特許第6682881号(P6682881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682881
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/14 20060101AFI20200406BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20200406BHJP
   H02K 16/02 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   H02K21/14 M
   H02K21/24 M
   H02K16/02
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-14845(P2016-14845)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2017-135892(P2017-135892A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 雅史
(72)【発明者】
【氏名】平本 健二
【審査官】 大島 等志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−153637(JP,A)
【文献】 特開2009−136046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 21/14
H02K 16/02
H02K 21/24
H02K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータとロータが対向配置された回転電機であって、
ステータは、
環状コア部と、
環状コア部に巻回され、交流電流が流れることで磁界を発生する電機子巻線
を備え、
ロータは、
ロータの回転軸線と直交方向においてステータと対向配置され、回転軸線まわりの周方向に交互に配置されたラジアル永久磁石及びラジアル突極部を備えるラジアルロータ部と、
回転軸線と平行方向においてステータと対向配置され、回転軸線まわりの周方向に交互に配置されたアキシャル永久磁石及びアキシャル突極部を備えるアキシャルロータ部と、
を備え、
回転軸線まわりの周方向に関してラジアル永久磁石とアキシャル永久磁石は互いにずらして配置され、
回転軸線周りの周方向に関してラジアル突極部とアキシャル突極部は互いにずらして配置され、
ラジアルロータ部とアキシャルロータ部は機械的に連結されるとともに、ラジアル永久磁石とアキシャル永久磁石の間の少なくともラジアル永久磁石近傍及びアキシャル永久磁石近傍に磁気障壁が配置される、
回転電機。
【請求項2】
ステータは、さらに、
直流電流が流れることでラジアルロータ部とアキシャルロータ部と環状コア部を通る界磁磁束を発生する界磁巻線
を備え、
ラジアル永久磁石とアキシャル永久磁石の間のラジアル永久磁石近傍及びアキシャル永久磁石近傍に磁気障壁が配置され、
ラジアル突極部とアキシャル突極部の間は磁気障壁なく磁気的に結合される、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
ラジアル永久磁石とアキシャル永久磁石の間の全ての領域に磁気障壁が配置される、
請求項1に記載に回転電機。
【請求項4】
ラジアル突極部は回転軸線周りの周方向に3分割されてそれぞれの間に磁気障壁が配置され、
3分割されたラジアル突極部のいずれかと、アキシャル突極部の間は磁気障壁なく磁気的に結合される、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項5】
ラジアル突極部は回転軸線と平行方向に2分割されてそれぞれの間に磁気障壁が配置され、
2分割されたラジアル突極部のいずれかと、アキシャル突極部の間は磁気障壁なく磁気的に結合される、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項6】
アキシャル突極部は回転軸線周りの周方向に3分割されてそれぞれの間に磁気障壁が配置され、
ラジアル突極部と、3分割されたアキシャル突極部のいずれかの間は磁気障壁なく磁気的に結合される、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項7】
アキシャル突極部は回転軸線と平行方向に2分割されてそれぞれの間に磁気障壁が配置され、
ラジアル突極部と、2分割されたアキシャル突極部のいずれかの間は磁気障壁なく磁気的に結合される、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項8】
ラジアル突極部とアキシャル突極部はそれぞれ回転軸線まわりの周方向に3分割され、
3分割されたラジアル突極部のそれぞれの間、及び3分割されたアキシャル突極部のそれぞれの間に磁気障壁が配置され、
3分割されたラジアル突極部のいずれかと、3分割されたアキシャル突極部のいずれかの間は磁気障壁なく磁気的に結合される、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項9】
ラジアル突極部は回転軸線と平行方向に2分割され、アキシャル突極部は回転軸線と直交方向に2分割され、
2分割されたラジアル突極部のそれぞれの間、及び2分割されたアキシャル突極部のそれぞれの間に磁気障壁が配置され、
2分割されたラジアル突極部のいずれかと、2分割されたアキシャル突極部のいずれかの間は磁気障壁なく磁気的に結合される、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項10】
磁気障壁は、空隙または非磁性材料で構成される、
請求項〜9のいずれかに記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に関し、特にロータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数面、例えばラジアル面とアキシャル面、ラジアル面とラジアル面、アキシャル面とアキシャル面をトルク発生面とする回転電機が提案されている。
