(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イオン液体のカチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のペルチェ冷却素子。
前記耐熱性樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂及びエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のペルチェ冷却素子。
前記プラスチックフィルムが、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアラミドフィルム及びポリアミドイミドフィルムから選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載のペルチェ冷却素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ペルチェ冷却素子]
本発明のペルチェ冷却素子は、支持体上に、熱電半導体微粒子、耐熱性樹脂及びイオン液体を含む熱電半導体組成物から形成される薄膜からなる熱電変換材料を用い、構成される。
ペルチェ冷却素子では、通常、p型熱電素子とn型熱電素子とを電極を介し直列に接続し、pn接合部に電流を流すことにより、ペルチェ効果により、n→p接合部分(矢印の方向へ電流が流れる)では吸熱現象が、p→n接合部分(矢印の方向へ電流が流れる)では放熱現象が発生する。これにより、熱を低温側(吸熱側)から高温側(発熱側)へ輸送することができる。
また、ペルチェ冷却素子は、高温側と低温側の温度差が大きくなると、高温側から低温側に素子の内部を通って熱の逆流が増加(増加分=モジュールの熱伝導率×温度差の増加分)することから、発熱側と吸熱側との温度差が小さいほど、冷却効果が高くなる。
【0014】
図1に、本発明のペルチェ冷却素子の構成の一例を示す。
図1において、(a)はペルチェ冷却素子9を構成するp型及びn型熱電素子パターンフィルム1の斜視図を示し、支持体2上に、下部電極3(動作に必要な直流電圧を印加するための下部電極(電圧印加用)3a、3bを含む)並びにp型熱電素子4及びn型熱電素子5(
図1(a)においてはそれぞれ8パターン、合計16パターンを点線矢印の方向に交互に配列)から構成されている。また、
図1において、(b)はペルチェ冷却素子9を構成する対向側電極パターンフィルム6の斜視図を示し、支持体7上に、下部電極8、及び導電性接着剤層(貼り合わせ後、支持体2上のp型熱電素子4及びn型熱電素子5の位置に対応するように設ける;図示せず)から構成されている。さらに、
図1の(c)は、ペルチェ冷却素子9の外観を示し、(a)と(b)とを、p型熱電素子4とn型熱電素子5とが交互に配列し、かつ電気的には直列接続に、熱的には並列接続になるように貼り合わせ、ペルチェ冷却素子9(一般に、π型熱電変換モジュールという)としたものである。
【0015】
<熱電変換材料>
本発明のペルチェ冷却素子に用いた熱電変換材料は、支持体上に、熱電半導体微粒子、耐熱性樹脂及びイオン液体を含む熱電半導体組成物からなるものである。
本発明のペルチェ冷却素子に用いる熱電変換材料は、冷却能力及び冷却効率の観点から、p型及びn型熱電素子を交互に配列し、かつ電気的には直列接続し、熱的には並列接続して使用することが好ましく、冷却効果が損なわれない範囲で、複数個使用してもよい。
【0016】
(支持体)
支持体としては、熱電変換材料の電気伝導率の低下、熱伝導率の増加に影響を及ぼさないものであれば、特に制限されず、例えば、ガラス、シリコン、プラスチックフィルム等が挙げられる。なかでも、屈曲性に優れるという点から、プラスチックフィルムが好ましい。
プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアラミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテル・エーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリ(4−メチルペンテン−1)フィルム等が挙げられる。また、これらフィルムの積層体であってもよい。
これらの中でも、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、支持体が熱変形することなく、熱電変換材料の性能を維持することができ、耐熱性及び寸法安定性が高いという点から、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアラミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムが好ましく、さらに、汎用性が高いという点から、ポリイミドフィルムが特に好ましい。
【0017】
