(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空乏層調整層は、前記ドリフト層と前記JFET部との間および前記ドリフト層と前記ディープ層との間にも形成されており、前記空乏層調整層のうち前記ドリフト層と前記JFET部との間および前記ドリフト層と前記ディープ層との間に形成された部分は、前記ディープ層よりも不純物濃度が低くされた第2導電型の低濃度層(30)とされている請求項1に記載の半導体装置。
前記空乏層調整層は、前記ドリフト層と前記JFET部との間および前記ドリフト層と前記ディープ層との間にも形成されており、前記空乏層調整層のうち前記ドリフト層と前記JFET部との間および前記ドリフト層と前記ディープ層との間に形成された部分は、前記JFET部よりも不純物濃度が高くされた高濃度層(20)とされている請求項5に記載の半導体装置。
前記ディープ層と前記空乏層調整層および前記JFET部の上には前記JFET部よりも幅が広くされた第1導電型の電流分散層(4)が備えられていると共に、前記ディープ層の上には、該ディープ層と前記ベース領域とを連結する第2導電型の連結層(5)が備えられている請求項1ないし9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態にかかるSiC半導体装置は、
図1に示すように、半導体素子として縦型MOSFETが形成されたものである。縦型MOSFETは、SiC半導体装置のうちのセル領域に形成されており、そのセル領域を囲むように外周耐圧構造が形成されることでSiC半導体装置が構成されているが、ここでは縦型MOSFETのみ図示してある。なお、以下の説明では、
図1の左右方向を幅方向とし、上下方向を厚み方向もしくは深さ方向として説明を行う。
【0014】
SiC半導体装置には、SiCからなるn
+型基板1が半導体基板として用いられている。n
+型基板1の主表面上にSiCからなるn
-型ドリフト層2が形成されている。n
-型ドリフト層2は、n
+型基板1から離れた位置において幅狭とされたJFET部2aと連結されており、このJFET部2aの両側にSiCからなるp型ディープ層3が形成されている。本実施形態の場合、JFET部2aは、後述するトレンチゲート構造の長手方向に沿って延設された短冊形状とされ、JFET部2aの周囲がp型ディープ層3とされている。
【0015】
これらn
-型ドリフト層2およびJFET部2aとp型ディープ層3との間には高濃度n型層20が形成されている。本実施形態では、この高濃度n型層20が空乏層調整層として機能する。より詳しくは、高濃度n型層20は、少なくともp型ディープ層3のうちの側面、つまりp型ディープ層3とJFET部2aとの間に形成されている。本実施形態の場合は、n
-型ドリフト層2の上面、つまりn
-型ドリフト層2とp型ディープ層3の底部との間やn
-型ドリフト層2のうちのJFET部2aとの境界位置にも高濃度n型層20が形成されている。
【0016】
n
+型基板1は、表面が(0001)Si面とされ、例えばn型不純物濃度が5.9×10
18/cm
3とされ、厚さが100μmとされている。n
-型ドリフト層2は、例えばn型不純物濃度が1.0×10
16/cm
3とされ、厚さが8.0μmとされている。また、JFET部2aについては、例えばn型不純物濃度が1.0×10
16/cm
3とされ、幅が0.1μmとされている。p型ディープ層3は、例えばp型不純物濃度が1.0×10
18/cm
3とされ、厚さが1.0μmとされている。高濃度n型層20は、n
-型ドリフト層2よりも高濃度とされており、例えばn型不純物濃度が1.0×10
18/cm
3とされている。高濃度n型層20の厚さについては、p型ディープ層3の側面では0.05μm、n
-型ドリフト層2の上面では0.07μmとされている。
【0017】
また、JFET部2aおよびp型ディープ層3の上には、JFET部2aと連結され、かつ、JFET部2aよりも幅広とされたSiCからなるn型電流分散層4が形成されている。さらに、p型ディープ層3の上には、p型ディープ層3よりも幅が狭くされたSiCからなるp型連結層5が形成されている。
【0018】
n型電流分散層4は、後述するようにチャネルを通じて流れる電流が幅方向に拡散できるようにする層であり、JFET部2aよりも高濃度とされており、例えばn型不純物濃度が3×10
17/cm
3とされ、厚さが0.6μmとされている。また、p型連結層5は、p型ディープ層3と同じ濃度とされていても良いが、本実施形態ではp型ディープ層3よりも高濃度とされ、例えばp型不純物濃度が3×10
17/cm
3とされ、厚さが0.6μmとされている。
【0019】
n型電流分散層4およびp型連結層5の上にはSiCからなるp型ベース領域6が形成されており、p型連結層5を介してp型ベース領域6とp型ディープ層3とが連結されている。また、p型ベース領域6の上には、SiCからなるn
