(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
改変アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む第1のヌクレオチド配列を有し、前記オープンリーディングフレームが、5’から3’の順序で
(i)CTG及びACGからなる群から選択される、次善の翻訳開始コドンである第1のコドンと、
(ii)アラニンをコードする、前記第1のコドンの後のさらなる第2のコドンと、
(iii)AAVカプシドタンパク質をコードする、前記第2のコドンの直後に続く配列であって、VP1翻訳開始コドンATGを有さない野生型のAAVカプシドタンパク質をコードするオープンリーディングフレームである、配列と
を含む、核酸分子。
前記AAVカプシドタンパク質が、AAV血清型5、AAV血清型8、又はAAV血清型9カプシドタンパク質であり、好ましくは、前記カプシドタンパク質が、配列番号22、28、30、71、及び73からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の核酸分子。
改変AAVカプシドタンパク質をコードする前記オープンリーディングフレームのヌクレオチド配列が、ポリヘドロンプロモーター、p10プロモーター、4×Hsp27 EcRE+最小Hsp70プロモーター、デルタE1プロモーター、及びE1プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結されている、請求項4に記載の核酸構築物。
前記第2のヌクレオチド配列が、目的の遺伝子産物をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列(哺乳動物細胞で発現させるための)をさらに含み、目的の遺伝子産物をコードする前記少なくとも1つのヌクレオチド配列が、前記昆虫細胞で産生されるAAV血清型5のゲノムへと組み込まれ、好ましくは、前記第2のヌクレオチド配列が、2つのAAV ITRヌクレオチド配列を含み、目的の遺伝子産物をコードする前記少なくとも1つのヌクレオチド配列が、前記2つのAAV ITRヌクレオチド配列の間に配置されている、請求項9又は10に記載の昆虫細胞。
前記第1のヌクレオチド配列と、第2のヌクレオチド配列と、第3のヌクレオチド配列と、任意選択で、第4のヌクレオチド配列とが、前記昆虫細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、請求項9に記載の昆虫細胞。
ゲノムに、目的の遺伝子産物をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み、前記少なくとも1つのヌクレオチド配列が、天然のAAVヌクレオチド配列ではなく、AAV VP1カプシドタンパク質が、N末端からC末端へと、
(i)CTG及びACGからなる群から選択される次善の翻訳開始コドンによりコードされる第1のアミノ酸残基と、
(ii)前記第1のアミノ酸残基の後のさらなる第2のアミノ酸残基であるアラニンと、
(iii)前記第2のアミノ酸残基の直後に続くアミノ酸配列であって、VP1翻訳開始コドンによりコードされるアミノ酸残基を有さない野生型のAAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列である、アミノ酸配列と
を含む、AAVビリオン。
【背景技術】
【0002】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒト遺伝子治療のための、最も有望なウイルスベクターのうちの1つと考えることができる。AAVは、分裂ヒト細胞のほか、非分裂ヒト細胞にも効率的に感染する能力を有し、AAVウイルスゲノムは、宿主細胞のゲノムの単一の染色体部位へと一体化するが、最も重要なことは、AAVは、多くのヒトにおいて存在するが、いかなる疾患とも関連したことがないことである。これらの利点に照らし、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が、B型血友病、悪性黒色腫、嚢胞性線維症、及び他の疾患のための遺伝子治療の臨床試験において査定されつつある。多数の臨床試験及び欧州で最初の遺伝子治療薬である、アリポジーンチパルボベック(グリベラ(Glybera)(登録商標)、ユニキュア(uniQure)社)に対する近年の承認により、AAVが臨床的実践の支柱となることが有望視されている。
【0003】
一般に、組換えAAVのための2つの主要な種類の産生系が存在する。一方では、哺乳動物細胞型(293細胞、COS細胞、HeLa細胞、KB細胞など)の従来型の産生系が存在するが、他方では、より近年になって、昆虫細胞を使用する産生系が開発されている。
【0004】
哺乳動物産生系は、複数の欠点を抱えているが、そのうち、治療における使用にとって最も重要な欠点は、細胞1個当たりに作り出されるrAAV粒子の数が限定されていることである(粒子10
4個の桁数(Clark、2002、Kidney Int.、61(補遺1):9〜15において総説されている))。臨床研究には、10
15個を超えるrAAV粒子が要求される場合がある。この数のrAAV粒子を産生させるには、175cm
2のフラスコ5,000本等量の細胞である、約10
11個の培養ヒト293細胞を伴うトランスフェクション及び培養が要求されようが、これは、最大10
11個の293細胞にトランスフェクトすることを意味する。従って、rAAVの大スケールの産生であって、哺乳動物細胞培養系を使用して、臨床試験のための材料を得る産生は、既に問題含みであり、市販スケールでの産生は、実現可能でさえない場合がある。さらに、哺乳動物細胞培養物中で産生される臨床使用のためのベクターは、哺乳動物宿主細胞に存在する、所望されない、おそらくは病原性の材料により汚染される危険性も常に存在する。
【0005】
哺乳動物産生系のこれらの問題を克服するために、昆虫細胞を使用するAAV産生系が開発されている(Urabeら、2002、Hum.Gene Ther.、13:1935〜1943;米国特許出願公開第20030148506号及び米国特許出願公開第20040197895号)。昆虫細胞のAAVの産生のため、3つのAAVカプシドタンパク質(VP1、VP2、及びVP3)の正確な当量比を達成するためには、何らかの修飾が必要であったが、これは、2つのスプライスアクセプター部位の交互の利用と、昆虫細胞では正確に複製されない、VP2のためのACG開始コドンの次善の活用との組合せに依拠する。昆虫細胞で、カプシドタンパク質の正確な当量比を模倣するために、Urabeら(2002、前出)は、スプライシングの要求なしに、3つのVPタンパク質全てを発現させることが可能な、単一のポリシストロニックのメッセンジャーへと転写される構築物を使用しているが、この場合、最も上流のイニシエーターコドンは、次善のイニシエーターコドンであるACGで置きかえられている。
【0006】
国際公開第WO2007/046703号は、昆虫細胞のAAVカプシドタンパク質の当量比の最適化による、バキュロウイルスで産生されたrAAVベクターの感染性のさらなる改善について開示している。
【0007】
Kohlbrennerら(2005、Mol.Ther.、12:1217〜25)は、Urabeらにより使用されている、2つのRepタンパク質の発現のためのバキュロウイルス構築物が、固有の不安定性を抱えていることについて報告した。Urabeによる元のベクターの2つのRep遺伝子のパリンドローム配向を2つに分け、Rep52及びRep78を発現させるための、2つの個別のバキュロウイルスベクターをデザインすることにより、Kohlbrennerら(2005、前出)は、ベクターの継代培養安定性を増大させた。しかし、昆虫細胞の、2つの独立のバキュロウイルス−Rep構築物からの、少なくとも5代の継代培養にわたる、Rep78及びRep52の着実な発現にも拘らず、rAAVベクターの収率は、Urabeら(2002、前出)によりデザインされた、元のバキュロウイルス−Rep構築物と比較して、5分の1〜10分の1である。
【0008】
国際公開第WO2009/014445号は、示差的なコドンバイアスを伴うコード配列の反復を使用することにより、バキュロウイルスベースのrAAVベクターの産生時における安定性を改善するための代替法を提示する。
【0009】
Urabeら(J.Virol.、2006、80(4):1874〜1885)は、VP1カプシドタンパク質の開始コドンとしてACGを使用してバキュロウイルス系で産生されたAAV5粒子の感染性は低度であり、(VP1をACG開始コドンから発現させるAAV2とは対照的に)AAV5 VP1コード配列の+4位をG残基へと突然変異させても、感染性は改善されなかったことについて報告している。Urabeらは、キメラAAV2/5 VP1タンパク質を構築することにより、この問題に取り組んだが、そこでは、ビリオンの感染性を改善するために、AAV5 VP1のうちの少なくとも49アミノ酸のN末端部分が、AAV2 VP1の対応する部分で置きかえられている。従って、当技術分野では、ACG開始コドンから発現させるAAV5 VP1であって、広範にわたる修飾を伴わずに感染性を保持するAAV5 VP1が、依然として必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、ポリヌクレオチド(又はポリペプチド)エレメントの、機能的関係における連結を指す。核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、「作動可能に連結されている」。例えば、転写調節配列は、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている。「作動可能に連結された」とは、連結されるDNA配列が、連続配列であることが典型的であり、2つのタンパク質コード領域を接合することが必要な場合、連続配列であり、リーディングフレームにあることを意味する。
【0029】
「発現制御配列」とは、それが作動可能に連結されたヌクレオチド配列の発現を調節する核酸配列を指す。発現制御配列が、ヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳を制御及び調節する場合、発現制御配列は、ヌクレオチド配列に「作動可能に連結されている」。従って、発現制御配列は、プロモーター、エンハンサー、配列内リボソーム侵入部位(IRES)、転写ターミネーター、タンパク質コード遺伝子の前方の開始コドン、イントロンのためのスプライシングシグナル、及び終止コドンを含みうる。「発現制御配列」という用語は、少なくとも、その存在が、発現に影響を及ぼすようにデザインされている配列を含むことを意図するが、また、さらなる有利な構成要素も含みうる。例えば、リーダー配列及び融合パートナー配列は、発現制御配列である。「発現制御配列」という用語はまた、フレーム内外の、所望されない、潜在的な開始コドンを、配列から除去するような、核酸配列のデザインも含みうる。この用語はまた、所望されない、潜在的なスプライス部位を除去するような、核酸配列のデザインも含みうる。この用語は、ポリAテール、すなわち、mRNAの3’末端におけるアデニン残基の連なりである、ポリA配列と称する配列の付加を方向づける配列又はポリアデニル化配列(pA)を含む。発現制御配列はまた、mRNAの安定性を増強するようにデザインすることもできる。昆虫細胞では、転写及び翻訳の安定性に影響を及ぼす発現制御配列、例えば、プロモーターのほか、翻訳を実行する配列、例えば、コザック配列が公知である。発現制御配列は、それが作動可能に連結されたヌクレオチド配列を、低発現レベル又は高発現レベルを達成するようにモジュレートするような性質でありうる。
【0030】
本明細書で使用される「プロモーター」又は「転写調節配列」という用語は、1又は複数のコード配列の転写を制御するように機能し、コード配列の転写開始部位の転写の方向に照らして上流に配置され、DNA依存性RNAポリメラーゼ、転写開始部位、並びに転写因子結合性部位、リプレッサータンパク質結合性部位及びアクチベータータンパク質結合性部位、及びプロモーターからの転写の量を、直接的又は間接的に調節するように作用することが当業者に公知である、他の任意のヌクレオチド配列を含むがこれらに限定されない、他の任意のDNA配列のための結合部位の存在により構造的に同定される核酸断片を指す。「構成的」プロモーターとは、大半の生理学的条件下及び発生学的条件下にある大半の組織で活性のプロモーターである。「誘導的」プロモーターとは、例えば、化学的誘導剤の適用により、生理学的又は発生学的に調節されるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、特異的種類の組織又は細胞だけで活性である。
【0031】
「実質的に同一な」、「実質的同一性」、又は「本質的に類似の」、又は「本質的類似性」という用語は、デフォルトのパラメータを使用する、ギャップ(GAP)プログラム又はベストフィット(BESTFIT)プログラムなどにより、最適に配列決定される場合の、2つのペプチド配列又は2つのヌクレオチド配列が、本明細書の別の箇所で定義される、少なくともある特定の百分率の配列同一性を共有することを意味する。ギャップでは、マッチの数を最大化し、ギャップの数を最小化して、それらの全長にわたり、2つの配列を配列決定するのに、ニードルマン及びヴンシュによるグローバルアライメントアルゴリズムを使用する。一般に、ギャップ創出ペナルティー=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)とし、ギャップ伸長ペナルティー=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)とする、ギャップによるデフォルトのパラメータを使用する。ヌクレオチドでは、使用されるデフォルトのスコアリング行列は、nwsギャップDNA(nwsgapdna)であり、タンパク質では、デフォルトのスコアリング行列は、ブローサム62(Blosum62)である(Henikoff & Henikoff、1992、PNAS、89、915〜919)。RNA配列が、DNA配列と本質的に類似であるか、又はある特定の程度の配列同一性を有するという場合、DNA配列のチミン(T)を、RNA配列のウラシル(U)と等価であると考えることが明らかである。配列アライメント及び配列同一性百分率についてのスコアは、アクセルリス社(Accelrys Inc.、9685 Scranton Road、San Diego、CA 92121−3752 USA)製のCCGウィスコンシンパッケージバージョン10.3(GCG Wisconsin Package、Version 10.3)、又はオープンソースソフトウェアであるEmboss for Windows(最新バージョン:2.7.1−07)などのコンピュータープログラムを使用して決定することができる。代替的に、類似性パーセント又は同一性パーセントは、ファスタ(FASTA)、ブラスト(BLAST)などのデータベースに照らして検索することにより決定することもできる。
