(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683400
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20200413BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20200413BHJP
B23K 37/04 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
B23K26/21 F
B23K26/21 W
B23K26/08 Z
B23K37/04 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-350(P2016-350)
(22)【出願日】2016年1月5日
(65)【公開番号】特開2017-121636(P2017-121636A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591041369
【氏名又は名称】多田電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(72)【発明者】
【氏名】安達 茂
(72)【発明者】
【氏名】深田 竜平
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−6692(JP,A)
【文献】
特開2013−237057(JP,A)
【文献】
実開昭57−111485(JP,U)
【文献】
特開平3−60885(JP,A)
【文献】
特開昭63−165087(JP,A)
【文献】
特開昭58−119483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B23K 37/04
B21B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを発振するレーザ発振器と、
上側クランパーと下側クランパーを有し、先行金属板を保持する出側クランプ装置と、
上側クランパーと下側クランパーを有し、後行金属板を保持する入側クランプ装置と、
前記先行金属板の後端部と前記後行金属板の先端部を切断する切断装置と、
溶接された、先行金属板と後行金属板との突き合わせ部を加圧するスエージングロールと、
前記出側クランプ装置と前記入側クランプ装置が取り付けられているベースと、
前記ベースの長手方向に延在しているガイドレールと、
前記レーザ発振器と接続され、側面にはローラが取り付けられている加工ヘッドと、
一端が解放され、前記スエージングロールと前記切断装置が取り付けられており、前記ベースの上を走行するキャリッジフレームと、備え、
前記加工ヘッドは上下方向に伸縮する弾性取り付け部材を介して前記キャリッジフレームに取り付けられており、
前記キャリッジフレームが前記ベースの上を走行する際に、
前記加工ヘッドの側面に取り付けられているローラは、前記ガイドレールの下側の面に沿って回転走行することを特徴とする鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機。
【請求項2】
前記ガイドレールは、出側クランプ装置のクランプフレームに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機。
【請求項3】
前記ガイドレールは、入側クランプ装置のクランプフレームに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼プロセスライン用溶接機に関し、特に、金属板の端部同士をレーザビームの照射により突き合わせ溶接する鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機は、スエージングロールと加工ヘッドを搭載している(例えば特許文献1〜4)。加工ヘッドとスエージングロールは、C形形状を有するキャリッジフレームに取り付けられている。スエージングロールは、溶接方向の後ろ側に配置されていて、金属板上を移動しながら溶接後の溶接ビードを加圧する。加工ヘッドとスエージングロールは、キャリッジフレームと一体となって、金属板の溶接方向または逆方向に走行する。低炭素鋼板、ケイ素鋼板、ステンレス鋼板などの金属板は、加工ヘッドから照射されるレーザビームによって突き合わせ部が溶接される。
【0003】
キャリッジフレームがC形形状を有する鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機では、スエージングロールが金属板の溶接部を加圧するときにスエージングロールの加圧力によって、機械的にキャリッジフレームが上下方向に変位する。金属板の突き合わせ部に対する加工ヘッドの高さが変わるので、加工ヘッドから照射されるレーザビームの焦点位置が金属板の板厚方向に変化する。このため、金属板に対するレーザビームの照射密度が不安定になり、溶接ビードの品質が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−30014号公報
