(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリエチレン系樹脂(A)が、190℃におけるメルトフローインデックスが0.1〜10g/10min、密度が0.900〜0.935g/10minである直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルム。
該ポリエチレン系樹脂(A)が、190℃におけるメルトフローインデックスが0.1〜10g/10min、密度が0.915〜0.930g/10minである高圧法低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つの態様は、ポリエチレン系樹脂(A)を50〜99重量%及び特定の条件を満たすエチレン・α―オレフィン共重合体(B)を1〜50重量%含む層を1層以上備えることを特徴とする自動充填包装用ポリオレフィン系フィルム(重量%は当該層中の樹脂の全重量を基準とする)である。
【0011】
ポリエチレン系樹脂(A)としては、エチレン単独重合体、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体及びこれらの混合物が挙げられるが、特に、直鎖状低密度ポリエチレン及び高圧法低密度ポリエチレンが、製膜安定性と充填適性(適度に剛性があり、柔軟性もある)に優れることから、好ましい。
【0012】
直鎖状低密度ポリエチレンとは、密度が0.940g/cm
3以下の、いわゆるポリエチレンの主鎖が直鎖状であるエチレンの単独重合体またはエチレン−α−オレフィン共重合体を意味する。
【0013】
本発明で使用する直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.905〜0.940g/cm
3、より好ましくは0.910〜0.930g/cm
3、さらに好ましくは、0.920〜0.930g/cm
3である。密度が上記の範囲にあるとフィルムの腰が十分であり、柔軟性も良好である。なお、本明細書において、上記密度はJIS K7112に準じて、試験温度23℃で測定したものである。
【0014】
直鎖状低密度ポリエチレンの190℃におけるメルトフローインデックスは、好ましくは0.1〜4g/10min、より好ましくは0.1〜5g/min、さらに好ましくは、0.5〜3g/minである。メルトフローインデックスが上記の範囲にあると、成形性が良好であり、また、耐衝撃性や引張強度も良好である。
【0015】
直鎖状低密度ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1〜8の範囲、より好ましくは2〜5の範囲である。分子量分布が1未満であると成形加工性に劣るおそれがあり、8より高いと耐衝撃性が劣り、透明性も不十分となるおそれがある。
なお、本明細書において、上記分子量分布は、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)で求められ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定して得られたものであり、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行うものである。
【0016】
直鎖状低密度ポリエチレンがエチレン−α−オレフィン共重合体である場合、エチレン−α−オレフィン共重合体のコモノマーとして用いられるα−オレフィンは、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数4〜12、さらに好ましくは炭素数4〜8のα−オレフィンである。
具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。かかるエチレン・α−オレフィン共重合体の中でも、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等が特に好ましい。
コモノマーとして用いられる上記α−オレフィンは、1種類に限らず、ターポリマーのように2種類以上用いた多元系共重合体でもよい。具体例としては、エチレン・プロピレン・1−ブテン3元共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン3元共重合体等が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンから誘導される構成単位を主成分とするものが好ましく、エチレン含有量が好ましくは50〜99重量%、より好ましくは60〜97重量%、さらに好ましくは70〜95重量%の範囲から選択される。従って、α−オレフィン含有量は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%の範囲から選択される。
【0017】
エチレン−α−オレフィン共重合体は、製造方法によって特に限定されず、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒(シングルサイト系触媒)等の触媒を用いて製造される。メタロセン系触媒を使用する場合は、単一の反応で得られる重合体として結晶性分布が狭いものが得られるので、結晶性の異なる種々のエチレン・α−オレフィン共重合体のブレンドにより、上述した諸物性値を満足する組成物を得やすい利点がある。各成分に相当するエチレン−α−オレフィン共重合体は、数種類をブレンドしてもよく、多段重合で製造してもよい。
ここで、本明細書において、メタロセン系触媒とは、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒を意味し、本発明においては公知のメタロセン系触媒はいずれも使用できる。
【0018】
直鎖状低密度ポリエチレンの重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、上記の触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm
2以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等が挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合法、気相流動床法等が挙げられる。
係るエチレン−α−オレフィン共重合体としては、一般に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)又はメタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポン・ダウ社製「アフィニティー(登録商標)」、日本ポリエチレン社製「ノバテック(登録商標)LL」「カーネル(登録商標)」「ハーモレックス(登録商標)」、三井化学社製「エボリュー(登録商標)」、エクソン・モービル社製「エクシード(登録商標)」等が挙げられる。
【0019】
高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)は、好ましくは、高圧ラジカル重合法により製造される。低密度ポリエチレンの密度は、好ましく0.915〜0.930g/cm
3、より好ましくは0.918〜0.930g/cm
3、さらに好ましくは0.920〜0.930g/cm
3の範囲である。密度が上記の範囲にあると、フィルムの剛性と強度のバランスに優れる。
低密度ポリエチレンの190℃におけるメルトフローインデックスは、好ましくは0.1〜10g/10min、より好ましくは0.1〜5g/10min、更に好ましくは0.2〜2g/10minである。メルトフローインデックスが上記の範囲にあると、製膜安定性に優れるだけでなく、フィルム強度に優れる。
【0020】
エチレン・α―オレフィン共重合体(B)
本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムは、上記のポリエチレン系樹脂(A)及び特定の条件を満たすエチレン・α―オレフィン共重合体(B)を含む層を1層以上備えることを特徴とする。
本発明で使用するエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、下記に説明する条件(1)〜(5)、好ましくは更に条件(6)、更に(7)又は(8)を満たす。
【0021】
1−1.条件(1)MFR
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分を超え、10g/10分以下、好ましくは0.1g/10分を超え、5.0g/10分以下、より好ましくは0.1g/10分を超え、2.0g/10分以下である。
MFRがこの範囲にあると、フィルムに加工する際の加工特性や加工したフィルムの衝撃強度に優れる。一方、MFRが0.1g/10分以下では、成形加工性等の点で好ましくない場合があり、MFRが10g/10分より大きいと、フィルムに加工する際の成形加工性が悪化し加工したフィルムの衝撃強度が十分発現し難いので好ましくない。なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のMFRは、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定したときの値をいう。