【0032】
本発明のパルボウイルスRepタンパク質をコードするヌクレオチド配列はまた、配列番号1のヌクレオチド配列と、中程度のハイブリダイゼーション条件下、又は、好ましくは、厳密なハイブリダイゼーション条件下のそれぞれでハイブリダイズするそれらの能力により定義することもできる。本明細書では、厳密なハイブリダイゼーション条件を、少なくとも約25、好ましくは、約50ヌクレオチド、75又は100ヌクレオチドであり、最も好ましくは、約200又はこれを超えるヌクレオチドの核酸配列が、約1Mの塩を含む溶液中、好ましくは、6倍濃度のSSC又は同等のイオン強度を有する他の任意の溶液中、約65℃の温度でハイブリダイズすること、及び約0.1M又はこれ未満の塩を含む溶液中、好ましくは、0.2倍濃度のSSC又は同等のイオン強度を有する他の任意の溶液中、65℃で洗浄することを可能とする条件として定義する。ハイブリダイゼーションは、一晩にわたり、すなわち、少なくとも10時間にわたり実施することが好ましく、洗浄は、少なくとも2回にわたり洗浄液を交換して、少なくとも1時間にわたり実施することが好ましい。これらの条件は通例、約90%又はこれを超える配列同一性を有する配列の特異的ハイブリダイゼーションを可能とするであろう。
【0033】
本明細書では、中程度の条件を、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは、約200又はこれを超えるヌクレオチドの核酸配列が、約1Mの塩を含む溶液中、好ましくは、6倍濃度のSSC又は同等のイオン強度を有する他の任意の溶液中、約45℃の温度でハイブリダイズすること、及び約1Mの塩を含む溶液中、好ましくは、6倍濃度のSSC又は同等のイオン強度を有する他の任意の溶液中、室温で洗浄することを可能とする条件として定義する。ハイブリダイゼーションは、一晩にわたり、すなわち、少なくとも10時間にわたり実施することが好ましく、洗浄は、少なくとも2回にわたり洗浄液を交換して、少なくとも1時間にわたり実施することが好ましい。これらの条件は通例、最大50%の配列同一性を有する配列の特異的ハイブリダイゼーションを可能とするであろう。当業者は、50〜90%の間で同一性が変化する配列を特異的に同定するために、これらのハイブリダイゼーション条件を改変することが可能であろう。
発明の詳細な説明
【0034】
本発明は、動物性パルボウイルスの使用であって、特に、哺乳動物細胞の核酸の導入及び/又は発現のためのベクターとしての使用のための、感染性ヒトAAV又は感染性サルAAV、及びこれらの構成要素(例えば、動物性パルボウイルスゲノム)などのディペンドウイルスの使用に関する。特に、本発明は、昆虫細胞で産生される場合の、このようなパルボウイルスベクターの感染性の改善に関する。
【0035】
パルボウイルス(Parvoviridae)科のウイルスは、小型の動物性DNAウイルスである。パルボウイルス科は、2つの亜科:脊椎動物に感染するパルボウイルス亜科(Parvovirinae)と、昆虫に感染するデンソウイルス亜科(Densovirinae)とに分けることができる。本明細書では、パルボウイルス亜科のメンバーを、パルボウイルスと称し、ディペンドウイルス(Dependovirus)属を含む。それらの属の名称から推定されうる通り、ディペンドウイルス属のメンバーは、それらが通例、細胞培養物中の産生性感染のために、アデノウイルス又はヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスによる共感染を要求するという点で固有である。ディペンドウイルス属は、通常ヒトに感染するAAV(例えば、血清型1、2、3A、3B、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13)、又は通常霊長動物に感染するAAV(例えば、血清型1及び4)、及び他の温血動物に感染する類縁のウイルス(例えば、ウシ科動物アデノ随伴ウイルス、イヌ科動物アデノ随伴ウイルス、ウマ科動物アデノ随伴ウイルス、及びヒツジ科動物アデノ随伴ウイルス)を含む。パルボウイルス及びパルボウイルス科の他のメンバーについてのさらなる情報は、Kenneth I.Berns、「Parvoviridae:The Viruses and Their Replication」、69章、「Fields Virology」(3版、1996)において記載されている。簡便さのため、本明細書では、AAVに言及することにより、本発明をさらに例示し、記載する。しかし、本発明は、AAVに限定されず、他のパルボウイルスにも同等に適用されうることが理解される。
【0036】
公知のAAV血清型全てのゲノム構成は、極めて類似している。AAVのゲノムは、約5,000ヌクレオチド(nt)未満の長さである、直鎖状、一本鎖のDNA分子である。逆位末端反復配列(ITR)は、非構造的複製(Rep)タンパク質及び構造的(VP)タンパク質の、固有のコードヌクレオチド配列を挟む。VPタンパク質(VP1、VP2、及びVP3)は、カプシドを形成する。末端の145ntは、自己相補性であり、T字型ヘアピンを形成する、エネルギー的に安定な分子内二重鎖が形成されうるように構成されている。これらのヘアピン構造は、ウイルスDNA複製のための起点として機能し、細胞内DNAポリメラーゼ複合体のプライマーとして用いられる。哺乳動物細胞のwtAAVの感染の後、Rep遺伝子(すなわち、Rep78及びRep52)は、それぞれ、P5プロモーター及びP19プロモーターから発現し、いずれのRepタンパク質も、ウイルスゲノムの複製において機能を果たす。Rep ORFのスプライシングイベントの結果として、実際には4つのRepタンパク質(すなわち、Rep78、Rep68、Rep52、及びRep40)の発現がなされる。しかし、哺乳動物細胞では、Rep78タンパク質及びRep52タンパク質をコードする、非スプライシングmRNAでも、AAVベクターの産生には十分であることが示されている。また、昆虫細胞でも、Rep78タンパク質及びRep52タンパク質で、AAVベクターの産生に十分である。3つのカプシドタンパク質である、VP1、VP2、及びVP3は、p40プロモーターにより、単一のVPリーディングフレームから発現する。カプシドタンパク質産生のための、哺乳動物細胞のwtAAVの感染は、2つのスプライスアクセプター部位の交互の利用と、VP2のためのACG開始コドンの次善の活用との組合せに依拠する。しかし、ACG開始コドンは、昆虫細胞では正確に複製されないため、AAVカプシドタンパク質の正確な当量比を得るには、さらなる特徴が要求される。
【0037】
第1の態様では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むヌクレオチド配列を有する核酸分子に関する。カプシドタンパク質をコードするリーディングフレームは、少なくとも:(i)ATG開始コドンの、CTG、ACG、TTG、及びGTGからなる群から選択される次善の翻訳開始コドンへの置きかえ;並びに(ii)1又は複数のアミノ酸残基のコドンの、次善の翻訳開始コドンと、カプシドタンパク質のアミノ酸配列の2位におけるアミノ酸残基、好ましくは、野生型カプシドタンパク質のアミノ酸配列の2位におけるアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基をコードするコドンとの間における挿入により、AAVカプシドタンパク質をコードする野生型オープンリーディングフレームと比較して修飾することが好ましい。(野生型)カプシドタンパク質のアミノ酸配列の2位は、好ましくは、(野生型)AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列の2位を指すことが理解される。次善の翻訳開始コドンの直後には、その3’末端において、アラニン、グリシン、バリン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基のコドンが続くことが好ましい。
【0038】
代替的に、この態様では、本発明は、オープンリーディングフレームを含むヌクレオチド配列を有し、オープンリーディングフレームが、5’から3’の順序で、
(i)CTG、ACG、TTG、及びGTGからなる群から選択される、次善の翻訳開始コドンである第1のコドンと、
(ii)アラニン、グリシン、バリン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択される第2のコドンと、
(iii)任意選択で、第2のコドンに続く、さらなるアミノ酸残基の1又は複数のコドンと、
(iv)VP1翻訳開始コドンを欠き、好ましくは、VP1翻訳開始コドンだけを欠き、又は、代替的に言えば、VP1翻訳開始コドンを欠くにすぎない、AAVカプシドタンパク質をコードする配列と
を含むか又はこれらからなる、核酸分子に関する。
【0039】
従って、(iv)では、配列は、好ましくは、AAVカプシドタンパク質をコードするオープンリーディングフレームの残余であって、カプシドタンパク質をコードする野生型オープンリーディングフレームの第2のアミノ酸位置に対応する位置で始まる残余を含むか又はこれらからなる。
【0040】
本明細書では、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むヌクレオチド配列を有する核酸分子は、動物性パルボウイルスのVP1カプシドタンパク質、VP2カプシドタンパク質、及びVP3カプシドタンパク質の、好ましくは3つ全てをコードするヌクレオチド配列を含むことが理解される。
【0041】
本明細書では、「CTG、ACG、TTG、及びGTGからなる群から選択される次善の翻訳開始コドンで始まる」又は「CTG、ACG、TTG、及びGTGからなる群から選択される、次善の翻訳開始コドンである第1のコドン」という語句は、VP1カプシドタンパク質のアミノ末端をコードする位置における、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質をコードするオープンリーディングフレームの開始コドンが、CTG、ACG、TTG、及びGTGからなる群から選択される次善の翻訳開始コドンであることを意味するように理解される。
【0042】
本明細書では、次善とは、コドンが、他の点では同一なコンテキストにおいて、通常のATGコドンと比較して、翻訳の開始が効率的でないことを意味するように理解される。AAV VP1カプシドタンパク質の翻訳の開始コドンは、ACG、TTG、GTG、及びCTGから選択されることが好ましく、AAV VP1カプシドタンパク質の翻訳の開始コドンは、CTG及びACGから選択されることがより好ましく、AAV VP1カプシドタンパク質の翻訳の開始コドンは、CTGであることが最も好ましい。動物性パルボウイルスは、好ましくは、ディペンドウイルスであり、より好ましくは、ヒトアデノ随伴ウイルス(AAV)又はサルAAVである。
【0043】
特に好ましい実施形態では、VP1の次善の開始コドンは、CTGであり、さらなる1つのコドンを、次善の開始コドンにすぐ隣接して、その3’末端に導入し、さらなるコドンは、アラニンをコードする。カプシドタンパク質は、AAV5カプシドタンパク質であることが好ましい。これは、AAV5ビリオンの効力の改善を結果としてもたらす。本明細書では、「効力」という用語は、その遺伝子材料の発現を駆動するベクターの能力を意味するように使用される。
【0044】
オープンリーディングフレームは、アラニン、グリシン、バリン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする第2のコドン、好ましくは、アラニンをコードする第2のコドンをさらに含む。第2のコドンは、GCT、GCC、GCA、GCG、及びGGUからなる群から選択されことがより好ましく、コドンは、GCTであることが好ましい。オープンリーディングフレームは、任意選択で、第2のコドンに続く、さらなるアミノ酸残基をさらにコードする1又は複数のコドン、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20のさらなるアミノ酸であるが、好ましくは、60、50、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、又は14未満のさらなるアミノ酸残基のコドンを含むことが好ましい。たやすく理解される通り、さらなるアミノ酸残基をコードするコドンは、カプシドタンパク質のオープンリーディングフレームとインフレームである。
【0045】
ある実施形態では、オープンリーディングフレームを、野生型カプシドタンパク質と比較する場合、カプシドタンパク質をコードするオープンリーディングフレームは、対応する野生型カプシドタンパク質に、1又は複数のアミノ酸残基をコードするコドンであって、VP1の次善の翻訳開始コドンと、アミノ酸残基をコードするコドンであり、翻訳開始コドンに、その3’末端においてすぐ隣接するコドンとの間に挿入されるコドンをさらに含む。例えば、オープンリーディングフレームは、対応する野生型カプシドタンパク質と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20のさらなるアミノ酸残基のコドンを含む。オープンリーディングフレームは、対応する野生型カプシドタンパク質と比較して、60、50、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、又は14未満のさらなるアミノ酸残基のコドンを含むことが好ましい。たやすく理解される通り、さらなるアミノ酸残基をコードするコドンは、カプシドタンパク質のオープンリーディングフレームとインフレームである。対応する野生型カプシドタンパク質と比較して、さらなるアミノ酸残基をコードするこれらのコドンのうち、第1のコドン、すなわち、次善の翻訳開始コドンに、その3’末端においてすぐ隣接するコドンは、アラニン、グリシン、バリン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする。従って、翻訳開始コドンと、アミノ酸残基をコードするコドンであって、野生型配列の残基2に対応するコドンとの間に、さらなる1つのコドンだけが存在する場合、そのさらなるコドンは、アラニン、グリシン、バリン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする。翻訳開始コドンと、野生型配列のアミノ酸残基2をコードするコドンとの間に、1つを超えるさらなるコドンが存在する場合、翻訳開始コドンの直後に続くコドンは、アラニン、グリシン、バリン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする。次善の翻訳開始コドンの直後に(すなわち、その3’末端において)続く、さらなるアミノ酸残基は、アラニン、グリシン、又はバリンであることが好ましく、アラニンであることがより好ましい。言い換えると、本発明の好ましい実施形態では、次善の翻訳開始コドンの直後に続くコドンは、アラニンをコードする。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、次善の翻訳開始コドンの直後に続くコドン、すなわち、第2のコドンは、GCT、GCC、GCA、GCG、GGU、GGC、GGA、GGG、GUU、GUC、GUA、GUG、GAU、GAC、GAA、及びGAGからなる群から選択され、好ましくは、GCT、GCC、GCA、GCG、及びGGUからなる群から選択され、なおより好ましくは、コドンは、GCTである。
