特許第6683028号(P6683028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6683028導電性組成物、蓄電デバイス用下地付き集電体、蓄電デバイス用電極、及び蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683028
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】導電性組成物、蓄電デバイス用下地付き集電体、蓄電デバイス用電極、及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20200406BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20200406BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20200406BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20200406BHJP
   H01G 11/28 20130101ALI20200406BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20200406BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20200406BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20200406BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
   H01M4/13
   H01M10/0566
   H01M4/02 Z
   H01G11/28
   H01G11/68
   H01G11/70
   H01G11/06
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-121363(P2016-121363)
(22)【出願日】2016年6月20日
(65)【公開番号】特開2017-228344(P2017-228344A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川原 淳子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博友
(72)【発明者】
【氏名】諸石 順幸
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−026595(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/046469(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/077366(WO,A1)
【文献】 特開平10−241665(JP,A)
【文献】 特開昭63−175336(JP,A)
【文献】 特開平09−134709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
H01M 4/02
H01M 4/13
H01M 10/05−10/0587
H01G 11/06
H01G 11/28
H01G 11/68
H01G 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の炭素材料(A)と、水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)と、水性液状媒体(D)とを含有してなる蓄電デバイス用電極の下地層形成用導電性組成物であって、前記水分散樹脂微粒子が少なくともオレフィン系樹脂微粒子を含み、導電性組成物の固形分の合計100質量%中、導電性の炭素材料(A)の含有率が、30〜70質量%であり、水溶性樹脂(B)の含有率が、1〜40質量%であり、水分散樹脂微粒子(C)の含有率が、20〜60質量%であり、導電性の炭素材料(A)の総比表面積が30m2/g以下であることを特徴とする蓄電デバイス用電極の下地層形成用導電性組成物。
【請求項2】
導電性の炭素材料(A)が、少なくとも黒鉛を含み、導電性の炭素材料(A)中の黒鉛の含有率が、60〜100質量%である請求項1に記載の下地層形成用導電性組成物。
【請求項3】
水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子が、カルボニル基を有するポリオレフィン樹脂微粒子であり、ポリオレフィン樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、2800〜3000cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690〜1740cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が、0.05〜1.0であることを特徴とする請求項1または2に記載の下地層形成用導電性組成物。
【請求項4】
集電体と、請求項1〜3いずれかに記載の蓄電デバイス用電極の下地層形成用導電性組成物から形成された下地層とを有する蓄電デバイス用下地層付き集電体。
【請求項5】
集電体と、請求項1〜3いずれかに記載の蓄電デバイス用電極の下地層形成用導電性組成物から形成された下地層と、電極活物質とバインダーとを含有する電極形成用組成物から形成された合材層とを有する蓄電デバイス用電極。
【請求項6】
正極と負極と電解液とを具備する蓄電デバイスであって、前記正極または前記負極の少なくとも一方が請求項5に記載の蓄電デバイス用電極である、蓄電デバイス。
【請求項7】
蓄電デバイスが、非水電解質二次電池、電気二重層キャパシターまたはリチウムイオンキャパシターのいずれかである請求項6に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、及びその組成物を用いて得られる蓄電デバイス(例えばリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシターなど)用電極、並びにその電極を用いて得られる蓄電デバイスに関する。詳しくは、蓄電デバイスの温度が上昇した場合に該蓄電デバイスの内部抵抗を高くする機能を備えた導電性組成物、蓄電デバイス用電極並びに蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池の実現が求められている。特にリチウムイオン二次電池は鉛蓄電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池等の水溶系二次電池と比較して大きなエネルギー密度が得られることから、パソコンや携帯端末等の電源としての重要性が高まっており、さらには車載搭載用高出力電源として好ましく用いられるものとして期待されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いという利点の反面、非水電解質を使用することから、安全性に対する十分な対応策が必要になる。近年、電池の大型化及び高容量化に応じて、安全性の確保が大きな課題となっている。例えば、過充電や電池内部での短絡等により、電池温度が異常に、かつ急激に上昇する場合、電池の外部に設けられた安全性機構だけでは、発熱を規制するのは困難となり、発火する危険性がある。
【0004】
特許文献1では、集電体に正温度係数抵抗体(以下PTC)の機能を有する電子伝導材料を接合する方法が記載されている。しかし、電子伝導性材料の厚みが50μmと厚いために、電池全体としてのエネルギー密度が低いといった問題点が挙げられる。
【0005】
特許文献2では、正極、負極、非水電解液のいずれかにPTCの特性をもたせることが開示されている。しかし、これらにPTC特性を付与するには、電池容量に寄与しない多量の添加物を加える必要があり、エネルギー密度が低いといった問題点が挙げられる。
【0006】
特許文献3では、集電体表面に結晶性熱可塑性樹脂と導電剤および結着材からなる導電層を設ける方法が記載されている。この導電層は、電池内の温度が結晶性熱可塑性樹脂の融点を超えると、導電層の抵抗が上昇して、集電体と活物質間の電流が遮断される。しかし、電池の通常作動時における内部抵抗が高くなり、電池の出力特性が低いといった問題点が挙げられる。
【0007】
特許文献4では、集電体表面にポリフッ化ビニリデンと導電剤からなる導電層を設け、この導電層を設けた集電体を120℃を超える温度で加熱する方法が記載されている。しかし、熱処理する工程が追加されるほか、電池内の温度が上昇したときの抵抗上昇は十分でないといった問題点が挙げられる。
