特許第6683413号(P6683413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683413
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ガスタンク
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/22 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   B65D90/22 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-113137(P2014-113137)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227182(P2015-227182A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2016年12月12日
【審判番号】不服2019-1165(P2019-1165/J1)
【審判請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 英晃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】仲地 唯渉
(72)【発明者】
【氏名】降駒 導爵
(72)【発明者】
【氏名】池田 啓人
(72)【発明者】
【氏名】若林 雅樹
【合議体】
【審判長】 石井 孝明
【審判官】 武内 大志
【審判官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−297900(JP,A)
【文献】 特開2013−204347(JP,A)
【文献】 特開平11−115992(JP,A)
【文献】 特開2013−14374(JP,A)
【文献】 実開昭52−47320(JP,U)
【文献】 特開2014−9016(JP,A)
【文献】 特開平4−357283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D88/00-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体の内部にガスが貯留されるガスタンクであって、
前記タンク本体の側壁に設けられて、前記タンク本体の内外を連通する開口部と、
前記開口部を塞ぐようにして前記側壁に設けられた閉塞部と、を備え、
前記タンク本体は、コンクリート製の基礎上に設置されており、
前記基礎の下方には地中に埋設された筒状の壁が設けられ、前記壁の上端が前記基礎の下面に接合されることで前記壁は前記基礎の下側への海水の回り込みを防止することができるように構成されており
前記閉塞部が、前記タンク本体に津波または高潮が到達した際に移動または変形することにより、前記開口部の少なくとも一部を露出させ、前記開口部を通じて海水を前記タンク本体の内部に導入し、前記タンク本体に加わる水圧および浮力を低減して前記タンク本体の圧壊および浮き上がりを防止するように構成されている、ガスタンク。
【請求項2】
前記タンク本体は、前記側壁と、前記側壁の下端に接合された底板とを含み、
前記基礎には、前記底板の周縁部に対面するように露出するアンカー部材が埋設されており、
前記底板の周縁部は、全周にわたって前記アンカー部材の露出部分に溶接される、請求項1に記載のガスタンク。
【請求項3】
前記閉塞部を閉位置に保持すると共に、前記閉塞部に水圧が加わった場合に前記閉塞部の移動を許容する開閉機構を備える、請求項1または2に記載のガスタンク。
【請求項4】
前記閉塞部を閉位置と開位置との間で移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備える、請求項1または2に記載のガスタンク。
【請求項5】
前記閉塞部は、水圧によって破断する板状部材を含む、請求項1または2に記載のガスタンク。
【請求項6】
