(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
軟飯は、お粥と炊飯米の中間の飯米をいう。通常の炊飯米と比較し多めの水で炊飯するため、飯米としては柔らかいご飯となる。これは咀嚼・嚥下機能が未熟若しくは低下した病人や幼児、そして高齢者に適したご飯とされている。特に近年の医療技術の向上および社会における健康志向によって、高齢者の人口が多くなってきているので、軟飯の需要は増えるものと考えられる。
【0003】
しかし、軟飯は炊き上がりこそ食感もよいとされているが、時間の経過とともに糊っぽくなって急激に食感が低下する。これは、炊飯完了時点では、お米の外側にあった水分が時間の経過と共に米の中に入り込むためといわれている。
【0004】
美味しい飯米を提供するには、この食感を改善することが重要である。特許文献1には、平均分子量750以上の還元澱粉糖化物を配合した軟飯は、糊っぽくなることがないとして紹介されている。
【0005】
一方、炊飯器の機能として、軟飯やお粥が糊っぽくなってしまう点に関して改善できるものは紹介されていない。飯米が糊っぽくなるのは、炊飯後の飯米に含まれる水分が原因である。従来の炊飯器は、一度仕込んだ水は炊飯が完了するまでそのままに維持するので、炊飯完了時の飯米中の水分の量は、仕込み時の水分量で決まってしまっているからである。
【0006】
なお、仕込み時の水分を炊飯中に回収するという観点からは、オネバを回収する炊飯器の提案はされていた。例えば特許文献2では、椀状内蓋にオネバ受けを配した炊飯器が開示されている。構造的にはこのオネバ受けは、炊飯完了後に蓋の内面に付着した露が炊き上がった米飯に落下するのを回避するための露受けに類似する。つまり、オネバは飯米に戻しながら炊き上げた後、炊飯が完了した飯米に対して、余分なオネバや水分が滴下するのを防止するものである。
【0007】
また、これに近似する発明としては、露受けを有する炊飯器が挙げられる(特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係る炊飯器について図面および実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。また、本発明に係る炊飯器で炊飯することのできる、オネバの少ない米飯を、「オネバ回収米飯」と呼ぶ。また、本明細書において、「オネバ」とは、回収した水分も含めたデンプン液である。
【0015】
図1に本発明に係る炊飯器の構成を示す。本発明に係る炊飯器1は、お米が炊飯される炊飯釜30と、炊飯釜30が収納される筐体32と、炊飯釜30の上部開口を密閉する内蓋34と内蓋34を支持する外蓋36と、炊飯釜30を過熱する加熱手段38と、炊飯釜30内に配置されるオネバ回収皿10で構成される。また、炊飯釜30の温度を測定する温度センサ40や、炊飯を制御する制御装置42が備えられていてもよい。また、図示しないが、これらを操作、駆動させるための部品が含まれていてよいのはいうまでもない。
【0016】
炊飯釜30、筐体32、内蓋34、外蓋36、加熱手段38といった構成要素は、従来の炊飯器と同様な構成が利用できる。本発明に係る炊飯器1は、オネバ回収米飯だけでなく、通常の米飯が炊けることを排除しないからである。なお、
図1で、加熱手段38は、電気的な加熱方法(誘電加熱を含む)を示しているが、その他の方法による加熱であってもよい。また、内蓋34および外蓋36は、炊飯釜30の内部で蒸気が発生し内圧が高くなったら、蒸気を逃がす構造を有している。
【0017】
オネバ回収皿10は、平面視した際に、炊飯釜30の内径とほぼ同じ外径を有する。オネバは、炊飯釜30の底面からオネバ回収皿10方向に吹き上がる。したがって、オネバを回収できる面の面積は、広い方が多くのオネバを回収することができるからである。
【0018】
オネバ回収皿10は、一定のオネバを貯留できるだけの貯留空間16を有する。本発明に係る炊飯器1は、オネバ回収米飯を炊く際には、積極的に一定量のオネバを回収し、それ以上のオネバは炊飯釜30内に戻す。
【0019】
また、オネバ回収皿10は、炊飯釜30内に固定するための固定手段11が備えられる。
