特許第6683359号(P6683359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6683359
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/08 20060101AFI20200406BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   C04B24/08
   C04B24/12 A
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-558630(P2019-558630)
(86)(22)【出願日】2019年1月21日
(86)【国際出願番号】JP2019001703
【審査請求日】2019年10月25日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/023608
(32)【優先日】2018年6月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100198856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 聡
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】大石 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 洸平
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 和秀
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−295545(JP,A)
【文献】 特開2006−199953(JP,A)
【文献】 特開昭61−048480(JP,A)
【文献】 特開昭61−006020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
C08L 1/00−101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1で示される高級脂肪酸であり、不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸を含むことを特徴とする第一成分と、下記の化2で示される有機アミンを含む第二成分とで構成され
前記第一成分における不飽和脂肪酸が50〜99質量%、飽和脂肪酸が1〜50質量%である水硬性組成物用添加剤。
【化1】
(但し、RCOOは、炭素数10〜24の脂肪酸からカルボキシ基中の水素を除いた残基を示し、Mは水素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を示す。)
【化2】
(但し、R2は、炭素数1〜30のアルキル基または炭素数2〜30のアルケニル基を示し、AO,BOは、それぞれ炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、a,bは、0以上の整数であって、かつ、a+b≦100の条件を満たす。)
【請求項2】
前記第一成分における不飽和脂肪酸が70〜99質量%、飽和脂肪酸が1〜30質量%である請求項1記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項3】
下記の化3、化4、及び化5でそれぞれ示される脂肪族アルコールリン酸エステルを少なくとも一種以上含む第三成分を更に含有する請求項1または2記載の水硬性組成物用添加剤。
【化3】
【化4】
【化5】
(但し、R〜Rは、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、または炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基を示し、nは2または3の整数を示し、M〜Mは、水素、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属を示し、かつ、M〜Mの少なくとも一つはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む。)
【請求項4】
前記第一成分の高級脂肪酸は、
上記化1におけるRCOOが炭素数12〜20の脂肪酸からカルボキシ基中の水素を除いた残基である請求項1〜のいずれか一つの項記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項5】
前記第二成分の有機アミンは、
上記化2におけるRが炭素数6〜22のアルキル基またはアルケニル基である請求項1〜のいずれか一つの項記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項6】
前記第一成分の酸価及び前記第三成分の酸価の和である合計酸価は、
0.1〜500mg/gの範囲であり、
前記第二成分のアミン価は、
20〜200mg/gの範囲である請求項記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項7】
下記の式から求められる数値が、10〜300の範囲である請求項6記載の水硬性組成物用添加剤。