【0047】
ステップ(iv)の、AAVカプシドタンパク質をコードする配列は、例えば、AAV1〜AAV13のカプシド配列など、天然で見出されるカプシド配列であることが可能であり、これらのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を、配列番号13〜38及び配列番号70〜73に示す。よって、配列(iv)の、AAVカプシドタンパク質をコードする配列は、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、及びAAV13からなる群から選択されるカプシド配列でありうる。代替的に、配列は、人工配列であり、例えば、配列は、ハイブリッド形態の場合もあり、例えば、AcmNPv又はツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)のコドン利用などを介して、コドン最適化する場合もある。例えば、カプシド配列が、AAV1のVP2配列及びVP3配列から構成されうるのに対し、VP1配列の残余は、AAV5のVP1配列である。好ましいカプシドタンパク質は、好ましくは、配列番号22に示されるAAV5、好ましくは、配列番号28に示されるAAV8、又は、好ましくは、配列番号30、配列番号71、若しくは配列番号73に示されるAAV9である。従って、好ましい実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、本発明に従い修飾された、AAV血清型5、AAV血清型8、又はAAV血清型9カプシドタンパク質である。カプシドタンパク質が、AAV9である場合、カプシドタンパク質は、例えば、国際公開第WO03/052052号若しくは国際公開第WO05/033321号において開示されている配列、又は配列番号29、30、70、71、72、73若しくは74に示されている配列などの配列を有することが好ましい。カプシドタンパク質が、AAV9である場合、カプシドタンパク質は、配列番号72及び73に示されている配列を有することがより好ましい。AAVカプシドタンパク質は、本発明に従い修飾された、AAV血清型5カプシドタンパク質であることがより好ましい。カプシドタンパク質の正確な分子量のほか、翻訳開始コドンの正確な位置は、異なるパルボウイルスの間で異なりうることが理解される。しかし、当業者には、AAV−5以外のパルボウイルスに由来するヌクレオチド配列の対応する位置をどのようにして同定するのかが公知であろう。代替的に、AAVカプシドタンパク質をコードする配列は、例えば、定方向進化実験の結果としての人工配列である。これは、DNAシャフリング、エラープローンPCR、バイオインフォマティックスによる合理的デザイン、部位飽和突然変異誘発を介するカプシドライブラリーの作製を含みうる。結果として得られるカプシドは、既存の血清型に基づくが、このようなカプシドの特徴を改善する、多様なアミノ酸変化又はヌクレオチド変化を含有する。結果として得られるカプシドは、既存の血清型の多様な部分の組合せである、「シャフリングされたカプシド」の場合もあり、1又は複数のアミノ酸又はヌクレオチドの、完全に新規の変化、すなわち、群で構成されるか、又は遺伝子若しくはタンパク質の全長にわたり広がる、付加、欠失、又は置換を含有する場合もある。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Schaffer及びMaheshri、「Proceedings of 26th Annual International Conference of the IEEE EMBS」、San Francisco、CA、USA、2004年9月1〜5日、3520〜3523頁、Asuriら(2012)、Molecular Therapy、20(2):329〜3389、Lisowskiら(2014)、Nature、506(7488):382〜386を参照されたい。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、VP3カプシドタンパク質をコードするオープンリーディングフレームは、ACG、ATT、ATA、AGA、AGG、AAA、CTG、CTT、CTC、CTA、CGA、CGC、TTG、TAG、及びGTGからなる群から選択される非カノニカルの翻訳開始コドンで始まる。非カノニカルの翻訳開始コドンは、GTG、CTG、ACG、TTGからなる群から選択されることが好ましく、非カノニカルの翻訳開始コドンは、CTGであることがより好ましい。
【0049】
AAVカプシドタンパク質の発現のための、本発明の好ましいヌクレオチド配列は、VP2イニシエーターコンテキストを含む発現制御配列を含むヌクレオチド配列である。本明細書では、VP2イニシエーターコンテキストは、VP2の非カノニカル翻訳模倣始点に先行する多数のヌクレオチドを意味するように理解される。好ましい実施形態では、VPイニシエーターコンテキストは、AAV VP1カプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列の次善の翻訳開始コドンの上流にある、好ましくは、次善の翻訳開始コドンのすぐ上流にある、すなわち、次善の翻訳開始コドンに、その5’末端においてすぐ隣接する、配列番号3の9つのヌクレオチド配列又は配列番号3と実質的に相同なヌクレオチド配列である。配列番号3のヌクレオチド配列に対する実質的同一性を伴い、VP1の発現を増大させる一助となる配列は、例えば、配列番号3の9つのヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%、70%、80%、又は90%の同一性、好ましくは、100%の同一性を有する配列である。
【0050】
AAVカプシドタンパク質の発現のための、本発明のさらに好ましいヌクレオチド配列は、AAV VP1カプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列の開始コドンの近傍において、コザックコンセンサス配列を含む、発現制御配列を含むヌクレオチド配列である。本明細書では、コザックコンセンサス配列を、GCCRCC(NNN)G(配列番号4)[配列中、Rは、プリン(すなわち、A又はG)であり、(NNN)は、本明細書の上記で規定された、次善の開始コドンのうちのいずれかを表す]と規定する。本発明のヌクレオチド配列のコザックコンセンサス配列では、Rは、Gであることが好ましい。従って、AAVカプシドタンパク質の発現のための、本発明のヌクレオチド配列であって、コザックコンセンサス配列を含むヌクレオチド配列は、GCCACC(ACG)G(配列番号5)、GCCGCC(ACG)G(配列番号6)、GCCACC(TTG)G(配列番号7)、GCCGCC(TTG)G(配列番号8)、GCCACC(GTG)G(配列番号9)、GCCGCC(GTG)G(配列番号10)、GCCACC(CTG)G(配列番号11)、及びGCCGCC(CTG)G(配列番号12)から選択されることが好ましく、コザックコンセンサス配列を含むヌクレオチド配列は、GCCACC(CTG)G(配列番号11)及びGCCGCC(CTG)G(配列番号12)から選択されることがより好ましく、コザックコンセンサス配列を含むヌクレオチド配列は、GCCGCC(CTG)G(配列番号12)であることが最も好ましい。本明細書の、括弧内のヌクレオチドは、VP1タンパク質の開始コドンの位置を指し示す。
【0051】
AAVカプシドタンパク質の発現のための、本発明のヌクレオチド配列は、さらに好ましくは、AAV VP1カプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列の少なくとも1カ所の修飾であって、ヌクレオチド12位におけるG、ヌクレオチド21位におけるA、及びヌクレオチド24位におけるCの中から選択される修飾を含み、この場合、ヌクレオチド位置は、例えば、配列番号21において示される、野生型ヌクレオチド配列のヌクレオチド位置に対応する。本明細書では、「潜在的な模造開始部位/可能な模造開始部位」又は「潜在的な模造翻訳開始コドン/可能な模造翻訳開始コドン」とは、カプシドタンパク質(複数可)のコード配列に配置された、インフレームのATGコドンを意味するように理解される。他の血清型のVP1の翻訳のための、可能な模造開始部位の消失を、当業者は、昆虫細胞で認識されうる、推定スプライス部位の消失として、よく理解するであろう。例えば、ヌクレオチドTは、模造ATGコドンをもたらさないので、12位におけるヌクレオチドの修飾は、組換えAAV5には要求されない。例えば、AAV5のための、ヌクレオチド配列のさらなる修飾は、配列番号39に示される通りでありうる。適正な昆虫細胞での発現のための、野生型AAV配列の多様な修飾は、例えば、Sambrook及びRussell(2001)、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(3版)、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New Yorkにおいて記載されているような、周知の遺伝子操作法の適用により達成する。当業者には、VPコード領域の、多様な、さらなる修飾であって、VP及びビリオンの収率を増大させる可能性もあり、ビリオンの向性の変化又は抗原性の低減など、他の所望の効果を及ぼす可能性もある修飾が公知である。これらの修飾は、本発明の範囲内にある。
【0052】
好ましい実施形態では、本発明に従う核酸分子は、配列番号51、69、41、42、43、44、45、46、47、48、50、及び52からなる群から選択されるオープンリーディングフレームを含むか又はこれらからなり、より好ましくは、本発明に従う核酸分子は、配列番号51、69、42、43、47、48、及び50からなる群から選択されるオープンリーディングフレームを含むか又はこれらからなり、なおより好ましくは、本発明に従う核酸分子は、配列番号69又は51を含むか又はこれらからなり、さらにより好ましくは、本発明に従う核酸分子は、配列番号51を含むか又はこれらからなる。
【0053】
AAVカプシドタンパク質をコードする、本発明のヌクレオチド配列は、昆虫細胞での発現用の発現制御配列に作動可能に連結されていることが好ましい。従って、第2の態様では、本発明は、本発明に従う核酸分子を含み、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質をコードするオープンリーディングフレームのヌクレオチド配列が、昆虫細胞での発現用の発現制御配列に作動可能に連結されている、核酸構築物に関する。これらの発現制御配列は、少なくとも、昆虫細胞で活性のプロモーターを含むであろう。昆虫宿主細胞で外来遺伝子を発現させるための技法であって、当業者に公知の技法を使用して、本発明を実施することができる。昆虫細胞のポリペプチドの分子操作及び発現のための方法は、例えば、Summers及びSmith、1986、「A Manual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Culture Procedures」、Texas Agricultural Experimental Station Bull、第7555号、College Station、Tex、Luckow、1991、Prokopら、「Cloning and Expression of Heterologous Genes in Insect Cells with Baculovirus Vectors’Recombinant DNA Technology and Applications」、97〜152、King,L.A.及びR.D.Possee、1992、「The baculovirus expression system、Chapman and Hall、United Kingdom、O’Reilly,D.R.、L.K.Miller、V.A.Luckow、1992、Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory Manual」、New York、W.H.Freeman及びRichardson,C.D.、1995、「Baculovirus Expression Protocols」、「Methods in Molecular Biology」、39巻、米国特許第4,745,051号、米国特許出願公開第2003148506号、並びに国際公開第WO03/074714号において記載されている。AAVカプシドタンパク質をコードする、本発明のヌクレオチド配列の転写に特に適するプロモーターは、例えば、配列番号53に示されているpolHプロモーター、及び配列番号54に示されている短縮型polHプロモーターなどのポリヘドロン(polH)プロモーターである。しかし、当技術分野では、昆虫細胞で活性の他のプロモーター、例えば、ポリヘドリン(polH)プロモーター、p10プロモーター、p35プロモーター、4×Hsp27 EcRE+最小Hsp70プロモーター、デルタE1プロモーター、E1プロモーター、又はIE−1プロモーター、及び上記の参考文献において記載されている、さらなるプロモーターも公知である。
【0054】
