特許第6683184号(P6683184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6683184-エレベータ 図000002
  • 特許6683184-エレベータ 図000003
  • 特許6683184-エレベータ 図000004
  • 特許6683184-エレベータ 図000005
  • 特許6683184-エレベータ 図000006
  • 特許6683184-エレベータ 図000007
  • 特許6683184-エレベータ 図000008
  • 特許6683184-エレベータ 図000009
  • 特許6683184-エレベータ 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683184
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/40 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   B66B1/40 B
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-207078(P2017-207078)
(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公開番号】特開2019-77546(P2019-77546A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【弁理士】
【氏名又は名称】森 優
(72)【発明者】
【氏名】藤井 琢也
(72)【発明者】
【氏名】濱辺 哲
(72)【発明者】
【氏名】大山 和也
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−113180(JP,A)
【文献】 特開2015−078073(JP,A)
【文献】 特開2013−095554(JP,A)
【文献】 特開2005−078395(JP,A)
【文献】 特開平08−189826(JP,A)
【文献】 特開平10−301919(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0023864(US,A1)
【文献】 特開2017−197327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00─ 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に伸縮性を有する支持手段によって支持されたかごが、昇降路内を目的階まで昇降される構成とされたエレベータであって、
前記昇降路内の上下方向における前記かごの位置を検出し、かご位置データとして出力するかご位置検出手段と、
前記かごが前記目的階に停止中に、前記かご位置検出手段から一連に出力される複数のかご位置データから、前記支持手段の前記伸縮性に起因して上下方向に振動する前記かごの振動において続いて出現する2個の極大値と2個の極小値を推定する極値推定手段と、
前記極値推定手段が推定した前記2個の極大値と前記2個の極小値から前記振動の中心位置を割り出すかご位置割出手段と、
を有し、
前記2個の極大値をU1、U2、前記2個の極小値をL1、L2とし、U1、U2、L1、L2は、前記かごの振動において、U1、L1、U2、L2の順に連続する極値であるとすると、
前記かご位置割出手段は、前記振動の減衰比γを
γ=(L2−L1)/(U1−U2)
によって算出し、前記中心位置Mを
M=(γ・U2+L2)/(γ+1)
によって算出することを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記極値推定手段は、かご位置検出手段から一連に出力されるかご位置データの大きさが増加から減少に転じる前後の複数のかご位置データの平均値を極大値と推定し、一連に出力されるかご位置データの大きさが減少から増加に転じる前後の複数のかご位置データの平均値を極小値と推定することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記かごが前記目的階まで昇降され、前記かごのかご床が乗場床に着床した後にかご扉および乗場扉が開かれて乗客が乗降する構成とされたエレベータであって、
前記極値推定手段は、前記かごが前記目的階に停止後、前記かご扉および前記乗場扉が開かれるまでの間に前記2個の極大値と2個の極小値を推定することを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記かごが前記目的階まで昇降され、前記かごのかご床が乗場床に着床した後にかご扉および乗場扉が開かれて乗客が乗降する構成とされたエレベータであって、
前記極値検出手段は、前記かご扉および前記乗場扉が開かれている間に前記2個の極大値と2個の極小値を推定することを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記支持手段は、前記昇降路の上方から前記かごを吊り下げて支持する索状体であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに関し、特に、かごの上下方向における位置の検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トラクション式のエレベータでは、かごの昇降路最上部よりも上に機械室が設けられ、かごを駆動する巻上機が当該機械室に設置されている。巻上機を構成する綱車には、主ロープが掛けられており、主ロープの一端側にはかごが、他端側には釣合おもりが連結されて、それぞれが主ロープによって吊下げられている。
