(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような従来の不具合を解決するためのものであって、その課題は、塗料を剥離するローラーの回転抵抗を低減すると共に、処理対象である車両部品が幅方向に凸部があったとしても、塗膜を除去することができる車両部品の塗装剥離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、塗膜を有する合成樹脂製の車両部品を前記塗膜が上側となる状態で搬送する搬送手段と、前記搬送手段に対向して配置され、外周が前記車両部品に当接しつつ回転駆動され、前記車両部品から前記塗膜を剥離する剥離ローラー部とを備え、前記搬送手段と前記剥離ローラー部との間において前記車両部品が挟まれた状態で搬送される際に前記塗膜が剥離される塗装剥離装置であって、前記剥離ローラー部は、前記車両部品の搬送方向に沿って複数設けられ、前記車両部品の搬送方向に直交して配設された回転駆動軸部と、前記回転駆動軸部に固定され、前記車両部品に当接して前記塗膜を剥離させる円筒状の剥離ローラーとを備え、前記剥離ローラーは、軸方向の寸法が前記搬送手段の幅寸法より小さく形成されると共に周面部には軸方向に沿って形成された溝部が多数設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、回転駆動軸部は搬送方向に沿って所定間隔をおいて複数設けられ、車両部部品の塗膜に接触する剥離ローラーの剥離ローラーは、軸方向に沿って設けた溝部を備えるとともに搬送手段の幅寸法より小さく形成されている。
よって、剥離ローラーの回転抵抗を低減することができる他、車両部品が搬送手段の幅方向に沿って凸部がある場合であっても、凸部に接触しない他の箇所において剥離ローラーが接触し、車両部品の塗膜に幅方向の切り込みを形成して塗膜を除去することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明において、前記剥離ローラーは、各回転駆動軸部において互いに所定間隔をおいて複数固定されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、1つの剥離ローラーの回転駆動軸部に複数の剥離ローラーが配置される。
よって、剥離ローラーの数を少なくして装置の搬送方向の寸法を小さくできると共に、剥離ローラーの駆動系を簡素な構成とすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明において、前記回転駆動軸部は、上下方向において移動可能に支承されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、剥離ローラーは、回転駆動部の上下方向の移動により車両部品の厚さに追従する。
よって、剥離ローラーは、車両部品の厚さにかかわらず、表面の塗膜を高い効率で剥離することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明において、前記回転駆動軸部は、両端部において付勢手段により前記搬送手段に対して付勢された状態で支承されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、回転駆動軸部は、付勢手段により搬送手段に対して付勢された状態で支承されため、剥離ローラーは車両部品の表面に常に所定の力で押し付けられる。
よって、剥離ローラーは、車両部品の表面形状に追従し、車両部品の表面の塗膜を高い効率で剥離することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明において、前記剥離ローラーの回転速度は、前記搬送手段による前記車両部品の搬送速度より大きいことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、車両部品の塗膜には剥離ローラーの溝部により傷が形成され、更に傷は車両部品の搬送速度より大きい回転速度の剥離ローラーの溝部によって広げられ、塗膜がかき取られる。
よって、車両部品の塗膜を高い効率で剥離して除去できる。
【0019】
請求項6に記載の発明において、前記回転駆動軸部は4本設けられると共に各駆動軸部には2個の剥離ローラーが固定されていることを特徴とする。
本発明によれば、各駆動軸部材に2個の剥離ローラーを備えた回転駆動軸部を4本備える。