図1では、炊飯釜30の縁に掛止できる掛止縁が設けられている。しかし、オネバ回収皿10が炊飯釜30内に配置できるのであればよく、図示した以外の方法であってもよい。なお、ここで、「炊飯釜30内に配置できる」とは、オネバ回収皿10の底面12が、炊飯釜30の開口縁30aより、内側(炊飯釜30の底側)にあることをいう。
【0020】
図2にオネバ回収皿10だけを示す。
図2(a)は、オネバ回収皿10の斜視図を示し、
図2(b)は
図2(a)のA−A断面を示す。
図2では、オネバ回収皿10は、底面12が略平面のお皿状の部材を例示する。しかし、後述するように
図2で示した形状以外の形状であってもよい。オネバ回収皿10は、お皿状ではあるが、側壁14や蓋(図示せず)が設けられていてもよい。底面12には、炊飯釜30(
図1参照)内で吹き上がったオネバを回収するためのオネバ回収孔20が設けられている。
【0021】
なお、底面12において、側壁14が形成されている方向を「上方向(または上側)」とよび、その反体方向を「下方向(または下側)」と呼ぶ。また、底面12の上方向側の面を「表面」と呼び、下方向の面を「裏面」と呼ぶ。よって、オネバ回収皿10が、炊飯釜30にセットされたとき、裏面は炊飯釜30の底面に対向し、表面は蓋(内蓋34)に対向する。
【0022】
底面12には、オネバ回収皿10内に一定以上溜まったオネバを炊飯釜30に戻すためのオネバ戻し孔22が形成されている。オネバ回収孔20とオネバ戻し孔22には、それぞれの孔の縁から筒体20b、22bが延設されている。筒体20b、22bは、オネバ回収皿10の底面12から上方向に向かって形成されている。
【0023】
筒体20b、22bは、オネバ回収皿10の底面12側とその反体側に開口端が形成される。オネバ回収皿10の底面12側の開口端(下側開口端)は、オネバ回収皿10の表面から裏面に抜ける貫通孔である。またその反対側の開口端(上側開口端)がオネバ回収孔20若しくはオネバ戻し孔22である。すなわち、オネバ回収皿10の底面12に煙突状の筒体20b、22bが形成されており、オネバ回収皿10の裏面から、筒体20b、22bの上側開口端に向かって貫通孔が形成されている。
【0024】
オネバ回収孔20の筒体20bを「オネバ回収管20b」と呼び、オネバ戻し孔22の筒体22bを「オネバ戻し管22b」と呼ぶ。それぞれの筒体がオネバ回収皿10に連通している方の開口をそれぞれ、「オネバ回収管下側開口端20d」、「オネバ戻し管下側開口端22d」と呼び、オネバ回収皿10内の空間に開口している方の開口をそれぞれ「オネバ回収管上側開口端20u」、「オネバ戻し管上側開口端22u」と呼ぶ。したがって、オネバ回収孔20とオネバ戻し孔22は、それぞれオネバ回収管上側開口端20uとオネバ戻し管上側開口端22uである。
【0025】
オネバ回収孔20は、オネバ戻し孔22より高い位置に設けられる。ここで高い位置とは、炊飯釜30の底からの高さである。また、オネバ回収皿10を水平面に置いた炊飯器1にセットし、炊飯釜30に水を張ったときの水面からの高さと言ってもよい。また、オネバ回収皿10の底面12が平面で構成されている場合は、底面12からの高さといってもよい。
【0026】
オネバ回収孔20とオネバ戻し孔22は、ともにオネバ回収皿10の底面12から設けられた貫通孔であるが、大きさが異なる。オネバ回収孔20の開口面積の方が、オネバ戻し孔22の開口面積より大きい。実際の炊飯時には、オネバは泡状となって吹き上がる。したがって、オネバのほとんどは、開口面積の大きなオネバ回収孔20を通過し、開口面積の小さなオネバ戻し孔22を通過できるオネバは少ない。泡状のオネバは狭い隙間を通過しにくいからである。
【0027】
一方、オネバ回収皿10内に貯留されたオネバは、泡状から液体状になる。液体状になったオネバはオネバ戻し口22を通過することができ、炊飯釜30に戻る。
【0028】
なお、オネバ回収孔20とオネバ戻し孔22の開口面積とは、筒体20b、22bの下側開口端20d、22dから上側開口端20u、22uまでの間で最も断面積が小さくなった部分をいう。オネバはここを通過するからである。したがって、オネバ回収孔20とオネバ戻し孔22は、オネバ回収管20bとオネバ戻し管22bの上側開口端であるが、その開口面積は、オネバ回収孔20とオネバ戻し孔22の開口面積でなくてもよい。たとえば、筒体20b、22bの内部の断面積が狭くなっていれば、その部分の断面積がオネバ回収孔20若しくはオネバ戻し孔22の開口面積となる。