【0003】
特許文献1には、ラジアル面とアキシャル面をトルク発生面とする例として、ステータとロータとが対向配置された回転電機が記載されている。ロータは、 ロータの回転軸線と直交する径方向においてステータと対向配置されたラジアルロータ部と、回転軸線と平行方向においてステータと対向配置され、ラジアルロータ部と機械的かつ磁気的に連結されたアキシャルロータ部を有する。また、ステータは、 環状コア部と、 直流電流が流れることでラジアルロータ部とアキシャルロータ部と環状コア部とを通る界磁磁束を発生させる界磁巻線と、 環状コア部にトロイダル巻きされ、交流電流が流れることで前記界磁磁束と相互作用する磁界を発生する電機子巻線を有する。
【0004】
ラジアルロータ部は、界磁巻線に直流電流が流れることで磁化するラジアル磁極部を含み、アキシャルロータ部は、回転軸線まわりの周方向に関してラジアル磁極部に対してずらして配置され、界磁巻線に直流電流が流れることでラジアル磁極部と逆の極性に磁化するアキシャル磁極部を含む。その他、特許文献2には、ラジアル面2面をトルク発生面とする回転電機が記載され、特許文献3及び特許文献4には、アキシャル面2面をトルク発生面とする回転電機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−226808号公報
【特許文献2】特開平6−351206号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0046124号
【特許文献4】国際公開第03/003546号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の回転電機では、ラジアル永久磁石及びアキシャル永久磁石による界磁磁束は、
ラジアル永久磁石→エアギャップ→ラジアルティース→環状コア部→アキシャルティース→エアギャップ→アキシャル永久磁石→アキシャルコア→ラジアルコア→ラジアル永久磁石の閉磁路を通る。このため、ロータの突極部分で磁石磁束を使用できず、磁石当たりの磁石トルク発生量が小さい問題がある。
【0007】
図15は、上記従来の回転電機の2次元等価磁気回路モデルを示す。図において、ステータヨーク12aには、環状コア部の内周面から径方向(径方向内側)にラジアルロータ14へ向けて突出する複数のラジアルティース30がロータ回転軸線周りの周方向に沿って互いに等間隔で配列され、各ラジアルティース30間にスロットが形成される。また、ステータヨーク12aには、環状コア部の両側面から回転軸方向(回転軸方向外側)にアキシャルロータ64へ向けて突出する複数(ラジアルティース30と同数)のアキシャルティース80が周方向に沿って互いに等間隔で配列され、各アキシャルティース80間にスロットが形成される。ラジアルティース30とアキシャルティース80は、周方向に関する位置が互いにずれることなく配列される。3相の電機子巻線は、ラジアルティース30間のスロット及びアキシャルティース80間のスロットを通ってトロイダル巻きされる。
【0008】
ラジアルロータ14は、略円筒形状のラジアルコアと、径方向においてラジアルティース30と対向してラジアルコアの外周部に配置されたラジアル永久磁石18を備える。また、ラジアルコアの外周部には、ラジアルティース30へ向けて径方向外側に突出した複数(ラジアル永久磁石18と同数)のラジアル突極部19が周方向に沿って等間隔で配列される。周方向において、ラジアル永久磁石18とラジアル突極部19は交互に配列しており、各ラジアル永久磁石18の着磁方向は互いに同方向である。
【0009】
アキシャルロータ64は、略環状のアキシャルコアと、回転軸方向においてアキシャルティース80と対向してアキシャルコアの側面に配置された複数のアキシャル永久磁石68を備える。アキシャルコアの側面には、アキシャルティース80へ向けて回転軸方向(回転軸方向内側)に突出した複数(アキシャル永久磁石68と同数)のアキシャル突極部69が周方向に沿って等間隔で配列される。周方向において、アキシャル永久磁石68とアキシャル突極部69は交互に配列しており、各アキシャル永久磁石68の着磁方向は互いに同方向である。
【0010】
3相の電機子巻線に3相の交流電流を流すことで、ラジアルティース30及びアキシャルティース80が順次磁化され、周方向に回転する回転磁界がステータに形成される。ステータに発生した回転磁界は、ラジアルティース30及びアキシャルティース80からラジアルロータ14及びアキシャルロータ64にそれぞれ作用し、ラジアル永久磁石18及びアキシャル永久磁石68の発生する磁界(界磁磁束)がこの回転磁界と相互作用し、吸引及び反発力が生じる。これにより、ラジアルロータ14及びアキシャルロータ64にトルクが作用する。
【0011】
図16Aは、ラジアル永久磁石18の磁束の流れを模式的に示す。また、図16Bは、アキシャル永久磁石68の磁束の流れを模式的に示す。ラジアル突極部19及びアキシャル突極部69は、それぞれラジアル永久磁石18及びアキシャル永久磁石68に比べて磁気抵抗が低いため、各磁石磁束の多くはラジアル突極部19及びアキシャル突極部69を流れる。図16A及び図16Bにおいて、この磁束の流れを「1」及び「2」の矢印で示す。また、一部は他の磁石を流れる。図16A及び図16Bにおいて、この一部の流れを「3」の矢印で示す。これらの磁束の流れのうち、トルクに寄与する磁束は「1」と「3」の磁束である。但し、「1」の磁束の方が磁束量が多いためトルクに与える影響も大きい。このため、「3」の磁束の流れに含まれるロータコアの磁気抵抗R6を下げて「3」の磁束を増大させても、トルクはほとんど増大しない。
【0012】
