(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、特に言及しない限り、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0009】
図1(a)、(b)および
図2(a)、(b)を参照して、本実施の形態におけるズボン1の構成について説明する。
図1(a)はズボン1を前側から示しており、
図1(b)はズボン1を後側から示している。
図2(a)、(b)は本実施の形態におけるズボン1および従来のズボン1の左身頃2の型紙(パターン)を重ねて示している。また、
図2(a)、(b)では対比のために、本実施の形態におけるズボン1の型紙は実線で示されており、従来のズボン1の型紙は破線で示されている。
図2(a)は左身頃2の前身頃4の型紙を前側から示しており、
図2(b)は左身頃2の後身頃6の型紙を後側から示している。なお、
図2(a)、(b)では縫い代は示されていない。また、図示されていないがズボン1の右身頃3の型紙は左身頃2の型紙に対して左右対称に構成されている。これらの型紙に基づいて生地が裁断され、裁断された生地が縫製されることによりズボン1が製造される。以下では、説明の便宜のため、ズボン1および型紙の各々の対応する部分に同一の名称および参照符号が付されている。
【0010】
図1(a)、(b)に示されるように、ズボン1は着用者の左足および右足を覆うように構成されている。ズボン1は左身頃2と右身頃3とを備えている。左身頃2は装着者の下肢の左側の部分に装着される。左身頃2は前身頃(第1前身頃)4と後身頃6とを備えている。前身頃4および後身頃6は装着者の左足を覆うように構成されている。右身頃3は装着者の下肢の右側の部分に装着される。右身頃3は前身頃(第2前身頃)5と後身頃7とを備えている。前身頃5および後身頃6は装着者の右足を覆うように構成されている。
【0011】
図1(a)、(b)および
図2(a)、(b)に示されるように、左身頃2の前身頃4は、大腿部(第1大腿部)4a、下腿部(第1下腿部)4b、膝線(第1膝線)4c、ウエスト部4d、裾部(第1裾部)4e、内股線(第1内股線)4f、脇線(第1脇線)4g、渡り線(第1渡り線)4h、ヒップ線4i、小股4j、前中心4kを有している。大腿部4aは左足の大腿を覆うように構成されている。下腿部4bは左足の下腿を覆うように構成されている。膝線4cは大腿部4aと下腿部4bとの境界を規定する。膝線4cは膝に位置するように構成されている。膝線4cは膝蓋(膝頭)の上端と下端との間の少なくとも一部と重なるように配置されている。膝線4cから裾部4eまでの上下方向D1の長さL1は股下の上下方向D1の長さL2の半分の長さよりも大きくてもよい。膝線4cから裾部4eまでの上下方向D1の長さL1は股下の上下方向D1の長さL2の半分の長さよりも2cm以上4cm以下長くてもよい。ウエスト部4dは前身頃4の上縁に配置されている。裾部4eは前身頃4の下縁に配置されている。内股線4fは前身頃4の内縁に配置されている。脇線4gは前身頃4の外縁に配置されている。渡り線4hは大腿の付け根に位置するように構成されている。渡り線4hは前身頃4の幅が最も大きい位置に配置されている。ヒップ線4iは尻に対応する位置するように構成されている。小股4jは渡り線4hとヒップ線4iとを結ぶように構成されている。前中心4kはウエスト部4dとヒップ線4iとを結ぶように構成されている。内股線4fと渡り線4hと小股4jとは点4lで互いに交わっている。
【0012】
左身頃2の前身頃4の中心線(第1中心線)CL1は上下方向D1に延びている。中心線CL1は左右方向D2において膝線4cの位置で内側に向けて突き出すように屈曲している。すなわち、中心線CL1は、くの字形になっている。膝線4cから裾部4eまでは前身頃4は中心線CL1で左右方向D2に均等に割り振られている。つまり、膝線4cから裾部4eまでの領域では中心線CL1に直交する方向において中心線CL1から内股線4fまでの寸法W1は中心線CL1から脇線4gまでの寸法W2と等しい。膝線4cからウエスト部4dまでの領域では中心線CL1に直交する方向において中心線CL1から内股線4fまでの寸法は中心線CL1から脇線4gまでの寸法よりも大きい。膝線4cからウエスト部4dまでの領域において、中心線CL1は膝線4cと中心線CL1との交点からウエスト部4dの所定の点とを結ぶように設けられている。この所定の点はウエスト部4dにおいて脇線4gから前中心4kに向かって所定の長さL3の位置に設けられている。この所定の長さL3は4cm以上9cm以下であってもよい。前身頃4の中心線CL1は右身頃3の後身頃6の中心線CL1に重なるように設けられている。