MFRの調整は、エチレン重合中に共存させる連鎖移動剤(水素等)の量を変化させるか、重合温度を変化させることによって、調整することができ、水素の量を増加させる又は重合温度を高くすることにより、大きくすることができる。
【0022】
1−2.条件(2)密度
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)の密度は、0.895〜0.940g/cm
3であり、好ましく0.898g/cm
3以上、0.934g/cm
3未満、より好ましくは0.900〜0.930g/cm
3、特に好ましくは0.910〜0.930g/cm
3である。
密度が0.895g/cm
3未満ではポリオレフィン系樹脂の剛性が低下し、フィルムが柔らか過ぎて、必要以上に肉厚な設計を迫られるので好ましくない。また、ベトツキがひどくて取り扱いが困難となるなどのため好ましくない。また、密度が0.940g/cm
3より大きいと加工したフィルムの衝撃強度が十分発現し難いので好ましくない。
本明細書において、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS K7112(1999年版):A法(水中置換法)により測定することができる。
密度は、エチレン・α−オレフィンの重合時のα−オレフィンの量により調整することができる。
【0023】
1−3.条件(3)分子量分布
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、3.0〜5.5、好ましくは3.2〜5.5、より好ましくは3.2以上5.3未満、更に好ましくは3.2以上、5.1未満、特に好ましくは3.3〜5.0である。Mw/Mnが3.0未満では、押出成形時の加工性に劣り、メルトフラクチャー等の外観不良の原因となる為、避けるべきである。
Mw/Mnが5.5より大きいと該エチレン・α−オレフィン共重合体やそのフィルムの衝撃強度の低下につながる。また、ベトツキしやすくなるので好ましくない。なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のMwやMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×M
αは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10
−4、α=0.7
PE:K=3.92×10
−4、α=0.733
【0024】
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、
図1に例示されるように行う。
分子量分布(Mw/Mn)は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、また、異なる分子量の複数成分を混合することにより、所定の範囲とすることができる。
【0025】
1−4.条件(4)分岐指数gc
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、上記条件(1)〜(3)に加えて更に、示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が、0.40〜0.85、好ましくは0.45〜0.80、更に好ましくは0.45〜0.77、特に好ましくは0.45〜0.75である。g
C値が0.85より大きいと成形加工性が十分に発現しないので好ましくない。g
C値が0.40より小さいと、該ポリオレフィン樹脂の成形加工性は向上するが、衝撃強度が低下したり、透明性が悪化したりするので好ましくない。
なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のg
C値は、下記のGPC−VIS測定から算出する分子量分布曲線や分岐指数(g’)を用いた長鎖分岐量の評価手法である。
[GPC−VISによる分岐構造解析]
示差屈折計(RI)及び粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いることができる。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いることができる。カラム、試料注入部及び各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)及びViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行うことができる。
【0026】
参考文献:
1.Developments in polymer characterization,vol.4.Essex:Applied Science;1984.Chapter1.
2.Polymer,45,6495−6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424−2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945−6952(2000)
【0027】
[分岐指数(g
C)等の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐が導入されると、同じ分子量の線形のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐が導入されるに従い同じ分子量の線形ポリマーの極限粘度(ηlin)に対する分岐ポリマーの極限粘度(ηbranch)の比(ηbranch/ηlin)は小さくなっていく。したがって分岐指数(g’=ηbranch/ηlin)が1より小さい値になる場合には分岐が導入されていることを意味し、その値が小さくなるに従い導入されている長鎖分岐が増大していくことを意味する。特に本発明では、MALLSから得られる絶対分子量として、分子量10万から100万における上記g’の最低値を、g
Cとして算出する。
図2に上記GPC−VISによる解析結果の一例を示した。
図2は、分子量(M)における分岐指数(g’)を表す。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いることができる。
分岐指数g’の分子量10万から100万の間での最低値(gc)は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、好ましくは、特定のメタロセン触媒を使用することにより、所定の範囲とすることができる。
【0028】
1−5.条件(5)W
2+W
3
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、上記条件(1)〜(4)に加えて更に、(5)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合(W
2)及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合(W
3)の和(W
2+W
3)が、40重量%を超え、80重量%未満が好ましく、さらに好ましくは40重量%を超え、56重量%未満、特に好ましくは43重量%を超え、56重量%未満、更に好適には45重量%を超え、56重量%未満であることが好ましい。W
2+W
3値が40重量%以下であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるポリオレフィン系樹脂の衝撃強度向上に効果的に作用する低密度高分子量成分の割合が減少したり、該エチレン・α−オレフィン共重合体の剛性向上に効果的に作用する高密度低密度成分が減少したりするので好ましくない。一方、W
2+W
3値が80重量%以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる該高密度低分子量成分と該低密度高分子量成分の含有量のバランスが崩れ、透明性の悪化やゲルが発生したりするので好ましくない。
【0029】
[CFCの測定条件]
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)は、結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る。
このCFCを用いた分析は、次のようにして行われる。
まず、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させる。所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得られる。その間、TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入される。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られる。
【0030】
なお、CFCの測定条件は、以下の通りである。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
【0031】
[データ解析]
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムから、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。