【特許文献2】特開2000−158189号公報
【特許文献3】特開平08−323490号公報
【特許文献4】特開2007−118033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上説明したように、鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機では、金属板の突き合わせ部に対する加工ヘッドの高さが変化すると、溶接ビードの品質低下が発生する。この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、スエージングロールの加圧時にキャリッジフレームが上下方向に機械的に変位しても、金属板に対するレーザビームの照射密度が安定している鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機は、レーザビームを発振するレーザ発振器と、上側クランパーと下側クランパーを有し、先行金属板を保持する出側クランプ装置と、上側クランパーと下側クランパーを有し、後行金属板を保持する入側クランプ装置と、先行金属板の後端部と後行金属板の先端部を切断する切断装置と、溶接された、先行金属板と後行金属板との突き合わせ部を加圧するスエージングロールと、出側クランプ装置と
入側クランプ装置が取り付けられているベースと、ベースの長手方向に延在しているガイドレールと、レーザ発振器と接続され、側面にはローラが取り付けられている加工ヘッドと、一端が解放され、スエージングロール
と切断装置が取り付けられており、ベースの上を走行するキャリッジフレームと、備え、加工ヘッドは上下方向に伸縮する弾性取り付け部材を介してキャリッジフレームに取り付けられており、キャリッジフレームがベースの上を走行する際に、加工ヘッドの側面に取り付けられているローラは、ガイドレールの下側の面に沿って回転走行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機は、レーザビームを発振するレーザ発振器と、上側クランパーと下側クランパーを有し、先行金属板を保持する出側クランプ装置と、上側クランパーと下側クランパーを有し、後行金属板を保持する入側クランプ装置と、先行金属板の後端部と後行金属板の先端部を切断する切断装置と、溶接された、先行金属板と後行金属板との突き合わせ部を加圧するスエージングロールと、出側クランプ装置と
入側クランプ装置が取り付けられているベースと、ベースの長手方向に延在しているガイドレールと、レーザ発振器と接続され、側面にはローラが取り付けられている加工ヘッドと、一端が解放され、スエージングロール
と切断装置が取り付けられており、ベースの上を走行するキャリッジフレームと、備え、加工ヘッドは上下方向に伸縮する弾性取り付け部材を介してキャリッジフレームに取り付けられており、キャリッジフレームがベースの上を走行する際に、加工ヘッドの側面に取り付けられているローラは、ガイドレールの下側の面に沿って回転走行することにより、加工ヘッドから照射されるレーザビームの金属板に対するレーザ焦点位置が一定になり、金属板に対するレーザ光の照射密度が安定している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機の外観を示す図である。
【
図2】この発明の実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機の溶接方向に沿った構成図である。
【
図3】この発明の実施の形態に係るレーザビーム集光部を示す詳細図である。
【
図4】この発明の実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機の金属板進行方向に沿った構成図である。
【
図5】この発明の実施の形態に係る弾性取り付け部材を示す詳細図である。
【
図6】この発明の実施の形態に係る加工ヘッドを示す断面図である。
【
図7】この発明の実施の形態に係るローラ部を示す詳細図である。
【
図8】この発明の実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機の溶接方向に沿った溶接動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機について、図を参照しながら以下に説明する。なお、各図において、同一または同様の構成部分については同じ符号を付しており、対応する各構成部のサイズや縮尺はそれぞれ独立している。例えば構成の一部を変更した断面図の間で、変更されていない同一構成部分を図示する際に、同一構成部分のサイズや縮尺が異なっている場合もある。また、鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機の構成は、実際にはさらに複数の部材を備えているが、説明を簡単にするため、説明に必要な部分のみを記載し、他の部分については省略している。