前記開口部および前記閉塞部は、前記タンク本体の周方向の複数箇所に設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガスタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタンクおよびガスタンクの保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、内槽と外槽とを備える低温タンクが知られている。この低温タンクは、地中を掘削して設けられたピット内に設けられている。内槽には、LNG等の低温液体が貯留される。内槽と外槽との間には保冷材が充填され、さらに窒素ガスが封入されている。外槽には通気孔が設けられており、この通気孔にベローズが取り付けられている。窒素ガスの体積変動に応じて、ベローズが伸縮する。このような構成により、低温タンクの各部において生じた窒素ガスの体積変動を吸収している。
【0003】
一方、津波または地震等からタンクを保護する各種の技術が知られている。たとえば、特許文献2に記載された津波対策工では、タンクの外側に、自立式の津波防護柵が設置されている。特許文献3に記載された補強構造では、タンクの側板の下部に支持枠体が設けられ、その支持枠体内にコンクリートが打設されている。特許文献4に記載されたタンクは、タンク本体と、タンク本体を納める格納体とを備えている。格納体の幅は、格納体の水平方向の一端から中央部に向けて漸増している。格納体は、津波の浸入が予想される側にその一端が向けられるよう、設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−137626号公報
【特許文献2】特開2007−302281号公報
【特許文献3】特開2012−250712号公報
【特許文献4】特開2013−1407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ブリージングタンクまたはガスの貯蔵タンクにおける津波または高潮対策は、設置場所が浸水域にならないような検討がされてきたが、これらのガスタンクの設置場所に津波または高潮が到達し得る場合には、ガスタンクの周りに海水が流れ込むことが考えられる。その場合、タンク本体に水圧が加わることによりタンク本体が圧壊したり、タンク本体に浮力が加わることによりタンク本体が浮き上がったりするおそれがある。このように、津波または高潮が到達した場合に、タンク本体を保護することは難しい。
【0006】
本発明は、津波または高潮が到達した場合であっても、タンク本体の圧壊および浮き上がりを防止することができるガスタンクおよびガスタンクの保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タンク本体の内部にガスが貯留されるガスタンクであって、タンク本体の側壁に設けられて、タンク本体の内外を連通する開口部と、開口部を塞ぐようにして側壁に設けられた閉塞部と、を備え、タンク本体は、コンクリート製の基礎上に設置されており、基礎の下方には地中に埋設された筒状の壁が設けられ、壁の上端が基礎の下面に接合されることで壁は基礎の下側への海水の回り込みを防止することができるように構成されており、閉塞部が、タンク本体に津波または高潮が到達した際に移動または変形することにより、開口部の少なくとも一部を露出させ、開口部を通じて海水をタンク本体の内部に導入し、タンク本体に加わる水圧および浮力を低減してタンク本体の圧壊および浮き上がりを防止するように構成されている。
【0008】
このガスタンクによれば、タンク本体の側面に設けられた開口部は、閉塞部によって塞がれる。閉塞部が移動または変形することにより、開口部の少なくとも一部が露出し、タンク本体の内外が連通する。よって、津波または高潮がタンク本体に到達する場合に、閉塞部を移動または変形させることにより、海水をタンク本体の内部に導入することができる。タンク本体の内部に海水が導入されると、タンク本体の周りに海水が存在する状態でも、タンク本体に加わる水圧および浮力が低減される。よって、津波または高潮が到達した場合であっても、タンク本体の圧壊および浮き上がりを防止することができる。
【0009】
いくつかの態様において、タンク本体は、側壁と、側壁の下端に接合された底板とを含み、基礎には、底板の周縁部に対面するように露出するアンカー部材が埋設されており、底板の周縁部は、全周にわたってアンカー部材の露出部分に溶接される。この構成によれば、アンカー部材が基礎に埋設されており、タンク本体の底板の周縁部が、全周にわたってアンカー部材の露出部分に溶接される。このような構造により、タンク本体と基礎との間隙に海水が浸入することが防止される。よって、タンク本体が基礎から浮き上がることを防止できる。
【0010】