昆虫細胞のAAVカプシドタンパク質の発現のための核酸構築物は、昆虫細胞適合性ベクターであることが好ましい。「昆虫細胞適合性ベクター」又は「ベクター」は、昆虫又は昆虫細胞の、産生用形質転換又は産生用トランスフェクションが可能な核酸分子であることが理解される。例示的な生物学的ベクターは、プラスミド、直鎖状核酸分子、及び組換えウイルスを含む。昆虫細胞適合性である限りにおいて、任意のベクターを援用することができる。ベクターは、昆虫細胞ゲノムへと一体化しうるが、昆虫細胞のベクターの存在は、恒久的である必要はなく、一過性のエピソームベクターも含まれる。ベクターは、任意の公知の手段により、例えば、細胞の化学的処理、電気穿孔、又は感染により導入することができる。好ましい実施形態では、ベクターは、バキュロウイルス、ウイルスベクター、又はプラスミドである。より好ましい実施形態では、ベクターは、バキュロウイルスである、すなわち、構築物は、バキュロウイルスベクターである。バキュロウイルスベクター及びそれらの使用のための方法については、昆虫細胞の分子操作についての、上記で引用された参考文献において記載されている。
【0055】
好ましい実施形態では、本発明に従う核酸構築物に含まれる核酸分子は、配列番号51、69、42、43、47、48、及び50からなる群から選択されるオープンリーディングフレームを含むか又はこれらからなり、より好ましくは、本発明に従う核酸構築物に含まれる核酸分子は、配列番号51又は配列番号69を含むか又はこれらからなり、なおより好ましくは、本発明に従う核酸構築物に含まれる核酸分子は、配列番号51を含むか又はこれらからなる。
【0056】
第3の態様では、本発明は、上記で規定された、本発明の核酸構築物を含む昆虫細胞に関する。AAVの複製を可能とし、培養物中に維持されうる、任意の昆虫細胞を、本発明に従い使用することができる。例えば、使用される細胞株は、ツマジロクサヨトウ、ショウジョウバエ細胞株、又は蚊細胞株、例えば、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)由来の細胞株に由来しうる。好ましい昆虫細胞又は細胞株は、バキュロウイルス感染を受けやすい昆虫種に由来する細胞であって、例えば、エクスプレスSF+(expresSF+)(登録商標)、ドロソフィラシュナイダー2(S2)セル(Drosophila Schneider 2(S2)Cells)、Se301、SeIZD2109、SeUCR1、Sf9、Sf900+、Sf21、BTI−TN−5B1〜4、MG−1、Tn368、HzAm1、Ha2302、Hz2E5、及びインビトロジェン(Invitrogen)社製のハイファイブ(High Five)を含む細胞である。
【0057】
本発明に従う好ましい昆虫細胞は、(a)少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列(ITR)のヌクレオチド配列を含む第2のヌクレオチド配列と、(b)昆虫細胞での発現用の発現制御配列に作動可能に連結されたRep52又はRep40コード配列を含む第3のヌクレオチド配列と、(c)昆虫細胞での発現用の発現制御配列に作動可能に連結されたRep78又はRep68コード配列を含む第4のヌクレオチド配列とをさらに含む。
【0058】
本発明の文脈では、「少なくとも1つのAAV ITRヌクレオチド配列」は、大半が相補性であり、対称的に配置された配列であって、「A」領域、「B」領域、及び「C」領域とも称する配列を含む、パリンドローム配列を意味することが理解される。ITRは、複製において「シス」の役割を有する部位、すなわち、トランスで作用する複製タンパク質(例えば、Rep78又はRep68)に対する認識部位であって、パリンドロームと、パリンドロームに対して内部の特異的配列とを認識する認識部位である、複製起点として機能する。ITR配列の対称性に対する1つの例外は、ITRの「D」領域である。「D」領域は、固有である(1つのITR内に相補体を有さない)。A領域とD領域との間の接合部では、一本鎖DNAのニッキングが生じる。A領域とD領域との間の接合部は、新たなDNA合成が開始される領域である。D領域は通常、パリンドロームの片側に位置し、核酸複製ステップに方向づけを与える。哺乳動物細胞で複製されるAAVは、2つのITR配列を有することが典型的である。しかし、結合性部位が、A領域の両方の鎖上にあり、D領域が、パリンドロームの各側に1つずつ、対称的に配置されるように、ITRを操作することが可能である。そこで、二本鎖環状DNA鋳型(例えば、プラスミド)では、Rep78支援型核酸複製又はRep68支援型核酸複製が、いずれの方向にも進行し、環状ベクターによるAAV複製には、単一のITRで十分となる。従って、本発明の文脈では、1つのITRヌクレオチド配列を使用することができる。しかし、2つ又は別の偶数の、左右対称のITRを使用することが好ましい。2つのITR配列を使用することが最も好ましい。ウイルスベクターの安全性に照らすと、細胞への初期導入の後では、さらなる繁殖が不可能となるウイルスベクターを構築することが所望でありうる。レシピエントにおける、所望されないベクターの繁殖を制限するための、このような安全性機構は、米国特許出願公開第2003148506号において記載されている、キメラITRを伴うrAAVを使用することによりもたらすことができる。好ましい実施形態では、パルボウイルスのVP1カプシドタンパク質、VP2カプシドタンパク質、及びVP3カプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、国際公開第WO2009/154452号などに記載されている免疫回避リピートをコードする配列の、少なくとも1カ所の、インフレームの挿入を含む。この挿入は、いわゆる自己相補性パルボウイルスビリオン又は単量体二重鎖パルボウイルスビリオンの形成を結果としてもたらすが、この形成は、パルボウイルスビリオンが免疫応答の低減を示すという利点を有する。好ましい実施形態では、パルボウイルスのVP1カプシドタンパク質、VP2カプシドタンパク質、及びVP3カプシドタンパク質をコードする配列は、単量体二重鎖ゲノム又は自己相補性ゲノムを含む。単量体二重鎖AAVベクターを調製するためには、AAV Repタンパク質及びAAVカプシドタンパク質を、本発明に従う昆虫細胞内、少なくとも1つのAAV ITRを含むベクターゲノムの存在下で発現させ、Rep52及び/又はRep40タンパク質の発現を、Rep78及び/又はRep68タンパク質の発現と比べて増大させる。単量体二重鎖AAVベクターはまた、例えば、国際公開第WO2011/122950号において記載されている通り、昆虫細胞内、少なくとも1つのAAV ITRが隣接するベクターゲノム構築物の存在下で、AAV Repタンパク質及びAAV Capタンパク質を発現させ、Rep78及び/又はRep60のニッキング活性を、Rep52及び/又はRep40のヘリカーゼ活性/カプシド形成活性と比べて低減することによっても調製することができる。
【0059】
本発明では、援用されるベクター又は核酸構築物の数は、限定的ではない。例えば、1、2、3、4、5、6、又はこれを超えるベクターを援用して、本発明に従う昆虫細胞で、AAVを産生させることができる。6つのベクターを援用する場合、1つのベクターは、AAV VP1をコードし、別のベクターは、AAV VP2をコードし、さらに別のベクターは、AAV VP3をコードし、なおさらに別のベクターは、Rep52又はRep40をコードし、Rep78又はRep68は、別のベクターがコードし、最後のベクターは、少なくとも1つのAAV ITRを含む。さらなるベクターを援用して、例えば、Rep52及びRep40、並びにRep78及びRep68を発現させることができるであろう。6つより少ないベクターを使用する場合、ベクターは、少なくとも1つのAAV ITR、並びにVP1コード配列、VP2コード配列、VP3コード配列、Rep52/Rep40コード配列、及びRep78/Rep68コード配列の多様な組合せを含みうる。2つのベクター又は3つのベクターを使用することが好ましく、上記で記載した通り、2つのベクターがより好ましい。2つのベクターを援用する場合、昆虫細胞は、(a)上記で規定された、AAVカプシドタンパク質の発現のための第1の核酸構築物であって、上記の(b)及び(c)で規定された第3及び第4のヌクレオチド配列をさらに含み、第3のヌクレオチド配列が、少なくとも1つの昆虫細胞での発現用の発現制御配列に作動可能に連結されたRep52又はRep40コード配列を含み、第4のヌクレオチド配列が、少なくとも1つの昆虫細胞での発現用の発現制御配列に作動可能に連結されたRep78又はRep68コード配列を含む構築物と、(b)上記の(a)で規定された第2のヌクレオチド配列であって、少なくとも1つのAAV ITRヌクレオチド配列を含む第2のヌクレオチド配列を含む第2の核酸構築物とを含むことが好ましい。3つのベクターを援用する場合、カプシドタンパク質の発現のためのベクターと、Rep52、Rep40、Rep78、及びRep68タンパク質の発現のためのベクターとで別個のベクターを使用することを除き、2つのベクターのために使用される構成と同じ構成を使用することが好ましい。各ベクターの配列は、互いと比べて任意の順序でありうる。例えば、1つのベクターが、ITRとVPカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むORFとを含む場合、ITR配列間のDNAが複製されるときに、VP ORFが複製されるか又は複製されないように、VP ORFをベクターに配置することができる。別の例では、Repコード配列及び/又はVPカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むORFは、ベクターで任意の順序でありうる。また、第2の核酸構築物、第3の核酸構築物、及びさらなる核酸構築物(複数可)も、好ましくは、昆虫細胞適合性ベクターであり、好ましくは、上記で記載した通り、バキュロウイルスベクターであることが理解される。代替的に、本発明の昆虫細胞では、第1のヌクレオチド配列、第2のヌクレオチド配列、第3のヌクレオチド配列、及び第4のヌクレオチド配列、並びに任意選択のさらなるヌクレオチド配列のうちの1又は複数を、昆虫細胞のゲノムに、安定的に組み込むことができる。当業者には、ヌクレオチド配列を昆虫ゲノムに、どのようにして安定的に導入するのかが公知であり、このようなヌクレオチド配列をゲノムに有する細胞をどのようにして同定するのかも公知である。ゲノムへの組込みは、例えば、昆虫ゲノムの領域と高度に相同なヌクレオチド配列を含むベクターの使用を一助とすることができる。トランスポゾンなど、特異的配列の使用は、ヌクレオチド配列をゲノムへと導入する別の方式である。
【0060】
従って、好ましい実施形態では、本発明に従う昆虫細胞は、(a)上記で規定された第3及び第4のヌクレオチド配列をさらに含む、本発明に従う第1の核酸構築物と、(b)上記で規定された第2のヌクレオチド配列を含み、好ましくは、昆虫細胞適合性ベクター、より好ましくは、バキュロウイルスベクターである、第2の核酸構築物とを含む。
【0061】
従って、本発明の好ましい実施形態では、本発明の昆虫細胞に存在する第2のヌクレオチド配列、すなわち、少なくとも1つのAAV ITRを含む配列は、目的の遺伝子産物をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列(好ましくは、哺乳動物細胞で発現させるための)をさらに含み、好ましくは、目的の遺伝子産物をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列は、昆虫細胞で産生されるAAVのゲノムへと組み込まれている。目的の遺伝子産物をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列は、哺乳動物細胞で発現させるための配列であることが好ましい。第2のヌクレオチド配列は、2つのAAV ITRヌクレオチド配列を含み、目的の遺伝子産物をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列は、2つのAAV ITRヌクレオチド配列の間に配置されることが好ましい。目的の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列(哺乳動物細胞で発現させるための)は、それが2つの左右対称のITRの間に配置されるか、又は2つのD領域により操作された、ITRの両側に配置される場合、昆虫細胞で産生されるAAVゲノムへと組み込まれることが好ましい。従って、好ましい実施形態では、本発明は、第2のヌクレオチド配列が、2つのAAV ITRヌクレオチド配列を含み、目的の遺伝子産物をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列が、2つのAAV ITRヌクレオチド配列の間に配置されている、本発明に従う昆虫細胞を提供する。
【0062】
ITRを含む目的の遺伝子産物は、5,000ヌクレオチド(nt)又はこれ未満の長さであることが典型的である。別の実施形態では、本発明で記載されるAAVベクターを使用することにより、過剰サイズのDNA、すなわち、5,000ntを超える長さのDNAを、in vitro又はin vivoで発現させることもできる。本明細書では、過剰サイズのDNAを、AAVの最大パッケージング限界である5kbpを超えるDNAと理解する。従って、5.0kbを超えるゲノムにより通例コードされる組換えタンパク質を産生させることが可能なAAVベクターの作製もまた、実現可能である。例えば、本発明者らは、昆虫細胞で、部分的に、一方向にパッケージングされたhFVIII断片を含有するrAAV5ベクターを作り出した。全サイズが少なくとも5.6kbを包含するベクターゲノムを、FVIII断片を含有するAAV5粒子の2つの集団へとパッケージングする。これらの変異体AAV5−FVIIIベクターは、FVIIIを活発に分泌することが示された。これを、in vitroで確認したところ、Huh7細胞の感染後において、第VIII因子をコードする目的の遺伝子産物を含むAAVベクターは、活性のFVIIIタンパク質の産生を結果としてもたらした。同様に、マウスにおけるrAAV.FVIIIの尾静脈送達は、活性のFVIIIタンパク質の産生を結果としてもたらした。カプシド形成産物の分子解析は、5.6kbpのFVIII発現カセットが、AAV粒子で完全にカプシド形成されるわけではないことを明白に示した。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、カプシド形成された分子の+鎖DNA及び−鎖DNAにより、5’末端の逸失が明らかにされたと仮定する。これは、かつて報告された一方向(3’末端で始まる)パッケージング機構であって、4.7〜4,9kbpを限界とする「ヘッド−フル原理」に従い作動するパッケージング機構(例えば、Wuら[2010]、Molecular Therapy、18(1):80〜86、Dongら[2010]、Molecular Therapy、18(1):87〜92、Kapranovら[2012]、Human Gene Therapy、23:46〜55、及び、特に、Laiら[2010]、Molecular Therapy、18(1):75〜79を参照されたい)と符合する。5.6kbのベクターゲノム全体のうち、カプシド形成されたのは、約5kbだけであるが、ベクターは、強力であり、活性FVIIIの発現をもたらした。本発明者らは、FVIIIの産生のための正確な鋳型が、+鎖DNAと−鎖DNAとによる部分的な相補体形成に続く、第2鎖の合成に基づき、標的細胞でアセンブルされることを示した。