【0010】
実施の形態.
図1は、この発明を実施するための実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機100の概略外観を示す図である。鉄鋼プロセスラインでは、コイル状の金属板が、同図に示す金属板進行方向に、走行装置(図示せず)に駆動されて連続的に走行している。鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機100は、先行金属板1の後端部と後行金属板2の先端部との突き合わせ部をレーザビーム溶接によって接合する。接合された金属板は、次工程で、圧延処理、熱処理、鍍金処理等が連続して施される。
【0011】
鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機100のベース9には、キャリッジフレーム3、出側クランプ装置4、入側クランプ装置5などが取り付けられている。キャリッジフレーム3は、片持ち支持構造を有し、一端が解放されている。先行金属板1は、出側クランプ装置4によって保持されている。後行金属板2は、入側クランプ装置5によって保持されている。入側クランプ装置5は、出側クランプ装置4に向かって移動することができる。加工ヘッド11とスエージングロール6と切断装置15は、C形形状を有するキャリッジフレーム3に取り付けられている。加工ヘッド11の方が、スエージングロール6よりもキャリッジフレーム3の内部側に配置されている。さらにその内側には、切断装置15が配置されている。
【0012】
レーザ発振器12は、固体レーザの一種である、ファイバーレーザやデイスクレーザなどのレーザ光を発振する。スエージングロール6は、下部スエージングロールと上部スエージングロールから構成され、キャリッジフレーム3の解放端側に取り付けられている。レーザ発振器12から発振されたレーザビームは、ファイバーケーブル13を通して加工ヘッド11に供給されている。ベース9にはレール溝9aが形成されている。キャリッジフレーム3は、このレール溝9aに沿って、溶接方向および反溶接方向に移動する。切断装置15は、上刃15aと下刃15bと油圧シリンダー15cを備えている。上刃15aと下刃15bは、それぞれ、2組備え付けられている。油圧シリンダー15cが伸びると上刃15aが下降する。切断装置15は、油圧シリンダー15cの作用によって、同時に、先行金属板1の後端部と後行金属板2の先端部を切断する。ベース9の長手方向に、突き合わされた金属板の溶接が進行する。
【0013】
図2は、キャリッジフレーム3と出側クランプ装置4の構成を示している。出側クランプ装置4は、上側クランパー4a、下側クランパー4b、クランプフレーム4c、油圧シリンダー4dなどを備えている。入側クランプ装置5は、基本的に出側クランプ装置4と同じ構造を有している。加工ヘッド11は、上下方向に伸縮する弾性取り付け部材7によってキャリッジフレーム3に取り付けられている。出側クランプ装置4および入側クランプ装置5は、ベース9に固定されているが、キャリッジフレーム3は、ベース9の上を溶接方向に移動する。下部スエージングロール6bは、上部スエージングロール6aと対向する位置に配設されている。
【0014】
加工ヘッド11は、加工ヘッド昇降機構10、レーザビーム集光部11a、ガイド取り付けブラケット21、昇降ガイド22、加工ヘッド取り付けフレーム23、ローラ28などを備えている。ガイド取り付けブラケット21はキャリッジフレーム3に固定されている。出側クランプ装置4のクランプフレーム4cには先行金属板1および後行金属板2と水平にガイドレール29が取り付けられている。ガイドレール29は、ベース9の長手方向に延在している。加工ヘッド取り付けフレーム23には、2組の昇降ガイド22と2組のローラ28が取り付けられている。レーザビーム集光部11aは、加工ヘッド昇降機構10とともに、上下に移動する。
【0015】
図3は、加工ヘッド11に設けられているレーザビーム集光部11aを示す詳細図である。加工ヘッド11には、レーザ発振器12から供給されたレーザビーム16を集光するための集光レンズ17が設置されている。レーザビーム16は、加工ヘッド11の先端から出射し、先行金属板1の後端部と後行金属板2の先端部との突き合わせ部を照射する。加工ヘッド11の真下には、低炭素鋼、ケイ素鋼、ステンレス鋼などの金属板(先行金属板1および後行金属板2)を背側から支持するバックロール8が配設されている。
【0016】
図4は、加工ヘッド11を溶接方向から見た様子を表している図である。入側クランプ装置5は、上側クランパー5a、下側クランパー5b、クランプフレーム5c、油圧シリンダー5dを備えている。加工ヘッド11を中心にして、出側クランプ装置4および入側