図16A及び図16Bのラジアル永久磁石18とアキシャル永久磁石68の磁束を重ねてみると、ラジアル突極部19とアキシャル突極部69で、各磁石の磁束が反対の向きに流れていることがわかる。例えば、ラジアル突極部19に着目すると、図16Aでは上から下に磁束が流れているところ、図16Bでは逆に下から上に磁束が流れている。従って、各突極部19,69では、それぞれの磁石の磁束が打ち消し合い、このため突極部19,69において磁石磁束が使用できず、既述したように磁石当たりの磁石トルク発生量が小さくなってしまう。以上の課題は、ラジアル面1面とアキシャル面2面をトルク発生面として用いる回転電機のみならず、ラジアル面2面をトルク発生面として用いる回転電機、アキシャル面2面をトルク発生面として用いる回転電機等、複数面をトルク発生面として用いる回転電機に共通する課題である。
【0013】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数面をトルク発生面として用いる回転電機において、突極部においても磁石トルクを使用することで、磁石当たりの磁石トルク発生量を増大させる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明は、ステータとロータが対向配置された回転電機であって、ステータは、環状コア部と、環状コア部に巻回され、交流電流が流れることで磁界を発生する電機子巻線を備え、ロータは、ロータの回転軸線と直交方向においてステータと対向配置され、回転軸線まわりの周方向に交互に配置されたラジアル永久磁石及びラジアル突極部を備えるラジアルロータ部と、回転軸線と平行方向においてステータと対向配置され、回転軸線まわりの周方向に交互に配置されたアキシャル永久磁石及びアキシャル突極部を備えるアキシャルロータ部とを備え、回転軸線まわりの周方向に関してラジアル永久磁石とアキシャル永久磁石は互いにずらして配置され、回転軸線周りの周方向に関してラジアル突極部とアキシャル突極部は互いにずらして配置され、ラジアルロータ部とアキシャルロータ部は機械的に連結されるとともに、ラジアル永久磁石とアキシャル永久磁石の間の少なくともラジアル永久磁石近傍及びアキシャル永久磁石近傍に磁気障壁が配置される回転電機である。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、ステータは、さらに、直流電流が流れることでラジアルロータ部とアキシャルロータ部と環状コア部を通る界磁磁束を発生する界磁巻線を備え、ラジアル永久磁石とアキシャル永久磁石の間のラジアル永久磁石近傍及びアキシャル永久磁石近傍に磁気障壁が配置され、ラジアル突極部とアキシャル突極部の間は磁気障壁なく磁気的に結合される。
【0016】
本発明の他の実施形態では、ラジアル永久磁石とアキシャル永久磁石の間の全ての領域に磁気障壁が配置される。
【0017】
本発明のさらに他の実施形態では、ラジアル突極部は回転軸線周りの周方向に3分割されてそれぞれの間に磁気障壁が配置され、3分割されたラジアル突極部のいずれかと、アキシャル突極部の間は磁気障壁なく磁気的に結合される。
【0018】
本発明のさらに他の実施形態では、ラジアル突極部は回転軸線と平行方向に2分割されてそれぞれの間に磁気障壁が配置され、2分割されたラジアル突極部のいずれかと、アキシャル突極部の間は磁気障壁なく磁気的に結合される。
【0019】
本発明のさらに他の実施形態では、アキシャル突極部は回転軸線周りの周方向に3分割されてそれぞれの間に磁気障壁が配置され、ラジアル突極部と、3分割されたアキシャル突極部のいずれかの間は磁気障壁なく磁気的に結合される。
【0020】
本発明のさらに他の実施形態では、アキシャル突極部は回転軸線と平行方向に2分割されてそれぞれの間に磁気障壁が配置され、ラジアル突極部と、2分割されたアキシャル突極部のいずれかの間は磁気障壁なく磁気的に結合される。
【0021】
本発明のさらに他の実施形態では、ラジアル突極部とアキシャル突極部はそれぞれ回転軸線まわりの周方向に3分割され、3分割されたラジアル突極部のそれぞれの間、及び3分割されたアキシャル突極部のそれぞれの間に磁気障壁が配置され、3分割されたラジアル突極部のいずれかと、3分割されたアキシャル突極部のいずれかの間は磁気障壁なく磁気的に結合される。
【0022】
本発明のさらに他の実施形態では、ラジアル突極部は回転軸線と平行方向に2分割され、アキシャル突極部は回転軸線と直交方向に2分割され、2分割されたラジアル突極部のそれぞれの間、及び2分割されたアキシャル突極部のそれぞれの間に磁気障壁が配置され、2分割されたラジアル突極部のいずれかと、2分割されたアキシャル突極部のいずれかの間は磁気障壁なく磁気的に結合される。
【0023】
本発明の磁気障壁は、継鉄に代わる空隙または非磁性材料で構成され得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、磁石当たりの磁石トルク発生量を増大させることができる。また、本発明によれば、界磁巻線による界磁磁束の減少を抑制することができる。本発明は、複数面をトルク発生面として用いる回転電機に適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る回転電機の基本概略構成を示す図(その1)である。
図2】実施形態に係る回転電機の基本概略構成を示す図(その2)である。
図3】実施形態に係る回転電機の基本概略構成を示す図(その3)である。
図4】実施形態に係る回転電機の基本概略構成を示す図(その4)である。
図5】実施形態に係る回転電機の基本概略構成を示す図(その5)である。
図6】実施形態に係る回転電機の基本概略構成を示す図(その6)である。
図7】基本ロータ構成を示す図である。
図8】第1実施形態のロータ構成を示す図である。
図9】第1実施形態のロータ構成の磁石によるトルクを示すグラフである。
図10】第2実施形態のロータ構成を示す図である。
図11A】第2実施形態のロータ構成の磁石によるトルクを示すグラフである。
図11B】第2実施形態のロータ構成の磁石と界磁電流によるトルクの合計を示すグラフである。
図12】第3実施形態のロータ構成を示す図である。
図13A】第3実施形態のロータ構成の磁石によるトルクを示すグラフである。
