【文献】
小熊広之,炭素繊維強化熱可塑プラスチックス(CFRTP)の構造部材への適用,埼玉県産業技術総合センター研究報告 ,日本,2015年10月,第13巻,p.15-19,URL,https://www.pref.saitama.lg.jp/saitec/kenkyukaihatsu/kenkyuhokoku/h26.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料は、航空機、自動車、スポーツ用品等広範な用途に用いられ、各産業界では、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、電気的特性等、多様な観点から製品に適した繊維強化複合材料の研究開発が進められる。機械的強度の検討項目の一つとして、基材と強化繊維との界面接着強度が挙げられる。
【0003】
繊維強化複合材料の基材と強化繊維との界面接着強度は、日本工業規格に規定される引張試験方法や曲げ試験方法、またはこれらに準ずる方法に従って繊維強化複合材料に負荷をかけ、基材と強化繊維との界面に剥離が現れるか否かを観察することで検査できる。
【0004】
上記の検査方法に用いる試験片の例として、強化繊維を繊維強化複合材料の幅方向に配列した層、すなわち90°層を備え、90°層の強化繊維の配列方向と直交する方向に強化繊維を配列した0°層を最外層として積層させた繊維強化複合材料から切り出して作製したものがある。しかし上記の試験片に負荷をかけると、90°層が層の厚み方向に亀裂が貫通して割れる場合がある。一方で、90°層の割れの原因は特定し難く、必ずしも基材と強化繊維との界面剥離が原因とは限らない。したがって、上記の試験片に表れる基材と強化繊維との界面状態を観察しても、正確に界面接着強度を評価することが困難である。
【0005】
他の界面接着強度検査方法として、非特許文献1を参照できる。非特許文献1には、90°層を最外層とする繊維強化複合材料における基材と強化繊維との界面状態の観察結果が開示される。しかし90°層を最外層とする繊維強化複合材料でも、90°層の厚み方向の割れを完全には回避できない。また非特許文献1ではSEMにより基材と強化繊維との界面状態を観察する。そのため検査の作業量が多くなる。また基材と強化繊維との界面剥離発見には技量を要する。
【0006】
しかし、材料開発を促進させるためには、基材と強化繊維との界面状態を簡便に観察でき、界面接着強度を正確に評価できる界面接着強度検査方法が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、繊維強化複合材料の基材と強化繊維との界面接着強度を簡便かつ正確に検査できる界面接着強度検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、強化繊維を一方向に配列した複数の強化繊維層を、隣接する強化繊維層に含まれる強化繊維の配列方向を互いに異ならせて積層させた繊維強化複合材料の一方の最外層である第一の強化繊維層と、第一の強化繊維層と反対側の最外層である第二の強化繊維層との少なくとも一方の表面に保護層を積層させた試験片に、試験片の面方向に対し垂直な方向から負荷をかけ、負荷後、第一の強化繊維層と第二の強化繊維層とのいずれか一つ以上であって、かつ保護層を積層させた強化繊維層の基材と強化繊維との界面状態を観察する繊維強化複合材料の界面接着強度検査方法である。
【0010】
本発明は、3層以上の強化繊維層を備える繊維強化複合材料の第一の強化繊維層と第二の強化繊維層とのいずれか一つ以上であって、かつ保護層を積層させた強化繊維層が、それぞれ独立して30°層ないし90°層からなる群から一つ選択され、第一の強化繊維層と第二の強化繊維層との間に積層される少なくとも一層の強化繊維層に含まれる強化繊維の配列方向と、繊維強化複合材料の長さ方向に平行な方向とがなす配向角度が0°以上60°以下である試験片に負荷をかける界面接着強度検査方法を包含する。
【0011】
本発明は、3層以上の強化繊維層を備える繊維強化複合材料の第一の強化繊維層と第二の強化繊維層とのいずれか一つ以上であって、かつ保護層を積層させた強化繊維層が90°層であって、第一の強化繊維層と第二の強化繊維層との間に積層される少なくとも一層の強化繊維層に含まれる強化繊維の配列方向と、繊維強化複合材料の長さ方向に平行な方向とがなす配向角度が0°以上60°以下である試験片に負荷をかける界面接着強度検査方法を包含する。
【0012】