よって、4個の剥離ローラー部を配置するスペースに合計8個の剥離ローラーを配置でき、剥離性能を維持しつつ装置の寸法を小さくできる。
【0020】
請求項7に記載の発明において、前記搬送手段は、円筒状のローラーであることを特徴とする。
本発明によれば、車両部品は円筒状のローラーで搬送される。
よって、自動車部材に剥離ローラー部材の剥離ローラーを接触させた状態で車両部品を安定した状態で搬送できる。
【0021】
請求項8に記載の発明において、前記剥離ローラーは、前記回転駆動軸部に対して前記搬送方向において互いに重複しない部位に固定され、配置された複数の剥離ローラーによって前記搬送手段の幅方向の全域において搬送される前記車両部品の前記塗膜を剥離可能としたことを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、剥離ローラーは、前記回転駆動軸部に対して前記搬送方向において互いに重複しない部位に固定され、配置された複数の剥離ローラーによって前記搬送手段の幅方向の全域において搬送される前記車両部品の前記塗膜を剥離可能とされる。
よって、最小数の剥離ローラーにより、搬送される車両部品の塗膜を残すことなく剥離できる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る塗装剥離装置によれば、剥離ローラーの剥離ローラーは、幅方向に沿って設けた溝部を備え、搬送手段の幅寸法より小さく形成されているので、剥離ローラーの回転抵抗を低減することができる他、車両部品が搬送手段の幅方向に沿って凸部がある場合であっても、凸部に接触しない他の箇所において剥離ローラーが接触し、車両部品の塗膜に幅方向の切り込みを形成して塗膜を除去することができる。
【0024】
請求項2に係る塗装剥離装置によれば、1つの剥離ローラーの回転駆動軸部に複数の剥離ローラーが配置されるから、剥離ローラーの数を少なくして装置の搬送方向の寸法を小さくできると共に、剥離ローラーの駆動系を簡素な構成とすることができる。
【0025】
請求項3に係る塗装剥離装置によれば、剥離ローラーは、回転駆動部の上下方向の移動により車両部品の厚さに追従するので、車両部品の厚さにかかわらず、表面の塗膜を高い効率で剥離することができる。
【0026】
請求項4に係る塗装剥離装置によれば、回転駆動軸部は、付勢手段により搬送手段に対して付勢された状態で支承されため、剥離ローラーは車両部品の表面に常に所定の力で押し付けられるので、剥離ローラーは、車両部品の表面形状に追従し、車両部品の表面の塗膜を高い効率で剥離することができる。
【0027】
請求項5に係る塗装剥離装置によれば、車両部品の塗膜には剥離ローラーの溝部により傷が形成され、更に傷は車両部品の搬送速度より大きい回転速度の剥離ローラーの溝部によって広げられ、塗膜がかき取られるので、車両部品の塗膜を高い効率で剥離して除去できる。
【0028】
請求項6に係る塗装剥離装置によれば、4個の剥離ローラー部を配置するスペースに合計8個の剥離ローラーを配置でき、剥離性能を維持しつつ装置の寸法を小さくできる。
【0029】
請求項7に係る塗装剥離装置によれば、車両部品は円筒状のローラーで搬送されるので、自動車部材に剥離ローラー部材の剥離ローラーを接触させた状態で車両部品を安定した状態で搬送できる。
【0030】
請求項8に記載の塗装剥離装置によれば、剥離ローラーは、前記回転駆動軸部に対して前記搬送方向において互いに重複しない部位に固定され、配置された複数の剥離ローラーによって前記搬送手段の幅方向の全域において搬送される前記車両部品の前記塗膜を剥離可能とされるので、最小数の剥離ローラーにより、搬送される車両部品の塗膜を残すことなく剥離できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る車両部品の塗装剥離装置を図面に基づいて説明する。まず、塗装剥離装置10の全体構造について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る塗装剥離装置の全体を示す側面図、
図2は同車両部品の塗装剥離装置の斜視図である。
【0033】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係る塗装剥離装置10は、塗膜を有する合成樹脂製の車両部品であるバンパーPを圧延する部品圧延装置50と、圧延されたバンパーPの塗膜をローラーで除去するローラー剥離装置60と、ローラー剥離装置60からのバンパーPの塗膜の残りをブラシで除去するブラシ剥離装置70と、を備える。
