計システム」と題された2015年7月10日に出願された米国仮特許出願第62/190,902号について35U.S.C.119条(3)に基づく利益を主張し、あらゆる目的のため、その全体を参照することによって本明細書に組み込まれている。
【0002】
[連邦政府支援の研究または開発の下でなされた発明に対する権利に関する声明]
米国政府は、米国エネルギー省とLawrence Livermore National Security, LLCとの間での契約第DE−AC52−07NA27344号に基づき、本発明の権利を有する。
【0003】
[背景技術]
[技術分野]
本願は、建造物の地震応答の評価に関し、特に建造物の地震応答を迅速に評価する光学式層間変位計システムに関する。
【0004】
[最新技術]
この項目では、本開示に関連する背景技術情報を提供する。当該背景技術情報は、必ずしも先行技術を構成するものではない。
【0005】
大地震が発生した直後には、建造物が振動した程度を迅速に評価し、建造物に重大な損傷が生じているかを確認する強い動機づけが存在する。建造物の外部目視観測では、地震の震動期間にわたって建造物の構造システムに重大な損傷があったか否かを確実に示すことができないことを考えると、特に重要である。人の安全性に対するリスクに関連する不確実性に加えて、建造物の健全性を迅速に評価することができないことは、適時の再稼働および機能の再開に大きな影響を与える可能性がある。
【0006】
大地震で文字通り数千の建造物が振動する都市環境では、住居者の安全性のリスクがある建造物の有無を理解するための即時かつ膨大な要求がある。大地震後の工学検査の一般的な手段は、時間を要し、また利用可能な十分な数の構造技術者の不足によって制約される。−1989年にカリフォルニア州のロマプリータ地震で学んだ教訓。建造物の健全性のデータを即時かつ効率的に得ることができるシステムは、建造物が密集した市街地環境における地震後の適切な行動を知らせるために特に有用である。
【0007】
地震時の建造物応答の基本的な測定は、建造物の2つの隣接したフロア(階)間の相対的変位として計算される建造物の層間変位である。
図1A、1Bおよび1Cは、「層間変位」を示す。
図1Aは、参照符号100によって「層間変位」を全体的に示す。地面102上に位置する複数階の建造物102は、
図1Aに示すように、地震により変動し、建造物102の垂直状態からの変位が生じている。
図1Bは、建造物102の2つの隣接フロア104を示す。
図1Cは、層間変位率(IDR)を示す。層間変位率「Γ」は、層間高さ「H」(Γ=△/H)によって分けられた連続した2つのフロアの間の相対的並進変位「△」として定義される。
【0008】
層間変位は、建造物システムの変形およびストレスの程度を示す尺度あり、多くの耐震設計コードの中で基本的な設計変数(design variable)を表わす。建造物の概念定義(concept definitions)としては典型的な鉄骨フレーム建造物の応答であり、層間変位率は建造物損傷のレベルと関連がある。建造物の概念定義は、例えば次のものを含む。
降伏点=構造部材が非弾性的作用を始める、層間変位率の振幅。
塑性ヒンジ形成=構造部材が完全な塑性ヒンジ(部材横断面全体にわたって撓みやすい材料)を形成する層間変位率の振幅。
最終モーメント容量=部材の最終耐荷重容量が達成される層間変位率の振幅。
地震後の層間変位値の測定および読み取りは、認識力のある構造技術者によって確立された、設計コードまたは層間変位指標の比較を可能にする。これらは、問題になっている建造物の異なる損傷レベルを示す。
【0009】
[強震計を用いた層間変位の間接測定]
従来の建造物地震測定は、加速度計の物理的位置における絶対的加速度の時間歴を測定する強振計に基づく。既存の地震計測システムは、建造物の高さ全体にわたって分配された加速度計のスパース行列を利用する。そのようなシステムは、建造物が振動した程度のある情報を提供する。しかし、それは、建造物における変形(例えば、層間変位)および関連するストレスに関する詳細な情報を直接提供しない。建造物の変位および関連する変形は第一の関心事であるため、後処理で、二重数値積分を通じて加速度計データから最終推定層間変位を求める必要性がある。そのような処理は非常に困難であり、エラーの原因となる。加えて、加速度計は周波数帯幅限界を用いた動的システムであり、建造物システムの非弾性的な挙動に関連した構造における恒久的な変位を正確に再現することができない。強震計に関連した全体的な困難性および問題は、D.A.SkolnikおよびJ.W.Wallace、土木学会、構造工学、2010.136:1574−1584のジャーナルによって記録紙「層間変位測定の重大な評価」の中で文書化されている。
【0010】
[層間変位を直接測定するためのデバイス/方法]
多くの研究者が、建造物間の層間変位の直接測定のための測定スキームおよび関連するデバイスを提案している。これらは、フレームベイ(梁間)の横変形を測定する線形可変変圧器(LVDT)を備えた、教示されたワイヤーなどの物理的に接触するデバイスから、建造物の横変位を測定する光学式技術にまで及ぶ。
【0011】
検討された1つの光的式アプローチは、その入射点が横変位をトレースすることができるレーザおよび建造物の対応する層間変位を利用することである。しかしながら、そのような測定技術に基づいた十分なシステム設計を可能にする、実行可能な既存のセンサは存在しなかった。工業的に製造されている既存の位置感知検出器またはデバイス(PSD)は、正確に衝突するレーザ光線の位置を測定するために使用することができる光電子に基づいたセンサであるが、非常に高価で、物理的サイズも制限される。典型的な建造物では、大地震中に測定しなければならない層間変位の振幅(潜在的な数インチの層間変位)は、市販のPSDsのサイズに比べて単純に大きすぎる。
【0012】
[概要]
