(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
胴部の上端部と下端部との少なくともいずれか一方に蓋部が設けられ、その蓋部に打撃力を与えて音もしくは振動を発生させ、前記音もしくは振動に基づいて内圧を検査する密封容器の内圧検査装置において、
前記打撃力を発生させる打撃部が設けられ、
前記打撃力が与えられて前記音もしくは振動を発生している前記蓋部の変位を計測する変位センサが設けられ、
前記変位センサによって計測された前記蓋部の変位に基づいて変位波形を求めるとともに前記変位波形の周波数を算出し、前記周波数に基づいて前記内圧の良否を判定するように構成され、
前記打撃部が前記蓋部の形状に対応した形状に形成され、
前記変位センサが前記蓋部の中心側の部分における前記変位を計測するように構成されていることを特徴とする密封容器の内圧検査装置。
前記変位センサは、前記蓋部の振動速度を検出するように構成されたレーザードップラーセンサと、前記蓋部との間の距離を検出するように構成されたレーザー変位センサとの少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の密封容器の内圧検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構成では、検査対象である密封容器で発生させた音や振動をマイクロフォンによって検出して内圧の異常を判定している。すなわち、空気の振動である音を媒介して信号を得るように構成されている。そのため、密閉容器とマイクロフォンが置かれている環境や両者の間に介在する空気の状態などによって内圧の判定精度が悪化する可能性がある。例えば、密封容器で発生させた音や振動と、コイルや導波管の内面に当たって反射した音や振動との共鳴を避けることが困難である。共鳴現象が生じると、音や振動の周波数が検査対象である密封容器の固有振動数の整数倍のいわゆる倍調音となり、その倍調音が検査対象となっている密封容器の固有振動数より強く検出されると、検査対象となっている密封容器がいわゆる不良品であっても良品として判定されてしまう可能性がある。
【0005】
特許文献2に記載された構成では、密封容器から生じた音や振動と、反射膜で反射された音や振動とが共鳴してしまう可能性がある。すなわち、特許文献2に記載された構成であっても共鳴現象に起因する誤判定は同様に生じる可能性がある。
【0006】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、密封容器の打検における振動を空気を介さずに検出して内圧の検査精度およびそれに基づく密封容器の良否の判定精度を向上させることのできる密封容器の内圧検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、胴部の上端部と下端部との少なくともいずれか一方に蓋部が設けられ、その蓋部に打撃力を与えて音もしくは振動を発生させ、前記音もしくは振動に基づいて内圧を検査する密封容器の内圧検査装置において
、前記打撃力を発生させる打撃部が設けられ、前記打撃力が与えられて前記音もしくは振動を発生している前記蓋部の変位を計測する変位センサが設けられ、前記変位センサによって計測された前記蓋部の変位に基づいて変位波形を求めるとともに前記変位波形の周波数を算出し、前記周波数に基づいて前記内圧の良否を判定するように構成さ
れ、前記打撃部が前記蓋部の形状に対応した形状に形成され、前記変位センサが前記蓋部の中心側の部分における前記変位を計測するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、この発明では、前記変位センサは、前記蓋部の振動速度を検出するように構成されたレーザードップラーセンサと、前記蓋部との間の距離を検出するように構成されたレーザー変位センサとの少なくともいずれか一方であってよい。
【0010】
そして、この発明では、前記打撃部および前記変位センサは、前記蓋部と平行な平面に沿う方向に前記蓋部に対して相対移動可能に設けられていてよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、振動している蓋部の変位を変位センサによって検出し、その変位に基づいて変位波形を求めるとともにその変位波形の周波数を算出し、その周波数に基づいて内圧を求める。すなわち、空気の振動である音を介さないで蓋部の変位を検出するので、共鳴現象や空気の状態によって内圧の検査精度が悪化したり、前記検査精度が悪化することにより内圧の判定精度が悪化したりする事態を回避もしくは抑制できる。