(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683086
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】移動式クレーンの組立方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20200406BHJP
B66C 23/42 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
B66C23/26 C
B66C23/42 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-185606(P2016-185606)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-48014(P2018-48014A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100100262
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 勉
(72)【発明者】
【氏名】岡 高廣
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 昭治
(72)【発明者】
【氏名】小矢畑 章
(72)【発明者】
【氏名】栗原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】高岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小畠 徹也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 弘之
【審査官】
有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−075294(JP,A)
【文献】
特開平08−048489(JP,A)
【文献】
特開2012−116607(JP,A)
【文献】
特開2010−076939(JP,A)
【文献】
特開2014−043318(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0065616(US,A1)
【文献】
中国実用新案第202529744(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00─23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、前記走行体の上に旋回可能に設けられた旋回体と、前記旋回体に基端部が起伏可能に支持されたブームと、前記ブームの先端部に基端部が起伏可能に支持されたジブと、前記ブームの先端部又は前記ジブの基端部に基端部が回動可能に支持されたフロントストラットと、前記ブームの先端部又は前記ジブの基端部に基端部が回動可能に支持されたリヤストラットと、前記フロントストラットの先端部に分離可能に設けられた、複数のシーブを有する第1のポイントシーブ部と、前記リヤストラットの先端部に設けられた、複数のシーブを有する第2のポイントシーブ部と、前記第1のポイントシーブ部の前記シーブと前記第2のポイントシーブ部の前記シーブとの間に掛け回されたジブ起伏ロープとを備えた移動式クレーンの組立方法であって、
地上に倒伏した前記ブーム又は前記ジブに前記フロントストラット及び前記リヤストラットを組み付けるときには、先ず、前記リヤストラットの基端部を前記ブームの先端部又は前記ジブの基端部に回動可能に取り付け、前記リヤストラットを倒伏した状態に配置する工程と、
続いて、前記リヤストラット先端部の前記第2のポイントシーブ部に対し、前記フロントストラットの先端部から分離した前記第1のポイントシーブ部を近付けて配置し、これらのポイントシーブ部のシーブ間で前記ジブ起伏ロープの掛け回しを行う工程と、
その後、補助クレーンで前記リヤストラットを、起立状態を経て後方に倒し、ストラットガイラインの接続及びストラットバックストップの接続を行う工程と、
続いて、補助クレーンで前記リヤストラットを前方に起こし、前記ストラットバックストップにより前記リヤストラットを起立状態に支持する工程と、
次いで、前記第1のポイントシーブ部を補助クレーンで吊り上げ、前記ジブ起伏ロープを繰り出しながら、地上に直接又は前記ジブを介在して配置した前記フロントストラットの先端部にまで移動する工程と、
その後、前記第1のポイントシーブ部を前記フロントストラットの先端部に取り付ける工程とを備えたことを特徴とする移動式クレーンの組立方法。
【請求項2】
