【実施例】
【0040】
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、特に記載がない限り、「%」は「質量%」、「ppm」は「質量ppm」を意味する。
【0041】
[実施例1]
脂肪分として乳脂(還元乳)のみを含有するミルクコーヒー飲料と、脂肪分として植物油脂のみを含有するミルクコーヒー飲料と、脂肪分として植物油脂のみを含有し、かつリモネンも含有するミルクコーヒー飲料とを調製し、植物油脂特有のクセとコーヒーの香り立ちを評価した。具体的には、表1の処方で、ミルクコーヒー飲料を調製し、アイス飲用(約4℃〜10℃)した時のコーヒーの鼻から抜ける香り、及び植物油脂のクセを評価した。表1中、インスタントコーヒー粉末は市販品(商品名:〈マキシム〉、味の素ゼネラルフーヅ(株)製)である。
【0042】
【表1】
【0043】
評価結果を表1に示す。この結果、乳脂のみを使用した飲料1−1は、当然ながら植物油脂のクセや不快な油っぽさはなく、かつコーヒーの香り立ちも良好であった。一方で、植物油脂のみを使用した飲料1−2は、植物油脂のクセがあり、かつコーヒーの香り立ちがやや不良であった。これに対して、飲料1−2にリモネンを添加した飲料1−3は、植物油脂のクセや油っぽさはなく、コーヒーの香り立ちも良好であった。これらの結果から、リモネンを含有させることにより、植物油脂特有のクセや油っぽさを抑制できることが明らかになった。
【0044】
[実施例2]
脂肪分として植物油脂のみを含有するミルクコーヒー飲料に対して様々な濃度のリモネンを添加し、その効果を調べた。
具体的には、表2の処方で、脂肪分として乳脂(還元乳)のみを含有するミルクコーヒー飲料2−1と、脂肪分として植物油脂のみを含有するミルクコーヒー飲料2−2と、脂肪分として植物油脂のみを含有し、かつリモネン濃度が0.05、0.1、0.5、1、5、10、15、又は20ppm(0.000005、0.00001、0.00005、0.0001、0.0005、0.001、0.0015、又は0.002%)となるように添加したミルクコーヒー飲料2−3〜2−10とを調製した。表2中のインスタントコーヒー粉末は表1と同じである。
【0045】
【表2】
【0046】
調製されたミルクコーヒー飲料のうち、リモネンを添加した飲料2−3〜2−10について、リモネン風味(柑橘様の風味)を感じるかどうかを、3名のパネルにより評価した。この結果、20ppmのリモネンを添加した飲料2−10は、3名のパネル全員がリモネン風味を感じると評価し、15ppmのリモネンを添加した飲料2−9は、3名のパネルのうち1名がリモネン風味を感じると評価し、残る2名は感じないと評価した。0.005〜10ppmのリモネンを添加した飲料2−3〜2−8については、3名のパネル全員がリモネン風味を感じないと評価した。
【0047】
リモネン風味が感じられなかった飲料2−3〜2−9について、油っぽさと植物油脂特有のクセに対するリモネンの効果を評価した。表3に示すように、各パネルが5段階(5点表記)で評価し、全パネルによる総評を5段階(○×表記)で評価した。リモネン不含有の飲料2−2を規準とし、油っぽさと植物油脂特有のクセが、飲料2−2と同程度の場合には「効果なし」とし、飲料2−2よりも油っぽさと植物油脂特有のクセが低減するほど、効果があるとした。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
評価結果を、各飲料中のリモネン濃度と共に表4に示す。表中、「リモネン濃度(飲料中、ppm)」とは、各飲料中のリモネン濃度を示し、「リモネン濃度(対油脂、ppm)」とは、各飲料中の植物油脂に対するリモネン濃度を示す。この結果、リモネンを含有させた飲料2−3〜2−9の全てにおいて、油っぽさと植物油脂特有のクセが低減しており、リモネンによる油感マスキング効果が確認された。中でも、飲料中のリモネン濃度が0.1〜5ppmであり、対植物油脂に対するリモネン濃度が3.3〜166ppm(植物油脂100質量部に対して0.00033〜0.0166質量部)である飲料2−4〜2−7では、高い効果が得られた。よりリモネン濃度が高い飲料2−8及び2−9は、油感が減り過ぎた結果、ミルクコーヒー飲料としてはすっきりとしすぎて薄くなったため、飲料2−7等よりも評価が低くなった。
【0051】
[実施例3]
植物油脂を含有するココア飲料、抹茶ミルク飲料、及びミルク紅茶飲料に対してリモネンを添加し、油感マスキング効果について調べた。