本発明は、高分子材料を含む保護層を積層させた試験片に負荷をかける繊維強化複合材料の界面接着強度検査方法を包含する。繊維強化複合材料の基材と同じ材料を含む保護層を積層させた試験片に負荷をかけることが好ましい。また、保護層の厚みが、隣接する強化繊維層の厚みより小さい試験片に負荷をかけることが好ましい。
【0013】
本発明は、炭素繊維と、ガラス繊維と、アラミド繊維と、炭化ケイ素繊維と、セラミック繊維と、金属繊維とからなる群から一つ以上選択される強化繊維を含む繊維強化複合材料の試験片に負荷をかける繊維強化複合材料の界面接着強度検査方法を包含する。
【0014】
本発明は、試験片に一回以上負荷をかけ、基材と強化繊維との界面状態を段階的に観察する繊維強化複合材料の界面接着強度検査方法を包含する。
【0015】
本発明は、強化繊維を一方向に配列した複数の強化繊維層を、隣接する強化繊維層に含まれる強化繊維の配列方向を互いに異ならせて積層させた繊維強化複合材料の一方の最外層である第一の強化繊維層と第一の強化繊維層と反対側の最外層である第二の強化繊維層との少なくとも一方の表面に保護層を積層させた繊維強化複合材料の界面接着強度検査に用いる試験片を包含する。
【0016】
当該試験片は、3層以上の強化繊維層を備える繊維強化複合材料の第一の強化繊維層と第二の強化繊維層とのいずれか一つ以上であって、かつ保護層を積層させた強化繊維層が、それぞれ独立して30°層ないし90°層からなる群から一つ選択され、第一の強化繊維層と第二の強化繊維層との間に積層される少なくとも一層の強化繊維層に含まれる強化繊維の配列方向と、繊維強化複合材料の長さ方向と平行な方向とがなす配向角度が0°以上60°以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、繊維強化複合材料の基材と繊維との界面接着強度を簡便かつ正確に検査できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、強化繊維を一方向に配列した複数の強化繊維層を、隣接する強化繊維層に含まれる強化繊維の配列方向を互いに異ならせて積層させた繊維強化複合材料の一方の最外層である第一の強化繊維層と、第一の強化繊維層と反対側の最外層である第二の強化繊維層との少なくとも一方の表面に保護層を積層させた試験片に、試験片の面方向に対し垂直な方向から負荷をかけ、負荷後、第一の強化繊維層と第二の強化繊維層とのいずれか一つ以上であって、かつ保護層を積層させた強化繊維層の基材と強化繊維との界面状態を観察する繊維強化複合材料の界面接着強度検査方法である。
【0020】
上記の態様によれば、試験片に所定の負荷をかけても最外層を積層方向に亀裂が貫通することを回避できる。本発明は保護層を積層させることにより、繊維強化複合材料の最外層が負荷に対し脆弱な配列方向で試験機に支持された場合でも、強化繊維層の基材と強化繊維層との亀裂の伸展を抑制し、界面剥離を層内に留めることができる。
【0021】
例えば、試験片を、繊維強化複合材料の最外層を構成する強化繊維層に含まれる強化繊維の配列方向を、試験機の圧子の軸線方向と平行な方向になるように試験機で支持し、負荷をかけても上記の作用効果が得られる。すなわち、第一の強化繊維層と第二の強化繊維層とのいずれか一つ以上に保護層を積層させることにより、保護層を積層させた強化繊維層における基材と強化繊維との界面状態を光学顕微鏡等の簡便な手段で観察し、基材と強化繊維との局所的な界面剥離を検査できる。
【0022】
保護層は、強化繊維層は、第一の強化繊維層と第二の強化繊維層との界面状態を観察したい所望の層のいずれか一層に積層させればよい。第一と第二の強化繊維層とのいずれにも保護層を積層させてもよく、これにより、一回の負荷で、後に記載する曲げ試験と引張試験との試験結果を観察できるため好ましい。
【0023】
本発明は、3層以上の強化繊維層を備える繊維強化複合材料の第一の強化繊維層と第二の強化繊維層とのいずれか一つ以上であって、かつ保護層を積層させた強化繊維層が、それぞれ独立して30°層ないし90°層からなる群から一つ選択され、第一の強化繊維層と第二の強化繊維層との間に積層される少なくとも一層の強化繊維層に含まれる強化繊維の配列方向と、繊維強化複合材料の長さ方向とがなす配向角度が0°以上60°以下である試験片に負荷をかけることが好ましい。
【0024】
