(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下に挙げる実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。また、以下の説明では、本実施形態における各構成要素の相対的な位置関係を特定するために便宜的に上下方向、正面、背面などを設定しているが、これらは、重力方向の上下とは一致しない場合もあるし、本実施形態の使用態様を限定するものでもない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る医療用鉗子の先端側から目視した斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る医療用鉗子の正面図であり、
図3は、本実施形態に係る医療用鉗子を平面視した(
図1及び2の紙面上側から目視した)平面図であり、
図4は、本実施形態に係る医療用鉗子を下面側(
図1及び2の紙面下側)から目視した底面図である。なお、
図3は、使用態様を示すために操作者の手も示されている。
【0012】
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
本実施形態に係る医療用鉗子(以降、鉗子と略称する場合もある)1は、先端が開閉する一対の把持片21を含む処置部2と、処置部2に対する操作を可能とするハンドル部5と、処置部2とハンドル部5とを繋ぐシャフト部3とを有している。本明細書では、説明の便宜のため、処置部2が設けられている側を鉗子1の先端側と表記し、ハンドル部5が設けられている側を鉗子1の基端側と表記する。
【0013】
ハンドル部5は、グリップ部51及び一対の操作部53を含んでいる。
グリップ部51は、シャフト部3から下方に延設されている。操作者は、このグリップ部51を手のひらで握ることで、安定した状態で鉗子1を操作することができる。
一対の操作部53(53a及び53b)は、平面視において(
図3において)、シャフト部3の長手方向の延長線SDを挟んだ両側の、グリップ部51から先端側寄りの位置にそれぞれ設けられており、連動して互いに接近動作及び離間動作が可能である。ここで、「グリップ部51から先端側寄りの位置」は、操作者がグリップ部51を手のひらで握った状態でその手の親指及び少なくとも一本の他の指が操作部53a及び53bにそれぞれ届く位置に設定されることが好ましい。本鉗子1は医療用であるため、例えば、成人の平均的な手の大きさ又は指の長さに従って、当該位置が設定される。
一対の把持片21は、一対の操作部53の接近動作及び離間動作に伴い、開閉する。
【0014】
本実施形態に係る鉗子1では、操作者は、グリップ部51を手のひらで握った状態で、その手の親指で一方の操作部53aを操作し、その手の少なくとも一本の他の指で他方の操作部53bを操作する。一対の操作部53は、連動して互いに接近動作及び離間動作が可能となっているため、操作者は、操作部53aを操作する手指と操作部53bを操作する他の手指とを接近及び離間する操作を行うことになる。この操作は、人が手指で物を摘む動作に近似するため、操作者は、摘み動作と同様の操作感を感じながら、安定的に鉗子1を扱うことができる。
更に、操作者側から見れば、一対の操作部53の間の先端側にシャフト部3及び処置部2が位置することになるため、操作者は、自身の摘み動作が自身の手指の間の先で把持片21による把持動作と連動していることを直接的に感じることができる。これにより、操作者は、摘み動作と同じ感覚で鉗子1を操作することができるため、安定して緻密操作が可能となる。
【0015】
以下、本実施形態に係る医療用鉗子1について更に詳細に説明する。
処置部2は、先端が開閉可能な一対の把持片21を有する。一対の把持片21の開閉動作は公知の構造により実現されればよく、本実施形態では、一対の把持片21の開閉動作の実現手法は制限されない。例えば、一対の把持片21は、支持ピン(図示せず)によって軸支されつつ、リンク機構(図示せず)に接続されている。リンク機構は、例えば、シャフト部3内で押し引きされる後述のワイヤ部材7に接続されており、そのワイヤ部材7の押し引きにより、一対の把持片21を開閉させる。以降、一対の把持片21の開閉を処置部2の作動と表記する場合もある。
【0016】
本実施形態では、
図1及び
図3に示されるように、一対の把持片21の先端の開閉方向と一対の操作部53に対する操作方向とが略一致しているため、操作者は、一対の操作部53に対する自身の操作と一対の把持片21の開閉動作とを関連付け易いため、摘み動作と同じ感覚で鉗子1を操作することができる。
【0017】