【0003】
巻上機を構成する電動機によって前記綱車を正転または逆転することにより、鉛直方向に敷設された一対のかご用ガイドレールに案内されたかごが昇降される構成となっている。
【0004】
そして、かごが目的階に着床するとかご扉と乗場側に設けられた乗場扉とが開かれて、乗客が乗降することとなる。
【0005】
目的階までの昇降制御には、綱車の回転角を検出するエンコーダからの出力が参照される。すなわち、出発階から目的階までの距離に相当する分の目標回転角が出力されたところで、電動機が停止される。電動機が停止されると電磁ブレーキが締結されて綱車の回転が制動されることとなる。
【0006】
しかしながら、綱車が正確に前記目標回転角だけ回転されて、かごが停止されたとしても、綱車と主ロープとの間の相対的な滑り等に起因して、かごが着床ゾーンから外れてしまう場合がある。「着床ゾーン」とは、乗場床の高さ(以下、「着床レベル」と言う。)に対して、かご床に許容される上下方向のズレの範囲をいう。目的階に停止したかごの床が着床ゾーンの範囲内にあることが確認されることを条件にかご扉は開かれる。
【0007】
このため、かご床の着床レベルに対するズレの程度を検出する着床検出装置が設けられている。着床検出装置は、法令上、設置が義務付けられているものである。例えば、着床検出装置30は、図2(a)に示すように、4個のフォトセンサ32A、32B、32C、32Dを有するフォトセンサユニット34と各階に対応して昇降路の側壁に取り付けられた遮光板36とを含む。4個のフォトセンサ32A、32B、32C、32Dは、上下方向にこの順で、所定の間隔で設けられている。フォトセンサ32A、32B、32C、32Dは不図示のフレームに組み付けられており、当該フレームがかご(不図示)に取り付けられている。
【0008】
フォトセンサ32A、32B、32C、32Dは、いずれも基本的に同じ構成なので、これらを区別する必要のない場合は、アルファベットの添え字(A、B、C、D)を省略して説明する。
【0009】
フォトセンサ32は、図2(b)に示すように、発光素子322と受光素子324とが対向して設けられてなる透過型のフォトセンサであり、発光素子322と受光素子324の対向領域に相対的に進入する遮光板36を検出する構成となっている。発光素子322からの出射光を受光素子324が受光していない状態(すなわち、遮光板36を検出している状態)をフォトセンサ32がON状態にあるとする。一方、発光素子322からの出射光を受光素子324が受光している状態(すなわち、遮光板36を検出していない状態)をフォトセンサ32がOFF状態にあるとする。
【0010】
4個のフォトセンサ32A、32B、32C、32D全てがON状態であれば、かご床は着床ゾーン内にあると判定される。かご床が着床レベルから例えば10mmを超えて下がるとフォトセンサ32DがON状態からOFF状態に切り換わり、かご床が着床レベルから例えば10mmを超えて上がるとフォトセンサ32AがON状態からOFF状態に切り換わる。すなわち、本例において着床ゾーンは着床レベルを基準として上下方向に±10mmの範囲に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012−246113号公報
【特許文献2】特公昭57−15322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、目的階に停止したかごの床が着床ゾーンの範囲内にあることが確認されることを条件にかご扉は開かれる。すなわち、4個のフォトセンサ32A、32B、32C、32Dの全てがON状態であることを条件としてかご扉が開かれることとなる。
【0013】
ところで、かごは、上下方向(長さ方向)に伸縮性を有する主ロープで吊り下げられている関係上、乗客がかご内を移動したこと起因して、上下方向に振動する場合がある。この場合に、フォトセンサ32A、32Dの一方または両方がON状態とOFF状態とを繰返すことがある。そうすると、振動がある程度収束すると見込まれる所定時間(以下、「収束待ち時間」と言う。)を待って、4個のフォトセンサ32A、32B、32C、32DのすべてがON状態か否かを確認することとしている。
【0014】
そして、所定時間待っても、全てのフォトセンサ32A、32B、32C、32Dが継続してON状態にならない場合には、全てのフォトセンサ32A、32B、32C、32DがON状態になるように、巻上機を起動してかごを上昇または下降させるようにしている。ここで、かごがある目的階に一旦停止した後、次の目的階に向けて昇降する迄の間に、着床レベルに対してかごの上下方向の位置を補正することを以下「かご位置補正」と言う。
【0015】
このように、従来、かごが目的階に停止後、フォトセンサ32A、32Dの一方または両方がON状態とOFF状態とを繰返している場合には、収束待ち時間を経過した後でないと、かご位置補正ができない。このため、かごの目的階での停止からかご扉(乗場扉)が開かれるまでに時間を要することとなり、乗客へのサービスの低下を招来している。
