(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、前記一対のビード部間に少なくとも1層のカーカス層が装架され、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、前記サイドウォール部にサイドウォールゴム層及びリムクッションゴム層が前記カーカス層の外側に配置され、前記カーカス層が前記ビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス層と前記サイドウォール部で前記カーカス層の外側に配置されたゴム層との間に該ゴム層に当接しながらタイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダが埋設され、該トランスポンダが前記カーカス層の巻き上げ部の端末からタイヤ径方向に10mm以上離間して配置され、前記トランスポンダの中心が前記サイドウォールゴム層、前記リムクッションゴム層及び前記カーカス層の各スプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間して配置されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
前記サイドウォール部においてタイヤ幅方向最外側に位置する前記カーカス層の巻き上げ部の端末が前記ビードフィラーの上端からタイヤ径方向外側に5mmの位置と前記ベルト層の端末からタイヤ径方向内側に15mmの位置との間に配置され、前記トランスポンダが前記ビードコアの上端からタイヤ径方向外側に15mm以上離間して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、トランスポンダの通信性を確保しながら、タイヤの操縦安定性及び耐久性を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、前記一対のビード部間に少なくとも1層のカーカス層が装架され、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、
前記サイドウォール部にサイドウォールゴム層及びリムクッションゴム層が前記カーカス層の外側に配置され、前記カーカス層が前記ビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層と前記サイドウォール部で前記カーカス層の外側に配置されたゴム層との間に該ゴム層に当接しながらタイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダが埋設され、該トランスポンダが前記カーカス層の巻き上げ部の端末からタイヤ径方向に10mm以上離間して配置され
、前記トランスポンダの中心が前記サイドウォールゴム層、前記リムクッションゴム層及び前記カーカス層の各スプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間して配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、カーカス層が各ビード部のビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤにおいて、カーカス層とサイドウォール部でカーカス層の外側に配置されたゴム層との間にゴム層に当接しながらタイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダが埋設され、トランスポンダはカーカス層の巻き上げ部の端末からタイヤ径方向に10mm以上離間して配置されているので、トランスポンダの配置によってカーカスラインを乱すことがなく、タイヤの操縦安定性を改善することができる。また、金属干渉が生じにくく、トランスポンダの通信性を確保することができる。トランスポンダとカーカス層の巻き上げ部の端末との距離が極端に小さいと、応力集中が発生してタイヤの耐久性が悪化することがあるが、上述したように当該距離を確保することで、タイヤの耐久性を改善することができる。
【0007】
本発明の空気入りタイヤにおいて、サイドウォール部においてタイヤ幅方向最外側に位置するカーカス層の巻き上げ部の端末はビードフィラーの上端からタイヤ径方向外側に5mmの位置とベルト層の端末からタイヤ径方向内側に15mmの位置との間に配置され、トランスポンダはビードコアの上端からタイヤ径方向外側に15mm以上離間して配置されていることが好ましい。サイドウォール部においてタイヤ幅方向最外側に位置するカーカス層の巻き上げ部の端末が上述した領域にあることで、タイヤの耐久性を効果的に改善することができる。また、トランスポンダがビードコアの上端からタイヤ径方向外側に15mm以上離間して配置されていることで、金属干渉が生じにくく、トランスポンダの通信性を十分に確保することができる。
【0008】
トランスポンダの中心はタイヤ構成部材のスプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間して配置されていることが好ましい。これにより、タイヤの耐久性を効果的に改善することができる。
【0009】
トランスポンダの断面中心とタイヤ外表面との距離は2mm以上であることが好ましい。これにより、タイヤの耐久性を効果的に改善することができると共に、タイヤの耐外傷性を改善することができる。
【0010】
トランスポンダは被覆層により被覆され、被覆層の比誘電率は7以下であることが好ましい。これにより、トランスポンダが被覆層により保護され、トランスポンダの耐久性を改善することができると共に、トランスポンダの電波透過性を確保し、トランスポンダの通信性を効果的に改善することができる。
【0011】