開示する装置、システムおよび方法の特徴および利点は、後の説明から明白になるであろう。出願人は、装置、システムおよび方法の広い表現を与えるために、図面および具体的な実施形態の例示を含む説明を提供する。出願の思想および範囲内の様々な変更および改良は、この説明、および装置、システムおよび方法の実施により当業者に明白になるであろう。装置、システムおよび方法の範囲は、開示した特定の形態に制限されない。また、出願は、請求項によって定義される装置、システムおよび方法の思想および範囲内の変更、均等物、および代案をすべて含む。
【0013】
ここに説明された発明は、地震によって発生した建築物の層間変位を直接測定するための、並びに、所定の測定方向に沿ってずれた、離散的な光ダイオードセンサの千鳥状アレイを含むシステムの広い周波数応答PSDのための光学式層間変位計システムに関する。このセンサユニットは、位置感知検出器アレイ(PDSA)として定義される。直接の層間変位測定は概念的に単純である。また、データの処理は加速度計に基づいたシステムに比べて直接的であり、監視している建造物の損害レベルの量を定量化した既知の層間変位損傷指標と直接比較することができる。そのため、本発明によって行なわれる直接層間変位測定では、測定データの広範囲な後処理なしに、地震直後に、潜在的な建造物の損傷および構造の状態に関する情報を迅速に評価することできる。また、そのような光学に基づいた層間変位計偏流計および建造物監視システムは、加速度計に基づいたシステムと異なり、地震振動時の非弾性的な挙動に起因する恒久的な層間変位を測定するのに特に有効になり得る。
【0014】
一実施形態では、本発明の装置は、例えば20mWの低エネルギーの回折レーザ光線源、広い周波数応答PSDAユニットを含み、
図2、3および4に示すように、これらは、建造物の任意の2つのアクセス可能な地点の間(例えば、視野方向がクリアな2つのフロアの間)に取り付けられる。回折レーザ光線源は、回折レーザ光線を生成するように適合されて、PSDAユニットの表面上に向けられた場合、回折レーザ光線は、ライン光線トレース、すなわち照射された入射線が生成され、 PSDA上の入射位置は地震時の瞬間の変位(または変位なし)を示す。そして、本発明の広範な周波数応答PSDAは、広い周波数範囲にわたり建造物の層間変位を正確に測定するように適応された用途別の設計を有している。すなわち、建造物の監視アプリケーションに必要な周波数および変位振幅での層間変位を測定する。具体的には、PSDAユニットは、所定の測定方向に沿って所定の千鳥状パターンで配置された離散的フォトダイオードセンサの千鳥状アレイを含む。例えば、
図5は、列ごとの3つの千鳥状ダイオードを示し、測定方向におけるPSDAの長さに沿って重なり合う2つのダイオードを有する。この予め定められた千鳥状配列は、フォトダイオードのアレイが、トリガされた1つまたは複数のダイオードに関連する距離によって横変位が判断され得る、光線トレースの初期の位置ずれのない基準位置から様々な距離でライン光線トレースを検出することを可能にする。
【0015】
このようにして建造物構造の2つのアクセス可能な点の間に取り付けられると、システムは、地震時に建造物が経験する一時的および非弾性的な層間変位を直接的かつ正確に測定するように適合され、測定の方向、およびPSDAの離散的なダイオードセンサの千鳥状アレイとの相対的な距離を測定し、建造物の応答を測定するのに適した分解能および動的応答を伴う測定の事象後の迅速な読み出し/表示を提供する。本発明のシステムは、地震の期間にわたって経験する、建造物の振動応答に関連する広い周波数範囲にわたる動的振動を瞬間的に正確に測定することができ、広範囲の建造物に効果的に適用するために不可欠である。周波数応答は、高い周波数(低い建造物)から低い周波数(高い建造物)に及ぶ。特に、本発明は、正確な変位測定を提供することができない加速度計信号の積分を必要とせずに、低周波の運動のために、0〜10Hzの予想周波数範囲(または、構造の特定の動力学が要求する場合にはそれ以上)におけるすべての移動周波数についての層間変位測定を提供する。本発明のPSDAユニットは、建造物の層間変位測定の用途に特に設計され、調整されており、包括的な建造物地震監視システム設計を可能にする適切な周波数帯域幅および振幅レベルを提供する広範な実験室テストによって実証されている。
【0016】
さらに、PSDAユニットは、従来の半導体部品および製造方法を使用して製造することができるので、非常に費用効果的であり、既存の商業的位置感知光電センサの物理的サイズの限界および製造コストを克服することができる。 その結果、本発明の複数のシステムを複数のフロアに配置し、既存の加速度計ベースのシステムの疎データに関連する不確実性を排除して、変位測定を建造物の各フロアまたは多数フロアで行うことができる。
【0017】
装置、システム、および方法は、改良および代替形態への変更が可能である。装置、システム、および方法は、開示された特定の形態に限定されないことを理解されたい。装置、システム、および方法は、特許請求の範囲によって規定されるような出願の思想および範囲内に入るすべての変更、均等物および代替物を包含する。
【0018】
[図面の簡単な説明]
組み入れられて明細書の一部を構成する添付の図面は、装置、システムおよび方法の具体的な実施形態を示しており、上述した一般的な説明および具体的な実施形態の説明と共に、装置、システムおよび方法の原理について説明する。
【0019】
図1A、1B及び1Cは、「層間変位」を示す。
【0020】
図2、3および4は、本発明の装置の一実施形態を示す。
【0021】
図5は、
図2、3および4で示された装置のセンサアレイ部分についての拡大図および詳細を示す。
【0022】
図6は、
図5で示された装置のセンサアレイの配分についての拡大図および詳細を示す。
【0023】
図7は、ダイオードアレイセンサのサンプル回路を示す。
【0024】
図8Aおよび8Bは、さらに本発明の装置を示す。
【0025】
図9は、多重方向地震振動の影響を測定するために、レーザとセンサアレイとが直角に位置決めされた本発明の装置の実施形態を示す。
【0026】
図10は、個別の構造要素の変形および回転を含む地震時の複数層間変位の単一ベイの変形を示す。
【0027】
図11A、11Bおよび11Cは、層間変位の測定における局所的な回転を補正するための装置を示す。
【0028】
図12は、PSDAセンサを有効に移動させる方法を示すフローチャートである。