図13B】第3実施形態のロータ構成の磁石と界磁電流によるトルクの合計を示すグラフである。
図14A】第4実施形態のロータ構成を示す図(その1)である。
図14B】第4実施形態のロータ構成を示す図(その2)である。
図14C】第4実施形態のロータ構成を示す図(その3)である。
図15】回転電機の2次元等価磁気回路モデル図である。
図16A】ラジアル永久磁石の磁束の流れを示す模式図である。
図16B】アキシャル永久磁石の磁束の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0027】
<回転電機の基本構成>
まず、本実施形態の回転電機の基本構成について説明する。
【0028】
図1図5は、回転電機10の概略構成を示す図である。図1図2は回転軸22と直交する方向から見たロータ及びステータの内部構成の概略を示す断面図であり、図3はロータの構成を示す斜視図であり、図4図5はステータの構成を示す斜視図である。図1図3のA−A断面に相当する位置での断面図を示し、図2図3のB−B断面に相当する位置での断面図を示す。
【0029】
回転電機10は、ケーシング11に固定されたステータ12と、ステータ12と対向配置され、ステータ12に対し回転可能なロータを備える。ロータは、ロータ回転軸線(回転軸22)と直交する径方向(以下単に径方向とする)においてステータ12と対向配置されたラジアルロータ14と、ロータ回転軸線(回転軸22)と平行方向(以下回転軸方向とする)においてステータ12と対向配置され、ラジアルロータ14と機械的かつ磁気的に連結された2つのアキシャルロータ64,84を有する。ラジアルロータ14及びアキシャルロータ64,84はいずれも非磁性の回転軸22に機械的に連結されており、ラジアルロータ14とアキシャルロータ64,84と回転軸22とが一体となって回転する。図1図5に示す例では、ラジアルロータ14がステータ12の径方向内側に配置され、ステータ12の内周面(ラジアル面)と所定の空隙(エアギャップ)を空けて対向している。また、2つのアキシャルロータ64,84が、ステータ12の回転軸方向外側にステータ12を挟んで配置され、ステータ12の両側面(アキシャル面)と所定の空隙を空けて対向している。
【0030】
ステータ12は、環状コア部26と、この環状コア部26にトロイダル巻きされた複数相(例えば3相)の電機子巻線28を含む。ステータ12には、環状コア部26の内周面から径方向(径方向内側)にラジアルロータ14へ向けて突出する複数のラジアルティース30がロータ回転軸線まわりの周方向(以下単に周方向とする)に沿って互いに間隔をおいて(等間隔で)配列されており、各ラジアルティース30間にスロットが形成されている。さらに、ステータ12には、環状コア部26の両側面から回転軸方向(回転軸方向外側)にアキシャルロータ64へ向けて突出する複数(ラジアルティース30と同数)のアキシャルティース80が周方向に沿って互いに間隔をおいて(等間隔で)配列されており、各アキシャルティース80間にスロットが形成されている。ラジアルティース30とアキシャルティース80は、周方向に関する位置が互いにずれることなく配置され、ラジアルティース30間のスロットとアキシャルティース80間のスロットも、周方向に関する位置が互いにずれることなく配置されている。3相の電機子巻線28は、ラジアルティース30間のスロット及びアキシャルティース80間のスロットを通ってトロイダル巻きされている。ここでの環状コア部26、ラジアルティース30、及びアキシャルティース80、つまりステータ12の鉄心部分については、例えば、鉄等の強磁性体の微小粒の表面に電気を通さない膜のコーティングを施した粉体を押し固めた圧粉磁心材料等の3次元等方性磁性材料により成形することができる。
【0031】
ラジアルロータ14は、略円筒形状のラジアルコア16と、径方向においてステータ12(ラジアルティース30)と対向してラジアルコア16の外周部に配設された複数のラジアル永久磁石18を含む。ラジアルコア16の外周部には、ステータ12(ラジアルティース30)へ向けて径方向外側に突出した複数(ラジアル永久磁石18と同数)のラジアル突極部19が周方向に沿って互いに間隔をおいて(等間隔で)配列されている。各ラジアル突極部19は、径方向においてステータ12(ラジアルティース30)と対向している。複数のラジアル永久磁石18は、周方向に沿って互いに間隔をおいて(等間隔で)配列され、周方向に関して各ラジアル突極部19間の位置に配置されている。つまり、各ラジアル永久磁石18は、ラジアル突極部19に対して周方向に関する位置をずらして配置されており、周方向においてラジアル永久磁石18とラジアル突極部19とが交互に並んでいる。各ラジアル永久磁石18の着磁方向は互いに同方向であり、各ラジアル永久磁石18の表面(ステータ12と対向する磁極面)は互いに同じ極性(例えばN極)に着磁されている。
【0032】
アキシャルロータ64は、略環状のアキシャルコア66と、回転軸方向においてステータ12(アキシャルティース80)と対向してアキシャルコア66の側面に配設された複数のアキシャル永久磁石68と、を含む。アキシャルコア66は、ラジアルコア16と機械的且つ磁気的に連結されている。アキシャルコア66の側面には、ステータ12(アキシャルティース80)へ向けて回転軸方向(回転軸方向内側)に突出した複数(アキシャル永久磁石68と同数)のアキシャル突極部69が周方向に沿って互いに間隔をおいて(等間隔で)配列されている。各アキシャル突極部69は、回転軸方向においてステータ12(アキシャルティース80)と対向している。複数のアキシャル永久磁石68は、周方向に沿って互いに間隔をおいて(等間隔で)配列され、周方向に関して各アキシャル突極部69間の位置に配置されている。つまり、図6に示すように、各アキシャル永久磁石68は、アキシャル突極部69に対して周方向に関する位置をずらして配置されており、周方向においてアキシャル永久磁石68とアキシャル突極部69とが交互に並んでいる。各アキシャル永久磁石68の着磁方向は互いに同方向であり、各アキシャル永久磁石68の表面(ステータ12と対向する磁極面)は互いに同じ極性(例えばS極)に着磁されている。
