特許第6683310号(P6683310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6683310エンボスを有する布地の製造方法及びエンボスを有する布地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6683310
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】エンボスを有する布地の製造方法及びエンボスを有する布地
(51)【国際特許分類】
   D06C 23/04 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   D06C23/04 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-197877(P2019-197877)
(22)【出願日】2019年10月30日
【審査請求日】2019年10月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519389292
【氏名又は名称】リミデア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159547
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴谷 裕二
(72)【発明者】
【氏名】森 崇
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭50−038757(JP,B1)
【文献】 特開昭58−104264(JP,A)
【文献】 特開平06−158527(JP,A)
【文献】 特開平09−250078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00 − 59/18
D04D 1/00 − 11/00
D06B 1/00 − 23/30
D06C 3/00 − 29/00
D06G 1/00 − 5/00
D06H 1/00 − 7/24
D06J 1/00 − 1/12
D06Q 1/00 − 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型、対向押圧面の一方及び他方のうち少なくともいずれか1つを加熱する工程と、
前記対向押圧面の一方に接している前記金型と、前記他方との間に布地を置くと共に、前記金型と前記布地との間及び前記布地と前記他方との間のうち、少なくとも前記布地と前記他方との間に、クッション材を置く工程と、
前記対向押圧面を接近させ、所定の温度及び所定の圧力で、所定の時間押圧することで、前記布地と前記クッション材とを熱プレスする工程と、
前記対向押圧面を離隔させて、前記布地と前記クッション材とが密着して前記金型により形成された形状をほぼ保持したまま前記対向押圧面の間から取り出す工程と、
前記布地を前記クッション材からはがす工程と、
を有するエンボス加工を施した布地の製造方法。
【請求項2】
前記クッション材は、ポリウレタンフォームである、
請求項1に記載のエンボス加工を施した布地の製造方法。
【請求項3】
前記所定の温度は、70°Cから300°Cの間である、
請求項1又は2に記載のエンボス加工を施した布地の製造方法。
【請求項4】
前記圧力は、5kg/mから350kg/mの間の値である、
請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載のエンボス加工を施した布地の製造方法。
【請求項5】
前記所定の時間は、5秒から600秒の間の値である、
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載のエンボス加工を施した布地の製造方法。
【請求項6】
前記金型は、金属板を切り抜いた構造を有する、
請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載のエンボス加工を施した布地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボスを有する布地の製造方法及びエンボスを有する布地に関する。
【背景技術】
【0002】
衣服などの布地に凹凸を形成するエンボス加工を施す技術が存在する。例えば、エンボス加工を施した布地を用いて衣服を制作することで、衣服に斬新なデザインを施したり、衣服の肌触りに変化を持たせたりすることができる。
布地などに対しエンボス加工を施す技術としては、例えば、以下のものがある。
【0003】