【0029】
図13A、13Bおよび13Cは、単一レーザ光線の光学式層間変位計システムの実施形態を示す。
【0030】
図14は、各フロアの変位計システムからデータを収集して、データを分析し、結果を記憶するコンピュータシステムを示す。
【0031】
図15A、15B、15Cおよび15Dは、各フロアレベルでのピーク層間変位を即時に視覚的に読み取るためのデジタルバーを示す。
【0032】
[実施形態の詳細な説明]
図面の参照、以下の詳詳細な説明の参照、並びに、装置、システムおよび方法に関して組み入れた資料、詳細な情報の参照を、具体的な実施形態の説明に含めて提供する。詳述な説明は、装置、システムおよび方法の原理の説明に役立つであろう。装置、システムおよび方法は、形態の変更および選択が可能である。この出願は、開示した具体的な形態に制限するものではない。この出願は、請求項によって定義される装置、システムおよび方法の思想および範囲内の変更、均等物、および代案をすべて含む。
【0033】
[光学式層間変位計システムの実施例]
図面に再び戻って、
図2、3および4は、本発明の層間変位の測定のために光学式システムの基本構成例を示す。
図2、3および4は、発明者の層間変位計システム(ISDMS)の最も基本的な形態を示す。ISDMSは、参照符号200全体的に示されている。ISDMS200は、下記構成要素を含んでいる。
構造(フロア)ビーム(梁)−202、
構造(フロア)ビーム(梁)−204、
レーザ光線源−206、
回折レーザ光線−208、
位置感知検出器アレイ(PSDA)−210、
電気的コネクタ−212、
PSDA上の中立位置−214、
相対的振動移動矢印(
図3)−216、
相対的振動移動矢印(
図4)−218、
シフト位置(変位)(
図3)−220、および、
シフト位置(変位)(
図4)−222。
【0034】
図2、3および4は、地震によって引き起こされる建造物の移動範囲を検出するために、位置感知検出器アレイ204へ向かうレーザ光線208を用いた発明者のISDMS200を示す。
図2において、レーザ光線208は、検出器アレイ210上の中立位置214にある。
図3において、レーザ光線208は、一方向における建造物の移動範囲を示す検出器アレイ210上のシフト位置220にある。
図4において、レーザ光線208は、反対方向における建造物の移動範囲を示す検出器アレイ210上のシフト位置222にある。
【0035】
図2を再び参照すると、その基本的な形態のISDMS200は、隣接するフロアビームの間に取り付けられる。上方フロアビームは、構造フロアビーム202であり、我々は、複数階構造における22番フロアと呼ぶ。我々が21番フロアと呼ぶ直接隣接する構造フロアビーム204は、下方ビームである。上方ビーム202は、上方ビーム202の下側にレーザ源206が取り付けられる。下方ビーム204は、下方ビーム204の上側に、位置感知検出器アレイ(PSDA)210が取り付けられる。レーザ源206は、中立位置214と呼ぶPSDAの中立位置に回折レーザ光線208を最初に照射する。PSDAは、PSDA210によって生成されたデータを収集し、分析し、記憶し、表示するコンピュータシステム(図示せず)にPSDAを接続する電気的コネクタを備える。
【0036】
図3は、
図2と全て同じ構成要素を含み、回折レーザ光線208が、層間変位を引き起こす地震の結果、PSDA210上である距離を移動したことを示す。上記移動は、矢印216によって示されたビーム204の移動を反映している。回折レーザ光線208は、PSDA210上の中立位置214から、PSDA210上の新しい位置220へシフトしている。中立位置214と、PSDA210上の回折レーザ光線208の新しい位置220との間の距離は、層間変位を計算するために使用することができるデータを生成する。
【0037】
図4は、
図2と全て同じ構成要素を含み、回折レーザ光線208が、(
図2で示される移動の反対方向において)再びPSDA210上である距離を移動したことを示す。上記移動は、矢印218によって示されたビーム204の移動を反映している。回折レーザ光線208は、PSDA210上の中立位置214から、PSDA210上の新しい位置222へシフトしている。中立位置214と、PSDA210上の回折レーザ光線208の新しい位置2220との間の距離は、層間変位を計算するために使用することができるデータを生成する。
【0038】
次に
図5を参照すると、PSDAについての拡大図および詳細が提供される。以下は、PSDAの構成要素のリストである。
プリント回路基板−502、
センサアレイ−504、
個別のダイオードセンサ−506、
電気的コネクタ−212。
【0039】
図5は、位置感知検出器アレイ(PSDA)をより詳細に示す。それは、個別のセンサ506のアレイ504を含んでいる。アレイ504は、千鳥状配置に配列されたセンサ506の3つの列からなる。上記千鳥状配置は、
図6で説明され、より詳細に示されている。PSDAは、ケーブルを有する電気的コネクタ212をさらに備える。電気的コネクタ212は、フィールドプログラマブルゲートアレイに接続され、最終的にデータ・ロギングのためのコンピュータシステムに接続される。
【0040】
次に
図6を参照すると、
図5のPSDAについての拡大図および詳細が提供される。
ここには、入念に設計された千鳥状配置の個別のセンサ506が示されている。千鳥状配置は、たとえライン208が1つの列の中の2つのセンサ間の空間と交わったとしても、回折レーザ光線208のラインがセンサ506と常に交差することを保証する。
【0041】
次に
図7を参照すると、フォトダイオードセンサのサンプル回路が示される。
【0042】
発明者の層間変位計システム200の一実施形態の構造の詳細を、システム200の動作を参考にして特定および説明する。具体的には、回折レーザ光線源および、千鳥状センサアレイを含むPSDAは、互いに、建造物の2つの異なるレベルに位置決めされて、配置されている。その結果、回折レーザ光線源によって生成された回折レーザ光線は、ライン光線トレース(ライントレースとして図示している)として位置感知検出器上に照射される。ライン光線トレースは、測定方向に対して横軸に方向付けられており(例えば、