さらに、溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が求められる。
また、各クロマトグラムから、次の手順により分子量分布が求められる。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×M
αは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10
−4、α=0.7
PE:K=3.92×10
−4、α=0.733
なお、第1溶出温度でのクロマトグラムでは、溶媒に添加したBHTによるピークと溶出成分の低分子量側とが重なる場合があるが、その際は、
図1のようにベースラインを引き分子量分布を求める区間を定める。
さらに、下記の表1のように、各溶出温度における溶出割合(表中のwt%)と重量平均分子量(表中のMw)からwhole(全体)の重量平均分子量を求める。
【0033】
また、各溶出温度における分子量分布及び溶出量から、文献(S.Nakano,Y.Goto,”Development of automatic Cross Fractionation:Combination of Crystallizability Fractionation and Molecular Weight Fractionation”,J.Appl.Polym.Sci.,vol.26,pp.4217−4231(1981))の方法に従って、溶出温度と分子量に関する溶出量を等高線として示すグラフ(等高線図)を得る。
上記の等高線図を用いて、以下の成分量を求める。
W
1:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
W
2:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
W
3:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
W
4:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
なお、W
1+W
2+W
3+W
4=100である。
W
2+W
3の値は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、好ましくは、特定のメタロセン触媒を使用することにより、所定の範囲とすることができる。
【0034】
1−6.条件(6)W
2+W
4
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、(1−5)で前記したW
2及びW
4の和(W
2+W
4)が、25重量%を超え、50重量%未満、好ましくは29重量%を超え、50重量%未満、より好ましくは29重量%を超え、45重量%未満、更に好ましくは30〜43重量%、特に好ましくは30〜42重量%である。W
2+W
4が25重量%以下であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる衝撃強度向上に効果的に作用する高分子量成分が減少するので好ましくなかったり、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる成型加工性向上に特に効果的に作用する高分子量の長鎖分岐成分が減少するので好ましくなかったり、それら高分子量成分や長鎖分岐成分の割合が減少するので好ましくない。一方、W
2+W
4値が50重量%以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる高分子量成分や高分子量の長鎖分岐成分の割合が多いため、透明性の悪化やゲルが発生したりするので好ましくない。
【0035】
1−7.条件(7)W
2−W
4
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、(1−6)で前記したW
2とW
4の差(W
2−W
4)が、0重量%を超え、20重量%未満、好ましくは0重量%を超え、15重量%未満、より好ましくは1重量%を超え、15重量%未満、更に好ましくは2重量%を超え、14重量%未満、特に好ましくは2重量%を超え、13重量%未満である。W
2−W
4が0重量%以下であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる衝撃強度向上に特に効果的に作用する低密度高分子量成分が減少するので好ましくない。一方、W
2−W
4値が20重量%以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる高密度高分子量成分と低密度高分子量成分の含有量のバランスが崩れ、透明性の悪化やゲルが発生したりするので好ましくない。
【0036】
1−8.条件(8)X
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、好ましくは、昇温溶出分別(TREF)により85℃以上で溶出する成分の割合(X)が2〜15重量%、好ましくは3〜14重量%、更に好ましくは4〜13重量%である。X値が15重量%より大きいと、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる衝撃強度向上に効果的に作用する低密度成分の割合が減少してしまうので好ましくない。X値が2重量%より小さいと、剛性が悪化したりする場合があるので好ましくない場合がある。
[TREFの測定条件]
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し、溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、更に続いて1℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、20分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。この時、85℃から140℃までの間に溶出する成分量をX(単位wt%)とする。
【0037】
使用装置は、下記のとおりである。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000
(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ、4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル、光路長1.5mm、窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
測定条件
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
【0038】
1−9.溶融張力(MT)
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、溶融張力(メルトテンション:MT)が高く、好ましくは40mN以上である。MTが40mN未満では、成形加工特性、特にTダイ成形やインフレーション成形時の安定性が低下する傾向がある。
【0039】
MTは、溶融させたエチレン系重合体を一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定される値であり、以下の条件において測定できる。試験機として、東洋精機社製キャピログラフ1Bを使用し、オリフィス:L/D=8.0/2.095、流入角フラット、設定温度:190℃、ピストンスピード:10mm/分、引取り速度4.0m/分の条件にて測定される。
MTは、特に、ポリエチレンの分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)を適宜選択することにより調製することが可能である。
【0040】
2.エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の組成
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体である。ここで用いられる共重合成分であるα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1等が挙げられる。また、これらα−オレフィンは1種のみでもよく、また2種以上が併用されていてもよい。これらのうち、より好ましいα−オレフィンは炭素数3〜8のものであり、具体的にはプロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等が挙げられる。更に好ましいα−オレフィンは炭素数4又は炭素数6のものであり、具体的にはブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1が挙げられる。特に好ましいα−オレフィンは、ヘキセン−1である。
【0041】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)中におけるエチレンとα−オレフィンの割合は、エチレン約75〜99.8重量%、α−オレフィン約0.2〜25重量%であり、好ましくはエチレン約80〜99.6重量%、α−オレフィン約0.4〜20重量%であり、より好ましくはエチレン約82〜99.2重量%、α−オレフィン約0.8〜18重量%であり、更に好ましくはエチレン約85〜99重量%、α−オレフィン約1〜15重量%であり、特に好ましくはエチレン約88〜98重量%、α−オレフィン約2〜12重量%である。エチレン含量がこの範囲内であれば、ポリエチレン系樹脂への改質効果が高い。