+型ソース領域7およびp
+型コンタクト領域8が形成されている。n
+型ソース領域7は、p型ベース領域6のうちn型電流分散層4と対応する部分の上に形成されており、p
+型コンタクト領域8は、p型ベース領域6のうちp型連結層5と対応する部分の上に形成されている。
【0020】
p型ベース領域6は、p型ディープ層3よりも厚みが薄く、かつ、p型不純物濃度が低くされており、例えばp型不純物濃度が3×10
17/cm
3とされ、厚さが0.3μmとされている。また、n
+型ソース領域7は、n型不純物濃度がn型電流分散層4よりも高濃度とされており、p
+型コンタクト領域8は、p型不純物濃度がp型ベース領域6よりも高濃度とされている。
【0021】
また、p型ベース領域6およびn
+型ソース領域7を貫通してn型電流分散層4に達するように、例えば幅が0.8μm、深さがp型ベース領域6とn
+型ソース領域7の合計膜厚よりも0.2〜0.4μm深くされたゲートトレンチ9が形成されている。このゲートトレンチ9の側面と接するように上述したp型ベース領域6およびn
+型ソース領域7が配置されている。ゲートトレンチ9は、
図1の紙面左右方向を幅方向、紙面法線方向を長手方向、紙面上下方向を深さ方向とするライン状のレイアウトで形成されている。また、
図1には1本しか示していないが、ゲートトレンチ9は、複数本が紙面左右方向に等間隔に配置され、それぞれp型ディープ層3の間に挟まれるように配置されていてストライプ状とされている。例えば、ゲートトレンチ9のピッチとなるセルピッチ、つまり隣り合うゲートトレンチ9の配置間隔の半分となるハーフセルピッチは、例えば1.55μmとされている。ゲートトレンチ9の幅については任意であるが、ハーフセルピッチよりも小さくされている。
【0022】
さらに、p型ベース領域6のうちゲートトレンチ9の側面に位置している部分を、縦型MOSFETの作動時にn
+型ソース領域7とn型電流分散層4との間を繋ぐチャネル領域として、チャネル領域を含むゲートトレンチ9の内壁面にゲート絶縁膜10が形成されている。そして、ゲート絶縁膜10の表面にはドープドPoly−Siにて構成されたゲート電極11が形成されており、これらゲート絶縁膜10およびゲート電極11によってゲートトレンチ9内が埋め尽くされている。
【0023】
また、n
+型ソース領域7およびp
+型コンタクト領域8の表面やゲート電極11の表面には、層間絶縁膜12を介してソース電極13などが形成されている。ソース電極13は、複数の金属、例えばNi/Al等にて構成されている。そして、複数の金属のうち少なくともn型SiC、具体的にはn
+型ソース領域7やn型ドープの場合のゲート電極11と接触する部分はn型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうち少なくともp型SiC、具体的にはp
+型コンタクト領域8と接触する部分はp型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、ソース電極13は、層間絶縁膜12上に形成されることで電気的に絶縁されている。そして、層間絶縁膜12に形成されたコンタクトホールを通じて、ソース電極13はn
+型ソース領域7およびp
+型コンタクト領域8と電気的に接触させられている。
【0024】
さらに、n
+型基板1の裏面側にはn
+型基板1と電気的に接続されたドレイン電極14が形成されている。このような構造により、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造の縦型MOSFETが構成されている。このような縦型MOSFETが複数セル配置されることでセル領域が構成されている。そして、このような縦型MOSFETが形成されたセル領域を囲むように図示しないガードリングなどによる外周耐圧構造が構成されることでSiC半導体装置が構成されている。
【0025】
このように構成される縦型MOSFETを有するSiC半導体装置は、ソース電圧Vsを0V、ドレイン電圧Vdを例えば1〜1.5Vとした状態で、ゲート電極11に対して例えば20Vのゲート電圧Vgを印加することで動作させられる。すなわち、ゲート電圧が印加されることにより、縦型MOSFETは、ゲートトレンチ9に接する部分のp型ベース領域6にチャネル領域が形成され、ドレイン−ソース間に電流が流れるという動作を行う。
【0026】
このとき、少なくともJFET部2aとp型ディープ層3との間に高濃度n型層20を配置していることから、この高濃度n型層20が空乏層調整層として機能することで、次の作動を行うことになる。
【0027】
具体的には、
図2の一点鎖線で示すように、ドレイン電圧Vdが例えば1〜1.5Vのように通常作動時に印加される電圧である場合には、p型ディープ層3側から高濃度n型層20へ伸びる空乏層は、高濃度n型層20の厚みよりも小さい幅しか伸びない。つまり、高濃度n型層20が空乏層の伸びをストップする層として機能する。このため、JFET部2a内への空乏層の伸びを抑制することが可能になり、電流経路が狭くなることを抑制できるため、低オン抵抗を図ることが可能となる。