図2の回折光線のライントレースを示す)、
図2の例示では、測定方向はI型ビームの長手方向軸に平行である。回折レーザ光線は、例えば、光学回折素子を介してレーザ光線を導いて生成され、PSDAの位置にライン光線トレースを形成する。回折レーザ光線トレース、すなわちライン入射の形成は、初期のレーザ光線の点入射とは対照的に、三次元の地震震動発生時に面外直交する建築物変位の重ね合わせがある場合に、建造物フレームの面内の層間変位を確に測定することを保証するために必要とされる。ライントレースはまた、PSDAセンサ内の千鳥状アレイの離散的なダイオードの利用にとって重要である。なぜなら、複数の千鳥状ダイオードに跨ることを可能にするためである。いくつかの構造では、構造的構成および相対的剛性に依存して、一般に、レーザの取り付け位置での任意の局所的な光線回転を考慮した補正を適用する必要があることに留意されたい。
【0043】
図5、6および7は、入射レーザ光を個別に検知することができる個別のフォトダイオードセンサの千鳥状二次元アレイを含む、本発明の広い周波数応答PSDAの例示的な実施形態を示す。特に、フォトダイオードのアレイは、データとディスプレイのオフボード処理用の入力/出力(I/O)ポートにフォトダイオードを接続する電子金属トレースを有する基板上に形成されている。しかし、プロセッサ、メモリ、データ記憶装置、ディスプレイ等のための他の機能的構成要素は、統合されたユニットとしてPSDAに搭載されてもよいことは理解されよう。さらに、代替的に、そのような機能的構成要素は、PSDAユニット、またはPSDAユニットおよびレーザ光線源に適切に接続されたシステムの追加構成要素として提供されてもよい。さらに、ダイオードのアレイが形成され、配置される基板が示されているが、他の非基板式構造の構築物または支持フレームを利用して、離散的なフォトダイオードを互いに対して千鳥状に配置することができることが理解される。
【0044】
いずれにしても、千鳥状アレイにより、入射レーザ光線の正確な位置の識別が向上し、その結果、より高い精度の層間変位の測定が可能になる。
図6に示すように、千鳥状フォトダイオードは、測定方向に対して横方向に部分的に重なり合うように配置することができるので、ライン光線トレースの入射ラインは、(測定方向のアレイの反対側の両端部の最初および最後のフォトダイオードを除いて、)任意の与えられた瞬間にフォトダイオードに当たり、さらに(測定方向の)前端および後端が他のフォトダイオード活性領域と重ならないようにフォトダイオードが配置される。あらゆる瞬間にダイオードのアレイ全体を迅速に調べることにより、建造物の地震誘発振動中にレーザライントレースの位置を判断して追跡することができる。これは、地震履歴を通じて瞬間的な層間変位の直接測定を提供する。概要で説明したように、フォトダイオードのアレイは、所定の測定方向に沿って所定の千鳥状パターンで配置される。この千鳥状配列は、フォトダイオードのアレイが、光線トレースの初期の変位していない基準位置から様々な距離でライン光線トレースを検出することを可能にし、誘因となった1つまたは複数のダイオードに関する距離によって横変位が判断される。ダイオードの列数、列当たりのダイオード数、ダイオード間隔、列内および列間の千鳥状ダイオード間のオフセットおよび重なりの程度に関連して、トリガされた1つまたは複数のダイオードの所定の千鳥状パターンは、センサ設計のための重要な設計変数およびオプションを提供する。千鳥状ダイオード間のオフセットおよび重なりの程度は、センサの空間的忠実度(すなわち、センサが検出できる層間変位における変位の最小単位)を示し、技術者にセンサ設計における重要かつ望ましい柔軟性を与える。
【0045】
個々のフォトダイオード出力は、ダイオードに入射する入射レーザ光の量に比例する。本出願では、ダイオードは、(入射レーザ光がダイオードに当たる)「オン」検出器−(入射レーザ光線がダイオードに当たらない)「オフ」検出器として基本的に使用される。センサ設計では、
図7に示すように、簡単なオペアンプのコンパレータ回路を使用して、どのフォトダイオードが任意の時点で入射光を感知しているかを示す。フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または複合論理デバイス(CPLD)、または他のデータ処理ハードウェアまたはソフトウェアを使用して、入射レーザ位置を捕捉するためにすべてのフォトダイオードの回路の出力値を同時にラッチすることができる。この値は、地震振動時に、センサが建造物の動的振動を確実に捕捉するのに十分高いサンプリングレートで取得される。
図2および7に示す特定のセンサ設計では、実験的なテストによって首尾よく実証され、1秒間に384回のサンプリングレートを有する92個のダイオードの千鳥状アレイを利用している。
【0046】
動作中、回折レーザ光線は、
図8Aおよび8Bに示すように、真上の天井から下のフロアのPSDAに向かって個々の建造物層間を横切って導かれる。特定の実施形態では、システムは、建造物システムの各レベルで発生するピーク層間変位を計算して記憶するように適合されたプロセッサおよび他の機能コンポーネントを含み、ピーク値をグラフィックスディスプレイ上に損傷指標として表示する。例えば、各フロアレベルのピーク層間変位は、撓み(yield)、塑性ヒンジ形成および最終強度または鉄骨フレーム建造物の他の所定の限界状態に関する層間変位損傷閾値と比較され、緑色(初期の撓み未満)、黄色(上記撓み以上、塑性ヒンジ形成未満)または赤色(塑性ヒンジ形成を超える)のスポットライトグラフィックとして表示される。地震環境でのバッテリ電源バックアップとシステム信頼性設計とに適切な注意を払うことで、このようなシステムは、責任ある建造物管理者、緊急応急処置担当者、およびその他の利害関係者に、建造物振動および潜在的な損傷の迅速かつ即時の兆候を大地震直後に提供する。そのような能力は、地震後の迅速な緊急事態対応、緊急時の動作、再稼働、経済復興を大いに支援する。
【0047】
[層間変位]
次に