前記リヤストラットを起立状態に支持する工程の後で前記第1のポイントシーブ部を補助クレーンで吊り上げる前に、前記フロントストラットの基端部を前記ブームの先端部又は前記ジブの基端部に回動可能に取り付ける工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の移動式クレーンの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型の移動式クレーンとして、例えば特許文献1、2に記載されているように、走行体と、走行体の上に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体に基端部が起伏可能(回動可能)に支持されたブームと、ブームの先端部に基端部が起伏可能に支持されたジブと、ブームの先端部又はジブの基端部に基端部が回動可能に支持されたフロントストラットと、ブームの先端部に基端部が回動可能に支持されたリヤストラットとを備えたものは知られている。この場合、通常、ジブの先端部とフロントストラットの先端部とはジブガイラインを介して連結されており、リヤストラットの先端部とブームの基端部とはストラットガイラインを介して連結されている。また、フロントストラットの先端部には複数のシーブを有する第1のポイントシーブ部が設けられ、リヤストラットの先端部には複数のシーブを有する第2のポイントシーブ部が設けられている。そして、第1のポイントシーブ部のシーブと第2のポイントシーブ部のシーブとの間にジブ起伏ロープを掛け回し、このジブ起伏ロープをブームの基端部又は旋回体に設けたジブ起伏ウインチにより巻き取り又は繰り出すことにより、第1のポイントシーブ部と第2のポイントシーブ部との間の距離を変更し、ジブを起伏させるようになっている。
【0003】
このような移動式クレーンでは、作業現場での組立時に地上に倒伏したブーム又はジブにフロントストラット及びリヤストラットを組み付けるときには、通常、次のような手順(1)〜(5)によって行っている。
(1)先ず、フロントストラットの基端部を、ブームの先端部又は予めブームの先端部に取り付けたジブの基端部に取り付け、フロントストラットを地上に直接又はジブを介在して倒伏した状態に配置する。
(2)続いて、リヤストラットの基端部をブームの先端部に取り付け、リヤストラットをフロントストラットの上に積み重ねた状態で載せる。
(3)この状態で、フロントストラット先端部の第1のポイントシーブ部のシーブとリヤストラット先端部の第2のポイントシーブ部のシーブとの間でジブ起伏ロープの掛け回しを行う。
(4)その後、ジブ起伏ロープの繰り出しによりフロントストラット先端部の第1のポイントシーブ部とリヤストラット先端部の第2のポイントシーブ部との間(以下、この間を「2つのストラットのポイントシーブ部間」ともいう)の距離を大きくしながら、補助クレーンでリヤストラットを起立状態を経て後方に倒す。
(5)この状態で、ストラットガイラインの接続及びストラットバックストップの接続を行い、ストラットバックストップによりリヤストラットを起立状態に支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−76939号公報
【特許文献2】特開2012−116607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記従来の作業手順のうち、(4)の手順では、2つのストラットのポイントシーブ部間でのジブ起伏ロープの高精度の繰り出し作業と、補助クレーンによりリヤストラットを後方に倒す作業とを同時に行う必要があり、組み立てるクレーンのオペレータと補助クレーンのオペレータの息を合わさなければならなかった。息が合わず、組み立てるクレーンのオペレータの操作の方が早いと、ジブ起伏ロープが過剰に繰り出され、リヤストラットとジブ起伏ロープの干渉が起きることがある。逆に、補助クレーンのオペレータの操作の方が早く、リヤストラットの後方倒しが早くなると、フロントストラットが浮き上がり、フロントストラットの支持脚等が地面又はジブの上面(背面)と浮上、接触を繰り返して破損する虞がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その課題は、2つのストラットのポイントシーブ部間でのジブ起伏ロープの高精度の繰り出し作業と補助クレーンによるリヤストラットの後方倒し作業とを同時に行うことなく、地上に倒伏したブーム又はジブにフロントストラット及びリヤストラットを容易に組み付けることができ、作業の容易迅速化に寄与し得る移動式クレーンの組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、移動式クレーンとして、走行体と、前記走行体の上に旋回可能に設けられた旋回体と、前記旋回体に基端部が起伏可能に支持されたブームと、前記ブームの先端部に基端部が起伏可能に支持されたジブと、前記ブームの先端部又は前記ジブの基端部に基端部が回動可能に支持されたフロントストラットと、前記ブームの先端部又は前記ジブの基端部に基端部が回動可能に支持されたリヤストラットと、前記フロントストラットの先端部に分離可能に設けられた、複数のシーブを有する第1のポイントシーブ部と、前記リヤストラットの先端部に設けられた、複数のシーブを有する第2のポイントシーブ部と、前記第1のポイントシーブ部の前記シーブと前記第2のポイントシーブ部の前記シーブとの間に掛け回されたジブ起伏ロープとを備えたものを対象とする。