【0033】
同様に、アキシャルロータ84は、略環状のアキシャルコア86と、回転軸方向においてステータ12(アキシャルティース80)と対向してアキシャルコア86の側面に配設された複数のアキシャル永久磁石88と、を含む。アキシャルコア86は、ラジアルコア16と機械的且つ磁気的に連結されている。アキシャルコア86の側面には、ステータ12(アキシャルティース80)へ向けて回転軸方向(回転軸方向内側)に突出した複数(アキシャル永久磁石88と同数)のアキシャル突極部89が周方向に沿って互いに間隔をおいて(等間隔で)配列されている。各アキシャル突極部89は、回転軸方向においてステータ12(アキシャルティース80)と対向している。複数のアキシャル永久磁石88は、周方向に沿って互いに間隔をおいて(等間隔で)配列され、周方向に関して各アキシャル突極部89間の位置に配置されている。
【0034】
アキシャル永久磁石88はアキシャル永久磁石68と同数設けられ、アキシャル突極部89もアキシャル突極部69と同数設けられている。アキシャル永久磁石88は、アキシャル永久磁石68に対して周方向に関する位置をずらすことなく配置され、回転軸方向においてステータ12を挟んでアキシャル永久磁石68と対向している。アキシャル突極部89も、アキシャル突極部69に対して周方向に関する位置をずらすことなく配置され、回転軸方向においてステータ12を挟んでアキシャル突極部69と対向している。各アキシャル永久磁石88の表面(ステータ12と対向する磁極面)は、各アキシャル永久磁石68の表面(ステータ12と対向する磁極面)と同じ極性(例えばS極)に着磁されている。
【0035】
さらに、ラジアル永久磁石18はアキシャル永久磁石68(アキシャル永久磁石88)と同数設けられ、ラジアル突極部19もアキシャル突極部69(アキシャル突極部89)と同数設けられている。アキシャル永久磁石68,88は、ラジアル永久磁石18に対して周方向に関する位置をずらして配置され、アキシャル突極部69,89も、ラジアル突極部19に対して周方向に関する位置をずらして配置されている。そして、アキシャル永久磁石68,88とラジアル突極部19が、周方向に関する位置が互いにずれることなく配置され、アキシャル突極部69,89とラジアル永久磁石18も、周方向に関する位置が互いにずれることなく配置されている。また、各アキシャル永久磁石68,88の表面(ステータ12と対向する磁極面)は、各ラジアル永久磁石18の表面(ステータ12と対向する磁極面)と逆の極性に着磁されている。図3図6に示す例では、各ラジアル永久磁石18の表面がN極に着磁され、各アキシャル永久磁石68,88の表面がS極に着磁されている。ただし、各ラジアル永久磁石18の表面がS極に着磁され、各アキシャル永久磁石68,88の表面がN極に着磁されていてもよい。
【0036】
複数相(3相)の電機子巻線28に複数相(3相)の交流電流を流すことで、ラジアルティース30及びアキシャルティース80が順次磁化され、周方向に回転する回転磁界がステータ12に形成される。ステータ12に発生した回転磁界は、ラジアルティース30及びアキシャルティース80からラジアルロータ14及びアキシャルロータ64,84にそれぞれ作用し、ラジアル永久磁石18及びアキシャル永久磁石68,88の発生する磁界(界磁磁束)がこの回転磁界と相互作用して、吸引及び反発作用が生じる。このラジアルティース30及びアキシャルティース80の回転磁界とラジアル永久磁石18及びアキシャル永久磁石68,88の界磁磁束との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)により、ラジアルロータ14及びアキシャルロータ64,84にトルク(磁石トルク)を作用させることができる。
【0037】
トロイダル巻きは分布巻きと比較して巻線の製作が容易となる反面、ロータのトルクの発生に有効に働かない巻線が増加しやすくなるため、体格増及び銅損増を招きやすくなる。基本構成では、ロータに回転磁界を作用させてトルクを発生させるためのトルク発生面として、ラジアルティース30の先端面(ラジアル面)だけでなくアキシャルティース80の先端面(アキシャル面)も利用することで、トルク発生面積を増大させることができる。その結果、ロータ(ラジアルロータ14及びアキシャルロータ64,84)のトルクの発生に有効に働かない巻線を減らすことができ、体格増及び銅損増を抑えながらロータのトルクの増大を図ることができる。
【0038】
基本構成では、ステータ12の回転磁界と相互作用する界磁磁束の制御を行うために、界磁巻線70,90がステータ12に設けられている。各界磁巻線70,90は周方向に沿って環状に巻回されている。界磁巻線70が通る(巻回された)位置は、径方向に関して環状コア部26よりもラジアルロータ14(ラジアル永久磁石18及びラジアル突極部19)寄りの位置で、且つ回転軸方向に関して環状コア部26よりもアキシャルロータ64(アキシャル永久磁石68及びアキシャル突極部69)寄りの位置である。そして、界磁巻線90が通る(巻回された)位置は、径方向に関して環状コア部26よりもラジアルロータ14(ラジアル永久磁石18及びラジアル突極部19)寄りの位置で、且つ回転軸方向に関して環状コア部26よりもアキシャルロータ84(アキシャル永久磁石88及びアキシャル突極部89)寄りの位置である。図1図5に示す例では、界磁巻線70,90は、径方向に関して各アキシャルティース80よりもラジアルロータ14側(内側)で、且つ回転軸方向に関して各ラジアルティース30よりもアキシャルロータ64,84側(外側)の位置に、各ラジアルティース30、各アキシャルティース80、及び各電機子巻線28と近接して配置されている。界磁巻線70,90は、絶縁体により電機子巻線28と電気的に絶縁されている。さらに、各電機子巻線28の外周面における界磁巻線70,90に近接する部分には、凸曲面28aが形成されている。各電機子巻線28の凸曲面28aに近接する界磁巻線70の外周面の外径は、回転軸方向に関してアキシャルロータ64側から環状コア部26側へ(外側から内側へ)向かうにつれて徐々に減少し、各電機子巻線28の凸曲面28aに近接する界磁巻線90の外周面の外径は、回転軸方向に関してアキシャルロータ84側から環状コア部26側へ向かうにつれて徐々に減少している。なお、界磁巻線70,90のステータ12への固定については、例えば、図4に示すように、電機子巻線28の上から繊維71等で縛ることで固定してもよいし、ステータ全体を樹脂等でモールドして固定してもよい。