トランスポンダは被覆層により被覆され、被覆層の厚さは0.5mm〜3.0mmであることが好ましい。これにより、タイヤ外表面に凹凸を生じさせることなく、トランスポンダの通信性を効果的に改善することができる。
【0012】
トランスポンダはデータを記憶するIC基板とデータを送受信するアンテナとを有し、アンテナは螺旋状であることが好ましい。これにより、走行時におけるタイヤの変形に対して追従することができ、トランスポンダの耐久性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜4は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
【0016】
一対のビード部3間には、複数本のカーカスコードをラジアル方向に配列してなる少なくとも1層(
図1では1層)のカーカス層4が装架されている。カーカス層4を構成するカーカスコードとしては、ナイロンやポリエステル等の有機繊維コードが好ましく使用される。各ビード部3には環状のビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上に断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0017】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4のタイヤ外周側には、複数層(
図1では2層)のベルト層7が埋設されている。ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。
【0018】
ベルト層7のタイヤ外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層(
図1では2層)のベルトカバー層8が配置されている。
図1において、タイヤ径方向内側に位置するベルトカバー層8はベルト層7の全幅を覆うフルカバーを構成し、タイヤ径方向外側に位置するベルトカバー層8はベルト層7の端部のみを覆うエッジカバー層を構成している。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0019】
上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4の両端末4eは、各ビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返され、ビードコア5及びビードフィラー6を包み込むように配置されている。カーカス層4は、トレッド部1から各サイドウォール部2を経て各ビード部3に至る部分である本体部4Aと、各ビード部3においてビードコア5の廻りに巻き上げられて各サイドウォール部2側に向かって延在する部分である巻き上げ部4Bとを含む。
【0020】
また、トレッド部1にはキャップトレッドゴム層11が配置され、サイドウォール部2にはサイドウォールゴム層12が配置され、ビード部3にはリムクッションゴム層13が配置されている。サイドウォール部2でカーカス層4の外側に配置されたゴム層10は、サイドウォールゴム層12とリムクッションゴム層13とを含む。
【0021】
また、上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4とゴム層10との間には、ゴム層10に当接するようにトランスポンダ20が埋設されている。即ち、トランスポンダ20は、タイヤ幅方向の配置領域として、カーカス層4とサイドウォールゴム層12又はリムクッションゴム層13との間に当該ゴム層に当接しながら配置されている。また、トランスポンダ20は、タイヤ径方向の配置領域として、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eからタイヤ径方向に10mm以上離間して配置されている。また、トランスポンダ20はタイヤ周方向に沿って延在している。トランスポンダ20は、タイヤ周方向に対して−10°〜10°の範囲で傾斜するように配置しても良い。
【0022】
なお、
図1及び
図2の実施形態では、トランスポンダ20がカーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eからタイヤ径方向内側に10mm以上離間して配置された例を示したが、これに限定されるものではなく、トランスポンダ20がカーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eからタイヤ径方向外側に10mm以上離間して配置されていても良い。即ち、本発明では、トランスポンダ20がカーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eからタイヤ径方向に10mm以上離間して配置されていれば良い。また、
図1及び
図2の実施形態では、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eがサイドウォール部2の中腹に配置された例を示したが、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eがビードコア5の側方に配置されていても良い。このようなロータンナップ構造において、トランスポンダ20は、カーカス層4(より具体的にはビードフィラー6)とサイドウォールゴム層12又はリムクッションゴム層13との間に当該ゴム層に当接しながら配置されていても良い。
【0023】
トランスポンダ20として、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いることができる。トランスポンダ20は、