そして、本発明は、移動式クレーンの組立方法として、地上に倒伏した前記ブーム又は前記ジブに前記フロントストラット及び前記リヤストラットを組み付けるときには、先ず、前記リヤストラットの基端部を前記ブームの先端部又は前記ジブの基端部に回動可能に取り付け、前記リヤストラットを倒伏した状態に配置する工程と、続いて、前記リヤストラット先端部の前記第2のポイントシーブ部に対し、前記フロントストラットの先端部から分離した前記第1のポイントシーブ部を近付けて配置し、これらのポイントシーブ部のシーブ間で前記ジブ起伏ロープの掛け回しを行う工程と、その後、補助クレーンで前記リヤストラットを、起立状態を経て後方に倒し、ストラットガイラインの接続及びストラットバックストップの接続を行う工程と、続いて、補助クレーンで前記リヤストラットを前方に起こし、前記ストラットバックストップにより前記リヤストラットを起立状態に支持する工程と、次いで、前記第1のポイントシーブ部を補助クレーンで吊り上げ、前記ジブ起伏ロープを繰り出しながら、地上に直接又は前記ジブを介在して配置した前記フロントストラットの先端部にまで移動する工程と、その後、前記第1のポイントシーブ部を前記フロントストラットの先端部に取り付ける工程とを備える構成とする。
【0008】
この構成では、従来の如く2つのストラットのポイントシーブ部間でのジブ起伏ロープの高精度の繰り出し作業と補助クレーンによるリヤストラットの後方倒し作業とを同時に行うことなく、地上に倒伏したブーム又はジブにフロントストラット及びリヤストラットを容易に組み付けることができるので、作業の容易迅速化に寄与することができる。
【0009】
ここで、前記リヤストラットを起立状態に支持する工程の後で前記第1のポイントシーブ部を補助クレーンで吊り上げる前に、前記フロントストラットの基端部を前記ブームの先端部又は前記ジブの基端部に回動可能に取り付ける工程をさらに備えることが好ましい。この方法では、リヤストラットの基端部をブームの先端部又はジブの基端部に回動可能に取り付けるに先立って、フロントストラットの基端部をブームの先端部又はジブの基端部に回動可能に取り付け、このフロントスラットの上にリヤストラットを載せることが不安定な場合などにも適用することができ、汎用性に優れている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の移動式クレーンの組立方法によれば、従来の如く2つのストラットのポイントシーブ部間でのジブ起伏ロープの高精度の繰り出し作業と補助クレーンによるリヤストラットの後方倒し作業とを同時に行うことなく、地上に倒伏したブーム又はジブにフロントストラット及びリヤストラットを容易に組み付けることができるので、作業の容易迅速化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る移動式クレーンの組立方法が適用されるクローラクレーンの吊り荷作業時の状態を示す側面図である。
【
図2】
図2は前記クローラクレーンの組立時に地上に倒伏したブームにフロントストラット及びリヤストラットを組み付けるときの作業手順を説明するための一工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る移動式クレーンの組立方法が適用される移動式クレーンとしてのクローラクレーン1の吊り荷作業時の状態を示す。クローラクレーン1は、クローラにより走行する走行体2と、走行体2の上に旋回装置3を介在して旋回可能に設けられた旋回体4と、アタッチメントとしてのブーム5及びジブ6とを備えている。
【0014】
ブーム5の基端部は、旋回体4の前部にブームフットピン7回りに起伏可能(回動可能)に支持されている。このブーム5の先端部にはジブ6の基端部がジブフットピン8回りに起伏可能に支持されている。
【0015】
ジブ6の先端部にはジブポイントシーブ10、補助シーブ11及びアイドラシーブ12が設けられており、ジブポイントシーブ10からは主巻上ロープ13を介して主フック14が吊り下げられている。主巻上ロープ13の一端は、ジブ6の先端部に結合されている。主巻上ロープ13の他端側は、アイドラシーブ12を通してジブ6の背面側及びブーム5の背面側に沿って配線されているとともに、旋回体4の前部に設けた巻上ウインチとしての主巻ウインチ15に巻き付けられている。そして、主巻ウインチ15の正逆回転により主フック14が巻き上げられ又は巻き下げられるようになっている。
【0016】