【0016】
また、かご位置補正は、かご扉(乗場扉)が開かれている状態でも必要に応じてなされる。かごに乗客が乗り込むとその荷重で主ロープが伸びてかごが下がり、かごから乗客が降りると荷重が減る分、主ロープが縮んでかごが上がる。この場合に生じるかご床と乗場床(着床レベル)との段差が所定以上の大きさになると、当該段差の解消を目的として、かご位置補正がなされる。当該かご位置補正は、上記したのと同様、4個のフォトセンサ32A、32B、32C、32D各々のON、OFF状態を参照しながらなされるものの、かご床と乗場床との段差(ズレ)の大きさを正確に把握することは困難である。さらに、乗降中は乗客がかご内を移動することに起因してかごが上下に振動することによっても前記段差の大きさの把握を困難なものにしている。
【0017】
本発明は、上記した課題に鑑み、上下方向に振動しているかごの当該振動の中心位置(前記振動が収束したとした場合におけるかごの前記上下方向における位置)を把握することができ、もって、速やかにかご位置補正をし得るエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するため、本発明に係るエレベータは、上下方向に伸縮性を有する支持手段によって支持されたかごが、昇降路内を目的階まで昇降される構成とされたエレベータであって、前記昇降路内の上下方向における前記かごの位置を検出し、かご位置データとして出力するかご位置検出手段と、前記かごが前記目的階に停止中に、前記かご位置検出手段から一連に出力される複数のかご位置データから、前記支持手段の前記伸縮性に起因して上下方向に振動する前記かごの振動において続いて出現する2個の極大値と2個の極小値を推定する極値推定手段と、前記極値推定手段が推定した前記2個の極大値と前記2個の極小値から前記振動の中心位置を割り出すかご位置割出手段と、を有することを特徴とするエレベータ。
【0019】
また、前記極値推定手段は、かご位置検出手段から一連に出力されるかご位置データの大きさが増加から減少に転じる前後の複数のかご位置データの平均値を極大値と推定し、一連に出力されるかご位置データの大きさが減少から増加に転じる前後の複数のかご位置データの平均値を極小値と推定することを特徴とする。
【0020】
さらに、前記2個の極大値をU1、U2、前記2個の極小値をL1、L2とし、U1、U2、L1、L2は、前記かごの振動において、U1、L1、U2、L2の順に連続する極値であるとすると、前記かご位置割出手段は、前記振動の減衰比γをγ=(L2−L1)/(U1−U2)によって算出し、前記中心位置MをM=(γ・U2+L2)/(γ+1)によって算出することを特徴とする。
【0021】
また、さらに、前記かごが前記目的階まで昇降され、前記かごのかご床が乗場床に着床した後にかご扉および乗場扉が開かれて乗客が乗降する構成とされたエレベータであって、前記極値推定手段は、前記かごが前記目的階に停止後、前記かご扉および前記乗場扉が開かれるまでの間に前記2個の極大値と2個の極小値を推定することを特徴とする。
【0022】
あるいは、前記かごが前記目的階まで昇降され、前記かごのかご床が乗場床に着床した後にかご扉および乗場扉が開かれて乗客が乗降する構成とされたエレベータであって、
【0023】
前記極値検出手段は、前記かご扉および前記乗場扉が開かれている間に前記2個の極大値と2個の極小値を推定することを特徴とする。
【0024】
また、前記支持手段は、前記昇降路の上方から前記かごを吊り下げて支持する索状体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記の構成からなる本発明に係るエレベータによれば、かごが目的階に停止中に、かご位置を検出するかご位置検出手段から出力されるかご位置データから、上下方向に振動するかごの当該振動において続いて出現する2個の極大値U1、U2と2個の極小値L1、L2が推定され、前記極大値U1、U2と前記極小値L1、L2とから前記振動の中心位置が割り出されることとなる。すなわち、上下方向に振動しているかごの当該振動の中心位置(前記振動が収束したとした場合におけるかごの前記上下方向における位置)を把握することができるため、可能な限り速やかにかご位置補正をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係るエレベータの概略構成を示す図である。
図2】(a)は、着床検出装置を構成する遮光板と4個のフォトセンサの概略構成を示す斜視図であり、(b)は、前記フォトセンサの概略構成を示す平面図である。
図3】主として、主制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】前記主制御装置のROMに設けられた昇降テーブルの内容を示す図である。
図5】主として、横軸に時間を縦軸にかごの変位を採った振動波形を示すグラフである。
図6】前記主制御装置のRAM内に確保された極値記憶領域の内容を示す図である。
図7】前記主制御装置のCPUで実行されるプログラムの内の、かごの振動の中心位置を検出するプログラム部分の一部の内容を示すフローチャートである。
図8】上記プログラム部分の残りの一部の内容を示すフローチャートである。
図9】上記プログラムの内の、かご位置補正に関するプログラム部分の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るエレベータを実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