シャフト部3は、中空の管部材である。シャフト部3は、後述のワイヤ部材7などのような、処置部2を作動させるために一対の操作部53に対してなされた操作を伝達する伝達手段をその中空領域に内包している。
シャフト部3の形状は、所定の長さの直線棒形状である。但し、シャフト部3の長さ及び形状は任意である。シャフト部3は、曲線形状を部分的に有していてもよい。また、シャフト部3自体は、内視鏡のように曲げ動作を可能とする構造を有していてもよい。
また、シャフト部3の素材は任意である。シャフト部3は、その少なくとも一部が患者の体内に挿入されるため、曲げ剛性が強く耐久性の高い素材で形成されることが望ましい。また、操作者が片手で操作し易いように、シャフト部3は、軽量の素材で形成されることが好ましい。
【0018】
シャフト部3は、先端側で処置部2と接続され、基端側でハンドル部5と接続されている。シャフト部3と処置部2との間及びシャフト部3とハンドル部5との間の接続形態は制限されない。
処置部2及びシャフト部3は、ハンドル部5に対して着脱可能に構成されることが好ましい。上述のように、処置部2及びシャフト部3は、患者の体内に挿入されるため、取り換え利用又は洗浄する必要があるからである。
シャフト部3と処置部2とは着脱可能であってもよいし、着脱不能であってもよい。
【0019】
グリップ部51は、手のひら及びその手の一対の操作部53の操作に利用されていない手指により握られる部位であるため、握りやすさから楕円柱形状を有することが好ましい。例えば、グリップ部51の長手方向に直交する楕円状断面の大きさは、操作者である成人の平均的な手の大きさに合うように設定される。
更に言えば、
図3及び
図4に示されるように、グリップ部51の楕円柱形状における楕円長軸方向ADとシャフト部3の長手方向SDとが平面視及び底面視(下方側からの目視)において直交せず交差することが望ましい。これにより、操作に用いる親指と他の指とを各操作面54a及び54bに置いた状態で、グリップ部51の側面の曲率の大きい部分が手のひらにフィットし、操作者は、摘み動作時に手及び腕に負担を感じない自然な手腕姿勢で鉗子1を操作することができる。つまり、平面視及び底面視における方向ADと方向SDとのなす角度は、操作面54を操作する親指と他の指との長さの違いを解消可能な角度に設定されることが望ましい。例えば、その先端側の角度は、45度近辺(±10度程度)に設定される。
なお、
図3及び
図4に示される楕円長軸方向ADは、操作部53aを親指で操作し、操作部53bを他の指で操作する際に(右利きの際に)好ましい方向となっている。このため、操作部53bを親指で操作し、操作部53aを他の指で操作する際(左利きの際)には、その方向ADは、平面視及び底面視における方向ADと方向SDとのなす角度が方向SDに対して線対称となるように、設定されることが好ましい。
また、グリップ部51の長手方向は、一対の操作部53における接近動作及び離間動作が行われる動作平面(後述)を
図2に示されるように水平面に設定した場合に、グリップ部51の下端が上端よりも基端側に傾けられている。この傾きは、操作者の摘み動作時の手のひらの傾きに近似するよう設定されているため、操作者は、より自然な手の形で一対の操作部53を操作することができる。
【0020】
図5は、一対の操作部53に関連するハンドル部5の内部構造の一部を正面側から目視した図である。
図6は、一対の操作部53に関連するハンドル部5の内部構造の一部を平面視した平面図である。
図5は、ハンドル部5の正面側の外形カバーが取り外された状態を簡略化して表しており、背面側の外形カバーが部分的に図示されている。
図6では、外形カバーは図示されていない。
【0021】
一対の操作部53は、操作者の手指による操作を受ける一対の操作面54を含んでいる。本実施形態では、各操作面54a及び54bは、手指の腹と接触するための、所定の面積を有する平面として実現されている。各操作面54a及び54bの面積は、例えば、操作者である成人の親指の腹の平均的な面積よりも広く設定される。
本実施形態では、各操作面54a及び54bは、一対の操作部53が相互に最も離れた状態で、平面視においてシャフト部3の長手方向の延長線に対して略逆向きとなるように配置されている。また、各操作部53a及び54bは、
図1に示されているように、コの字形状を有しており、そのコの字形状の内部に設けられている。このように各操作面54a及び54bに上壁及び下壁が設けられることで、操作する手指が各操作面54a及び54bからずれることを防ぐことができる。