【0039】
図3図6に示す例(ラジアル永久磁石18の表面がN極、アキシャル永久磁石68,88の表面がS極に着磁されている例)では、ラジアル永久磁石18及びアキシャル永久磁石68,88による界磁磁束は、
ラジアル永久磁石18→エアギャップ→ラジアルティース30→環状コア部26→アキシャルティース80→エアギャップ→アキシャル永久磁石68,88→アキシャルコア66,86→ラジアルコア16→ラジアル永久磁石18
で示す閉磁路を通る(ラジアル永久磁石18の表面がS極、アキシャル永久磁石68,88の表面がN極に着磁されている場合は界磁磁束の向きが逆になる)。
さらに、界磁巻線70,90に直流電流(界磁電流)を流すことで、ラジアル突極部19、ラジアルコア16、アキシャルコア66,86、アキシャル突極部69,89、エアギャップ、アキシャルティース80、環状コア部26、ラジアルティース30、エアギャップ、及びラジアル突極部19による閉磁路を通る界磁磁束が発生し、この界磁磁束が電機子巻線28に交流電流を流すことでステータ12に発生する回転磁界と相互作用する。その際に、各ラジアル突極部19の表面(ステータ12との対向面)は互いに同じ極性に磁化し、各アキシャル突極部69,89の表面(ステータ12との対向面)は互いに同じ極性に磁化する。ただし、各アキシャル突極部69,89の表面は、各ラジアル突極部19の表面と逆の極性に磁化する。界磁巻線70,90による界磁磁束の方向は、界磁巻線70,90に流す直流電流の向きにより制御可能であり、ラジアル突極部19とアキシャル突極部69,89がそれぞれどの極性(N極またはS極)に磁化するかについても、界磁巻線70,90に流す直流電流の向きにより制御可能である。そして、界磁巻線70,90による界磁磁束の大きさは、界磁巻線70,90に流す直流電流の大きさにより制御可能である。
【0040】
このような回転電機の2次元等価磁気回路は図15に示した通りであり、ラジアル永久磁石18の磁束の流れ、及びアキシャル永久磁石68の磁束の流れはそれぞれ図16A図16Bに示した通りである。
【0041】
より詳しくは、ラジアル永久磁石18の磁束の流れは以下の通りである。
「1」:
ラジアル永久磁石18→ステータ12→ラジアル突極部19→ラジアル永久磁石18
「2」:
ラジアル永久磁石18→ステータ12→アキシャル突極部69→ロータコア15→ラジアル永久磁石18
「3」:
ラジアル永久磁石18→ステータ12→アキシャル永久磁石68→ロータコア15→ラジアル永久磁石18
また、アキシャル永久磁石68の磁束の流れは以下の通りである。
「1」:
アキシャル永久磁石68→アキシャル突極部69→ステータ12→アキシャル永久磁石68
「2」:
アキシャル永久磁石68→ロータコア15→ラジアル突極部19→ステータ12→アキシャル永久磁石68
「3」:
アキシャル永久磁石68→ロータコア15→ラジアル永久磁石18→ステータ12→アキシャル永久磁石68
各磁石磁束の流れの特徴をまとめると以下の表の通りである。
【0042】
【表1】
【0043】
<ロータの基本構成>
図7は、ロータを模式的に示す。なお、アキシャルロータ64,84の構成は同様であるので、以下ではアキシャルロータ64の構成のみを示す。
【0044】
ロータは、ロータ回転軸線と直交する径方向においてステータ12と対向配置されたラジアルロータ14と、ロータ回転軸線と平行方向においてステータ12と対向配置され、ラジアルロータ14と機械的かつ磁気的に連結されたアキシャルロータ64を有する。ラジアルロータ14は、略円筒形状のラジアルコアの外周部に配設された複数のラジアル永久磁石18と、複数のラジアル突極部19を有する。ラジアル永久磁石18とラジアル突極部19は、ラジアル継鉄14aで繋がれる。アキシャルロータ64は、略環状のアキシャルコアの側面に配設された複数のアキシャル永久磁石68と、複数のアキシャル突極部69を有する。アキシャル永久磁石68とアキシャル突極部69は、アキシャル継鉄64aで繋がれる。ラジアルロータ14とアキシャルロータ64は、面接続継鉄15aで繋がれる。ラジアルロータ14とアキシャルロータ84についても同様である。
【0045】
以上のような基本構成では、既述したように、ラジアル突極部19とアキシャル突極部69で、各磁石の磁束が反対の向きに流れてそれぞれの磁石の磁束が打ち消し合い、突極部19,69において磁石磁束が使用できず、磁石当たりの磁石トルク発生量が小さくなってしまう。
【0046】
そこで、本実施形態では、ラジアルロータ14とアキシャルロータ64を繋ぐ面接続継鉄15aに着目し、この部分を低透磁率の材料で構成することで突極部19,69における磁束の打ち消し合いを抑制する。
【0047】
<第1実施形態>
図8は、第1実施形態のロータを模式的に示す。図7の基本ロータと同様に、ロータは、ラジアルロータ14と、アキシャルロータ64を有する。ラジアルロータ14は、略円筒形状のラジアルコアの外周部に配設された複数のラジアル永久磁石18と、複数のラジアル突極部19を有する。ラジアル永久磁石18とラジアル突極部19は、ラジアル継鉄14aで繋がれる。アキシャルロータ64は、略環状のアキシャルコアの側面に配設された複数のアキシャル永久磁石68と、複数のアキシャル突極部69を有する。アキシャル永久磁石68とアキシャル突極部69は、アキシャル継鉄64aで繋がれる。
【0048】
他方、本実施形態では、図7と異なり、ラジアルロータ14とアキシャルロータ64は、面接続部15bで繋がれる。面接続部15bは、面接続継鉄15aよりも相対的に透磁率が低い材料で構成されており、具体的には空隙や非磁性材料で構成される。図において、面接続部15bの領域を斜線で示す。ラジアルロータ14とアキシャルロータ84についても同様である。
