(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ケーブルベアを用いた場合、線材の周囲を、当該線材より数倍太いケーブルベアが取り囲むことになり、配線のために大きなスペースが必要であった。また、ケーブルベアで弛みなく保持できる線材の長さには限界があり、一定以上の長さになれば、ケーブルベアを用いた場合でも、線材およびケーブルベアの弛みが生じる。さらに、ケーブルベアは、リンク結合したコマ部材を相互に動かすことで、湾曲位置や曲率を変化させているため、コマ部材同士の衝突により生じる騒音が大きいという問題もあった。
【0006】
そこで、一部では、ケーブルベアを用いない配線構造も提案されている。例えば、特許文献1には、超音波装置(固定部材)とプローブ(可動部材)とを接続するプローブケーブル(線材)を、レールに沿って移動可能なリング部に通す配線構造が開示されている。ただし、特許文献1は、プローブケーブルの断線防止のためのものであり、プローブケーブルの弛みを防止することはできなかった。
【0007】
特許文献2には、可動側配線保持部(可動部材)とベース側配線保持部(固定部材)との間に掛け渡された配線(線材)と、配線の一部を係止する係止部と、を備え、当該係止部が、可動側配線保持部の移動に伴い姿勢変化するリンク機構上に設けられた配線機構が開示されている。
【0008】
かかる配線機構によれば、ケーブルベアが不要であるため、スペースの増加や騒音といった問題を低減できる。しかし、特許文献2の機構では、リンク機構の姿勢変化に追従するように、配線の経路が変化する。そのため、リンク機構の姿勢変化に伴い、リンク機構の一部の屈曲角度が急峻になると配線の屈曲角度も急峻となり、配線に負荷がかかる。また、特許文献2の機構では、リンク機構を適切に動かすためには、配線に適度な余裕が残っている必要があり、配線の弛みを十分に無くすことは難しかった。
【0009】
そこで、本明細書では、可動部材と固定部材とを接続する線材を、ケーブルベアを用いることなく、適度なテンションを保った状態で線材を保持できる、配線構造を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書で開示する配線構造は、固定部材と、前記固定部材に対して直進移動する可動部材と、前記可動部材と前記固定部材とを接続する線材と、前記線材が掛け渡され、前記固定部材に対して直進移動可能な可動ガイドと、前記可動ガイドを、前記可動部材の直進移動に連動して、前記可動部材の直進移動に起因する前記線材の弛緩または緊張を相殺する方向に直進移動させる移動機構と、を備え
、前記可動部材の一端から延びる第一線材と、他端から延びる第二線材と、を備え、前記可動部材の両側には、第一線材が掛け渡される第一可動ガイドと、第二線材が掛け渡される第二可動ガイドと、が設けられており、前記移動機構は、前記第一可動ガイドと、前記第二可動ガイドと、の間の距離を拘束する拘束部材を有する、ことを特徴とする。
【0011】
かかる構成とすることで、可動ガイドが、可動部材の直進移動に起因する線材の弛緩・緊張を相殺する方向に直進移動するため、ケーブルベアを用いることなく、適度なテンションを保った状態で線材を保持できる。
【0019】
また、第一、第二可動ガイドを連結することで、専用の駆動源を設けなくても、二つの可動ガイドを、確実に、可動部材に連動して移動させることができる。
【0020】
また、本明細書で開示する他の配線構造は、固定部材と、前記固定部材に対して直進移動する可動部材と、前記可動部材と前記固定部材とを接続する線材と、前記線材が掛け渡され、前記固定部材に対して直進移動可能な可動ガイドと、前記可動ガイドを、前記可動部材の直進移動に連動して、前記可動部材の直進移動に起因する前記線材の弛緩または緊張を相殺する方向に直進移動させる移動機構と、を備え、前記線材は、前記可動部材の一端から延びる第一線材と、他端から延びる第二線材と、を含み、前記可動部材の両側には、第一線材が掛け渡される第一可動ガイドと、第二線材が掛け渡される第二可動ガイドと、が設けられており、前記移動機構は、前記第一可動ガイドに掛け渡された第一線材を緊張させる方向に、前記第一可動ガイドを引っ張る第一引っ張り機構と、前記第二可動ガイドに掛け渡された第二線材を緊張させる方向に、前記第二可動ガイドを引っ張る第二引っ張り機構と、を有する、ことを特徴とする。