共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。もちろん、エチレンやα−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能であり、この場合、スチレン、4−メチルスチレン、4−ジメチルアミノスチレン等のスチレン類、1,4−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等のジエン類、ノルボルネン、シクロペンテン等の環状化合物、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチル等の含酸素化合物類、等の重合性二重結合を有する化合物を挙げることができる。ただしジエン類を使用する場合は長鎖分岐構造や分子量分布が上記の条件を満たす範囲内において使用しなくてはいけないことは言うまでもない。
【0042】
3.エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の製造方法
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、上記の条件を全て満たすように製造して使用される。その製造は、オレフィン重合用触媒を用いてエチレンと上述のα−オレフィンとを共重合する方法によって実施される。
オレフィン重合用触媒としては、今日様々な種類のものが知られており、該触媒成分の構成及び重合条件や後処理条件の工夫の範囲内において上記条件を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体が準備可能であれば何ら制限されるものではないが、本発明で使用するエチレン・α−オレフィン共重合体(B)が有する特定の長鎖分岐構造、組成分布構造、MFR、密度を同時に実現するための好適な製造方法例として、以下に説明する特定の触媒成分(X)、(Y)及び(Z)を含むオレフィン重合用触媒を用いる方法を挙げることができる。
触媒成分(X):遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物。
触媒成分(Y):成分(X)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物。
触媒成分(Z):無機化合物担体。
【0043】
3−1.触媒成分(X)
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を製造するのに好ましい触媒成分(X)は、遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物であり、より好ましくは下記の一般式[1]で表されるメタロセン化合物であり、更に好ましくは下記の一般式[2]で表されるメタロセン化合物である。
【0045】
[但し、式[1]中、MはTi、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。A
1はシクロペンタジエニル環(共役五員環)構造を有する配位子を、A
2はインデニル環構造を有する配位子を、Q
1はA
1とA
2を任意の位置で架橋する結合性基を示す。X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。]
【0047】
[但し、式[2]中、MはTi、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。Q
1はシクロペンタジエニル環とインデニル環を架橋する結合性基を示す。X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。10個のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。]
【0048】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を製造するのに特に好ましい触媒成分(X)は、特開2013−227271号公報に記載された一般式(1c)で表されるメタロセン化合物である。
【0050】
[但し、式(1c)中、略号の説明は全て特開2013−227271号公報の記載に従う。すなわち、M
1cは、Ti、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。X
1c及びX
2cは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。Q
1cとQ
2cは、各々独立して、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を示す。R
1cは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を示し、4つのR
1cのうち少なくとも2つが結合してQ
1c及びQ
2cと一緒に環を形成していてもよい。m
cは、0又は1であり、m
cが0の場合、Q
1cは、R
2cを含む共役5員環と直接結合している。R
2c及びR
4cは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。R
3cは、下記一般式(1−ac)で示される置換アリール基を示す。]
【0051】
【化4】
[但し、式(1−ac)中、Y
1cは、周期表14族、15族又は16族の原子を示す。R
5c、R
6c、R
7c、R
8c及びR
9cは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、R
5c、R
6c、R
7c、R
8c及びR
9cは隣接する基同士で結合して、それらに結合している原子と一緒に環を形成していてもよい。n
cは、0又は1であり、n
cが0の場合、Y
1cに置換基R
5cが存在しない。p
cは、0又は1であり、p
cが0の場合、R
7cが結合する炭素原子とR
9cが結合する炭素原子は直接結合している。Y
1cが炭素原子の場合、R
5c、R
6c、R
7c、R
8c、R
9cのうち少なくとも1つは水素原子ではない。]
【0052】
上記一般式(1c)中、メタロセン化合物のM
1cは、Ti、Zr又はHfを表し、メタロセン化合物のM
1cは、好ましくはZr又はHfを表し、メタロセン化合物のM
1cは、更に好ましくはZrを表す。また、X
1c及びX
2cは、それぞれ独立して、水素原子、又は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、i−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、i−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、アセチル基、1−オキソプロピル基、1−オキソ−n−ブチル基、2−メチル−1−オキソプロピル基、2,2−ジメチル−1−オキソ−プロピル基、フェニルアセチル基、ジフェニルアセチル基、ベンゾイル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−フリル基、2−テトラヒドロフリル基、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジi−プロピルアミノメチル基、ビス(ジメチルアミノ)メチル基、ビス(ジi−プロピルアミノ)メチル基、(ジメチルアミノ)(フェニル)メチル基、メチルイミノ基、エチルイミノ基、1−(メチルイミノ)エチル基、1−(フェニルイミノ)エチル基、1−[(フェニルメチル)イミノ]エチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジi−プロピルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、ジi−ブチルアミノ基、ジt−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
好ましいX
1c及びX
2cの具体例としては、塩素原子、臭素原子、メチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、フェノキシ基、ジメチルアミノ基、ジi−プロピルアミノ基が挙げられる。これらの具体例の中でも、塩素原子、メチル基、ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0053】
また、Q
1cとQ
2cは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を示す。好ましくは炭素原子又はケイ素原子である。より好ましくはケイ素原子である。
さらに、R
1cとしては、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などが挙げられる。また、R
1cがQ
1c及びQ