【0008】
特許文献5では、導電性粒子、カルボキシメチルセルロース、水分散オレフィン系樹脂および分散剤からなる導電層を設けた集電体を設ける方法が記載されているが電池内部の温度が上昇したときの抵抗上昇は十分ではないといった問題点が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−241665号公報
【特許文献2】特開平11−329503号公報
【特許文献3】特開2001−357854号公報
【特許文献4】特開2012−104422号公報
【特許文献5】国際公開第2015/046469号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、蓄電デバイス(例えば、非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシターなど)のエネルギー密度を損なうことなく、通常作動時の蓄電デバイスの出力特性等に優れ、蓄電デバイスの内部温度が上昇した場合にも、内部抵抗を上昇させて過度の発熱や発火を抑制することができる蓄電デバイスと、それを構成するための電極、集電体および導電性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導電性の炭素材料(A)と、水溶性樹脂(B)と、少なくともオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散樹脂微粒子(C)とを含む導電性組成物であり、蓄電デバイスの発熱時に集電体の抵抗が増大し、電流を遮断することで、蓄電デバイスの発火等を回避するものである。
本発明者らは、導電性組成物の固形分比と導電性の炭素材料(A)の総比表面積を適切に制御すると、驚くべきことに、通常作動時の内部抵抗の低減と、蓄電デバイス内の温度が上昇したときに飛躍的に抵抗上昇が発現することを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
即ち、本発明は、導電性の炭素材料(A)と、水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)と、水性液状媒体(D)とを含有してなる蓄電デバイス用電極の下地層形成用導電性組成物であって、前記水分散樹脂微粒子が少なくともオレフィン系樹脂微粒子を含み、導電性組成物の固形分の合計100質量%中、導電性の炭素材料(A)の含有率が、30〜70質量%であり、水溶性樹脂(B)の含有率が、1〜40質量%であり、水分散樹脂微粒子(C)の含有率が、20〜60質量%であり、導電性の炭素材料(A)の総比表面積が30m2/g以下であることを特徴とする蓄電デバイス用電極の下地層形成用導電性組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、導電性の炭素材料(A)が、少なくとも黒鉛を含み、導電性の炭素材料(A)中の黒鉛の含有率が、60〜100質量%である上記下地層形成用導電性組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子が、カルボニル基を有するポリオレフィン樹脂微粒子であり、ポリオレフィン樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、2800〜3000cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690〜1740cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が、0.05〜1.0である上記下地層形成用導電性組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、集電体と、上記蓄電デバイス用電極の下地層形成用導電性組成物から形成された下地層とを有する蓄電デバイス用下地層付き集電体であって、下地層の密度が、1.4g/cm3以上である下地層付き集電体に関する。
【0016】
また、本発明は、集電体と、上記蓄電デバイス用電極の下地層形成用導電性組成物から形成された下地層と、電極活物質とバインダーとを含有する電極形成用組成物から形成された合材層とを有する蓄電デバイス用電極に関する。
【0017】
また、本発明は、正極と負極と電解液とを具備する蓄電デバイスであって、前記正極または前記負極の少なくとも一方が上記蓄電デバイス用電極である蓄電デバイスに関する。
【0018】
また、本発明は、蓄電デバイスが、非水電解質二次電池、電気二重層キャパシターまたはリチウムイオンキャパシターのいずれかである上記蓄電デバイスに関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、通常作動時の蓄電デバイスの出力特性等に優れ、蓄電デバイスの内部温度が上昇した場合に、過度の発熱や発火を抑制することができる蓄電デバイス(例えばリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシターなど)を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、蓄電デバイス用電極の下地層形成用として使用できる。導電性組成物は、導電性の炭素材料(A)と水溶性樹脂バインダー(B)と、少なくともオレフィン系樹脂微粒子を含む水分散性樹脂微粒子(C)と、水性液状媒体(D)とを含有する。
【0021】
導電性組成物の固形分の合計100質量%中、導電性の炭素材料(A)の含有量は、導電性と内部抵抗の観点から、30〜70質量%であり、好ましくは40〜60質量%である。
【0022】
導電性組成物の固形分の合計100質量%中、水溶性樹脂(B)の含有量は、電極の密着性と導電性、および発熱時における電池の内部抵抗上昇の観点から、1〜40質量%であり、好ましくは5〜30質量%である。水溶性樹脂(B)の含有量が1〜40質量%であれば、加熱によりポリオレフィン樹脂微粒子が溶融した場合でも、水溶性樹脂(B)が炭素同士の再接触を防ぐ効果が確認され、電池の安全性を飛躍的に向上させるため好ましい。
【0023】
導電性組成物の固形分の合計100質量%中、水分散樹脂微粒子(C)の含有量は、内部抵抗と導電性、および発熱時における電池の内部抵抗上昇の観点から、20〜60質量%であり、好ましくは30〜50質量%である。水分散樹脂微粒子(C)の含有量が20〜60質量%以内であれば、ポリオレフィン樹脂(水分散樹脂微粒子(C))の体積膨張が十分に発現し、電池の内部温度が上昇した際に内部抵抗が効果的に上昇するため、好ましい。
【0024】
導電性組成物の固形分の合計100質量%中、導電性組成物(A)と水溶性樹脂(B)と水分散樹脂微粒子(C)の総量は、内部抵抗と導電性および発熱時における電池の内部抵抗上昇の観点から、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。上記組成物中に必要に応じて任意の成分を追加しても良い。
【0025】
任意の成分としては特に限定されないが、例えば電解液の反応によって生成する酸を吸着または消費する材料や、所定温度以上になるとガスを発生する材料、無機のPTC材料、ポリオレフィン系樹脂微粒子が体積膨張した後の導電パスを保持する材料などを追加しても良い。
【0026】
電解液の反応によって生成する酸を吸着する材料としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ホウ素(B23)、酸化ガリウム(Ga23)、酸化インジウム(In23)などが挙げられる。
【0027】
電解液の反応によって生成する酸を消費する材料としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシムなどの金属炭酸塩類、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウムなどの金属有機塩類、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、二酸化珪素などの珪酸塩類、水酸化マグネシウムなどのアルカリ性水酸化物類などが挙げられる。
【0028】
所定温度以上になるとガスを発生する材料としては、炭酸リチウム、炭酸亜鉛、炭酸鉛、炭酸ストロンチウムなどの炭酸塩類、膨張黒鉛などが挙げられる。
【0029】
無機のPTC材料としては、BaTiMO3(Mは、Cr、Pb、Ca、Sr、Ce、Mn、La、Y、NbおよびNdからなる群より選ばれる一種類以上の元素)などが挙げられる。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂微粒子が体積膨張した後の導電パスを保持する材料としは、セルロースナノファイバーやシリカ、アルミナなどの無機微粒子などが挙げられる。