【0022】
例えば、前記第一引っ張り機構は、前記第一可動ガイドに掛け渡された線材を緊張させる方向に、前記第一可動ガイドを付勢する弾性体を含み、前記第
二引っ張り機構は、前記第二可動ガイドに掛け渡された線材を緊張させる方向に、前記第二可動ガイドを付勢する弾性体を含んでもよい。また、前記第一引っ張り機構は、前記第一可動ガイドに連結された錘であって、重力を受けて落下することで、前記第一可動ガイドに掛け渡された線材を緊張させる方向に、前記第一可動ガイドを引っ張る錘を含み、前記第二引っ張り機構は、前記第二可動ガイドに連結された錘であって、重力を受けて落下することで、前記第二可動ガイドに掛け渡された線材を緊張させる方向に、前記第二可動ガイドを引っ張る錘を含んでもよい。
【0023】
本明細書で開示する他の配線構造は、固定部材と、前記固定部材に対して直進移動する可動部材と、前記可動部材と前記固定部材とを接続する線材と、前記線材が掛け渡され、前記固定部材に対して直進移動可能な可動ガイドと、前記可動ガイドを、前記可動部材の直進移動に連動して、前記可動部材の直進移動に起因する前記線材の弛緩または緊張を相殺する方向に直進移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、第一ローラ対と、前記第一ローラ対の間に掛け渡された第一無端ベルトと、を有する第一ベルトユニットと、第二ローラ対と、前記第二ローラ対の間に掛け渡された第二無端ベルトと、を有する第二ベルトユニットと、前記第一ベルトユニットが取り付けられた第一フレームと、前記第二ベルトユニットが取り付けられ、前記第一フレームに対して可動の第二フレームと、前記第一フレームと前記第二無端ベルトとを連結する第一リンクと、前記第二フレームと前記第一無端ベルトとを連結する第二リンクと、を備え、前記可動部材は、前記第二無端ベルトのうち、前記第二リンクが連結される連結点と、前記第二ローラ対を挟んで反対側となる面に取り付けられており、前記可動ガイドは、前記第二フレームに取り付けられ、第二フレームとともに直進移動
する、ことを特徴とする。
【0024】
かかる構成とすることで、一つのモータで、可動部材と可動ガイドの双方を連動して移動させることができる。
また、本明細書で開示する他の配線構造は、線材と、第一ベルトと、前記線材の一端を保持する固定部材と、不動の第一非可動部と、を有する固定ユニットと、前記第一非可動部に接続された第二ベルトと、前記第二ベルトに固定されるとともに前記線材の他端を保持する可動部材と、前記第一ベルトに接続された第二非可動部と、を有する可動ユニットと、前記線材が掛け渡され、前記可動部材の移動量の1/2倍だけ前記固定部材に対して直進移動することで前記可動部材の直進移動に起因する前記線材の弛緩または緊張を相殺する可動ガイドと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本明細書で開示する配線構造によれば、可動ガイドが、可動部材の直進移動に起因する線材の弛緩または緊張を相殺する方向に直進移動するため、ケーブルベアを用いることなく、適度なテンションを保った状態で線材を保持できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、配線構造10について図面を参照して説明する。
図1は、基本的な配線構造10の模式図である。本明細書で開示する配線構造10は、各種処理装置に組み込まれる。配線構造10が組み込まれる処理装置は、固定部材14と、当該固定部材14に対して直進移動する可動部材12と、可動部材12と固定部材14とを接続する線材16と、を有するのであれば、特に限定されない。したがって、この配線構造10は、直進移動する基板搬送ヘッドを備えた半導体実装装置や、三軸移動可能な主軸を備えた工作機械、各種製品を組み立てするために直進移動する処理ヘッドを備えた組立装置、直進移動するカメラを備えた監視装置等、多種多様な分野の処理装置に組み込むことができる。
【0028】
配線構造10は、可動部材12と、固定部材14と、線材16と、可動ガイド18と、移動機構20と、を備えている。可動部材12は、規定の第一方向に直進移動する部材である。