【0013】
下腿部4bは、膝線4cから裾部4eに向けて後述する下腿部5bから離れるように大腿部4aに対して傾斜している。渡り線4hに直交する直交線(第1直交線)OL1が左右方向D2において下腿部4bの中心を通る中心線CL1に膝線4c上で交差するときに、直交線OL1と中心線CL1とが互いになす角度A1は10度以上15度以下である。つまり中心線CL1は直交線OL1に対して傾斜している。中心線CL1の直交線OL1に対して傾斜する角度A1の範囲は10度以上15度以下である。また、膝線4cからウエスト部4dまでの領域では前身頃4の中心線CL1と直交線OL1に平行な線OL3とが互いになす角度B1は2度以上6度以下である。
【0014】
内股線4fの渡り線4hに交差する位置から裾部4eに交差する位置までの長さ寸法M1は、脇線4gの渡り線4hに交差する位置から裾部4eに交差する位置までの長さ寸法M2よりも大きい。つまり、内股線4fに沿う線の長さは、脇線4gの渡り線4hに交差する位置から裾部4eに交差する位置までの脇線4gに沿う線の長さよりも大きい。内股線4fの長さ寸法M1は脇線4gの長さ寸法M2よりも2cm以上4cm以下長くてもよい。
【0015】
左身頃2の後身頃6は、大腿部6a、下腿部6b、膝線6c、ウエスト部6d、裾部6e、内股線6f、脇線6g、渡り線6h、ヒップ線6i、小股6j、後中心6kを有している。大腿部6aは左足の大腿を覆うように構成されている。下腿部6bは、左足の下腿を覆うように構成されている。膝線6cは、大腿部6aと下腿部6bとの境界を規定する。ウエスト部6dは後身頃5の上縁に配置されている。裾部6eは後身頃6の下縁に配置されている。内股線6fは後身頃6の内縁に配置されている。脇線6gは後身頃6の外縁に配置されている。渡り線6hは大腿の付け根に位置するように構成されている。渡り線4hは後身頃6の幅が最も大きい位置に配置されている。ヒップ線6iは尻に位置するように構成されている。小股6jは渡り線6hとヒップ線6iとを結ぶように構成されている。後中心6kはウエスト部6dとヒップ線6iとを結ぶように構成されている。内股線6fと渡り線6hと小股6jとは点6lで互いに交わっている。
【0016】
右身頃3の前身頃5は、大腿部(第2大腿部)5a、下腿部(第2下腿部)5b、膝線(第2膝線)5c、ウエスト部5d、裾部(第2裾部)5e、内股線(第2内股線)5f、脇線(第2脇線)5g、渡り線(第2渡り線)5h、ヒップ線5i、小股5j、前中心5kを有している。大腿部5aは右足の大腿を覆うように構成されている。下腿部5bは右足の下腿を覆うように構成されている。膝線5cは大腿部5aと下腿部5bとの境界を規定する。膝線5cは膝に位置するように構成されている。膝線5cは膝蓋(膝頭)の上端と下端との間の少なくとも一部と重なるように配置されている。膝線5cから裾部5eまでの上下方向D1の長さは股下の上下方向D1の長さの半分の長さよりも大きくてもよい。膝線5cから裾部5eまでの上下方向の長さは股下の上下方向D1の長さの半分の長さよりも2cm以上4cm以下長くてもよい。ウエスト部5dは前身頃5の上縁に配置されている。裾部5eは前身頃5の下縁に配置されている。内股線5fは前身頃5の内縁に配置されている。脇線5gは前身頃5の外縁に配置されている。渡り線5hは大腿の付け根に位置するように構成されている。渡り線5hは前身頃5の幅が最も大きい位置に配置されている。ヒップ線5iは尻に対応する位置するように構成されている。小股5jは渡り線5hとヒップ線5iとを結ぶように構成されている。前中心5kはウエスト部5dとヒップ線5iとを結ぶように構成されている。内股線5fと渡り線5hと小股5jとは点5lで互いに交わっている。
【0017】