【0031】
また、導電性組成物の適正粘度は、導電性組成物の塗工方法によるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0032】
<導電性の炭素材料(A)>
本発明における導電性の炭素材料(A)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。特に発熱時における電池の内部抵抗上昇の観点から、黒鉛を使用することが好ましい。導電性の炭素材料(A)に黒鉛を含有させることで、オレフィン系樹脂微粒子が体積膨張すると同時に、黒鉛も体積膨張し、導電性の炭素材料同士の接点が面接触から点接触もしくは接触が切れるため、導電性の炭素材料同士の接触を切断する効果が高まると考えられる。
【0033】
黒鉛とは、炭素の六角板状結晶であるが、本発明としては、土状黒鉛、塊状黒鉛、鱗状黒鉛等の天然黒鉛、及び人造黒鉛等が挙げられる。さらに、膨張化黒鉛、薄片化により成型性、導電性を向上させた薄片化黒鉛、球状化粉砕加工により配向性を抑えた球状化黒鉛、溶けた銑鉄が溶銑予備処理等で温度低下するのに伴い析出した、平面的に結晶化した炭素であるキッシュ黒鉛等も挙げられる。なお、膨張化黒鉛とは、例えば、天然黒鉛等を、濃硫酸と硝酸との混液、濃硫酸と過酸化水素水との混液の強酸化性の溶液に浸漬処理して黒鉛層間化合物を生成させ、水洗してから急速加熱して、黒鉛結晶のC軸方向を膨張処理することによって得られた粉末や、それを一度シート状に圧延したものを粉砕した粉末である。特に蓄電デバイスのエネルギー密度や下地層の導電性の観点から、薄片化黒鉛や天然黒鉛を使用することが好ましい。
【0034】
市販の黒鉛としては、昭和電工社製のSCMG−AH、SCMG−AR、SCMG−AR−H、SCMG−AF、SCMG−AFC、UF−G10、UF−G30、Timcal社製のKS−6、SFG−6、日本黒鉛工業社製のCPB、UCP、AP、P#1、PAG−5、HAG−10W、ACP、ACB−150、SP−10、SP−20、J−SP、GR−15、UP−5N、UP−15N、CGC−20、CGB−20、J−SP−α、UP−5−α、SP−5030−α、EXP−SM、富士黒鉛工業社製のUF−2,BF−3A、BF−5A、BF−8A、BF−10A、BF−20A、CNG−44N、BSP−5A、BSP−20A、A−0、FAG−1C、JSG−25、JSG−75、WF−10,WF−20,WF−30,中越黒鉛工業所社製のCX−3000、BF−1AT、FBF、BF、CBR、G−6S,WF−15C,CPB−6S、BSP−10AK、HF−80、HF−48、伊藤黒鉛工業社製のZ−5F,CNP−7、CNP−15、CNP−35、Z+80、Z−25、Z−50、X−10、X−20、SRP7、SRP10、CP2000M、EC1500、SG−BH8、SG−BH、SECカーボン社製のSNO−20、SNO−10、SNO−5、SNE−20、SNE−10、SNE−5等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0035】
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0036】
導電性炭素繊維としては石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。例えば石油由来の原料で製造される昭和電工社製のVGCFなどを挙げることができる。
【0037】
更に、通常使用時における蓄電デバイスの導電性や、温度上昇時における抵抗上昇の観点から、本発明における導電性の炭素材料(A)の総比表面積は30m2/g以下である。好ましくは1.0m2/g以上かつ30m2/g以下であり、より好ましくは5.0m2/g以上かつ30m2/g以下である。また、導電性の炭素材料(A)の総比表面積が30m2/g以下であることで、水溶性樹脂(B)が炭素同士の再接触を防ぐ効果を高めることができると考えられる。
本発明の導電性炭素材料(A)における総比表面積とは、ガス吸着量測定装置を用い、JIS K6217−2で測定されたBET比表面積から、各導電性の炭素材料のBET比表面積と混合比の加重平均値を算出したものである。
【0038】
<水溶性樹脂(B)>
本明細書における水溶性樹脂(B)とは、25℃の水99g中に水溶性樹脂(B)1g入れて撹拌し、25℃で24時間放置した後、分離・析出せずに水中で樹脂が溶解可能なものである。
【0039】
水溶性樹脂(B)としては、上述の通り水溶性を示す樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等の多糖類の樹脂を含む高分子化合物が挙げられる。また、水溶性であれば、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これら水溶性樹脂は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。導電性組成物中に所定量の水溶性樹脂(B)を含むことで、ポリエステル系樹脂微粒子またはポリウレタン系樹脂微粒子が溶解した場合でも、水溶性樹脂(B)が炭素同士の再接触を防ぐ効果が確認され、電池の安全性を向上させることができる。さらに、水溶性樹脂(B)は導電性組成物(スラリー)において、化学的に安定であることから、経時変化が少なく、下地層を形成する際の塗工特性に優れる。
【0040】
水溶性樹脂(B)の分子量は特に限定されないが、好ましくは質量平均分子量が5,000〜2,000,000である。質量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリエチレンオキサイド換算分子量を示す。
【0041】
また、本発明において、水溶性樹脂(B)は、カルボキシメチルセルロースを用いることが好ましく、蓄電デバイスの内部温度が上昇したときの抵抗上昇の観点から、上記の質量平均分子量が10,000〜70,000であり、エーテル化度が0.3〜1.0であることがより好ましい。エーテル化は、灰化した試料を硫酸にて煮沸し、フェノールフタレイン指示薬に加え、過剰の酸を水酸化カリウムで逆滴定することにより求める。
【0042】
さらに、カルボキシメチルセルロース1gを25℃の水99g中に入れて撹拌して得られた1質量%水溶液の粘度が0.01〜0.1Pa・sであることがより好ましい。水溶液の粘度測定はレオメーター(TAインスツルメント社製AR−G2)により、コーンプレート(60mm、1°)を用いて、測定温度25℃、せん断速度360(1/s)で測定したものである。
【0043】
以上のようなカルボキシメチルセルロースは市販品を用いることが可能であり、市販品としては、例えば、ダイセル化学工業社製の#1110、#1120、#1130、#1140.#1170、#1210、#1240、#1250、#1260、#1270などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
<水分散樹脂微粒子(C)>
本発明の水分散樹脂微粒子(C)としては、一般的に水性エマルションとも呼ばれるものであり、樹脂微粒子が水中で溶解せずに、微粒子の形態で分散されているものである。水分散樹脂微粒子であることから、炭素材料(A)の導電性を損なうことがなく、通常作動時の内部抵抗を低減でき、出力特性を改善することができる。
【0045】
水分散樹脂微粒子は少なくともオレフィン系樹脂微粒子を含み、水分散樹脂微粒子に含まれるオレフィン系樹脂微粒子の割合が50〜100質量%であることが好ましい。また、2種以上のオレフィン系樹脂微粒子を含んでいても良く、必要に応じて、オレフィン系樹脂微粒子以外の水分散樹脂微粒子を含んでいても良い。オレフィン系樹脂微粒子以外の水分散樹脂微粒子は特に限定されないが、(メタ)アクリル系エマルション、ニトリル系エマルション、ウレタン系エマルション、ジエン系エマルション(SBRなど)、フッ素系エマルション(PVDFやPTFEなど)等が挙げられる。
【0046】
水分散樹脂微粒子としては、80〜180℃の範囲内でオレフィン系樹脂微粒子が体積膨張することによって、導電層中に分散している導電性の炭素材料同士の接触を断つことができる樹脂であることが好ましい。これにより、電極自体の抵抗が高くなるので、短絡箇所に流れる電流が減少し、ジュール発熱を抑制し、電池の安全性が保たれるという効果を奏すると考えられる。