【0034】
塗装剥離装置10は、フレーム23、24、25を備えている。フレーム23、24、25は、互いにボルト及びナットにより着脱可能に連結される。部品圧延装置50はフレーム23に、ローラー剥離装置60はフレーム24に、ブラシ剥離装置70はフレーム25に、それぞれ固定されている。
【0035】
次に本実施形態に係る塗装剥離装置10の部品圧延装置50について説明する。部品圧延装置50は、バンパーPを圧延してローラー剥離装置60に搬出する。部品圧延装置50は、プレス部13a、13b、13cと、センサー部14a、14b、14cと、制御部15a、15b、15cと、を備えている。プレス部13a、13b、13cは、バンパーPを圧延すると共にバンパーPの塗膜に搬送方向の傷を形成する。センサー部14a、14b、14cは、圧延すべきバンパーPを検知する。制御部15a、15b、15cは、センサー部14a、14b、14cがバンパーPを検知したときプレス部13a、13b、13cがバンパーPを圧延するように制御する。
【0036】
プレス部13a、13b、13cは、
図1に示すように、上側ローラー16a、16b、16cと、下側ローラー17a、17b、17c、油圧ピストン部18a、18b、18cと、を備える。上側ローラー16a、16b、16c、及び下側ローラー17a、17b、17cとは、例えば直径240mmの円筒状部材として構成されている。この例では、上側ローラー16a、16bと、下側ローラー17a、17bとでバンパーPを挟んで圧延し、上側ローラー16cと下側ローラー17cとでバンパーPを挟んで、バンパーPの塗膜に搬送方向に沿った傷を形成する。
【0037】
上側ローラー16a、16b、16cは、軸部材19a、19b、19cにより、下側ローラー17a、17b、17cは、軸部材20a、20b、20cにより回転可能に保持されている。上側ローラー16a、16b、16cと下側ローラー17a、17b、17cとは、バンパーPを挟むように初期状態において所定距離、例えば200mmだけ離間して上下方向に対向配置されている。下側ローラー17a、17b、17c側の軸部材20a、20b、20cは、フレーム23に固定されており、上側ローラー16a、16b、16c側の軸部材19a、19b、19cは油圧ピストン部18a、18b、18cにより上下方向に沿って位置を変更可能である。この構成により、下側ローラー17a、17b、17cと上側ローラー16a、16b、16cとの距離を変更することができる。
【0038】
上側ローラー16a、16b、及び下側ローラー17a、17bは、筒状の基材と、この基材の表面を覆う表面層とから構成されている。上側ローラー16a、16b及び下側ローラー17a、17bの基材は、例えば炭素鋼製で構成され、上側ローラー16a、16b、及び下側ローラー17a、17bの表面層は例えば硬度90のウレタンゴムで構成される。また、下側ローラー17cの構成も他の下側ローラー17a、17bと同一である。
【0039】
上側ローラー16cは、炭素鋼製の基材を備え、この基材の表面に硬質クロムメッキが施されて構成される。また、上側ローラー16cの表面には、周方向に沿って環状の凸溝が断面鋸歯状に形成された縦溝部(図示せず)が形成される。環状凸状は、軸方向に沿って例えば5mmの間隔をおいて複数個が隣接して形成される。即ち、上側ローラー16cには、バンパーPの搬送方向に沿った複数の凸部と凹部とが並設されている。これにより、搬送されるバンパーPの塗膜に搬送方向の傷を形成する。
【0040】
図2に示すように、本実施形態に係る上側ローラー16a、16b、16c及び下側ローラー17a、17b、17cの軸部材19a、19b、19c及び軸部材20a、20b、20cは、それぞれ、モーター部44に接続されている。これにより、上側ローラー16a、16b、16c及び下側ローラー17a、17b、17cは、例えば毎分2mの周速度で駆動するように構成されている。
【0041】
図1及び
図2に示すように、上側ローラー16a、16b、16cの軸部材19a、19b、19cには、それぞれ、油圧ピストン部18a、18b、18cが接続されている。油圧ピストン部18a、18b、18cは、上側ローラー16a、16b、16cを上下方向に沿って移動させて、上側ローラー16a、16b、16cを下側ローラー17a、17b、17cに対する距離を変更可能とする。