【0028】
また、高濃度n型層20のうち空乏層が伸びていない部分については電流経路として機能する。そして、高濃度n型層20がJFET部2aよりもn型不純物濃度が高濃度になっており、低抵抗となっていることから、高濃度n型層20が電流経路として機能することで、さらに低オン抵抗化を図ることが可能となる。
【0029】
また、負荷短絡などによってドレイン電圧Vdが通常作動時の電圧よりも高くなると、p型ディープ層3側から高濃度n型層20へ伸びる空乏層が高濃度n型層20の厚みよりも伸びる。そして、n型電流分散層4よりも先にJFET部2aが即座にピンチオフされる。このとき、高濃度n型層20の厚みおよびn型不純物濃度に基づいてドレイン電圧Vdと空乏層の幅との関係が決まる。このため、通常作動時のドレイン電圧Vdよりも少し高い電圧となったときにJFET部2aがピンチオフされるように、高濃度n型層20の厚みおよびn型不純物濃度を設定することで、低いドレイン電圧VdでもJFET部2aをピンチオフすることが可能となる。このように、ドレイン電圧Vdが通常作動時の電圧よりも高くなったときにJFET部2aが即座にピンチオフされるようにすることで、低飽和電流を維持することができ、負荷短絡等によるSiC半導体装置の耐量を向上することが可能となる。
【0030】
したがって、低オン抵抗値と低飽和電流を両立することができるSiC半導体装置とすることが可能となる。
【0031】
さらに、p型ディープ層3をp型ベース領域6よりもゲート電極11の中心線側に張り出させ、JFET部2aの幅が狭くなるようにしている。このため、ドレイン電圧Vdが高電圧になったとしても、下方からn
-型ドリフト層2に伸びてくる空乏層の伸びがp型ディープ層3によって抑えられ、トレンチゲート構造に延伸することを防ぐことができる。したがって、ゲート絶縁膜10に掛かる電界を低下させることが可能となり、信頼性の高い素子とすることが可能となる。そして、このようにトレンチゲート構造への空乏層の延伸を防げるため、n
-型ドリフト層2やJFET部2aのn型不純物濃度を比較的濃くすることができ、低オン抵抗化を図ることが可能となる。
【0032】
よって、低オン抵抗かつ高信頼性の縦型MOSFETを有するSiC半導体装置とすることが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態のSiC半導体装置は、ゲート電圧Vgを印加していないときには、チャネル領域が形成されていないため、ドレイン−ソース間に電流が流れないノーマリオフ型の半導体素子となる。しかしながら、JFET部2aについては、ゲート電圧Vgを印加していないときでもドレイン電圧Vdが通常作動時の電圧よりも高くならないとピンチオフしないため、ノーマリオン型となる。
【0034】
図3は、高濃度n型層20が備えられた本実施形態の構造と高濃度n型層20が備えられていない従来構造とについて、ドレイン電圧Vdに対するドレイン電流Idの特性であるVd−Id特性を比較した結果を示している。ゲート電圧を20Vとし、ドレイン電圧を変化させた場合の特性を示している。この図に示されるように、従来構造では、ドレイン電圧Vdが高いときのドレイン電流Id、つまり飽和電流値が大きな値であった。これに対して、本実施形態の構造では、ドレイン電圧Vdが高くなっても飽和電流値があまり大きな値にならず、例えば従来構造に対して1/5程度まで低下していた。
【0035】
このように、本実施形態のSiC半導体装置によれば、ドレイン電圧Vdが高電圧になっても、ドレイン電流Idを低下させられる。このため、低飽和電流を実現することができる。
【0036】
一方、
図4は、本実施形態の構造と従来構造について、SiC半導体装置の通常作動範囲と想定されるドレイン電圧Vdの範囲でのVd−Id特性を比較した結果、すなわち
図3中の通常作動範囲を拡大した図を示している。この図に示されるように、通常作動範囲では、本実施形態の構造もほぼ従来構造と同様の特性となった。具体的には、同じドレイン電圧Vdの際に、僅かながら従来構造の方が本実施形態の構造よりもドレイン電流Idが大きくなっていたが、殆ど同じ値となった。このことから、本実施形態の構造としても従来構造と同等のオン抵抗にできることが判る。
【0037】
したがって、上記したように、低オン抵抗値と低飽和電流を両立することができるSiC半導体装置とすることが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態の場合、高濃度n型層20をn
-型ドリフト層2のうちp型ディープ層3よりも下方部分の上面にも形成している。このため、p型ディープ層3からn
-型ドリフト層2側に伸びる空乏層の伸び量も抑制され、よりオン抵抗の低減を図ることが可能となる。
【0039】
