(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6683330
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】樹脂封止装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20200406BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20200406BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
H01L21/56 T
B29C45/27
B29C45/02
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-127643(P2019-127643)
(22)【出願日】2019年7月9日
【審査請求日】2019年9月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501184434
【氏名又は名称】アサヒ・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】石井 正明
【審査官】
小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−123953(JP,A)
【文献】
特開平09−076282(JP,A)
【文献】
特開平09−036155(JP,A)
【文献】
特開平11−320600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 25/07
B29C 33/00
B29C 39/00
B29C 45/02
B29C 45/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品を一対の金型によりクランプし、前記一対の金型を型締めしたときに形成されるキャビティ内に樹脂を注入して樹脂封止成形を行う樹脂封止装置であって、
前記積層された複数の電子部品の間の空間および前記複数の電子部品のうち最も外側位置の電子部品と金型との間の空間に向かってそれぞれ開口した複数のゲートを有し、前記複数のゲートのうち少なくとも1つは、前記一対の金型の一方の金型に形成されたゲート形成空間と、他方の金型に形成され、前記一対の金型を型締めしたときに前記ゲート形成空間内に突出する突出部との間に形成される空間からなる樹脂封止装置。
【請求項2】
積層された複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品を一対の金型によりクランプし、前記一対の金型を型締めしたときに形成されるキャビティ内に樹脂を注入して樹脂封止成形を行う樹脂封止装置であって、
前記積層された複数の電子部品の間の空間および前記複数の電子部品のうち最も外側位置の電子部品と金型との間の空間に向かってそれぞれ開口した複数のゲートを有し、前記複数のゲートのうち前記一対の金型を型締めしたときの前記一対の金型の接合位置に面する前記積層された複数の電子部品の間の空間以外の空間に向かって開口するゲートは、一方の金型に形成されたゲート形成空間と、他方の金型に形成され、前記一対の金型を型締めしたときに前記ゲート形成空間内に突出する突出部との間に形成される空間からなる樹脂封止装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記積層された複数の電子部品のうち前記一対の金型によりクランプされる電子部品に形成された貫通孔に対応する位置に形成されたものであり、前記貫通孔を貫通して前記ゲート形成空間内に突出するものである請求項1または2に記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
積層された複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品を一対の金型によりクランプし、前記一対の金型を型締めしたときに形成されるキャビティ内に樹脂を注入して樹脂封止成形を行う樹脂封止装置であって、
前記積層された複数の電子部品の間の空間および前記複数の電子部品のうち最も外側位置の電子部品と金型との間の空間に向かってそれぞれ開口した複数のゲートを有し、前記複数のゲートのうち少なくとも1つは、前記一対の金型の一方の金型に形成されたゲート形成空間と、前記一対の金型の間の前記ゲート形成空間に対応する位置に配置される中間型との間に形成される空間からなる樹脂封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層されたリードフレームや基板などの複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品を樹脂封止する樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1枚の基板の上面または両面に半導体素子が当接する半導体装置を一対の金型により挟み込み、一対の金型を型締めしたときに形成されるキャビティ内に樹脂を注入して樹脂封止成形を行う樹脂封止装置が知られている。たとえば、特許文献1には、ダイパッド上に搭載された半導体素子の上側に充填される樹脂の外形形状を成型する上金型と、半導体素子の下側に充填される樹脂に外形形状を成型する下金型と、上金型により形成される上側のキャビティに開口する上ゲートとを備え、上ゲートから上側のキャビティに溶融状態の樹脂を導く上側導入経路と、下金型により形成される下側のキャビティに開口する下ゲートを備え、下ゲートから下側のキャビティに溶融状態の樹脂を導く下側導入経路とを備えたトランスファ成形装置が記載されている。