2cと一緒に環を形成している場合として、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロへキシリデン基、シラシクロブチル基、シラシクロペンチル基、シラシクロヘキシル基などが挙げられる。
好ましいR
1cの具体例として、Q
1c又は/及びQ
2cが炭素原子の場合、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、エチレン基、シクロブチリデン基が挙げられ、また、Q
1c又は/及びQ
2cがケイ素原子の場合、メチル基、エチル基、フェニル基、シラシクロブチル基が挙げられる。
【0054】
また、R
2cとR
4cは、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基、ビス(t−ブチルジメチルシリル)メチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモプロピル基、3−ブロモプロピル基、2−ブロモシクロペンチル基、2,3−ジブロモシクロペンチル基、2−ブロモ−3−ヨードシクロペンチル基、2,3−ジブロモシクロヘキシル基、2−クロロ−3−ヨードシクロヘキシル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、2−メチルフリル基、トリメチルシリル基、トリt−ブチルシリル基、ジt−ブチルメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0055】
また、R
2cとR
4cは、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基であると、特に重合活性が高くなるので、好ましい。
R
2cとR
4cの好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−メチルフリル基、トリメチルシリル基が挙げられる。これらの具体例の中でも、水素原子、メチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基がさらに好ましく、水素原子、メチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基が特に好ましい。
【0056】
置換基のR
3cは、上記一般式(1−ac)で示される構造を有する置換アリール基、好ましくは、特定の置換基を有するPh基、又はフリル基類、チエニル基類を示す。具体的には、4−トリメチルシリルフェニル基、4−(t−ブチルジメチルシリル)フェニル基、3,5−ビストリメチルシリルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、2−フリル基、2−(5−メチル)フリル基、2−(5−t−ブチル)フリル基、2−(5−トリメチルシリル)フリル基、2−(4,5−ジメチル)フリル基、2−ベンゾフリル基、2−チエニル基、2−(5−メチル)チエニル基、2−(5−t−ブチル)チエニル基、2−(5−トリメチルシリル)チエニル基、2−(4,5−ジメチル)チエニル基、などが挙げられる。
【0057】
また、一般式(1c)中、m
cは、0又は1であり、m
cが0の場合、Q
1cは、R
2cを含む共役5員環と直接結合している。
【0058】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を製造するのに最も好ましい触媒成分(X)は、特開2013−227271号公報に記載された一般式(2c)で表されるメタロセン化合物である。
【0060】
上記の一般式(2c)で示されるメタロセン化合物において、M
1c、X
1c、X
2c、Q
1c、R
1c、R
2c及びR
4cは、前述の一般式(1c)で示されるメタロセン化合物の説明で示した原子及び基と同様な構造を選択することができる。また、R
10cは前述の一般式(1c)で示されるメタロセン化合物の説明で示したR
5c、R
6c、R
7c、R
8c、R
9cの原子及び基と同様な構造を選択することができる。
【0061】
上記メタロセン化合物の具体例として、特開2013−227271号公報の表1c中に記載された化合物を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0062】
上記具体例の化合物はジルコニウム化合物又はハフニウム化合物であることが好ましく、ジルコニウム化合物であることが更に好ましい。
【0063】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに好ましい触媒成分(A)として、上述の架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物を2種以上用いることもできる。
【0064】
3−2.触媒成分(Y)
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を製造するのに好ましい触媒成分(Y)は、成分(X)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物であり、より好ましくは特開2013−227271号公報[0064]〜[0083]に記載された成分(B)であり、更に好ましくは同[0065]〜[0069]に記載された有機アルミニウムオキシ化合物である。
【0065】
3−3.触媒成分(Z)
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を製造するのに好ましい触媒成分(Z)は、無機化合物担体であり、より好ましくは特開2013−227271号公報[0084]〜[0088]に記載された無機化合物である。この時、無機化合物として好ましいのは該公報[0085]に記載された金属酸化物である。
【0066】
3−4.オレフィン重合用触媒の製造方法
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、上記触媒成分(X)〜(Z)を含むオレフィン重合用触媒を用いてエチレンと上述のα−オレフィンとを共重合する方法によって好適に製造される。上記触媒成分(X)〜(Z)からオレフィン重合用触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下に示す(I)〜(III)の方法が任意に採用可能である。
【0067】
(I)上記遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物である触媒成分(X)と、上記触媒成分(X)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物である触媒成分(Y)とを接触させた後、無機化合物担体である触媒成分(Z)を接触させる。
(II)触媒成分(X)と触媒成分(Z)とを接触させた後、触媒成分(Y)を接触させる。
(III)触媒成分(Y)と触媒成分(Z)とを接触させた後、触媒成分(X)を接触させる。
【0068】
これらの接触方法の中で(I)と(III)が好ましく、さらに(I)が最も好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下又は非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃、さらに好ましくは0℃〜50℃の温度にて、5分〜50時間、好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは30分〜12時間で行うことが望ましい。
【0069】
また、触媒成分(X)、触媒成分(Y)及び触媒成分(Z)の接触に際しては、上記した通り、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族又は脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
【0070】
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素あるいは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、あるいは一旦可溶性溶媒の一部又は全部を、乾燥等の手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では、各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
【0071】
触媒成分(X)、触媒成分(Y)及び触媒成分(Z)の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
【0072】
触媒成分(Y)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、触媒成分(X)中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常、1〜100,000、好ましくは100〜1000、さらに好ましくは210〜800、特に好ましくは250〜500の範囲が望ましく、また、ボラン化合物やボレート化合物を用いる場合、触媒成分(A)中の遷移金属(M)に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常、0.01〜100、好ましくは0.1〜50、さらに好ましくは0.2〜10の範囲で選択することが望ましい。さらに、触媒成分(B)として、有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物、ボレート化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、遷移金属(M)に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