さらに、3層以上の強化繊維層を備える繊維強化複合材料の第一の強化繊維層と第二の強化繊維層とのいずれか一つ以上であって、かつ保護層を積層させた強化繊維層が90°層であって、第一の強化繊維層と第二の強化繊維層との間に積層される少なくとも一層の強化繊維層に含まれる強化繊維の配列方向と、繊維強化複合材料の長さ方向と平行な方向とがなす配向角度が0°以上60°以下である試験片に負荷をかけることが好ましい。
【0025】
本発明において、強化繊維の配列方向と、繊維強化複合材料の長さ方向に平行な方向とがなす配向角度とは、当該強化繊維が繊維強化複合材料の長さ方向に平行な方向に対し形成する直角または鋭角を意味する。また当該配向角度が0°の場合、強化繊維の配列方向が、繊維強化複合材料の長さ方向と平行であることを意味する。本発明の第一の強化繊維層と第二の強化繊維層とのいずれか一つ以上であって、かつ保護層を積層させた強化繊維層について、これに含まれる強化繊維は、繊維強化複合材料の長さ方向に平行な方向との間になす配向角度が30°ないし90°になるように配列される。
【0026】
本発明において、試験片に用いられる繊維強化複合材料の強化繊維層は、いずれも強化繊維の配列方向に対応させて表現されうる。すなわち、繊維強化複合材料の長さ方向に平行な方向を0°方向として、当該強化繊維層において強化繊維の配列方向が、繊維強化複合材料の長さ方向に平行な方向との間になす配向角度が+θ°の場合、+θ°層と表現できる。また、上記の配向角度が−θ°の場合、−θ°層と表現できる。本発明において明記しない場合、θ°層とは、+θ°層を意味する。
【0027】
例えば、90°層とは、強化繊維の配列方向が、繊維強化複合材料の長さ方向に直交する方向である層をいい、別言すれば、強化繊維の配列方向が繊維強化複合材料の幅方向に平行な層である。30°層とは、強化繊維が、繊維強化複合材料の長さ方向に平行な方向に対し、30°の方向に配列された層をいう。45°層とは、強化繊維が、繊維強化複合材料の長さ方向に平行な方向に対し、45°の方向に配列された層をいう。60°層とは、強化繊維が、繊維強化複合材料の長さ方向に平行な方向に対し、60°の方向に配列された層をいう。0°層とは、強化繊維が、繊維強化複合材料の長さ方向に平行な方向に配列された層であり、強化繊維が、繊維強化複合材料の幅方向に直交する方向に配列された層と言い換えることもできる。なお本発明について「平行」または「直交」の用語を用いて説明される態様は、試験片の作製上および操作上の誤差が本発明の作用効果を損なわない範囲で許容される。
【0028】
本発明において、保護層を積層させる第一の強化繊維層や第二の強化繊維層は、30°層ないし90°層からなる群から一つ選択される。したがって、当該強化繊維層に含まれる強化繊維の配列方向は、得られる繊維強化複合材料の長さ方向を0°方向として、30°ないし90°の方向であれば、いずれの方向でもよい。具体的には、30°層、45°層、60°層、75°層、90°層等を例示できるが、本発明の作用効果を損なわない限り、これらの例に限定されない。第一と第二の強化繊維層とに含まれる強化繊維の配列方向は、上記の範囲内において、互いに同じでもよく異なっていてもよいが、すくなくとも一つが90°層であることが好ましく、いずれも90°層であることがより好ましい。
【0029】
本発明においては、保護層を積層させた最外層の強化繊維層と隣接する強化繊維層は、その強化繊維の配列方向が最外層に含まれる強化繊維の配列方向と異なっていればよい。繊維強化複合材料の機械的強度を向上させるためである。第一の強化繊維層と第二の強化繊維層との間に積層される強化繊維層は、これに含まれる強化繊維の配列方向と繊維強化複合材料の長さ方向と平行な方向とがなす配向角度が0°以上60°以下であることが好ましい。
【0030】
90°層は、本発明で試験片にかけられる負荷に対し脆弱な強化繊維層の例である。繊維強化複合材料が対称積層構成である場合、第一の強化繊維層と第二の強化繊維層はいずれも90°層として積層される。本発明は繊維強化複合材料の第一の強化繊維層や第二の強化繊維層が90°層であっても、層内の基材と強化繊維との界面剥離の有無を正確に検査できる。
【0031】
上記の態様の試験片において、90°層における強化繊維の配列方向を試験機の圧子の軸線方向と平行にして試験機に支持させると、本発明は、試験片に保護層を積層させることで、保護層がない試験片の検査と比較して、少ない負荷でも界面剥離を発生させうる。これにより検査の労力を軽減できる。
【0032】