<全体構成>
図1に示すように、実施形態に係るエレベータ10は、昇降路12の上方に機械室14を備えたトラクション式エレベータであって、機械室14に設置された巻上機16の綱車18に掛けられた主ロープ20の一端部にかご22が連結され、他端部に釣合おもり24が連結された構成を有している。
【0028】
巻上機16は、電動機52(図1において不図示、図3を参照)を有しており、電動機52からの回転動力が、不図示の動力伝達機構を介し、綱車18に伝達されて、綱車18が回転駆動されると、綱車18に掛けられた主ロープ20に連結されているかご22と釣合おもり24が、それぞれに設けられた不図示のガイドレールに案内されて、昇降路12内を互いに反対向きに昇降する。巻上機16は、また、電動機52に併設された電磁ブレーキ(不図示)および綱車18の回転角を検出するロータリエンコーダ54(図3)を有している。ロータリエンコーダ54には、例えば、マルチターン型アブソリュートタイプのものを用いることができる。
【0029】
かご22の各停止階床の乗場Ha,Hb,Hcには、かご22に設けられたかご扉26に連動して開閉される乗場扉28a,28b,28cが設置されている。
【0030】
かご22には、フォトセンサユニット34が取り付けられており、昇降路12の側壁には、各停止階床の乗場Ha,Hb,Hcに対応して遮光板36a、36b、36cが取り付けられている。遮光板36a、36b、36cは、図2を用いて説明した遮光板36と同じ構成であるが、設置階で区別する場合は、アルファベットの添え字(a、b、c)を用いることとする。
【0031】
フォトセンサユニット34と遮光板36とを含む着床検出装置30は、図2を参照しながら詳細に説明したので、ここでの説明は省略する。
【0032】
エレベータ10は、また、昇降路12内の上下方向におけるかご22の位置を検出するかご位置検出手段として、アブソリュートタイプの磁気式リニアスケール38(以下、「磁気スケール38」と言う。)を備えている。
【0033】
磁気スケール38は、一端部から他端部に至る間の絶対位置(距離)情報を、0.5mmの分解能で、磁気パターン(磁気目盛り)として記録した記録テープである磁気テープ40と磁気テープ40から前記磁気目盛りを読み取る読取ユニット42とを含む。この磁気スケール38には、例えば、エルゴエレクトロニク株式会社製の「アブソリュート磁気スケール LIMAXシリーズ」など、公知のものを用いることができる。
【0034】
磁気テープ40は、昇降路12内で、長さ方向が上下方向となるように取り付けられている。本例では、昇降路12の天井12Aと昇降路12のピット床12Bとの間に、張架されている。
【0035】
この張架の態様としては、例えば、磁気テープ40の上端を、天井12Aに設けられたブラケット(不図示)に固定する一方、磁気テープ40の下端とピット床12Bに設けられたブラケット(不図示)とを引張コイルばね(不図示)で連結して、磁気テープ40に一定の張力が掛かった状態で掛け渡すようにすることが考えられる。
【0036】
また、引張コイルばねに代えて、磁気テープ40の下端に錘(不図示)を吊り下げることにより、一定の張力が掛かった状態で磁気テープ40を取り付けるようにしても構わない。
【0037】
張架に限らず、磁気テープ40は、例えば、かご20を上下方向に案内する上記したガイドレール(不図示)における、かご20の案内に支障をきたさない面に貼着しても構わない。
【0038】
本例において、磁気テープ40は、目盛りが下から上に目盛られた状態となる向き(すなわち、上側程、目盛りの値が大きくなる向き)に取り付けられている。なお、磁気テープ40を取り付ける向きは、この逆であっても構わない。
【0039】
読取ユニット42は、かご22に固定されている。なお、読取ユニット42のかご22に対する上下方向における固定位置は任意である。読取ユニット42のかご22に対する固定位置は、かご22が昇降路12内を昇降される際、読取ユニット42が、磁気テープ40に沿って移動でき、磁気テープ40に記録された磁気目盛りを読み取ることができるような位置であれば構わない。
【0040】
上記のようにして設けられた磁気スケール38において、読取ユニット42で読み取られる磁気目盛りの値が、読取時におけるかご22の昇降路12内の上下方向における絶対位置を指標する。すなわち、磁気スケール38によって、かご22の昇降路12内における上下方向の絶対位置を検出することができる。
【0041】
機械室14には、また、電動機52(図3)、前記電磁ブレーキ(不図示)、およびかご扉26を統括的に制御して、エレベータ10の円滑な運転を実現する主制御装置44が設置されている。
【0042】
主制御装置44は、図3に示すように、CPU46にROM48やRAM50が接続された構成を有している。
【0043】
ROM48には、CPU46が実行する各種の制御プログラム等が格納されている他、図4に示すように、昇降テーブル480が格納されている。昇降テーブル480は、かご22が着床する階(目的階)毎に、ロータリエンコーダの目標回転角および基準かご位置を記憶したテーブルである。目的階の各々はID(001、002、003、…)で識別される。
【0044】