また、この発明では、変位センサによって測定した蓋部の変位に基づいて内圧の良否を判定できるので、装置の構成を簡素化でき、また既存設備への追加が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係る内圧検査装置は、打撃力を与えた蓋部の変位を計測し、その計測された蓋部の変位に基づいて変位波形を求めるとともにその変位波形の周波数を算出し、その周波数に基づいて密封容器の内圧の良否を判定するように構成されている。上述した密封容器は、内容物を充填する胴部を蓋部によって気密状態に封止した容器であって、具体的には、胴部の上端部に天蓋を取り付けるとともに下端部に底蓋を取り付けたいわゆるスリーピースタイプの容器、底部を一体に形成した胴部の上端部に天蓋を取り付けたいわゆるツーピースタイプの容器、胴部の下端部に底蓋を取り付け、かつ上端部にネジ部を有する口頸部を一体に形成するとともにその口頸部にキャップを螺合させたボトル型の容器などであってよい。また、密封容器の素材は特に限定されないのであり、アルミニウムやその合金、もしくはスチールなどであってよい。この発明に係る内圧検査装置は、これらの金属を素材とした金属缶の内圧検査に適用することができる。さらに、密封容器は、内圧が大気圧より低い負圧容器であってもよく、あるいは大気圧より高い陽圧容器であってもよい。
【0014】
図1に、この発明に係る内圧検査装置の構成の一例を示してある。この
図1に示す例は、ボトル型缶1の内圧を検査するように構成した例であって、内容物を充填したボトル型缶1を、そのキャップ2が下側となる倒立状態でコンベヤ3上に設置し、その状態で搬送しつつ内圧検査を行うように構成されている。そのボトル型缶1について説明すると、金属製の胴部4の一方の端部すなわち
図1における上下方向で胴部4の上端部に底蓋5が取り付けられている。その底蓋5はほぼ円板状に形成され、その外周部のフランジ部6を胴部4の開口端に巻締めて胴部4に取り付けられている。この巻締め部分が胴部4と底蓋5との結合部である。
【0015】
底蓋5におけるフランジ部6の内周側にカウンタシンクと称される環状溝部7が形成されており、その環状溝部7の内周縁すなわち環状溝部7における内周側傾斜壁8から内周側に続く部分がパネル部9となっている。
図1に示す例では、このパネル部9は円板状に形成されている。なお、
図1に示す例におけるボトル型缶1は内圧が大気圧より低圧の負圧容器として構成されている。また、胴部4の他方の端部すなわち
図1における上下方向で胴部4の下端部側にネジ部を外周面に設けた口頸部10が形成され、その口頸部10にキャップ2が螺合させられている。
【0016】
コンベヤ3は上記のボトル型缶1を倒立状態で連続的に搬送するものであって、例えばベルトコンベヤを採用することができる。その搬送速度は、適宜に設定でき、例えば80m/min程度の高速搬送であってよい。このコンベヤ3における駆動側あるいは従動側のローラもしくは駆動モータ軸にはロータリーエンコーダ(それぞれ図示せず)が取り付けられ、このロータリーエンコーダによってコンベヤ3の走行速度や走行位置を検出できるように構成されている。したがって、コンベヤ3上のボトル型缶1を、その走行位置情報に基づいて特定できるように構成されている。
【0017】
コンベヤ3の上方で、そのコンベヤ3に倒立状態で載せられて搬送されるボトル型缶1における底蓋5のパスライン(通過位置)より上側に、具体的には底蓋5と平行な平面上に電磁コイル11が配置されている。その電磁コイル11は、従来知られている打検機に使用されている電磁コイルと同様に構成されていて、通電されることにより磁力を生じて電磁コイル11と底蓋5との間で吸引力や反発力を生じるようになっている。つまり、底蓋5に対して電磁的に衝撃力や打撃力を瞬間的に与えて底蓋5を振動させる。その電磁コイル11は、一例として底蓋5とほぼ同じ外径のリング状に形成されており、この電磁コイル11の中央部分つまりリングの中心と底蓋5の中心とが一致するようにコンベヤ3上にボトル型缶1が載置される。なお、一例として、ボトル型缶1における底蓋5と電磁コイル11との間の距離を5mmから10mmに設定することが好ましい。こうすることにより、電磁コイル11による底蓋5の振動の振幅を大きくできる。
【0018】
電磁コイル11の上方に、この発明における変位センサに相当するレーザー式変位センサ(以下、単に変位センサと記す。)12が配置されている。この変位センサ12は、コンベヤ3によって搬送されているボトル型缶1の底蓋5に向けてレーザー光を照射し、その反射光を捕捉してこれらの間の距離を計測するように構成された公知の構成のものである。そのレーザー光は高速で繰り返し照射される。具体的には、電磁コイル11の中心と底蓋5の中心とが一致した位置を基準位置とすると、その基準位置より5mmから10mm程度、ボトル型缶1の搬送方向での下流側に配置されている。そして、前記搬送方向で下流側から底蓋5に向けて斜めに、電磁コイル11における空洞の中心部分を通してレーザーパルスを照射し、その反射光を前記搬送方向での上流側で捕捉するようになっている。こうすることにより前記搬送方向で底蓋5の中心より下流側から上流側に向けて底蓋5における多数の箇所(多数の点)の位置までの距離を連続的に計測するように構成されている。