本発明のための試験片に適用できる繊維強化複合材料の積層構成のさらに詳細な具体例としては、[90m/0n/90p]、[90m/30n/90p]、[90m/45n/90p]、[90m/60n/90p]、[60m/0n/60p]、[60m/30n/60p]、[60m/45n/60p]、[45m/0n/45p]、[45m/30n/45p]、[30m/0n/30p]、[90m/0n/60p]、[60m/0n/45p]、[45m/0n/30p]等が挙げられる。mとpとは1以上の整数であり、mとpとが等しいことが好ましい。nは1以上の整数で、mとpとのそれぞれに対し、同じでも異なっていてもよい。nを大きくして、得られる繊維強化複合材料の厚みを大きくすることで、少ない負荷で基材と強化繊維との界面剥離を発生させやすくなる。mとnとpとの上限値は、いずれも得られる繊維強化複合材料が用途に適した厚みにできる範囲内であればよい。
【0033】
本発明の繊維強化複合材料は、対称積層構成が好ましい。これにより繊維強化複合材料の成形時の反り、歪みやたわみを回避できる。繊維強化複合材料の積層順序、配向角度、積層数等は繊維強化複合材料の用途に対応して適宜選択できる。
【0034】
本発明は、炭素繊維と、ガラス繊維、アラミド繊維と、炭化ケイ素繊維と、セラミック繊維と、金属繊維とからなる群から一つ以上選択される強化繊維を含む繊維強化複合材料の試験片に負荷をかける場合に適する。試験片の耐熱性が高い繊維強化複合材料の検査を行う場合、強化繊維として、炭素繊維やガラス繊維、炭化ケイ素繊維等を選択した繊維強化複合材料に保護層を積層させた試験片が好ましい。
【0035】
試験片を作製する繊維強化複合材料の基材は、選択された強化繊維や、得られる繊維強化複合材料に求められる機械的強度、耐熱性、成形性を考慮して選択される。具体的には、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂に例示される高分子材料を用いることができる。熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)を含むスーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。耐熱性が高い繊維強化複合材料を作製する場合、PEEK、PEI、PPSを選択する場合がある。
【0036】
試験片に積層させる保護層は、高分子材料を含む。具体的には熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。繊維強化複合材料の基材と同じ材料を含むことが好ましい。これにより繊維強化複合材料と保護層との接着性を良好にできる。
【0037】
保護層の厚みは、負荷による強化繊維層の界面剥離の伸展を抑制し、強化繊維層内に界面剥離を局所的に留めることができれば、特に限定されない。ただし引張試験により界面状態を観察する場合には、観察領域に含まれる強化繊維層の厚みより保護層の厚みが小さいことが好ましい。保護層の厚みが強化繊維層の厚みより大きいと、所望の強化繊維層に応力を集中させることができず、局所的な界面剥離を観察することができなくなる場合がある。また、観察結果を有限要素解析(Finite Element Analysis、FEA)に利用する場合は、保護層の厚みは本発明の作用効果を損なわない限りで小さい方が好ましい。
【0038】
本発明では、日本工業規格JIS K 7164(プラスチック−引張特性の試験方法−第4部:等方性及び直交異方性繊維強化プラスチックの試験条件)、JIS K 7017(繊維強化プラスチック-曲げ特製の求め方)およびこれに準ずる方法に従って、試験片に対し引張試験や曲げ試験を行って、試験片に負荷をかける。引張試験は界面剥離の有無を簡便に観察することに適する。一方、曲げ試験では応力分布等の詳細なデータ解析を行う場合に適する。
【0039】
本発明は、上記の方法により一回負荷をかけた後、保護層を積層させた強化繊維層の基材と強化繊維との界面状態を観察する。観察時の試験片は負荷をかけたままでもよく、除荷した後に観察してもよい。観察時に除荷するか否かは、検査の作業環境に対応して負担が少ない方を選択することができる。
【0040】
本発明は試験片に一回以上負荷をかけ、基材と強化繊維との界面状態を段階的に観察することもできる。段階的に観察する態様としては、一回目の負荷後界面状態を観察して観察領域に基材と強化繊維との界面剥離を確認できない場合はさらに負荷をかけ、界面剥離を確認できるまで、繰り返し負荷をかける態様や、複数回負荷をかける場合は、一回負荷をかけた後、一旦除荷して、次の負荷をかける態様、また除荷することなく更なる負荷をかける態様を例示できる。