図1の図示例では、可動部材12は、紙面左右方向に移動する。この可動部材12を直進移動させる駆動機構は、特に、限定されず、例えば、モータの回転運動をボールねじ等の動力変換機構で直進運動に変換して可動部材12に伝達する機構や、リニアモータや電磁シリンダ、油圧シリンダ等の直動駆動源を有した機構等でもよい。また、可動部材12は、その内部、または、外部、または、内部および外部の双方に、モータ、ソレノイド、センサ、カメラ、光源、レンズ、吸着部材、吐出ノズル等、様々な要素(図示せず)が組み付けられている。以下では、可動部材12に組み付けられた要素を「可動側要素」と呼ぶ。
【0029】
固定部材14は、位置不変に取り付けられている。この固定部材には、可動側要素と、電気的または機械的または光学的に接続される要素(図示せず)が組み付けられている。以下では、固定部材14に組み付けられた要素を「固定側要素」と呼ぶ。固定側要素としては、電源装置、信号処理装置、中継コネクタ装置、ポンプ装置等が挙げられる。
【0030】
線材16は、可動部材12に設けられた可動側要素と、固定部材14に設けられた固定側要素とを接続する。線材16は、対応する可動側要素の特性に応じて選択される。したがって、線材16としては、例えば、給電ケーブル、信号ケーブル、光ケーブル、エアケーブル、液体ホース等がある。なお、線材16は、可動部材12と可動ガイド18との移動に追従して変形できる程度の可撓性を有している。一方で、線材16は、殆ど伸縮できず、その長さは、実質的に一定である。また、線材16は、一本でもよいし、複数本でもよい。いずれにしても、線材16は、可動部材12から延びて、可動ガイド18に掛け渡された後、固定部材14に接続される。
【0031】
可動ガイド18は、可動部材12から固定部材14に延びる線材16が、掛け渡され、引っ掛けられる部材である。この可動ガイド18は、掛け渡された線材16が、当該可動ガイド18の周面において摺動できるのであれば、その構成は、特に限定されない。したがって、可動ガイド18は、所定の軸回りに自転可能なプーリや、自転不能な円柱形ピンや非円形ピン等でもよい。ただし、可動ガイド18と線材16との摺動摩擦を低減するためには、可動ガイド18は、自転可能なプーリや、周面に複数のコロが配された部材等であることが望ましい。
【0032】
可動ガイド18は、可動部材12と連動して直進移動可能となっている。そのため、配線構造10には、当該可動ガイド18の直進移動をガイドするためのガイド部材として、例えば、ガイドレールや、ガイド用の長孔等(いずれも図示せず)が設けられている。可動ガイド18の個数や、位置、サイズは、後に例示するように、線材16の経路に応じて、適宜、変更可能である。
図1では、一つの線材16の経路途中に、一つの可動ガイド18を設けた例を示している。
【0033】
移動機構20は、可動部材12の直進移動に連動して、可動ガイド18を直進移動させる機構である。この移動機構20は、可動ガイド18を直進移動させることが出来るのであれば、特に、限定されない。したがって、例えば、移動機構20は、可動ガイド18の移動のために専用に設けられたモータを有してもよいし、可動ガイド18に可動部材12や他の可動ガイド18の動きを伝達する伝達機構を有してもよい。また、移動機構20は、可動ガイド18を弾性復元力や重力で引っ張る機構を有してもよいし、一つの駆動源(例えばモータ)の動力を可動部材12および可動ガイド18の双方に伝達する機構を有してもよい。いずれにしても、移動機構20は、可動部材12の直進移動に起因する線材16の弛緩または緊張を相殺するように、可動ガイド18を直進移動させる。
【0034】
これについて、
図1を例にして説明する。
図1の例では、可動部材12は、左右方向に直進移動する。また、線材16は、可動部材12の右端から右方向に真っ直ぐ延びた後、可動ガイド18に掛け渡されて(引っ掛けられて)、180度Uターンして、固定部材14に接続されている。この場合において、可動ガイド18が不変と仮定すると、可動部材12が、右方向に直進移動することで、線材16が弛緩する。こうした線材16の弛緩は、線材16のバタつきや、絡まり等を招く。一方、可動部材12が、左方向に移動すると、線材16は、可動部材12に引っ張られて緊張する。そして、線材16が過度に緊張すると、線材16の劣化や断線を招く。
【0035】
移動機構20は、こうした可動部材12の直進移動に起因する線材16の弛緩または緊張を相殺するべく、可動ガイド18を直進移動させる。具体的には、移動機構20は、可動部材12が線材16を弛緩させる方向に直進移動する場合には、可動ガイド18を線材を緊張させる方向に直進移動させる。また、移動機構20は、可動部材12が線材16を緊張させる方向に直進移動する場合には、可動ガイド18を線材を弛緩させる方向に直進移動させる。すなわち、