また、補助シーブ11からは補巻上ロープ16を介して補フック17が吊り下げられている。補巻上ロープ16の一端は、補フック17に結合されている。補巻上ロープ16の他端側は、主巻上ロープ13の他端側と同様にアイドラシーブ12を通してジブ6の背面側及びブーム5の背面側に沿って配線されているとともに、旋回体4の前部に設けた補巻ウインチ18に巻き付けられている。そして、補巻ウインチ18の正逆回転により補フック17が巻き上げられ又は巻き下げられるようになっている。なお、主巻上ロープ13と補巻上ロープ16とは、ジブ6の先端部に設けられた別々のアイドラシープ12を通して配線されている。
【0017】
ブーム5の先端部には、ジブ6の基端部の外に、フロントストラット21の基端部及びリヤストラット22の基端部がそれぞれピン回りに回動可能に支持されている。フロントストラット21の先端部とジブ6の先端部とは、ジブガイライン23を介して連結されている。リヤストラット22の先端部とブーム5の基端部とは、ストラットガイライン24を介して連結されている。ジブガイライン23及びストラットガイライン24は、ストラットガイライン24の場合
図2に示すように、複数のリンク部材を連結してなる。
【0018】
また、フロントストラット21の先端部には複数のシーブを有する第1のポイントシーブ部25が分離可能に設けられており、リヤストラット22の先端部には同じく複数のシーブを有する第2のポイントシーブ部26が設けられている。ここで、第1のポイントシーブ部25を分離可能に設けるための構成としては、図示していないが、例えばスプレッダのように、複数のシーブと、これらのシーブを回転自在に支持する支軸と、支軸を保持するケースとをユニット化し、このユニット化した第1のポイントシーブ部を取付部材などを介して取り外し可能に取り付けるようにすればよい。また、ケースを要することなく、複数のシーブを回転自在に支持する支軸を、フロントストラット21の先端部に設けた切り欠き溝などに嵌め込んでロック手段でロックするように構成してもよい。なお、第2のポイントシーブ部26は、本発明の実施形態に係る移動式クレーンの組立方法を実施する上ではリヤストラット22の先端部に分離可能に設ける必要はないが、分離可能に設けてもよいのは勿論である。
【0019】
第1のポイントシーブ部25のシーブと第2のポイントシーブ部26のシーブとの間にはジブ起伏ロープ27が複数回掛け回されている。ジブ起伏ロープ27の一端は、第1及び第2のポイントシーブ部25,26のいずれか一方に結合されている。ジブ起伏ロープ27の他端側は、第2のポイントシーブ部26(詳しくはそのシーブ)からブーム5の先端部背面側に設けたアイドラシーブ28を通してブーム5の背面側に沿って配線されているとともに、ブーム5の基端部に設けたジブ起伏ウインチ29に巻き付けられている。そして、ジブ起伏ウインチ29によりジブ起伏ロープ27を巻き取り又は繰り出すことで第1のポイントシーブ部25と第2のポイントシーブ部26との間の距離が変化し、ジブ6が起伏するようになっている。
【0020】
クローラクレーン1は、さらに、旋回体4の前部に基端部が起伏可能に連結されたマスト31と、旋回体4の後部に設けられたガントリ32と、旋回体4の後部に設けられたカウンタウエイト33と、旋回体4の後端に連結アーム34を介して連結されたカウンタウエイトトレーラ35とを備えている。
【0021】
マスト31の先端部は、ブーム5の先端部にブームガイライン36及びブーム起伏ロープ37を介して連結されている。ブームガイライン36は、複数のリンク部材を連結してなり、ブームガイライン36の一端は、ブーム5の先端部に結合されている。ブームガイライン36の他端にはブーム用スプレッダ38が、マスト31の先端部にはブーム用スプレッダ39がそれぞれ取り付けられ、この両ブーム用スプレッダ38,39間にブーム起伏ロープ37が掛け回されている。ブーム起伏ロープ37の一端は、両ブーム用スプレッダ38,39のいずれか一方に結合されている。ブーム起伏ロープ37の他端側は、マスト31の先端部に設けたシーブ40を通してマスト31の背面側に沿って配線されているとともに、マスト31の基端部に設けたブーム起伏ウインチ41に巻き付けられている。そして、ブーム起伏ウインチ41によりブーム起伏ロープ37を巻き取り又は繰り出すことで両ブーム用スプレッダ38,39間の距離が変化し、ブーム5が起伏するようになっている。なお、クローラクレーン1としては、マスト31のないタイプもある。この場合、カウンタウエイトトレーラ35がなく、ガントリ32からブーム5の先端部にガイラインで接続されるとともに、ガントリ32とブーム5との間に一対のスプレッダが設けられ、この一対のスプレッダ間をロープなどを用いて拡縮することでブーム5を起伏させるか、あるいはガントリ32と旋回体4との間にロープを掛け回し、このロープの巻き取り又は繰り出しによりガントリ32を起伏させ、それによってブーム5を起伏させるようになっている。
【0022】