図8Aおよび8Bを参照すると、発明者の層間変位計システム(ISDMS)の別の実施形態が示されている。このISDMSの実施形態は、参照符号800で全体的に示されている。以下は、
図8Aおよび8Bに示すISDMS800の構成要素のリストである。
列−802、
構造(フロア)ビーム−804、
構造(フロア)ビーム−806、
方向矢印−808、
新しいシフト位置−810、
シフト距離測定−812、
レーザ光線源−206、
回折レーザ光線−、および、
PSDA210。
【0048】
図8Aは、回折レーザ光線208が中立位置214(
図2にも示されている)でPSDA210と交差する静的構成における上記リストの構成要素を示す概略図である。
【0049】
図8Bは、地震振動中に、フロアビーム804に対して矢印808の方向に移動するフロアビーム806を示す。フロアビーム806の移動は、回折レーザ光線208をPSDA上で中立位置214から新しいシフト位置810にシフトさせる。レーザ光線208がシフトした距離は、PSDAによって測定され、812の符号が付されている。このデータは、変位の計算に使用される。
【0050】
[直角に位置決めされたユニット]
次に
図9を参照すると、本発明者の層間変位計システム(ISDMS)が示されている。
図9に示す本発明者のISDMSは、第1ユニット900Aおよび第2ユニット900Bを利用している。ユニット900Aおよび900Bは、互いに直角に位置決めされている。以下は、
図9に示すユニット900Aおよび900Bの構成要素のリストである。
上方構造(フロア)ビーム − 902a及び902b、
下方構造(フロア)ビーム− 904a及び904b、
レーザ光線源−906a及び906b、
回折レーザ光線−908a及び908b、
位置感知検出器アレイ(PSDA) − 910a及び910b、および、
PSDAの中立位置 − 912aおよび912b。
【0051】
図9は、互いに直角に位置決めされたユニット900Aおよび900Bを示す。これにより、ISDMSは、地震の衝撃波が建造物に当たる方向に関係なく、地震による建造物の移動を監視、分析、記録することができる。レーザ光線908aおよび908bは、地震に起因する建造物の移動範囲を検出するために、位置感知検出器アレイ910aおよび910bに向けられる。
【0052】
レーザ光線908aおよび及び908bは、中立位置912aおよび912bを検出器アレイ910aおよび910b上に配置される。上方ビーム902aおよび902bは、ビーム902aおよび902bの下側に取り付けられたレーザ源906aおよび906bを有する。下方ビーム904aおよび904bは、ビーム904aおよび904bの上面に取り付けられた位置感知検出器アレイ(PSDA)910aおよび910bを有する。レーザ源906aおよび906bは、最初に、回折レーザ光線908aおよび908bをPSDAの中央部分912aおよび912b(中立位置)に照射する。PSDAs910aおよび910bは、PSDA910aおよび910bによって生成されたデータを分析、記憶および表示するコンピュータシステム(図示せず)に接続される。
【0053】
構造技術者は、構造的性能と密接に関連しており、高レベルの変位が目に見えない損傷を示しているため、層間変位に関心がある。これは、既存の技術設計コードの重要な建造物性能の指標である。層間変位を測定する正確で便利で費用効果の高い技術は構造移動の理解を改善し、人間の安全性を向上させるだけでなく、風や地震による被害の可能性や程度を大幅に低減することができる。
【0054】
次に
図10を参照すると、事象中に複数階構造の単一ベイの変形が示されている。以下のリストは、
図10に示される構成要素を識別する。
単一ベイ−1000、
構造の初期位置−1002、
地震時の構造の変形位置−1004、
レーザ光線源の初期位置−1006、
レーザ光線の初期位置−1008、
地震時のレーザ源位置−1010、
地震時のレーザ光線位置−1012、
レーザ光線の回転角−1014、
△変位−1016、
△観測−1018、
△回転−1020、
H層間高さ−1022、
PSDAユニット−1024。
【0055】
以下の参照番号は、構造の初期位置1002、レーザ光線源の初期位置1006、レーザ光線の初期位置1008、事象中のレーザ源の位置1010、および事象中のレーザ光線の位置1012を示す。
図10は、初期位置(破線)および事象位置(実線)における構造1002を示す。レーザ光線の回転角度は1014である。△変位は1016である。△観測は1018である。△回転は1020である。層間高さ「H」は1022である。PSDAユニットは1024である。
【0056】
[地震による建築物の局所的な回転]
地震振動中に建造物が横方向の振動を受けると、全体的な変位は、建造物システムの構造フレームを構成する個々の要素(水平ビームおよび垂直柱)の局所的な回転を伴う。層間変位を正確に計算するために補正しなければならない、フロアの局所的な回転(レーザ光線の位置△
回転のシフトに繋がる可能性のある△
フロア)を示すために、建造物の単一ベイ1000の横変形(層間変位)図示されている。これは、任意の光センサ測定システムにおいて対処しなければならない問題として、歴史的に注目されている。
【0057】
[レーザの局所回転補正]
本発明者は、レーザの局所的な回転を補正するための信頼性の高い正確な方法を開発した。この方法は、下方フロアに取り付けられたPSDセンサ直交に(直角に)取り付けられた第2離散的なダイオードPSDセンサを使用する。
図11Aおよび11Bに示すように、この第2センサは、局所フロア回転を判断し、実際の層間変位を判断するために適切な補正を行うために使用される。一般に、必要がある補正の程度は、建造物の垂直柱と水平フロアビームとの間の相対的曲げ剛性の関数(function)である。典型的な建造物では、典型的な建造物フレームの変形パターンのため、この局所的な回転を補正しないと、
図10に示すように、層間変位が過小評価される可能性がある。
図10から、実際の変位△
変位に到達するためには、PSDセンサ△
観測上で観測された変位に加算することによって誘起された振動△
回転を補正することが必要である。
【0058】