【0049】
このように、ラジアルロータ14とアキシャルロータ64の接続部を面接続部15bで構成することで、この部分の磁気抵抗が増大し磁気障壁として機能する。その結果、図16A及び図16Bの磁束の流れにおいて、「1」の磁束が増大し、「2」と「3」の磁束の流れが減少する。磁石の主磁束は「1」と「2」であり、トルクに寄与する磁束は「1」と「3」であるため、「1」の磁束増大の寄与分が大きく、磁石トルクが増大する。
【0050】
図9は、有限要素法を用いたコンピュータによる3次元の磁界解析結果を示す。図7に示す基本ロータ構成と本実施形態(図では実施形態1として示す)のトルクを対比して示す。本実施形態によるロータ構成では、基本ロータ構成に比べて磁石トルクが44%増大している。
【0051】
<第2実施形態>
図1図5に示す回転電機では、界磁巻線70,90に直流電流(界磁電流)を流すことで、ラジアル突極部19、ラジアルコア16、アキシャルコア66,86、アキシャル突極部69,89、エアギャップ、アキシャルティース80、環状コア部26、ラジアルティース30、エアギャップ、及びラジアル突極部19による閉磁路を通る界磁磁束が発生し、この界磁磁束が電機子巻線28に交流電流を流すことでステータ12に発生する回転磁界と相互作用する(ハイブリッド励磁型)。
【0052】
界磁電流による磁束は、ラジアル突極部19→ラジアルコア16→アキシャルコア66,86→アキシャル突極部69,89と流れるため、この部分を第1実施形態のように低透磁率材料で構成すると界磁電流によるトルクが減少する場合がある。
【0053】
そこで、本実施形態では、面接続継鉄15aを低透磁率材料で構成するのではなく、ラジアル継鉄14aの一部、及びアキシャル継鉄64aの一部のみを低透磁率材料で構成する。
【0054】
図10は、第2実施形態のロータを模式的に示す。図7の基本ロータと同様に、ロータは、ラジアルロータ14と、アキシャルロータ64を有する。ラジアルロータ14は、略円筒形状のラジアルコアの外周部に配設された複数のラジアル永久磁石18と、複数のラジアル突極部19を有する。ラジアル永久磁石18とラジアル突極部19は、ラジアル継鉄14aで繋がれる。アキシャルロータ64は、略環状のアキシャルコアの側面に配設された複数のアキシャル永久磁石68と、複数のアキシャル突極部69を有する。アキシャル永久磁石68とアキシャル突極部69は、アキシャル継鉄64aで繋がれる。
【0055】
他方、本実施形態では、ラジアルロータ14とアキシャルロータ64は、面接続継鉄15aで繋がれるものの、ラジアル継鉄14aの一部、及びアキシャル継鉄64aの一部は接続部15cで構成される。接続部15cは、面接続継鉄15aよりも相対的に透磁率が低い材料で構成されており、具体的には空隙や非磁性材料で構成される。図において、接続部15cの領域を斜線で示す。ラジアル継鉄14aの一部とは、具体的にはラジアル継鉄14aのうちのラジアル永久磁石18と面接続継鉄15aの間の領域であって、ラジアル永久磁石18とラジアル突極部19の間の中間まで延在する。アキシャル継鉄64aの一部とは、具体的にはアキシャル継鉄64aのうちのアキシャル永久磁石68と面接続継鉄15aの間の領域であって、アキシャル永久磁石68とアキシャル突極部69の間の中間まで延在する。
【0056】
なお、上記の説明では、ラジアル継鉄14aの一部、及びアキシャル継鉄64aの一部が接続部15cで構成されると説明したが、面接続継鉄15aのうちの、ラジアル永久磁石18近傍の領域、及びアキシャル永久磁石68近傍の領域が接続部15cで構成されるということもできる。接続部15cは、面接続部15bと同様に磁気障壁として機能する。
【0057】
図10のロータ構成では、ラジアル突極部19とアキシャル突極部69の間には、図7と同様にラジアル継鉄14a、面接続継鉄15a、及びアキシャル継鉄64aが存在し、両者を繋いでいる点に留意されたい。ラジアルロータ14とアキシャルロータ84についても同様である。
【0058】
このような構成によれば、ラジアル突極部19及びアキシャル突極部69の間は、ラジアル継鉄14a、面接続継鉄15a、及びアキシャル継鉄64aで機械的かつ磁気的に結合されているため、界磁電流による磁束の減少を抑制することができる。また、各磁石から面接続継鉄15aに流れるトルクに寄与しない無駄な磁石磁束は、一旦、隣り合う突極側のラジアル継鉄14a及びアキシャル継鉄64aを介することで磁路長が増大し、その磁束量が減少する。
【0059】
図11Aは、有限要素法を用いたコンピュータによる3次元の磁界解析結果を示す。図7に示す基本ロータ構成と本実施形態(図では実施形態2として示す)の磁石トルクを対比して示す。本実施形態によるロータ構成では、基本ロータ構成に比べて磁石トルクが6%増大している。
【0060】
図11Bは、有限要素法を用いたコンピュータによる3次元の磁界解析結果を示す。図7に示す基本ロータ構成と本実施形態(図では実施形態2として示す)の磁石トルクと界磁電流トルクの合計トルクを対比して示す。本実施形態によるロータ構成では、基本ロータ構成に比べて合計トルクが0.5%増大している。
【0061】
<第3実施形態>
図12は、第3実施形態のロータを模式的に示す。本実施形態では、ラジアル突極部19を回転軸線まわりの周方向に3分割するとともに、アキシャル突極部69を回転軸まわりの周方向に3分割する。3分割されたそれぞれの間は低透磁率材料、具体的には空隙または非磁性材料で構成される。また、第2実施形態と同様に、面接続継鉄15aのうちのラジアル永久磁石18近傍の領域、及びアキシャル永久磁石68近傍の領域は低透磁率材料の接続部15cで構成される。第2実施形態では、ラジアルロータ14側の接続部15cは、ラジアル永久磁石18とラジアル突極部19の間の中間まで延在するが、本実施形態では、接続部15cは、ラジアル永久磁石18から3分割されたラジアル突極部19のうちの左側のラジアル突極部19まで延在し、さらに右側のラジアル突極部19近傍にも形成される。中央のラジアル突極部19近傍には形成されない。また、アキシャルロータ64側の接続部15cは、アキシャル永久磁石68とアキシャル突極部69の間の中間まで延在するが、本実施形態では、接続部15cは、アキシャル永久磁石68から3分割されたアキシャル突極部69のうちの右側のアキシャル突極部69まで延在し、さらに左側のアキシャル突極部69近傍にも形成される。中央のアキシャル突極部69近傍には形成されない。