前記支持体の厚さは、屈曲性、耐熱性及び寸法安定性の観点から、1〜1000μmが好ましく、10〜500μmがより好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。
また、上記プラスチックフィルムは、分解温度が300℃以上であることが好ましい。
【0018】
(熱電半導体微粒子)
熱電変換材料に用いる熱電半導体微粒子は、熱電半導体材料を、微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕することにより得られる。
【0019】
前記熱電半導体材料としては、特に制限されず、例えば、p型ビスマステルライド、n型ビスマステルライド、Bi
2Te
3等のビスマス−テルル系熱電半導体材料;GeTe、PbTe等のテルライド系熱電半導体材料;アンチモン−テルル系熱電半導体材料;ZnSb、Zn
3Sb
2、Zn
4Sb
3等の亜鉛−アンチモン系熱電半導体材料;SiGe等のシリコン−ゲルマニウム系熱電半導体材料;Bi
2Se
3等のビスマスセレナイド系熱電半導体材料;β―FeSi
2、CrSi
2、MnSi
1.73、Mg
2Si等のシリサイド系熱電半導体材料;酸化物系熱電半導体材料;FeVAl、FeVAlSi、FeVTiAl等のホイスラー材料、TiS
2等の硫化物系熱電半導体材料等が用いられる。
【0020】
これらの中でも、本発明に用いる前記熱電半導体材料は、p型ビスマステルライド又はn型ビスマステルライド、Bi
2Te
3等のビスマス−テルル系熱電半導体材料であることが好ましい。
前記p型ビスマステルライドは、キャリアが正孔で、ゼーベック係数が正値であり、例えば、Bi
XTe
3Sb
2−Xで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Xは、好ましくは0<X≦0.8であり、より好ましくは0.4≦X≦0.6である。Xが0より大きく0.8以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、p型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
また、前記n型ビスマステルライドは、キャリアが電子で、ゼーベック係数が負値であり、例えば、Bi
2Te
3−YSe
Yで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Yは、好ましくは0≦Y≦3であり、より好ましくは0≦Y≦2.7である。Yが0以上3以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、n型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
【0021】
熱電半導体微粒子の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは、30〜99質量%である。より好ましくは、50〜96質量%であり、さらに好ましくは、70〜95質量%である。熱電半導体微粒子の配合量が、上記範囲内であれば、ゼーベック係数すなわちペルチェ係数の絶対値が大きく、また電気伝導率の低下が抑制され、熱伝導率のみが低下するため高い熱電性能を示すとともに、十分な皮膜強度、屈曲性を有する膜が得られ好ましい。
【0022】
熱電半導体微粒子の平均粒径は、好ましくは、10nm〜200μm、より好ましくは、10nm〜30μm、さらに好ましくは、50nm〜10μm、特に好ましくは、1〜6μmである。上記範囲内であれば、均一分散が容易になり、電気伝導率を高くすることができる。
前記熱電半導体材料を粉砕して熱電半導体微粒子を得る方法は特に限定されず、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、エッジミル、製粉ミル、ハンマーミル、ペレットミル、ウィリーミル、ローラーミル等の公知の微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕すればよい。
なお、熱電半導体微粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析装置(CILAS社製、1064型)にて測定することにより得られ、粒径分布の中央値とした。
【0023】
また、熱電半導体微粒子は、アニール処理(以下、「アニール処理A」ということがある。)されたものであることが好ましい。アニール処理Aを行うことにより、熱電半導体微粒子は、結晶性が向上し、さらに、熱電半導体微粒子の表面酸化膜が除去されるため、熱電変換材料のゼーベック係数すなわちペルチェ係数が増大し、熱電性能指数をさらに向上させることができる。アニール処理Aは、特に限定されないが、熱電半導体組成物を調製する前に、熱電半導体微粒子に悪影響を及ぼすことがないように、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、同じく水素等の還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行うことが好ましく、不活性ガス及び還元ガスの混合ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。具体的な温度条件は、用いる熱電半導体微粒子に依存するが、通常、微粒子の融点以下の温度で、かつ100〜1500℃で、数分〜数十時間行うことが好ましい。
