(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記再着火温度調整部が再着火温度に下限値を設けており、前記温度調整処理が繰り返されて前記再着火温度が下限値に到達すると、前記再着火温度調整部は再着火温度を当該下限値に保ち、前記加熱制御手段は以降その再着火温度で再着火を行うことを特徴とする請求項1に記載の衣類乾燥機。
【背景技術】
【0002】
従来より、乾燥させるべき衣類が投入されたドラム内に、バーナーで温めた乾燥用空気をファンによって流入させ、本体の背面側から排気する衣類用乾燥機が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
図5は、従来の衣類乾燥機での乾燥運転における処理手順を示すフローチャートである。特許文献1に開示の衣類乾燥機では、制御手段により
図5に示すような処理が行われることが通例であり、スタートボタンが押されると、運転が開始されてステップT1に進む。
【0004】
<ステップT1>
ステップT1では、制御手段がドラムおよびファンの回転を開始させる。これにより、ドラムに対する乾燥用空気の給排気が開始される。
【0005】
<ステップT2>
ステップT2では、制御手段がバーナーを着火させる。これにより、ドラムに高温の乾燥用空気の給気が開始される。
【0006】
<ステップT3>
ステップT3では、制御手段が運転時間のカウントを開始する。
【0007】
<ステップT4>
ステップT4では、制御手段は、運転時間が終了時間に達したかどうか判断し、運転を終了するか否か判断する。運転を終了すると判断された場合、ステップT10に進み、運転を終了すると判断されなかった場合、ステップT5に進む。
【0008】
<ステップT5>
ステップT5では、制御手段は、排気温度が上限温度に到達したかどうか判断する。排気温度が上限温度に到達したと判断された場合、ステップT6に進み、排気温度が上限温度に到達したと判断されなかった場合、ステップT4に戻る。
【0009】
<ステップT6>
ステップT6では、制御手段がバーナーを停止させる。これにより、ドラム内に加熱されないほぼ常温の乾燥用空気が給気されるようになり、ドラム内の温度が低下する。
【0010】
<ステップT7>
ステップT7では、制御手段は、運転時間が終了時間に達したかどうか判断し、運転を終了するか否か判断する。運転を終了すると判断された場合ステップT10に進み、運転を終了すると判断されなかった場合ステップT8に進む。
【0011】
<ステップT8>
ステップT8では、制御手段は、排気温度が再着火温度に到達したかどうか判断する。再着火温度に到達したと判断された場合、ステップT9に進み、再着火温度に到達したと判断されなかった場合、ステップT7に戻る。
【0012】
<ステップT9>
ステップT9では、制御手段がバーナーを再着火させ、ステップT4に進む。これにより、ドラムに対して高温の乾燥用空気の給気が再開され、ドラム内の温度が再び上昇する。
【0013】
<ステップT10>
ステップT10では、制御手段がバーナーを停止させるとともに、ファンおよびドラムの回転をそれぞれ停止させる。これにより本フローを終了する。
【0014】
このように従来の衣類乾燥機は、ドラムからの排気温度が所定の上限温度に到達すると、バーナー(熱源)を停止してドラム内の温度を下げ、その後、排気温度が所定の再着火温度まで低下するとバーナーを再着火させるという処理を運転中に繰り返すことで、ドラム内の温度の異常上昇を抑制し、過熱による衣類の傷みを抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述の乾燥運転では、排気温度が上限温度に到達する、すなわち衣類に含まれる水分が減少し、少なくとも一部の衣類がほぼ乾燥して過乾燥状態となってしまった後でも、排気温度が再着火温度まで低下するとすぐにバーナーが再着火されるので、ドラム内が高温に保たれ、衣類の表面温度が上がったままになる。このような状態は衣類の傷みに繋がるものであり、上記従来の乾燥運転を行う衣類乾燥機は、熱による衣類の傷みの低減に関して改善の余地がある。
【0017】