具体的には、表5に示す処方にて、リモネンを飲料中の濃度が1、5、又は10ppm(0.0001、0.0005、又は0.001%)となるように添加したココア飲料3a−1〜3a−3、抹茶ミルク飲料3b−1〜3b−3、ミルク紅茶飲料3c−1〜3c−3を調製した。表中、ココアパウダーは市販品(森永製菓(株)製)、抹茶パウダーは市販品(共栄製茶(株)製)である。紅茶は、市販品(三井農林(株)製)の茶葉70gに95℃の湯を500mL注ぎ、5分間抽出し、Brix分を固形分として調整したものである。
【0052】
【表5】
【0053】
各飲料について、油っぽさと植物油脂特有のクセに対するリモネンの効果を、リモネン不含有の飲料を規準とし、実施例2と同様にして評価した。3名のパネルによる総評の結果を、各飲料中のリモネン濃度及びパネルのコメントと共に表6〜8に示す。表中、「リモネン濃度(飲料中、ppm)」とは、各飲料中のリモネン濃度を示し、「リモネン濃度(対油脂、ppm)」とは、各飲料中の植物油脂に対するリモネン濃度を示す。この結果、リモネンを含有させた全ての飲料において、油っぽさと植物油脂特有のクセが低減しており、コーヒー以外の嗜好性飲料(抹茶、紅茶、ココア)でも同様の効果があることがわかった。
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
[実施例4]
異なる種類の植物油脂を含有するミルクコーヒー飲料に対してリモネンを添加し、油感マスキング効果について調べた。
具体的には、表9に示す処方にて、リモネンを飲料中の濃度が5ppm(0.0005%)となるように添加したミルクコーヒー飲料を調製した。表9中のインスタントコーヒー粉末は表1と同じである。
【0058】
【表9】
【0059】
飲料4−1〜4−2について、油っぽさと植物油脂特有のクセに対するリモネンの効果を、リモネン不含有の飲料を規準とし、実施例2と同様にして評価した。3名のパネルによる総評の結果を、各飲料中のリモネン濃度と共に表9に示す。表中、「リモネン濃度(飲料中、ppm)」とは、各飲料中のリモネン濃度を示し、「リモネン濃度(対油脂、ppm)」とは、各飲料中の植物油脂に対するリモネン濃度を示す。この結果、リモネンを含有させた飲料4−1〜4−2の両方において、油っぽさと植物油脂特有のクセが低減しており、植物油脂の種類にかかわらず、リモネンによる油感マスキング効果が確認された。
【0060】
[実施例5]
脂肪分として乳脂(還元乳)と植物油脂の両方を含有するミルクコーヒー飲料に対してリモネンを添加し、その効果を調べた。
具体的には、表10の処方で、脂肪分の30%が乳脂(還元乳)であり、70%が植物油脂であるミルクコーヒー飲料5−1と、このミルクコーヒー飲料5−1にリモネンを飲料中の濃度が0.5、1、5、又は10ppm(0.00005、0.0001、0.0005、又は0.001%)となるように添加したミルクコーヒー飲料5−2〜5−5とを調製した。表10中のインスタントコーヒー粉末は表1と同じである。
【0061】
【表10】
【0062】
飲料5−2〜5−5について、油っぽさと植物油脂特有のクセに対するリモネンの効果を、リモネン不含有の飲料5−1を規準とし、実施例2と同様にして評価した。3名のパネルによる総評の結果を、各飲料中のリモネン濃度と共に表11に示す。表中、「リモネン濃度(飲料中、ppm)」とは、各飲料中のリモネン濃度を示し、「リモネン濃度(対油脂、ppm)」とは、各飲料中の植物油脂に対するリモネン濃度を示す。この結果、リモネンを含有させた飲料5−2〜5−5の全てにおいて、油っぽさと植物油脂特有のクセが低減しており、植物油脂と乳脂の両方を含有する飲料においても、リモネンによる油感マスキング効果が確認された。
【0063】
【表11】
【0064】
[実施例6]
植物油脂と乳脂の含有割合の異なるミルクコーヒー飲料におけるリモネンの油感マスキング効果について調べた。
表12に示す処方にて、脂肪分として植物油脂のみを含有するミルクコーヒー飲料6−1と、脂肪分として乳脂(還元乳)のみを含有するミルクコーヒー飲料6−2とを調製し、さらに両者を1:3、1:1、又は3:1で混合したミルクコーヒー飲料6−3〜6−5を調製し、植物油脂特有のクセを評価した。表12中のインスタントコーヒー粉末は表1と同じである。
【0065】
【表12】
【0066】
【表13】
【0067】
3名のパネルの評価と総評の結果を、各飲料中の乳脂と植物油脂の含有割合と共に表13に示す。この結果、植物油脂の含有割合の多い飲料ほど、高い油感マスキング効果が得られた。乳脂しか含有していない飲料では、元々植物油脂に特有のクセや油っぽさがないため、リモネン添加によりやや異味が感じられた。