【0024】
(イオン液体)
本発明で用いるイオン液体は、カチオンとアニオンとを組み合わせてなる溶融塩であり、−50〜500℃の幅広い温度領域において液体で存在し得る塩をいう。イオン液体は、蒸気圧が極めて低く不揮発性であること、優れた熱安定性及び電気化学安定性を有していること、粘度が低いこと、かつイオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。また、イオン液体は、非プロトン性のイオン構造に基づく高い極性を示し、耐熱性樹脂との相溶性に優れるため、熱電変換材料の電気伝導率を均一にすることができる。
【0025】
イオン液体は、公知または市販のものが使用できる。例えば、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、イミダゾリウム等の窒素含有環状カチオン化合物及びそれらの誘導体;テトラアルキルアンモニウムのアミン系カチオン及びそれらの誘導体;ホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、テトラアルキルホスホニウム等のホスフィン系カチオン及びそれらの誘導体;リチウムカチオン及びその誘導体等のカチオン成分と、Cl
−、AlCl
4−、Al
2Cl
7−、ClO
4−等の塩化物イオン、Br
−等の臭化物イオン、I
−等のヨウ化物イオン、BF
4−、PF
6−等のフッ化物イオン、F(HF)
n−等のハロゲン化物アニオン、NO
3−、CH
3COO
−、CF
3COO
−、CH
3SO
3−、CF
3SO
3−、(FSO
2)
2N
−、(CF
3SO
2)
2N
−、(CF
3SO
2)
3C
−、AsF
6−、SbF
6−、NbF
6−、TaF
6−、F(HF)n
−、(CN)
2N
−、C
4F
9SO
3−、(C
2F
5SO
2)
2N
−、C
3F
7COO
−、(CF
3SO
2)(CF
3CO)N
−等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
【0026】
上記のイオン液体の中で、高温安定性、熱電半導体微粒子及び樹脂との相溶性、熱電半導体微粒子間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、イオン液体のカチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。イオン液体のアニオン成分が、ハロゲン化物アニオンを含むことが好ましく、Cl
−、Br
−及びI
−から選ばれる少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
【0027】
カチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体の具体的な例として、4−メチル−ブチルピリジニウムクロライド、3−メチル−ブチルピリジニウムクロライド、4−メチル−ヘキシルピリジニウムクロライド、3−メチル−ヘキシルピリジニウムクロライド、4−メチル−オクチルピリジニウムクロライド、3−メチル−オクチルピリジニウムクロライド、3、4−ジメチル−ブチルピリジニウムクロライド、3、5−ジメチル−ブチルピリジニウムクロライド、4−メチル−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、4−メチル−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヨージド等が挙げられる。この中で、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヨージドが好ましい。
【0028】
また、カチオン成分が、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体の具体的な例として、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムメチルスルフェート、1、3−ジブチルイミダゾリウムメチルスルフェート等が挙げられる。この中で、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]が好ましい。
【0029】
上記のイオン液体は、電気伝導率が10
−7S/cm以上であることが好ましく、10
−6S/cm以上であることがより好ましい。イオン伝導度が上記範囲であれば、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。
【0030】