ガントリ32の頂部は、マスト31の先端部にマストガイライン43及びマスト起伏ロープ44を介して連結されている。また、カウンタウエイトトレーラ35は、マスト31の先端部から吊下げライン45を介して支持されている。マストガイライン43及び吊下げライン45は、いずれも複数のリンク部材を連結してなる。
【0023】
なお、
図1中、46はストラットバックストップであり、ストラットバックストップ46は、その一端がブーム5の先端部に、他端がリヤストラット22の基端部にそれぞれ接続されていて、ブーム5に対するリヤストラット22の取付角度を所定の範囲内に維持するようになっている。
【0024】
次に、クローラクレーン1の作業現場での組立時に地上に倒伏したブーム5にフロントストラット21及びリヤストラット22を組み付けるときの作業手順について、
図2ないし
図9を用いながら説明する。
【0025】
先ず、
図2に示すように、補助クレーン50でリヤストラット22を吊り上げ、リヤストラット22の基端部をブーム5の先端部に近付けた上で回動可能に取り付け、その後、リヤストラット22を地上に倒伏した状態に配置する。このとき、ストラットガイライン24は、リヤストラット22の上面(吊り荷作業時の状態の背面)側に仮止めされた部分24aと、ブーム5の上面(吊り荷作業時の状態の背面)側に仮止めされた部分24bとに分離されている。また、ストラットバックストップ46の一端は、リヤストラット22の上面側に接続されているが、ストラットバックストップ46の他端部は、リヤストラット22の基端部に取り付けた保持部材51により保持されている。
【0026】
続いて、
図3に示すように、地上に置いたリヤストラット22先端部の第2のポイントシーブ部26に対し、フロントストラット21の先端部から分離した第1のポイントシーブ部25を所定距離に近付けて地上に配置し、これらのポイントシーブ部25,26のシーブ間でジブ起伏ロープ27の掛け回しを行う。その際、ジブ起伏ウインチ29からジブ起伏ロープ27を繰り出すだけでなく、旋回体4の前部などに装備されるリービング装置を用いてジブ起伏ロープ27の掛け回しを行えば掛け回し作業を円滑にかつ確実に行うことができる。なお、所定距離とは、2つのポイントシーブ部25,26のシーブ間でジブ起伏ロープ27の掛け回しを行うのに適した距離である。また、リヤストラット22が地上に直接ではなく、ジブ6又はフロントストラット21を介在して置かれる場合には、第1のポイントシーブ部25の配置位置としては、地上に限らず、ジブ6又はフロントストラット21の上面側などの地上側に配置してもよい。
【0027】
その後、
図4に示すように、リヤストラット22の先端部を補助クレーン50で吊り上げ、起立状態を経由して、リヤストラット22を後方(ブーム5側)に傾斜した状態に倒す。その際、第1のポイントシーブ部25は、地上に置いたままにするか、又は地上からリヤストラット22の基端側に移動させる。そのためには、リヤストラット22の後方倒しに合わせて、ジブ起伏ウインチ29からジブ起伏ロープ27を繰り出することが必要であるが、その操作は、高精度に行う必要はなく、比較的容易に行うことができる。
【0028】
リヤストラット22を後方に倒した状態では、リヤストラット22に仮止めされたストラットガイライン24の部分24aをリヤストラット22から外し、その部分24aの一端(下端)をブーム5に仮止めされたストラットガイライン24の部分24bの一端に接続する。
【0029】
次いで、
図5に示すように、補助クレーン50でリヤストラット22を少し前方に起こし、保持部材51によるストラットバックストップ46の保持を解除した後、ストラットバックストップ46をブーム5の先端部に接続する。なお、ストラットガイライン24の接続とストラットバックストップ46の接続とは前後逆に行ってもよい。
【0030】
続いて、
図6に示すように、補助クレーン50でリヤストラット22をさらに前方に起こし、ストラットバックストップ46を引き伸ばし、ストラットバックストップ46によりリヤストラット22を起立状態に支持する。
【0031】
次いで、
図7に示すように、補助クレーン50でフロントストラット21を吊り上げ、フロントストラット21の基端部をブーム5の先端部に近付けた上で回動可能に取り付ける。
【0032】
続いて、
図8に示すように、補助クレーン50で第1のポイントシーブ部25を地上から吊り上げ、地上に直接配置したフロントストラット21の先端部にまで移動する。その際、移動操作に合わせて、ジブ起伏ウインチ29からジブ起伏ロープ27を繰り出すことが必要であるが、その操作は、高精度に行う必要はなく、比較的容易に行うことができる。
【0033】
その後、
図9に示すように、補助クレーン50で第1のポイントシーブ部25を吊り上げた状態のままで第1のポイントシーブ部25をフロントストラット21の先端部に取り付ける。
【0034】
以上によって、クローラクレーン1の作業現場での組立時に地上に倒伏したブーム5にフロントストラット21及びリヤストラット22を組み付けるときの一連の作業が終了する。
【0035】
