特許第6683021号(P6683021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683021
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20200406BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20200406BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20200406BHJP
   F24F 7/00 20060101ALI20200406BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A61L9/20
   B01D46/00 Z
   A61L2/10
   F24F7/00 A
   F24F13/28
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-111016(P2016-111016)
(22)【出願日】2016年6月2日
(65)【公開番号】特開2017-213544(P2017-213544A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100115543
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 康男
(72)【発明者】
【氏名】久下 洋介
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−240053(JP,A)
【文献】 特開2001−170146(JP,A)
【文献】 特開2014−213005(JP,A)
【文献】 特開2003−071213(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/016840(WO,A1)
【文献】 特表2008−532088(JP,A)
【文献】 特開2000−126551(JP,A)
【文献】 特開平11−319440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/20
A61L 2/10
B01D 46/00
F24F 7/00
F24F 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を拡散させる紫外線拡散手段を有する繊維により少なくとも部分的に構成された濾材を備える集塵フィルタと、
紫外線光源と、
を備える空気清浄装置であって、
前記紫外線光源から発せられた紫外線は、前記集塵フィルタの前記濾材に照射され、
前記紫外線拡散手段として、前記繊維の外径より小さい外径を有する微粒子が前記繊維の本体の内部に分散しており、
前記微粒子は、紫外線透過性を有し、
前記繊維の前記本体は、紫外線透過性を有し、
前記微粒子と、前記繊維の前記本体とは、屈折率が異なり、
前記繊維を透過する紫外線が拡散される空気清浄装置。
【請求項2】
前記微粒子がガラス製である請求項に記載の空気清浄装置
【請求項3】
前記濾材は、複数の層を有し、
前記複数の層のうちの少なくとも一層を形成する繊維が前記紫外線拡散手段を備える請求項1または請求項2に記載の空気清浄装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された従来の空気清浄機は、以下のように構成されている。集塵フィルタ(10)が、濾材(24)をプリーツ状に形成したHEPAフィルタ等の高効率フィルタで構成されている。紫外線ランプ(11)が集塵フィルタ(10)の前後両面に、濾材(24)のプリーツ方向に対して直交して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−190269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成では、濾材(24)の表面の全体に紫外線を当てるためには、集塵フィルタ(10)と同じ長さを有する紫外線ランプ(11)を二本必要とする。その結果、構造が複雑になり、高コストとなる原因になる。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、少ない光源でも濾材の表面の広範囲に紫外線を到達させることが可能な集塵フィルタを備えた空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気清浄装置は、紫外線を拡散させる紫外線拡散手段を有する繊維により少なくとも部分的に構成された濾材を備える集塵フィルタと、紫外線光源と、を備える空気清浄装置であって、紫外線光源から発せられた紫外線は、集塵フィルタの濾材に照射され、紫外線拡散手段として、繊維の外径より小さい外径を有する微粒子が繊維の本体の内部に分散しており、微粒子は、紫外線透過性を有し、繊維の本体は、紫外線透過性を有し、微粒子と、繊維の本体とは、屈折率が異なり、繊維を透過する紫外線が拡散されるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、少ない光源でも集塵フィルタの濾材の表面の広範囲に紫外線を到達させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の集塵フィルタを示す斜視図である。
図2】紫外線拡散手段を備える繊維の例を示す縦断面図である。
図3】紫外線拡散手段を備える繊維の他の例を示す縦断面図である。