【0073】
触媒成分(Z)の使用量は、触媒成分(X)中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.2ミリモル当たり、さらに好ましくは0.005〜0.1ミリモル当たり、特に好ましくは0.01〜0.04ミリモル当たり1gである。
【0074】
また、触媒成分(Z)1gに対する触媒成分(Y)の金属のモル数の割合は、好ましくは、0.005を超え0.020(モル/g)以下、より好ましくは、0.006を超え〜0.015(モル/g)以下、更に好ましくは、0.006を超え0.012(モル/g)以下、特に好ましくは、0.007〜0.010(モル/g)である。
【0075】
触媒成分(X)、触媒成分(Y)及び触媒成分(Z)を、前記した接触方法(I)〜(III)を適宜選択して相互に接触させ、しかる後、溶媒を除去することで、オレフィン重合用触媒を固体触媒として得ることができる。溶媒の除去は、常圧下又は減圧下、0〜200℃、好ましくは20〜150℃、更に好ましくは20〜100℃で1分〜100時間、好ましくは10分〜50時間、更に好ましくは30分〜20時間で行うことが望ましい。
【0076】
なお、オレフィン重合用触媒は、以下に示す(IV)、(V)の方法によっても得ることができる。
(IV)触媒成分(X)と触媒成分(Z)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と接触させる。
(V)触媒成分(Y)である有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と触媒成分(Z)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で触媒成分(X)と接触させる。
上記(IV)、(V)の接触方法の場合も、成分比、接触条件及び溶媒除去条件は、前記と同様の条件が使用できる。
【0077】
また、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を得るのに好適なオレフィン重合用触媒として、触媒成分(X)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる触媒成分(Y)と触媒成分(Z)とを兼ねる成分として、特開平05−301917号公報、同08−127613号公報等に記載されてよく知られている層状珪酸塩を用いることもできる。層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0078】
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
【0079】
触媒成分(X)と層状珪酸塩担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。触媒成分(X)の担持量は、層状珪酸塩担体1gあたり、0.0001〜5ミリモル、好ましくは0.001〜0.5ミリモル、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモルである。
【0080】
こうして得られるオレフィン重合用触媒は、必要に応じてモノマーの予備重合を行った後に使用しても差し支えない。
【0081】
3−5.エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の重合方法
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、好適には上記3−4に記載された製法により準備されたオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンと上述のα−オレフィンとを共重合して製造される。
【0082】
コモノマーであるα−オレフィンとしては、上述したように、炭素数3〜10のα−オレフィンが使用可能であり、2種類以上のα−オレフィンをエチレンと共重合させることも可能であり、該α−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能である。
【0083】
上記共重合反応は、好ましくは気相法又はスラリー法にて、行うことができる。気相重合の場合、実質的に酸素、水等を断った状態で、エチレンやコモノマーのガス流を導入、流通、又は循環した反応器内においてエチレン等を重合させる。また、スラリー重合の場合、イソブタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で、エチレン等を重合させる。また、液状エチレンや液状プロピレン等の液体モノマーも溶媒として使用できることは言うまでもない。本発明において、更に好ましい重合は、気相重合である。重合条件は、温度が0〜250℃、好ましくは20〜110℃、更に好ましくは60〜100℃であり、圧力が常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜4MPa、更に好ましくは0.5〜2MPaの範囲にあり、重合時間としては5分〜20時間、好ましくは30分〜10時間が採用されるのが普通である。
【0084】
生成共重合体の分子量は、触媒成分(X)や触媒成分(Y)の種類、触媒のモル比、重合温度等の重合条件を変えることによってもある程度調節可能であるが、重合反応系に水素を添加することで、より効果的に分子量調節を行うことができる。また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。
なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
生成共重合体の長鎖分岐構造(すなわちg
C)やコモノマー共重合組成分布(すなわちW
1〜W
4等)は、触媒成分(X)や触媒成分(Y)の種類、触媒のモル比、重合温度や圧力、時間等の重合条件や重合プロセスを変えることによって調節可能である。長鎖分岐構造を形成しやすい触媒成分種を選択しても、例えば重合温度を下げたりエチレン圧力を上げたりして長鎖分岐構造の少ない共重合体を製造することも可能である。また、分子量分布や共重合組成分布の広い触媒成分種を選択しても、例えば触媒成分モル比、重合条件や重合プロセスを変えることによって分子量分布や共重合組成分布の狭い共重合体を製造することも可能である。
【0085】
水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式においても、重合条件を適切に設定するならば、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造することが可能であり得るだろうが、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、一段階重合反応により製造される場合、複雑な重合運転条件を設定することなく、より経済的に製造できるので好ましい。
【0086】
本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルム
本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムは、上記したポリエチレン系樹脂(A)及び上記したエチレン・α―オレフィン共重合体(B)を含む層(以下「層(X)」ともいう。)を1層以上備えることを特徴とする。
ポリエチレン系樹脂(A)及びエチレン・α―オレフィン共重合体(B)の含有量としては、当該層(X)は、層(X)中の樹脂の全重量を基準として、好ましくは、ポリエチレン系樹脂(A)を50〜99重量%及びエチレン・α―オレフィン共重合体(B)を1〜50重量%、より好ましくは、ポリエチレン系樹脂(A)を60〜95重量%及びエチレン・α―オレフィン共重合体(B)を5〜40重量%、更に好ましくは、ポリエチレン系樹脂(A)を70〜90重量%及びエチレン・α―オレフィン共重合体(B)を10〜30重量%含有する。
ここで、本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムにおいて層(X)が複数ある場合は、各層(X)におけるポリエチレン系樹脂(A)及びエチレン・α―オレフィン共重合体(B)の含有量は同じであっても異なっていてもよい。
【0087】
層(X)には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエチレン系樹脂(A)及び上記したエチレン・α―オレフィン共重合体(B)以外に他のポリオレフィン系樹脂を含んでもよい。他のポリオレフィン系樹脂としては、中・高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと他のα−オレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、官能基含有ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0088】