クランプ装置5が左右に配置されている。加工ヘッド11のレーザビーム集光部11aは、加工ヘッド昇降機構10により、加工ヘッド取り付けフレーム23上を昇降可能となっている。バックロール8は加工ヘッド11の真下に配置されている。上側クランパー4aが油圧シリンダー4dによって下降すると先行金属板1が固定される。上側クランパー5aが油圧シリンダー5dによって下降すると後行金属板2が固定される。ガイドレール29は出側クランプ装置4のクランプフレーム4cに取り付けられているが、入側クランプ装置5のクランプフレーム5cに取り付けられていてもよい。
【0017】
図5は、キャリッジフレーム3と加工ヘッド11を接続する弾性取り付け部材7の詳細を表している。弾性取り付け部材7は、ロッド23aとストッパ24とばね取り付けホルダ25とばね26とを備えている。ばね26はロッド23aに挿入されている。ロッド23aの先端は、ばね26が抜けないようにねじ止めされている。ばね取り付けホルダ25は、キャリッジフレーム3に取り付けられている。ロッド23aとストッパ24は、加工ヘッド取り付けフレーム23に取り付けられている。加工ヘッド11は、ばね取り付けホルダ25およびばね26により、常に上方向へ押し上げられ、ストッパ24により、加工ヘッド取り付けフレーム23の上下方向位置が保持されている。加工ヘッド取り付けフレーム23が、下方向に荷重を受けると、加工ヘッド取り付けフレーム23は下方向に変位するとともに、ばね26が縮み、ストッパ24とばね取り付けホルダ25の間には隙間が生じる。
【0018】
図6は、鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機のローラ部を示す断面図である。ガイドレール29は、出側クランプ装置4の内側(加工ヘッド側)に取り付けられている。昇降ガイド22は、ガイド取り付けブラケット21と加工ヘッド取り付けフレーム23の間に設置されている。ローラ28は、加工ヘッド11の側面(加工ヘッド取り付けフレーム23の外側側面)に取り付けられていて、ガイドレール29を摺動する。加工ヘッド取り付けフレーム23は昇降ガイド22により昇降可能となっている。
【0019】
図7は、鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機のローラ部を示す詳細図である。加工ヘッド取り付けフレーム23には、ローラ28がベアリング27を介して取り付けられている。ガイドレール29は、加工ヘッド取り付けフレーム23を押し下げる高さに調整されている。ローラ28は、出側クランプ装置4に取り付けられたガイドレール29の下側の面29aに、溶接中、常に接触し、この下側の面29aに沿って回転走行する。その際、ストッパ24とばね取り付けホルダ25の間には隙間ができる。
【0020】
このように、この発明の鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機100においては、キャリッジフレームと加工ヘッド取り付けフレームの間にばねを挿入し、加工ヘッド取り付けフレーム23にローラ28を設けるとともに、クランプにガイドレールを設け、加工ヘッドがガイドレールに沿って走行するようにしている。上部スエージングロール6aの加圧により、キャリッジフレームが上下方向で変形したとしても、先行金属板1と後行金属板2との突き合わせ部に対するレーザビームの焦点位置が一定に保たれ、金属板に対するレーザ光の照射密度が安定する。
【0021】
次に、本実施の形態における、鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機100の動作について説明する。まず、先行金属板1の後端部を出側クランプ装置4で保持する。後行金属板2の先端部は入側クランプ装置5で保持する。その後、2組の上刃15aと2組の下刃15bを備えている切断装置15で先行金属板1および後行金属板2の端部をそれぞれ同時に切断する。その後、入側クランプ装置5を出側クランプ装置4に向かって移動させ、切断された先行金属板1の後端部と後行金属板2の先端部との突き合わせを行う。
【0022】
次に、キャリッジフレーム3を溶接方向に連続的に移動させながら、先行金属板1の後端部と後行金属板2の先端部との突き合わせ部に集光レンズ17により集光されたレーザビーム16を照射し、突き合わせ部を溶接する。スエージングロール6は、溶接された、先行金属板と後行金属板との突き合わせ部を加圧する。上部スエージングロール6aおよび下部スエージングロール6bが、レーザビームで溶接された溶接部を上方向から加圧しながら押付けるので、溶接部に発生する溶接ビードの表裏面が滑らかに仕上がる。
【0023】