図11A、11Bおよび11Cは、局所的な回転を補正するための本発明者のシステムの実施形態を示す。
図11A、11B、および11Cの
図1の構成要素のリストは、以下のように提供される。
単一ビームベイ−1100、
初期位置−1102、
事象位置−1104、
レーザ光線源−1106、
第1レーザ光線−1108、
第2レーザ光線−1110、
第1PSDAユニット−1112、
第2PSDAユニット−1114、
変位−1116、
回転角度−1118、
第1データ点−1120、
第2データ点1122。
【0059】
図11A、11Bおよび11Cのシステムは、レーザ回転の正確な判断を得るためのものである。
図11Aは、初期位置(破線)および事象位置(実線)における構造1102を示す。レーザ光線源1106と、互いに直角の2つのレーザ光線1108および1110も示されている。2つのPSDAユニット1112および1114は、1124「H」層間高さ、および1116△変位が同じである。
図11Bは、構造1102が初期位置にある場合の
図11Aのアイテムのいくつかの簡略図であり、
図11Cは、事象中の同じアイテムを示す簡略図である。測定は、第2PSDAユニット1114上で、データ点1120および1122によって示される。
【0060】
第2PSDセンサは、第2PSDセンサの位置回転の増幅信号を生成する水平距離「L
0」を通って照射されたとき、レーザ取り付け点における小さな局所的な回転の効果が、効果的に増幅されるという事実を利用する。これは、レーザ光線を2つの直交するライン源に分割することによって達成することができる。局所的な回転を適切に補正する能力は、実験室において実験的に実証されている。実験データは、発明者のアプローチの妥当性および正確性を実証している。
【0061】
次に
図12を参照すると、フローチャートは、PSDAセンサの性能を検証する本発明者の方法の実施形態を示す。この方法のステップを以下に示す。
方法図−1200、
数値シミュレーションモジュール−1202、
建造物システムの計算モデル−1204、
地震記録−1206、
シミユレーションした層間変位−1208、
数値シミュレーションモジュールによって生成されたデータ−1210、
センサテストベッド数値シミュレーションモジュール−1212、
固定「天盤」(レーザ光線)−1214、
「フロア」振動PSDA−1216、
数値シミュレーションモジュールからのデータ − 1218、
比較および検証モジュール−1220。
【0062】
図12に示すように、数値シミュレーションモジュール1202は、地震記録1206およびシミュレートした層間変位1206の情報と共に建造物システムの計算モデルの情報を使用して、データ1210を生成する。センサテストベッドモジュール1212は、テストベッドのアイテム1214および1216からデータ1218を生成する。
【0063】
[単一レーザ光線の光学式層間変位計]
次に、
図13A、13Bおよび13Cを参照すると、本発明者の単一レーザ光線の学式層間変位計システムの実施形態が示されている。
図13Aは、光学式層間変位計システムの各々のレーザ光線源として単一の高出力レーザ1304を有する複数階の構造を示す。個々の光学式層間変位計システム1306は、小さな円として表される。
【0064】
図13Bでは、光ファイバケーブルの束1310が、単一の強力なレーザ光線源(図示せず)に接続され、個々の光ファイバは、複数階の構造1308の各フロアに位置決めされ各光ファイバ式層間変位計システム1306に各々接続されている。
図13Cは、層間変位計システム1306にレーザ光線を供給する別の方法を示す。ここでは、強力なレーザ源(図示せず)に接続された単一の光ファイバケーブルが、光学式スイッチの使用によって、各層間変位計システムにレーザ光線を供給する。複数階の構造1308の各フロアは、層間変位計システム1306を有する。
【0065】
[コンピュータシステム]
コンピュータシステムは、各フロアの変位計システムからデータを収集し、データを分析し、結果を記憶する。
図14は、複数回の構造1400を示し、各該構造は、ここでは小さな正方形で表される変位計システム1402を備える。変位計システムは、ケーブルシステム1404によってコンピュータ1406に接続される。ケーブルシステム1404は、各変位計システム1402からの個々のケーブル、または単一のケーブルを使用する多重化システムとすることができる。あるいは、Bluetooth(登録商標)技術を使用したWI−FI(登録商標)システムを使用して、変位計をコンピュータシステム1406に接続することができる。コンピュータシステム1406は、変位計からデータを収集し、データを分析し、その結果を記憶する。結果は、所定の場所で目視することができ、遠隔地に出力することもできる。
【0066】
システム全体の設計に関して、発明者は、システム展開のための2つのオプションを開発した。
【0067】
オプション(1)測定が所望される各フロア位置における離散的なレーザおよび対応するPSD。
【0068】
オプション(2)センサ測定が行われる位置にレーザ光を配分する光ファイバケーブルを建造物内に配置した単一の高出力レーザ(この概念は、光ケーブルを含む新しい建造物に配備された場合に特に有用である。)。
【0069】
[各フロアレベルでピーク層間変位を読み取るためのデジタルバー]
いずれの方法でも、本発明者のシステムの大きな利点の1つは、最小限の処理および分析で、地震直後の応答情報を表示する能力である。
【0070】
[各フロアレベルでピークインターレースドリフトを読み出すためのデジタルバー]
本発明者は、各層間レベルで変位振幅を直ちに示し、これを建造物の所定の許容値と比較することができる視覚的な表示概念を開発した。センサは、所与のフロアレベルでの面内振動の両方向の位置におけるピーク層間変位を示すデジタル光学式バーを利用する。デジタルバーは、ピーク変位を示し、色は変位をコードし、変位が応答スペクトルのどこに対応するかを示す。デジタルバーの概念と、それがピーク変位を捕捉する様子が、
図15A、 15B、 15Cおよび15Dに示されている。
【0071】