また、上記のイオン液体は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
【0031】
また、上記のイオン液体は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
【0032】
前記イオン液体の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1.0〜20質量%である。前記イオン液体の配合量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下が効果的に抑制され、高い熱電性能を有する膜が得られる。
【0033】
(耐熱性樹脂)
本発明に用いる耐熱性樹脂は、熱電半導体微粒子間のバインダーとして働き、熱電変換材料の屈曲性を高めるためのものである。該耐熱性樹脂は、特に制限されるものではないが、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理等により熱電半導体微粒子を結晶成長させる際に、樹脂としての機械的強度及び熱伝導率等の諸物性が損なわれず維持される耐熱性樹脂を用いる。
前記耐熱性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、エポキシ樹脂、及びこれらの樹脂の化学構造を有する共重合体等が挙げられる。前記耐熱性樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐熱性がより高く、且つ薄膜中の熱電半導体微粒子の結晶成長に悪影響を及ぼさないという点から、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、屈曲性に優れるという点からポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂がより好ましい。前述の支持体として、ポリイミドフィルムを用いた場合、該ポリイミドフィルムとの密着性などの点から、耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂がより好ましい。なお、本発明においてポリイミド樹脂とは、ポリイミド及びその前駆体を総称する。
【0034】
前記耐熱性樹脂は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、熱電変換材料の屈曲性を維持することができる。
【0035】
また、前記耐熱性樹脂は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、熱電変換材料の屈曲性を維持することができる。
【0036】
前記耐熱性樹脂の前記熱電半導体組成物中の配合量は、0.1〜40質量%、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは、1〜20質量%、さらに好ましくは2〜15質量%である。前記耐熱性樹脂の配合量が、上記範囲内であれば、高い熱電性能と皮膜強度が両立した膜が得られる。
【0037】
本発明で用いる熱電半導体組成物には、前記熱半導体微粒子、前記耐熱性樹脂及び前記イオン液体以外に、必要に応じて、さらに分散剤、造膜助剤、光安定剤、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤、樹脂安定剤、充てん剤、顔料、導電性フィラー、導電性高分子、硬化剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明で用いる熱電半導体組成物の調製方法は、特に制限はなく、超音波ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリッドミキサー等の公知の方法により、前記熱電半導体微粒子と前記イオン液体及び前記耐熱性樹脂、必要に応じて前記その他の添加剤、さらに溶媒を加えて、混合分散させ、当該熱電半導体組成物を調製すればよい。
前記溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アルコール、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン、エチルセロソルブ等の溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。熱電半導体組成物の固形分濃度としては、該組成物が塗工に適した粘度であればよく、特に制限はない。
【0039】
前記熱電半導体組成物からなる薄膜は、後述するペルチェ冷却素子の製造方法で説明するように、支持体上に、前記熱電半導体組成物を塗布し、乾燥することで形成することができる。このように形成することで、簡便に低コストで大面積の熱電変換材料を得ることができる。
【0040】
前記熱電半導体組成物からなる薄膜の厚みは、特に制限はないが、熱電性能と皮膜強度の点から、好ましくは100nm〜200μm、より好ましくは300nm〜150μm、さらに好ましくは5μm〜150μmである。