図1の例では、線材16は、可動部材が右方向に移動した場合または可動ガイド18が左方向に移動した場合に弛緩し、可動部材が左方向に移動した場合または可動ガイド18が右方向に移動した場合に緊張する。したがって、
図1の例において、移動機構20は、可動部材12が右向きに移動すれば、可動ガイド18も右向きに移動させ、可動部材12が左向きに移動すれば、可動ガイド18も左向きに移動させる。
【0036】
ここで、可動ガイド18の移動量lは、可動ガイド18の個数、線材16のUターン角度に応じて変化する。例えば、線材16が可動ガイド18において180度Uターンしており、可動ガイド18がn個あり、可動部材12の移動量がLである場合、可動ガイド18の移動量lは、l=L/(2×n)となる。
図1の例では、可動ガイド18は、1個だけであるため、移動機構20は、可動部材12が移動量Lだけ移動すれば、可動ガイド18を移動量l=L/2だけ移動させる。
【0037】
つまり、
図1の例において、移動機構20は、可動部材12の直進移動に連動して、可動ガイド18を、可動部材12と同一方向に、可動部材12の移動量Lの1/2倍だけ、直進移動させる。このように可動ガイド18を直進移動させることで、線材16の過度な弛緩および緊張が防止され、適度なテンションを保った状態で線材16が保持される。結果として、線材16のバタつきや絡みつき、断線といった問題が効果的に抑制される。また、この配線機構によれば、ケーブルベアのように大径長尺の部材が不要となるため、線材16の配線スペースを低減でき、また、騒音も小さく抑えることができる。さらに、本明細書で開示する配線構造10によれば、可動ガイド18の動きは、可動部材12と連動した直進移動という、極めて単純な動きである。そのため、可動ガイド18を容易に移動制御できる。
【0038】
次に、配線構造10の変形例について説明する。既述した通り、配線構造10に設けられる可動ガイド18の個数や位置、サイズは、適宜、変更されてもよい。例えば、可動ガイド18は、複数でもよい。したがって、
図2に示すように、二つの可動ガイド18、すなわち、第一可動ガイド18aおよび第二可動ガイド18bを設け、可動部材12から延びる線材16が、第一、第二可動ガイド18a,18bそれぞれにおいて、180度Uターンするようにしてもよい。この場合、可動部材12の移動量をLとすると、各可動ガイド18の移動量lは、l=L/4となる。
【0039】
また、この場合、第一可動ガイド18aは、可動部材12と同一方向に、第二可動ガイド18bは、可動部材12と逆方向に移動する。別の見方をすれば、可動部材12が、線材16を弛緩させる向き(右向き)に動く場合、可動ガイド18a,18bは、掛け渡された線材16を緊張させる向きに移動し、可動部材12が、線材16を緊張させる向き(左向き)に動く場合、可動ガイド18a,18bは、掛け渡された線材16を弛緩させる向きに移動する。このように可動ガイド18a,18bを複数設けた場合でも、各可動ガイド18a,18bが、可動部材12の直進移動に伴い生じる線材16の弛緩・緊張を相殺する方向に移動することで、線材16の弛みや断線を防止できる。また、可動ガイド18a,18bの個数を複数とした場合、一つの可動ガイド18a,18bの移動量lを低減できるため、可動ガイド18a,18bの移動スペースが確保しずらい場合にも適用できる。
【0040】
また、別の形態として、
図3に示すように、線材16の経路途中には、可動ガイド18の他に、位置固定の固定ガイド22が設けられてもよい。固定ガイド22は、可動ガイド18と同様に、線材16が掛け渡される部材であるが、可動ガイド18と異なり、所定の位置で不変である。そして、この固定ガイド22に線材16を掛け渡すことで線材16の経路が屈曲する。かかる構成とすることで、線材16の経路設計の自由度が向上し、配線構造10の適用範囲を広げることができる。
【0041】
また、これまでの説明では、線材16が、可動ガイド18において180度Uターンする構成のみを例示したが、可動ガイド18における線材16のUターン角度αは、適宜、変更されてもよい。例えば、