ポリオレフィン樹脂微粒子中のオレフィン成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ノルボルネン等が挙げられる。これらオレフィン成分は、1種でも2種以上であっても良い。また、蓄電デバイスの内部の温度上昇時おけるオレフィン系樹脂微粒子の体積膨張を保持する効果から、カルボン酸やカルボン酸エステルによる変性や共重合などがされていても良い。
【0047】
本発明において、水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子は、カルボニル基(−CO−)を一定量以上有することが好ましい。また、カルボン酸またはカルボン酸エステルで変性されたオレフィン系樹脂微粒子であることが好ましい。カルボニル基を有すると、樹脂微粒子の溶融耐性を付与できることから、内部短絡などによる蓄電デバイスの内部温度上昇時に、ポリオレフィン樹脂微粒子の体積膨張を維持することができ、炭素材料同士の切断効果を維持し続けることができると考えられる。
【0048】
例えば、カルボン酸またはカルボン酸エステルは、特に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピパリン酸ビニルなどが挙げられる。
【0049】
カルボニル基を有するポリオレフィン樹脂微粒子中のカルボニル基の含有量は、フーリエ変換赤外分光装置(FT−IR:PerkinElmer社製Spectrum One/100)による全反射測定法(ATR)によって求めることができ、2800〜3000cm-1のオレフィン由来の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690〜1740cm-1のカルボニル基由来の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が0.05〜1.0であることが好ましい。また、ポリエチレンからなる樹脂微粒子においては、上記(Y)/(X)が0.3〜0.8であり、ポリプロピレンからなる樹脂微粒子においては、上記(Y)/(X)が0.05〜0.5であることがさらに好ましい。
【0050】
ここでいうピーク高さとは、水分散樹脂微粒子(C)から分散媒を除去し、最終的に120℃で乾燥させて得られた固形物をFT−IRにて測定したものである。ポリオレフィン樹脂微粒子中のカルボニル基の含有量は、波数に対して吸光度をプロットしたスペクトルを用い、2700m-1における吸光度を示す点と3000cm-1における吸光度を示す点との2点を結ぶ直線をベースラインBXとした際の、2800〜3000cm-1に見られるオレフィン由来の2本または4本のうち、最大ピークからベースラインBXまでの高さ(極大吸光度)(X)と、1650m-1における吸光度を示す点と1850cm-1における吸光度を示す点との2点を結ぶ直線をベースラインBYとした際の、1690〜1740cm-1のカルボニル基由来の最大ピークからベースラインBYまでの高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)から求めることができる。一般的に、ポリエチレン系樹脂は2本、ポリプロピレン系樹脂は4本のピークが認められるが、両者とも最大ピークは2915cm-1付近に認められる。
【0051】
以上のようなポリオレフィン系樹脂微粒子は、市販品を用いることが可能であり、市販品としてはユニチカ社製のアローベースSB−1200、SD−1200、SE−1200、TC−4010、TD−4010、東洋アドレ社製のアクアペトロDP−2401、DP−2502、住友精化社製のザイクセンAC、A、AC−HW−10,L、NC、Nなど、三井化学社製のケミパールA100、A400、M200、S100、S200、S300、V100、V200、V300、W100、W200、W300、W400、W4005、WP100、東洋紡社製のハードレンNZ−1004、NZ−1015、東邦化学社製ハイテックE−6500、P−9018、S−3121などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0052】
水分散樹脂微粒子(C)の分散媒としては、水を使用することが好ましいが、樹脂微粒子の安定化等のために、水と相溶する以下に示す水性液状媒体(D)を使用しても良い。水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。
【0053】
水分散樹脂微粒子(C)の平均粒子径は、好ましくは0.01〜5μmであり、さらに好ましくは0.05〜1μmである。粒子径が小さすぎると、安定に製造するのが困難となり、一方、粒子径が大きすぎると、導電層の導電性を均一に保つことが困難となり、通常作動時の内部抵抗が上昇し、出力性能等が悪化する。
【0054】
なお、本明細書における平均粒子径とは、体積平均粒子径(D50)のことを表し、動的光散乱法により測定した値を指す。動的光散乱法による平均粒子径の測定は、以下のようにして行うことができる。水分散樹脂微粒子分散液は固形分に応じて200〜1000倍に水希釈しておく。該希釈液約5mlを測定装置[(株)日機装製 ナノトラック]のセルに注入し、サンプルに応じた溶剤(本発明では水)および樹脂の屈折率条件を入力後、測定を行う。
【0055】
<水性液状媒体(D)>
水性液状媒体(D)としては、水を使用することが好ましいが、必要に応じて、例えば、集電体への塗工性向上のために、水と相溶する液状媒体を使用しても良い。
【0056】
水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。
【0057】
<その他添加剤>
さらに、導電性組成物には、界面活性剤、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤などを必要に応じて配合できる。
【0058】
<分散機・混合機>
本発明の導電性組成物や後述する合材インキを得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0059】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。また、強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい正または負極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
【0060】
<蓄電デバイス用下地層付き集電体、蓄電デバイス用電極>
本発明の蓄電デバイス用下地層付き集電体とは、集電体上に、本発明の導電性組成物から形成された下地層を有するものである。また、本発明の蓄電デバイス用電極とは、集電体上に、本発明の導電性組成物から形成された下地層と、電極活物質とバインダーとを含有する電極形成用組成物(合材インキ)から形成された合材層とを有する。
【0061】
(集電体)
電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種蓄電デバイス用にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。リチウムイオン電池の場合、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅が、それぞれ好ましい。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
【0062】
集電体上に導電性組成物や後述する合材インキを塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではなく、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。
【0063】
下地層の厚みは、好ましくは0.1〜10μmであり、より好ましくは0.5〜5μm、さらに好ましくは0.5〜3μmである。下地層の厚みが0.1μm以上であれば、集電体と活物質とが直接接触するバイパス部分が均一に形成され、電池が発熱した際、下地層部分の抵抗増大による電流遮断効果が十分となる。一方、下地層の厚みが10μm以下であれば、蓄電デバイスの容量が低下しにくいため好ましい。
【0064】
通常使用時における蓄電デバイスの導電性や、温度上昇時における抵抗上昇の観点から、下地層の密度は、好ましくは1.4g/cm3以上であり、より好ましくは、1.4g/cm3以上2.2g/cm3以下である。下地層の密度が1.4g/cm3以上であれば、オレフィン系樹脂微粒子の体積膨張による炭素材料同士の接触の切断する効果が高まると考えられ、特に、炭素材料に黒鉛を使用することが好ましい。
【0065】
下地層は集電体の片面もしくは両面に設置できるが、熱による抵抗上昇や蓄電デバイスの内部抵抗低減の観点から、集電体の両面に設置することが好ましい。
【0066】