この問題に対して、バーナーの消火・点火が繰り返される運転後半で上限温度を下げて、ドラム内の温度が上がりきる前にバーナーを停止させる制御が考えられる。しかしながら、特にコインランドリーで好適に使用される衣類乾燥機の特性上、ドラム内に収容される衣類の種類や重量などを衣類乾燥機が判別できず、どの時点をもって運転後半とするか見極めることが難しいので、当該制御は採用が困難である。
【0018】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、衣類の種類や量などに関わらず、運転後半で衣類の温度を下げることができ、過熱による衣類の傷みを充分に低減させつつ、衣類全体をムラなく乾かすことができる衣類乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は以上のような問題点を鑑み、次のような手段を講じたものである。
【0020】
すなわち、本発明の衣類乾燥機は、衣類を収容可能なドラムと、前記ドラムに対して乾燥用空気の給排気を行う給排気手段と、前記ドラムに給気される乾燥用空気を加熱する加熱手段と、前記ドラムから排気される乾燥用空気の温度を検出する排気温度検出手段と、前記排気温度検出手段で検出される排気温度が所定の上限温度に到達すると前記加熱手段を停止させ、前記排気温度が所定の再着火温度まで低下すると前記加熱手段を再稼働させて再着火する温度調整処理を行う加熱制御手段とを備え、前記加熱制御手段は、再着火温度を引き下げる調整を行う再着火温度調整部を有し、前記温度調整処理が断続的に繰り返されるたびに前記再着火温度調整部を通じ再着火温度を徐々に引き下げて再着火を行うように構成され
、前記再着火温度調整部は、温度調整処理の度に当該再着火温度を段階的に所定温度ずつ低くして新たな再着火温度を決定するとともに、再着火から排気温度が所定の上限温度に達するまでの経過時間を取得し、この経過時間に基づいて前記所定温度に補正値を加えることを特徴とする衣類乾燥機。
【0022】
さらに、前記再着火温度調整部が再着火温度に下限値を設けており、前記温度調整処理が繰り返されて前記再着火温度が下限値に到達すると、前記再着火温度調整部は再着火温度を当該下限値に保ち、前記加熱制御手段は以降その再着火温度で再着火を行うことが好ましい。
【0024】
また、前記加熱手段が、火力調整機能を有しない非調整式のバーナーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
以上、説明した本発明によれば、加熱手段で加熱された乾燥用空気が給排気手段によりドラム内に給気されて衣類を乾燥させるとともに、排気温度検出手段で検出される排気温度が上限温度に到達した時点を概ね乾燥運転の前後半の境として、排気温度が上限温度に到達した時点からではなく排気温度が再着火温度まで低下した時点を加熱手段の再稼働の基準とすることで、乾燥すべき衣類の種類や量などを厳密に推定することなく、乾燥運転の後半で加熱制御手段により温度調整処理を行うことができる。そして、この温度調整処理が断続的に繰り返されるたびに加熱制御手段が再着火温度調整部を通じて徐々に再着火温度を確実に所要の温度まで引き下げるので、加熱されていない乾燥用空気により衣類の乾燥が継続されつつ、前回の温度調整処理時よりも低い温度までドラム内の温度を確実に低下させることができる。したがって、乾燥すべき衣類の種類や量などに関わらず、乾燥運転の後半で温度調整処理毎のドラム内のピーク温度を徐々に低下させて過乾燥状態での衣類の温度を下げることができ、熱による衣類の傷みを充分に低減させつつ、衣類全体をムラなく乾かすことができる。
【0026】
特に、前記再着火温度調整部が再着火温度を段階的に所定温度ずつ低くする本発明によれば、熱による衣類の傷みを充分に低減しつつ、衣類全体をムラなく乾かすことができる上記制御を簡単かつなだらかに実現できる。
さらにまた、再着火温度に対し、再着火から加熱停止までの経過時間に応じて補正値を加える本発明によれば、再着火温度を引き下げたことによる効果の有無をフィードバックして、ドラム内のなだらかな温度引き下げ機能を実効あるものにすることができる。
【0027】