図5(a),(b)に示すにように、データを記憶するIC基板21とデータを非接触で送受信するアンテナ22とを有している。このようなトランスポンダ20を用いることで、適時にタイヤに関する情報を書き込み又は読み出し、タイヤを効率的に管理することができる。なお、RFIDとは、アンテナ及びコントローラを有するリーダライタと、IC基板及びアンテナを有するIDタグから構成され、無線方式によりデータを交信可能な自動認識技術である。
【0024】
トランスポンダ20の全体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、
図5(a),(b)に示すにように柱状や板状のものを用いることができる。特に、
図5(a)に示す柱状のトランスポンダ20を用いた場合、タイヤの各方向の変形に対して追従することができるので好適である。この場合、トランスポンダ20のアンテナ22は、IC基板21の両端部の各々から突出し、螺旋状を呈している。これにより、走行時におけるタイヤの変形に対して追従することができ、トランスポンダ20の耐久性を改善することができる。更に、アンテナ22の長さを適宜変更することにより、通信性を確保することができる。
【0025】
上述した空気入りタイヤでは、カーカス層4とサイドウォール部2でカーカス層4の外側に配置されたゴム層10との間にゴム層10に当接しながらタイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダ20が埋設され、トランスポンダ20はカーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eからタイヤ径方向に10mm以上離間して配置されているので、トランスポンダ20の配置によってカーカスラインを乱すことがなく、タイヤの操縦安定性を改善することができる。また、金属干渉が生じにくく、トランスポンダ20の通信性を確保することができる。トランスポンダ20とカーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eとの距離が極端に小さいと、応力集中が発生してタイヤの耐久性が悪化することがあるが、上述したように当該距離を確保することで、タイヤの耐久性を改善することができる。
【0026】
上記空気入りタイヤにおいて、サイドウォール部2においてタイヤ幅方向最外側に位置するカーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eは、ビードフィラー6の上端6eからタイヤ径方向外側に5mmの位置P1と、ベルト層7の端末7eからタイヤ径方向内側に15mmの位置P2との間に配置され、トランスポンダ20はビードコア5の上端5eからタイヤ径方向外側に15mm以上離間して配置されていると良い。即ち、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eは
図2に示す領域S1に配置され、トランスポンダ20は
図2に示す位置P3よりタイヤ径方向外側であって領域S2を除く領域に配置されていると良い。但し、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eは、タイヤ径方向位置の上限として位置P2が設定されているので、トランスポンダ20のタイヤ径方向位置の上限は、それに応じて位置P2よりタイヤ径方向外側に10mmの位置(言い換えれば、ベルト層7の端末7eからタイヤ径方向内側に5mmの位置)とすることが良い。
【0027】
上述した空気入りタイヤでは、サイドウォール部2においてタイヤ幅方向最外側に位置するカーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eが領域S1に配置された場合、タイヤの耐久性を効果的に改善することができる。また、トランスポンダ20が位置P3よりタイヤ径方向外側に配置された場合、金属干渉が生じにくく、トランスポンダの通信性を十分に確保することができる。ここで、トランスポンダ20が位置P3よりタイヤ径方向内側に配置されていると、リムフランジとの金属干渉が発生し、トランスポンダ20の通信性が低下する傾向がある。一方、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eが、位置P1よりタイヤ径方向内側或いは位置P2よりタイヤ径方向外側に配置されると、タイヤの耐久性が悪化する傾向がある。
【0028】
図3に示すように、タイヤ周上には、タイヤ構成部材の端部同士が重ねられてなる複数のスプライス部がある。
図3には各スプライス部のタイヤ周方向の位置Qが示されている。トランスポンダ20の中心は、タイヤ構成部材のスプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間して配置されていることが好ましい。即ち、トランスポンダ20は、
図3に示す領域S3に配置されていると良い。具体的には、トランスポンダ20を構成するIC基板21が位置Qからタイヤ周方向に10mm以上離間していると良い。更には、アンテナ22を含むトランスポンダ20の全体が位置Qからタイヤ周方向に10mm以上離間していることがより好ましく、被覆ゴムにより被覆された状態のトランスポンダ20の全体が位置Qからタイヤ周方向に10mm以上離間していることが最も好ましい。また、トランスポンダ20と離間して配置するタイヤ構成部材として、トランスポンダ20と隣接して配置されるサイドウォールゴム層12又はリムクッションゴム層13、或いはカーカス層4であることが好ましい。このようにタイヤ構成部材のスプライス部から離間させてトランスポンダ20を配置することで、タイヤの耐久性を効果的に改善することができる。
【0029】
なお、