また、JFET部2aや高濃度n型層20などのn型不純物濃度や厚みの一例を示したが、これらについては一例を示したに過ぎない。例えば、JFET部2aや高濃度n型層20については、所望のピンチオフ条件を満たすようにn型不純物濃度や厚みを設定している。
【0040】
具体的には、JFET部2aについては、例えば半導体素子の耐圧の10%でピンチオフする条件として設計されている。すなわち、JFET部2aのn型不純物濃度をNd1、厚みをW1、ピンチオフ電圧をVp1、素電荷をq1、誘電率をε1として次の数式1を満たすようにn型不純物濃度Nd1、厚みW1を設計している。
【0041】
(数1)Vp1=(q1×Nd1×W1
2)/2ε1<半導体素子の耐圧の10%
一方、高濃度n型層20については、例えば半導体素子の耐圧の0.1%でピンチオフしない条件として設計されている。すなわち、高濃度n型層20のn型不純物濃度をNd2、p型ディープ層3の側面上での厚みをW2、ピンチオフ電圧をVp2、素電荷をq2、誘電率をε2として次の数式2を満たすようにn型不純物濃度Nd2、厚みW2を設計している。
【0042】
(数2)Vp2=(q2×Nd2×W2
2)/2ε2>半導体素子の耐圧の0.1%
次に、本実施形態にかかるnチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造の縦型MOSFETを備えたSiC半導体装置の製造方法について、
図5および
図6に示す製造工程中の断面図を参照して説明する。
【0043】
〔
図5(a)に示す工程〕
まず、半導体基板として、n
+型基板1を用意する。そして、エピタキシャル成長により、n
+型基板1の主表面上にSiCからなるn
-型ドリフト層2を形成したのち、n
-型ドリフト層2の上にSiCからなる高濃度n型層20の一部を形成し、さらにSiCからなるp型ディープ層3を形成する。
【0044】
〔
図5(b)に示す工程〕
p型ディープ層3の上にJFET部2aと対応する位置を開口させた図示しないマスクを形成し、そのマスクを用いてp型ディープ層3を除去してトレンチ3aを形成し、トレンチ3aの底部においてn
-型ドリフト層2を露出させる。
【0045】
〔
図5(c)に示す工程〕
p型ディープ層3のうちトレンチ3a以外の表面をマスクで覆ったままの状態で埋め込みエピタキシャル成長を行うことによって、高濃度n型層20とJFET部2aを形成する。例えば、n型層を濃度差を付けて形成し、成長初期時には高濃度、その後は低濃度で形成されるようにする。これにより、トレンチ3aの側面にまず高濃度n型層20が形成され、更にトレンチ3a内を埋め尽くすようにJFET部2aが形成される。この後、図示しないマスクを除去する。また、必要に応じて、p型ディープ層3や高濃度n型層20およびJFET部2aの表面の平坦化を行う。
【0046】
〔
図5(d)に示す工程〕
p型ディープ層3や高濃度n型層20およびJFET部2aの表面にn型電流分散層4をエピタキシャル成長させる。
【0047】
〔
図5(e)に示す工程〕
n型電流分散層4のうちJFET部2aや高濃度n型層20から離れた位置にp型不純物をイオン注入し、活性化することでp型連結層5を形成する。
【0048】
〔
図6(a)に示す工程〕
n型電流分散層4およびp型連結層5の上にp型ベース領域6およびn
+型ソース領域7をエピタキシャル成長させる。
【0049】
〔
図6(b)に示す工程〕
n
+型ソース領域7の一部にp型不純物をイオン注入することでp
+型コンタクト領域8を形成する。
【0050】
〔
図6(c)に示す工程〕
n
+型ソース領域7などの上に図示しないマスクを形成したのち、マスクのうちのゲートトレンチ9の形成予定領域を開口させる。そして、マスクを用いてRIE(Reactive Ion Etching)などの異方性エッチングを行うことで、ゲートトレンチ9を形成する。
【0051】
その後、マスクを除去してから例えば熱酸化を行うことによって、ゲート絶縁膜10を形成し、ゲート絶縁膜10によってゲートトレンチ9の内壁面上およびn
+型ソース領域7の表面上を覆う。そして、p型不純物もしくはn型不純物がドープされたPoly−Siをデポジションした後、これをエッチバックし、少なくともゲートトレンチ9内にPoly−Siを残すことでゲート電極11を形成する。
【0052】
〔
図6(d)に示す工程〕
ゲート電極11およびゲート絶縁膜10の表面を覆うように、例えば酸化膜などによって構成される層間絶縁膜12を形成する。また、層間絶縁膜12の表面上に図示しないマスクを形成したのち、マスクのうち各ゲート電極11の間に位置する部分、つまりp
+型コンタクト領域8と対応する部分およびその近傍を開口させる。この後、マスクを用いて層間絶縁膜12をパターニングすることでp型ディープ層3およびn
+型ソース領域7を露出させるコンタクトホールを形成する。そして、層間絶縁膜12の表面上に例えば複数の金属の積層構造により構成される電極材料を形成したのち、電極材料をパターニングすることでソース電極13を形成する。