但し、一対の操作部53及び一対の操作面54の形状や大きさ等は、上述のような例に限定されない。各操作面54a及び54bは、手指による操作を受けることができれば、曲面であってもよいし、シャフト部3の長手方向の延長線を介して相互に対向するように設けられていてもよい。また、一対の操作部53及び一対の操作面54の各々は、完全に同一形状でなくてもよい。
【0022】
また、一対の操作部53は、パンタグラフ機構52に接続されている。このパンタグラフ機構52は、
図6に示されるように、四つの連結軸57、58、59a及び59bと、四つのリンク55a、55b、56a及び56bとから形成されている。
【0023】
各連結軸は、例えば、連結する二つのリンクを貫通してピン接合させる連結ピンである。中でも、連結軸57は、外部ケースで位置が固定されており、固定軸57とも表記される。また、連結軸58は、その固定軸57に対して接近及び離間する方向に移動可能であり、移動軸58とも表記される。移動軸58の移動方向及び移動範囲は、外部ケースにて制限されている。移動軸58の移動方向は、固定軸57に対して接近及び離間する方向、即ち、四つのリンク55a、55b、56a及び56bで形成するひし形における固定軸57と移動軸58とを結ぶ対角線及びその延長線上の方向に制限されている。移動範囲については、例えば、移動軸58が固定軸57に接近する限界が外部ケースにより設定されている。なお、移動軸58が固定軸57から離間する限界については、パンタグラフ機構52の構造上の限界とされてもよい。
【0024】
各リンクは、四つの連結軸の中の二つによりその両端において他の二つのリンクとそれぞれ回動可能に連結されている。具体的には、リンク55aは、一端で移動軸58によりリンク55bとピン接合されており、他端で連結軸59aによりリンク56aとピン接合されている。リンク55bは、一端で移動軸58によりリンク55aとピン接合されており、他端で連結軸59bによりリンク56bとピン接合されている。リンク56aは、一端で固定軸57によりリンク56bとピン接合されており、他端で連結軸59aによりリンク55aとピン接合されている。リンク56bは、一端で固定軸57によりリンク56aとピン接合されており、他端で連結軸59bによりリンク55bとピン接合されている。
【0025】
一対の操作部53は、移動軸58で連結されている二つのリンク55a及び55bにおける他の連結軸59a及び59b側にそれぞれ接続されている。本実施形態では、各操作部53a及び54bは、リンク55a及び55bと一体形成されており、各リンク55a及び55bにおける連結軸59a及び59bによる連結部からパンタグラフ機構52の(ひし形の)外側向きに延設されている。但し、各操作部53a及び53bとリンク55a及び55bとの接続形態は一体形成に限定されない。各操作部53a及び53bとリンク55a及び55bとはそれぞれ別体として形成されており、各々が何らかの連結手段により連結されていてもよい。
本実施形態では、
図1及び
図4などに示されるように、一対の操作部53、それらに接続されるリンク55a及び55bの一部、並びにリンク56a及び56bの一部が、外形カバーの開口部から鉗子1の正面側外向き及び背面側の外向きに突出している。
【0026】
ここで、パンタグラフ機構52では、対向する連結軸57及び58のうちの一方の固定軸57の位置が固定されており、他方の移動軸58の位置が可変である。このようなパンタグラフ機構52の構造により、連結軸59a及び59bに接続されている各操作部53a及び53bは、連動して互いに接近動作及び離間動作が可能である。一対の操作部53における接近動作及び離間動作が行われる平面(
図2及び
図5の左右方向からなる面)は、一対の操作部53の動作平面と表記される場合もある。
【0027】
図7は、一対の操作部53が
図6に示される状態よりも相互に接近した状態を平面視した平面図である。
図7に示されるように、一対の操作部53は、各操作面54a及び54bで操作者の手指からの押圧を受けると、リンク56bとリンク55bとのなす角度及びリンク56aとリンク55aとのなす角度の増大により、連動して互いに接近する。このような一対の操作部53の接近動作に伴い、移動軸58は、
図7の紙面縦方向にパンタグラフ機構52が収縮することにより、固定軸57に対して離間する方向に移動する。
逆に、一対の操作部53は、リンク56bとリンク55bとのなす角度及びリンク56aとリンク55aとのなす角度の減少により、連動して互いに離間する。この離間動作に伴い、移動軸58は、
図7の紙面縦方向にパンタグラフ機構52の伸長により、固定軸57に対して接近する方向に移動する。
【0028】
また、