<合材インキ>
前記したように、一般的な蓄電デバイス用の合材インキは、活物質と、溶媒を必須とし、必要に応じて導電助剤と、バインダーとを含有する。
活物質はできるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、合材インキ固形分に占める活物質の割合は、80〜99質量%が好ましい。導電助剤を含む場合、合材インキ固形分に占める導電助剤の割合は、0.1〜15質量%であることが好ましい。バインダーを含む場合、合材インキ固形分に占めるバインダーの割合は、0.1〜15質量%であることが好ましい。
【0067】
塗工方法によるが、固形分30〜90質量%の範囲で、合材インキの粘度は、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0068】
合材インキの溶媒(分散媒)は特に限定されないが、使用するバインダーに応じて使い分けることができる。例えば樹脂型のバインダーを用いる場合、樹脂を溶解可能な溶媒が使用され、エマルション型のバインダーを用いる場合、エマルションの分散を維持できる溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどのアミド類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアミンなどのアミン類、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、水等が挙げられる。また、必要に応じて、上記溶媒を2種以上組み合わせて使用しても良い。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)をバインダーに用いる場合、PVDFを溶解可能なNMPが好ましく用いられ、カルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジエンゴム(SBR)をバインダーに用いる場合、CMCを溶解し、SBRの分散を維持できる水が好ましく用いられる。
【0069】
合材インキ中で使用される活物質について以下説明する。
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。
【0070】
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V25、V613
TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム
、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。
【0071】
また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や導電性高分子を混合して用いてもよい。
【0072】
リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiXFe23、LiXFe34、LiXWO2、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
【0073】
電気二重層キャパシター用の電極活物質としては、特に限定されないが、活性炭、ポリアセン、カーボンウィスカ及びグラファイト等が挙げられ、これらの粉末または繊維などが挙げられる。電気二重層キャパシター用の好ましい電極活物質は活性炭であり、具体的にはフェノール系、ヤシガラ系、レーヨン系、アクリル系、石炭/ 石油系ピッチコークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)等を賦活した活性炭を挙げることができる。同じ重量でもより広い面積の界面を形成することが可能な、比表面積の大きいものが好ましい。具体的には、比表面積が30m2/g以上、好ましくは500〜5000m2/g、より好ましくは1000〜 3000m2/gであることが好ましい。
【0074】
これらの電極活物質は、単独、または二種類以上を組み合わせて使用することができるし、体積平均粒子径(D50)または粒度分布の異なる二種類以上の炭素を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
リチウムイオンキャパシター用の正極活物質としては、リチウムイオンおよびアニオンを可逆的にドープ・脱ドープすることが可能な材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば活性炭粉末が挙げられる。活性炭の体積平均粒子径(D50)は、0.1μm〜20μmが好ましい。ここでいう体積平均粒子径(D50)は、上述の通りである。
【0076】
リチウムイオンキャパシター用の負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能である材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば人造黒鉛、天然黒鉛などの黒鉛系材料が挙げられる。黒鉛材料の体積平均粒子径(D50)は、0.1μm〜20μmが好ましい。ここでいう体積平均粒子径(D50)は、上述の通りである。
【0077】
合材インキ中の導電助剤とは、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではなく、上述の導電性の炭素材料(A)と同様のものも使用できる。
【0078】
合材インキ中のバインダーとは、活物質や導電性の炭素材料などの粒子同士、あるいは導電性の炭素材料と集電体を結着させるために使用されるものである。
【0079】
合材インキ中で使用されるバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を含む高分子化合物が挙げられる。また、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これらバインダーは、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
また、水性の合材インキ中で好適に使用されるバインダーとしては水媒体のものが好ましく、水媒体のバインダーの形態としては、水溶性型、エマルション型、ハイドロゾル型等が挙げられ、適宜選択することができる。
【0080】
さらに、合材インキには、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤などを必要に応じて配合できる。
【0081】
<電極の製造方法>
本発明の導電性組成物を、集電体上に塗工・乾燥し、下地層を形成し、蓄電デバイス用下地層電極を得ることができる。
【0082】
あるいは、本発明の導電性組成物を、集電体上に塗工・乾燥し、下地層を形成し、該下地層上に、合材層を設け、蓄電デバイス用電極を得ることもできる。下地層上に設ける合材層は、上記した合材インキを用いて形成することができる。
【0083】
<蓄電デバイス>
正極もしくは負極の少なくとも一方に上記の電極を用い、二次電池、キャパシターなどの蓄電デバイスを得ることができる。
【0084】
二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、アルカリ二次電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池等が挙げられ、それぞれの二次電池で従来から知られている、電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
【0085】
キャパシターとしては、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシターなどが挙げられ、それぞれのキャパシターで従来から知られている、電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
【0086】
<電解液>
リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。
【0087】
電解質としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0088】
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;
メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、
アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0089】