いくつかの態様において、ガスタンクは、閉塞部を閉位置に保持すると共に、閉塞部に水圧が加わった場合に閉塞部の移動を許容する開閉機構を備える。この場合、閉塞部に水圧が加わった場合に、閉塞部が移動して、タンク本体の内外が連通する。よって、津波または高潮の到達に起因する水圧を利用して、タンク本体の内部に海水を導入することができる。
【0011】
いくつかの態様において、ガスタンクは、閉塞部を閉位置と開位置との間で移動させる駆動部と、駆動部を制御する制御部と、を備える。この場合、制御部が駆動部を制御し、閉塞部を移動することができる。閉塞部の開閉を遠隔操作することができるため、津波または高潮に対する対応性が高められる。
【0012】
いくつかの態様において、閉塞部は、水圧によって破断する板状部材を含む。この場合、閉塞部の板状部材に水圧が加わると、板状部材が破断して、タンク本体の内外が連通する。よって、津波または高潮の到達に起因する水圧を利用して、タンク本体の内部に海水を導入することができる。
【0013】
いくつかの態様において、開口部および閉塞部は、タンク本体の周方向の複数箇所に設けられている。この場合、複数の開口部によって、海水を導入および流通させやすい。よって、タンク本体の内部に海水を迅速かつ容易に導入することができる。また、それぞれの開口部が設けられる方向を調整することにより、津波または高潮が到達した際に、ある開口部を海水の導入口として機能させ、他の開口部を海水の流出口として機能させることもできる。この場合、津波または高潮によってタンク本体に与えられる衝撃を緩和することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、津波または高潮が到達する場合においても、タンク本体の圧壊および浮き上がりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るガスタンクを備えるガス貯蔵システムの概略構成を示す図である。
図2図1中のガスタンクを一部破断して示す正面図である。
図3】(a)は基礎、アンカー部材およびタンク本体の位置関係を示す斜視図、(b)はアンカー部材に対するタンク本体の底板の接合構造を示す断面図である。
図4】側壁に設けられた開口部および閉塞部を示す断面図である。
図5】(a)は津波が到達した際にタンク本体に加わる力を示す図、(b)はタンク本体が海水に取り囲まれた際にタンク本体および基礎に加わる力を示す図である。
図6】(a)は津波が到達した際に複数の開口部を通じて海水を導入および流出させた状態を示す図、(b)はタンク本体の内部に海水を取り込んだ状態を示す図である。
図7】(a)〜(c)は、それぞれ、閉塞部の各種変形態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。以下に説明する実施形態では、本発明がガス貯蔵システムのブリージングタンクに適用される場合について説明する。
【0019】
図1を参照して、ブリージングタンクを備えるガス貯蔵システムSについて説明する。ガス貯蔵システムSは、たとえばLNG等の低温液化ガスを貯蔵するためのシステムである。ガス貯蔵システムSは、たとえば海に近い沿岸に建設されている。ガス貯蔵システムSは、本実施形態のブリージングタンク(容積可変式ガス供給排出附属設備)1と、LNG等を貯蔵する低温タンク2とを備える。低温タンク2とブリージングタンク1とは、連通管3によって接続されている。
【0020】
低温タンク2は、2重殻タンクになっており、LNG等を収容する内槽4と、内槽4を包囲する外槽5とを備える。内槽4と外槽5との間に形成された空間6には、低温タンク2の内外を断熱するための保冷材(パーライト等)が充填される。すなわち、空間6は保冷層として機能する。この空間6には、窒素ガス等の不活性ガスが封入されており、不活性雰囲気が保たれている。窒素ガスの封入圧力は、外気温や気圧の変化によって変動を生じないよう、ブリージングタンク1によって、ほぼ一定に保持される。
【0021】
ブリージングタンク1は、低温タンク2の補機として、低温タンク2に付設されている。ブリージングタンク1は、上記した空間6内の窒素ガスの体積変化を吸収するために設けられたクッションタンクである。ブリージングタンク1は、たとえばコンクリート製の基礎7上に設置されている。たとえば、基礎7の下部は地中に形成されており、基礎7の上部は、地上に突出している。ブリージングタンク1は、基礎7上に設置されたタンク本体8を備える。タンク本体8は、たとえば鉄等の鋼板製であり、ブリージングタンク1のケーシングに相当する。タンク本体8の下部は円筒状をなしており、タンク本体8の上部はドーム状をなしている。