【0041】
[ペルチェ冷却素子の製造方法]
本発明のペルチェ冷却素子の製造方法は、支持体上に、熱電半導体微粒子、耐熱性樹脂及びイオン液体を含む熱電半導体組成物からなる薄膜を有する熱電変換材料を用いたペルチェ冷却素子の製造方法であって、支持体上に、熱電半導体微粒子、耐熱性樹脂及びイオン液体を含む熱電半導体組成物を塗布し、乾燥し、薄膜を形成する工程、該薄膜をアニール処理する工程を含む、ペルチェ冷却素子の製造方法である。
以下、本発明に含まれる工程について、順次説明する。
【0042】
(薄膜形成工程)
本発明に用いた熱電半導体組成物を、支持体上に塗布する方法としては、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スピンコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコート、バーコート、ドクターブレード等の公知の方法が挙げられ、特に制限されない。塗膜をパターン状に形成する場合は、所望のパターンを有するスクリーン版を用いて簡便にパターン形成が可能なスクリーン印刷、スロットダイコート等が好ましく用いられる。
次いで、得られた塗膜を乾燥することにより、薄膜が形成されるが、乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80〜150℃であり、加熱時間は、加熱方法により異なるが、通常、数秒〜数十分である。
また、熱電半導体組成物の調製において溶媒を使用した場合、加熱温度は、使用した溶媒を乾燥できる温度範囲であれば、特に制限はない。
【0043】
(アニール処理工程)
得られた熱電変換材料は、薄膜形成後、さらにアニール処理(以下、「アニール処理B」ということがある。)を行う。該アニール処理Bを行うことで、熱電性能を安定化させるとともに、薄膜中の熱電半導体微粒子を結晶成長させることができ、熱電性能をさらに向上させることができる。アニール処理Bは、特に限定されないが、通常、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、同じく水素等の還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行われ、用いる樹脂及びイオン性流体の耐熱温度等に依存するが、100〜500℃で、数分〜数十時間行われ、不活性ガス及び還元ガスの混合ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。
【0044】
(貼り合わせ工程)
貼り合わせ工程は、前記アニール処理工程で得られた薄膜を含む下述する2態様の支持体を貼り合わせ、ペルチェ冷却素子を作製する工程である。ペルチェ冷却素子の構成は、特に制限はないが、例えば、p型熱電素子とn型熱電素子とが交互に配列され、かつそれらが電気的には直列接続に、熱的には並列接続になるようにして構成される。また、p型熱電素子とn型熱電素子とからなる対は、用途に応じて複数対使用してもよい。
貼り合わせ工程で用いられる支持体上の熱電素子、下部電極の構成等から、貼り合わせは、例えば、以下の(1)、(2)のように2態様の支持体を用い行われる。
(1)下部電極パターン並びにアニール処理されたp型及びn型熱電素子パターンを有する支持体(例えば、
図1の(a))と、下部電極パターンを有する支持体(例えば、
図1の(b))とを、貼り合わせ剤を介して、貼り合わせ後にp型熱電素子とn型熱電素子とが交互に配列され、かつ電気的には直列接続に、熱的には並列接続になるように貼り合わせ、接着する(例えば、
図1の(c))。
(2)下部電極パターン及びアニール処理されたp型熱電素子パターンを有する支持体と、下部電極パターン及びアニール処理されたn型熱電素子パターンを有する支持体とを、前記貼り合わせ剤を介して、貼り合わせ後に上記(1)と同様の構成になるように貼り合わせ、接着する。
上記(1)の製造では、高温度でのアニール処理を熱電素子を有する一方の支持体に対して行うだけでよく、また、貼り合わせ時のアライメント(重ね合わせ位置制御)が簡便になる等から、(2)の製造に比べ生産性が高く、コスト減に繋がるためより好ましい。
前記貼り合わせ剤としては、特に制限されないが、導電ペースト、導電接着剤等が挙げられる。導電ペーストとしては、銅ペースト、銀ペースト、ニッケルペースト等が挙げられ、導電接着剤としては、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系接着剤等が挙げられる。
【0045】
本発明の製造方法によれば、簡便な方法で熱電性能が高く、低コストの熱電変換材料を用いたペルチェ冷却素子を得ることができる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0047】
実施例及び比較例で作製した熱電変換材料の熱電性能評価、屈曲性評価及びペルチェ冷却素子の冷却特性評価は、以下の方法で行った。