【0062】
この構成によれば、磁石と突極とそれらを繋ぐ継鉄で循環する磁石磁束の磁路と、ラジアル突極部19とアキシャル突極部69と面接続継鉄15aの間で循環する界磁電流磁束の磁路が磁気的に分断されることになる。本実施形態でも、中央のラジアル突極部19及び中央のアキシャル突極部69の間は、ラジアル継鉄14a、面接続継鉄15a、及びアキシャル継鉄64aで機械的かつ磁気的に結合されているため、界磁電流による磁束の減少を抑制することができる。
【0063】
図13Aは、有限要素法を用いたコンピュータによる3次元の磁界解析結果を示す。図7に示す基本ロータ構成と本実施形態(図では実施形態3として示す)の磁石トルクを対比して示す。本実施形態によるロータ構成では、基本ロータ構成に比べて磁石トルクが13%増大している。
【0064】
図13Bは、有限要素法を用いたコンピュータによる3次元の磁界解析結果を示す。図7に示す基本ロータ構成と本実施形態(図では実施形態3として示す)の磁石トルクと界磁電流トルクの合計トルクを対比して示す。本実施形態によるロータ構成では、基本ロータ構成に比べて合計トルクが3.0%増大している。
【0065】
<第4実施形態>
図14A図14B及び図14Cは、第4実施形態のロータを模式的に示す。本実施形態では、第2実施形態と同様にラジアル継鉄14aの一部及びアキシャル継鉄64aの一部を低透磁率の接続部15cで構成し、さらに、ラジアル突極部19を回転軸線と平行方向に2分割し、アキシャル突極部69を回転軸線と直交方向に2分割し、2分割されたラジアル突極部19とアキシャル突極部69のそれぞれの内側の突極部を磁石の磁束用とし、2分割されたラジアル突極部19とアキシャル突極部69のそれぞれの外側の突極部を界磁電流の磁束用とする。2分割されたラジアル突極部19の間は空隙あるいは非磁性材料で構成され、2分割されたアキシャル突極部69の間も同様に空隙あるいは非磁性材料で構成される。本実施形態でも、2分割されたラジアル突極部19のうちの内側と、2分割されたアキシャル突極部69のうちの内側の間は、ラジアル継鉄14a、面接続継鉄15a、及びアキシャル継鉄64aで機械的かつ磁気的に結合されているため、界磁電流の磁束の減少が抑制される。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0067】
例えば、第1実施形態〜第4実施形態のロータ構成を互いに組み合わせてもよい。具体的には、ラジアルロータ14については第1実施形態の構成とし、アキシャルロータ64については第2実施形態の構成とする等である。また、ラジアルロータ14については第3実施形態の構成とし、アキシャルロータ64については第4実施形態の構成とする等である。要するに、ラジアルロータ14の構成を第1実施形態〜第4実施形態のいずれかとし、アキシャルロータ64の構成を第1実施形態〜第4実施形態のいずれかとすることができる。
【0068】
ラジアルロータ14の構成を第3実施形態とし、アキシャルロータ64の構成を第2実施形態とした場合、回転軸線まわりの周方向に3分割されたラジアル突極部19のいずれか(例えば中央のラジアル突極部)と分割されていないアキシャル突極部69が磁気障壁なく磁気結合される。
【0069】
ラジアルロータ14の構成を第4実施形態とし、アキシャルロータ64の構成を第2実施形態とした場合、回転軸線に平行方向に2分割されたラジアル突極部19のいずれか(アキシャルロータ64側の突極部)と分割されていないアキシャル突極部69が磁気障壁なく磁気結合される。
【0070】
ラジアルロータ14の構成を第2実施形態とし、アキシャルロータ64の構成を第3実施形態とした場合、分割されていないラジアル突極部19と回転軸線まわりの周方向に3分割されたアキシャル突極部69のいずれか(例えば中央のアキシャル突極部)が磁気障壁なく磁気結合される。
【0071】
ラジアルロータ14の構成を第2実施形態とし、アキシャルロータ64の構成を第4実施形態とした場合、分割されていないラジアル突極部19と回転軸線に平行方向に2分割されたアキシャル突極部69のいずれか(ラジアルロータ14側の突極部)が磁気障壁なく磁気結合される。
【0072】
本実施形態において本質的な点は、ラジアルロータ14とアキシャルロータ64の間のラジアル永久磁石18近傍領域及びアキシャル永久磁石68近傍領域に、空隙や非磁性材料等の低透磁率材料で構成された磁気障壁領域を配置することで、ラジアル突極部19及びアキシャル突極部69での磁石磁束の打ち消しを抑制する点にあり、さらに、ラジアル突極部19とアキシャル突極部69の少なくとも一部を互いに磁気的に連結して界磁電流による磁束の減少を抑制する点にあり、このような技術思想の範囲内で種々の変更が可能である。本実施形態では、ラジアル面とアキシャル面をトルク発生面とする回転電機について例示したが、ラジアル面とラジアル面をトルク発生面とする回転電機、アキシャル面とアキシャル面をトルク発生面とする回転電機についても同様に適用し得る。
【符号の説明】
【0073】
10 回転電機、11 ケーシング、12 ステータ、14 ラジアルロータ、16,36 ラジアルコア、18 ラジアル永久磁石、19,39 ラジアル突極部、22 回転軸、26 環状コア部、28 電機子巻線、30 ラジアルティース、64,84 アキシャルロータ、66,86 アキシャルコア、68,88 アキシャル永久磁石、69,89 アキシャル突極部、70,90 界磁巻線、80 アキシャルティース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B