【0053】
〔
図6(e)に示す工程〕
n
+型基板1の裏面側にドレイン電極14を形成する。これにより、本実施形態にかかるSiC半導体装置が完成する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のSiC半導体装置では、少なくともp型ディープ層3のうちの側面、つまりp型ディープ層3とJFET部2aとの間に高濃度n型層20を形成している。
【0055】
このため、通常作動時においては、高濃度n型層20が空乏層の伸びをストップする層として機能し、JFET部2a内への空乏層の伸びを抑制することが可能になり、電流経路が狭くなることを抑制できるため、低オン抵抗を図ることが可能となる。また、負荷短絡などによってドレイン電圧Vdが通常作動時の電圧よりも高くなると、p型ディープ層3側から高濃度n型層20へ伸びる空乏層が高濃度n型層20の厚みよりも伸び、JFET部2aが即座にピンチオフされる。これにより、低飽和電流を維持することができ、負荷短絡等によるSiC半導体装置の耐量を向上することが可能となる。したがって、低オン抵抗値と低飽和電流を両立することができるSiC半導体装置とすることが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態で説明したSiC半導体装置において、縦型MOSFETは、JFET部2aがトレンチゲート構造の直下に位置した構造となっていると、電流経路を最短にできるため好ましい。しかしながら、マスクのアライメントずれなどにより、
図7に示すように、トレンチゲート構造の直下からずれた位置にJFET部2aが位置した構造と有っていても、上記効果を得ることができる。
【0057】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して高濃度n型層20の代わりになる層を備えるようにしたものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0058】
図8に示すように、本実施形態では、第1実施形態のSiC半導体装置に備えていた高濃度n型層20に代えて、低濃度p型層30を備えてある。本実施形態では、この低濃度p型層30が空乏層調整層として機能する。低濃度p型層30は、少なくともp型ディープ層3のうちの側面、つまりp型ディープ層3とJFET部2aとの間に形成されている。そして、本実施形態の場合は、n
-型ドリフト層2の上面、つまりn
-型ドリフト層2とp型ディープ層3の底部との間やn
-型ドリフト層2とJFET部2aとの境界位置にも低濃度p型層30が形成されている。
【0059】
低濃度p型層30は、JFET部2aやp型ディープ層3よりも不純物濃度が低くされており、例えばp型不純物濃度が1.0×10
17/cm
3とされている。低濃度p型層30の厚さについては、p型ディープ層3の側面では0.05μm、n
-型ドリフト層2の上面では0.07μmとされている。
【0060】
なお、低濃度p型層30のp型不純物濃度やp型ディープ層3の側面上での厚みについては、所望のピンチオフ条件を満たすように設計している。具体的には、低濃度p型層30については、例えば半導体素子の耐圧の0.1%でピンチオフしない条件として設計されている。すなわち、低濃度p型層30のp型不純物濃度をNa、p型ディープ層3の側面上での厚みをW3、ピンチオフ電圧をVp3、素電荷をq3、誘電率をε3として次の数式3を満たすようにn型不純物濃度Nd3、厚みW3を設計している。
【0061】
(数3)Vp3=(q3×Na×W3
2)/2ε3>半導体素子の耐圧の0.1%
また、高濃度n型層20を低濃度p型層30に代えることに伴って、JFET部2aの不純物濃度を変更しており、n型不純物濃度を1.0×10
17/cm
3としている。なお、ここで説明するJFET部2aのn型不純物濃度についても、JFET部2aの厚みと共に、第1実施形態で説明した数式2を満たす設計とされている。
【0062】
このように、低濃度p型層30をJFET部2aとp型ディープ層3との間に配置した場合、JFET部2aと低濃度p型層30との不純物濃度差がJFET部2aとp型ディープ層3との不純物濃度差よりも少なくなる。このため、低濃度p型層30からJFET部2a側に伸びる空乏層の伸び量が抑制される。したがって、空乏層によってJFET部2a内での電流経路が狭められることを抑制することが可能となり、低オン抵抗を図ることが可能となる。よって、本実施形態の構成としても、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0063】