【0022】
図2に示されるように、ブリージングタンク1は、タンク本体8の内部空間を上下に隔絶するゴム製のダイヤフラム9を備える。ダイヤフラム9は、その周縁部がタンク本体8の内壁面に固定されることにより、下部空間10と上部空間11とを画成している。下部空間10は、連通管3によって、低温タンク2の空間6に接続されている。下部空間10には、空間6に封入されている不活性ガスと同じガス、たとえば窒素ガスが封入されている。タンク本体8の頂部は大気に開放されており、上部空間11は空気によって満たされている。ダイヤフラム9の中央部には、ウェイト12が装着されている。このウェイト12の重みによって、下部空間10の窒素ガスが加圧されている。外気温や気圧の変動により窒素ガスの体積が変化するのに応じて、ダイヤフラム9の中央部が昇降する。ダイヤフラム9の昇降により、低温タンク2の空間6における窒素ガスの封入圧力が一定に保持される。なお、タンク本体8の頂部には、ベント13が取り付けられている。
【0023】
タンク本体8は、円筒状の側壁8aの下端に接合された、円板状の底板14を含む。底板14の下面は、基礎7の表面に接触している。なお、底板14は、たとえば複数の鋼板が接合されることによって、形成され得る。
【0024】
図3(a)および図3(b)に示されるように、基礎7には、円環状のリングアンカー15が埋設されている。リングアンカー(アンカー部材)15は、たとえば、断面(延在方向に垂直な断面)がL字状の鋼材である。リングアンカー15は、基礎7内の鉄筋に溶接等によって連結されていてもよい。リングアンカー15の直径は、底板14の直径よりも大きい。リングアンカー15は、底板14の周縁部に対面するように、基礎7の表面に露出している。すなわち、リングアンカー15の露出面(露出部分)15aが、基礎7の表面と面一になっている。底板14の周縁部はリングアンカー15上に載置されており、全周にわたって、リングアンカー15の露出面15aに溶接されている。すなわち、底板14の周縁部とリングアンカー15の露出面15aとの間に、全周にわたって溶接部15bが形成されている。このような接合構造(シール構造)により、タンク本体8が基礎7に対して強固に固定されており、しかも、タンク本体8(具体的には底板14)と基礎7との間に海水が浸入することが防止されている。これにより、機械部分への海水の回り込みを防止している。
【0025】
図2および図4に示されるように、ブリージングタンク1は、タンク本体8の側壁8aに設けられた複数の開口部16と、開口部16を塞ぐようにして側壁8aに設けられた蓋部(閉塞部)17とを備える。開口部16および蓋部17は、たとえば円形状である。なお、開口部16および蓋部17は、矩形状であってもよい。開口部16および蓋部17は、タンク本体8の周方向の複数箇所に設けられている。より詳細には、開口部16および蓋部17は、側壁8aの下部に設けられている。開口部16および蓋部17は、たとえば、タンク本体8の全高の半分の高さより低い位置に設けられる。
【0026】
開口部16および蓋部17は、ブリージングタンク1に津波または高潮が到達した際に、タンク本体8の内部(たとえば下部空間10)に海水を導入するための構造である。ブリージングタンク1では、津波または高潮が到達した際、蓋部17が開くことによって開口部16が露出し、開口部16を通じて海水が内部に取り込まれ得る。このような構成により、タンク本体8の圧壊、浮き上がり、損傷を防止することができる。なお、タンク本体8には、ノズルまたはマンホール等が適宜設けられるが、これらの図示は省略されている。
【0027】
開口部16および蓋部17の構成についてより詳細に説明する。開口部16は、タンク本体8の周方向において、等間隔に3つ形成されている。開口部16は、4つ以上形成されてもよいし、2つ形成されてもよい。開口部16は、タンク本体8の周方向において等間隔に形成される場合に限られず、たとえば海に面する側により多く設けられてもよい。それぞれの開口部16および蓋部17が同一の形状および大きさを有してもよいし、異なる形状および大きさを有してもよい。
【0028】
図4を参照して蓋部17の一例について説明すると、蓋部17は、鉄等からなる。蓋部17は、円形の開口部16に嵌まり込む円板状の嵌合部17aと、嵌合部17aから径方向に張り出すフランジ部17bとを含み得る。嵌合部17aおよびフランジ部17bの形状は、側壁8aの湾曲形状に沿って湾曲していてもよい。蓋部17と側壁8aとの間には、ガスケット等が設けられてもよい。