【0029】
また、オネバ回収管下側開口端20dの断面積はオネバ回収孔20の断面積より広く形成している。つまり、オネバ回収管20bは下側開口端からテーパー形状20tが形成されて、徐々に断面積が狭くなり、一定の断面積になってオネバ回収孔20に延設されている。このようにオネバ回収管下側開口端20dを広くし、テーパー形状20tを設けることで、炊飯釜30からのオネバを広い面積で集めることができる。これは、オネバ回収管20bが複数の断面積を有しているといってよい。
【0030】
オネバ回収皿10には、炊飯釜30の内壁に密着する密着部23を有する。密着部23は、オネバ回収皿10の側壁14の外面と炊飯釜30の内壁の間に隙間なく形成されるのが望ましい。例えば固定手段11の直下に設けられるパッキングなどが好適な例として挙げられる。
【0031】
この密着部23は、オネバを効率よく回収するために設けられる。つまり、炊飯中に生じるオネバは、この密着部23を通過することができず、オネバ回収孔20を通過して内蓋34の方向に向かう。そのため、オネバはオネバ回収皿10に効率よく入ることになる。
【0032】
以上の構成を有する炊飯器1の動作を簡単に説明する。お米は洗米の後、所定量を炊飯釜30に投入される。また、投入されたお米の量に対して予め決められた量の水を投入する。炊飯釜30は炊飯器1に中にセットされ、オネバ回収皿10が炊飯釜30の開口を覆うように配置される。そして外蓋36が閉じられ、炊飯が開始される。
【0033】
炊飯中に炊飯釜30内部の温度が上がると、水が沸騰し、お米から出てくるデンプンとともに、オネバが生成される。オネバは泡状に吹き上がり、オネバ回収皿10のオネバ回収孔20を通過して、内蓋34方向にまで吹き上がる。
【0034】
蓋部(34、36)には、蒸気抜きが設けてあるので、オネバ回収皿10の裏面側より表面側の方が、圧力が低く、高温高圧のオネバはオネバ回収皿10の上方向に抜けることのできる隙間を通過しようとする。オネバ回収皿10の側壁14の外周は、密着部23となっているので、内蓋34側には抜けられない。
【0035】
したがって、オネバはオネバ回収孔20とオネバ戻し孔22からオネバ回収皿10内に侵入する。ただし、オネバ回収孔20の開口面積は、オネバ戻し孔22の開口面積より広いので、オネバは主として、オネバ回収孔20を通過する。
【0036】
この際、泡状のオネバがオネバ回収皿10を上方に押し上げようとする。しかし、オネバ回収皿10は、密着部23若しくは固定手段11と内蓋34若しくは外蓋36によって、ほぼ固定されるので、押し上げられることはない。
【0037】
オネバ回収皿10の上側に通過したオネバはオネバ回収皿10の貯留空間16に溜まる。溜まったオネバは泡状から液体状に戻る。液体状になったオネバは、オネバ戻し孔22の高さまではオネバ回収皿10に貯留される。しかし、それ以上にオネバが貯留しようとすると、オネバはオネバ戻し孔22から炊飯釜30内に還流する。
【0038】
したがって、オネバ回収皿10内には、オネバ戻し孔22の高さに至るまでオネバが貯留することになる。つまり、底面12からオネバ戻し孔22の高さまでの体積分のオネバを貯留することができる。この体積は貯留空間16の体積であり、「貯留体積」と呼ぶ。また、それ以上のオネバについては、炊飯釜30に戻すことになる。炊飯が完了したら、外蓋36を開け、オネバ回収皿10を取り出す。オネバ回収皿10に貯留されたオネバは廃棄してもよい。
【0039】
なお、オネバ回収皿10を炊飯釜30から取り出す際に、オネバ戻し孔22からオネバがこぼれる場合もある。したがって、オネバ回収皿10を取り出す際に、オネバ戻し孔22を塞ぐ逆止弁22vが設けられていてもよい。逆止弁22vは、手動で開閉できるようにしてもよい。また、オネバ回収皿10が炊飯釜30にセットされている際には、開いており、取り出す際には閉じられる機構を設けて開閉してもよい。なお、逆止弁22vはオネバ戻し孔22だけでなく、オネバ戻し管下側開口端22dに設けてもよい。回収したオネバを炊飯釜30に戻さないためである。なお、オネバ戻し管下側開口端22dに逆止弁を設けた場合であっても、オネバ戻し孔22に逆止弁22vを設けたといってもよい。
【0040】