さらに上記電解液をポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0090】
<セパレーター>
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びそれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0091】
本発明の組成物を用いたリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシターの構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0092】
(実施例1)
<導電性組成物>
導電性の炭素材料として黒鉛(A−1:TIMREX KS−6、Timcal社製)60質量部、水溶性樹脂であるカルボキシメチルセルロース(B−1:CMCダイセル#1240、ダイセル化学工業社製)2.5%水溶液200質量部(固形分として5質量部)、水性液状媒体(D)として水500質量部をミキサーに入れて30分間混合し、更にサンドミルに入れて30分間分散を行った。次に水分散樹脂微粒子であるポリオレフィン系樹脂微粒子(C−1:アローベースSB−1200、ユニチカ社製、25%水系分散液(平均粒子径0.10μm))140質量部(固形分として35質量部)を入れ、ミキサーで10分間混合し、導電性組成物(1)を得た。
【0093】
実施例および比較例に用いた材料の評価については、以下の通り行った。
(導電性の炭素材料の総比表面積)
導電性の炭素材料は、ガス吸着量測定装置(日本ベル社製 BELSORP−mini)を用い、JIS K6217−2にて比表面積を測定した。総比表面積は、各導電性の炭素材料の比表面積と混合比の加重平均値を総比表面積とした。
【0094】
(カルボキシメチルセルロース水溶液の粘度)
カルボキシメチルセルロース1gと水99gとを混合して水溶液を作成した。そして、水溶液の粘度をレオメーター(TAインスツルメント社製AR−G2)により、コーンプレート(60mm、1°)を用いて、測定温度25℃、せん断速度360(1/s)で測定した。
【0095】
(水分散樹脂微粒子の体積平均粒子径)
水分散樹脂微粒子分散液を、固形分に応じて200〜1000倍に水で希釈し、該希釈液約5mlをナノトラック(日機装社製 Wave−EX150)のセルに注入し、水および樹脂の屈折率条件を入力後、測定を行い、D50体積平均粒子径を求めた。尚、「体積平均粒子径」を「平均粒子径」と略記することがある。
【0096】
(ポリオレフィン樹脂微粒子中のカルボニル基含有量(Y)/(X))
水分散樹脂微粒子(C)を含む分散液を80℃のオーブンに入れ、分散媒を除去した後、120℃で30分乾燥させて固形物を得た。この固形物をフーリエ変換赤外分光装置(FT−IR:PerkinElmer社製Spectrum One/100)による全反射測定法(ATR)によって測定して赤外吸収スペクトルを得た。樹脂微粒子中のカルボニル基含有量は、波数に対して吸光度をプロットした赤外吸収スペクトルを用い、2700cm-1における吸光度を示す点と3000cm-1における吸光度を示す点との2点を結ぶ直線をベースラインBXとした際の、2800〜3000cm-1のオレフィン由来の最大ピークからベースラインBXまでの高さ(極大吸光度)(X)と、1650m-1における吸光度を示す点と1850cm-1における吸光度を示す点との2点を結ぶ直線をベースラインBYとした際の、1690〜1740cm-1のカルボニル基由来の最大ピークからベースラインBYまでの高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)を求めた。
【0097】
(実施例2〜15、比較例2〜3、参考例1)
表1に示す材料、組成比に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、それぞれ導電性組成物(2)〜(15)、(17)〜(19)を得た。
【0098】
実施例および比較例で使用した材料を以下に示す。
(導電性の炭素材料(A))
・A−1:TIMREX KS−6(Timcal社製、黒鉛、比表面積20m2/g)
・A−2:J−SP−α (日本黒鉛社製、黒鉛、比表面積10m2/g、平均粒子径6μm)
・A−3:SNO−5(SECカーボン社製、黒鉛、比面積15m2/g、平均粒子径5μm)
・A−4:デンカブラックHS−100(デンカ社製、アセチレンブラック、平均粒子径48nm、比表面積45m2/g)
(水溶性樹脂)(B))
・B−1:CMCダイセル#1240(ダイセル化学工業社製、カルボキシメチルセルロース、粘度0.02Pa・s)
・B−2:ポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業社製、平均分子量5000)
・B−3:クラレポバールPVA235(クラレ社製、ポリビニルアルコール)
(水分散樹脂微粒子(C))
・C−1:ザイクセンAC(固形分30%水分散液、平均粒子径0.04μm、変性量(Y)/(X)0.64、カルボニル基を有するポリエチレン系樹脂微粒子)(住友精化社製)
・C−2:アローベースSB−1200(固形分25%水分散液、平均粒子径0.10μm、変性量(Y)/(X)0.58、カルボニル基を有するポリエチレン系樹脂微粒子)(ユニチカ社製)
・C−3:ケミパールW4005(固形分40%水分散液、平均粒子径0.57μm、変性なし、ポリエチレン系樹脂微粒子)(三井化学社製)
【0099】
<下地層付き集電体>(実施例1〜14、比較例2〜3、参考例1)
導電性組成物(1)〜(14)、(17)〜(19)を、乾燥後の厚みが表1に示す厚みとなるように、集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔(以下、「アルミ」と略記することがある)上にバーコーターを用いて、塗布をした後、80℃で加熱乾燥し、下地層付き集電体(1)〜(14)、(17)〜(19)をそれぞれ得た。
【0100】
<下地層付き集電体>(実施例15)
導電性組成物(15)を、乾燥後の厚みが3μmとなるように、集電体となる厚さ20μmの銅箔上にバーコーターを用いて塗布をした後、80℃で加熱乾燥し、下地層付き集電体(15)を得た。
【0101】
得られた導電性組成物および下地層付き集電体を、表1に示す。
【0102】
<リチウムイオン二次電池正極用合材インキ>
電極活物質の一種である正極活物質としてLiNi0.5Mn0.3Co0.2293質量部、導電剤としてアセチレンブラック4質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン3質量部、N―メチルピロリドン45質量部を入れて混合して、電極形成用組成物の一種である正極用合材インキを作製した。
【0103】
<リチウムイオン二次電池負極用合材インキ>
電極活物質の一種である負極活物質として人造黒鉛98質量部、カルボキシメチルセルロース1.5%水溶液66.7質量部(固形分として1質量部)をプラネタリーミキサーに入れて混練し、水33質量部、スチレンブタジエンエマルション48質量%水系分散液2.08質量部(固形分として1質量部)を混合して、電極形成用組成物の一種である負極二次電池電極用合材インキを得た。
【0104】
<下地層付きリチウムイオン二次電池用正極>(実施例1〜14、比較例2〜3、参考例1)
上述のリチウムイオン二次電池正極用合材インキを、二次電池用下地層付き集電体(1)〜(14)、(17)〜(19)の下地層が形成された面に、乾燥後の目付け量が20mg/cm2となるようにドクターブレードを用いて塗布し、80℃で加熱乾燥した。さらにロールプレスによる圧延処理を行い、合材層の密度が3.1g/cm3となる正極(1)〜(14)、(17)〜(19)をそれぞれ作製した。
【0105】
<下地層なしリチウムイオン二次電池用正極>(実施例15、比較例1用正極)
上述のリチウムイオン二次電池正極用合材インキを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上に、乾燥後の目付け量が20mg/cm2となるようにとなるようにドクターブレードを用いて塗布し、80℃で加熱乾燥した。さらにロールプレスによる圧延処理を行い、合材層の密度が3.1g/cm3となる正極(15)、(16)をそれぞれ作製した。
【0106】
<下地層なしリチウムイオン二次電池用負極>(実施例1〜14、比較例1〜3、参考例1用負極)
上述のリチウムイオン二次電池負極用合材インキを、乾燥後の目付け量が12mg/cm2となるようにドクターブレードを用いて塗布し、80℃で加熱乾燥した。さらにロールプレスによる圧延処理を行い、合材層の密度が1.5g/cm3となる負極(1)〜(14)、(16)〜(19)をそれぞれ作製した。