[(前記第二成分のアミン価×前記第二成分の質量)/{(前記第一成分の酸価及び前記第三成分の酸価の和である合計酸価)×(前記第一成分の質量及び前記第三成分の質量の和である合計質量)}]×100
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加物に関する。更に詳しくは、高い空気保持性を有し、それ自体の水溶液の安定性が高く、既存の水硬性組成物用添加剤との相溶性に優れ、かつ、水硬性組成物から得られるコンクリート硬化体等の凍結融解抵抗性の向上を図ることが可能な水硬性組成物用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水硬性組成物から得られる硬化体、例えば、コンクリート硬化体において、高耐久化に対する要望が高まってきている。コンクリート硬化体の耐久性を示す指標の一つとして、凍結融解抵抗性が知られている。コンクリート硬化体の凍結融解抵抗性の向上を図ることを目的として、コンクリート硬化体の内部に微細な気泡を混入してなるAEコンクリートが製造されている。しかしながら、コンクリート硬化体に使用する各種材料やその配合比率等の種々の条件によって、AEコンクリートの場合であっても十分な凍結融解抵抗性を有しないことがある。そのため、製造条件に応じて、空気量の増加や配合の修正等の種々の調整作業が行われている。
【0003】
例えば、AEコンクリートを製造する過程において、空気量を調整するために添加剤が用いられる。このとき、使用する添加剤の種類に応じて、得られるコンクリート硬化体の凍結融解抵抗性がそれぞれ異なる。ここで、凍結融解抵抗性に優れる添加剤として、リン酸エステル系の添加剤を使用したAE調整剤を使用するものが既に提案されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−100478号公報
【特許文献2】特開2010−285291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2に示されるリン酸エステル系の添加剤の場合、水や既存の水硬性組成物用添加剤との相溶性が乏しいことから運用面に課題を残しており、その結果、上記の添加剤は使用方法を限定せざるを得なかった。また、上記の添加剤を用いた場合、コンクリートの材料条件等によってはコンクリート中の空気保持性が十分とならない場合がみられ、時間経過とともにコンクリートのワーカビリティーが低下し、コンクリート打設時の施工性が低下することもあった。
【0006】
そこで、本発明の水硬性組成物用添加剤は、上記実情に鑑み、高い空気保持性を有し、それ自体の安定性に優れるとともに、既存の水硬性組成物用添加剤との相溶性に優れ、かつ、得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を示すことが可能な水硬性組成物用添加剤の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の高級脂肪酸と、特定の有機アミンとを含有した水硬性組成物用添加剤、または、上記構成に更に脂肪族アルコールリン酸エステルを含む水硬性組成物用添加剤が特に好適であることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の化1で示される不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸を含むことを特徴とする高級脂肪酸を含む第一成分と、下記の化2で示される有機アミンを含む第二成分とで構成され、第一成分における不飽和脂肪酸が50〜99質量%、第一成分における飽和脂肪酸が1〜50質量%である水硬性組成物用添加剤に関するものである。
【0009】
【化1】
【0010】
但し、上記化1において、RCOOは、炭素数10〜24の脂肪酸からカルボキシ基中の水素を除いた残基を示し、Mは水素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を示している。
【0011】
化1において、RCOOは炭素数10〜24の脂肪酸からカルボキシ基中の水素を除いた残基であり、Mは、水素、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属を示す。かかるRCOOとしては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、ミード酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸等の炭素数10〜24の脂肪酸からカルボキシ基中の水素を除いた残基が挙げられる。
【0012】
化1において、RCOOは炭素数10〜24の脂肪酸からカルボキシ基中の水素を除いた残基であるが、好ましくは炭素数12〜20の脂肪酸からカルボキシ基中の水素を除いた残基である。
【0013】
更に、第一成分中の不飽和脂肪酸および飽和脂肪酸の割合はさらに好ましくは不飽和脂肪酸を70〜99質量%、飽和脂肪酸を1〜30質量%の範囲である。
【0014】
【化2】
【0015】
但し、上記化2において、
は、炭素数1〜30のアルキル基または炭素数2〜30のアルケニル基を示し、AO,BOは、それぞれ炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、a,bは、0以上の整数であって、かつ、a+b≦100の条件を満たすものである。