【0019】
上記のコンベヤ3の上方に、ボトル型缶1が内圧の検査開始位置に到達したことを検出するセンサが配置されている。そのセンサはタイミングセンサであって、接触式のセンサと、非接触式のセンサとのいずれであってもよい。
図1に示す例では、非接触でボトル型缶1を検出する光電センサ13が、上記の胴部4が通過する領域の側方に配置され、光電センサ13が照射した光をボトル型缶1が遮ることにより、ボトル型缶1が内圧検査開始位置に到達したことを検出し、その検出信号を後述するコントローラ14に出力するように構成されている。そして、胴部4が光電センサ13の照射光を最初に遮ったのと同時につまり光電センサ13がボトル型缶1を検出するのと同時に、電磁コイル11が通電されて底蓋5に対して電磁的に衝撃力や打撃力が与えられ、かつ、変位センサ12からレーザーパルスが出力され、変位センサ12からの距離を計測し始めるように構成されている。なお、この光電センサ13の検出信号と前記ロータリーエンコーダの検出信号とによって、コンベヤ3上でのボトル型缶1の位置を特定できる。
【0020】
上述した図示しないロータリーエンコーダや電磁コイル11、変位センサ12、光電センサ13などはコントローラ14に接続されている。このコントローラ14はマイクロコンピュータを主体に構成されており、これらロータリーエンコーダや電磁コイル11、変位センサ12、光電センサ13に制御信号を出力するとともに、それらの装置やセンサからの検出信号を受信するようになっている。そして、それらの検出信号に基づいて演算を行い、以下に説明するように各ボトル型缶1の内圧の良否の判定を行うように構成されている。
【0021】
検査の対象であるボトル型缶1は、
図1に示す倒立状態でコンベヤ3上に連続して載せられ、各ボトル型缶1同士の間に所定の間隔を空けてコンベヤ3によって搬送される。所定のボトル型缶1が光電センサ13の設置位置にまで進行すると、上述したように、電磁コイル11によって底蓋5に電磁的に衝撃力や打撃力が与えられて底蓋5が振動させられる。これと同時に、変位センサ12がレーザーパルスを出力して距離の計測を開始して底蓋5の振動すなわち変位が距離のデータとしてコントローラ14に取り込まれる。こうして取り込まれた距離のデータがフィルタ処理されて底蓋5の変位波形が求められる。この底蓋5の変位波形を
図2に示してある。
【0022】
また、変位センサ12による距離のデータの計測の終了は、コンベヤ3による搬送速度から求められる時間の経過によって決定することができる。あるいは、ボトル型缶1が光電センサ13の設置位置を通過したことを検出することによって上述した計測あるいはデータの取り込みを終了することとしてもよい。例えば、搬送方向におけるリング状の電磁コイル11の内径を約10mmとし、外径53mmのボトル型缶1が80m/minで搬送される場合には、前記変位センサ12による距離の計測を開始してからそのボトル型缶1の底蓋5の中心が電磁コイル11の中央部分を通過するまでに要する時間は約5msecである。したがって、光電センサ13の設置位置にボトル型缶1が到達してから約20msec間、変位センサ12によって距離の計測を行い、そのうち計測の開始と打缶タイミングとが同時の場合、最初の10msec間の距離のデータを以下に説明する高速フーリエ変換することとしてもよい。
【0023】
なお、上述した例では、変位センサ12の測定開始タイミングと電磁コイル11による衝撃付加のタイミングとを、タイミングセンサの設置位置にボトル型缶1が到達したのと同時に行うように構成している。しかしながら、コンベア3のスピードによりそれぞれの最適なタイミングは変わる。そのため、タイミングセンサの設置位置にボトル型缶1が到達したのと同時に変位センサ12による測定を開始し、その変位センサ12の測定開始タイミングからタイマーによって電磁コイル11による衝撃付加のタイミングを任意の時間遅らせることとしてもよい。つまり、変位センサ12の測定開始タイミングから任意の時間経過した後に、電磁コイル11へ信号を送ってボトル型缶1に衝撃を付加することとしてもよい。
【0024】
次いで、
図2に示す変位波形が、コントローラ14が備えるFFTアナライザ14aによって高速フーリエ変換(以下、単にFFT変換と記す。)される。こうして底蓋5の変位波形の周波数が算出される。そのFFT変換によって得られた周波数を
図3に示す。この