このような読み出しは、監視している建造物のパネルに配置することができ、また、Web上で直ぐに送信され、携帯電話アプリケーションに表示されるので、認識力のある建造物所有者および動作管理者は、潜在的な損害指標を含む建造物応答に関する即時データを直ちに取得する。デジタルバーのプロトタイプが開発され、テストされた。
【0072】
図15A、15B、15Cおよび15Dは、複数階の構造の変位計設備から個々のフロアレベルのデータを表示するシステムを示す。本発明者は、層間変位測定値を表示する方法を開発した。これは、変位がカラーコードバーの読み取りによって物理的に示される動的バーシステムで構成されている。各方向において、レーザ振動は、その方向の層間変位を示すバーを「押す」(ピーク値を捕捉する機械的システムの電気的アナログである。)。ピーク変位バーがより高い値に押し出されると、それらは色を変え、測定される特定の建造物の所定の変位閾値にしたがってオレンジ色に、次に赤色に変化する。
【0073】
図15Aには、中間点の位置1504および個々のバー1502を有するLEDバーグラフディスプレイ1500が示されている。
図15Bでは、小さな地震事象の後のディスプレイ1500が示されている。中間点1504からある距離に位置する2つのバー1502は、軽度の損傷を示す色の緑色1506を表示する。
図15Cに示すように、中程度の地震事象の後、ディスプレイ1500は、中間点1404からさらに遠い距離に2つのバー1502を示し、これらのバー1508は黄色またはオレンジ色に着色され、使用の前にさらなる検査がほぼ必要となる中損傷であることを示す。
図15Dに示すように、バー1510は中間点1504からさらに遠くにあり、対応するフロアレベルで構造に対するより広範なレベルの損傷を示す赤色に着色される。
【0074】
説明された層間変位 測定の概念は、地震直後の建造物の応答を迅速かつ効果的に判定して表示する建造物層間変位計システムの技術的基礎を提供する。建造物全体に一組のセンサを実装することにより、建造物の所有者は、最大限の層間変位を直ちに読み取ることができ、建造物が建造物内の損傷レベルに関連する変位を受けているかどうかを知ることができる。問題となっている建造物の層間変位に対する予め設定された損傷閾値と比較すると、これは損傷レベルを示す層間ごとの「停止信号」グラフィックとして表示される。
【0075】
[発明者のシミュレーションと実験]
センサ設計の概念は、現実的な地震誘発された建築物層間変位と、センサ概念をテストするために特別に設計され構築された独自の実験的テストベッドとを組み合わせて、数値シミュレーションに基づいて徹底的に評価した。代表的な複数階の建造物の地震応答のコンピュータシミュレーションは、3階建てから40階建ての鉄骨フレーム建造物の繊維式弾塑性ビーム要素モデルを利用した。建造物の地震の振動は、過去の地震地動記録の集合から生成され、変位時間履歴のデータベースが作成された。多くの地震記録は、建造物の非弾性的な挙動を生成し、非弾性モデルは、地震の振動の終わりに恒久的な建造物の変位を示す建造物フレームの対応する恒久的な変形を形成する。
【0076】
これらの代表的なシミュレーション生成(合成)層間変位に対する新しいセンサ設計をテストするために、実験室で再現された建造物シミュレーションから層間記録を可能にする精密電気機械式振動テーブルからなる、適切に設計され製造された実験用テストベッドが作成された。この高精度テーブルには、2つの直交方向の振動(2軸地震振動の実験を可能にする)のための機能が含まれており、高分解能な位置フィードバックに基づいて精密リニアベアリングに取り付けられた金属プラットフォームを動かすステッピングモータから構成されている。金属プラットフォームは、位置感知検出器プロトタイプデバイスを配置し駆動するためのセンサの取り付けを提供した。
【0077】
振動テーブルのモータおよびモータ増幅器は、プラットフォームを非常に正確に移動させて特定の制御動作を達成するために、各モータの位置、速度および加速度を制御するデジタル振動コントローラによって制御される。制御システムの比例/積分/微分(PID)ゲインは、振動範囲、動的周波数の内容、および代表的な建造物構造の範囲内の変位振動を再現するのに必要なペイロード質量の範囲内で最適な性能が得られるように調整した。これは、3層(堅い)から40層(柔軟な)の層間の建造物のための層間変位の正確な表現を必要とした。
【0078】
ある範囲の変位を正確に複製するための振動テーブルの能力は、測定されたテーブル生成振動を入力ターゲット振動と比較することによって注意深く検証された。振動テーブルには、代表的な3階建ておよび40階建ての建造物の非弾性的な建造物応答のための恒久的な最終変位を含む層間変位を完全に複製する能力がある。振動テーブルおよび関連する自動制御ループは、非弾性作用による恒久的変位を含む層間変位 測定を、高い精度と正確さで再現できることが証明されている。
【0079】
[センサ性能の評価]
ダイオードベースのPSDセンサの性能を評価するために利用される全体的な手順は、3つのステップからなる;(1)デジタルファイル内で合成(計算された)過去に測定された地震地動記録を受けた代表的な建造物構造のコンピュータシミュレーションを実行し、合成(計算された)デジタルファイル内の層間変位時間履歴をセーブする; (2)シミュレーションされた層間変位に基づいて、「フロア」(テーブルプラットフォームの位置)と「天盤」(レーザの取り付け位置)との間のこれらの層間変位を複製するために電気機械的動作テーブルを駆動する;および (3)PSDセンサを利用して変位時間履歴を測定し、テーブル生成振動と比較してセンサ性能を評価する。
【0080】
このプロセスを使用して、ダイオード式プロトタイプセンサが層間変位振動の範囲について実験的に評価した。例えば、振動テーブルによって生成された制御モーショと、3階建ておよび40階建ての建造物のダイオードセンサによる対応する変位測定とを比較した。ダイオードセンサは、3階建ておよび40階建ての建造物の両方の層間変位の優れた追跡を提供し、振動履歴の最後に非弾性的な建造物の動作による恒久的な変位を正確に捕捉する。
【0081】
ダイオードセンサは、優れた性能を示し、光学式層間変位測定システムのシステム設計のための強力な技術的基礎を提供する。