【0016】
化2において、Rは炭素数1〜30のアルキル基または炭素数2〜30のアルケニル基である。かかるRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、オクタデセニル基、オクタデカジエニル基等が挙げられる。Rは、牛脂アミン、硬化牛脂アミン、ヤシ油アミン、パーム油アミン、大豆油アミン等のアミンから、アミノ基を除いた基であってもよい。
【0017】
は直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。Rの炭素数は1〜30であるが、最も好ましくは6〜22である。Rの炭素数が30超であると、そのような有機アミンは疎水性が増大する。
【0018】
化2において、AO、BOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であるが、好ましくはオキシエチレン基またはオキシプロピレン基であり、より好ましくはオキシエチレンである。a、bは、オキシアルキレン基の付加モル数を示す。
【0019】
化2において、a、bは0以上の整数であって、かつa+b≦100を満足する整数である。好ましくは1≦a+b≦50を満足する整数であり、より好ましくは2≦a+b≦50を満足する整数であり、特に好ましくは2≦a+b≦35を満足する整数であり、最も好ましくは3≦a+b≦35を満足する整数である。
【0020】
更に、本発明は 下記の化3、化4、及び化5でそれぞれ示される脂肪族アルコールリン酸エステルを少なくとも一種以上含む第三成分を更に含有するものであっても構わない。
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
但し、上記化3〜化5において、R〜Rは、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、または炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基を示し、nは2または3の整数を示し、M〜Mは、水素、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属を示し、かつ、M2〜M5の少なくとも一つはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含むものを示している。
【0025】
かかるRとしては、例えば、1)ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、2−プロピル−ヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−ブチル−オクチルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール等の炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、2)ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、2−プロピル−ヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−ブチル−オクチルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール等の炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基が挙げられる。なかでもRとしては、オクチルアルコール、2−エチルーヘキシルアルコール、ノニルアルコール、ドデシルアルコール、2−ブチル−オクチルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等の炭素数8〜22の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基が好ましい。
【0026】
化3で示される脂肪族アルコールリン酸エステルとしては、モノヘキシルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノ2−エチル−ヘキシルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノ2−ブチル−オクチルホスフェート、モノトリデシルホスフェート、モノミリスチルホスフェート、モノセチルホスフェート、モノステアリルホスフェート、モノイソステアリルホスフェート、モノオレイルホスフェート、モノエイコシルホスフェート、モノドコシルホスフェート、モノテトラコシルホスフェート等が挙げられる。
【0027】
化4において、R、Rは化3中のRについて記述したものと同一である。そのため、詳細な説明は省略する。
【0028】
化4で示される脂肪族アルコールリン酸エステルとしては、例えば、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジ2−エチル−ヘキシルホスフェート、ジノニルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、ジ2−ブチル−オクチルホスフェート、ジトリデシルホスフェート、ジミリスチルホスフェート、ジセチルホスフェート、ジステアリルホスフェート、ジイソステアリルホスフェート、ジオレイルホスフェート、ジデシルオレイルホスフェート、ジエイコシルホスフェート、ジドコシルホスフェート、ジテトラコシルホスフェート等が挙げられる。