図3の実施形態では、各タイヤ構成部材のスプライス部のタイヤ周方向の位置Qが等間隔に配置された例を示したが、これに限定されるものではない。タイヤ周方向の位置Qは任意の位置に設定することができ、いずれの場合であってもトランスポンダ20は各タイヤ構成部材のスプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間するように配置される。
【0030】
図4に示すように、トランスポンダ20の断面中心とタイヤ外表面との距離dは2mm以上であることが好ましい。このようにトランスポンダ20とタイヤ外表面とを離間させることで、タイヤの耐久性を効果的に改善することができると共に、タイヤの耐外傷性を改善することができる。
【0031】
また、トランスポンダ20は被覆層23により被覆されていると良い。この被覆層23は、トランスポンダ20の表裏両面を挟むようにしてトランスポンダ20の全体を被覆する。被覆層23は、サイドウォールゴム層12又はリムクッションゴム層13を構成するゴムと同じ物性を有するゴムで構成しても良く、異なる物性を有するゴムで構成しても良い。このようにトランスポンダ20が被覆層23により保護されていることで、トランスポンダ20の耐久性を改善することができる。
【0032】
上記空気入りタイヤにおいて、トランスポンダ20が被覆層23により被覆された状態で、被覆層23の比誘電率は7以下であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。このように被覆層23の比誘電率を適度に設定することで、トランスポンダ20が電波を放射する際の電波透過性を確保し、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。なお、被覆層23を構成するゴムの比誘電率は、常温において860MHz〜960MHzの比誘電率である。ここで、常温はJIS規格の標準状態に準拠し、23±2℃、60%±5%RHである。当該ゴムは23℃、60%RHで24時間処理された後に比誘電率が計測される。上述した860MHz〜960MHzの範囲は、現状のUHF帯のRFIDの割り当て周波数に該当するが、上記割り当て周波数が変更された場合、その割り当て周波数の範囲の比誘電率を上記の如く規定すれば良い。
【0033】
また、トランスポンダ20が被覆層23により被覆された状態で、被覆層23の厚さtは0.5mm〜3.0mmであることが好ましく、1.0mm〜2.5mmであることがより好ましい。ここで、被覆層23の厚さtは、トランスポンダ20を含む位置でのゴム厚さであり、例えば、
図4に示すようにトランスポンダ20の中心を通ってタイヤ外表面と直交する直線上での厚さt1と厚さt2を合計したゴム厚さである。このように被覆層23の厚さtを適度に設定することで、タイヤ外表面に凹凸を生じさせることなく、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。ここで、被覆層23の厚さtが0.5mmより薄いと、トランスポンダ20の通信性の改善効果を得ることができず、逆に被覆層23の厚さtが3.0mmを超えると、タイヤ外表面に凹凸が生じ、外観上好ましくない。なお、被覆層23の断面形状は、特に限定されるものではないが、例えば、三角形や長方形、台形、紡錘形を採用することができる。
図4の被覆層23では略紡錘形の断面形状を有している。
【0034】
図6は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの変形例を示すものである。
図6において、
図1〜
図4と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
【0035】
図6に示すように、本実施形態では2層のカーカス層4を有している。カーカス層4は、トレッド部1においてタイヤ径方向内側に位置する内周側カーカス層41と、トレッド部1においてタイヤ径方向外側に位置する外周側カーカス層42とを含んでいる。この場合、トランスポンダ20は、内周側カーカス層41の巻き上げ部41Bの端末41e及び外周側カーカス層42の巻き上げ部42Bの端末42eのそれぞれからタイヤ径方向に10mm以上離間して配置されている。また、サイドウォール部2においてタイヤ幅方向最外側に位置する内周側カーカス層41の巻き上げ部41Bの端末41eは領域S1に配置され、トランスポンダ20は位置P3よりタイヤ径方向外側であって領域S2及び領域S4を除く領域に配置されていると良い。
【実施例】
【0036】
タイヤサイズ265/40ZR20で、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、一対のビード部間にカーカス層が装架され、トレッド部におけるカーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、カーカス層がビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダが埋設され、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向、タイヤ径方向及びタイヤ周方向)、巻き上げ部の端末位置、トランスポンダとタイヤ外表面の距離、被覆層の比誘電率、被覆層の厚さ、トランスポンダの形態を表1及び表2のように設定した比較例1〜5及び実施例1〜18のタイヤを製作した。
【0037】