図4に示すように、可動ガイド18における線材16のUターン角度αは、180度でなくてもよい。この場合においても、移動機構20は、可動部材12が、線材16を弛緩させる向き(右向き)に移動すれば、可動ガイド18を、線材16を緊張させる向き(右向き)に、可動部材12が、線材16を緊張させる向き(左向き)に移動すれば、可動ガイド18を、線材16を弛緩させる向き(図示例では左向き)に移動させればよい。
【0042】
ただし、Uターン角度αを非180度とした場合、可動部材12の移動量Lに対する可動ガイド18の移動量lの値は、随時変化する。そのため、線材16の弛緩・緊張を防止できる移動量lの特定は、難しくなる。そこで、Uターン角度を非180度とした場合、移動機構20は、可動ガイド18を、線材16を緊張させる方向に引っ張る引っ張り機構とすることが望ましい。
【0043】
例えば、
図4の例では、移動機構20は、可動ガイド18を右方向に付勢するスプリング56を有することが望ましい。かかる構成とした場合、可動部材12が、線材16を弛緩させる向き(左向き)に移動すれば、可動ガイド18は、スプリング56の付勢力により、線材16を緊張させる向き(右向き)に移動する。また、可動部材12が、線材16を緊張させる向き(左向き)に移動した場合には、線材16に生じた張力により、可動ガイド18は、スプリング56の付勢力に抗して、線材16を弛緩させる向き(右向き)に移動する。そして、結果として、Uターン角度が非180度であっても、線材16の弛緩・緊張を抑制できる。
【0044】
次に、移動機構20の具体例について説明する。移動機構20は、既述した通り、可動部材12の移動に連動して、可動ガイド18を直進移動させる機構である。この移動機構20は、例えば、可動部材12を直進移動させる駆動源(モータ、油圧シリンダ等)とは独立して駆動する駆動源を有してもよい。
【0045】
具体的には、
図5に示すように、移動機構20は、可動部材12を直進移動させるモータ(図示せず)とは独立して設けられた駆動用モータ30と、そのモータ30の回転を直進運動として可動ガイド18に伝達する伝達機構32と、を備えてもよい。伝達機構32としては、例えば、ボールねじ等が挙げられる。
【0046】
また、別の形態として、移動機構20は、可動部材12を直進移動させるモータと同じモータで、可動ガイド18を直進移動させる機構でもよい。
図6は、一つのモータ30で、可動部材12および可動ガイド18の双方を直進移動させる移動機構20の一例を示している。
【0047】
図6の例において、移動機構20は、二つのベルトユニット、すなわち、第一ベルトユニット34および第二ベルトユニット44を有している。第一ベルトユニット34は、第一ローラ対36と、当該第一ローラ対36に掛け渡された第一無端ベルト38と、を有している。第一ローラ対36には、モータ30が連結されており、モータ30の駆動に伴い、第一ローラ対36、および、第一無端ベルト38が自転する。
【0048】
第二ベルトユニット44は、第二ローラ対46と、当該第二ローラ対46に掛け渡された第二無端ベルト48と、を有している。第二ベルトユニット44は、第一ベルトユニット34と平行に設けられている。この第二無端ベルト48には、可動部材12が取り付けられており、第二無端ベルト48が移動することで、可動部材12が直進移動する。
【0049】
第一ベルトユニット34は、第一フレーム40に、第二ベルトユニット44は、第二フレーム50に、それぞれ取り付けられている。第一フレーム40は、ベース面100に固着されており、その位置は、不変となっている。
【0050】
一方、第二フレーム50は、第一フレーム40に対して、直進移動可能となっており、第二フレーム50が直進移動することで、可動部材12の絶対位置も直進移動する。また、第二フレーム50には、連結部材42を介して可動ガイド18が連結されている。したがって、第二フレーム50が直進移動すると、可動ガイド18、および、可動部材12の双方が、直進移動することになる。
【0051】
さらに、第一フレーム40上の点Ffは、第二無端ベルト48上の点Bsに、第二フレーム50上の点Fsは、第一無端ベルト38上の点Bfに、それぞれ連結されている。なお、第二無端ベルト48上の点Bsは、可動部材12の取付位置と、第二ローラ対46を挟んで反対側におあり、第二無端ベルト48が自転した際、可動部材12は、点Bsと逆向きに移動する。
【0052】