図4】実施の形態1の集塵フィルタが備える濾材の模式的な断面図である。
図5図1中の仮想平面Aで切断した断面図である。
図6図1中の仮想平面Aで切断した断面図である。
図7図6の一部を拡大した模式的な断面図である。
図8】比較例の集塵フィルタを示す図である。
図9図8の一部を拡大した模式的な断面図である。
図10】実施の形態1の集塵フィルタを備える空気清浄機の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。本開示は、以下の各実施の形態で説明する構成のうち、組合わせ可能な構成のあらゆる組合わせを含み得る。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の集塵フィルタを示す斜視図である。図1に示す実施の形態1の集塵フィルタ1は、繊維により構成された濾材2を備える。濾材2は、等間隔のプリーツ形状に折られた状態になっている。図示を省略するが、集塵フィルタ1は、濾材2の形状を保持するための保持枠をさらに備えてもよい。集塵フィルタ1は、例えば、空気清浄機に備えられてもよい。集塵フィルタ1は、例えば、HEPAフィルタでもよい。なお、以下の説明では、集塵フィルタ1について、濾材2のプリーツの延びる方向を「縦方向」と称し、縦方向に垂直な方向を「横方向」と称する。
【0011】
紫外線光源10は、紫外線を発する。紫外線光源10から発せられた紫外線は、集塵フィルタ1の濾材2に照射される。集塵フィルタ1の濾材2に捕集されたほこりなどの汚れには、例えば、ウイルス、細菌、真菌などの微生物、あるいは花粉、臭い成分などの有機物質が含まれる場合がある。紫外線光源10から発せられた紫外線を、集塵フィルタ1の濾材2に照射することで、そのような微生物あるいは有機物質を不活性化することができる。紫外線によって微生物あるいは有機物質を不活性化することを以下の説明では「除菌」と称する。
【0012】
紫外線光源10は、例えば、水銀ランプを用いるものでもよいし、発光ダイオード(紫外線LED)を用いるものでもよい。紫外線光源10として、紫外線LEDを複数並べて配置してもよい。紫外線光源10から発せられる紫外線の波長は、例えば、200nmから300nmの範囲にある波長を含んでもよい。紫外線光源10は、集塵フィルタ1の縦方向を長手方向とする形状でもよい。
【0013】
濾材2の少なくとも一部は、紫外線を拡散させる紫外線拡散手段を有する繊維によって構成されている。紫外線拡散手段は、繊維にて反射する紫外線を拡散させてもよい。紫外線拡散手段は、繊維を透過する紫外線を拡散させてもよい。以下、図2及び図3を参照して、紫外線拡散手段を備える繊維の例を説明する。
【0014】
図2は、紫外線拡散手段を備える繊維の例を示す縦断面図である。実施の形態1の集塵フィルタ1が備える濾材2の全部または一部は、図2に示す繊維3によって構成されてもよい。繊維3は、当該繊維3の外径より小さい外径を有する微粒子4が繊維3の内部に分散した構造を有する。多数の微粒子4は、繊維3の本体5の内部に分散した状態になっている。図示の構成では、微粒子4の全体が繊維3の本体5の内部にあるが、少なくとも一部の微粒子4において、当該微粒子4の一部分が本体5の表面より外側へ突出してもよい。
【0015】
微粒子4は、紫外線透過性を有する。繊維3の本体5は、紫外線透過性を有する。微粒子4と、繊維3の本体5とは、屈折率が異なる。繊維3の表面から繊維3の内部に入射した紫外線は、微粒子4と本体5との界面で反射または屈折する。これにより、繊維3にて反射する紫外線及び繊維3を透過する紫外線が拡散される。微粒子4は、光拡散剤としての機能を有する。
【0016】
繊維3の本体5は、例えば、ポリプロピレン、レーヨンまたはポリエステルなどの樹脂を主成分とするものでもよい。微粒子4は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂などからなるものでもよい。微粒子4としては、例えば、積水化成品工業株式会社製の商品名「テクポリマー」を用いてもよい。微粒子4は、樹脂製のものに限らず、ガラス製でもよい。微粒子4の形状は、図示のような球形に限らず、球形以外の形状でもよい。
【0017】
図3は、紫外線拡散手段を備える繊維の他の例を示す縦断面図である。実施の形態1の集塵フィルタ1が備える濾材2の全部または一部は、図3に示す繊維6によって構成されてもよい。繊維6の表面には、多数の微細な凹凸が形成されている。これらの凹凸が形成された繊維6の表面で紫外線が反射または屈折することで、繊維6にて反射する紫外線及び繊維6を透過する紫外線が拡散される。繊維6は、紫外線透過性を有してもよい。
【0018】
濾材2は、複数の層を備えるものでもよい。図4は、実施の形態1の集塵フィルタ1が備える濾材2の模式的な断面図である。図4に示す濾材2は、第一層7と第二層8とを貼り合せた構造を有する。第一層7と第二層8とは、材質及び外径の少なくとも一方が異なる繊維によって構成されてもよい。第一層7は、集塵を捕集するための目の細かいシートでもよい。集塵を捕集するための目の細かいシートは、強度が低い。第二層8は、第一層7を補強するための目の粗いシートでもよい。第一層7及び第二層8の双方が、紫外線拡散手段を備える繊維によって形成されてもよい。第一層7のみが、紫外線拡散手段を備える繊維によって形成されてもよい。第二層8のみが、紫外線拡散手段を備える繊維によって形成されてもよい。図示の構成に限らず、濾材2は、三層以上の複数の層を備えてもよい。その場合、複数の層のうちの少なくとも一層が、紫外線拡散手段を備える繊維によって形成されていればよい。
【0019】