【0068】
[実施例7]
植物油脂と乳脂の含有割合の異なるココア飲料におけるリモネンの油感マスキング効果について調べた。
具体的には、インスタントコーヒー粉末にかえて、ココアパウダー(森永製菓(株)製)を用いた以外は、実施例6と同様にして、脂肪分中、乳脂と植物油脂の含有割合が、0:1、1:3、1:1、3:1、又は1:0であるココア飲料7−1、7-3〜5、7−2を調製し、植物油脂特有のクセを評価した。
【0069】
【表14】
【0070】
3名のパネルの評価と総評の結果を、各飲料中の乳脂と植物油脂の含有割合と共に表14に示す。この結果、実施例6のミルクコーヒー飲料の場合と同様に、植物油脂の含有割合の多い飲料ほど、高い油感マスキング効果が得られた。乳脂しか含有していない飲料では、元々植物油脂に特有のクセや油っぽさがないため、リモネン添加によりやや異味が感じられた。
【0071】
[実施例8]
乳原料を含有しないコーヒー飲料に対してリモネンを添加し、油感マスキング効果について調べた。
具体的には、表15に示す処方にて、脂肪分として植物油脂のみを含有し、乳原料を含有していないクリーミングパウダーを含有するコーヒー飲料8−1と、このコーヒー飲料8−1にリモネンを飲料中の濃度が0.5、5、又は10ppm(0.00005、0.0005、又は0.001%)となるように添加したコーヒー飲料8−2〜8−4を調製した。表15中のインスタントコーヒー粉末は表1と同じであり、クリーミングパウダーは市販品(商品名:〈マリーム〉、味の素ゼネラルフーヅ(株)製)である。
【0072】
【表15】
【0073】
【表16】
【0074】
飲料8−2〜8−4について、油っぽさと植物油脂特有のクセに対するリモネンの効果を、リモネン不含有の飲料8−1を規準とし、実施例2と同様にして評価した。3名のパネルによる総評の結果を、各飲料中のリモネン濃度と共に表16に示す。表中、「リモネン濃度(飲料中、ppm)」とは、各飲料中のリモネン濃度を示し、「リモネン濃度(対油脂、ppm)」とは、各飲料中の植物油脂に対するリモネン濃度を示す。この結果、リモネンを含有させた飲料8−2〜8−4の全てにおいて、油っぽさと植物油脂特有のクセが低減しており、乳原料を含有しない飲料においても、リモネンによる油感マスキング効果が確認された。
【0075】
[実施例9]
スプレッドに対してリモネンを添加し、油感マスキング効果について調べた。
具体的には、市販品のチョコレートスプレッド(商品名:〈明治クリーミースムース(チョコレート仕立て)〉、(株)明治製、無脂乳固形分:1.4%、乳脂肪分:9.5%、植物性脂肪分:47.1%)に、リモネンを、スプレッド中の濃度が1ppm(スプレッド中の植物油脂に対するリモネン濃度が2ppm)となるように混合し、実施例2と同様にして植物油脂特有のクセを評価した。
この結果、リモネン添加前のチョコレートスプレッドに比べて、リモネンを混合したチョコレートスプレッドは、油っぽさと植物油脂特有のクセが明らかに低減しており、植物油脂含有食品においてもリモネンによる油感マスキング効果があることが確認された。
【0076】
[実施例10]
脂肪分として植物油脂のみを含有するミルクコーヒー飲料に対して様々なテルペン類を添加し、その効果を調べた。
具体的には、表17の処方で、脂肪分として植物油脂のみを含有するミルクコーヒー飲料10−1と、脂肪分として植物油脂のみを含有し、かつテルピノレン、β−ピネン、α−ピネン、リナロール、ヌートカトン、又はバレンセンを表18に記載の濃度となるように添加したミルクコーヒー飲料10−2〜10−7を調製した。表17中のインスタントコーヒー粉末は表1と同じである。
【0077】
【表17】
【0078】
【表18】
【0079】
各飲料について、油っぽさと植物油脂特有のクセに対するテルペン類の効果を、テルペン類不含有の飲料10−1を規準とし、実施例2と同様にして評価した。3名のパネルによる総評の結果とパネルのコメントを、各飲料中のテルペン類の種類及び濃度と共に表18に示す。表中、「テルペン類」とは各飲料に添加したテルペン類の種類を示し、「テルペン類濃度(飲料中、ppm)」とは、各飲料中に添加したテルペン類の濃度を示し、「テルペン類濃度(対油脂、ppm)」とは、各飲料中の植物油脂に対するテルペン類濃度を示す。この結果、β−ピネン、α−ピネン、テルピノレン、リナロール、ヌートカトン、又はバレンセンを添加した飲料10−2〜10−7のいずれにおいても、油っぽさと植物油脂特有のクセが低減しており、リモネン以外のテルペン類であっても、リモネンと同様の効果があることがわかった。