さらに、前記再着火温度調整部が再着火温度に下限値を設ける本発明によれば、乾燥運転の後半における衣類温度の下がりすぎを防止でき、乾燥不足に陥ることなく、必要な乾燥性能を確保できる。
【0029】
また、前記加熱手段が非調整式のバーナーである本発明によれば、調整式のバーナーを用いる場合に比べて、製造コストを下げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る衣類乾燥機1を模式的に示す図であり、
図1(a)は衣類乾燥機1の正面図、
図1(b)は衣類乾燥機1の側面図である。
図2は、衣類乾燥機1の構成を示すブロック図である。
【0033】
本実施形態の衣類乾燥機1は、装置本体10と、ドラム20およびドラムケース21と、ドラムモータ23と、バーナー30と、給排気手段4と、温度センサ(サーミスタ)31と、制御手段5(
図2参照)とを含んで構成され、特にコインランドリーで好適に使用される。
【0034】
装置本体10は、その内部が上側仕切板11と下側仕切板12とで隔絶され、上部に燃焼室13、中間部に乾燥室14、下部に通風室15およびファンモータ室16がそれぞれ形成される。
【0035】
ドラム20は、乾燥室14において円筒状のドラムケース21内に設けられ、軸心を乾燥機本体1の前後方向とし、ドラムケース21と同心配置される。また、ドラム20は、ドラムケース21よりも若干小径であって周面に多数の図示しない小孔を有し、正方向回転と、衣類をほぐすために逆方向回転とを繰り返し行えるよう構成される。このようなドラム20は、乾燥すべき衣類Lを収容可能である。
【0036】
ドラムケース21の上部左寄り位置には吸気口21a(同図(a)参照)が形成され、吸気口21aは短寸の通風ダクト17を介して後述する燃焼室13と連通する。ドラムケース21の下部右寄り位置には排気口21b(同図(a)参照)が形成される。ドラム20の前側開口部はドアー22により開閉自在に密閉できる。
【0037】
ドラムモータ23は、装置本体10の後面側上部に取付けられる。ドラムモータ23の回転力により、ドラム20が回転駆動する。
【0038】
加熱手段としてのバーナー30は、燃焼室13に設けられ、前記小孔を介してドラム20内に給気される乾燥用空気を加熱する。また、バーナー30は、火力調整機能を有しない非調整式のものである。バーナー30は、
図2に示すガスバルブ30bによりガスが給断される。また、バーナー30の近傍には点火器30a(
図2参照)が設けられる。
【0039】
給排気手段4は、ドラム20に対して乾燥用空気の給排気を行うものであり、給排路40と排風ファン48aとファンモータ48bとを有する。
【0040】
給排路40は、燃焼室13、通風ダクト17、ドラムケース21、排気口21bと対向して下側仕切板12に形成される通気口40b、通風室15およびファンモータ室16により構成される。
【0041】
通風室15は、下側仕切板12の下方に形成され、略垂直配置された仕切板44によりファンモータ室16と隔絶される。また、下側仕切板12に上端部が固定された遮蔽板42の下端部と、仕切板44の下端部とに跨がって、エアーフィルタ45が配置されるとともに、仕切板44の右寄り位置には通気口44a(
図1(a)参照)が形成される。
【0042】
ファンモータ室16には、ファン仕切板47の前面側にある排風ファン48aと、ファン仕切板47の後面側にあり、排風ファン48aを回転させるファンモータ48bとが配置される。ファン仕切板47の左寄り上部には排風口47a(
図1(a)参照)が形成される。
【0043】
排気温度検出手段としての温度センサ31は、ドラム20から排気される乾燥用空気の温度(排気温度)を検出するものであり、排風ファン48aの近傍、すなわちファン仕切板47の排気口47aに設けられる。運転中のドラム20内の温度がリアルタイムで測定されることは困難であるが、温度センサ31を用いることで、間接的にドラム20内の温度がリアルタイムで測定される。
【0044】
このような衣類乾燥機1の動作は、マイクロコンピュータを含む制御手段5(