【0029】
化5において、R、Rは化3のRについて記述したものと同一である。そのため、詳細な説明は省略する。また、nは2または3の整数である。
【0030】
化5で示される脂肪族アルコールリン酸エステルとしては、モノヘキシルピロホスフェート、ジへキシルピロホスフェート、モノオクチルピロホスフェート、ジオクチルピロホスフェート、モノ2−エチル−ヘキシルピロホスフェート、ジ2−エチル−ヘキシルピロホスフェート、モノノニルピロホスフェート、ジノニルピロホスフェート、モノドデシルピロホスフェート、ジドデシルピロホスフェート、モノオレイルピロホスフェート、ジオレイルピロホスフェート、ドデシルオレイルピロホスフェート、ジオレイルポリホスフェート等が挙げられる。
【0031】
更に、第一成分の高級脂肪酸は、上記化1におけるRCOOが炭素数12〜20の脂肪酸からカルボキシ基中の水素を除いた残基であっても構わない。
【0032】
加えて、第二成分の有機アミンは、上記化2におけるRが炭素数6〜22のアルキル基またはアルケニル基であっても構わない。
【0033】
また、第一成分の高級脂肪酸、及び第三成分の脂肪族アルコールリン酸エステルの合計酸価は特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜500mg/gの範囲とすることができる。好ましくは10〜400mg/g、より好ましくは50〜250mg/g、最も好ましくは100〜250mg/gの範囲である。
【0034】
ここで、酸価は、例えば、イソプロピルアルコール、キシレン/イソプロピルアルコール(容量比1/1)の混合液、もしくは水等の溶剤に溶解した試料と0.1N水酸化カリウムのエチレングリコール/イソプロピルアルコール(容量比1/1)の混合溶液とで電位差自動滴定装置を用いて電位差滴定し、終点の滴定量(ml)を測定して、試料1g中に含まれる高級脂肪酸、及びリン酸エステルの酸性基を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を下記の数1で算出した値である。
【0035】
【数1】
【0036】
上記数1において、
A1:滴定量 (ml)
f1:0.1N水酸化カリウム溶液の力価
W1:試料の量(g)
をそれぞれ示す。
【0037】
また、第二成分の有機アミンのアミン価は特に限定されるものではないが、例えば、20〜200mg/gの範囲とすることができる。好ましくは30〜150mg/g、最も好ましくは30〜100mg/gの範囲とすることができる。
【0038】
アミン価は、例えばイソプロピルアルコール、キシレン/イソプロピルアルコール(容量比1/1)の混合液、もしくは水等の溶剤に溶解した試料と0.1N塩酸エチレングリコール/イソプロピルアルコール(容量比1/1)混合溶液で電位差自動滴定装置を用いて電位差滴定をし、終点の滴定量(ml)を測定して、試料1g中に含まれる有機アミンのアミノ基を中和するのに要する塩酸と等量の水酸化カリウムのmg数を下記の数2で算出した値である。
【0039】
【数2】
【0040】
上記数2において、
A2:滴定量(ml)
f2:0.1N塩酸溶液の力価
W2:試料の量(g)
をそれぞれ示す。
【0041】
更に、下記の式から求められる数値X(%)を10〜300の範囲とすることができる。
[(第二成分のアミン価×第二成分の質量)/{(第一成分の酸価及び第三成分の酸価の和である合計酸価)×(第一成分の質量及び第三成分の質量の和である合計質量)}]×100
ここで、上記数値X(%)は、好ましくは、30〜250、より好ましくは40〜200、最も好ましくは50〜150の範囲とすることができる。
【0042】
本発明に係る水硬性組成物用添加剤を構成する脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩は、炭素数6〜24の脂肪族アルコール、または炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものに、例えば五酸化二リンを反応させて脂肪族アルコールリン酸エステルを得た後、かかる脂肪族アルコールリン酸エステルを水酸化カリウムなどのアルカリ成分及び化2で示される有機アミンで中和することにより得られる。前記の脂肪族アルコールリン酸エステルは通常、化3で示される脂肪族アルコールリン酸エステルと化4で示される脂肪族アルコールリン酸エステルの混合物となるが、場合によっては更に化5で示される脂肪族アルコールリン酸エステルをも含む混合物となる。
【0043】
本発明に係る水硬性組成物用添加剤は、土木、建築、二次製品等の水硬性結合材を含有する水硬性組成物に使用されるものである。かかる水硬性組成物としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート等が挙げられる。
【0044】
本発明に係る水硬性組成物用添加剤は既存の水硬性組成物用添加剤と併用することができる。かかる水硬性組成物用添加剤としては、AE減水剤、高性能AE減水剤、AE剤、消泡剤、収縮低減剤、増粘剤、硬化促進剤等が挙げられる。
【0045】