【0107】
<下地層付きリチウムイオン二次電池用負極>(実施例15)
上述のリチウムイオン二次電池負極用合材インキを、下地層付き集電体(15)の下地層が形成された面に、乾燥後の目付け量が12mg/cm2となるようにドクターブレードを用いて塗布し、80℃で加熱乾燥した。さらにロールプレスによる圧延処理を行い、合材層の密度が1.5g/cm3となる負極(15)を作製した。
【0108】
<ラミネート型リチウムイオン二次電池>(実施例1〜15、比較例1〜3、参考例1)
表2に示す正極と負極を、各々45mm×40mm、50mm×45mmに打ち抜き、その間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロプレンフィルム)とをアルミ製ラミネート袋に挿入し、真空乾燥の後、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)を注入した後、アルミ製ラミネートを封口してラミネート型リチウムイオン電池を作製した。ラミネート型リチウムイオン型電池の作製はアルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で行い、ラミネート型リチウムイオン型電池作製後、以下に示す方法によって、初期抵抗、抵抗増加、レート特性およびサイクル特性の電池特性評価を行った。
【0109】
(抵抗測定)
放電電流12mA(0.2C)にて放電終止電圧3.0Vで定電流放電を行ったラミネート型電池を、インピーダンスアナライザー(biologic社製SP−50)にて500kHzでの抵抗測定を行った。
上述したラミネート型電池を25℃から180℃まで昇温速度10℃/分で一気に加熱し、抵抗測定を行った。25℃で測定した抵抗を初期抵抗とし、下記(式1)により算出される値を抵抗増加とした。
(式1) 抵抗増加=180℃での抵抗値/25℃での抵抗値
初期抵抗および抵抗増加について、以下の基準で評価した結果を表2に示す。
・初期抵抗
○:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗より小さい。優れている。」
△:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗と同等。」
×:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗より大きい。劣っている。」
・抵抗増加
○○:「抵抗増加が初期抵抗の10倍以上。特に優れている。」
○:「抵抗増加が初期抵抗の5倍以上、10倍未満。優れている。」
△:「抵抗増加が初期低能の3倍以上、5倍未満。実用可能なレベル。」
×:「抵抗増加が初期抵抗の3倍未満。電流の遮断効果が低い。劣っている。」
【0110】
(レート特性)
上述したラミネート電池について、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用い、充放電測定を行った。
充電電流12mA(0.2C)にて充電終止電圧4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.6mAを行った後、放電電流12mA(0.2C)および120mA(2C)で放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行って、それぞれ放電容量を求めた。レート特性は0.2C放電容量と2C放電容量の比、つまり以下(式2)で表される。
(式2) レート特性=2C放電容量/0.2C放電容量×100(%)
以下の基準で評価した結果を表2に示す。
・レート特性
○:「レート特性が80%以上。優れている。」
△:「レート特性が70以上、80%未満。下地層なしの比較例1のレート特性と同等。」
×:「レート特性が70%未満。劣っている。」
【0111】
(サイクル特性)
50℃恒温槽にて充電電流を60mAにて充電終止電圧を4.2Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.6mA)を行った後、放電電流60mAで放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行って、初回放電容量を求めた。この充放電サイクルを200回行い、放電容量維持率(初回放電容量に対する200回目の放電容量の百分率)を算出した。以下の基準で評価した結果を表2に示す。
・サイクル特性
○:「放電容量維持率が85%以上。優れている。」
△:「放電容量維持率が80%以上、85%未満。下地層なしの比較例1の放電容量維持率と同等。」
×:「放電容量維持率が80%未満。劣っている。」
【0112】
表2に示すように、本発明の導電性組成物から形成された下地層を用いることで、電池の内部温度が上昇した場合、電池の内部抵抗が上昇することが確認された。このことから、例えば、内部短絡などにより電池が異常発熱した場合、集電体の抵抗が増大し、電流を遮断することで、電池の発火等を回避するものと考えられる。
【0113】
一方、下地層を形成していない比較例1や、黒鉛を含まないまたは黒鉛の比率が少なく、導電性の炭素材料(A)の比表面積が高く、下地層の密度が低い比較例2〜3や参考例1では、電池の内部温度が上昇しても、目立った電池の内部抵抗の上昇は見られなかった。
【0114】
比較例1は下地層を形成していないため、発熱時に抵抗を増大させる効果がなく、比較例2〜3や参考例1では、発熱時における樹脂の体積膨張に伴う黒鉛の体積膨張が不十分なため、炭素材料同士の導電性を遮断する効果が少なかったためと考えられる。
【0115】
<電気二重層キャパシター用正極、負極用合材インキ>
活物質として活性炭(比表面積1800m2/g)85部、導電助剤(アセチレンブラック:デンカブラックHS−100、デンカ社製)5部、カルボキシメチルセルロース(和光純薬工業社製)8部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)3.3部(固形分として2部)、水220部を混合して正極、負極用合材インキを作製した。
【0116】
<下地層なし電気二重層キャパシター用正極、負極(比較例4、及び評価用対極)>
上述の電気二重層キャパシター用合材インキを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上に、ドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥した後にロールプレスによる圧延処理を行い、電極の厚みが50μmとなる正極および負極を作製した。
【0117】
<下地層付き電気二重層キャパシター用正極、負極>
(実施例16)
上述の電気二重層キャパシター用合材インキを、実施例1の下地層付き集電体(1)の下地層が形成された面に、ドクターブレードを用いて塗布した後、80℃で加熱乾燥した後、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが50μmとなる正極を作製した。
【0118】
(実施例17〜29、比較例5、6、参考例2)
下地層付き集電体(1)を表3に示す集電体に変更した以外は、実施例16と同様にして、正極および負極をそれぞれ作製した。
【0119】
<電気二重層キャパシター>
表3に示す正極と負極をそれぞれ直径16mmに打ち抜き、その間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)と、電解液(プロピレンカーボネート溶媒にTEMABF4(四フッ化ホウ素トリエチルメチルアンモニウム)を1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)とからなる電気二重層キャパシターを作製した。電気二重層キャパシターはアルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で行い、電気二重層キャパシター作製後、所定の電気特性評価を行った。
【0120】
(充放電サイクル特性)
得られた電気二重層キャパシターについて、充放電装置を用い、充放電測定を行った。
充電電流10Cレートにて充電終止電圧2.0Vまで充電を行った後、放電電流10Cレートで放電終止電圧0Vに達するまで定電流放電を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして5サイクルの充電・放電を繰り返し、5サイクル目の放電容量を初回放電容量とした。(初回放電容量を維持率100%とする)。また、充放電電流レートは、セル容量を1時間で放電出来る電流の大きさを1Cとした。