【0063】
従って、本明細書の上記で規定された、第2のヌクレオチド配列は、哺乳動物細胞で発現させるための、少なくとも1つの「目的の遺伝子産物」をコードするヌクレオチド配列であって、それが、昆虫細胞で複製されるAAVゲノムへと組み込まれるように配置されたヌクレオチド配列を含みうる。構築物が、AAVビリオンのパッケージング容量内にとどまる限りにおいて、本発明に従い産生されたAAVをトランスフェクトされた哺乳動物細胞でのその後の発現のために、任意のヌクレオチド配列を組み込むことができる。ヌクレオチド配列は、例えば、タンパク質をコードする場合もあり、又はRNAi剤、すなわち、例えば、shRNA(短鎖ヘアピンRNA)若しくはsiRNA(短鎖干渉RNA)など、RNA干渉が可能なRNA分子を発現させる場合もある。「siRNA」とは哺乳動物細胞で毒性でない、長さの短い二本鎖RNAである、低分子干渉RNAを意味する(Elbashirら、2001、Nature、411:494〜98、Caplenら、2001、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、98:9742〜47)。好ましい実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、2つのヌクレオチド配列を含むことが可能であり、各ヌクレオチド配列は、哺乳動物細胞で発現させるための、1つの目的の遺伝子産物をコードする。目的の産物をコードする2つのヌクレオチド配列の各々は、昆虫細胞で複製されるrAAVゲノムへと組み込まれるように配置されている。
【0064】
哺乳動物細胞で発現させるための、目的の産物は、治療用遺伝子産物でありうる。治療用遺伝子産物は、ポリペプチド、又はRNA分子(siRNA)、又は、標的細胞で発現させると、例えば、所望されない活性の除去、例えば、感染細胞の除去、若しくは、例えば、酵素活性の欠如を引き起こす遺伝子欠損の補完など、所望の治療効果をもたらす、他の遺伝子産物でありうる。治療用ポリペプチド遺伝子産物の例は、CFTR、第IX因子、リポタンパク質リパーゼ(LPL、好ましくは、LPL S447X、国際公開第WO01/00220号を参照されたい)、アポリポタンパク質A1、ウリジン二リン酸グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)、色素性網膜炎GTPアーゼ調節因子相互作用タンパク質(RP−GRIP)、例えば、IL−10、ジストロフィン、PBGD、NaGLU、Treg167、Treg289、EPO、IGF、IFN、GDNF、FOXP3、第VIII因子、VEGF、AGXT、及びインスリンなどのサイトカイン又はインターロイキンを含む。代替的に、又は、第2の遺伝子産物として加えて、本明細書の上記で規定された、第2のヌクレオチド配列は、細胞の形質転換及び発現を評価するマーカータンパク質として用いられる、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含みうる。この目的に適するマーカータンパク質は、例えば、蛍光タンパク質であるGFP、並びに選択用マーカー遺伝子である、HSVチミジンキナーゼ(HAT培地での選択のための)、細菌ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(ハイグロマイシンBでの選択のための)、Tn5アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(G418での選択のための)、及びジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)(メトトレキサートでの選択のための)、CD20、低アフィニティー神経増殖因子遺伝子である。これらのマーカー遺伝子を得るための供給源、及びそれらの使用のための方法は、Sambrook及びRussel(2001)、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、(3版)、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New Yorkにおいて提示されている。さらに、本明細書の上記で規定された、第2のヌクレオチド配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、必要だと考えられる場合、対象が、本発明のrAAVを形質導入された細胞から治癒することを可能とするフェイルセーフ機構として用いられうるヌクレオチド配列を含みうる。このようなヌクレオチド配列は、プロドラッグを、タンパク質を発現させるトランスジェニック細胞を死滅させることが可能な毒性物質へと転換することが可能なタンパク質をコードする、自殺遺伝子と称することが多い。このような自殺遺伝子の適切な例は、例えば、大腸菌(E.coli)シトシンデアミナーゼ遺伝子、又は単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、及び水痘帯状疱疹ウイルスに由来するチミジンキナーゼ遺伝子のうちの1つを含み、この場合は、ガンシクロビルを、対象におけるトランスジェニック細胞を死滅させるプロドラッグとして使用することができる(例えば、Clairら、1987、Antimicrob.Agents Chemother.、31:844〜849を参照されたい)。
【0065】
別の実施形態では、目的の遺伝子産物は、AAVタンパク質でありうる。特に、Rep78若しくはRep68、又はこれらの機能的断片などのRepタンパク質でありうる。Rep78及び/又はRep68をコードするヌクレオチド配列は、本発明のrAAVゲノムに存在し、本発明のrAAVを形質導入された哺乳動物細胞で発現させる場合、rAAVの、形質導入された哺乳動物細胞のゲノムへの組込みを可能とする。Rep78及び/又はRep68の、rAAV形質導入哺乳動物細胞又はrAAV感染哺乳動物細胞での発現は、rAAVにより細胞に導入された他の任意の目的の遺伝子産物の、長期にわたる発現又は恒久的発現を可能とすることにより、rAAVのある特定の使用の利点をもたらしうる。
【0066】
本発明のrAAVベクターでは、哺乳動物細胞で発現させるための、目的の遺伝子産物をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列(複数可)は、少なくとも1つの哺乳動物細胞適合性発現制御配列、例えば、プロモーターに作動可能に連結されていることが好ましい。当技術分野では、多くのこのようなプロモーターが公知である(Sambrook及びRussel、2001、前出を参照されたい)。CMVプロモーターなど、多くの細胞型で広く発現する構成的プロモーターも使用することができる。しかし、誘導的、組織特異的、細胞型特異的、又は細胞周期特異的なプロモーターが、より好ましいであろう。例えば、肝臓特異的発現プロモーターは、α1−抗トリプシンプロモーター、甲状腺ホルモン結合性グロブリンプロモーター、アルブミンプロモーター、LPS(チロキシン結合性グロブリン)プロモーター、HCR−ApoCIIハイブリッドプロモーター、HCR−hAATハイブリッドプロモーター及びアポリポタンパク質Eプロモーター、LP1、HLP、最小TTRプロモーター、FVIIIプロモーター、ハイペロンエンハンサー、ealb−hAATから選択することができる。他の例は、腫瘍選択性発現のためのE2Fプロモーター、及び、特に、神経細胞腫瘍選択性発現のためのE2Fプロモーター(Parrら、1997、Nat.Med.、3:1145〜9)、又は単核血球における使用のためのIL−2プロモーター(Hagenbaughら、1997、J Exp Med、185:2101〜10)を含む。
【0067】
AAVは、多数の哺乳動物細胞に感染することが可能である。例えば、Tratschinら、Mol.Cell Biol.、5(11):3251〜3260(1985)及びGrimmら、Hum.Gene Ther.、10(15):2445〜2450(1999)を参照されたい。しかし、AAVの、ヒト滑膜線維外細胞への形質導入は、同様のマウス細胞への形質導入より著しく効率的であり(Jenningsら、Arthritis Res、3:1(2001))、AAVの細胞指向性は、血清型間で異なる。例えば、Davidsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97(7):3428〜3432(2000)(哺乳動物CNS細胞向性及び形質導入効率に関する、AAV2、AAV4、及びAAV5の間の差違について論じている)を参照されたい。
【0068】
昆虫細胞でのAAVの産生のために、本発明で使用しうるAAV配列は、任意のAAV血清型のゲノムに由来しうる。一般に、AAV血清型は、アミノ酸レベル及び核酸レベルにおいて、著しく相動的なゲノム配列を有し、同一な遺伝子機能のセットをもたらし、本質的に、物理的及び機能的に同等なビリオンを産生させ、実質的に同一な機構により複製され、アセンブルされる。多様なAAV血清型のゲノム配列、及びゲノムの類似性の概観については、例えば、GenBank受託番号U89790、GenBank受託番号J01901、GenBank受託番号AF043303、GenBank受託番号AF085716、Chloriniら(1997、J.Vir.71:6823〜33)、Srivastavaら(1983、J.Vir.45:555〜64)、Chloriniら(1999、J.Vir.、73:1309〜1319)、Rutledgeら(1998、J.Vir.、72:309〜319)、及びWuら(2000、J.Vir.、74:8635〜47)を参照されたい。ヒトアデノ随伴ウイルス(AAV)血清型又はサルAAV血清型は、本発明の文脈における使用のためのAAVヌクレオチド配列の好ましい供給源であり、より好ましくは、ヒト(例えば、血清型1、2、3A、3B、4、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13)又は霊長動物(例えば、血清型1及び4)に、通常、感染するAAV血清型は、本発明の文脈における使用のためのAAVヌクレオチド配列の好ましい供給源である。
【0069】
本発明の文脈における使用のためのAAV ITR配列は、AAV1、AAV2、AAV5及び/又はAAV4に由来することが好ましい。同様に、Rep52コード配列、Rep40コード配列、Rep78コード配列、及び/又はRep68コード配列は、AAV1、AAV2、及び/又はAAV4に由来することが好ましい。本発明の文脈における使用のための、VP1カプシドタンパク質、VP2カプシドタンパク質、及びVP3カプシドタンパク質をコードする配列は、公知の42の血清型のうちのいずれかから採取することができ、より好ましくは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、若しくはAAV9、又は例えば、カプシドシャフリング法及びAAVカプシドライブラリーにより得られる、新開発のAAV様粒子から採取することができる。好ましい実施形態では、VP1カプシドタンパク質、VP2カプシドタンパク質、及びVP3カプシドタンパク質をコードする配列は、AAV5又はAAV8、より好ましくは、AAV5に由来する。
【0070】
AAV Rep配列及びAAV ITR配列は特に、大半の血清型間で保存されている。多様なAAV血清型のRep78タンパク質は、例えば、89%を超えて同一であり、AAV2、AAV3A、AAV3B、及びAAV6の間の、ゲノムレベルにおける全ヌクレオチド配列の同一性は、約82%である(Bantel−Schaalら、1999、J.Virol.、73(2):939〜947)。さらに、多くのAAV血清型のRep配列及びITRは、哺乳動物細胞のAAV粒子の産生時に、他の血清型に由来する対応する配列を、効率的に交差補完する(すなわち、機能的に置換する)ことが公知である。米国特許出願公開第2003148506号は、AAV Rep配列及びAAV ITR配列はまた、昆虫細胞でも、他のAAV Rep配列及びAAV ITR配列を効率的に交差補完することについて報告している。
【0071】
AAV VPタンパク質は、AAVビリオンの細胞指向性を決定することが公知である。VPタンパク質コード配列は、異なるAAV血清型間の保存が、Repタンパク質及びRep遺伝子より著しく低度である。Rep配列及びITR配列が、他の血清型の対応する配列を交差補完する能力は、ある血清型(例えば、AAV3)のカプシドタンパク質並びにRep及び/又は別のAAV血清型(例えば、AAV2)のITR配列を含む偽型AAV粒子の産生を可能とする。このような偽型AAV粒子は、本発明の一部である。
【0072】
本発明の文脈ではまた、例えば、昆虫細胞のrAAVベクターの産生のために、修飾「AAV」配列も使用することができる。このような修飾配列であって、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8又はAAV9の、ITR、Rep、又はVPに対して、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又はこれを超えるヌクレオチド酸配列同一性及び/又はアミノ酸配列同一性を有する配列(例えば、約75〜99%のヌクレオチド配列同一性を有する配列)を含む修飾配列を、野生型AAV ITR配列、野生型AAV Rep配列、又は野生型AAV VP配列の代わりに使用することができる。
【0073】