本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムは単層フィルムでも多層フィルムであってもよい。
多層フィルムの場合は、全ての層が層(X)であってもよく、一部の層が層(X)であってもよい。後者の場合、多層フィルムにおける層(X)以外の層は、ポリエチレン系樹脂等の樹脂を含むことができる。
【0089】
本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムの厚みは、好ましくは50〜100μmである。フィルムの厚みがこの範囲にあると強度的に有利である。
【0090】
本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムは、好適にはアンチブロッキング剤、スリップ剤及び帯電防止剤を含有する。ここで、本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムが多層フィルムの場合は、全ての層、または一部の層がこれら添加剤を含むことができる。
【0091】
アンチブロッキング剤としては、自動充填等の包装用ポリオレフィン系フィルムで通常使用されるアンチブロッキング剤を使用することができるが、例えば、タルク、天然シリカ、合成シリカ、合成ゼオライト、ケイ酸マグネシウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、架橋ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
【0092】
スリップ剤としては、自動充填等の包装用ポリオレフィン系フィルムで通常使用されるスリップ剤を使用することができるが、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。
【0093】
帯電防止剤としては、自動充填等の包装用ポリオレフィン系フィルムで通常使用される帯電防止剤を使用することができるが、例えば、エステル系帯電防止剤、アミン系帯電防止剤、高分子型帯電防止剤等が挙げられる。
【0094】
本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば、中和剤、耐候剤、紫外線吸収剤、顔料、安定剤、酸化防止剤、防曇剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、防黴剤、結晶核剤、相溶剤、アンチブロッキング剤、発泡剤、無機電解質、フィラー、充填剤、香料等のその他の樹脂添加剤を配合することができる。
本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムが多層フィルムの場合は、全ての層、または一部の層がこれら添加剤を含むことができる。
【0095】
本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムは、通常の空冷インフレーション成形、空冷二段冷却インフレーション成形、水冷インフレーション成形、Tダイ成形等で製造することができ、さらに、通常の方法により、自動充填包装用フィルムに適した形態に加工することができる。
【0096】
本発明のもう一つの態様は、上記で説明した本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムを用いて作製された包装袋である。
本発明の包装袋は、本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムを、自動充填機に供することにより作製することができる。本発明の自動充填包装用ポリオレフィン系フィルムは、中でも充填包装形態が二方シールである場合に好適に用いられる。
また、本発明の包装袋の用途としては、例えば、米袋、砂糖袋、重袋用などがある。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における物性の測定と評価は、以下に示す方法によって実施し、原料は以下のものを用いた。
【0098】
1.使用原料
(1)ポリエチレン系樹脂(A)
C4LLDPE:日本ポリエチレン(株)製、商品名ノバテックUF230、MFR=1.0g/10分、密度=0.921g/cm
3
C6LLDPE:日本ポリエチレン(株)製、商品名ノバテックSF240、MFR=2.0g/10分、密度=0.920g/cm
3
LDPE:日本ポリエチレン(株)製、商品名ノバテックLF240、MFR=0.7g/10分、密度=0.924g/cm
3
mLLDPE:日本ポリエチレン(株)製、商品名ハーモレックスNF366A、MFR=1.5g/10分、密度=0.919g/cm
3
【0099】
(2)エチレン・α―オレフィン共重合体(B)(mLCB)
MFR=0.36g/10分、密度=0.921g/cm
3
<エチレン・α−オレフィン系重合体(B)の重合法>
下記合成法により剛性した重合体(mLCB)を用いた。
(1)架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物の合成
ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを、特開2013−227271号公報記載の方法に従い合成した。
(2)オレフィン重合用触媒の合成
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに400℃で5時間焼成したシリカ30グラムを入れ、次いで脱水トルエン195mlを追加してスラリーとした。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、上記(1)で合成したジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド412ミリグラムを入れ、脱水トルエン80.7mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液78.9mlを加え30分間撹拌した。シリカのトルエンスラリー液の入った500ml三口フラスコを40℃のオイルバスで加熱及び撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したまま15分静沈して上澄み221mlを除去し、脱水ヘキサンを加えて撹拌、静沈、上澄み除去を行うことにより溶媒中のトルエン含有量が3%以下になるまで置換した後、減圧留去して粉状触媒を得た。
(3)オレフィン重合用触媒の処理
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに、上記(2)で得た粉状触媒のうち32gを入れ、脱水ヘキサン195mlと脱水流動パラフィン(MORESCO社製;商品名モレスコホワイトP−120)180gの混合液を室温で加えて10分撹拌した後、室温で溶媒中のヘキサン含有量が5%以下になるまで減圧留去してスラリー触媒を得た。
(4)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造
上記(3)で得たスラリー触媒を使用してエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。すなわち、温度85℃、ヘキセン/エチレンモル比0.43%、水素/エチレンモル比0.52%、エチレン圧を1.5MPaに準備された気相連続重合装置に該粉状触媒を0.027g/時間の速さで間欠的に供給しながらガス組成と温度を一定にして重合を行った。また、系内の清浄性を保つためトリエチルアルミニウム(TEA)を0.04mmol/hrでガス循環ラインに供給した。その結果、生成ポリエチレンの平均生成速度は180g/時間(平均滞留時間10時間)となった。累積5kg以上のポリエチレンを生成した後に得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体のMFRと密度は各々0.36g/10分、0.921g/cm
3であった。
【0100】
<エチレン・α−オレフィン系重合体(B)の物性>
【0101】
2.単層インフレーションフィルムの成形
以下の成形装置、成形条件により単層インフレーションフィルムを成形した。
成形機:単層インフレーション成形機(株式会社プラコー製)
押出機:50mmφ
ダイス径:75mmφ
ダイリップ:3mm
加工温度:C1=180℃、C2〜D2=190℃
フィルム厚み:60μm、50μm
押出量:18kg/hr(厚み60μm)、17kg/hr(厚み50μm)
引取速度:11.5m/min(厚み60μm)、14m/min(厚み50μm)
BUR:2.0(236mm幅)
【0102】
3.多層インフレーションフィルムの成形
以下の成形装置、成形条件により多層インフレーションフィルムを成形した。
成形機:多層インフレーション成形機(株式会社プラコー製)
押出機:50mmφ×55mmφ×50mmφ
ダイス径:200mmφ
ダイリップ:3mm
加工温度:C1=180℃、C2〜D2=190℃
フィルム厚み:70μm
押出量:60kg/hr