目標回転角は、かご22の昇降制御において、CPU46により参照される。CPU46は、ロータリエンコーダ54からの出力値(回転角)が、目的階に対応する目標回転角(E1、E2、E3、…のいずれか)と一致するまで、電動機52を回転駆動させ、一致した状態で電動機52を停止させ、電磁ブレーキ(不図示)を締結させる。これにより、かご22は、目的階で停止されることとなる。目標回転角は、昇降路12内の上下方向におけるかご22の目標停止位置と一対一で対応しているため、目標回転角は、目標停止位置に他ならない。
【0045】
昇降テーブル480内の目標回転角の各々は、データ取得運転の際に格納される。データ取得運転では、実際にかご22を昇降させ、着床検出装置30によってかご22が検出されたときにロータリエンコーダ54が出力する各出力値(回転角)を昇降テーブル480に格納する。データ取得運転は、エレベータ10が建築物に設置されたとき、およびその後、定期的に行われ、昇降テーブル480の目標回転角は適時に更新される。
【0046】
基準かご位置は、目的階の各々においてかご22のかご床が対応する乗場の着床レベルに一致した状態で、磁気スケール38において読取ユニット42で読み取られる磁気目盛りの値である。
【0047】
RAM50は、後述するように、磁気スケール38の読取ユニット42が読み取った磁気目盛を「かご位置データ」として一時的に記憶する記憶領域を有しており、CPU46が各種制御プログラムを実行する際に用いるワークメモリとして機能する。
【0048】
主制御装置44とフォトセンサ32A、32B、32C、32D、磁気スケール38の読取ユニット42、およびかご扉26の開閉制御を実行するマイコン(不図示)等は、不図示のトラベリングケーブルを介して接続されている。
【0049】
主制御装置44は、磁気スケール38を用いたかご位置の検出と当該検出結果に基づくかご位置補正の処理を実行する。
【0050】
以下、かご位置の検出からかご位置補正までの一連の処理について説明する。
<振動するかごにおける振動の中心位置の割出処理>
かご位置補正をする際、かご22が上下方向に振動しておらず、静止しているときは、磁気スケール38で読み取られ、磁気スケール38(読取ユニット42)から出力されるかご位置データを用いることができる。すなわち、当該かご位置データとそのときの停止階に対応する基準かご位置(図4)との差分が、かご位置の補正距離となる。
【0051】
しかし、かご22が上下方向に振動している場合、磁気スケール38で読み取られたかご位置データは、かご22の上下振幅におけるどの位置かを特定できないため、当該一のかご位置データのみでは、正確なかご位置補正をすることができない。
【0052】
かご位置補正の目的から明らかなように、必要とするのは、振動が収束したとした場合におけるかご位置、すなわち、振動の中心位置である。
【0053】
以下、磁気スケール38で読み取られるかご位置データに基づいて主制御装置44で実行される前記中心位置を検出する処理の原理について、図5を参照しながら説明する。
【0054】
図5は、横軸に時間を、縦軸にかご22の変位を採った、振動波形を示すグラフである。ここで、かご22は減衰振動をしているものとし、その振動波形を実線で示す。また、減衰が無いとした場合の振動波形を正弦曲線とみなし、図5において、破線で示す。このような、減衰振動では、その2周期の間に極大点と極小点が交互に合計4個現れる。
【0055】
ここで、上記減衰振動における減衰比を「γ(=e-αt)」、中心位置を「M」、上記正弦曲線の振幅を「A」、角周波数を「ω」とする。また、当該減衰振動の2周期の間に現れる極点を、時系列順に、第1の極大点U1、第1の極小点L1、第2の極大点U2、第2の極小点L2とする。なお、これら極大点および極小点の極値にも同じ符号を用いることとする。すなわち、第1の極大値U1、第1の極小値L1、第2の極大値U2、第2の極小値L2とする。U1、L1、U2、L2の絶対値の大小関係は、|U1|>|L1|>|U2|>|L2|である。
【0056】
極大値U1,U2及び極小値L1,L2は、それぞれ、式(1)〜(4)で表される。
【0057】
U1=M+γAsinωt …(1)
【0058】
L1=M+γ2Asinωt …(2)
【0059】
U2=M+γ3Asinωt …(3)
【0060】
L2=M+γ4Asinωt …(4)
【0061】
極大点U1,U2では、「sinωt=1」になり、極小点L1,L2では、「sinωt=−1」になるので、式(1)〜(4)は、それぞれ、式(5)〜(8)のように表すことができる。
【0062】
U1=M+A・γ …(5)
【0063】
L1=M−A・γ2 …(6)
【0064】
U2=M+A・γ3 …(7)
【0065】
L2=M−A・γ4 …(8)
【0066】
ここで、
(L2−L1)/(U1−U2)
={(M−A・γ4)−(M−A・γ2)}/{(M+A・γ)−(M+A・γ3)}
={A・γ・(1−γ)}/{A・γ・(1−γ)}
=γ …(9)
【0067】
となる。よって、上記4個の極値U1、U2、L1、L2が把握できれば、上記減衰振動の減衰比γを求めることができる。
【0068】
また、
(γ・U2+L2)/(γ+1)
=(γ・M+A・γ+M−A・γ)/(γ+1)
={(γ+1)・M}/(γ+1)
=M …(10)
【0069】
となる。よって、減衰比γと極値U2、L2が把握できれば、中心位置Mを求めることができる。減衰比γは上記の通り極値U1、U2、L1、L2が把握できれば、求めることができるので、結局、4個の極値U1、U2、L1、L2が把握できれば、中心位置Mを求めることができるのである。