図3での周波数の極大値すなわちピークが良品と判定されるボトル型缶1の内圧に対応する周波数帯にあるか否かが判定される。その周波数帯は内圧判定の基準値あるいは閾値であって、検査対象の缶や内容物の種類ごとに実験により予め設定される。上述した周波数のピークが前記内圧判定の基準となる周波数帯にあれば良品と判定される。これに対して、周波数のピークが前記内圧判定の基準となる周波数帯にない場合には、不良品と判定されるとともに、検査の対象となっているボトル型缶1が不良品であることを示す信号がコントローラ14から出力される。その後、例えば、図示しない排除装置によって搬送ラインから不良品と判定されたボトル型缶1が排除される。
【0025】
したがって、上述した構成の装置によれば、空気の振動である音を介さないで変位センサ12によって底蓋5の振動を検出できるので、共鳴現象や空気の状態によって内圧の検査精度が悪化する事態を回避でき、ボトル型缶1の内圧の検査精度を向上できる。その結果、正確な内圧判定を行うことができる。また、全体として装置の構成を簡素化でき、既設設備への変位センサ12の追加を容易に行うことができる。
【0026】
ここで、ボトル型缶1の周波数を
図1に示す構成の内圧検査装置によって測定した場合と、いわゆる音式打検器によって測定した場合とについて説明する。なお、前記音式打検器(図示せず)は、検査対象であるボトル型缶1の底蓋5に打撃力を与えて底蓋5で発生させた音の周波数に基づいて内圧を検査するように構成された公知の構成のものである。所定の内圧に設定したボトル型缶1を複数用意し、各ボトル型缶1の周波数を
図1に示す構成の内圧検査装置と、従来知られている音式打検器とによってそれぞれ測定した。それらの測定結果を
図4に示してある。この発明に係る内圧検査装置によって測定したボトル型缶1の周波数を
図4に「□」で記載し、音式打検器によって測定したボトル型缶1の周波数を
図4に「◇」で記載してある。また、音式打検器による測定時に共鳴現象は生じていない。
【0027】
図4に示すように、この発明に係る内圧検査装置によって測定したボトル型缶1の周波数と、音式打検器によって測定したボトル型缶1の周波数とは、ボトル型缶1の内圧に拘わらず、互いに一致していることが認められる。つまり、この発明に係る内圧検査装置は、音式打検器と少なくとも同等の内圧検査精度を得ることができる。
【0028】
図5に、この発明に係る内圧検査装置の構成の他の例を示してある。この
図5に示す例は、変位センサ12に替えてレーザードップラーセンサ(以下、単にドップラーセンサと記す。)15を用いた例である。他の構成は
図1に示す構成と同様であるため、
図1に示す構成と同様の部分には
図1と同様の符号を付してその説明を省略する。上記のドップラーセンサ15は、ボトル型缶1の底蓋5に向けて照射したレーザー光の周波数に対する反射光の周波数の変化を電圧に変換して底蓋5の振動速度を検出するように構成された公知の構成のものである。
図5に示す例では、電磁コイル11の上方であってかつ電磁コイル11の中心に対応する位置にドップラーセンサ15が設けられている。すなわち上述した基準位置にドップラーセンサ15が設けられており、電磁コイル11の中心と底蓋5の中心とが一致した場合に、それらの各中心を通る直線上にドップラーセンサ15が位置する。
【0029】
図5に示す構成であっても、
図1に示す構成と同様に、ボトル型缶1が光電センサ13の設置位置に到達すると、電磁コイル11によって底蓋5に電磁的に衝撃力や打撃力が与えられて底蓋5が振動させられる。これと同時に、ドップラーセンサ15によって底蓋5の振動速度の計測が開始されてそのデータがコントローラ14に取り込まれる。例えば上述したように、約20msec間、底蓋5の振動速度が計測され、そのうち計測の開始と打缶タイミングとが同時の場合、最初の10msec間の振動速度のデータがフィルタ処理される。ドップラーセンサ15によって得られた底蓋5の振動速度のデータをフィルタ処理することにより振動速度の変位波形が求められる。その変位波形を
図6に示してある。そして、この
図6に示す変位波形が、コントローラ14が備えるFFTアナライザ14aによってFFT変換され、周波数が算出される。FFT変換によって得られた周波数を
図7に示してある。この
図7に示す周波数のピークが上述したように、良品と判定されるボトル型缶1の内圧に対応する周波数帯にあれば良品と判定される。したがって、ドップラーセンサ15を用いた場合であっても、変位センサ12を用いた場合と同様に、空気を介さずに底蓋5の変位を検出して内圧を検査するため、検査精度を向上でき、正確な内圧判定を行うことができる。
【0030】
なお、本発明は上述した具体例に限定されないのであって、密封容器は上述したボトル型缶1以外の缶詰容器や合成樹脂容器であってもよい。合成樹脂容器を検査対象とする場合には、電磁コイル11に替えて、例えばいわゆる振動試験器などによって合成樹脂容器を振動させ、その振動を変位センサ12やドップラーセンサ15などによって検出すればよい。