なお、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法は、第1実施形態とほぼ同じである。すなわち、第1実施形態で説明した高濃度n型層20を形成する際に、それに代えて低濃度p型層30を形成する以外は、第1実施形態と同じ工程を行えば、本実施形態のSiC半導体装置を製造することができる。
【0064】
(第1、第2実施形態の変形例)
上記第1実施形態で説明した高濃度n型層20と第2実施形態で説明した低濃度p型層30を組み合わせて形成することもできる。例えば、
図9に示すように、n
-型ドリフト層2の上面に高濃度n型層20を備え、p型ディープ層3の側面に低濃度p型層30を備える。または、
図10に示すように、n
-型ドリフト層2の上面に低濃度p型層30を備え、p型ディープ層3の側面に高濃度n型層20を備える。これらの構造としても、第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態に対してスーパージャンクション構造を適用したものであり、その他については第1、第2実施形態と同様であるため、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、ここでは第1実施形態のように高濃度n型層20を有する縦型MOSFETに対してスーパージャンクション構造を適用した場合について説明するが、第2実施形態のような低濃度p型層30を有する縦型MOSFETに対しても適用可能である。
【0066】
図11に示すように、本実施形態では、p型ディープ層3よりも下方において、n
-型ドリフト層2側に伸びるp型カラム層40が備えられている。
図11では、p型カラム層40がn
+型基板1に接する構造としているが、n
+型基板1から離れた構造であっても良い。
【0067】
このように、p型カラム層40を形成することで、n
-型ドリフト層2をn型カラム層とするPN接合のスーパージャンクション構造が構成されている。このようなスーパージャンクション構造を有する縦型MOSFETに対しても、高濃度n型層20を形成している。このため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
なお、本実施形態の構造のSiC半導体装置も、基本的には第1実施形態のものと同様の製造方法によって製造できる。p型カラム層40については、n
-型ドリフト層2に対してトレンチを形成したのち、埋め込みエピタキシャル成長を行い、さらにエッチバックしてp型カラム層40の表面の平坦化を行うことで形成できる。これ以外については、第1実施形態と同様の方法により、本実施形態のSiC半導体装置を製造できる。
【0069】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1〜第3実施形態に対してソース電極13のコンタクト構造を変更したものであり、その他については第1〜第3実施形態と同様であるため、第1〜第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、ここでは第1実施形態のように高濃度n型層20を有する縦型MOSFETに対してソース電極13のコンタクト構造を変更した場合について説明するが、第2実施形態のような低濃度p型層30を有する縦型MOSFETに対しても適用可能である。
【0070】
図12に示すように、n
+型ソース領域7を挟んでトレンチゲート構造の反対側にコンタクトトレンチ50が形成されている。そして、このコンタクトトレンチ50の底面においてp型ベース領域6の表層部にp
+型コンタクト領域8が形成されている。このような構造は、n
+型ソース領域7を形成した後に、エッチングによってコンタクトトレンチ50を形成し、その後にp
+型コンタクト領域8を形成するためのイオン注入を行うことによって実現できる。
【0071】
このように、コンタクトトレンチ50によってn
+型ソース領域7の一部を除去することで、ソース電極13とp型ベース領域6とのコンタクトを図るようにしても良い。
【0072】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1〜第4実施形態に対してJFET部2aの上面レイアウトを変更したものであり、その他については第1〜第4実施形態と同様であるため、第1〜第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、ここでは第1実施形態のように高濃度n型層20を有する縦型MOSFETに対してレイアウト構成を変更した場合について説明するが、第2実施形態のような低濃度p型層30を有する縦型MOSFETに対しても適用可能である。
【0073】
上記第1実施形態では、JFET部2aをトレンチゲート構造の長手方向に沿って短冊状に形成している。これに対して、本実施形態では、
図13に示すように、トレンチゲート構造の長手方向に対して交差、ここでは直交するようにJFET部2aをレイアウトすることで、トレンチゲート構造とJFET部2aとが格子状にレイアウトされた構造としている。