本発明に係る水硬性組成物用添加剤の使用対象となる水硬性組成物の調製に用いる水硬性結合材としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱セメント等の各種ポルトランドセメントの他に、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種混合セメントが挙げられる。また、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフュームなどの各種混和材を、先に示した各種セメントと併用してもよい。
【0046】
また水硬性組成物の調製に骨材を用いる場合の骨材としては細骨材と粗骨材が挙げられ、細骨材としては川砂、山砂、海砂、砕砂、スラグ細骨材等が挙げられ、粗骨材としては川砂利、砕石、軽量骨材等が挙げられる。
【0047】
更に水硬性組成物の水結合材比は通常70%以下とするが、20〜60%とするのが好ましく、30〜55%とするのがより好ましく、35〜55%とするのが特に好ましい。一般的に水結合材比が大きくなると、水硬性組成物の凍結融解抵抗性が低下し、70%を超えると所望の凍結融解抵抗性が得られなくなる場合が多い。
【発明の効果】
【0048】
本発明によると、高い空気保持性を有するとともに、それ自体の水溶液の安定性が高く、また既存の水硬性組成物用添加剤との溶解性(相溶性)も高く、結果として得られる硬化体が凍結融解抵抗性に優れたものになるという効果がある。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特に断りのない限り、“部”は質量部、“%”は質量%を意味する。
【0050】
1.実施例1(AE−1)(水硬性組成物用添加剤の水溶液の調製)
反応容器にイオン交換水810.5部、オレイン酸42.5部、ステアリン酸7.5部を仕込み、撹拌しながら、48%水酸化カリウム水溶液3.1部を滴下して中和を行った。得られた混合物から一部を採取し、混合物中に含まれる水分を乾燥させた後、電位差滴定にて酸価を測定したところ、172mg/gであった。ここに、ラウリルアミン−ポリオキシエチレン20モル付加物(アミン価55mg/g)136.4部を滴下して中和を行い、水硬性組成物用添加剤の水溶液(実施例1(AE−1))を調製した。
【0051】
2.実施例2〜11((AE−2)〜(AE−11))、実施例20(AE−20)、実施例27(AE−27)及び実施例28(AE−28)
上記実施例1と同様にして、水硬性組成物用添加剤の水溶液の実施例2〜11((AE−2)〜(AE−11))、実施例20(AE−20)、実施例27(AE−27)、実施例28(AE−28)をそれぞれ調製した。これらは水硬性組成物用添加剤の水溶液中に、Mを水素とした時の化1の量が5質量%となるように調製した。
【0052】
3.実施例12(AE−12)
反応容器に1−オクタノール25.6部を仕込み、120℃で0.05MPaの条件下にて2時間脱水処理した後、大気圧に戻し、撹拌しながら60±5℃で五酸化二燐11.1部を0.5時間かけて投入した。80℃にて3時間熟成した後、イオン交換水0.8部を投入して0.5時間熟成した。これにオレイン酸10.6部、ステアリン酸1.9部を添加した後、48%水酸化カリウム水溶液13.6部を50℃で滴下して中和を行った。得られた混合物から一部を採取し、混合物中に含まれる水分を乾燥させた後、電位差滴定にて酸価を測定したところ、221mg/gであった。ここに、ラウリルアミン−ポリオキシエチレン20モル付加物(アミン価55mg/g)119.1部を50℃で滴下して中和を行い、水硬性組成物用添加剤の水溶液中に、M〜Mを全て水素とした時の化1及び化3〜化5の量が5質量%となるようにイオン交換水を加え、水硬性組成物用添加剤の水溶液(実施例12(AE−12))を調製した。
【0053】
4.実施例13〜19((AE−13)〜(AE−19))、実施例21〜26((AE−21)〜(AE−26))、実施例29〜31((AE−29)〜(AE−31))、及び比較例2(RAE−2)
上記実施例12と同様にして、水硬性組成物用添加剤の水溶液の実施例13〜19((AE−13)〜(AE−19))、実施例21〜26((AE−21)〜(AE−26))、実施例29〜31((実施例29)〜(実施例31))及び比較例2(RAE−2)をそれぞれ調製した。これらは水硬性組成物用添加剤の水溶液中に、M〜Mを全て水素とした時の化1及び化3〜化5の量が5質量%となるように調製した。
【0054】
5.比較例1(RAE−1)
反応容器にイオン交換水929.2部、オレイン酸42.5部、ステアリン酸7.5部を仕込み、撹拌しながら、48%水酸化カリウム水溶液20.8部を滴下して中和を行い、水硬性組成物添加剤の水溶液((比較例1(RAE−1))を調製した。得られた混合物から一部を採取し、混合物中に含まれる水分を乾燥させた後、電位差滴定により酸価を測定したところ、0mg/gであった。
【0055】
6.比較例3(RAE−3)
反応容器に1−オクタノール25.6部を仕込み、120℃で0.05MPaの条件下に2時間脱水処理した後、大気圧に戻し、撹拌しながら60±5℃で五酸化二燐11.1部を0.5時間かけて投入した。80℃にて3時間熟成した後、イオン交換水0.8部を投入して0.5時間熟成した。これにオレイン酸10.6部、ステアリン酸1.9部を添加した後、48%水酸化カリウム水溶液34.1部を50℃で滴下して中和を行った。得られた混合物から一部を採取し、混合物中に含まれる水分を乾燥させた後、電位差滴定にて酸価を測定したところ、0mg/gであった。ここに、水硬性組成物用添加剤の水溶液中に、M〜Mが全て水素とした時の化1及び化3〜化5の量が5質量%となるようにイオン交換水を加え、水硬性組成物用添加剤の水溶液(比較例3(RAE−3))を調製した。