【0003】
ところで、エアーコンディショナー、エレベーター、ハイブリッド自動車や電気自動車などの電動機器に搭載されるインバーターやコンバーターなどの大きな電流や電力を扱う電力変換装置等ではパワー半導体が用いられている。このようなパワー半導体を用いたパワーモジュール(半導体装置)には、リードフレームの上面に所定の空間を挟んで基板を配置した2段構造のものがあり、このような基板間に空間を有する半導体装置においても樹脂封止成形のニーズがある。しかしながら、従来、このような基板間に空間を有する半導体装置を樹脂封止する技術は公開されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−320600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の樹脂封止装置の金型では、樹脂をキャビティに注入するゲートは基板上面に当接した位置に配置され、樹脂はゲートを通って基板上面からキャビティ空間内全体に充填される構造となっている。そのため、これを基板間に空間を有する半導体装置に適用した場合、樹脂はゲートを通って基板上面から基板間の空間内に入るが、この樹脂の流動は上側の基板に遮られることになり、上側基板のさらに上側の空間には充填されにくく、キャビティ上面の角部近辺でボイドやバブルが発生する。
【0006】
また、パワー半導体などの大型の半導体装置では、金型のキャビティ容積が大きく、生産効率を上げるために樹脂注入時間を短縮すると、樹脂の注入流速が速くなり、充填圧力によりワイヤ流れ等の不具合が生じやすくなる。さらに、樹脂パッケージ内のチップ等の電子部品の配置の粗密によっても、さらなるボイドやバブルが発生する。
【0007】
そこで、本発明においては、積層されたリードフレームや基板などの複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品を樹脂封止するに際し、ボイドや、バブルやワイヤ流れなどの成形不良の発生を抑制することが可能な樹脂封止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂封止装置は、積層された複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品を一対の金型によりクランプし、一対の金型を型締めしたときに形成されるキャビティ内に樹脂を注入して樹脂封止成形を行う樹脂封止装置であって、積層された複数の電子部品の間の空間および複数の電子部品のうち最も外側位置の電子部品と金型との間の空間に向かってそれぞれ開口した複数のゲートを有するものである。
【0009】
本発明によれば、積層された複数の電子部品の間の空間および複数の電子部品のうち最も外側位置の電子部品と金型との間の空間に向かって複数のゲートからそれぞれ樹脂が同時かつ均等に注入される。
【0010】
ここで、複数のゲートのうち少なくとも1つは、一対の金型の一方の金型に形成されたゲート形成空間と、他方の金型に形成され、一対の金型を型締めしたときにゲート形成空間内に突出する突出部との間に形成される空間からなる構成とすることが望ましい。これにより、一対の金型を型締めするだけで、一方の金型に形成されたゲート形成空間と他方の金型に形成された突出部との間の空間によってゲートが形成される。
【0011】
また、複数のゲートのうち一対の金型を型締めしたときの一対の金型の接合位置に面する積層された複数の電子部品の間の空間以外の空間に向かって開口するゲートは、一方の金型に形成されたゲート形成空間と、他方の金型に形成され、一対の金型を型締めしたときにゲート形成空間内に突出する突出部との間に形成される空間からなる構成とすることが望ましい。
【0012】
これにより、一対の金型を型締めするだけで、一対の金型の接合位置に面する積層された複数の電子部品の間の空間以外の空間に向かってそれぞれ開口するゲートが、一方の金型に形成されたゲート形成空間と他方の金型に形成された突出部とにより形成される。
【0013】
このとき、突出部は、積層された複数の電子部品のうち一対の金型によりクランプされる電子部品に形成された貫通孔に対応する位置に形成されたものであり、貫通孔を貫通してゲート形成空間内に突出するものであることが望ましい。
【0014】