対向押圧面の一方を、彫りの深さが3mm以上の金型とし、押圧面の他方を、3mm以上の厚さを有するシリコーンゴム製のスポンジ板として、化学合成繊維を少なくとも50%以上を有する被加工布地を両面から挟み込んで、両面から加熱すると共に、一定時間押圧することを特徴とするニット製布帛用エンボス加工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、綿、羊毛、絹等の天然繊維を主材とする布地の所定領域に熱可塑性合成樹脂エマルジョンを含浸させた天然繊維にエンボス加工する方法であって、固定台の上面に所定の厚みを備えた弾性シリコンスポンジゴム板の上に加工したい天然繊維を配置し、この天然繊維のエンボス加工領域に1800°C〜220°C程度に加熱した熱金型にて、400kg〜2000kgのプレス圧力で、プレス時間約30〜90秒間を金型でプレスし、金型の押圧面に設けた凹凸に対応して、金型プレスの圧力によって、天然繊維と弾性シリコンスポンジゴム板が、金型押圧面の凹部に入り込んだ状態で変形することで、天然繊維にエンボス加工を施す方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、シリコーン樹脂で作られたエンボス加工型を繊維製品の生地に押し付け、高周波加熱してプレスを行い、繊維製品にエンボスを形成する繊維製品の加工方法であって、繊維製品の生地のエンボス加工型を押し付ける部分の反対側の面に、熱可塑性合成樹脂シートを熱溶着で貼り付け、エンボス加工型により繊維製品にエンボスを形成する加工方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
上記のような従来の技術は、布地にエンボス加工を施すために、高価な金型を製作する必要があったり、エンボス加工が十分に行えなかったり、エンボス加工した布地の強度を低下させたりするなどの問題が存在していた。また、布地に意図しないテカリが生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−158527号公報
【特許文献2】特開平9−250078号公報
【特許文献3】特開2005−206963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
開示の技術は、上記従来技術を改善するべく、簡便な方法で、布地に意図したエンボス加工を施す方法及びエンボス加工を施した布地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の技術によれば、金型、対向押圧面の一方及び他方のうち少なくともいずれか1つを加熱する工程と、前記対向押圧面の一方に接している前記金型と、前記他方との間に布地を置くと共に、前記金型と前記布地との間及び前記布地と前記他方との間のうち、少なくとも前記布地と前記他方との間に、クッション材を置く工程と、前記対向押圧面を接近させ、所定の温度及び所定の圧力で、所定の時間押圧することで、前記布地と前記クッション材とを熱プレスする工程と、前記対向押圧面を離隔させて、前記布地と前記クッション材とが接触したまま前記対向押圧面の間から取り出す工程と、前記布地を前記クッション材からはがす工程と、を有するエンボス加工を施した布地の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、上記従来技術を改善し、簡便な方法で、布地に意図したエンボス加工を施す方法及びエンボス加工を施した布地を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、開示の技術の外観とその動作の概要を示す図である。
図2図2は、金属板を切り抜いた構造を有する金型の例を示す図である。
図3図3は、金属板を切り抜いた構造を有する金型の斜視図である。
図4図4は、開示の技術において加熱と圧縮の工程の例を示す図である。
図5図5は、加熱・加圧後に、布地をクッション材から剥がす工程の例を示す図である。
図6図6は、シリコーンゴムをクッション材に用いた場合の加熱と圧縮の工程を示した図である。
図7図7は、クッション材の違いに基づくエンボスの形成の差を示す図である。
図8図8は、2つのクッション材で布地を挟んで行うエンボス加工の例を示す図である。
図9図9は、図8の実施形態により2つのクッション材で布地を挟んで形成された布地のエンボス加工と片側のみにクッション材を使用したエンボス加工との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しながら、開示の技術の説明を行う。なお、本明細書、図面及び特許請求の範囲に記載された各実施形態は、排他的なものではない。したがって、矛盾の無い限り、ある実施形態の一部を他の実施形態に加えることができる。また、ある実施形態の一部を他の実施形態の一部に代替することができる。また、実施形態の方法に含まれる各工程は、矛盾の無い限り順番を入れ換えてもよい。或いは、矛盾の無い限り方法に含まれる複数の工程を同時に実行することも可能である。