【0082】
最後に、このようなPSDA式システムの精度を実証し、層間変位を測定してレーザの回転を適切に補正するために、シミュレーションされた地震振動入力下でスケールモデルの2階建ての建造築フレームが実験室で建設され、テストされた。
【0083】
上記の説明は多くの詳細および具体例を含むが、これらは出願の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、装置、システムおよび方法の現在の好ましい実施形態のいくつかの説明を単に提示するものとして解釈されるべきである。この特許文献に記載され説明されているものに基づいて、他の実装、拡張および変形を行うことができる。本明細書に記載の実施形態の特徴は、方法、装置、モジュール、システム、およびコンピュータプログラム製品のすべての可能な組合せで組み合わせることができる。別々の実施形態の文脈でこの特許文献に記載されている特定の特徴は、単一の実施形態で組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で記載されている様々な特徴は、複数の実施形態で別々にまたは任意の適切なサブコンビネーションで実施することもできる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして説明されており、当初はそのように主張されているものであっても、ある場合には、請求された組み合わせからの1つ以上の特徴を組み合わせから切り出すことができ、サブコンビネーションと同様に、動作は、特定の順序で図面に示されているが、これは、望ましい動作を達成するために、示された順序または順番どおりに、または図示されたすべての動作が実行されることを必要とするものとして理解されるべきではない。さらに、上述の実施形態における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実施形態においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではない。
【0084】
したがって、本出願の範囲は、他の実施形態を完全に包含するものであり、これらの実施形態は、当業者には明らかである。特許請求の範囲において、単数形の要素への言及は、明示的に述べられていない限り、「1つのみ」を意味するものではなく、むしろ「1つ以上」を意味するものとする。当業者に知られている上記の好ましい実施形態の要素に対する全ての構造的および機能的同等物は、本明細書に参考として明示的に援用され、本特許請求の範囲に包含されることが意図される。さらに、デバイスは、本発明の装置、システム、および方法によって解決されるべき各問題および各問題に対処する必要はなく、それは本請求項によって包含される。さらに、本開示における要素または構成要素は、要素または構成要素が請求項において明示的に列挙されているかどうかにかかわらず、公衆に捧げられることを意図していない。本明細書の請求項要素は、112項6段落に記載されているが、要素が「手段」の句を使用して明示的に列挙されていない限り、米国特許法第35条の規定の下で解釈されるべきである。
【0085】
装置、システム、および方法は、様々な変更および代替形態を受け入れることができるが、特定の実施形態は、図面の例として示されており、本明細書で詳細に説明されている。 しかしながら、本出願は、開示された特定の形態に限定されることを意図していないことを理解されたい。 むしろ、本出願は、以下の添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本出願の思想および範囲内に入るすべての改良、均等物、および代替物をカバーするものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図5】
図5は、
図2、3および4で示された装置のセンサアレイ部分についての拡大図および詳細を示す。
【
図6】
図6は、
図5で示された装置のセンサアレイの配分についての拡大図および詳細を示す。
【
図7】
図7は、ダイオードアレイセンサのサンプル回路を示す。
【
図9】
図9は、多重方向地震振動の影響を測定するために、レーザとセンサアレイとが直角に位置決めされた本発明の装置の実施形態を示す。
【
図10】
図10は、個別の構造要素の変形および回転を含む地震時の複数層間変位の単一ベイの変形を示す。
【
図11A】
図11Aは、層間変位の測定における局所的な回転を補正するための装置を示す。
【
図11B】
図11Bは、層間変位の測定における局所的な回転を補正するための装置を示す。
【
図11C】
図11Cは、層間変位の測定における局所的な回転を補正するための装置を示す。
【
図12】
図12は、PSDAセンサを有効に移動させる方法を示すフローチャートである。
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図13A】
図13Aは、単一レーザ光線の光学式層間変位計システムの実施形態を示す。
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図13B】
図13Bは、単一レーザ光線の光学式層間変位計システムの実施形態を示す。
【
図13C】
図13Cは、単一レーザ光線の光学式層間変位計システムの実施形態を示す。
【
図14】
図14は、各フロアの変位計システムからデータを収集して、データを分析し、結果を記憶するコンピュータシステムを示す。
【
図15A】
図15Aは、各フロアレベルでのピーク層間変位を即時に視覚的に読み取るためのデジタルバーを示す。
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図15B】
図15Bは、各フロアレベルでのピーク層間変位を即時に視覚的に読み取るためのデジタルバーを示す。
【
図15C】
図15Cは、各フロアレベルでのピーク層間変位を即時に視覚的に読み取るためのデジタルバーを示す。
【
図15D】
図15Dは、各フロアレベルでのピーク層間変位を即時に視覚的に読み取るためのデジタルバーを示す。