これにより、一対の金型を型締めした際、一対の金型によりクランプされる電子部品に形成された貫通孔を貫通してゲート形成空間内に突出する突出部と一方の金型に形成されたゲート形成空間とにより、一対の金型の接合位置に面する積層された複数の電子部品の間の空間以外の空間に向かってそれぞれ開口するゲートが形成される。
【0015】
また、複数のゲートのうち少なくとも1つは、一対の金型の一方の金型に形成されたゲート形成空間と、一対の金型の間のゲート形成空間に対応する位置に配置される中間型との間に形成される空間からなる構成とすることもできる。これにより、一対の金型を、中間型を介して型締めするだけで、一方の金型に形成されたゲート形成空間と中間型との間の空間によってゲートが形成される。
【0016】
また、複数のゲートのうち一対の金型を型締めしたときの一対の金型の接合位置に面する積層された複数の電子部品の間の空間以外の空間に向かって開口するゲートは、一方の金型に形成されたゲート形成空間と、一対の金型の間のゲート形成空間に対応する位置に配置される中間型との間に形成される空間からなる構成とすることもできる。
【0017】
これにより、一対の金型を、中間型を介して型締めするだけで、一対の金型の接合位置に面する積層された複数の電子部品の間の空間以外の空間に向かってそれぞれ開口するゲートが、一方の金型に形成されたゲート形成空間と中間型とにより形成される。
【発明の効果】
【0018】
(1)積層された複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品を一対の金型によりクランプし、一対の金型を型締めしたときに形成されるキャビティ内に樹脂を注入して樹脂封止成形を行う樹脂封止装置であって、積層された複数の電子部品の間の空間および複数の電子部品のうち最も外側位置の電子部品と金型との間の空間に向かってそれぞれ開口した複数のゲートを有する構成により、積層された複数の電子部品の間の空間および複数の電子部品のうち最も外側位置の電子部品と金型との間の空間に向かって複数のゲートからそれぞれ樹脂が同時かつ均等に注入されるので、キャビティ内に空間を介して積層された複数の電子部品による樹脂流動の障害が緩和され、樹脂の回り込みによるボイド、バブルやワイヤ流れなどの成形不良の発生を抑制することが可能となる。
【0019】
(2)複数のゲートのうち一対の金型を型締めしたときの一対の金型の接合位置に面する積層された複数の電子部品の間の空間以外の空間に向かって開口するゲートは、一方の金型に形成されたゲート形成空間と、他方の金型に形成され、一対の金型を型締めしたときにゲート形成空間内に突出する突出部との間に形成される空間からなる構成とすることにより、一対の金型を型締めするだけで、一対の金型の接合位置に面する積層された複数の電子部品の間の空間以外の空間に向かってそれぞれ開口するゲートを容易に形成することが可能となり、簡単な金型構造で、積層されたリードフレームや基板などの複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品をボイド、バブルやワイヤ流れなどの成形不良の発生を抑制しつつ樹脂封止することが可能となる。
【0020】
(3)突出部が、積層された複数の電子部品のうち一対の金型によりクランプされる電子部品に形成された貫通孔に対応する位置に形成されたものであり、貫通孔を貫通してゲート形成空間内に突出するものであることにより、一対の金型を型締めして電子部品をクランプするだけで、一対の金型の接合位置に面する積層された複数の電子部品の間の空間以外の空間に向かってそれぞれ開口するゲートを容易に形成することが可能となり、簡単な金型構造で、積層されたリードフレームや基板などの複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品をボイド、バブルやワイヤ流れなどの成形不良の発生を抑制しつつ樹脂封止することが可能となる。
【0021】
(4)複数のゲートのうち一対の金型を型締めしたときの一対の金型の接合位置に面する積層された複数の電子部品の間の空間以外の空間に向かって開口するゲートは、一方の金型に形成されたゲート形成空間と、一対の金型の間のゲート形成空間に対応する位置に配置される中間型との間に形成される空間からなる構成とすることにより、一対の金型を中間型を介して型締めするだけで、一対の金型の接合位置に面する積層された複数の電子部品の間の空間以外の空間に向かってそれぞれ開口するゲートを容易に形成することが可能となり、簡単な金型構造で、積層されたリードフレームや基板などの複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品をボイド、バブルやワイヤ流れなどの成形不良の発生を抑制しつつ樹脂封止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態における樹脂封止装置の透視平面図である。
【
図2】
図1の樹脂封止装置の金型を開いた状態を示す図であって、(A)は
図1のA−A線端面、(B)は
図1のB−B線端面を示す図である。
【
図3】
図1の樹脂封止装置による樹脂封止成形工程を示す図であって、(A)は
図1のA−A線端面、(B)は
図1のB−B線端面を示す図である。
【
図4】