【0029】
蓋部17は、側壁8aに対して開閉可能に取り付けられている。蓋部17と側壁8aとの間には開閉機構18が設けられている。この開閉機構18は、たとえば、ヒンジ構造を含み得る。開閉機構18は、蓋部17に水圧が作用しない通常時には、蓋部17を閉位置(図4において実線で示される位置)に保持する。開閉機構18は、蓋部17に水圧が加わった場合に、蓋部17の移動を許容する。蓋部17は、所定の可動範囲を有しており、水圧によって、開位置(図4において仮想線で示される位置)まで移動する。蓋部17に水圧が作用しなくなった際には、蓋部17は、たとえば自重によって、閉位置に戻る。開閉機構18は、蓋部17を閉位置に付勢するばね機構を含んでもよい。
【0030】
蓋部17は、たとえば、タンク本体8の内面側に設けられる。なお、すべての蓋部17が、タンク本体8の内面側に設けられて、内面側に開く態様としてもよいが、一部の蓋部17がタンク本体8の外面側に設けられて、外面側に開く態様を採ってもよい。水圧によってタンク本体8の内面側に開き得る蓋部17を採用することにより、開口部16を海水Wの導入口として機能させることができる。一方、水圧によってタンク本体8の外面側に開き得る蓋部17を採用することにより、その開口部16を海水Wの流出口として機能させることができる(図6(a)参照)。
【0031】
ここで、ブリージングタンク1に津波または高潮が到達した際に、ブリージングタンク1に加わる力について考察する。図5(a)は、津波が到達した際にタンク本体8に加わる力を示す図であり、図5(b)は、タンク本体8が海水に取り囲まれた際にタンク本体8および基礎7に加わる力を示す図である。
【0032】
図5(a)に示されるように、ブリージングタンク1に津波または高潮が到達した際、タンク本体8には、海水Wによって、水平波力F1および引抜力F2が加わり得る。また、図5(b)に示されるように、ブリージングタンク1に津波または高潮が到達した際、タンク本体8の側壁8aには、海水Wによって水圧Pが加わり得る。基礎7の下方に海水Wが回り込んだ場合には、タンク本体8および基礎7に、浮力F3が加わり得る。タンク本体8と基礎7との間に海水Wが回り込んだ場合には、タンク本体8に、浮力F4が加わり得る。
【0033】
本実施形態のブリージングタンク1によれば、図6(a)および(b)に示されるように、タンク本体8の内部に海水Wを導入可能であることにより、上記した水平波力F1、引抜力F2、モーメントM、水圧P、浮力F3および浮力F4が低減され得る。なお、図6(a)および(b)においては、蓋部17の図示は省略されている。
【0034】
図6(a)および(b)を参照して、ブリージングタンク1の保護方法について説明する。タンク本体8に津波または高潮が到達した際、開口部16を塞いでいた蓋部17が開いて、たとえばタンク本体8の内面側に移動する。蓋部17が開くことによって開口部16を露出させ、タンク本体8の内外を連通させる。そして、開口部16を通じて海水Wをタンク本体8の内部に導入する。
【0035】
ここで、上述したように、開口部16の一部を海水Wの流出口として機能させれば、タンク本体8の内部に海水Wを流通させることができる(図6(a)参照)。このようにすることで、タンク本体8に加わる水平波力F1および引抜力F2を低減することができ、津波または高潮の到達時の衝撃に起因するタンク本体8の損傷を低減することができる。
【0036】
さらには、開口部16を通じて海水Wをタンク本体8の内部に導入することにより、タンク本体8を浸水させる。これにより、タンク本体8に加わる水圧Pおよび浮力F3を低減することができる。言い換えれば、タンク本体8の内外面の圧力差を低減することができる。よって、津波または高潮によってタンク本体8が海水Wに囲まれた場合においても、タンク本体8の圧壊および浮き上がりを防止することができる。タンク本体8の浮き上がりを防止することにより、タンク本体8の漂流を防止することができる。
【0037】
さらに、ブリージングタンク1によれば、リングアンカー15が基礎7に埋設されており、タンク本体8の底板14の周縁部が、全周にわたってリングアンカー15の露出面15aに溶接される。この構成により、タンク本体8と基礎7との間隙に海水Wが浸入することが防止され、浮力F4を低減することができる。よって、タンク本体8が基礎7から浮き上がることを防止できる。
【0038】