【0041】
本発明で用いられる試験片は、プリプレグに保護層を積層させて製造することができる。例えば、強化繊維糸を一方向に配列した強化繊維シートを所望の積層構成になるように複数枚積層させて得られる積層体に基材を含浸させ、基材を硬化させ、成形してプリプレグを作製する。得られたプリプレグに保護層を形成するための高分子材料を含むシートまたはフィルムを積層させ、成形しプリプレグと一体化させたのち、所定の形状に切り出すことで製造できる。成形法としてはオートクレーブ法、レジントランスファーモールディング法、ホットプレス法等を適用できる。
【実施例】
【0042】
本発明の実施例を
図1を用いて説明する。ただし本発明は本実施例に限定されない。
図1は本発明の界面接着強度検査方法の例を示す概略図である。
図1(a)は、部分的に図示した試験機で試験片を支持した状態を示す。
図1(b)は強化繊維層の観察領域を拡大した拡大図である。
図1(c)は、
図1(b)に示す観察領域をさらに拡大した拡大図である。
図1において、100は試験片、110は繊維強化複合材料、121、122は保護層である。また111ないし113はそれぞれ第一ないし第三の強化繊維層である。なお以下の説明では、第一ないし第三の強化繊維層に含まれる強化繊維の配列方向を、それぞれ第一ないし第三の配列方向と記載する場合がある。
【0043】
本実施例で用いた繊維強化複合材料110は、炭素繊維に基材として熱可塑性樹脂を含浸させたもので、積層構成は[90
6/0
14/90
6]であった。すなわち第一の強化繊維層111と、第二の強化繊維層112とは、いずれも炭素繊維一方向織物を6枚積層させた90°層であった。第三の強化繊維層113は、炭素繊維一方向織物を7枚積層させた0°層であった。したがって、第一と第三との強化繊維層にそれぞれ含まれる強化繊維の配列方向がなす配向角度は90°である。
【0044】
第一の強化繊維層111と第二の強化繊維層112との表面に、熱可塑性樹脂フィルムをそれぞれ積層させた。保護層を形成する熱可塑性樹脂フィルムは、成形後の保護層121、122の厚みが所望の試験に適切な厚みになるものを使用した。すなわち、得られた積層体を成形後、所定の大きさに切り出して試験片を作製した。
【0045】
繊維強化複合材料の総厚みと各層の厚みとは、積層構成と成型方法、用いるプリプレグの厚さに基づいて推定できる。これらの厚みの推定値について、本発明の作用効果を損なわない限り微細な誤差は許容される。
【0046】
作製した試験片100を試験機にセットした。試験機は、圧子901の半径、支点902、903の半径、支点間距離が日本工業規格JIS K 7017(繊維強化プラスチック-曲げ特製の求め方)に準じるものを用いた。試験片は、第一と第二との配列方向がY方向に平行になるように試験機に支持させた。圧子901の軸線Aの方向もY方向であるので、第一と第二との配列方向と試験機の圧子901の軸線Aの方向とは平行である。このとき第三の強化繊維層113の配列方向はX方向に平行である。
【0047】
圧子901によって、試験片100に対し試験片の面方向に垂直な方向、すなわちZ方向に負荷Nを一回かけた。負荷速度等、他の明記しない事項についても日本工業規格JIS K 7017(繊維強化プラスチック-曲げ特製の求め方)に準じた。
【0048】
除荷後、
図1(b)に示す観察領域について、第二の強化繊維層112における強化繊維114と基材115との界面状態を光学顕微鏡で観察した。その結果、第二の強化繊維層112を貫通する割れは認められず、
図1(c)に示す局所的な強化繊維114と基材115との界面剥離Fを確認した。
【0049】
本発明は、繊維強化複合材料の最外層の強化繊維層の基材と強化繊維との界面状態を観察し、界面剥離を確認したときにかけられた負荷に基づいて、当該繊維強化複合材料の機械的強度を評価できる。界面剥離を確認したときにかけられた負荷が、想定される用途での使用環境でかかる負荷と同程度またはそれ以下の場合は、当該用途の材料としては不適当と評価されうる。
【0050】
本発明は、耐熱性や靱性に優れた特殊な繊維強化複合材料の強化繊維と基材との界面接着強度検査方法にも適用できる。したがって、航空機や自動車の部材に用いられる繊維強化複合材料の研究開発に寄与する。なお本発明の界面接着強度検査方法の結果を参考に、実用では、保護層を備えない繊維強化複合材料を使用できる。ただし本発明の試験片と同様に、保護層を備えた積層構成の繊維強化複合材料を実用化する可能性を排除しない。