図1の樹脂封止装置による樹脂封止成形工程を示す図であって、(A)は
図1のA−A線端面、(B)は
図1のB−B線端面を示す図である。
【
図5】
図1の樹脂封止装置による樹脂封止成形工程を示す図であって、(A)は
図1のA−A線端面、(B)は
図1のB−B線端面を示す図である。
【
図6】(A)は2層構造の製品の例を示す縦断面図、(B)はリードフレームの下面に電子部品が当接配置された2層構造の製品の例を示す縦断面図、(C)は3層構造の製品の例を示す縦断面図である。
【
図7】
図6(B)の被成形品の樹脂封止に用いられる樹脂封止装置による樹脂封止成形工程を示す図であって、(A)は
図1のA−A線端面に対応する図、(B)は
図1のB−B線端面に対応する図である。
【
図8】
図6(B)の被成形品の樹脂封止に用いられる樹脂封止装置による樹脂封止成形工程を示す図であって、(A)は
図1のA−A線端面に対応する図、(B)は
図1のB−B線端面に対応する図である。
【
図9】本発明の別の実施形態を示す樹脂封止装置の金型を開いた状態を示す縦断面図である。
【
図10】
図9の樹脂封止装置による樹脂封止成形工程を示す縦断面図である。
【
図11】
図9の樹脂封止装置による樹脂封止成形工程を示す縦断面図である。
【
図12】
図9の樹脂封止装置による樹脂封止成形工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明の実施の形態における樹脂封止装置の透視平面図である。
図2は
図1の樹脂封止装置の金型を開いた状態を示す図であって、(A)は
図1のA−A線端面、(B)は
図1のB−B線端面を示す図である。
図3〜
図5は
図1の樹脂封止装置による樹脂封止成形工程を示す図であって、それぞれ(A)は
図1のA−A線端面、(B)は
図1のB−B線端面を示す図である。
【0024】
図1および
図2に示すように、本実施形態における樹脂封止装置は、第1金型としての上型1および第2金型としての下型2の一対の金型を有する。この樹脂封止装置では、上型1および下型2により被成形品3をクランプし、
図4および
図5に示すように、上型1および下型2を型締めしたときに形成されるキャビティ4内に樹脂5を注入して樹脂封止成形を行う。
【0025】
被成形品3は、パワー半導体を用いた半導体装置である。被成形品3は、電子部品としてのリードフレーム30上に電子部品としての基板31がスペーサー31Aを介して積層された2層構造である。基板31の上下面には電子部品としての半導体チップ32が実装されている。基板31とリードフレーム30との間にはスペーサー31Aにより形成される空間33を有する。
【0026】
上型1には、リードフレーム30上の基板31が収容されるキャビティ形成空間10と、キャビティ形成空間10に連通するゲート形成空間11A,11Bと、ゲート形成空間11A,11Bに連通するカル12とが形成されている。ゲート形成空間11Aは、後述する下型2の突出部21との間に、
図4(A)に示すように、最も外側の電子部品である基板31と上型1との間の空間40に向かって開口する第1ゲートとしての上段ゲート6Aを形成する。ゲート形成空間11Bは、
図4(B)に示すように、上型1と下型2の接合位置に面するリードフレーム30と基板31との間の空間33に向かって開口する第2ゲートとしての下段ゲート6Bを形成する。
【0027】
一方、下型2には、リードフレーム30が載置される載置部20と、上型1および下型2を型締めしたときにゲート形成空間11A内に突出する突出部21と、樹脂5を加熱溶融するポット22と、ポット22からカル12へ樹脂5を圧送するプランジャー23とを有する。突出部21は、リードフレーム30が載置される載置部20から上型1のゲート形成空間11Aに向かって突出した部材である。突出部21は、リードフレーム30に形成された貫通孔34に対応する位置に形成されている。突出部21は貫通孔34を貫通してゲート形成空間11A内に突出する。
【0028】
上段ゲート6Aは、上型1のゲート形成空間11Aと下型2の突出部21との間に形成される空間からなる。基板31と上型1との間の空間40に向かって開口する上段ゲート6Aの底面は、空間40の底面、すなわち基板31の上面とほぼ同じ高さとなるように配置されている。なお、この上段ゲート6Aの底面は、基板31の上面から空間40の上面までの間となるように配置しても良い。
【0029】
下段ゲート6Bは、上型1のゲート形成空間11Bとリードフレーム30との間に形成される空間からなる。下段ゲート6Bの底面は、空間33の底面、すなわちリードフレーム30の上面とほぼ同じ高さとなるように配置されている。なお、この下段ゲート6Bの底面は、リードフレーム30の上面から基板31の下面までの間となるように配置しても良い。
【0030】
上記構成の樹脂封止装置では、
図3に示すように、半導体チップ32が実装された基板31がリードフレーム30上に空間33を設けて積層された被成形品3を下型2の載置部20に載置する。このとき、下型2の突出部21はリードフレーム30の貫通孔34を貫通し、上型1のゲート形成空間11Aに向かって突出する。次に、ポット22に樹脂5を投入したのち、リードフレーム30を上型1および下型2によりクランプする。