多くの点で、他のAAV血清型と類似するが、AAV5は、他のヒトAAV血清型及びサルAAV血清型と異なり、他の公知のヒト血清型及びサル血清型より大きく異なる。この点に照らすと、昆虫細胞のAAV5の産生は、他の血清型の産生と異なりうる。本発明の方法を援用して、rAAV5を産生させる場合、1又は複数のベクターは、1つを超えるベクターの場合は併せて、AAV5 ITRを含むヌクレオチド配列、AAV5 Rep52コード配列及び/又はAAV5 Rep40コード配列を含むヌクレオチド配列、並びにAAV5 Rep78コード配列及び/又はAAV5 Rep68コード配列を含むヌクレオチド配列を含むことが好ましい。このようなITR配列及びRep配列を、所望の通りに修飾して、昆虫細胞での、rAAV5ベクター又は偽型rAAV5ベクターの効率的な産生を得ることができる。例えば、Rep配列の開始コドンを修飾することができる。
【0074】
好ましい実施形態では、第1のヌクレオチド配列と、第2のヌクレオチド配列と、第3のヌクレオチド配列と、任意選択で、第4のヌクレオチド配列とは、昆虫細胞のゲノムに安定的に組み込まれている。
【0075】
さらなる態様では、本発明は、AAVビリオンに関する。AAVビリオンは、そのゲノムに、目的の遺伝子産物をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み、少なくとも1つのヌクレオチド配列は、好ましくは、天然のAAVヌクレオチド配列ではなく、AAV VP1カプシドタンパク質は、N末端からC末端へと、
(i)翻訳開始コドン、好ましくは、CTG、ACG、TTG、及びGTGからなる群から選択される次善の翻訳開始コドンによりコードされる、第1のアミノ酸残基と、
(ii)アラニン、グリシン、バリン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択される第2のアミノ酸残基と、
(iii)任意選択で、第2のアミノ酸残基に続く、1又は複数のさらなるアミノ酸残基と、
(iv)VP1翻訳開始コドンによりコードされるアミノ酸残基を欠き、好ましくは、VP1翻訳開始コドンによりコードされるアミノ酸残基だけを欠き、又は、代替的に言えば、VP1翻訳開始コドンによりコードされるアミノ酸残基を欠くにすぎない、AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列と
を含むか又はこれらからなることが好ましい。
【0076】
VP1翻訳開始コドンによりコードされるアミノ酸残基だけを欠く、AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列は、自然発生のVP1翻訳開始コドンによりコードされるアミノ酸残基だけを欠く、AAV VP1カプシドタンパク質の自然発生のアミノ酸配列であることが好ましい。次善の翻訳開始コドンによりコードされる、第1のアミノ酸残基は、メチオニン残基であることが典型的である。
【0077】
代替的に、この態様では、本発明は、そのゲノムに、目的の遺伝子産物をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み、少なくとも1つのヌクレオチド配列が、好ましくは、天然のAAVヌクレオチド配列ではなく、AAV VP1カプシドには、開始コドンと、野生型カプシドタンパク質の2位におけるアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基との間に、1又は複数のさらなるアミノ酸残基が挿入されており、開始コドンの直後に続くさらなるアミノ酸残基が、アラニン、グリシン、バリン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択される、AAVビリオンに関する。
【0078】
本発明に従うビリオンでは、AAV VP1カプシドタンパク質と、VP2カプシドタンパク質と、VP3カプシドタンパク質との当量比は、以下の通りであることが好ましい:VP1の量は、(a)VP2の量の少なくとも100、105、110、120、150、200、若しくは400%であるか、又は(b)VP3の量の少なくとも8、10、10.5、11、12、15、20、若しくは40%であるか、又は(c)少なくとも、(a)及び(b)の両方で定義されている通りであることが好ましい。VP1、VP2、及びVP3の量は、VP1、VP2、及びVP3の各々に共通のエピトープを認識する抗体を使用して決定することが好ましい。当技術分野では、VP1、VP2、及び/又はVP3の相対量の定量化を可能とする、多様なイムノアッセイが利用可能である(例えば、Using Antibodies、E.Harlow及びD.Lane、1999、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New Yorkを参照されたい)。3つのカプシドタンパク質の各々に共通のエピトープを認識するのに適する抗体は、例えば、マウス抗Cap B1抗体(プローゲン(Progen)社、Germanyから市販されている)である。
【0079】
本発明に従う、好ましいAAVは、そのゲノムに、目的の遺伝子産物をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み、少なくとも1つのヌクレオチド配列が、好ましくは、天然のAAVヌクレオチド配列ではなく、AAVビリオンが、アミノ酸の1位に、メチオニン、トレオニン、ロイシン、又はバリンを含む、VP1カプシドタンパク質を含む、ビリオンである。本発明に従う、より好ましいAAVビリオンは、上記で規定された比のカプシドタンパク質を有し、アミノ酸の1位に、ロイシン又はバリンを含む、VP1カプシドタンパク質を含む。例えば、本明細書の下記で定義される方法により、上記で規定された昆虫細胞から得られるAAVビリオンが、なおより好ましい。VP1カプシドタンパク質の1位に、トレオニン又はロイシンを含むAAVビリオンがなおより好ましく、トレオニン残基を含むAAVビリオンがさらにより好ましい。
【0080】
本発明のAAVビリオンの利点は、それらの感染性の改善である。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、特に、感染性は、カプシドのVP2及び/又はVP3の量と比べた、カプシドのVP1タンパク質の量の増大と共に増大すると考えられる。本明細書では、AAVビリオンの感染性は、ビリオンに含まれる導入遺伝子の形質導入の効率であって、導入遺伝子の発現率及び導入遺伝子から発現する産物の量又は活性から推定されうる効率を意味するように理解される。
【0081】
本発明のAAVビリオンは、CFTR、第IX因子、リポタンパク質リパーゼ(LPL、好ましくは、LPL S447X、国際公開第WO01/00220号を参照されたい)、アポリポタンパク質A1、ウリジン二リン酸グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)、色素性網膜炎GTPアーゼ調節因子相互作用タンパク質(RP−GRIP)、例えば、IL−10、ジストロフィン、PBGD、NaGLU、Treg167、Treg289、EPO、IGF、IFN、GDNF、FOXP3、第VIII因子、VEGF、AGXT、及びインスリンなどのサイトカイン又はインターロイキンからなる群から選択されるポリペプチド遺伝子産物をコードする、目的の遺伝子産物を含むことが好ましい。目的の遺伝子産物は、第IX因子又は第VIII因子タンパク質をコードすることがより好ましい。
【0082】
従って、別の態様では、本発明は、AAVを昆虫細胞で産生させるための方法に関する。方法は、(a)本明細書の上記で規定された昆虫細胞を、AAVが産生されるような条件下で培養するステップと、任意選択で、(b)AAVを回収するステップとを含むことが好ましい。当技術分野では、培養物中の昆虫細胞のための増殖条件、及び培養物中の昆虫細胞の異種産物の産生が周知であり、例えば、昆虫細胞の分子操作についての、上記で引用された参考文献において記載されている。
【0083】
方法は、抗AAV抗体、好ましくは、固定化抗体を使用して、AAVをアフィニティー精製するステップをさらに含むことが好ましい。抗AAV抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。特に適する抗体は、例えば、ラクダ又はラマから得られる、単鎖ラクダ科動物抗体又はその断片である(例えば、Muyldermans、2001、Biotechnol.、74:277〜302を参照されたい)。AAVのアフィニティー精製のための抗体は、AAVカプシドタンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体であることが好ましく、エピトープは、1つを超えるAAV血清型のカプシドタンパク質に存在するエピトープであることが好ましい。例えば、抗体は、AAV2カプシドへの特異的結合に基づき、作製又は選択しうるが、同時にまた、抗体は、AAV1カプシド、AAV3カプシド、及びAAV5カプシドにも特異的に結合する。
【0084】
本明細書及びその特許請求の範囲では、「〜を含む」という動詞及びその活用形を、「〜を含む」という語に続く項目を含むが、具体的に言及されていない項目も除外しないことを意味するように、非限定的な意味で使用する。加えて、文脈により、存在するのは要素のうちの1つであり、1つだけであることが明らかに要求されない限りにおいて、不定冠詞である「ある(a)」又は「ある(an)」による要素への言及も、1つを超える要素が、存在する可能性を除外しない。従って、不定冠詞である「ある(a)」又は「ある(an)」は通例、「少なくとも1つの」を意味する。
【0085】
本明細書で引用される、全ての特許及び参考文献は、参照によりそれらの全体において組み込まれる。
【0086】
以下の例は、例示的な目的のためだけに提示するものであり、いかなる形でも、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0087】
1.序説
rAAVを産生させるための初期バキュロウイルス系は、Urabeら(Urabeら[2002]、Human Gene Therapy、13(16):1935〜1943)により記載され、3つのバキュロウイルス、すなわち、Bac−Rep、Bac−cap、及びBac−vecからなり、これらの昆虫細胞、例えば、SF9細胞への共感染は、rAAVの産生を結果としてもたらした。このような産生されたrAAVの特性、すなわち、効力を含む物理的特徴及び分子的特徴は、哺乳動物細胞で産生されたrAAVとあまり異ならなかった(Urabe[2002]、前出)。昆虫細胞のrAAVベクターの効率的な産生を達成するためには、工程に必要とされるAAVタンパク質を、適切なレベルで発現させなければならなかった。これは、多数のRepタンパク質及びCapタンパク質をコードするオペロンの適合を要求した。野生型AAVは、大型のRep78及び小型のRep52を、それぞれ、2つの顕著に異なるプロモーターであるp5及びp19から発現させ、2つのメッセンジャーのスプライシングの結果として、Rep68変異体及びRep52変異体の産生をもたらす。このオペロンの組織化は、限定的なRep78の発現と、比較的高量のRep52の発現とを結果としてもたらす。Rep78のRep52に対する比の小ささを模倣するために、Urabeらは、Rep78の発現は、即初期1遺伝子(ΔIE−1)の、部分的に欠失させたプロモーターにより駆動する一方で、Rep52の発現は、強力なポリヘドリンプロモーター(polh)により制御する、DNAカセットを構築した。昆虫細胞では、大型のRep及び小型のRepのスプライシングされた変異体が観察されなかったが、これは、哺乳動物細胞と昆虫細胞とのスプライシング工程の差違と関連する可能性が高い。克服すべき別の技術的課題は、3つの主要なウイルスタンパク質(VP)の発現に関連していた。野生型AAVは、VP1、VP2、及びVP3を、p40プロモーターから発現させる。生じるメッセンジャーRNAは、2つの分子種へとスプライシングされる:1つの分子種が、VP1発現の一因となるのに対し、第2の分子種は、タンパク質が、場合によって、リボソーム複合体により看過される非カノニカルの始点、すなわち、ACGから開始される「漏出性リボソーム走査機構」を介して、VP2及びVP3の両方を発現させるが、このとき、リボソーム複合体は、それが、VP3のカノニカルの始点を見出すまで、さらに前進する。脊椎動物細胞と昆虫細胞との、スプライシング機構の差違のために、上記で記載された機構は、昆虫細胞では、適正なカプシドの産生を結果としてもたらさなかった。Urabeらは、VP1の翻訳始点を、ACGへと変化させ、VP1に先行する9ヌクレオチドからなる開始コンテキストを、VP2に先行するヌクレオチドへと変化させるような形で、VP2に見出される修飾と類似する、VP1の翻訳始点の修飾を導入することを決定した。これらの遺伝子変化は、単一のポリシストロニックのmRNAに由来するカプシドへと適正にアセンブルされうる、3つのVPの、正確な当量比での発現を結果としてもたらした。他方で、導入遺伝子カセットは、哺乳動物ベースの系についてかつて記載されたカセットと類似し、複製及びパッケージングに要求される、唯一のイントランスのエレメントとしてのITRに挟まれた。
【0088】
新たに発見されたAAV血清型であって、異なる所望の特性を保持するAAV血清型の数が増大するにつれ、これらのカプシドの、BEV系における産生が必要とされる。昆虫細胞でのAAV2の産生の成功が示されているが、全ての血清型の効能が、AAV2に適合させた系で同等に良好なわけではない。新たな血清型を、最適な産生及び効力に適合させることは、些末な作業ではなく、テーラーメイドの手法を要求することが考えられる。rAAV5配列を、昆虫細胞のBEVSによる産生に適合させようとするかつての試みが収めた成功は限定的なものであり、結果として得られる、VP1の、カプシドへの組込みは、低度なものであった(Kohlbrennerら(2005)、Molecular Therapy、12(6):1217〜1225、Urabeら(2006)、Journal of Virology、80(4):1874〜1885)。この問題を回避するために、Urabeらは、2型AAVに由来するN末端の136アミノ酸残基と、AAV血清型5に由来する残余の配列とを含有する、2/5型キメラウイルスを作り出した。このようなウイルスは、産生が良好であり、野生型AAV5の効力と同様な効力を提示することが報告された(Urabeら(2006)、前出)。しかし、結果として得られるビリオンは、キメラビリオンであり、「真性の」rAAV5血清型を表さない。
【0089】