以上のような移動機構20の動作について説明する。まず、モータ30により、第一ローラ対36を右回りに回転させた場合を考える。この場合、第一無端ベルト38も右回りに回転し、第一無端ベルト38上の点Bfは、右方向に移動する。このときの移動量をlとする。点Bfが移動することで、当該点Bfと連結された第二フレーム50も右方向に距離lだけ移動する。ここで、第二フレーム50には、第二ベルトユニット44および可動ガイド18も連結されているため、第二フレーム50の移動に伴い、第二ベルトユニット44(可動部材12)および可動ガイド18も、右方向に距離lだけ移動する。
【0053】
第二フレーム50が右方向に距離lだけ移動すれば、第二無端ベルト48上の点Bsも右方向に距離lだけ移動しようとする。しかし、点Bsは、第一フレーム40と連結されている関係上、その絶対位置を変えることはできない。そのため、第二フレーム50が右方向に距離lだけ移動した場合、第二フレーム50の移動に伴う点Bsの絶対位置変化を相殺するように、第二無端ベルト48は、右回りに距離lだけ回転する。これにより、点Bsの絶対位置は、不変となり、第一フレーム40との連結関係が維持される。
【0054】
そして、点Bsの絶対位置を不変に保つために、第二無端ベルト48が右回りに距離lだけ回転すれば、当然ながら、当該第二無端ベルト48に取り付けられた可動部材12も右方向に距離lだけ移動する。つまり、可動部材12の絶対位置は、第二フレーム50の移動、および、第二無端ベルト48の移動(回転)によって変化し、結果的には、可動部材12の移動量Lは、可動ガイド18の移動量lの2倍、つまり、L=2×lとなる。
【0055】
可動部材12を左方向に移動させた場合には、モータ30で、第一ローラ対36を左回りに回転させる。この場合は、各無端ベルト38,48が左回りに回転し、第二フレーム50が左向きに直進移動する。結果として、可動部材12が左向き移動量Lだけ、可動ガイド18が左向きに移動量l=L/2だけ、直進移動する。
【0056】
つまり、
図6に示す移動機構20によれば、一つのモータ30で、可動部材12および可動ガイド18の双方を直進移動させることができる。このとき、可動ガイド18の移動量lは、可動部材12の移動量Lの1/2倍であるため、可動部材12の直進移動に起因する線材16の弛緩および緊張を相殺できる。また、
図6に示す移動機構20の場合、可動部材12と可動ガイド18が、機械的に連結されているため、同期制御のためのセンサ等を設けなくても、可動部材12と可動ガイド18とを確実に連動して直進移動させることができる。
【0057】
また、別の形態として、移動機構20は、可動ガイド18を、可動部材12または他の可動ガイド18に従動させる従動機構を有してもよい。例えば、移動機構20は、可動部材12の動きを減速して、可動ガイド18に伝達するギア等を有してもよい。
【0058】
また、別の形態として、
図7に示すように、配線構造10が、間隔不変の一対の可動ガイド18a,18bを有する場合、移動機構20は、当該一対の可動ガイド18a,18bの距離(間隔)を拘束する拘束部材52を含んでもよい。
図7の例では、一つの可動部材12の一端(左端)から第一線材16aが、他端(右端)から第二線材16bが引き出されている。そして、第一線材16aが、第一可動ガイド18aに、第二線材16bが、第二可動ガイド18bに掛け渡され、それぞれ、180度Uターンしている。
【0059】
この場合、線材16a,16bの弛緩・緊張を防止するためには、可動部材12が移動量Lだけ移動したとき、第一、第二可動ガイド18a,18bも、可動部材12と同一方向に、移動量l=L/2だけ移動すればよい。つまり、線材16a,16bの弛緩・緊張を防止するための第一、第二可動ガイド18a,18bの移動方向、移動量は、常に同じであり、第一、第二可動ガイド18a,18bの間隔は、常に同じになる。
【0060】
拘束部材52は、この第一、第二可動ガイド18a,18bの間隔を、一定の値に拘束する部材で、例えば、一端が第一可動ガイド18aに、他端が第二可動ガイド18bに取り付けられた棒材である。かかる拘束部材52を設ければ、可動部材12の移動に連動する第一、第二可動ガイド18a,18bの移動が自動的に達成される。
【0061】