図8は、鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機の溶接方向に沿った溶接動作の説明図である。この図に従って、加工ヘッド11、上部スエージングロール6aおよび下部スエージングロール6bの動作を説明する。キャリッジフレーム3を溶接方向へ動作させる前に、先行金属板1および後行金属板2の上面でレーザビーム16が集光するよう、加工ヘッド昇降機構10により加工ヘッド11を下降させる。同時に上部スエージングロール6aを下降させ、下部スエージングロール6bとの間の隙間を金属板の板厚よりも小さくする。
【0024】
次に、キャリッジフレーム3を溶接方向へ移動し、加工ヘッド11が先行金属板1および後行金属板2との突き合わせ部における溶接方向の手前側の端へ達すると、レーザビーム16の照射を開始する。さらに、キャリッジフレーム3が溶接方向へ移動し、上部スエージングロール6aが先行金属板1および後行金属板2との突き合わせ部における溶接方向の手前側の端へ達すると、上部スエージングロール6aが先行金属板1および後行金属板2に乗り上げる。先行金属板1および後行金属板2は、上部スエージングロール6aおよび下部スエージングロール6bにより加圧される。
【0025】
その際、キャリッジフレーム3は上部スエージングロール6aの加圧力により、ガイド取り付けブラケット21、ばね取り付けホルダ25とともに上方向へ押し上げられる。一方、ローラ28、ガイドレール29および弾性取り付け部材7(特にばね26)により、加工ヘッド取り付けフレーム23は、上下方向で位置を保持している。先行金属板1および後行金属板2に対する距離が一定に保たれるので、レーザビーム16の焦点位置が変わることはない。
【0026】
従って、本実施の形態に係る鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機は、レーザビームを発振するレーザ発振器と、上側クランパーと下側クランパーを有し、先行金属板を保持する出側クランプ装置と、上側クランパーと下側クランパーを有し、後行金属板を保持する入側クランプ装置と、先行金属板の後端部と後行金属板の先端部を切断する切断装置と、溶接された、先行金属板と後行金属板との突き合わせ部を加圧するスエージングロールと、出側クランプ装置と
入側クランプ装置が取り付けられているベースと、ベースの長手方向に延在しているガイドレールと、レーザ発振器と接続され、側面にはローラが取り付けられている加工ヘッドと、一端が解放され、スエージングロール
と切断装置が取り付けられており、ベースの上を走行するキャリッジフレームと、備え、加工ヘッドは上下方向に伸縮する弾性取り付け部材を介してキャリッジフレームに取り付けられており、キャリッジフレームがベースの上を走行する際に、加工ヘッドの側面に取り付けられているローラは、ガイドレールの下側の面に沿って回転走行することを特徴とする。
【0027】
この発明に係る鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機は、キャリッジフレームと加工ヘッドを取り付ける加工ヘッド取り付けフレームの間にばねを挿入し、加工ヘッド取り付けフレームにローラを設けるとともに、金属板を保持するクランプ装置にガイドレールを設け、加工ヘッドがガイドレールに沿って走行するようしたことにより、加工ヘッドから照射されるレーザビームの金属板に対するレーザ焦点位置が変化せず、金属板に対するレーザ光の照射密度が安定し、溶接の品質が向上する。
【0028】
上記実施の形態では、ガイドレール29は1本のレールとしているが、水平に調整するために複数本に分割されていても同様の効果を得ることができる。上記実施の形態では、ガイドレール29を出側クランプ装置4に設けた場合を例に説明したが、入側クランプ装置5やキャリッジフレームの走行と別に固定されたところに設けても同様な効果が得られる。上記実施の形態では、この発明の用途としてレーザビーム溶接機の場合を例に説明したが、その他の溶接機、例えばアーク溶接機の場合においても同様な効果を得ることができる。
【0029】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 先行金属板、2 後行金属板、3 キャリッジフレーム、4 出側クランプ装置、4a 上側クランパー、4b 下側クランパー、4c
クランプフレーム、4d 油圧シリンダー、5 入側クランプ装置、5a 上側クランパー、5b 下側クランパー、5c
クランプフレーム、5d 油圧シリンダー、6 スエージングロール、6a 上部スエージングロール、6b 下部スエージングロール、7 弾性取り付け部材、8 バックロール、9 ベース、9a レール溝、10 加工ヘッド昇降機構、11 加工ヘッド、11a レーザビーム集光部、12 レーザ発振器、13 ファイバーケーブル、15 切断装置、15a 上刃、15b 下刃、15c 油圧シリンダー、16 レーザビーム、17 集光レンズ、21 ガイド取り付けブラケット、22 昇降ガイド、23 加工ヘッド取り付けフレーム、23a ロッド、24 ストッパ、25 ばね取り付けホルダ、26 ばね、27 ベアリング、28 ローラ、29 ガイドレール、29a 下側の面、100 鉄鋼プロセスライン用レーザビーム溶接機