次に、50℃恒温槽にて充電電流10Cレートにて充電終止電圧2.0Vで充電を行った後、放電電流10Cレートで放電終止電圧0Vに達するまで定電流放電を行った。この充放電サイクルを500回行い放電容量維持率の変化率を算出した(100%に近いほど良好)。
○:「変化率が85%以上。優れている。」
△:「変化率が80%以上、85%未満。下地層なしの比較例1の放電容量維持率と同等。」
×:「変化率が80%未満。劣っている。」
【0121】
(抵抗測定)
充電電流10Cレートにて充電終止電圧2.0Vまで充電を行ったラミネート型電池を、インピーダンスアナライザー(biologic社製SP−50)にて500kHzでの抵抗測定を行った。
上述したラミネート型電池を25℃から180℃まで昇温速度10℃/分で一気に加熱し、抵抗測定を行った。25℃で測定した抵抗を初期抵抗とし、180℃で測定した抵抗値と25℃で測定した抵抗値の商を抵抗増加とした。すなわち抵抗増加は以下(式1)で表される。
(式1) 抵抗増加=180℃での抵抗値/25℃での抵抗値
初期抵抗および抵抗増加について、以下の基準で評価した結果を表2に示す。
・初期抵抗
○:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗より小さい。優れている。」
△:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗と同等。」
×:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗より大きい。劣っている。」
・抵抗増加
○○:「抵抗増加が初期抵抗の10倍以上。特に優れている。」
○:「抵抗増加が初期抵抗の5倍以上、10倍未満。優れている。」
△:「抵抗増加が初期低能の3倍以上、5倍未満。実用可能なレベル。」
×:「抵抗増加が初期抵抗の3倍未満。電流の遮断効果が低い。劣っている。」
【0122】
<リチウムイオンキャパシター用正極用合材インキ>
活物質として活性炭(比表面積1800m2/g)85部、導電助剤(アセチレンブラック:デンカブラックHS−100、デンカ社製)5部、カルボキシメチルセルロース(和光純薬工業社製)8部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)3.3部(固形分として2部)を混合して正極用合材インキを作製した。
【0123】
<リチウムイオンキャパシター用負極用合材インキ>
負極活物質として黒鉛90部、導電助剤(アセチレンブラック:デンカブラックHS−100、デンカ社製)5部、ヒドロキシエチルセルロース(和光純薬工業社製)2重量%水溶液175部(固形分として3.5部)をミキサーに入れて混合し、水26.3部、バインダー(SBR:スチレンブタジエン系ラテックス40%水系分散体)3.75部(固形分として1.5部)を混合して、負極用合材インキを作製した。
【0124】
<下地層なしリチウムイオンキャパシター用正極(実施例41、比較例7)>
上述のリチウムイオンキャパシター用正極用合材インキを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥してロールプレスによる圧延処理を行った後、厚みが60μmとなる正極を作製した。
【0125】
<下地層付きリチウムイオンキャパシター用正極>
(実施例30)
上述のリチウムイオンキャパシター用正極用合材インキを、実施例1の下地層付き集電体(1)の下地層が形成された面に、ドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥してロールプレスによる圧延処理を行った後、厚みが60μmとなる正極を作製した。
【0126】
(実施例31〜40、42、43、比較例8、9、参考例3)
下地層付き集電体(1)を表4に示す集電体に変更した以外は、実施例30と同様にして、正極を得た。
【0127】
<下地層なしリチウムイオンキャパシター用負極(実施例30〜40、42、43、比較例7〜9、参考例3)>
上述のリチウムイオンキャパシター用負極用合材インキを、集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥してロールプレスによる圧延処理を行った後、厚みが45μmとなる負極を作製した。
【0128】
<下地層付きリチウムイオンキャパシター用負極>
(実施例41)
上述のリチウムイオンキャパシター用負極用合材インキを、実施例1の下地層付き集電体(1)上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥してロールプレスによる圧延処理を行った後、厚みが45μmとなる負極を作製した。
【0129】
<リチウムイオンキャパシター>
表4示す正極と、あらかじめリチウムイオンのハーフドープ処理を施した負極を、それぞれ直径16mmの大きさで用意し、その間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)と、電解液(エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートを1:1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)とからなるリチウムイオンキャパシターを作製した。リチウムイオンのハーフドープは、ビーカーセル中で負極とリチウム金属の間にセパレーターを挟み、負極容量の約半分の量となるようリチウムイオンを負極にドープして行った。また、リチウムイオンキャパシターはアルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で行い、リチウムイオンキャパシター作製後、所定の電気特性評価を行った。
【0130】
(充放電サイクル特性)
得られたリチウムイオンキャパシターについて、充放電装置を用い、充放電測定を行った。
充電電流10Cレートにて充電終止電圧4.0Vまで充電を行った後、放電電流10Cレートで放電終止電圧2.0Vに達するまで定電流放電を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして5サイクルの充電・放電を繰り返し、5サイクル目の放電容量を初回放電容量とした。(初回放電容量を維持率100%とする)。
次に、50℃恒温槽にて充電電流10Cレートにて充電終止電圧4.0Vで充電を行った後、放電電流10Cレートで放電終止電圧2.0Vに達するまで定電流放電を行った。この充放電サイクルを500回行い放電容量維持率の変化率を算出した(100%に近いほど良好)。
○:「変化率が85%以上。優れている。」
△:「変化率が80%以上、85%未満。下地層なしの比較例1の放電容量維持率と同等。」
×:「変化率が80%未満。劣っている。」
【0131】
(抵抗測定)
充電電流10Cレートにて充電終止電圧4.0Vまで充電を行ったラミネート型電池を、インピーダンスアナライザー(biologic社製SP−50)にて500kHzでの抵抗測定を行った。
上述したラミネート型電池を25℃から180℃まで昇温速度10℃/分で一気に加熱し、抵抗測定を行った。25℃で測定した抵抗を初期抵抗とし、180℃で測定した抵抗値と25℃で測定した抵抗値の商を抵抗増加とした。すなわち抵抗増加は以下(式1)で表される。
(式1) 抵抗増加=180℃での抵抗値/25℃での抵抗値
初期抵抗および抵抗増加について、以下の基準で評価した結果を表2に示す。
・初期抵抗
○:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗より小さい。優れている。」
△:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗と同等。」
×:「初期抵抗が下地層なしの比較例1の初期抵抗より大きい。劣っている。」
・抵抗増加
○○:「抵抗増加が初期抵抗の10倍以上。特に優れている。」
○:「抵抗増加が初期抵抗の5倍以上、10倍未満。優れている。」
△:「抵抗増加が初期低能の3倍以上、5倍未満。実用可能なレベル。」
×:「抵抗増加が初期抵抗の3倍未満。電流の遮断効果が低い。劣っている。」
【0132】
また、表3、表4に示すように、電気二重層キャパシターや、リチウムイオンキャパシターでもリチウムイオン二次電池の実施例と同様の効果を得ることが確認できた。
【0133】
以上の結果から、本発明によって、蓄電デバイスの出力特性等に優れ、過充電や内部短絡などにより蓄電デバイスの内部温度が上昇した場合に、内部抵抗を上昇させることで流れる電流を抑制することで、電池の安全性を高める機能を備えた非水電解質二次電池などの蓄電デバイスを形成するための導電性組成物を提供することができる。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】