【0048】
<熱電性能評価>
(a)電気伝導率
実施例及び比較例で作製した熱電変換材料を、表面抵抗測定装置(三菱化学社製、商品名:ロレスタGP MCP−T600)により、四端子法で試料の表面抵抗値を測定し、電気伝導率(σ)を算出した。
(b)ゼーベック係数
JIS C 2527:1994に準拠して実施例及び比較例で作製した熱電変換材料の熱起電力を測定し、ゼーベック係数(S)を算出した。作製した熱変換材料の一端を加熱して、熱変換材料の両端に生じる温度差をクロメル−アルメル熱電対を使用し測定し、熱電対設置位置に隣接した電極から熱起電力を測定した。
具体的には、温度差と起電力を測定する試料の両端間距離を25mmとし、一端を20℃に保ち、他端を25℃から50℃まで1℃刻みで加熱し、その際の熱起電力を測定して、傾きからゼーベック係数(S)を算出した。なお、熱電対及び電極の設置位置は、薄膜の中心線に対し、互いに対称の位置にあり、熱電対と電極の距離は1mmである。
(c)熱伝導率
熱伝導率の測定には3ω法を用いて熱伝導率(λ)を算出した。
得られた、電気伝導率、ゼーベック係数及び熱伝導率から、熱電性能指数Z(Z=σS
2/λ)を求め、無次元熱電性能指数ZT(T=300K)を算出した。
【0049】
<冷却特性評価>
実施例及び比較例で作製したp型及びn型熱電素子を用いて構成したペルチェ冷却素子(π型熱電変換モジュール)を、
図2に示す冷却特性評価ユニット11の所定の位置に配置することで、冷却特性評価を行った。
具体的には、被着体である加熱ユニット13に、ペルチェ冷却素子12の冷却面側(吸熱側)を貼付し、排熱面側(放熱側)には、ヒートシンク14を介してチラーユニット15(冷却水;温度設定0℃)を配置した。加熱ユニット13から3Wの熱量を供給し、ペルチェ冷却素子12の熱電素子の両端に、直流電源より0.5V印加した時のペルチェ冷却素子12の冷却面側と、ペルチェ冷却素子の排熱面側との温度差を測定した。
なお、加熱ユニット13とペルチェ冷却素子12間に熱伝導グリス16を、ペルチェ冷却素子12とヒートシンク14間に熱伝導グリス17を、ヒートシンク14とチラーユニット15間に熱伝導グリス18を設け、それぞれの界面において、空気を巻き込みにくくし、熱抵抗を低く抑えた。
【0050】
<屈曲性評価>
実施例及び比較例で作製した熱電変換材料について、円筒形マンドレル法によりマンドレル径φ10mmの時の薄膜の屈曲性を評価した。円筒形マンドレル試験前後で、熱電変換材料の外観評価及び熱電性能評価を行い、以下の基準で屈曲性を評価した。
試験前後で熱電変換材料の外観に異常が見られず無次元熱電性能指数ZTが変化しない場合:◎
試験前後で熱電変換材料の外観に異常が見られずZTの減少が30%未満であった場合:○
試験後に熱電変換材料にクラック等の割れが発生したり、ZTが30%以上減少した場合:×
【0051】
(熱電半導体微粒子の作製方法)
ビスマス−テルル系熱電半導体材料であるp型ビスマステルライドBi
0.4Te
3Sb
1.6(高純度化学研究所製、粒径:180μm)を、遊星型ボールミル(フリッチュジャパン社製、Premium line P−7)を使用し、窒素ガス雰囲気下で粉砕することで、平均粒径1.2μmの熱電半導体微粒子T1を作製した。粉砕して得られた熱電半導体微粒子に関して、レーザー回折式粒度分析装置(CILAS社製、1064型)により粒度分布測定を行った。
また、ビスマス−テルル系熱電半導体材料であるn型ビスマステルライドBi
2Te
3(高純度化学研究所製、粒径:180μm)を上記と同様に粉砕し、平均粒径1.4μmの熱電半導体微粒子T2を作製した。
【0052】
(実施例1)
(1)熱電半導体組成物の作製
表1に示す実施例1に記載した配合量になるように、得られたビスマス−テルル系熱電半導体材料の微粒子T1と、耐熱性樹脂としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸(シグマアルドリッチ社製、ポリ(ピロメリト酸二無水物−co−4,4´−オキシジアニリン、固形分濃度:15質量%)溶液、溶媒:メチルピロリドン、300℃における質量減少率:0.9%)、及びイオン液体1として[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド、電気伝導率:3.5×10
−5S/cm]とを加え、それらを混合分散し、p型ビスマステルライドの微粒子T1を含む熱電半導体組成物からなる塗工液Pを調製した。同様に、微粒子T1を微粒子T2に変え、n型ビスマステルライドの微粒子T2を含む熱電半導体組成物からなる塗工液Nを調製した。
(2)熱電性能評価用サンプルの製造
(1)で調製した塗工液Pを、スクリーン印刷により支持体であるポリイミドフィルム(東レデュポン社製、商品名「カプトン」、厚さ50μm)上に塗布し、温度150℃で、10分間アルゴン雰囲気下で乾燥し、厚さが10μmの薄膜を形成した。次いで、得られた薄膜に対し、水素とアルゴンの混合ガス(水素:アルゴン=5体積%:95体積%)雰囲気下で、加温速度5K/minで昇温し、415℃で1時間保持し、薄膜形成後のアニール処理Bを行うことにより、熱電半導体材料の微粒子を結晶成長させ、p型熱電変換材料を作製した。同様の方法で、(1)で調製した塗工液Nを用い、n型熱電変換材料を作製した。