【0042】
センサー部14a、14b、14cは、上側ローラー16a、16b、16cの上方に設けられている。センサー部14a、14b、14cがバンパーPを検知したとき、制御部15a、15b、15cが油圧ピストン部18a、18b、18cを作動させる。これにより、上側ローラー16a、16b、16cを下側ローラー17a、17b、17cに近づけ、バンパーPを圧延する。本実施形態においては、上側ローラー16a、16b、16cと、下側ローラー17a、17b、17cとの間隔寸法は、最近接時において5mmとしている。
【0043】
センサー部14a、14b、14cは、プレス部13a、13b、13cごとに設けられ、制御部15a、15b、15cはプレス部13a、13b、13cを、それぞれ、独立して制御可能に構成されている。
なお、センサー部14a、14b、14cは、光電センサーを使用できる。各センサー部14a、14b、14cは、投光部と、受光部とを有し、投光部から放出された光がバンパーPによって遮られたことを受光部で検知してバンパーPを検出する。
【0044】
塗膜を有する合成樹脂製のバンパーPを部品圧延装置50側から200mmの間隔寸法離間した上側ローラー16aと下側ローラー17aとの間に、塗膜面を上方側に向けて挿入する。この際、上側ローラー16aの上方に設けられているセンサー部14aがバンパーPを検知し、制御部15aが油圧ピストン部18aを作動させ、上側ローラー16aを下側ローラー17aに接近させ、上側ローラー16aでバンパーPを圧延する。
【0045】
上側ローラー16aと下側ローラー17aが回転駆動されると、圧延されたバンパーPは、プレス部13bに搬送される。続いて、上側ローラー16bの上方に設けられたセンサー部14bが搬送されたバンパーPを検知し、制御部15bが油圧ピストン部18bを作動させ、上側ローラー16bを下側ローラー17bに接近させ、上側ローラー16bでバンパーPを圧延する。圧延されたバンパーPは、プレス部13cに搬送される。
【0046】
更に続いて、上側ローラー16cの上方に設けられたセンサー部14cが搬送されたバンパーPを検知し、制御部15cが油圧ピストン部18cを作動させ、上側ローラー16cを下側ローラー17cに接近させて、上側ローラー16cでバンパーPを圧延する。
【0047】
このとき、上側ローラー16cの表面部には、全周にわたって溝部が、軸方向に沿って所定間隔をおいて複数個が設けられているので、バンパーPが回転している上側ローラー16c、下側ローラー17cによって圧延される際に、バンパーPの塗膜面に対して、搬送方向に沿って切溝が形成される。
【0048】
次に本実施形態に係る塗装剥離装置10のローラー剥離装置60について説明する。部品圧延装置50において圧延されたバンパーPは、ローラー剥離装置60において、塗膜に幅方向の切り込みが入れられ、塗膜が剥離される。バンパーPは、部品圧延装置50で圧延されているものの、必ずしも平坦ではなく、凹凸やうねりがあり、塗膜が形成された表面に傾きがある場合がある。ローラー剥離装置60では、このようなバンパーPの塗膜を残すことなく効率よく剥離するため、以下の構成を備える。
【0049】
図3は同塗装剥離装置のローラー剥離装置を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図、
図4は同塗装剥離装置に使用する剥離ローラーを示すものであり、(a)は模式図、(b)は(a)中B部の拡大図である。本実施形態においてローラー剥離装置60は、4つの剥離ローラー部26a、26b、26c、26dと、搬送手段である4つの搬送ローラー27a、27b、27c、27dと、スプリング部30a、30b、30c、30dと、荷重調整部31a、31b、31c、31dと、を備えて構成される。
【0050】
図3に示すように、剥離ローラー部26aは、回転駆動軸部である軸部材28aに2つの剥離ローラー26a1、26a2を配置して構成される。同様に、剥離ローラー部26bは、回転駆動軸部である軸部材28bに2つの剥離ローラー26b1、26b2を配置して構成され、剥離ローラー部26cは、回転駆動軸部である軸部材28cに2つの剥離ローラー26b1、26b2を配置して構成され、剥離ローラー部26dは、回転駆動軸部である軸部材28dに2つの剥離ローラー26d1、26d2を配置して構成される。1つの剥離ローラーに2つの剥離ローラーを設けると、バンパーPの搬送による傾きを防止することができる。