昆虫細胞で、感染性及び/又は効力を改善した、純種のrAAV5を産生させるために、本発明者らは、複数のカプシドタンパク質5の突然変異体をデザインした。感染性には、3つのウイルスタンパク質の当量比が均衡していることが重要であると考えられる。例えば、かつて報告された通り、本発明者らは、VP1合成の欠如は、ベクターの効力に多大な影響を及ぼすことに気付いた。さらに、本発明者らは、ベクターの効力は、VP1及びVP2と比較して、VP3の高度な組込みと負に相関することを観察した。過剰量のVP3を伴うウイルス調製物は、in vitro及びin vivoにおける細胞への形質導入が低度であった。最後に、本発明者らは、Urabeら(2006、前出)により作り出されたキメラrAAV5より優れた効力を提示する、純種の(又は「真性の」)rAAV5カプシドを構築した。この新たなカプシドは、キメラAAV2/5と比較して均衡したVP当量比と、同様であるか又は優れた効力とを有することが見出された。
2.方法
2.1.rAAV5ベクターの産生
【0090】
rAAV5のバッチは、エクスプレスSF+(登録商標)昆虫細胞株(プロテインサイエンス社(Protein Sciences Corporation))に、カプシド(rAAV5変異体ライブラリー)、レプリカーゼ、及び導入遺伝子(Seap又は第IX因子)の発現カセットを含む、3つの異なるバキュロウイルスを、それぞれ、CMVプロモーター及びLP1プロモーターの制御下で共感染させることにより産生させた。カプシド発現カセットは、ポリヘドロンプロモーターの制御下に置いた。Rep発現カセットは、国際公開第WO2009/14445号において記載されている通り(BAC.VD183)であり、それぞれ、Rep78及びRep52の発現を駆動する、デルタE1及びポリヘドロンプロモーターの制御下に置いた。エクスプレスSF+(登録商標)細胞は、増幅したばかりのバキュロウイルス原液を使用して、5:1:1(Rep:Cap:導入遺伝子)の容量比で感染させた。28℃で72時間にわたるインキュベーションの後、細胞を、10倍濃度の溶解緩衝液(1,5MのNaCl、0,5Mのトリス−HCl、1mMのMgCl
2、1%のTriton X−100、pH=8.5)で、28℃で1時間にわたり溶解させた。ゲノムDNAは、ベンゾナーゼ(Benzonase)処理により、37℃で1時間にわたり消化した。細胞破砕物は、1900×gで15分間にわたる遠心分離により除去し、その後、rAAV5粒子を含有する上清を、4℃で保存した。ベクター力価は、この、いわゆる粗細胞溶解物中で、導入遺伝子のプロモーター領域を指向する特異的Q−PCRにより決定した。略述すると、アフィニティー精製されたベクターを、Q−PCRで解析した。AAVを、37℃、DNアーゼで処理して、遺伝子外DNAを分解した。次いで、AAV DNAを、1MのNaOH処理により、粒子から放出させた。短時間の加熱処理(37℃で30分間にわたる)の後、アルカリ性環境を、等容量の1M HClで中和した。中和された試料は、タクマンQ−PCR(Taqman Q−PCR)で使用されるAAV DNAを含有した。Q−PCRは、下記の表1に列挙されるプライマー及びプローブを使用して、標準的な手順に従い実施した。
2.2.rAAV5ベクターの精製
【0091】
rAAV5粒子を、粗溶解物から、AVBセファロース(アフィニティー樹脂、GEヘルスケア社(GE healthcare))を使用する、バッチ結合プロトコールにより精製した。rAAV5粗細胞溶解物を、洗浄された(pH=7.5の0.2M HPO
4緩衝液により)樹脂へと添加した。その後、試料を、静かに混合しながら、室温で2時間にわたりインキュベートした。インキュベーションの後、樹脂を、pH=7.5の0.2M HPO
4緩衝液で洗浄し、結合したベクターを、0.2Mのグリシン、pH=2.5を添加することにより溶出させた。溶出させたベクターのpHは、0.5Mのトリス−HCl、pH=8.5を添加することにより、速やかに中和した。精製されたrAAV5バッチは、−20℃で保存した。精製されたベクターは、特異的Q−PCRで滴定した。
【0092】
in vivo研究のための高量のベクターを産生させるために、改変精製プロトコールを使用した。略述すると、採取の後、清明化させた溶解物を、0.22μmのフィルター(ミリパック60(Millipak 60)、0.22μm)に通した。次に、ベクター粒子を、AKTAエクスプローラー(AKTA explorer)(FPLCクロマトグラフィーシステム、GEヘルスケア社)で、8mlのAVBセファロースカラム(GEヘルスケア社)を介してアフィニティー精製した。結合したrAAV5粒子を、0.2Mのグリシン、pH=2.5により、カラムから溶出させた。溶出物は、60mMのトリスHCl、pH=7.5で速やかに中和した。中和された溶出物の緩衝液を、100KDaの限外濾過(ミリポア(Millipore)社)フィルターを一助として、5%のスクロースを含むPBSと交換した。次いで、最終産物を、0.22μmのフィルター(ミレックスGP(Millex GP))で濾過し、アリコート分割し、さらなる使用まで、−20℃で保存した。精製の後、特異的Q−PCRにより、ウイルス力価を決定した。
【0093】
【表1】
2.3.rAAV5変異体のVPタンパク質組成物
【0094】
精製rAAV5変異体のVPタンパク質組成物を、ビス−トリスポリアクリルアミドゲル(ニューページ(Nupage)、ライフテクノロジーズ(Life technologies)社)で決定し、シプロルビー(Sypro Ruby)で染色した。略述すると、15μlの精製rAAV5を、4倍濃度のLDSローディング緩衝液(ライフテクノロジーズ社)5μlと混合し、ビス−トリスポリアクリルアミドゲルにロードした。試料を、電気泳動により、100ボルトで2時間にわたり分離した。電気泳動の後、タンパク質を、10%のNaAC/7%のEtOHで、30分間にわたり固定し、シプロルビー(ライフテクノロジーズ社)で2時間にわたり染色した。次いで、VPタンパク質を、イメージクォント(ImageQuant)システム(GEヘルスケア社)のUV光下で可視化した。
2.4.in vitroにおける効力
【0095】
異なる血清型5カプシド変異体のin vitroにおける効力について調べるため、2つの継代細胞株を使用した。本実施例では、Hela細胞及びHuh7細胞1×10
5個に、rAAV5変異体を、多様な感染多重度で感染させた。実験は、24ウェルプレートに、ウェル1つ当たりの細胞1×10
5個、約80%のコンフルエンシーで実施した。いずれの実験でも、野生型アデノウイルスを、30の感染多重度で使用した。第2鎖の合成工程を、約24時間以内に早めて実施し、これにより、アッセイを比較的短時間で実施し、細胞を継代培養する必要を回避することを可能とするために、この野生型アデノウイルスの添加は、in vitroにおける効力試験だけに適用した。感染開始の48時間後に、上清中のSeap発現を、Seapレポーターアッセイキット(ロシュ(Roche)社)を使用して測定した。発光を、スペクトラマックスL(Spectramax L)発光計(モレキュラーデバイシズ(Molecular devices)社)、470nmで、組込み時間を1秒間として測定した。
2.5.in vivoにおける効力
【0096】
異なる血清型5カプシド変異体のin vivoにおける効力について調べるため、2つの異なる実験を実施した。略述すると、Seapレポーター遺伝子を持つrAAV5ベクター構築物159〜164の効力について、C57BL/6マウスにおいて調べた。異なるベクターを、マウスに、5×10
12gc/kgの用量で筋肉内注射した。実験群は、PBS群を含む、各々マウス5匹ずつの合計7つの群からなった。マウス血漿は、注射の2、4、及び6週後に得、その後、マウスを屠殺した。ロシュ社製のSeapレポーターアッセイキットを使用して、Seap活性を、血漿中で測定した。発光を、スペクトラマックスL発光計(モレキュラーデバイシズ社)、470nmで、組込み時間を1秒間として測定した。
【0097】
次に、変異体AAV5(765)のin vivoにおける効力を、AAV5(160)及びAAV5(92)の効力と比較した。AAV5(92)は、Kotin博士の研究室から恵与されたものであった(Urabeら、2006)。C57BL/6マウスに、レポーター遺伝子としてのFIXを持つ765又は160の両方を、2×10
12gc/kg及び2×
13gc/kgの用量で、静脈内注射した。PBS群を含む、各々マウス5匹ずつの合計7つの群に注射した。血漿は、注射の1、2、及び4週後に回収し、その後、マウスを屠殺した。血漿中に存在する第IX因子タンパク質は、第IX因子特異的ELISA(ビジュアライズフィックス(VisuLize FIX)抗原キット、コルディア(Kordia)社)で測定した。光学濃度は、バーサマックス(Versamax)ELISAプレートリーダー(モレキュラーデバイシズ社)、450nmで測定した。
3.結果
3.1.BEVSでのrAAV5の産生
【0098】
AAVとは、その宿主の機構を使用して、cap遺伝子など、その遺伝子を発現させる哺乳動物ウイルスである。VP1:VP2:VP3の正確な当量比を達成する哺乳動物宿主の機構は、昆虫細胞には存在しないか、又は昆虫細胞では最適ではない。従って、Urabeらは、昆虫細胞におけるAAV2の3つのVPの産生を正確な当量比で結果としてもたらす、ポリシストロニックのcap mRNAを構成するための遺伝子調整戦略を開発した(Urabeら(2002)、前出)。BEVSでrAAV5を産生させる類似の方法を確立する試みは、十分な感染性粒子を達成することに成功しなかった。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、これは、VP1の、カプシドへの組込みが低度であることにより引き起こされると考えられる(Urabeら(2006)、前出)。このため、Urabeらは、血清型2についてのかつての成功に基づき、5型VP1のN末端部分を、2型VP1のN末端部分で置きかえて、感染性AAV5粒子を産生させた(Urabeら(2006)、前出)。成功はしたが、キメラAAV2/5カプシドは、真正の5型粒子を含まず、それ自体、AAV5と比較して特性を変化させており、これは、5型に由来するカプシドではなく、2つのカプシドの組合せを表しうるであろう。
【0099】
昆虫細胞の、感染性及び効力を改善したAAV5ビリオンの産生を可能とするために、本発明では、AAV5のcap5発現カセットに対して、一連の遺伝子変化を施した(表2)。既に言及されている(Urabeら(2006)、前出)通り、野生型cap5遺伝子(本発明では、クローン番号763)は、rAAVの産生を支援しなかった。昆虫細胞における天然のAAVスプライシングシグナルの認識を欠くために、個別のVPの低発現及びベクター産生の欠如を結果としてもたらした可能性が高い。真核細胞のリボソームは、mRNAを、5’から3’へと一方向に読み取るという事実のために、ポリシストロニックのcap5 mRNAの最初の翻訳開始点(本発明では、VP1)は、3つのタンパク質全ての発現のために有害である。野生型の開始点は、リボソームのリードスルーを可能とせず、このため、他の2つのVPの発現を遮断する、いわゆる強力な翻訳開始コドンである、ATGから構成されており、これにより、rAAV産生の欠如がもたらされる。野生型AAVが、リボソームのリードスルーを使用して、VP2(非カノニカルの翻訳開始点であるACG)及びVP3(ATG)を発現させるという事実から、本発明者らは、3つのVPの発現及び/又はアセンブリーを変化させるように、VP1の翻訳始点と、そのすぐの周囲部分とについて調べた。
【0100】
かつて、翻訳始点のヌクレオチドコンテキストは、翻訳開始の強度に影響を及ぼすことが報告された(Kozac(1987)、Nucleic Acid Research、15(20):8125〜8148、国際公開第WO2007/046703号)。好ましいヌクレオチドは、AUGを、それぞれ、+1、+2、及び+3とするときの、(−3)位におけるA及び(+4)位におけるAであると考えられる(Kozac、前出、国際公開第WO2007/046703号)。表2は、3つのVPの発現を調整するように、翻訳開始点、その上流及び下流のコンテキストへと導入された特異的変化を詳細に示す。本発明者らは、本来VP2翻訳始点の周囲に配置されている上流の開始コンテキスト:多様な非カノニカルの開始コドン(ACG、CTG、TTG、GTG)、+2位の野生型三項対への多様な突然変異誘発性変化、及び+1位の開始三項対と、+2位の野生型三項対との間の挿入について調べた。これらの特徴の組合せを包含する発現カセットを、rAAVの産生のために使用した。
【0101】
【表2】
3.2.VP1の翻訳開始点周囲の小さなヌクレオチド変化は、ベクターの効力に対して重大な効果を及ぼす
【0102】
表2に列挙されるcap5発現カセットの全ての変異体を持つバキュロウイルス構築物を作り出すことに成功した。その後、Rep(複数可)及び導入遺伝子(レポーター遺伝子、例えば、SEAP又はFIX)を持つバキュロウイルスと組み合わせた、これらのバキュロウイルス構築物を、rAAVの産生のために使用した。被験構築物のうちの一部は、複数回の試みにも拘らず、rAAVの産生を支援しなかった。これは、野生型AAV5(構築物763)及び非カノニカルの始点である、TTG(構築物764)、GTG(構築物766)を持つ構築物のうちの一部を含んだ。表2に列挙される他の全ての構築物は、rAAVの産生の成功を結果としてもたらした。
【0103】
産生に成功した5型rAAV変異体の3つのウイルスタンパク質(VP)を単離した。3つのVPの当量比について、精製されたベクターの電気泳動による分離(SDS−PAGE)により調べた(
図1及び6)。cap5遺伝子の発現カセットへと導入される小さな修飾は、3つのVPタンパク質の発現及び/又はアセンブリーに対して重大な効果を及ぼし、これは、カプシドの組成に反映されると考えられる。本発明者らは、Urabeらにより、昆虫細胞による血清型2の産生を可能とする修飾として報告された、非カノニカルの開始コドン(ACG)及び9ヌクレオチドの上流コンテキストであるCCTGTTAAGの導入を介する、血清型5カプシドの、昆虫細胞への適合が、VP1の低度の組込み(低VP1/VP2比)及び過剰レベルのVP3のカプシドへの組込み(高VP3/VP1比)を結果としてもたらし、3つのVPの当量比の異常を結果としてもたらしたことに注目した(