また、開閉機構18が設けられるため、蓋部17に水圧が加わった場合に、蓋部17が移動して、タンク本体8の内外が連通する。よって、津波または高潮の到達に起因する水圧を利用して、タンク本体8の内部に海水Wを導入することができる。
【0039】
また、複数の開口部16によって、海水Wを導入および流通させやすいため、タンク本体8の内部に海水Wを迅速かつ容易に導入することができる。それぞれの開口部16が設けられる方向を調整することにより、津波または高潮が到達した際に、ある開口部16を海水Wの導入口として機能させ、他の開口部16を海水Wの流出口として機能させることもできる(図6(a)参照)。これにより、津波または高潮によってタンク本体8に与えられる衝撃を緩和することができる。さらには、タンク本体8が受け得る損傷を低減することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。本発明は、図7(a)〜(c)に示される各種の変形態様を採ることができる。たとえば、図7(a)に示されるように、蓋部17Aを移動させる駆動部19と、駆動部19を制御するコントローラ(制御部)20を備えたブリージングタンク1Aであってもよい。この場合、コントローラ20は、中央制御室において制御され得る。蓋部17Aは、開口部16Aを塞ぐ閉位置と、開口部16Aを露出させる開位置との間で、側壁8aに沿って円弧状にスライド移動可能である。コントローラ20が駆動部19を制御し、蓋部17Aをスライド移動させ、開口部16Aを露出させることができる。蓋部17Aの開閉を遠隔操作することができるため、津波または高潮に対する対応性が高められる。
【0041】
また、図7(b)に示されるように、タンク本体8の側壁8aにL字状の配管21を取り付け、上方に向けられた配管21の先端部に、水圧によって破断可能な薄型の板状部材22が設けられたブリージングタンク1Bであってもよい。この場合、板状部材22が水圧によって破断することにより、配管21を通じてタンク本体8の内部に海水Wを導入することができる。図7(c)に示されるように、タンク本体8の側壁8aにL字状の配管23を取り付け、下方に向けられた配管23の先端部に、水圧によって破断可能な薄型の板状部材24が設けられたブリージングタンク1Cであってもよい。この場合、板状部材24が水圧によって破断することにより、配管23を通じてタンク本体8の内部に海水Wを導入することができる。また、水圧によって板状部材22,24が破断した場合に、タンク本体8の内外は連通したままである。よって、海水Wが引いた後、重力を利用してタンク本体8の内部の海水Wをある程度排出することも可能である。
【0042】
なお、閉塞部として、ラプチャーディスクと同様の機構を設けてもよい。若しくは、閉塞部として、回転式ドアと同様の機構を採用してもよい。水圧で開閉される閉塞部、制御されて開閉する閉塞部に限られず、手動操作によって開閉する蓋部材であってもよい。たとえば、引き戸構造の閉塞部であってもよい。
【0043】
タンク本体に設けられる開口部と閉塞部は、それぞれ1つであってもよい。周方向に複数設けられる場合に限られず、高さ方向に複数設けられてもよい。
【0044】
基礎7の下方において、地中に埋設される円筒状の壁を設けてもよい。壁は、コンクリート製または鋼板製とすることができる。円筒状の壁の上端を基礎7の下面に接合する構造とすることにより、基礎7の下側への海水Wの回り込みを防止することができる(図5(b)に示される浮力F3参照)。
【0046】
本発明のガスタンクは、ブリージングタンクに限られない。本発明は、内部にガスを貯留するタンクであればどのようなガスタンクにも適用可能であり、たとえば、空気、酸素または窒素等を貯蔵するためのガスタンクに適用されてもよい。本発明に係るガスタンクは、毒性のないガスを貯蔵してもよく、アンモニア等の毒性のあるガスを貯蔵してもよい。毒性のあるガスを貯蔵する場合は、放出されるガスを無害化するための設備を付加することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ブリージングタンク(ガスタンク)
7 基礎
8 タンク本体
8a 側壁
14 底板
15 リングアンカー
15a 露出面
16 開口部
17 蓋部
18 開閉機構
19 駆動部
20 コントローラ
22 板状部材
24 板状部材
W 海水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7