図5は、図1中の仮想平面Aで切断した断面図である。図5に示すように、本実施の形態では、紫外線光源10は、集塵フィルタ1の横方向の位置に関して、集塵フィルタ1の横方向の中央に配置されている。図5中の矢印付きの直線は、紫外線光源10から発せられた紫外線及びその反射光を示す。図5中の点線は、濾材2の表面のうち紫外線が到達する範囲の例を示す。
【0020】
本実施の形態であれば、以下の効果が得られる。図5に示すように、集塵フィルタ1の横方向の中央においては、紫外線光源10からの紫外線が濾材2のプリーツの奥まで直接照射される。集塵フィルタ1の横方向の中央以外の位置では、紫外線光源10からの紫外線が、隣接するプリーツの山によって遮られる。このため、集塵フィルタ1の横方向の中央以外の位置では、濾材2のプリーツの内側において、紫外線光源10からの紫外線が直接照射されない領域が生じる。濾材2を構成する繊維が紫外線拡散手段を備えることで、濾材2の表面における紫外線のランダムな反射が促進される。濾材2の表面で紫外線がランダムな反射を繰り返すことで、光量は下がりながらも、プリーツの奥まで紫外線が到達する。その結果、集塵フィルタ1の横方向の中央以外の位置においても、濾材2のプリーツの奥まで紫外線が到達する。よって、濾材2の表面の広い範囲において紫外線による除菌効果が得られる。図5中では、濾材2の表面で反射を繰り返すことでプリーツの奥まで到達する紫外線の代表的な経路を示す。
【0021】
図6は、図1中の仮想平面Aで切断した断面図である。図7は、図6の一部を拡大した模式的な断面図である。図6及び図7中の矢印付きの直線は、紫外線光源10から発せられた紫外線、並びに、その反射光及び透過光を示す。図6及び図7中の点線は、濾材2の表面のうち紫外線が到達する範囲の例を示す。
【0022】
濾材2に照射された紫外線の一部は、濾材2の反対側へ透過する。図6及び図7に示す例は、図5に示す例で説明した効果に加えて、その透過光による効果を得る場合の例である。濾材2を構成する繊維が紫外線拡散手段を備えることで、図7に示すように、濾材2の内部で紫外線の拡散が促進され、濾材2の紫外線光源10側の面と反対側の面から紫外線が様々な角度で出射する。そのようにして濾材2を透過して濾材2の反対側の面から出射した紫外線が、隣接するプリーツの表面に照射されることで、濾材2の紫外線光源10側の面と反対側の面にも広い範囲に紫外線が到達する。よって、濾材2の紫外線光源10側の面だけでなく、その反対側の面でも、広い範囲において紫外線による除菌効果が得られる。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態であれば、集塵フィルタ1の横方向の幅に比べて紫外線光源10が小さい場合であっても、濾材2の広い範囲に紫外線を到達させることができる。よって、小型の紫外線光源10を用いたり、少ない数の紫外線光源10を用いたりしても、濾材2の広い範囲で紫外線による除菌効果が得られる。このため、構造が簡単になり、コストを低減できる。また、濾材2の素材の材料を変更するだけで上記効果が得られるので、既存の製造設備を使用することができ、大きな設備投資が不要になる。
【0024】
図8は、比較例の集塵フィルタを示す図である。図9は、図8の一部を拡大した模式的な断面図である。図8に示す比較例の集塵フィルタ90が備える濾材91は、紫外線拡散手段を備えない繊維で全体が構成されている。図8及び図9中の矢印付きの直線は、紫外線光源10から発せられた紫外線を示す。濾材91の表面及び内部では、紫外線の拡散が促進されない。図8及び図9では、濾材91で紫外線が反射も拡散もしないと仮定した場合の、紫外線が到達する範囲を、点線で示す。比較例の集塵フィルタ90では、濾材91において紫外線が到達しない領域が広く発生する。このため、比較例の集塵フィルタ90では、濾材91において、限られた一部の範囲でしか紫外線による除菌効果が得られない。
【0025】
図10は、実施の形態1の集塵フィルタ1を備える空気清浄機20の模式的な断面図である。図10に示すように、空気清浄機20は、筐体21を備える。筐体21の内部に、集塵フィルタ1、紫外線光源10、及び送風装置22が設置されている。筐体21の前面部には、室内の空気を筐体21内に吸込むための吸込口23が設けられている。筐体21の上面部には、筐体21内に吸込んだ空気を吹出すための吹出口24が設けられている。吸込口23から筐体21内に流入した空気は、集塵フィルタ1及び送風装置22を通過して、吹出口24から筐体21外へ流出する。空気清浄機20は、例えば、プレフィルタ、消臭フィルタなどを含む他の機器(図示省略)をさらに備えてもよい。
【0026】
図示の構成では、筐体21の前面部に吸込口23が形成されているが、このような構成に代えて、例えば、筐体21の側面部に吸込口23を形成してもよい。図示の構成では、筐体21の前面部の内側に紫外線光源10を配置しているが、紫外線光源10の設置箇所はこれに限定されるものではない。
【0027】
本発明の集塵フィルタは、上記のような空気清浄機20に限らず、例えば、空調装置に備えられた空気清浄装置、電気掃除機の排気を浄化する空気清浄装置などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 集塵フィルタ、 2 濾材、 3 繊維、 4 微粒子、 5 本体、 6 繊維、 7 第一層、 8 第二層、 10 紫外線光源、 20 空気清浄機、 21 筐体、 22 送風装置、 23 吸込口、 24 吹出口、 90 集塵フィルタ、 91 濾材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10