すなわち、可動部材12が右方向に移動して第一線材16aを右向きに引っ張ると、第一可動ガイド18aは、第一線材16aに生じる張力により、右方向に移動する。第一可動ガイド18aが右向きに移動すると、その動きが、拘束部材52を介して、第二可動ガイド18bに伝達され、第二可動ガイド18bも右向きに移動する。可動部材12が、左向きに移動した場合には、逆に、第二線材16bの張力により、第二可動ガイド18bが左向きに移動し、この第二可動ガイド18bの動きが、拘束部材52を介して、第一可動ガイド18aに伝達される。
【0062】
つまり、
図7の図示例においては、拘束部材52を設けることで、二つの可動ガイド18a,18bは、互いに、他方の動きに従動できる。結果として、可動ガイド18a,18bの移動のために、専用の駆動源を設ける必要がなく、可動ガイド18a,18bを適切に移動させることができる。
【0063】
また、別の形態として、移動機構20は、可動ガイド18を、線材16を緊張させる方向に引っ張る引っ張り機構を含んでもよい。例えば、移動機構20は、
図8に示すように、可動ガイド18を、緊張する方向に付勢するスプリング56を含んでもよい。この場合、可動部材12が、線材16を弛緩させる向き(左向き)に移動すれば、可動ガイド18は、スプリング56の付勢力により、自動的に、線材16の弛緩を解消する向き(左向き)に移動する。また、可動部材12が、線材16を緊張させる向き(右向き)に移動して、線材16が右方向に引っ張られれば、可動ガイド18は、当該線材16の張力により、スプリング56の付勢力に抗して、右向きに移動する。つまり、こうしたスプリング56を設けることで、可動ガイド18専用の駆動等を設けなくても、線材16を適切に保持できる。
【0064】
ただし、
図8に示すように、可動部材12の片側にのみスプリング56を設けた場合、可動部材12に、スプリング56の付勢力に応じた予圧がかかることになる。そこで、可動部材12にかかる予圧を低減したい場合は、
図9に示すように、可動部材12の両側に、可動ガイド18と、当該可動ガイド18を付勢するスプリング56と、を設ければよい。かかる構成とすることで、可動部材12にかかる予圧を低減しつつ、線材16を適切に保持できる。
【0065】
また、別の形態として、
図10に示すように、移動機構20は、可動ガイド18に連結され、重力を受けて落下することで線材16を緊張させる方向に可動ガイド18を引っ張る錘58を有してもよい。
図10の図示例では、線材16の可動ガイド18への進入・退出角度は、水平であり、可動ガイド18は、水平方向に移動可能となっている。可動ガイド18には、ワイヤ60が連結されており、このワイヤ60は、水平方向に延びた後、ピン62に掛け渡されて屈曲し、鉛直下向きに延びている。そして、このワイヤ60の先端には、錘58が設けられており、当該錘58に作用する重力により、可動ガイド18が、水平方向左向きに引っ張られている。
【0066】
かかる構成とした場合も、
図8の場合と同様に、可動部材12が、線材16を弛緩させる向き(左向き)に移動すれば、可動ガイド18は、重力により、自動的に、線材16の弛緩を解消する向き(左向き)に移動する。また、可動部材12が、線材16を緊張させる向き(右向き)に移動して、線材16が引っ張られれば、可動ガイド18は、当該線材16の張力により、重力に抗して、右向きに移動する。つまり、こうした錘58を設けることで、可動ガイド18専用のモータ等を設けなくても、線材16を適切に保持できる。なお、
図10の図示例では、可動ガイド18と別に錘58を設けたが、可動ガイド18が鉛直方向に移動する場合、当該可動ガイド18そのものを錘58として利用してもよい。
【0067】
また、これまで説明した移動機構20は、適宜、組み合わされてもよい。例えば、
図11に示すように、一つの線材16の経路途中に、第一可動ガイド18aと第二可動ガイド18bが設けられている場合、第一可動ガイド18aは、錘58により、第二可動ガイド18bは、スプリング56により、線材16を緊張させる方向に引っ張られていてもよい。また、さらに、別の形態として、第一可動ガイド18aは、専用のモータにより直進移動し、第二可動ガイド18bは、可動部材12の動きが減速されて伝達される等でもよい。
【0068】
いずれにしても、これまで説明した通り、線材16が掛け渡されるとともに可動部材12の直進移動に連動して直進移動する可動ガイド18を設けることで、ケーブルベアを用いることなく、適度なテンションを保った状態で線材16を保持できる。