【0056】
7.比較例4(RAE−4)
上記比較例1と同様にして、水硬性組成物用添加剤の水溶液の比較例4(RAE−4)を調製した。これは水硬性組成物用添加剤の水溶液中に、Mを水素とした時の化1の量が5質量%となるように調製した。
【0057】
8.比較例5(RAE−5)
反応容器に1−オクタノール34.1部を仕込み、120℃で0.05MPaの条件下に2時間脱水処理した後、大気圧に戻し、撹拌しながら60±5℃で五酸化二燐14.8部を0.5時間かけて投入した。80℃にて3時間熟成した後、イオン交換水1.0部を投入して0.5時間熟成した。これに48%水酸化カリウム水溶液38.5部を50℃で滴下して中和を行った。得られた混合物から一部を採取し、混合物中に含まれる水分を乾燥させた後、電位差滴定にて酸価を測定したところ、0mg/gであった。ここに、水硬性組成物用添加剤の水溶液中に、M〜Mが全て水素とした時の化3〜化5の量が5質量%となるようにイオン交換水を加え、水硬性組成物用添加剤の水溶液(比較例5(RAE−5))を調製した。
【0058】
9.比較例6
反応容器にイオン交換水932.8部、48%水酸化カリウム水溶液17.2部を仕込んだ後、90℃になるよう加温した。そこにロジン(和光純薬製)を撹拌しながら50.0部添加した。添加後、1時間熟成を行い、ロジンのカリウム塩の水溶液(ロジンK)を調製した。
【0059】
以上の1.〜9.で調製した各実施例及び比較例の水硬性組成物用添加剤の内容を下記の表1にまとめて示す。なお、P核積分比率は、表1に示した水硬性組成物用添加剤の中で、第三成分である脂肪族アルコールリン酸エステルを含有するものに対し、過剰のKOHを加えてpHを12以上にした条件下で、31P−NMR(VALIAN社製の商品名MERCURY plus NMR Spectrometor System、300MHz)に供したときの測定値を用いて、下記の数3〜数5から算出した。溶媒は重水/テトラヒドロフラン=8/2(体積比)の混合溶媒を用いた。
【0060】
【表1】
【0061】
【数3】
【0062】
【数4】
【0063】
【数5】
【0064】
ここで、上記数3〜数5において、「P化3:化3で示される脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩等に帰属されるP核NMR積分値」、「P化4:化4で示される脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩等に帰属されるP核NMR積分値」、及び、「P化5:化5で示される脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩等に帰属されるP核NMR積分値」をそれぞれ示す。
【0065】
更に、上記表1において、
「化3:数3から算出されるP核積分比率」、「化4:数4から算出されるP核積分比率」、及び「化5:数5から算出されるP核積分比率」をそれぞれ示す。
【0066】
また、表1の第一成分(不飽和脂肪酸)において、「C16F1:パルミトレイン酸」、「C18F1:オレイン酸(但し、AE−10のみ C18F2:リノール酸、AE−11のみ C18F3:リノレン酸)」、及び「C22F1:エルカ酸」をそれぞれ示し、第一成分(飽和脂肪酸)において、「C10:カプリン酸」、「C12:ラウリン酸」、「C14:ミリスチン酸」、「C16:パルミチン酸」、及び「C18:ステアリン酸(但し、AE−7のみ iso−C18:イソステアリン酸)」をそれぞれ示し、第三成分(脂肪族アルコールリン酸エステル)のR−Rにおいて、「C8:オクチルアルコール」、「C9:ノニルアルコール」、「C12:ラウリルアルコール」、及び「C18F1:オレイルアルコール(但し、AE−21、25のみ C18F1E4:オレイルアルコール−ポリオキシエチレン4モル付加物)」から水酸基を除いた残基をそれぞれ示し、第二成分(有機アミン)のRにおいて、「C8:オクチル基」、「C12:ラウリル基」、及び「C18:ステアリル基」をそれぞれ示し、その他「K:カリウム塩」、「Na:ナトリウム塩」、及び「EO:オキシエチレン」をそれぞれ示す。ここで、上記は第一成分、第二成分、及び第三成分の構造を簡略化して示すものであり、Cの後ろの数字は「炭素数」を表し、Fの後ろの数字は「不飽和結合の数」を表すものとする。更に、Eは「オキシエチレン」を表し、Eの後ろの数字は「オキシエチレンの付加モル数」を表すものとする。
【0067】
10.ポリカルボン酸系減水剤の合成