【0074】
このように、トレンチゲート構造とJFET部2aとが格子状のレイアウトとなるようにしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(第5実施形態の変形例)
第5実施形態のように、トレンチゲート構造とJFET部2aとが格子状のレイアウトとなる場合に限らず、他のレイアウトとなるようにすることもできる。例えば、
図14に示すように、JFET部2aを四角形などの枠体形状で構成し、各JFET部2aを格子状に並べた構造としても良い。
【0076】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態は、第1〜第5実施形態に対してトレンチゲート構造の縦型MOSFETに代えてプレーナ構造の縦型MOSFETとしたものであり、その他については第1〜第5実施形態と同様であるため、第1〜第5実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、ここでは第1実施形態のように高濃度n型層20を有する縦型MOSFETに対してプレーナ構造とする場合について説明するが、第2実施形態のような低濃度p型層30を有する縦型MOSFETに対しても適用可能である。
【0077】
具体的には、
図15に示すようなプレーナ構造の縦型MOSFETを有するSiC半導体装置に対しても、高濃度n型層20を備える構造を適用できる。プレーナ構造の場合、n
-型ドリフト層2の上にp型ベース領域6を形成し、p型ベース領域6の表層部にn
+型ソース領域7を形成した構造とされる。また、p型ベース領域6に挟まれるようにJFET部2aが形成されている。そして、p型ベース領域6のうちn
+型ソース領域7とJFET部2aとの間に位置している部分の表面側をチャネル領域として、チャネル領域上にゲート絶縁膜10を介してゲート電極11が形成された構造とされる。
【0078】
このような構造においても、少なくともp型ベース領域6の側面に高濃度n型層20を備えることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、本実施形態の場合、高濃度n型層20をn
-型ドリフト層2の上面にも形成している。このため、p型ベース領域6からn
-型ドリフト層2側に伸びる空乏層の伸び量も抑制され、よりオン抵抗の低減を図ることが可能となる。
【0080】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。本実施形態は、第1〜第6実施形態に対して高濃度n型層20や低濃度p型層30の形成方法を変更したものであり、その他については第1〜第6実施形態と同様であるため、第1〜第6実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、ここでは第1実施形態のように高濃度n型層20を有する縦型MOSFETに対して本実施形態の製造方法を適用する場合について説明するが、第2実施形態のような低濃度p型層30を有する縦型MOSFETに対しても適用可能である。
【0081】
本実施形態では、第1実施形態で説明した
図5(c)に示す埋め込みエピタキシャル成長に代えて、他の手法によって高濃度n型層20を形成する。
【0082】
具体的には、
図16(a)に示すように、高濃度n型層20のうちp型ディープ層3よりも下方位置の部分を形成したのち、p型ディープ層3をエピタキシャル成長させる。続いて、
図16(b)に示すように、p型ディープ層3の上にn型層60を形成する。n型層60についてはエピタキシャル成長によって形成しても良いが、ここではn型不純物をイオン注入することによって形成している。また、n型層60の不純物濃度については、高濃度n型層20と同じ程度となるようにしている。その後、
図16(c)に示すように、p型ディープ層3に加えてn型層60を貫通するようにトレンチ3aを形成する。このトレンチ3aは、第1トレンチに相当する。そして、アニール処理、例えばエッチングガスとなる水素(H2)とアルゴン(Ar)の混合ガス雰囲気中において加熱する。これにより、
図16(d)に示すように、溶融したn型層60がトレンチ3a内に垂れるように流動し、p型ディープ層3の側面などに付着して高濃度n型層20の残りの部分が形成される。この後は、第1実施形態で説明した各工程を実施することで、
図1と同様の構造の縦型MOSFETを備えたSiC半導体装置を製造できる。
【0083】
このように、n型層60をp型ディープ層3の上に形成しておき、アニール処理によってn型層60を溶融させて流動させることで、p型ディープ層3の側面などに高濃度n型層20を形成するようにしても良い。
【0084】
(第8実施形態)
第8実施形態について説明する。本実施形態は、第1〜第7実施形態に対してp型連結層5およびp