【0070】
<振動するかごにおける振動の極値の推定処理>
主制御装置44は、磁気スケール38(読取ユニット42)から所定の等時間間隔(例えば、約10msec)で出力されるかご位置データをモニターする。
【0071】
主制御装置44は、連続する6個のかご位置データの大小関係を比較し、かご位置データの値が3回連続して増加後、2回連続して減少した場合、この間に極大値が存するものと推定する。そして、前記6個の内、最初の1個を除く5個のかご位置データの平均値を極大値とみなす(推定する)。
【0072】
また、主制御装置44は、連続する6個のかご位置データの大小関係を比較し、かご位置データの値が3回連続して減少後、2回連続して増加した場合、この間に極小値が存するものと推定する。そして、前記6個の内、最初の1個を除く5個のかご位置データの平均値を極小値とみなす(推定する)。
【0073】
続いて、主制御装置44で実行される、かご位置の検出からかご位置補正までの一連の処理(プログラム)について説明する。
【0074】
当該一連の処理は、上述したように、かご22がある目的階に一旦停止した後、次の目的階に向けて昇降する迄の間に実行される。当該間における実行のタイミングとしては、(イ)かご22が目的階に停止後、かご扉26(乗場扉28)が開かれるまでの間、(ロ)かご扉26(乗場扉28)が開かれている間がある。
【0075】
<主制御装置による、振動するかごにおける振動の中心位置検出処理>
上記の手法に基き主制御装置44が実行する中心位置検出処理に関するプログラムの内容を説明する。当該プログラムの実行のため、主制御装置44のRAM50(図3)は、図6に示すように、第1の極大値U1、第2の極大値U2、第1の極小値L1、および第2の極小値L2を記憶する極値記憶領域502有する。また、RAM50には、極値記憶領域502に極大値を記憶した回数を記録するカウンタとして変数「CU」、極小値を記憶した回数を記録するカウンタとして変数「CL」が設定されている(いずれも不図示)。
【0076】
図7図8は主制御装置44が実行する中心値処理検出に関するプログラム部分の内容を示すフローチャートである。
【0077】
主制御装置44は、先ず、RAM50内の極値記憶領域502(図6)をクリアする(ステップS1)。続いて、CPU46は、カウンタ「CU」、「CL」をリセットし(ステップS2)、内部フラグfをリセットする(ステップS3)。内部フラグfは、後述する説明から理解されるように、当該プログラムの開始後に現れる極大値と極小値の内、先ず、極大値を検出するために用いられる。
【0078】
そして、CPU46は、読取ユニット42から出力されるかご位置データを受信し(ステップS4)、f=0かどうかを判定する。
【0079】
f=0の場合、CPU46は、連続する6個のかご位置データの大小関係を比較し、かご位置データの値が3回連続して増加後、2回連続して減少したかどうかを判断する(ステップS6)。以下、「かご位置データの値が3回連続して増加後、2回連続して減少する」ことを、「極大値条件」と称することとする。なお、極大値条件が成立するかどうかの最初の判断は、当該プログラム起動後、6個のかご位置データを受信した後、すなわち、ステップS4〜ステップS6の処理を6回繰返した後になされる。
【0080】
CPU46は、極大値条件が成立すると判断した場合は、一連に受信した6個のかご位置データの内、最初の1個を除く5個のかご位置データの算術平均値を極値記憶領域502(図6)の第1の極大値格納領域に記憶する(ステップS7)。すなわち、前記算術平均値を極大値とみなして(推定して)、極値記憶領域502に記憶するのである。よって、ステップS6、S7は、磁気スケール38から出力される複数のかご位置データから極大値を推定する極大値推定手段として機能する。
【0081】
ステップS7が終了すると、カウンタ「CU」を一つインクリメントし(ステップS8)、次に検出すべきは極小値であることを示すため内部フラグfをセットする(ステップS9)。
【0082】
CPU46は、CU≧2かつCL≧2かどうか、すなわち、極値記憶領域502に4個の極値U1、U2、L1、L2が記憶されたかどうかを判定し(ステップS10)、まだ前記4個の極値が記憶されていないと判定した場合は(ステップS10でNO)、ステップS4に戻る。
【0083】
ステップS4でかご位置データを受信すると、CPU46は、f=0かどうかを判定し(ステップS5)、f=0でない(f=1)と判定した場合(ステップS5でNO)、すなわち、極値記憶領域502に、直前に記憶した極値が極大値(ステップS9)であると判定した場合は、ステップS11に進む。
【0084】
ステップS11では、CPU46は、連続する6個のかご位置データの大小関係を比較し、かご位置データの値が3回連続して減少後、2回連続して増加したかどうかを判断する。以下、「かご位置データの値が3回連続して減少後、2回連続して増加する」ことを、「極小値条件」と称することとする。
【0085】
極小値条件は成立しないと判断すると(ステップS11でNO)、ステップS4に戻り、次のかご位置データを受信する。
【0086】