【0031】
このとき、
図4(A)に示すように、上型1のゲート形成空間11A内に突出する下型2の突出部21とゲート形成空間11Aとの間に、キャビティ4内の基板31と上型1との間の空間40に向かって開口する上段ゲート6Aが形成される。また、
図4(B)に示すように、上型1のゲート形成空間11Bと下型2のリードフレーム30との間には、キャビティ4内のリードフレーム30と基板31との間の空間33に向かって開口する下段ゲート6Bが形成される。
【0032】
そして、プランジャー23を上昇させ、ポット22よりカル12、上段ゲート6Aおよび下段ゲート6Bを経てキャビティ4内へ樹脂5を注入すると、
図5(A)に示すようにキャビティ4内の基板31と上型1との間の空間40には上段ゲート6Aから、
図5(B)に示すようにキャビティ4内のリードフレーム30と基板31との間の空間33には下段ゲート6Bから、それぞれ樹脂5が同時かつ均等に注入される。これにより、キャビティ4内において、リードフレーム30上に空間33を介して積層された基板31による樹脂流動の障害が緩和され、樹脂5の回り込みによるボイド、バブルやワイヤ流れなどの成形不良の発生が抑制される。
【0033】
また、本実施形態における樹脂封止装置では、上段ゲート6Aが一対の金型の一方の金型である上型1に形成されたゲート形成空間11Aと他方の金型である下型2に形成された突出部21とにより形成されており、上型1と下型2とを型締めするだけで、キャビティ4内の基板31と上型1との間の空間40に向かって開口する上段ゲート6Aが形成され、簡単な金型構造で、上記の樹脂5の回り込みによるボイド、バブルやワイヤ流れなどの成形不良の発生が抑制される。
【0034】
こうして、
図6(A)に示すようなリードフレーム30と基板31との間に空間33を有する2層構造の被成形品3を樹脂5により樹脂封止した製品6が得られる。なお、
図6(A)に示す製品6はリードフレーム30の一方の面(同図の上面)に配置された基板31を樹脂封止したものであるが、本発明の樹脂封止装置は、
図6(B)に示すようにリードフレーム30の他方の面(同図の下面)にヒートシンクのような電子部品71が当接配置された被成形品70にも適用可能である。
【0035】
図7および
図8は、
図6(B)の被成形品70の樹脂封止に用いられる樹脂封止装置による樹脂封止成形工程を示す図であって、それぞれ(A)は
図1のA−A線端面に対応する図、(B)は
図1のB−B線端面に対応する図である。なお、以下において、前述の構成要素と共通する部分については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0036】
図7および
図8に示すように、この樹脂封止装置では、下型2に、リードフレーム30の下面に配置された電子部品71が収容されるキャビティ形成空間24が形成されている。キャビティ形成空間24は、上型1および下型2を型締めした際、リードフレーム30に形成された貫通孔(図示せず。)により、リードフレーム30と基板31との間の空間33と連通する。
【0037】
この樹脂封止装置では、
図7に示すように、被成形品70の下面の電子部品71を下型2のキャビティ形成空間24に収容するようにして載置部20に載置する。このとき、前述と同様に、下型2の突出部21はリードフレーム30の貫通孔34を貫通し、上型1のゲート形成空間11Aに向かって突出する。次に、ポット22に樹脂5を投入したのち、リードフレーム30を上型1および下型2によりクランプする。
【0038】
そして、プランジャー23を上昇させ、ポット22よりカル12、上段ゲート6Aおよび下段ゲート6Bを経てキャビティ4内へ樹脂5を注入すると、
図7(A)および
図8(A)に示すようにキャビティ4内の基板31と上型1との間の空間40には上段ゲート6Aから、
図7(B)および
図8(B)に示すようにキャビティ4内のリードフレーム30と基板31との間の空間33には下段ゲート6Bから、それぞれ樹脂5が同時かつ均等に注入される。また、キャビティ形成空間24と電子部品71との間の空間25には、リードフレーム30に形成された貫通孔(図示せず。)を通じてリードフレーム30と基板31との間の空間33から樹脂5が注入される。
【0039】
こうして、
図6(B)に示すようなリードフレーム30と基板31との間に空間33を有し、リードフレーム30の下面にヒートシンクのような電子部品71が配置された多層構造の被成形品70を樹脂5により樹脂封止した製品7が得られる。このような構成においても、キャビティ4内において、リードフレーム30上に空間33を介して積層された基板31による樹脂流動の障害が緩和され、樹脂5の回り込みによるボイド、バブルやワイヤ流れなどの成形不良の発生が抑制される。なお、図示しないが、この樹脂封止装置は、キャビティ形成空間24においてリードフレーム30下面にヒートシンクが無い被成形品や、リードフレーム30下面にも積層基板が配置される被成形品などにも適用可能である。
【0040】