引取速度:13m/min
BUR:2.0(628mm幅)
【0103】
4.物性測定
[物性の測定方法]
(1)MFR
JIS K7210の「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定した。
(2)密度
JIS K7112(1999年版):A法(水中置換法)により測定した。
(3)GPCにより測定される分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、
図1に例示されるように行った。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いた。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10
−4、α=0.7
PE:K=3.92×10
−4、α=0.733
【0104】
(4)示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)
示差屈折計(RI)及び粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いた。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いた。カラム、試料注入部及び各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとした。注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)及びViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、上述した文献を参考にして計算を行った。
[分岐指数(gC)等の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出した。
MALLSから得られる絶対分子量として、分子量10万から100万における上記g’の最低値を、gCとして算出した。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いた。
【0105】
(5)昇温溶出分別(TREF)により85℃以上で溶出する成分の割合(X)
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し、溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、更に続いて1℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、20分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。この時、85℃から140℃までの間に溶出する成分量をX(単位wt%)とする。
使用装置は、下記のとおりである。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000
(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ、4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル、光路長1.5mm、窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
測定条件
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
【0106】
(6)W
2+W
3、W
2+W
4、W
2−W
4
結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により行った。
即ち、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させた。
所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得た。その間、TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入された。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られた。
なお、CFCの測定条件は、以下の通りである。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0、5、10、15、,20、25、30、35、40、45、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82、85、88、91、94、97、100、102、120、140
データ解析
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムから、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)を求めた。
また、各クロマトグラムから、上述のGPCと同じ手順により分子量分布を求めた。
各溶出温度における分子量分布及び溶出量から、文献(S.Nakano,Y.Goto,”Development of automatic Cross Fractionation:Combination of Crystallizability Fractionation and Molecular Weight Fractionation”,J.Appl.Polym.Sci.,vol.26,pp.4217−4231(1981))の方法に従って、溶出温度と分子量に関する溶出量を等高線として示すグラフ(等高線図)を得た。
上記の等高線図を用いて、以下の成分量を求めた。
W
1:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
W
2:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
W
3:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
W
4:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
なお、W
1+W
2+W
3+W
4=100である。
【0107】
(7)フィルムインパクト強度の測定
以下の装置を用いてフィルムインパクト強度を評価した。
装置:フィルムインパクトテスター(株式会社東洋精機製作所製、JIS P8134準拠)
測定環境:温度23℃、湿度50%
衝撃ヘッド:1インチ半球型(60μm、50μm)、1/2インチ半球型(70μm)
【0108】
(8)ブロッキングの測定
ASTM D1893に準拠し、以下の装置を用いてブロッキング強度を評価した。
装置:テンシロン引張試験機(株式会社オリエンテック製)
測定環境:温度23℃、湿度50%
試験片幅:20mm
密着面積:10cm
2
試験速度:500mm/min
チャック間距離:100mm
【0109】
(9)メルトテンションの測定
以下の装置を用いてメルトテンションを測定した。
装置:キャピログラフ1B(株式会社東洋精機製作所製)
試験速度:4m/min
ピストン移動速度:10m/min
試験温度:190℃
オリフィス:L=8.0mm/D=2.095(L:流路長さ、D:流路径)
【0110】
[実施例1及び2、比較例1及び2]
上記原料を用いて表1に記載の配合で厚み60μmと50μmの単層インフレーションフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
[実施例3、比較例3]
上記原料を用いて表2に記載の配合で厚み70μm、層比1:1:1の多層インフレーションフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
[実施例4及び5、比較例4〜6]
上記原料を用いて、表3の配合でメルトテンションを測定した。結果を表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
(評価)
表1、2から明らかなように、実施例1〜3と比較例1〜3を比較すると、LDPEとエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を同量添加した場合、エチレン・α―オレフィン共重合体(B)添加系フィルムの方が、フィルムインパクト強度が向上し、ブロッキングが低減する。ブロッキングが低減することにより、チューブ状フィルムの口元が開き易くなり、自動充填時のフィルムの開口性が向上する。
更に表3から明らかなように、エチレン・α―オレフィン共重合体(B)はLDPEと同程度のメルトテンション改良効果を発揮している。メルトテンションはインフレーション成形時のバブルの安定性と関係があり、数値が大きいほど、バブルの安定性が高いと言える。したがって、エチレン・α―オレフィン共重合体(B)はLDPEと同程度の成形性改良効果を示している。
以上より、エチレン・α―オレフィン共重合体(B)を添加することで、LDPE添加系と同等の成形性を保持しながら、フィルム強度に優れるだけでなく、開口性にも優れた自動充填用ポリオレフィンフィルムが得られることが明らかとなった。