明細書及び図面の記載は、請求項に規定される発明の例示を示すものであって、その発明を限定するためのものではない点に留意すべきである。
【0013】
図1は、開示の技術の外観とその動作の概要を示す図である。
加圧ユニット100は、固定された基台110に対して、矢印30の方向に移動することができる。加圧ユニット100が基台110に矢印30の方向に圧力をかけることによって、加圧ユニット100と基台110との間に存在する対象物に圧力をかけることができる。
【0014】
加圧ユニット100は、不図示の駆動装置によって上下動する。
加圧ユニット100及び基台110の少なくともいずれかに不図示の加熱装置が存在することが望ましい。この加熱装置によって、加圧ユニット100と基台110との間に存在する対象物に対して、圧力をかけると共に加熱することができる。
【0015】
金型200は、基台110に接触している。金型200は、加圧ユニット100から圧力がかかったときに移動しないように、基台110に固定されていることが望ましい。
【0016】
金型200の上に、エンボスを形成させる布地400を置く。そして、布地400の上に、クッション材300を置く。図1では、理解を助けるために、布地400とクッション材300が空中に浮いているように描かれている。実際には、布地400は、金型200の上に接触して置かれ、布地400の上にクッション材300が置かれる。
布地400は、一枚であってもよいし、Tシャツなどのように、縫い合わされた状態であってもよい。
【0017】
エンボスが形成されるように、布地400は、金型200の面積内に置かれることが望ましい。また、クッション材300は、少なくとも布地400に対するクッションの役目を果たすように、布地400全体を覆うことが可能な面積を有し、布地400全体を覆うように布地の上に置かれることが望ましい。
【0018】
以上のように、基台110の上に設置された金型200の上に布地400が置かれ、その上にクッション材300が置かれた状態で、加圧ユニット100が、矢印30の方向に移動して、基台に接近する。
【0019】
加圧ユニット100は、所定の時間だけ、矢印30の方向に圧力を加えることで、布地400とクッション材とを金型に押し付ける。この所定の時間は、5秒〜600秒であることが望ましい。所定の時間が経過した時に、加圧ユニット100は、矢印30と逆の方向に移動して、元の位置に戻る。上述のように、加圧ユニット100に、クッション材300と布地400とに熱を加えるための加熱装置(不図示)が存在していてもよい。
【0020】
加熱装置(不図示)は、金型200に接触する布地を加熱するために、少なくとも基台に存在することが望ましい。そして、基台に存在する加熱装置からの熱が金型200に伝達しやすいように、金型200と基台110とは、熱伝導が良好な形で接触しかつ固定されていることが望ましい。
【0021】
なお、加熱の手段は、必ずしも基台110又は加圧ユニット100に設置する必要はなく、金型200自体が発熱する構造を持っていてもよい。例えば、金型200に電流が流れることで、金型200自体が発熱してもよい。
【0022】
また、加圧ユニット100が圧力をかける前から、基台110、金型200又は加圧ユニット100が予め加熱されていてもよいし、加圧が開始された後に、加熱が行われてもよい。
加熱は、電気エネルギー以外に、蒸気などのエネルギーが用いられてもよい。
【0023】
金型200は、凹部又は凸部が存在し、圧力及び熱を布地及びクッション材に与えることができ、かつ圧力及び熱に耐えうるものであればどのようなものであってもよい。金型200の素材は、金属でなくてもよい。
【0024】
金型200の材料としては、エンボスが形成される模様の部分を打ち抜いた金属板であってもよい。エンボスの模様を形成するように金属板を打ち抜くことは、工作機械で容易に行うことができるため、本技術の金型として適している。金属板による金型の形成は、打ち抜きの工程を用いること以外に、レーザー照射を行って、鉄板にエンボスの模様を形成するようにしてもよい。金属板を用いた金型200の形成方法は、上記の方法に限定されない。
また、金型200は、鋳造によって形成されてもよい。金型200の素材は、鉄、アルミニウム、銅などの金属が用いられ得る。
【0025】
加圧ユニット100による加圧の具体的な時間及び圧力、加熱の具体的な温度については、後述するが、エンボス加工を施される布地400の材料及びエンボスの模様の態様などによって調整される。
【0026】