なお、上記実施形態においては、リードフレーム30上に1枚の基板31が積層された2層構造の被成形品3,70について説明したが、本発明の樹脂封止装置は、
図6(C)に示すように、リードフレーム30上に2枚の基板31,35がそれぞれスペーサー31A,35Aを介して積層された3層構造の被成形品80を樹脂封止した製品8にも適用可能である。
【0041】
この場合、前述のゲート形成空間11Aを最も外側位置の基板35と上型1との間の空間40に向かって開口した上段ゲート6Aを形成するための空間とし、上段ゲート6Aを上型1のゲート形成空間11Aと下型2の突出部21との間に形成される空間とする。そして、基板31と基板35との間の空間36に向かって開口した中段ゲート(図示せず。)を形成するための中段ゲート形成空間をゲート形成空間11Aに並べて形成し、この中段ゲート形成空間内に突出して上段ゲート6Aと同様に中段ゲートを形成する突出部を下型2に設ければ良い。3層以上の多層構造についても同様にゲート形成空間および突出部を増設することで対応可能である。
【0042】
次に、中間型を用いた樹脂封止装置の例について説明する。
図9は本発明の別の実施形態を示す樹脂封止装置の金型を開いた状態を示す縦断面図、
図10〜
図12は
図9の樹脂封止装置による樹脂封止成形工程を示す縦断面図である。なお、以下において、前述の構成要素と共通する部分については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0043】
図9に示す樹脂封止装置では、上型1のゲート形成空間11Aに対応する位置に配置される中間型9を備えている。中間型9は、
図10に示すように被成形品3を下型2の載置部20に載置したのち、リードフレーム30上に重なる位置まで進行させ、リードフレーム30上に降下させる。その後、
図11に示すようにポット22に樹脂5を投入したのち、リードフレーム30を上型1および下型2によりクランプし、型締めする。
【0044】
上型1および下型2を型締めしたとき、中間型9が上型1のゲート形成空間11A内に突出することで、上型1のゲート形成空間11Aと中間型9の上面9Aとの間に、基板31と上型1との間の空間40に向かって開口する上段ゲート90Aとなる空間が形成される。また、中間型9の下面には、リードフレーム30と基板31との間の空間33に向かって開口する下段ゲート90Bとなる凹部9Bが形成されている。
【0045】
上記構成の樹脂封止装置によれば、上型1および下型2を、中間型9を介して型締めするだけで、キャビティ4内の基板31と上型1との間の空間40に向かって開口する上段ゲート90Aと、キャビティ4内のリードフレーム30と基板31との間の空間33に向かって開口する下段ゲート90Bとが形成される。
【0046】
これにより、プランジャー23を上昇させ、ポット22よりカル12、上段ゲート90Aおよび下段ゲート90Bを経てキャビティ4内へ樹脂5を注入すると、
図12に示すようにキャビティ4内の基板31と上型1との間の空間40には上段ゲート90Aから、キャビティ4内のリードフレーム30と基板31との間の空間33には下段ゲート90Bから、それぞれ樹脂5が同時かつ均等に注入される。これにより、キャビティ4内において、リードフレーム30上に空間33を介して積層された基板31による樹脂流動の障害が緩和され、樹脂5の回り込みによるボイド、バブルやワイヤ流れなどの成形不良の発生が抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の樹脂封止装置は、積層されたリードフレームや基板などの複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品を樹脂封止する装置として有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 上型
2 下型
3,70,80 被成形品
4 キャビティ
5 樹脂
6,7,8 製品
6A,90A 上段ゲート
6B,90B 下段ゲート
9 中間型
9A 上面
9B 凹部
10,24 キャビティ形成空間
11A,11B ゲート形成空間
12 カル
20 載置部
21 突出部
22 ポット
23 プランジャー
25,33,36,40 空間
30 リードフレーム
31,35 基板
31A スペーサー
32 半導体チップ
34 貫通孔
71 電子部品
【要約】
【課題】積層されたリードフレームや基板などの複数の電子部品の間に空間を有する多層構造の被成形品を樹脂封止するに際し、ボイドや、バブルやワイヤ流れなどの成形不良の発生を抑制することが可能な樹脂封止装置の提供。
【解決手段】積層された複数の電子部品としてのリードフレーム30と基板31との間に空間33を有する多層構造の被成形品3を上型1および下型2によりクランプし、上型1および下型2を型締めしたときに形成されるキャビティ4内に樹脂5を注入して樹脂封止成形を行う樹脂封止装置であって、積層されたリードフレーム30と基板31との間の空間33および複数の電子部品のうち最も外側位置の電子部品である基板31と上型1との間の空間40に向かってそれぞれ開口した上段ゲート6Aおよび下段ゲート6Bを有する。
【選択図】
図4