【0051】
図4に示すように、剥離ローラー26a1は、直径D(例えば210mm)の円筒形状の炭素鋼製の部材であり、表面に硬質クロムメッキが施されている。また、剥離ローラー26a1の幅方向の寸法は、搬送ローラー27aの幅寸法の1/8とする。また、
図4に示すように、本実施形態に係る剥離ローラー26a1は、その表面に、軸方向に沿って多数の凸部26A、凹部26Bが周方向に所定の間隔をおいて形成され溝部26Cを備えている。ここで、凸部26Aの高さ寸法hは約5mm、凸部26Aのピッチpは約5mmとすることができる。また、他の剥離ローラー部26b、26c、26dの剥離ローラー26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2も同様の構成を備える。
【0052】
搬送ローラー27a、27b、27c、27dは、基材を炭素鋼製とし、基材の表面に硬度90のウレタンゴム製の被覆を備えるものであり、例えば直径240mmの円筒形状とすることができる。
【0053】
図3(a)に示すように、4本の剥離ローラー部26a、26b、26c、26dには、それぞれ2つ、合計8個配置された剥離ローラー26a1、26a2、26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2が配置されている。これらの剥離ローラー26a1、26a2、26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2は、それぞれ、搬送ローラー27a、27b、27c、27dの幅寸法の1/8であり、4個の搬送ローラー27a、27b、27c、27dの剥離ローラー26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2は異なる位置においてバンパーPに接触して、幅方向の全ての領域においてバンパーPの塗膜を剥離する。ここで、各剥離ローラー26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2は、回転駆動軸部に対して前記搬送方向において互いに重複しない部位に固定すると、剥離ローラー26a1、26a2、26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2の幅寸法を最小限にできる。この場合も、配置された剥離ローラー26a1、26a2、26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2によって搬送ローラー27a、27b、27c、27dの幅方向の全域において搬送されるバンパーPの塗膜を剥離することができる。なお、剥離ローラー26a1、26a2、26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2の剥離範囲が重複しても差し支えない。
【0054】
剥離ローラー部26a、26b、26c、26dは、軸部材28a、28b、28c、28dにより軸支されている。これらの軸部材28a、28b、28c、28dは、1台のモーターでチェーン駆動される。なお、それぞれの剥離ローラー部26a、26b、26c、26dを個別のモーターで駆動することができる。また、各剥離ローラー部26a、26b、26c、26dの軸部材29a、29b、29c、29dは、幅方向の両端において、個別に上下方向に移動できる。このため、剥離ローラー部26a、26b、26c、26dは、バンパーPの表面形状に沿って傾斜した状態で配置されて駆動される。
【0055】
バンパーPは、部品圧延装置50で圧延された場合であっても、必ずしも平坦な状態とはならず、剥離ローラーはこれに対処して塗膜を剥離する。
図5は剥離ローラー部を示すものであり、(a)は水平状態の剥離ローラー部、(b)は傾斜状態の剥離ローラー部を示す模式図である。バンパーPは、幅方向にたわんでいる。このような場合であっても、軸部材28aはバンパーPの形状に追従して傾斜し、剥離ローラー26a1、26a2は、バンパーPの表面に接触して塗膜を剥離することができる。なお、本図は、剥離ローラー部26aの状態を示しているが、他の剥離ローラー部26b、26c、26dも同様にバンパーPの形状に追従する。剥離ローラー部26aは、