右身頃3の前身頃5の中心線(第2中心線)CL1は上下方向D1に延びている。中心線CL1は左右方向D2において膝線5cの位置が内側に向けて突き出すように屈曲している。すなわち、中心線CL1は、くの字形になっている。膝線5cから裾部5eまでは前身頃5は中心線CL1で左右方向D2に均等に割り振られている。つまり、膝線5cから裾部5eまでの領域では中心線CL1に直交する方向において中心線CL1から内股線5fまでの寸法は中心線CL1から脇線5gまでの寸法と等しい。膝線5cからウエスト部5dまでの領域では中心線CL1に直交する方向において中心線CL1から内股線5fまでの寸法は中心線CL1から脇線5gまでの寸法よりも大きい。膝線5cからウエスト部5dまでの領域において、中心線CL1は膝線5cと中心線CL1との交点からウエスト部5dの所定の点とを結ぶように設けられている。この所定の点はウエスト部5dにおいて脇線5gから前中心5kに向かって所定の長さの位置に設けられている。この所定の長さは4cm以上9cm以下であってもよい。前身頃5の中心線CL1は後身頃7の中心線CL1に重なるように設けられている。
【0018】
下腿部5bは、膝線5cから裾部5eに向けて下腿部4bから離れるように大腿部5aに対して傾斜している。渡り線5hに直交する直交線(第2直交線)OL2が左右方向D2において下腿部5bの中心を通る中心線CL1に膝線5c上で交差するときに、直交線OL2と中心線CL1とが互いになす角度A2は10度以上15度以下である。つまり中心線CL1は直交線OL2に対して傾斜している。中心線CL1の直交線OL2に対して傾斜する角度A2の範囲は10度以上15度以下である。また、膝線4cからウエスト部6dまでの領域では前身頃5の中心線CL1と直交線OL2に平行な線OL4とが互いに成る角度B2は2度以上6度以下である。
【0019】
内股線5fの渡り線5hに交差する位置から裾部5eに交差する位置までの長さ寸法M3は、脇線5gの渡り線5hに交差する位置から裾部5eに交差する位置までの長さ寸法M4よりも大きい。つまり、内股線5fに沿う線の長さは、脇線5gの渡り線5hに交差する位置から裾部5eに交差する位置までの脇線5gに沿う線の長さよりも大きい。内股線5fの長さ寸法M3は脇線5gの長さ寸法M4よりも2cm以上4cm以下長くてもよい。
【0020】
右身頃3の後身頃7は、大腿部7a、下腿部7b、膝線7c、ウエスト部7d、裾部7e、内股線7f、脇線7g、渡り線7h、ヒップ線7i、小股7j、後中心7kを有している。大腿部7aは右足の大腿を覆うように構成されている。下腿部7bは左足の下腿を覆うように構成されている。膝線7cは大腿部7aと下腿部7bとの境界を規定する。ウエスト部7dは後身頃7の上縁に配置されている。裾部7eは後身頃7の下縁に配置されている。内股線7fは後身頃7の内縁に配置されている。脇線7gは後身頃7の外縁に配置されている。渡り線7hは大腿の付け根に位置するように構成されている。渡り線7hは後身頃7の幅が最も大きい位置に配置されている。ヒップ線7iは尻に位置するように構成されている。小股7jは渡り線7hとヒップ線7iとを結ぶように構成されている。後中心7kはウエスト部7dとヒップ線7iとを結ぶように構成されている。内股線7fと渡り線7hと小股7jとは点7lで互いに交わっている。
【0021】
本実施の形態におけるズボン1の各部分の寸法を例示する。ウエストの寸法は80cmであり、ヒップの寸法は98cmであり、股上の寸法(
図3の長さL4)は24.7cmであり、股下の寸法(
図3の長さL2)は75cmであり、渡り巾(
図3の渡り線4hの長さ)は32cmであり、膝巾(
図3の膝線4cの長さ)は21cmであり、裾巾(
図3の裾部4eの長さ)は15cmである。
【0022】
続いて、
図3を参照して、人体の下肢100の骨格について説明する。
図3は人体の腰および左足を示している。人体の下肢100においては、腰101に位置する骨盤102に大腿103に位置する大腿骨104が接続されており、大腿骨104に下腿105に位置する脛骨106が接続されている。大腿103と下腿105との接続部分である膝107に膝蓋骨108が位置している。膝蓋骨108は大腿骨104の下端に位置している。大腿103と下腿105とは膝107で内側に屈曲するように接続されている。すなわち、左足は、左足の中心線ALで示されるように、膝が内側に向けて突き出すように屈曲している。そのため、左足を上げたときなど左足を曲げたときに、膝の内側は外側よりも伸びる量が大きくなる。
【0023】
図4(a)、(b)を参照して、本実施の形態におけるズボン1が装着者に装着された状態について説明する。