図1、構築物159)。同様に、Gを構成する、+4位のヌクレオチドの修飾、カノニカルのコザック配列に酷似させる修飾であって、+2位のセリンの、アラニン(構築物161)への交換を結果としてもたらす修飾も、VP1の低度の組込み及びVP3の高度の組込み(低VP1/VP2及び高VP3/VP1)を結果としてもたらした。上流のCCTGTTAAG及び下流の修飾、すなわち、+4位のヌクレオチドのAへの変化(構築物162)、又は+4〜5位のヌクレオチドのAGへの変化(構築物164)、又は元の+2位の三項対のAGCへの修飾を伴う、第2の三項対としてのACTの挿入(構築物163)と組み合わせた、異なる非カノニカルのコドンであるCTGの使用も、VP1のカプシドへの組込みを改善せず、低VP1/VP2及び高VP3/VP1を結果としてもたらした。1に近いVP1/VP2比を示す構築物のうちの1つは、すぐの上流におけるCCTGTTAAGの挿入、非カノニカルのACG、及び野生型配列と比較した、+2位における、GCTによりコードされる、さらなるアラニンの挿入を包含する構築物160であったが、VP3の組込みは、やはり過剰であった(等VP1/VP2及び高VP3/VP1)。その後、構築物160のプロモーター配列を、野生型のポリヘドリンプロモーターにより正確に相似するように突然変異させた。これにより、突然変異体761を作り出した。VP2の開始コンテキストを除去して、突然変異体762を創出した。いずれの場合(761及び762)にも、構築物160と比較して、ウイルスの当量比に対する否定的影響(低度のVP1組込み)がわずかに認められた(
図1)。次に、構築物160のVP1の翻訳開始部位(翻訳開始コドンのすぐ下流の有益なGCTを保存する)を、野生型のATG(突然変異体763)、TTG(突然変異体764)、CTG(突然変異体765)、GTG(突然変異体766)へと変化させた。突然変異体765以外の全ては、rAAVの検出可能な産生の欠如を結果としてもたらした。興味深いことに、非カノニカルのVP1開始点としてのCTGと、翻訳始点(765)の直後に続く、GCT三項対(追加のアラニンをコードする)の付加との組合せは、VP1の、VP2より高度の組込みと、VP3の強力な減衰を結果としてもたらし、最終的に、野生型AAV様の均衡したVP当量比(高VP1/VP2及び中VP3/VP1)を結果としてもたらした。最後に、構築物160と同様に、VP1開始コドンとして、ACGではなく、CTGを伴う構築物43は、ほぼ天然のVP比を伴うVP1産生を結果としてもたらした(
図6)。
3.3.VP3の過剰発現は、BEVSの真性5型AAV突然変異体の低効力の一因である
【0104】
血清型5カプシドライブラリーの効力、すなわち、VP当量比の異なるベクターが、その遺伝子材料の発現を駆動する能力について研究するために、in vitro研究及びin vivo研究を実施した。2つの異なる継代細胞株、すなわち、Hela細胞株(
図2及び
図7(A))及びHuh7細胞株(
図3及び
図7(B))を使用した。いずれの場合にも、VP2の組込みを下回るVP1の組込みと、VP3の過剰な組込みとを示す突然変異体のセット(構築物159、161〜164)は、効力の大幅な低減を示した(
図2〜3)。ベクターの効力は、VP1の組込みとVP2の組込みとを均衡させることにより、大きく改善された(構築物160)。プロモーターの短縮(構築物761)及びイニシエーター構築物の除去(構築物762)は、ベクターの効力に対して否定的な影響を及ぼした。最も強力なベクター、構築物765(
図2〜3)は、VP1に有利なVP1対VP2比と、VP3組込みの著しい減殺とを示した。最後に、イニシエーター構築物、CTG開始コドン、及びさらなるGCT三項対(追加のアラニンをコードする)と組み合わせたpolHプロモーター(非短縮型)(構築物43)は、構築物765の効力を幾分下回るが、良好な効力を示した(
図7(A)及び(B))。
【0105】
突然変異体のサブセット(構築物159〜164)を、in vivo(C57BL/6マウス)において、効力について調べた。ベクターは、レポーター遺伝子であるSEAPを保有した。マウスに、カプシド5変異体を、5×10
12gc/kgの用量で注射し、ある時間にわたりモニタリングした。被験セット中で最良の効力を示した変異体(160)はまた、VP1/VP2が当モル量でもあり、in vitroにおける観察と符合した(
図4)。
3.4.昆虫細胞により産生される純種のAAV5(765)は、in vivoにおいて、キメラ2/5型突然変異体より優れた効能を示す
【0106】
in vivoにおけるAAV5(765)の効力について調べるために、3つのベクターバッチを調製した。これらのバッチは、キメラ2/5型(92)(Urabeら(2006)、前出)、過剰量のVP3を含有する純種5型AAV(160)、及びin vitroにおいて最良の効能を示す純種5型AAVであって、野生型のVP当量比を示す純種5型AAV(765)を含んだ。全てのバッチは、Repタンパク質及びFIX発現カセットを持つバキュロウイルス構築物(国際公開第WO2006/36502号において記載されている)を使用して、同じ条件下で産生された。3つのベクター調製物の効力を比較するために、black6マウスに、2つの異なる用量、すなわち、2e12gc/kgの低用量及び2e13gc/kgの高用量のベクターを注射した。媒体群を含む、マウス5匹ずつからなる、合計7つの群を、実験に組み入れた。実験の開始後、1、2、及び4週目に血液を回収した。FIXの発現は、特異的ELISAを介して、血液中でモニタリングした。結果は、新たに作り出された突然変異体765は、構築物160に対する効力の有意な改善を提示するという、かつてのin vitroにおける知見を裏付けた。興味深いことに、構築物765はまた、Urabeら(2006)(前出)により公表された、2/5型キメラ(構築物92)より有意に良好でもあった(
図5)。対応のないt検定を使用して、765と160との差違、及び765と92との差違について調べた。全ての場合において、すなわち、1、2、及び4週目において、p値<0.05とする統計学的有意差が認められた。
4.考察
【0107】
昆虫細胞のrAAVの産生は、cap遺伝子の遺伝子構成における多数の調整を要求する。哺乳動物細胞では、AAVは、代替法スプライシングを活用し、VP2のACGイニシエーター始点の活用を低下させることにより、そのVPタンパク質を、単一のオープンリーディングフレームから発現させる。これは、VP1:VP2:VP3の当量比として、1:1:10を結果としてもたらす。昆虫細胞では、これらの機構は、AAVベクターを、正確なVP当量比で産生させることができない(Urabeら(2002)、前出)。これは、かつて、VP1イニシエーター三項対を、ACGへと変化させ、翻訳開始部位に由来する上流の9ヌクレオチドを突然変異させることにより、rAAV2血清型を作り出すために、Urabeらにより回避された公知の問題である。これらの変化は、3つのrAAV2 VP全ての、正確な当量比における産生を結果としてもたらした。rAAV5発現カセットの同様の遺伝子変化は、低度のVP1産生及び産生されたウイルスの低効力を結果としてもたらした。rAAV2に対する遺伝子適合の成功に基づき、Urabeらは、rAAV5が、VP1の多様な長さのN末端部分を、AAV2から受け取る(7アミノ酸〜最大136アミノ酸の範囲にわたる)、一連の6ドメインスワップ突然変異体を作製することを決定した。この手法は、正確なVP当量比を示す、キメラrAAV5の産生を結果としてもたらした。さらに、ドメインスワップ突然変異体は、293T細胞で産生されたrAAV5の効力(Urabeら(2006)、前出)と同様であるか又はこれより優れた効力を結果としてもたらした。Urabeらは、キメラrAAV5を、昆虫細胞で産生させうることを裏付けたが、得られるベクターは、真正のAAV5粒子を含まず、それ自体、既存の中和抗体に対する感受性、細胞内トラフィッキング、生体内分布、及び/又はターゲティングなど、多様な側面において、真性のAAV5血清型と異なりうる。同時に、Urabeらは、VP1ポリペプチドの合成が低度であるために、純種の感染性rAAV5を産生させようとする試みが、失敗したことについても報告した(Urabeら(2006)、前出)。
【0108】
本実施例では、本発明者らは、昆虫細胞で産生される純種のrAAV5の低効力の根底をなす決定因子を理解することを目的として、cap5突然変異体のライブラリーを構築した。まず、本発明者らは、昆虫細胞のrAAV2の産生の成功でかつて使用された多数の適合を組み込んだ突然変異体(159)について検討した(Urabeら(2002)、前出)。この突然変異体は、VP1翻訳始点及び非カノニカルの翻訳開始点ACGの上流に配置された、上流の9ヌクレオチドである、VP2イニシエーターコンテキストを含有する。これらの9ヌクレオチドは、かつて、Urabeらにより、昆虫細胞で血清型2遺伝子を発現させるのに使用された(Urabeら(2002)、前出)。この特定の配列は、天然で、VP2の非カノニカルの開始コドン(ACG)に隣接する。次に、野生型のATGを、ACG又はCTGへと変化させ、開始コドンから下流の最適のコンテキストを用意するために、多様な突然変異を導入した。大半の突然変異体は、VP1組込みが低度であり、VP3が過剰に存在する、VP当量比の異常(低VP1/VP2比及び高VP3/VP1比)を示した。遺伝子デザイン160では、VP1/VP2の比が大きく改善されたが、なおも、ベクター粒子へのVP3の過剰な組込みを示した。最後に、遺伝子デザインのうちの1つ、すなわち、765は、他の被験変異体と比較して、VP1の高度の組込み(高VP1/VP2比)を示し、VP3の組込みを低減した(VP3/VP2比の均衡)。
【0109】
低VP1タンパク質/VP2タンパク質比は、以前、低ベクター効力の一因であると仮定された(Hermonatら(1984)、Journal of Virology、51(2):329〜339、Tratschinら(1984)、Journal of Virology、51(3):611〜619)。AAVの固有のVP1部分は、カプシド内部に埋め込まれており、ウイルスの、核への細胞内トラフィッキング時に露出される。このVP1部分は、まず、エンドソーム腔のpHの低下への応答として露出される。VP1の遊離N末端部分は、カプシドの外部へと曝露されると、リン脂質基質のヒドロラーゼ特異的な2−アシルエステル(sn−2)結合に利用され、リゾリン脂質及び遊離脂肪酸の放出を結果としてもたらし、これにより、エンドソームからのAAVの漏出を可能とする、ホスホリパーゼドメインを含有する。固有のVP1部分は、核局在化シグナル(塩基性アミノ酸のクラスター)を含有し、AAVの核ターゲティングに関与していた。最後に、一部の研究者は、固有のVP1部分は、核でのウイルスの脱殻において役割を果たしうることを示唆している。低VP1/VP2比及びウイルス粒子へのVP3の過剰な組込み(高VP3/VP1比)は、1)平均における、アセンブルされる粒子へのVP1の組込みの減殺、又は2)2つの粒子集団:A)正確にアセンブルされた粒子(当量比が野生型の1:1:10に近い粒子、すなわち、ベクター粒子1つ当たりのVP1分子5つの粒子)、B)VP3/VP2だけによる粒子の産生のいずれかを結果としてもたらしうる。両方いずれの状況(1及び2)においても、このようなベクター調製物は、効力を変化させている。ベクター調製物中に存在する過剰なVP3タンパク質(VP1又はVP2と比較して)は、エンドソーム漏出の攪乱のために、ベクターの核へのトラフィッキングの障害を結果としてもたらす可能性が高い。VP当量比は、ベクター効力に有害であるという仮説を検証し、より強力なベクターを作り出すために、in vitro及びin vivoにおいて、血清型5カプシドの突然変異体のライブラリーについて調べた。
【0110】
VP当量比は、ベクターの効力とよく相関すると考えられた。以前に示された通り(Hermonatら(1984)、前出、Tratschinら(1984)、前出、国際公開第WO2007046703A2号)、低VP1/VP2比は、ウイルスの効力に強力な影響を及ぼす。突然変異体159、161〜164は全て、低VP1/VP2比及び効力の多大な低減を示した。VP1/VP2の間の比の改善は、ベクターの効力に対して、著しい影響を及ぼした(160)。興味深いことに、VP1/VP2比のさらなる改善及びベクター粒子へのVP3の組込みの減殺(VP3/VP1比の低下)は、改善されたベクター43及び被験セットの中で最も強力なベクター(構築物765)の作製を結果としてもたらした。このデータは、ベクター粒子の分子組成が、その効力にとって有害であることを明らかに指し示す。VP1の組込みの改善と、同時的なVP3の組込みの減殺は、ベクター効力の点で、最良の結果をもたらすと考えられる。既に、BEVSで産生される低VP1/VP2比の粒子の影響は、ベクター効力に対して否定的な影響を及ぼすことが報告されている。これまで、VP2/VP3の比については、主に、BEVSの産生のための、その遺伝子デザインが、野生型AAVウイルスにおけるデザインと同じであるという事実のために、考えられてこなかった。このため、BEVSの産生のための遺伝子デザインが、VP2/VP3比の変化をもたらすことは、予期されなかった。しかし、本明細書で提示される突然変異体のうちの1つを除く全てについて、本発明者らがベクター粒子へのVP3の過剰な組込み(高VP3/VP1比)を観察したことから、翻訳始点周囲のVP1の変化は、VP2及びVP3の発現に強力な影響を及ぼすことが指し示される。突然変異体765だけが、VP1/VP2比を高値とし、VP3の組込みを減殺させる当量比の均衡を示し、これは、他の被験変異体と比較した効力の増大を結果としてもたらした。さらに、変異体765の効力を、in vivo(マウス)において、BEVSで産生されるAAV5様ベクター(構築物92)と比較した。構築物92は、AAV血清型5の、血清型2のN末端の136アミノ酸部分とのキメラである(Urabeら(2006)、前出)。構築物92は、真性のAAV5を含まないが、BEVSでAAV5様粒子を作製するために現在利用可能な唯一の代替法である。構築物765は、構築物92に対する統計学的に有意な優位性を示した。
【0111】
本発明者らは、VP1の翻訳動機の突然変異誘発性変化による、下流のVP2及びVP3の発現に対する強力な影響は、翻訳過程自体と関連すると仮定する。真核生物では、翻訳は、一方向であり、mRNAの5’で始まる。リボソームは、mRNAと係合すると、タンパク質の合成を開始するのに適切なコンテキストにおいて、ATGの翻訳始点を見出すまで前進する。場合によって、弱い開始点、例えば、ACG又はCTGであっても、周囲に適切なヌクレオチドコンテキストが存在すれば、非カノニカル方式でタンパク質の合成を開始しうる。この機構は、漏出性リボソーム走査と呼ばれる。VP1における漏出性リボソーム走査の強度は、リボソームの、VP2及びVP3への「漏出」、及びVP2及びVP3からのタンパク質の発現の強度の一部を決定するであろう。逆に、3つの構成要素全ての発現は、アセンブルされる最終的なカプシドにおけるそれらの存在を決定するであろう。