図5(a)に示すように水平状態から、
図5(b)に示すようにバンパーPの形状にならうように傾斜する。
【0056】
更に、本実施形態では、搬送ローラー27a、27b、27c、27dは、軸部材29a、29b、29c、29dでフレーム24に軸支され、1台のモーターでチェーン駆動される。なお、それぞれの搬送ローラー27a、27b、27c、27dを個別のモーターで駆動することができる。
【0057】
本実施形態では、剥離ローラー部26a、26b、26c、26dの剥離ローラー26a1、26a2、26b1、26b2、26c1、2の周速(例えば毎分2.4m)は、搬送ローラー27a、27b、27c、27dの周速(毎分2m)より大きく設定されている。これらの周速は、塗膜を剥離するバンパーPの材質、大きさ、塗膜の材質、環境温度等により適宜変更できる。
【0058】
本実施形態に係るローラー剥離装置60によれば、剥離ローラー26a1、26a2、26b1、26b2、26c1、26d1、26d2は、搬送手段の幅寸法より小さく形成されているので、剥離ローラーの回転抵抗を低減することができる。このため、一つの剥離ローラーあたりの駆動モーターの出力を小さなものとできる。また、バンパーPに、幅方向に沿って凸部がある場合であっても、凸部に接触しない他の箇所に剥離ローラーが接触し、バンパーPの塗膜を除去することができる。
【0059】
また、本ローラー剥離装置60によれば、バンパーPが幅方向に沿って平坦でない場合であっても、幅方向のそれぞれの箇所において剥離ローラー26a1、26a2、26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2が接触して、装置全体としてバンパーPの全域において塗膜を残すことなく除去することができる。
更に、ローラー剥離装置60によれば、剥離ローラー部26a、26b、26c、26dは傾斜可能であるため、バンパーPの表面が傾斜し、うねっている場合であっても、剥離ローラー26a1、26a2,26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2はバンパーPの表面に追従して接触し、塗膜を残すことなく除去することができる。
【0060】
そして、本実施形態に係るローラー剥離装置60によれば、剥離ローラーと前記搬送手段の搬送面との最小隙間寸法を変更することができ異なる厚さ寸法のバンパーPに対応できる。
【0061】
また、本実施形態に係るローラー剥離装置60によれば、剥離ローラー部26a、26b、26c、26dは、搬送ローラー27a、27b、27c、27dによるバンパーPの搬送速度より大きく回転駆動されるから、塗膜には剥離ローラー26a1、26a2,26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2の溝部26Cにより傷が形成され、更に傷は溝部26Cによって広げられて塗膜がかき取られる。このため、バンパーPの塗膜を高い効率で剥離して除去できる。
【0062】
また、本実施形態に係るローラー剥離装置60によれば、剥離ローラーは共通の軸部材に複数の剥離ローラーを備えるから、剥離ローラーの数を少なくして装置の搬送方向の寸法を小さくできると共に、剥離ローラーの駆動系を簡素な構成とすることができる。
【0063】
そして、ローラー剥離装置60によれば、剥離ローラーは、スプリング部材で車両部品の表面に常に所定の力で押し付けられるので、バンパーPの表面形状にかかわらず、表面の塗膜を高い効率で剥離することができる。
【0064】
なお、上記例では剥離ローラー26a1、26a2,26b1、26b2、26c1、26c2、26d1、26d2の幅寸法を、搬送ローラー27a、27b、27c、27dの1/8として、4つの剥離ローラー部26a、26b、26c、26dに配置したが、剥離ローラーの幅寸法、各搬送ローラーへの配置数、搬送ローラーの数は、配置される全ての剥離ローラーにより、搬送ローラーで搬送されるバンパーPの幅方向の全ての領域の塗膜に接触して剥離するものであればどのような値であってもよい。例えば、剥離ローラーの幅寸法を搬送ローラーの1/4とし、各搬送ローラーに1つ配置し、搬送ローラーを4つとすることや、剥離ローラーの幅寸法を搬送ローラーの1/6とし、各搬送ローラーに2つ配置し、搬送ローラーを3つとすることができる。
【0065】