図4(a)、(b)では対比のために、本実施の形態におけるズボン1は実線で示されており、人体の下肢100は破線で示されており、従来のズボン1は破線で示されている。
図4(a)に示されるように、本実施の形態におけるズボン1では、前身頃4の中心線CL1は左右方向D2において膝線4cの位置が内側に向けて突き出すように屈曲している。これにより、本実施の形態におけるズボン1によれば、前身頃4の中心線CL1を左足の中心線ALにあわせることが可能となる。
【0024】
また、
図4(a)、(b)に示されるように、本実施の形態におけるズボン1では、前身頃4の中心線CL1を左足の中心線ALにあわせることにより、ヒップ、内股下、前膝下および後膝裏周辺のゆとり(ダブ付き)を小さくすることが可能となる。
【0025】
次に本実施の形態におけるズボン1の作用効果を従来のズボン1と対比して説明する。
図2(a)、(b)および
図4(a)、(b)に示されるように、従来のズボン1においては、大腿部14a、下腿部14bおよび膝線14cは一直線に配置されている。また、大腿部16a、下腿部16bおよび膝線16cは一直線に配置されている。したがって、装着者の左足を覆う前身頃4の中心線CL2は一直線に伸びている。他方、
図3に示されるように、装着者の左足は、左足の中心線ALで示されるように、膝が内側に向けて突き出すように屈曲している。そのため、左足を上げたときなど左足を曲げたときに、膝の内側は外側よりも伸びる量が大きくなる。したがって、従来のズボン1では、足上げ時に膝の内側がズボン1の生地によって圧迫される。また、従来のズボン1では、足上げ時にズボン1の膝下の生地が内側に巻き込まれる。
【0026】
これに対して、本実施の形態におけるズボン1によれば、下腿部4bは、膝線4cから裾部4eに向けて下腿部5bから離れるように大腿部4aに対して傾斜している。つまり前身頃4の中心線CL1は左右方向D2において膝線4cの位置が内側に向けて突き出すように屈曲している。また、下腿部5bは膝線5cから裾部5eに向けて下腿部4bから離れるように大腿部5aに対して傾斜している。つまり、前身頃5の中心線CL1は左右方向D2において膝線5cの位置が内側に向けて突き出すように屈曲している。このため、膝の内側の生地を外側の生地よりも長くすることができる。これにより、足上げ時に膝の内側が圧迫されることを軽減でき、かつ膝下の生地が内側に巻き込まれることを軽減できる。よって、足運びがスムーズになるため、歩行および走行し易くなる。
【0027】
なお、単純にズボン1の膝巾を増やした場合には、膝の内側の生地と外側の生地の長さは等しいため、足上げ時に膝の内側が圧迫されることを軽減することは困難であり、膝下の生地が内側に巻き込まれることを軽減することも困難である。
【0028】
本実施の形態におけるズボン1によれば、ヒップ、内股下、前膝下および後膝裏周辺のゆとり(ダブ付き)を小さくすることが可能となるため、シルエットを細身にすることができる。これにより、デザイン性を向上することができる。また、太腿、ふくらはぎの運動時の膨張を適度にサポートすることが可能となる。また、ズボン1を足の自然な形状に近づけることで歩行時でも生地の捩れおよびダブ付きが少なくなるため無駄なしわが起こりにくい。したがって、アスレチック等の運動面でも、風による抵抗を体から受け流すことができ、さらに体を巻き込む空気の流れを推進力に活用できる。
【0029】
本実施の形態におけるズボン1によれば、直交線OL1と中心線CL1とが互いになす角度A1は10度以上15度以下であり、直交線OL2と中心線CL1とが互いになす角度A2は10度以上15度以下である。これらの角度A1、A2により、特に、足上げ時に膝の内側が圧迫されることを軽減でき、かつ膝下の生地が内側に巻き込まれることを軽減できる。
【0030】
本実施の形態におけるズボン1によれば、内股線4fの長さ寸法M1は脇線4gの長さ寸法M2よりも大きく、内股線5fの長さ寸法M3は脇線5gの長さ寸法M4よりも大きい。したがって、膝の内側の生地を外側の生地よりも長くすることができる。
【0031】
本実施の形態におけるズボン1は、スーツ、カジュアルウェア、スポーツウェアなどに適用することができる。
【0032】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。