一方、極小値条件が成立すると判断した場合は(ステップS11でYES)、一連に受信した6個のかご位置データの内、最初の1個を除く5個のかご位置データの算術平均値を極値記憶領域502(図6)の第1の極小値格納領域に記憶する(ステップS12)。すなわち、前記算術平均値を極小値とみなして(推定して)、極値記憶領域502に記憶するのである。よって、ステップS11、S12は、磁気スケール38から出力される複数のかご位置データから極小値を推定する極小値推定手段として機能する。
【0087】
ステップS12が終了すると、カウンタ「CL」を一つインクリメントし(ステップS13)、次に検出すべきは極大値であることを示すため内部フラグfをリセットして(ステップS14)、ステップS10へ進む。
【0088】
以降、CPU46は、極値記憶領域502に4個の極値(U1、U2、L1、L2)が記憶されたと判定する(ステップS10でYES)まで、ステップS4〜S9、ステップS11〜S14を繰り返す。
【0089】
極値記憶領域502に4個の極値(U1、U2、L1、L2)が記憶されたと判定する(ステップS10でYES)と、図8に示すステップS21に進む。
【0090】
CPU46は、極値記憶領域502に記憶されている、第1の極大値U1、第2の極大値U2、第1の極小値L1、および第2の極小値L2から、次式
【0091】
γ=(L2−L1)/(U1−U2) …(9)
【0092】
によって、かご22の振動の減衰比γを算出し(ステップS21)、
【0093】
減衰比γ、第2の極大値U2、および第2の極小値L2から、次式
【0094】
M=(γ・U2+L2)/(γ+1) …(10)
【0095】
によって中心位置Mを算出する(ステップS22)。
【0096】
よって、ステップS21、S22は、第1の極大値U1、第2の極大値U2、第1の極小値L1、および第2の極小値L2を式(9)、式(10)に代入することにより、中心位置Mを割り出すかご位置割出手段として機能する。
【0097】
<かご位置補正>
中心位置Mを割り出すと(ステップS22)、主制御装置44は、巻上機16を制御してかご位置補正を実行する。
【0098】
主制御装置44において実行されるかご位置補正に関するプログラムの内容について、図9に示すフローチャートに基き説明する。
【0099】
主制御装置44のCPU46(図3)は、昇降テーブル480(図4)を参照し、その時点での停止階(目的階)に対応する基準かご位置から中心位置Mを減じて、差分ΔFを算出する(ステップS31)。
【0100】
次に、CPU46は、巻上機16の電磁ブレーキ(不図示)を解除し(ステップS32)、ロータリエンコーダ54からの出力値を参照しながら、ΔFに相当する回転角分、電動機52を駆動する(ステップS33)。これにより、かご22は、ΔFだけ上方または下方に移動される(昇降される)こととなり、着床レベルに対するかご床の上下方向におけるズレ(段差)が可能な限り解消されることとなる。
【0101】
最後に電動機52の電磁ブレーキ(不図示)が締結されて(ステップS34)、一連のプログラムが終了する。
【0102】
以上説明したように、本発明に係る実施形態によれば、かご22が目的階に停止中に、かご位置を検出する磁気スケール38から出力されるかご位置データから、上下方向に振動するかご22の当該振動において続いて出現する2個の極大値U1、U2と2個の極小値L1、L2が推定され、前記極大値U1、U2と前記極小値L1、L2とから前記振動の中心位置Mが割り出されることとなる。すなわち、上下方向に振動しているかごの当該振動の中心位置(前記振動が収束したとした場合におけるかご床の着床レベルとのズレ量)を把握することができるため、可能な限り速やかにかご位置補正をすることができる。
【0103】
(変形例1)
上記実施形態では、極大値条件が成立すると(ステップS6でYES)、一連に受信した6個のかご位置データの内、最初の1個を除く5個のかご位置データの算術平均値を極大値とみなした(推定した)が(ステップS7)、これに限らず、前記6個のかご位置データの内、増加から減少に転じる直前のかご位置データ(すなわち、最初から4個目のかご位置データ)をピックアップし、これを極大値と推定しても構わない。
【0104】
同じく、上記実施形態では、極小値条件が成立すると(ステップS11でYES)、最初の1個を除く5個のかご位置データの算術平均値を極小値とみなした(推定した)が(ステップS12)、これに限らず、前記6個のかご位置データの内、減少から増加に転じる直前のかご位置データ(すなわち、最初から4個目のかご位置データ)をピックアップし、これを極小値と推定しても構わない。
【0105】
すなわち、上記実施形態では、式(9)、式(10)に代入する第1の極大値、第2の極大値、第1の極小値、および第2の極小値の各々には、磁気スケール38で検出した複数個(本例では、5個)のかご位置データの算術平均(図7、ステップS7、S12)を用いたが、式(9)、式(10)に代入する4個の極値の各々は、磁気スケールで検出した一のかご位置データをそのまま用いることとしても構わないのである。つまり、磁気スケールから一連に出力されるかご位置データから、極値に相当すると見なされるかご位置データをピックアップし、ピックアップしたかご位置データ(極値)を式(9)、式(10)に代入するのである。
【0106】
(変形例2)
極値をピックアップする手段としては、変形例1の他に、例えば、特許文献2(特公昭57−15322公報)の第2図に記載された回路構成の一部を用いることができる。ただし、特許文献2の前記回路構成でピックアップされるのは、連続する3個の極値なので、連続する4個の極値を得るためには、特許文献2の三つのゲート回路21、22、23に四つ目のゲート回路を追加し、三つのレジスタ18、19、20に四つ目のレジスタを追加することとする。