図7に示されるように、一対の操作部53の接近動作に伴う平面視における一対の操作面54間の距離の短縮度合が、各操作面54a及び54bの先端側のほうが各操作面54a及び54bの基端側よりも大きい。ここで、平面視における一対の操作面54の先端側間及び基端側間の距離は、平面視における先端側の任意の点間の距離及び基端側の任意の点間の距離を意味する。先端側及び基端側の任意の点は、操作面54a及び54b間において、相対的に同一位置に設定されることが望ましい。
【0029】
本実施形態では、一対の操作部53が最も離間している状態(例えば、
図6に図示される状態)において、一対の操作面54は、略平行状態となっているため、一対の操作部53の接近動作に伴い、一対の操作面54は、先端側の端部どうしが基端側の端部どうしよりも接近する位置関係となる。ここで、各操作面54a及び54bの先端側は、手指の先(指先)側となり、その基端側は、手指の付け根側となる。よって、一対の操作面54における上述のような接近軌跡は、手の指先を使った人の摘み動作時の指先の軌跡に限りなく近い軌跡となる。ここでの「手の指先を使った人の摘み動作」とは、手指の関節を曲げて、親指と他の指との指先どうしを近づける動作、言い換えれば、親指と他の指と手のひらとで環形状(円形状)を形成しようとする動作である。この摘み動作は、関節を曲げず手指を伸ばした状態で物を挟む動作よりも、摘む部分に力を加え易いため、このような一対の操作面54の動作により、より安定して緻密な操作を可能とすることができる。
【0030】
パンタグラフ機構52の移動軸58にはアーム部63が回動可能に連結されている。本実施形態では、移動軸58に固定されている軸支部61がアーム部63を正面背面方向に貫通する支軸ピン62により回動可能に軸支する。但し、移動軸58とアーム部63との連結構造は、このような例に限定されず、移動軸58とアーム部63とは一体形成されていてもよい。
アーム部63は、直線棒状の部材であり、その一端が移動軸58と回動可能に連結されており、他端がスライド部65と回動可能に連結されている。
【0031】
スライド部65は、上述のようにアーム部63の一端と回動可能に連結されており、所定方向に移動可能である。
本実施形態では、スライド部65の一部である軸支部66がアーム部63を正面背面方向に貫通する支軸ピン64により回動可能に軸支する。但し、スライド部65とアーム部63との連結構造はこのような例に限定されない。また、スライド部65と軸支部66とは一体形成されていなくてもよい。
また、スライド部65は、少なくとも一部がグリップ部51の外形カバーで覆われており、その外形カバーの内装によりその移動方向が制限されている。本実施形態では、スライド部65の移動方向は、一対の操作部53の動作平面に直交する方向に制限されている。即ち、本実施形態では、移動軸58の移動方向、即ち、一対の操作部53の動作平面上における固定軸57に対して移動軸58が接近及び離間する方向が、その動作平面に直交する方向に変換される。
【0032】
本実施形態では、スライド部65には、静荷重として、付勢手段(図示せず)からの付勢力が上向きにかかっている。付勢手段は、押しバネなどにより実現される。但し、付勢手段の具体的構造は限定されない。
一方で、動荷重として、スライド部65には、アーム部63からの押圧力が下向きにかかる。アーム部63による押圧力の原動力は、一対の操作部53bに対する操作者の操作力(摘み押圧力)であるため、その動荷重は操作荷重とも呼ぶことができる。
なお、ここでは、説明の便宜のため、スライド部65に作用する重力や摩擦抵抗、スライド部65と連動する他の構成の動き抵抗などの他の外力は無視する。
操作荷重が静荷重よりも優位な場合、スライド部65は、下方に移動する。一方で、一対の操作部53に対して何ら操作が加えられない状態などのように、静荷重が操作荷重よりも優位な場合、スライド部65は、上方に移動する。
【0033】
スライド部65は、自身の移動により、後述のワイヤ部材7を押し引きする。例えば、スライド部65が、ワイヤ部材7の基端側の端部を保持するワイヤ保持機構と一体形成されていてもよい。スライド部65は、別体のワイヤ保持機構を押し下げる構造及び押し上げる構造を有していてもよい。スライド部65は、ワイヤ保持機構を押し下げる構造を有し、バネ手段等により付勢されたワイヤ保持機構に押し上げられる構造を有していてもよい。また、鉗子1が、ワイヤ部材7の巻き取り機構と、スライド部65の移動をその巻き取り機構の回転軸の回転運動に変換する変換機構とを更に有し、スライド部65の上下移動に伴い、巻き取り機構が巻き取り及び送り出し動作を行うことで、ワイヤ部材7の押し引きが実現されてもよい。このように、スライド部65によるワイヤ部材7を押し引きする構造については、制限されない。
【0034】