+型コンタクト領域8の形成方法を変更したものであり、その他については第1〜第7実施形態と同様であるため、第1〜第7実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、ここでは第1実施形態のように高濃度n型層20を有する縦型MOSFETに対して本実施形態の製造方法を適用する場合について説明するが、第2実施形態のような低濃度p型層30を有する縦型MOSFETに対しても適用可能である。
【0085】
まず、第1実施形態で説明した
図5(a)〜(d)に示す工程まで行う。続いて、
図17(a)に示すように、n型電流分散層4に対してp型連結層5を形成することなく、p型ベース領域6やn
+型ソース領域7を形成し、更にトレンチゲート構造を形成する。この後、
図17(c)に示すように、トレンチゲート構造から離れた位置において、n
+型ソース領域7やp型ベース領域6およびn型電流分散層4を貫通してp型ディープ層3に達するトレンチ70を形成する。このトレンチ70は、第2トレンチに相当する。そして、
図17(d)に示すように、埋め込みエピタキシャル成長によって、p型連結層5およびp
+型コンタクト領域8として機能するp型層71を形成する。
【0086】
このように、p型連結層5およびp
+型コンタクト領域8として機能するp型層71をエピタキシャル成長によって形成するようにしても良い。
【0087】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0088】
例えば、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0089】
また、第1実施形態等では、p型ディープ層3をソース電極13に接続することでソース電位とする構造について説明した。これに対して、p型ディープ層3をp型ベース領域6から分離した構造とし、p型ディープ層3への電圧印加に伴ってJFET部2aの空乏層の伸び量を調整する第2ゲートとして機能させるようにしても良い。その場合、p型ディープ層3は、ゲート電極11に電気的に接続してゲート電圧が印加される構成としたり、ドレイン電極14に接続してドレイン電圧が印加される構成とすることができる。
【0090】
また、JFET部2aの幅は一定である必要は無く、例えばドレイン電極14側の方に向かって徐々に幅が狭くなるような断面テーパ形状となっていても良い。
【0091】
また、各部の不純物濃度は一定でなくても良い。例えば、p型ディープ層3がドレイン電極14に近づくほどp型不純物濃度が低く、ソース電極13に近づくほどp型不純物濃度が高くなるような不純物濃度勾配を有した構造であっても良い。
【0092】
同様に、上記各実施形態で説明したSiC半導体装置を構成する各部の寸法や不純物濃度については一例を示したに過ぎない。各部の寸法や不純物濃度については、高濃度n型層20や低濃度p型層30およびJFET部2aのピンチオフ条件等に
基づいて、適宜設定すれば良い。
【0093】
例えば、高濃度n型層20の幅を広くすることもできる。例えば、高濃度n型層20の幅を全域0.2μmとする場合、n型不純物濃度を3.0×10
17/cm
3とし、JFET部2aの幅を0.4μm、1.0×10
18/cm
3とすることができる。また、ハーフセルピッチを広くし、例えば3μmとすることもできる。また、n型電流分散層4やp型連結層5の厚みを薄くして不純物濃度を濃くする構成にでき、例えば厚みを0.4μmとし、それぞれのn型不純物濃度やp型不純物濃度を6.0×10
17/cm
3とすることもできる。また、p型ディープ層3の厚みを薄くして不純物濃度を濃くする構成にでき、例えば厚みを0.6μmとし、p型不純物濃度を2.0×10
18/cm
3とすることもできる。また、低濃度p型層30を備える構造についても、ここで示した一例と同寸法および同不純物濃度を適用できる。ただし、ここで挙げたものも一例であり、他の寸法、不純物濃度とすることもできる。
【0094】
また、上記第1実施形態等では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプの縦型MOSFETを例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプの縦型MOSFETとしても良い。また、上記説明では、半導体素子として縦型MOSFETを例に挙げて説明したが、同様の構造のIGBTに対しても本発明を適用することができる。IGBTは、上記各実施形態に対してn
+型基板1の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造や製造方法に関しては上記各実施形態と同様である。
【0095】
また、上記実施形態では半導体装置としてSiC半導体装置を例に挙げて説明したが、Siを用いた半導体装置に対しても本発明を適用できるし、他のワイドバンドギャップ半導体装置、例えばGaN、ダイヤモンド、AlNなどを用いた半導体装置に対して上記各実施形態を適用することもできる。