【0107】
また、特許文献2の検出器15として、リニアスケール、ロータリエンコーダ等を用いることができるところ(特許文献2の第3欄20行目)、例えば、リニアスケールとして、エルゴエレクトロニク株式会社製の「インクリメンタル磁気スケール EMIX/LMIXシリーズ」など、公知のものを用いることとする。
【0108】
上記の構成によれば、上下方向に減衰振動するかごの当該振動における4個の極値(第1の極大値、第1の極小値、第2の極大値、および第2の極小値)の各々がピックアップされて、それぞれ4個のレジスタに記憶されることとなるので、記憶された当該4個の極値から、式(9)、式(10)によって中心位置Mを算出することができる。
【0109】
なお、特許文献2の第2図に示す回路構成で得られる極値は、検出器15として用いるリニアスケールの分解能や当該リニアスケールから出力されるかご位置データの時間間隔を考えると、4個のレジスタ各々に記憶される極値は、かごの上下振動における真の極値とは限らず、あくまで推定値であると考えられる。よって、当該回路構成は、極値推定手段として機能するものである。
【0110】
以上、本発明に係るエレベータを実施形態に基いて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
【0111】
(1)上記実施形態において、図7に示すステップS6、S11では、磁気スケール38から一連に出力されるかご位置データの大きさが増加から減少、または減少から増加に転じる前後の5個のかご位置データの平均値を極値と推定したが、推定に用いるかご位置データの個数は5個に限らず任意である。極値の推定に用いるかご位置データの個数は、用いる磁気スケールの分解能、出力周波数等により適宜選択される。
【0112】
(2)上記実施形態では、かごの昇降路内の上下方向における位置の検出手段として磁気スケールを用いたが、かご位置検出手段はこれに限らず、例えば、以下のものを用いても構わない。
【0113】
(a)レーザ距離センサ
TOF(Time Of Flight)方式(光源から出射された光(レーザ光)が測定対象物により反射されて戻ってくるまでの時間を計測し、演算処理により、光源から測定対象物までの距離に換算する測定方式)のレーザ距離センサを用いても構わない。
【0114】
レーザ距離センサは、昇降路12(図1)の天井12Aまたはピット床12Bに設置する。そして、測定対象物として、かご22の適当な位置にレーザ反射板を固定する。
【0115】
これにより、かご22の昇降路の上下方向のおける位置が、天井12Aまたはピット床12Bに設置されたレーザ距離センサからの距離として測定されるので、当該距離をかご位置データとして用いることができる。
【0116】
(b)ロータリエンコーダ
上記実施形態では省略したが、通常、エレベータに備わっている調速装置にロータリエンコーダを以下のように設けて、当該ロータリエンコーダをかご位置検出手段として用いても構わない。
【0117】
調速装置は、機械室に設置されたガバナシーブと昇降路のピットに設けられたテンションシーブとの間にガバナロープがエンドレスに張架された構成を有している。ガバナロープには、かごに付設された非常止め装置を作動させるための非常止めレバーが固定されている。
【0118】
かごが昇降されると、非常止めレバーが固定されているガバナロープが走行し、ガバナロープが掛けられたガバナシーブとテンションシーブはかご18の昇降速度と同じ速度(周速)で回転される。
【0119】
ここで、かごの昇降位置(昇降路における上下方向の位置)とガバナシーブおよびテンションシーブの回転角とは一対一で対応する。
【0120】
そこで、ガバナシーブまたはテンションシーブの回転角を検出するロータリエンコーダを設けて、当該ロータリエンコーダの出力値(かご位置データ)からかごの昇降路内の上下方向における位置を特定するのである。
【0121】
(3)上記実施形態では、本発明をロープ式エレベータに適用した例に基づいて説明したが、本発明はロープ式に限らず、油圧式エレベータにも適用することができる。
【0122】
油圧式エレベータは、言うまでもなく、タンク内の作動油を油圧ジャッキのシリンダ内に送り、プランジャを押し上げてかごを上昇させ、シリンダ内の作動油をタンクに戻すことでかごを下降させるエレベータである。
【0123】
かごは油圧ジャッキで支持されており、シリンダ内の作動油は上下方向に伸縮性を有するため、支持手段に主ロープを用いた上記実施形態ほどではないにしろ、乗客の乗降等によりかごが上下方向に変位し、乗客がかご内を歩くことに起因してかごが上下に振動することがあるので、本発明を適用する利点はあるからである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の係るエレベータは、例えば、目的階に停止中に、着床レベルに対してかごの上下方向の位置を補正するエレベータに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0125】
10 エレベータ
20 主ロープ
22 かご
38 磁気式リニアスケール
44 主制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9