本実施形態では、一対の操作部53に対する操作を処置部2に伝達する手段として、ワイヤ部材7が用いられる。ワイヤ部材7は、スライド部65の上述のような移動により、ハンドル部5内及びシャフト部3内をガイド手段(図示せず)に沿って押し引きされる。ワイヤ部材7は、スライド部65からガイド手段(図示せず)に沿ってハンドル部5内及びシャフト部3内を通り、処置部2に接続されており、処置部2において、そのワイヤ部材7の押し引きによって、一対の把持片21が開閉するように構成されている。
ワイヤ部材7の材質は、金属、樹脂若しくはそれらの複合体であり、また、単線であっても撚り線であってもよい。また、ワイヤ部材7は、そのような線状体でなく、ロッドのような棒状の部材であってもよい。
【0035】
図8は、鉗子1の動作を概念的に示す図である。
図8(a)は、一対の把持片21が開いた状態の鉗子1を示しており、
図8(b)は、一対の把持片21が閉じた状態の鉗子1を示している。加えて、
図8(b)では、一対の把持片21が閉じる際の各構成要素の動作方向が矢印で概念的に示されている。以下、
図8等の図面を用いて、一対の把持片21の開閉に関わる鉗子1の動作について説明する。
【0036】
一対の把持片21の先端を閉じる際には、各構成要素は次のように動作する。
操作者の操作により一対の操作部53が連動して相互に接近する(
図7参照)。このとき、一対の操作面54に操作荷重(動荷重)がかかり、各操作面54a及び54bにおいて先端側のほうが基端側よりもより接近し、操作者の手指の形が指先を使った摘み動作時の形状となる。
一対の操作部53の接近動作に伴い、移動軸58が固定軸57に対して離間する方向に移動する。
移動軸58が離間方向へ移動すると、アーム部63が、起き上がる方向に回動し、軸支部66を介してスライド部65を押圧する。
スライド部65は、グリップ部51の外形カバーの内装で移動方向が上下方向に制限されているため、動荷重優位となり、アーム部63からの押圧力により、下方向に移動する。
スライド部65が下方に移動すると、ワイヤ部材7が基端側(グリップ部51の下端側)に引っ張られる。
ワイヤ部材7が引っ張られると、処置部2が一対の把持片21の先端を閉じる。
【0037】
一対の把持片21の先端が開く際には、各構成要素は次のように動作する。
操作荷重が小さくなる又はなくなると、静荷重優位となり、付勢手段(図示せず)による付勢力によりスライド部65が上向きに移動する。
スライド部65が上向きに移動すると、ワイヤ部材7が押し出される。
ワイヤ部材7が押し出されると、処置部2が一対の把持片21の先端を開かせる。
一方で、スライド部65が上向きに移動すると、アーム部63は、そのスライド部65側の支持端が上昇することにより、軸支部61を介して移動軸58を固定軸57に接近する方向に押圧する。
移動軸58の接近動作に伴い、一対の操作部53bが相互に離間する方向に移動する(
図6参照)。これにより、各操作部53a及び53bが略平行状態に近づいていくため、操作者の手指の形が指先を使った摘み動作から解放する形状に変化することになる。
【0038】
[変形例]
本実施形態では、一対の操作部53は、それらを互いに離間する操作を受け付ける構成を有していなかった。しかしながら、一対の操作部53は、そのような構成を有していてもよい。例えば、各操作部53a及び53bを上述したコの字形状ではなく、ロの字形状としてもよい。操作部53aは、操作面54aに対向する操作面を正面側に更に有し、操作部53bは、操作面54bに対向する操作面を背面側に更に有していてもよい。これら各操作面によれば、操作者の親指及び他の指の背側から、一対の操作部53を互いに離間させる操作を受け付けることができる。
この場合、付勢手段(図示せず)を除外してもよいし、付勢手段による付勢力を弱め、その付勢力を一対の操作部53を互いに離間させる操作の助力に用いるようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、
図2に示されるように、一対の操作部53の動作平面を水平面に設定した場合に、グリップ部51の下端がその上端よりも基端側に向けられており、かつ、シャフト部3の先端がその基端よりも水平面に対して上方に向けられていた。しかしながら、グリップ部51の長手方向が一対の操作部53の動作面に直交するように設けられていてもよいし、シャフト部3の長手方向がその動作面と平行に設けられていてもよい。
また、本実施形態では、一対の把持片21の先端の開閉方向と一対の操作部53に対する操作方向とが略一致している。しかしながら、各方向は、相違していてもよい。例えば、一対の把持片21の先端の開閉方向は、上下方向であってもよい。