なお、表1及び表2において、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向)が「X」の場合、トランスポンダがビードフィラーとカーカス層との間に配置され、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向)が「Y」の場合、トランスポンダがカーカス層とサイドウォールゴム層との間にサイドウォールゴム層に当接して配置され、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向)が「Z」の場合、トランスポンダがカーカス層とリムクッションゴム層との間にリムクッションゴム層に当接して配置されていることを示す。トランスポンダの位置(タイヤ径方向)は、カーカス層の巻き上げ部の端末からタイヤ径方向に測定された距離[mm]を示す。トランスポンダの位置(タイヤ周方向)は、トランスポンダの中心からタイヤ構成部材のスプライス部までのタイヤ周方向に測定された距離[mm]を示す。また、表1及び表2において、巻き上げ部の端末位置は、
図7に示すA〜Eのそれぞれの位置に対応する。
図7では巻き上げ部の端末位置が「C」の例を使用している。
【0038】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、タイヤ評価(操縦安定性、耐久性、耐外傷性及び外観性)並びにトランスポンダ評価(通信性及び耐久性)を実施し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
【0039】
操縦安定性(タイヤ):
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付けて試験車両に装着し、テストドライバーによるテストコースでの官能評価を実施した。評価結果は、非常に良好である場合を「◎(優)」で示し、良好である場合を「○(良)」で示し、若干劣る場合を「△(可)」とする3段階で示した。
【0040】
耐久性(タイヤ及びトランスポンダ):
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付け、空気圧120kPa、最大負荷荷重に対して102%、走行速度81kmの条件でドラム試験機にて走行試験を実施した後、タイヤに故障が発生した際の走行距離を測定した。評価結果は、走行距離が6480kmに達した場合を「◎(優)」で示し、走行距離が4050km以上6480km未満の場合を「○(良)」で示し、走行距離が3240km以上4050km未満の場合を「△(可)」で示し、走行距離が3240km未満の場合を「×(不可)」の4段階で示した。更に、走行終了後に各試験タイヤのタイヤ外表面を目視し、タイヤの故障がトランスポンダを起点とするものであるか否かを確認した。評価結果はその故障の有無を示した。
【0041】
耐外傷性(タイヤ):
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧230kPa、走行速度20km/hの条件で、高さ100mmの縁石に接触させながら走行するという走行試験を実施した。走行後に目視でタイヤ外表面の破損の有無を確認した。評価結果は、タイヤ外表面の破損の有無を示した。
【0042】
外観性(タイヤ):
各試験タイヤについて、トランスポンダの配置箇所に対応するタイヤ外表面を目視で確認した。評価結果は、タイヤ外表面においてトランスポンダの配置に起因する凹凸がなかった場合を「良好」とし、凹凸があった場合を「不良」として示した。
【0043】
通信性(トランスポンダ):
各試験タイヤについて、リーダライタを用いてトランスポンダとの通信作業を実施した。具体的には、リーダライタにおいて出力250mW、搬送波周波数860MHz〜960MHzとして通信可能な最長距離を測定した。評価結果は、通信距離500mm以上の場合を「◎(優)」で示し、通信距離が150mm以上500mm未満の場合を「○(良)」で示し、通信距離が150mm未満の場合を「△(可)」の3段階で示した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
この表1及び表2から判るように、実施例1〜18の空気入りタイヤは、タイヤの操縦安定性とタイヤの耐久性とトランスポンダの通信性がバランス良く改善されていた。実施例9の空気入りタイヤは、トランスポンダとタイヤ外表面の距離を短く設定したので、タイヤの耐外傷性が低下した。実施例17の空気入りタイヤは、トランスポンダを被覆する被覆層の厚さを厚く設定したので、タイヤの外観性が低下した。実施例18の空気入りタイヤは、柱状のトランスポンダを用いたので、トランスポンダの耐久性が向上し、トランスポンダを起点とする故障が無かった。
【0047】
一方、比較例1においては、トランスポンダがビードフィラーとカーカス層との間に配置されていたため、タイヤの操縦安定性が悪化した。比較例1〜3においては、トランスポンダがカーカス層の巻き上げ部の端末位置と同じ高さに配置されていたため、タイヤの耐久性が悪化した。比較例4においては、トランスポンダとカーカス層の巻き上げ部の端末位置との離間距離が十分に確保されていなかったため、タイヤの耐久性が悪化した。比較例5においては、トランスポンダとカーカス層の巻き上げ部の端末位置との離間距離が確保されていたが、トランスポンダがビードフィラーとカーカス層との間に配置されていたため、タイヤの操縦安定性が悪化した。
【解決手段】カーカス層4が各ビード部のビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤにおいて、カーカス層4とサイドウォール部でカーカス層4の外側に配置されたゴム層との間に該ゴム層に当接しながらタイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダ20が埋設され、トランスポンダ20はカーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eからタイヤ径方向に10mm以上離間して配置されている。