図1では、基台110に金型200を接触させる構造が示されているが、加圧ユニット100に金型200が固定されるようにしてもよい。この場合には、基台の上にクッション材300を置き、クッション材300の上に布地400を置くことになる。
金属板で金型を形成することで、凹型の金型が容易に形成できる。また、金型は、必ずしも雄雌の2つを用意する必要がなく、1つあればよい。
【0027】
図2は、金属板を切り抜いた構造を有する金型の例を示す図である。金型200を拡大した金型の一部分210が示されている。金型の一部分210は、金属部分200aが形成されており、金属板が抜け落ちた凹部200bが存在する。金属部分200aは、布地400と接触する。凹部200bは、布地400とクッション材300とが、加圧ユニット100の圧力によって押し出される部分であり、後述するように布地400が凸部分を形成する。このように、布地400に凸部分が形成されることにより、エンボス加工が施される。なお、凸部分の形成の詳細については後述する。
【0028】
図3は、金属板を切り抜いた構造を有する金型の斜視図である。金型200を拡大した金型の一部分210が示されている。金型の一部分210は、金属部分200aが形成されており、金属板が抜け落ちた凹部200bが存在する。金属部分200aの厚さは、金型200の凹部200bの深さに相当するものであり、布地400に形成するエンボスの厚さに依存する。エンボスの厚さは、布地400の材質、エンボスの模様の細かさ、エンボスのデザインなどに依存する。通常、布地400に形成されるエンボスの厚さは、0.3〜5.0ミリメートル程度が好ましい。したがって、金型200の凹部の深さ(金属部分200aの厚さ)は、通常0.5〜8.0ミリメートルである。なお、本技術は、これらの値に限定されず、布地400に形成され得るエンボスの深さに依存して、金型200の凹部の深さ(金属部分200aの厚さ)が決定される。
【0029】
図4は、開示の技術において加熱と圧縮の工程の例を示す図である。図4(a)ないし図4(c)は、それぞれ図1におけるZ−Z’線に沿った断面図を示している。図1に記載された要素と同じ要素については、同様の符号が付されている。
【0030】
図4(a)は、図1の状態の断面図である。布地400及びクッション材300が空中に置かれて描かれているのは、図4(a)を見やすくするためであって、実際は、布地400及びクッション材300は、金型200の上に置かれる。
【0031】
図4(b)で、加圧ユニット100が、基台110に接近し、布地400a及びクッション材300aに圧力が加えられると共に、加熱される。加熱方法は、既に述べたとおりである。圧力と熱により、布地400a及びクッション材300aが、金型200の凹部200cに凸型に押し出されている。図4(b)の状態で、所定の圧力と所定の熱が、布地400及びクッション材300に所定の時間与えられる。所定の圧力、所定の熱、及び所定の時間は、布地400及びクッション材300の材質、エンボスの深さ、エンボスの細かさ、エンボスのデザインなどに依存して決定される。
【0032】
布地400の材質としては、エンボスが形成されやすくかつエンボスが保持されやすい繊維で作られた布地が望ましい。例えば、布地400の例としては、ポリエステル、ナイロン、アクリルなど熱可塑性に優れた繊維またはそれが混ざっている布地、ポリウレタン弾性繊維(スパンデックス)、などが好ましい。天然繊維は、熱及び圧力に対して変形しにくいため、シロセット加工や樹脂加工などの処理が施されることが望ましい。
【0033】
クッション材300の材質としては、熱及び圧力に対して、布地400と密着して変形されるものであることが望ましい。また、圧力が解かれ、大気の温度付近まで冷却されるときに、クッション材300が布地400との接触を維持しつつ変形が十分に保持された状態を維持するものが望ましい。また、放熱された状態において、クッション材300から布地400が容易に分離できるものが望ましい。このような性質を有するクッション材300としては、例えばポリウレタンフォームがある。クッション材300の厚さは、エンボスの形成が十分行える厚さを有することが望ましい。なお、クッション材300の材質は、エンボスを形成させる布地400の材質に応じて選択されることが望ましい。また、加えられる圧力、熱、時間に応じて、クッション材300の材質が選定されることが望ましい。
【0034】
加えられる圧力は、5kg/mから350kg/mの間の値が望ましい。布地400及びクッション材300に与えられる熱の温度は、例えば、70°Cから300°Cの間であり、布地の風合いを損なわないようにその都度調整することが望ましい。
【0035】
図4(c)は、加圧ユニットが図4(a)に示す元の位置に復帰した状態を示している。布地400b及びクッション材300bは、変形を略保った状態で、金型200の上に留まっていることが望ましい。