次に本実施形態に係る塗装剥離装置10のブラシ剥離装置70について説明する。ローラー剥離装置60で塗膜剥離がなされたバンパーPは、ブラシ剥離装置70に搬送され更にブラシで研磨される。
図1に示すように、ブラシ剥離装置70は、バンパーPを支持する板状部材32、33と、バンパーPの上面部を研磨するブラシ34a、34b、34c、34dと、上側ローラー35及び下側ローラー36とを備える。上側ローラー35及び下側ローラー36は、板状部材32及び板状部材33、ブラシ34b及びブラシ34cの間に、それぞれ配置され、バンパーPを挟むように所定間隔離間して上下方向に対向配置される。
【0066】
ブラシ34a、34b、34c、34dは、全体円筒形状に形成され、基材に珪砂含有ナイロン製線材を植毛して構成されている。ブラシ34a、34b、34c、34dは、バンパーPの搬送方向に対して直交する軸部材37a、37b、37c、37dを備える。
【0067】
上側ローラー35及び下側ローラー36は、例えば直径240mmの円筒形状に形成される。また上側ローラー35及び下側ローラー36は、バンパーPの搬送方向に対して直交する軸部材38、39を備えている。ここで、軸部材39は上下方向に対して固定されている一方、軸部材38は上下方向に沿って移動可能に構成されている。
また、ブラシ34a、34b、34c、34dの軸部材37a、37b、37c、37dは、それぞれ、モーター部(図示せず)に接続され、バンパーPの搬送方向に対して逆方向に回転するように構成されている。
【0068】
また、
図1に示すように、ブラシ34a、34b、34c、34dの軸部材37a、37b、37c、37dには、スプリング部40a、40b、40c、40dが接続され、ブラシ34a、34b、34c、34dを下方に押し付けるように構成されている。
【0069】
このスプリング部40a、40b、40c、40dは、それぞれ、荷重調整部41a、41b、41c、41dに接続され、ブラシ34a、34b、34c、34dへの負荷を調整できる。また、本実施形態においては、ブラシ34a、34b、34c、34dと、板状部材32、33との間隔は、最近接時において5mmとされる。
【0070】
更に、上側ローラー35、下側ローラー36は、全体が硬度90のウレタンゴム製で構成されている。また、上側ローラー35、下側ローラー36の軸部材38、39は、それぞれ、モーター部(図示せず)に接続され、周速が毎分2mで回転するように構成されている。また、上側ローラー35の軸部材38には、スプリング部42が接続され、上側ローラー35を下方に押し付けるように構成されている。
このスプリング部42は、荷重調整部43に接続され、上側ローラー35への負荷を調整できるように構成されている。上側ローラー35、下側ローラー36間の間隔寸法は、最近接時において5mmとなるように構成されている。
【0071】
ローラー剥離装置60で塗膜が剥離されたバンパーPは、剥離ローラー部26d及び搬送ローラー27dによって、板状部材32に支持されながら、ブラシ剥離装置70を構成するブラシ34aへと搬送される。
この際、本実施形態に係るブラシ34aは、珪砂含有ナイロン製線材を有し、回転しながらバンパーPの塗膜面に接するので、バンパーPが研磨され、ローラー剥離装置60によって剥離しきれなかったバンパーPの塗膜を効果的に除去することができる。
【0072】
以上のように本実施形態に係る塗装剥離装置10によれば、バンパーPを圧延する部品圧延装置50と、ローラー剥離装置60と、ブラシ剥離装置70とを備えているので、バンパーP等の合成樹脂製車両部品の塗装剥離処理において、高い効率で塗膜を剥離できる。
【0073】
特に本実施形態に係る塗装剥離装置10では、幅方向に沿って設けた溝部を備え、搬送手段の幅寸法より小さく形成された剥離ローラーを備えた剥離ローラーを、搬送される車両部品の前記幅方向全ての領域において塗膜を剥離するのに充分な数が配置されているので、車両部品が幅方向に沿って平坦でない場合であっても、幅方向のそれぞれの箇所において剥離ローラーが接触して、車両部品の塗膜に幅方向の切り込みを形成することができ、装置全体として車両部品の全域において塗膜を残すことなく除去することができる。
【0074】
なお、上記実施形態では、塗装剥離装置は、車両部品としてバンパーの塗装を剥離する場合を説明したが、合成樹脂製のパネル等他の車両部品の塗装を剥離するものであってもよい。