(3)ペルチェ冷却素子(π型熱電変換モジュール)の作製
図1の(a)と同様の、スクリーン印刷法によりあらかじめ形成した下部電極(銅電極パターン)を有する、支持体であるポリイミドフィルム(東レデュポン社製、商品名「カプトン」、厚み:50μm)上に、(1)で調製した塗工液P及び塗工液Nを用い、スクリーン印刷法により
図1の(a)と同様のp型及びn型熱電素子パターンを塗布し、温度150℃で、10分間アルゴンガス雰囲気下で乾燥し、それぞれ厚みが100μmの薄膜を形成した。得られた薄膜に対し、アルゴンガス雰囲気下で、加温速度5K/minで昇温し、415℃で1時間、アニール処理Bを行うことにより、熱電半導体材料の微粒子を結晶成長させ、p型及びn型熱電素子パターンフィルムを作製した。
次いで、別の支持体であるポリイミドフィルム(東レデュポン社製、商品名「カプトン」、厚み:50μm)上に、スクリーン印刷法により
図1の(b)と同様の下部電極パターンを塗布し、対向側電極パターンフィルムを作製した。
得られたp型及びn型熱電素子パターンフィルムと、対向側電極パターンフィルムとを、p型熱電素子とn型熱電素子とが交互に配列にし、かつ電気的には直列接続、熱的には並列接続になるように導電性接着剤(ニホンハンダ社製、商品名「ECA100」、厚み20μm)を介して貼り合わせ、接着することで、
図1の(c)と同様のペルチェ冷却素子を作製した。
【0053】
(実施例2)
イオン液体(イオン液体1)を、1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミドから1−ブチル−4−メチルピリジニウムヨージド(シグマアルドリッチジャパン社製、イオン液体2、電気伝導率:1.8×10
−5S/cm)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、p型熱電変換材料、n型熱電変換材料及びペルチェ冷却素子を作製した。
【0054】
(実施例3)
p型熱電半導体微粒子とn型熱電半導体微粒子の配合量を85質量%に変え、イオン液体1の添加量を10質量%に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、p型熱電変換材料、n型熱電変換材料及びペルチェ冷却素子を作製した。
【0055】
(実施例4)
p型熱電半導体微粒子とn型熱電半導体微粒子の配合量を55質量%に変え、イオン液体1の添加量を40質量%に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、p型熱電変換材料、n型熱電変換材料及びペルチェ冷却素子を作製した。
【0056】
(比較例1)
イオン液体を加えず、ポリイミド樹脂の配合量を5質量%から10質量%にした以外は、実施例1と同様にして、p型熱電変換材料、n型熱電変換材料及びペルチェ冷却素子を作製した。
【0057】
(比較例2)
耐熱性樹脂を加えず、導電性高分子であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸イオンの混合物PEDOT:PSSとイオン液体1と熱電半導体微粒子を表1に記載の配合で混合分散した熱電半導体組成物からなる塗工液を調製し、p型熱電変換材料、n型熱電変換材料及びペルチェ冷却素子を作製した。
【0058】
(比較例3)
耐熱性樹脂をポリスチレン(300℃における質量減少率:100%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、p型熱電変換材料、n型熱電変換材料及びペルチェ冷却素子を作製した。
【0059】
【表1】
【0060】
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたp型熱電変換材料、n型熱電変換材料の熱電性能評価、屈曲性評価、及びペルチェ冷却素子(π型熱電変換モジュール)の冷却特性評価に係る結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
実施例1〜4の熱電変換材料は、イオン液体を加えない比較例1に比べて、無次元熱電性能指数ZTが1オーダー又はそれ以上高く、また、円筒形マンドレル試験前後で、熱電変換材料にクラック等の割れが発生することもなく、無次元熱電性能指数ZTがほとんど低下せず、屈曲性が優れていることが分かった。さらに、耐熱性樹脂を使用しない比較例2(耐熱性の低い導電性高分子のみ使用)に比べ、無次元熱電性能指数ZT及び屈曲性がはるかに優れていることが分かった。
実施例1〜4のペルチェ冷却素子は、イオン液体を加えない比較例1に比べて、冷却面(吸熱側)と排熱面(発熱側)との温度差が小さいことから、冷却効果が優れていることが分かった。