【0036】
その後、布地400b及びクッション材300bが密着した状態で、金型200から取り出される。取り出された布地400bとクッション材300bは、大気に接することで、冷却され、大気温度とほぼ同じ温度となる。
【0037】
布地400b及びクッション材300bは、形状をほぼ保ったまま冷却が行われることで、布地400bに形成されたエンボスの形状が固定化されることとなる。布地400b及びクッション材300bが、密着したまま冷却が行われることで、エンボスが変形したり、エンボスの深さが浅くなってしまったりすることが抑制されるため、深い形状のエンボスを容易に形成することができる。
【0038】
図5は、加熱・加圧後に、布地400をクッション材300から剥がす工程の例を示す図である。図5(a)に示されるように布地400c及びクッション材300cは、金型200の凹部の形状が形成された状態で、金型200の上から取り出されて、大気の圧力及び温度にさらされ冷却される。冷却は、このように自然冷却であってもよいが、強制的に冷却を行ってもよいことは言うまでもない。
【0039】
図5(b)は、クッション材300cから布地400cをはがす例を示している。例えば、布地400cの一部分60から、布地400cをはがせばよい。クッション材300cには、布地400cの跡300dが残っている。この布地400cの跡300dは、布地400cの厚さだけ、一様にクッション材が凹んでいる跡である。なお、クッション材のうち、金型200に接している部分には、布地400と同様のエンボスが形成されている。なお、クッション材は、バックなどの材料として流用され得る。
【0040】
布地400cとクッション材300cとの密着の度合いは、比較的容易に両者が引きはがせる程度の密着であり、冷却の期間において、密着を保つことで、クッション材300cにも形成されているエンボスと共に布地400cのエンボスが一体化された形で冷却されることが望ましい。このようにすることで、布地400cに形成されたエンボスが冷却の際に平らに戻ろうとすることを十分に抑制することができる。
以上に記載した手順によって一実施形態の方法が実施される。
【0041】
図6は、シリコーンゴムをクッション材に用いた場合の加熱と圧縮の工程を示した図である。この図は、図1ないし5によって説明した開示の技術に対しての比較を行うための工程を示している。
【0042】
図6では、シリコーンを素材とする材料(シリコーンゴム500)をクッション材として使用している。一般に、シリコーンを含む素材は、弾力性に富んでおり、シリコーンゴムは、熱及び圧力に対しても、安定的に利用でき、変形しても元の形に戻りやすい性質がある。また、ポリエステルなどの布地の素材とは接着性が弱いという性質がある。
図6は、クッション材としてシリコーンゴム500を使用している以外は、図4と同じ環境である。
図6(a)では、シリコーンゴム500の平板によって布地400を覆うように金型200の上に設置する。
【0043】
図6(b)では、矢印30の方向に加圧ユニット100から基台110に圧力を加える。この圧力とともに、加圧ユニット100、基台110、及び金型200の少なくともいずれか1つに熱を発生させることで、布地400j及びシリコーンゴム500jに圧力と熱を加える。圧力、熱、時間等のパラメータは、図4と同じである。
図6(b)に示されるように、布地400jとシリコーンゴム500jとは、密着し、かつ金型の凹部200dの部分で凸状に膨らむ。
【0044】
図6(c)は、加圧ユニット100を図5(a)に示す元の位置に戻した状態を示している。図6(c)では、熱を加えたため、シリコーンゴム500kが膨張し、上に凸状に盛り上がっている。また、シリコーンゴム500kと布地400kとは、密着性が弱いため、シリコーンゴム500kから布地400kが剥離している状態となっている。また、シリコーンゴム500kの凸状部は、シリコーンゴム500kの弾力性のために、図6(b)において形成されたシリコーンゴム500jの凸状部よりもより平坦な形に戻っている。
【0045】
布地400kは、シリコーンゴム500kから剥離しており、かつシリコーンゴム500kの弾力により、図6(b)で形成されたエンボスがやや平坦になる状態で、金型200とシリコーンゴム500kとの間に挟まれて熱を保った状態となっている。
【0046】