このような作業手順による組立方法では、従来の如く2つのストラット21,22のポイントシーブ部25,26間でのジブ起伏ロープ27の高精度の繰り出し作業と補助クレーン50によるリヤストラット22の後方倒し作業とを同時に行うことなく、地上に倒伏したブーム5にフロントストラット21及びリヤストラット22を容易に組み付けることができるので、作業の容易迅速化に寄与することができる。
【0036】
特に、本実施形態の場合、リヤストラット22を起立状態に支持した後で第1のポイントシーブ部25を補助クレーン50で吊り上げる前に、フロントストラット21を補助クレーン50で吊り上げ、フロントストラット21の基端部をブーム5の先端部に回動可能に取り付ける組立方法を採用した。この組立方法では、リヤストラット22の基端部をブーム5の先端部に回動可能に取り付けるに先立って、フロントストラット21の基端部をブーム5の先端部に回動可能に取り付け、このフロントストラット21の上にリヤストラット22を載せることが不安定な場合にも適用することができ、汎用性に優れている。
【0037】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば前記実施形態では、リヤストラット22を起立状態に支持した後で第1のポイントシーブ部25を補助クレーン50で吊り上げる前に、フロントストラット21を補助クレーン50で吊り上げ、フロントストラット21の基端部をブーム5の先端部に回動可能に取り付けたが、本発明は、リヤストラット22の基端部をブーム5の先端部に回動可能に取り付けるに先立って、フロントストラット21の基端部をブーム5の先端部に回動可能に取り付け、このフロントストラット21の上にリヤストラット22を載せるようにしてよいのは勿論である。
【0038】
また、前記実施形態では、ブーム5の先端部に、2つのストラットつまりフロントストラット21の基端部とリヤストラット22の基端部とがそれぞれ回動可能に取り付けられた移動式クレーンに適用した場合について述べた。しかし、本発明は、ブーム5の先端部にリヤストラット22の基端部が、ジブ6の基端部にフロントストラット21の基端部がそれぞれ取り付けられた移動式クレーン、あるいはジブ6の基端部にフロントストラット21の基端部とリヤストラット22の基端部とがそれぞれ回動可能に取り付けられた移動式クレーンにも適用することができる。この場合、フロントストラット21又はリヤストラット22の取り付けに先立って、ジブ6の全部又は少なくとも基端部をブーム5の先端部に取り付け、地上に置いたジブ6の上にフロントストラット21又はリヤストラット22を載せた状態でフロントストラット21の基端部又はリヤストラット22の基端部をジブ6の基端部に取り付けるようにすればよい。また、ジブ6の基端部に構造体を介してフロントストラット21とリヤストラット22とが一体的に取り付けられる場合、2つのストラット21,22の取り付けを同時に行い、リヤストラット22を倒伏した状態に配置する前に、地上に置いたジブ6の上にフロントストラット21を載せ、その上にリヤストラット22を倒伏して配置するようにすればよい。さらに、2つのストラット21,22を同時に取り付ける場合には、先ず、フロントストラット21とリヤストラット22を一体にしておき、その状態でジブ6の上に配置して取り付けるようにしてもよい。
【0039】
さらに、前記実施形態では、ストラットガイライン24及びその他のガイライン(つまりジブガイライン23、ブームガイライン36及びマストガイライン43)として、いずれも複数のリンク部材を連結してなるいわゆるガイリンクを用いた場合について述べたが、本発明は、ワイヤロープなどを用いた場合にも適用することができる。この場合、補助クレーン50でリヤストラット22を後方に倒した状態でのストラットガイラインの接続としては、予めストラットガイラインの一端をリヤストラット22の先端部に接続しておき、リヤストラット22を後方に倒した状態でリヤストラット22の先端部から垂れ下がるストラットガイラインの他端をブーム5の基端部に接続することがこれに相当する。
【0040】
加えて、本発明は、前記実施形態の如きクローラクレーン1に限らず、ホイールクレーンやトラッククレーンなどその他の移動式クレーンにも同様に適用することができる。また、ブーム5は、前記実施形態の如きラチス構造のものに限らず、伸縮可能なものであってよい。また、マスト31、フロントストラット21及びリヤストラット22もラチス構造に限らず、箱構造のものでもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 クローラクレーン(移動式クレーン)
2 走行体
4 旋回体
5 ブーム
6 ジブ
21 フロントストラット
22 リヤストラット
24 ストラットガイライン
25 第1のポイントシーブ部
26 第2のポイントシーブ部
27 ジブ起伏ロープ
29 ジブ起伏ウインチ
46 ストラットバックストップ
50 補助クレーン