イオン交換水244.3gにポリ(平均付加モル数53モル)エチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル368.3gを反応容器に仕込み、雰囲気を窒素置換し、撹拌しながら徐々に加温した。反応系の温度を温水浴にて70℃に保ち、過酸化水素3.5%水溶液23.5gを3時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換水117.5gにアクリル酸23.5gを溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換水15.0gにL−アスコルビン酸1.9gと3―メルカプトプロピオン酸1.9gを溶解させた水溶液を4時間かけて滴下して反応させた。得られた共重合物に30%水酸化ナトリウム水溶液45.5g、イオン交換水を加え、水溶性ビニル共重合体の40%水溶液(減水剤B液)を得た。この水溶性ビニル共重合体を分析したところ、質量平均分子量は45000であった。なお、共重合体の質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定した。
【0068】
11.測定条件
装置:Shodex GPC−101(昭和電工製)
カラム:OHpak SB−G+SB−806M HQ+SB−806M HQ(昭和電工製)
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:0.7mL/分
カラム温度:40℃
試料濃度:試料濃度0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:PEG/PEO(アジレント製)
【0069】
12.水硬性組成物用添加剤の水溶液の安定性及び減水剤(既存の水硬性組成物用添加剤)との相溶性
12−1.水硬性組成物用添加剤の水溶液の安定性
表1で調製した水硬性組成物用添加剤の水溶液を、よく振り混ぜた後、透明な容器に入れ、5℃、20℃、40℃で1週間静置し、溶解性を目視で確認し、後述する評価基準で評価した。その結果を下記の表2にまとめて示す。
【0070】
12−2.水硬性組成物用添加剤の水溶液と減水剤との相溶性
ポリカルボン酸系高性能AE減水剤「チューポールHP−11(竹本油脂製−減水剤A液)」、減水剤B液、変性リグニンスルホン酸とポリカルボン酸系化合物の複合体のAE減水剤「チューポールEX60(竹本油脂製−減水剤C液)」、ナフタレン系高性能減水剤「マイティ150(花王製−減水剤D液)」、メラミン系高性能減水剤「アクセリート100(日産化学製−減水剤E液)」に対し、水硬性組成物用添加剤の水溶液を1質量%となるよう添加し、20℃で1週間静置して、溶解性を目視で確認し、次に記載する評価基準で評価した。その結果を下記の表2にまとめて示す。
【0071】
12−3.安定性及び相溶性の評価基準
A:1週間以上溶解
B:1日間以上溶解するが、1週間以内に分離
C:1日以内に分離
【0072】
【表2】
【0073】
13.AEコンクリート組成物の調製及び評価
13−1.AEコンクリート組成物の調製
表3に記載した配合条件で、50Lのパン型強制練りミキサーに普通ポルトランドセメント(太平洋セメント製、宇部三菱セメント製及び住友大阪セメント製の普通ポルトランドセメントの等量混合物、密度=3.16g/cm)、陸砂(大井川水系産、密度=2.58g/cm)、砕石(岡崎産、密度=2.66g/cm)、減水剤A液または減水剤B液、水硬性組成物用添加剤の水溶液をそれぞれ所定量及び、消泡剤「AFK−2(竹本油脂製)」をセメント質量の0.0005%を練り混ぜ水(上水道水)と共に投入して90秒間練混ぜ、想定スランプが18±1cm、想定空気量が4.5±0.5%の範囲としたAEコンクリート組成物を調製し、スランプ、空気量及び凍結融解抵抗性の指標としての凍結融解試験における耐久性指数(300サイクル)を求め(詳細は後述する)、その結果を表4にまとめて示す。更に、減水剤C液を用いた場合について、表5に示した配合条件により同様の試験を行った。その結果を表6にまとめて示す。
【0074】
13−2.空気量、スランプ、及び凍結融解試験における耐久性指数の測定
空気量(容量%):練り混ぜ直後のAEコンクリート組成物について、JIS A 1128に準拠して測定した。
スランプ(cm):空気量の測定と同時にJIS A 1101に準拠して測定した。
凍結融解試験における耐久性指数:各例の水硬性組成物用添加剤の水溶液を用いて調製したAEコンクリート組成物の硬化体について、JIS A 1148に準拠して耐久性指数を求めた。この数値は、最大値が100で、100に近いほど、凍結融解に対する抵抗性が優れていることを示す。
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
ここで、表4,6において、減水剤の使用量及び水硬性組成物用添加剤の水溶液の使用量は、セメント(C)に対する質量パーセントを示している。
【0080】
13−3.凍結融解抵抗性の評価基準
凍結融解抵抗性の評価は次の評価基準に基づいて行なった。すなわち、凍結融解試験における耐久性指数が80以上のものを“A”、一方、耐久性指数が80未満のものを“B”とした。
【0081】
表2、表4、及び表6に示される結果から明らかなように、本発明の水硬性組成物用添加剤において、高い空気保持性を有し、それ自体の安定性に優れるとともに、既存の水硬性組成物用添加剤との溶解性(相溶性)が良好なものとなり、結果として得られるコンクリート硬化体等の凍結融解抵抗性に優れたものとなることが確認された。


【要約】
水硬性組成物用添加剤は、不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸を含むことを特徴とする高級脂肪酸を含む第一成分と、有機アミンを含む第二成分とで構成される。加えて、脂肪族アルコールリン酸エステルを少なくとも一種以上含む第三成分を更に含有するものであってもよい。