このように、本発明に係る炊飯器1は、貯留体積分のオネバを回収し、それ以上のオネバを飯米に戻すので、ご飯の粘り強さと旨味を調節することができる。
【0041】
また、上記のように、貯留体積は、オネバ回収皿10の底面12とオネバ戻し孔22の高さまでの体積である。したがって、オネバ戻し孔22の高さを調節すると貯留体積を調節することができる。
図3(a)には、オネバ戻し管22の外側に外筒22xが設けられたオネバ回収皿10の断面を示す。
図3(b)は、
図3(a)の一部拡大図である。オネバ戻し管22には、上下方向にスライド可能な外筒22xが配置されている。
【0042】
この外筒22xは、引き出して固定することができる。つまり、引き出した場合は、オネバ戻し管22の長さが長くなったのと同様になる。すると、オネバ戻し孔22の位置が高くなる。結果、オネバ戻し孔22の位置を高くしたり低くしたりすることができる。オネバ戻し孔22の位置を高くすると貯留体積は増加し、オネバ戻し孔22の位置を低くすると貯留体積は減少する。したがって、オネバ回収皿10は貯留体積を調節することができる。
【0043】
ここでは、外筒22xは、オネバ戻し管22の任意の位置で固定できるとすると、貯留体積を連続的に変化させることができる。なお、オネバ戻し孔22が複数ある場合は、それぞれのオネバ戻し孔22の高さを同じにしておかなければ、もっとも低い位置にあるオネバ戻し孔22と底面12との間の体積分のオネバしか回収できない。
【0044】
なお、ここでは、オネバ戻し管22の長さを調節することでオネバ回収皿10の貯留体積を調節できることとしたが、貯留体積の調節はこれ以外の方法でおこなってもよい。例えば、オネバ回収皿10内に突起を立て、貯留体積を減少させるなどである。このように1つのオネバ回収皿10において、貯留空間16の体積(貯留体積)を調節できる手段を貯留空間調節手段と呼ぶ。
【0045】
図4には、他の形態のオネバ回収皿10を示す。オネバ回収皿10は、側壁14にオネバ回収孔20とオネバ戻し孔22が形成されている。そして、オネバ回収孔20は、オネバ戻し孔22より高い位置に配置されている。また、オネバ回収孔20の開口面積はオネバ戻し孔22の開口面積より広い。このようなオネバ回収皿10であっても、
図2で示したオネバ回収皿10と同じように、一定の貯留体積のオネバを回収することができる。
【0046】
図5には、他の形態のオネバ回収皿10の断面を示す。このオネバ回収皿10は、底面12が円錐台形状に形成してあり、中央部にオネバ回収孔20が形成され、中心から離れたところにオネバ戻し孔22が形成されている。このオネバ回収皿10もオネバ戻し孔22と底面12との間に貯留空間16が形成されており、一定の貯留体積のオネバを回収することができる。
【0047】
このように、オネバ回収孔20とオネバ戻し孔22は、筒体20b、22bを設けることなく形成することもできる。また、オネバ回収孔20とオネバ戻し孔22は、オネバ回収皿10の側壁14若しくは底面12のどちらにでも形成することができる。もちろん、側壁14にオネバ回収孔20を形成し、底面12にオネバ戻し孔22を形成するなど、側壁14と底面12の両方を使ってもよい。もちろん、このような組み合わせであっても、貯留空間16が確保されていなければならないのは言うまでもない。
【0048】
図6には、オネバ回収皿10の側壁14に設けられたオネバ回収孔20とオネバ戻し孔22が筒体20b、22bを有している場合の例示である。オネバ回収管20bとオネバ戻し管22bは、オネバ回収皿10の側壁14に設けられたオネバ回収管下側開口端20dとオネバ戻し管下側開口端22dから延設され、オネバ回収皿10の内側空間で上方向に屈曲される。このようにオネバ回収管20bとオネバ戻し管22bは途中で屈曲していてもよい。オネバ回収孔20とオネバ戻し孔22は上向きに形成される。
【0049】
このような場合でもオネバ回収孔20の方が、オネバ戻し孔22の高さより高い。なお、
図6のような、構成にした場合は、オネバ回収管下側開口端20dとオネバ戻し管下側開口端22dの高さはどちらが高くてもよい。オネバ回収皿10内の空間に配置されるオネバ回収孔20がオネバ戻し孔22より高い位置にあれば、オネバを回収し、オネバ戻し孔22と底面12との間にできる貯留空間16にオネバを貯留することができるからである。