図6(c)の状態においては、布地400kとシリコーンゴム500kとが剥離しているため、両者を一体として、金型200の上から持ち上げることは困難である場合が多い。シリコーンゴム500kの方が、面積が広いためまずシリコーンゴムを取り除く。なお、シリコーンゴムが金型の一部の面積に置かれる場合もあるが、その場合でも、まずシリコーンゴムを取り除く。そして、シリコーンゴム500kから離れた布地400kが金型200の上に残る。次に、金型200の上に存在する布地400kを取り出す。布地400kは、取り出された直後は熱を持っている。その後、布地400kは、外気の温度まで冷却される。この冷却の期間に、布地400kに形成されたエンボスの凸部は、平坦な方向にやや戻るため、エンボスの高さは冷却に伴って短縮される。シリコーンゴム自体には熱可塑性が極めて弱く、圧力により型に押し込められた時は弾力性により型に沿うが、解放されたら元に戻る性質がある為、冷却の前に布地が型崩れする傾向がある。
【0047】
図6の例は、本技術の効果を確認するためのものである。すなわち、クッション材300の材質としては、熱及び圧力を加えた際及びその後に、エンボス加工を施す布地400に対して密着性を持つものが好ましい。なお、この密着性は、冷却後(常温になった後)に、クッション材300から布地400が剥離可能な程度の密着性があることが望ましいことが分かる。
図7は、クッション材の違いに基づくエンボスの形成の差を示す図である。
図7(a)は、図4で用いたクッション材300を用いて布地400に形成されたエンボス加工の写真を示している。
図7(b)は、図6で用いたシリコーンゴム500を用いて布地400に形成されたエンボス加工の写真を示している。
【0048】
図7からもわかるように、図4のクッション材300を用いた方が布地400に形成されるエンボスの高さが高く、図6のシリコーンゴム500を用いた方は布地400に形成されたエンボスの高さが低いものとなっていることが分かる。
【0049】
図7のエンボスの形成結果を比較すると、図7(a)のエンボスが、図7(b)のエンボスよりも、くっきりとしたエンボスとなっており、より好ましいエンボスが形成されていることが分かる。
【0050】
<変形例>
図8は、2つのクッション材で布地を挟んで行うエンボス加工の例を示す図である。他の図と同じ構成要素を同じ記号が付されている。図8では、布地400と金型200との間にも、クッション材310を置く。クッション材300とクッション材310とは、同じ材質及び同じ厚さであってもよい。あるいは、クッション材300とクッション材310とは、異なる材質又は異なる厚さであってもよい。
【0051】
図9は、図8の実施形態により2つのクッション材で布地を挟んで形成された布地のエンボス加工と、布地の片側のみに(金型と反対の側にのみに)クッション材を使用したエンボス加工との比較を示す図である。図9(a)は、片側のみにクッション材を使用してエンボス加工を施した布地の写真である。図9(b)は、2つのクッション材で布地を挟んで形成された布地のエンボス加工を施した布地の写真である。
このように、金型200と布地400との間にもクッション材310を設置して2つのクッション材で布地を挟むことにより、布地400が金型200に直接触れることを避けることができる。このことにより、布地400のエンボスをより滑らかにすることができる。また、このことにより、布地400が金型に直接接触することによる布地400の強度の劣化を防止することができる。また、このことにより、布地400が金型に直接接触することによる布地400のテカリを防止することができる。このテカリを防止することによって、布地400の外観が、より落ち着いた雰囲気となるとともに、布地400のしなやかさを劣化させることを防止できる。
【0052】
また、クッション材310の厚さを調節することで、エンボスのくっきりとした度合いを調節することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 加圧ユニット
110 基台
200 金型
300 クッション材
310 クッション材
400 布地
500 シリコーンゴム


【要約】      (修正有)
【課題】簡便な方法で、従来技術を改善し、布地に意図したエンボス加工を施す方法及びエンボス加工を施した布地の提供。
【解決手段】金型200、対向押圧面の一方及び他方のうち少なくともいずれか1つを加熱する工程と、対向押圧面の一方に接している金型200と、他方との間に布地400を置くと共に、金型200と布地400との間及び布地400と他方との間のうち、少なくとも布地400と他方との間に、クッション材300を置く工程と、対向押圧面を接近させ、所定の温度及び所定の圧力で、所定の時間押圧することで、布地400とクッション材300とを熱プレスする工程と、対向押圧面を離隔させて、布地400とクッション材300とが接触したまま対向押圧面の間から取り出す工程と、布地400をクッション材300からはがす工程と、を有するエンボス加工を施した布地の製造方法。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9