図2参照)によって制御される。制御手段5は、加熱制御手段55、タイマ51、ROM53およびRAM54を備え、ROM53に記憶されたプログラム(例えば後述する温度調整処理)をマイクロコンピュータが実行することにより、予め定められた運転動作が行われる。RAM54には、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ(例えば後述する再着火下降温度N)が一時的に記憶される。
【0045】
制御手段5は、ファンモータ駆動信号をファンモータ48bに出力可能であるとともに、ドラムモータ駆動信号をドラムモータ23に出力可能である。
【0046】
加熱制御手段55は、点火信号を点火器30aに出力可能であるとともに、ガス供給信号をガスバルブ30bに出力可能である。
【0047】
また加熱制御手段55は、温度センサ31で検出される排気温度が所定の上限温度に到達するとバーナー30を停止させ、排気温度が所定の再着火温度まで低下するとバーナー30を再稼働させて再着火する温度調整処理を行う。本実施形態では、例えば上限温度は70℃程度、再着火温度は40〜45℃の範囲に予め設定される。
【0048】
さらに、加熱制御手段55は、再着火温度を引き下げる調整を行う再着火温度調整部56を有し、温度調整処理が断続的に繰り返されるたびに前記再着火温度調整部56を通じ再着火温度を徐々に引き下げて再着火を行うよう構成される。
【0049】
このように、本実施形態の衣類乾燥機1は、衣類Lを収容可能なドラム20と、ドラム20に対して乾燥用空気の給排気を行う給排気手段4と、ドラム20に給気される乾燥用空気を加熱する加熱手段としてのバーナー30と、ドラム20から排気される乾燥用空気の温度を検出する排気温度検出手段としての温度センサ31と、温度センサ31で検出される排気温度が所定の上限温度に到達するとバーナー30を停止させ、排気温度が所定の再着火温度まで低下するとバーナー30を再稼働させて再着火する温度調整処理を行う加熱制御手段55とを備え、加熱制御手段55は、再着火温度を引き下げる調整を行う再着火温度調整部56を有し、温度調整処理が断続的に繰り返されるたびに再着火温度調整部56を通じ再着火温度を徐々に引き下げて再着火を行う。
【0050】
このような構成であると、バーナー30で加熱された乾燥用空気が給排気手段4によりドラム20内に給気されて衣類Lを乾燥できるとともに、排気温度が上限温度に到達した時点を概ね乾燥運転の前後半の境として、排気温度が上限温度に到達した時点からではなく排気温度が再着火温度まで低下した時点をバーナー30の再着火の基準とすることで、ドラム20内に投入された衣類Lの種類、重量を厳密に推定することなく、乾燥運転の後半で、加熱制御手段55により温度調整処理を行うことができる。そして、この温度調整処理が断続的に繰り返されるたびに加熱制御手段55が再着火温度調整部56を通じて徐々に再着火温度を確実に引き下げるので、加熱されていない乾燥用空気により衣類Lの乾燥が継続されつつ、前回の温度調整処理時よりも低い温度までドラム20内の温度を確実に低下させることができる。したがって、乾燥すべき衣類Lの種類や量などに関わらず、乾燥運転の後半以降で、温度調整処理毎のドラム20内のピーク温度を徐々に低下させて過乾燥状態での衣類Lの温度をなだらかに下げることができ、従来の高温のまま運転継続する手法と比較して、熱による衣類Lの傷みを充分に低減させつつ、衣類L全体をムラなく乾かすことができる。
【0051】
さらに、このような効果を発揮させるにあたり、新たなセンサ類が不要であり、従来の機械構成のままでコストを掛けることなく採用することができる。
【0052】
なお、上限温度到達を境に衣類温度を低下させる別の手法として、排気温度が上限温度に到達した時点から当該上限温度そのものを下げることが考えられる。しかしながら、この手法では、バーナー30の再着火後に再び排気温度が上限温度に到達する時間が早まるので、運転全体を通して、バーナー30の着火・消火の回数が増加し、機械の耐久性の面で不利に働くことになる。
【0053】
本発明では、上記の手法に比べて、バーナー30の着火・消火の回数が減るので、機械の耐久性の面でも有利である。
【0054】
また、このように排気温度が初めて上限温度に到達した時点で衣類Lの表面がほぼ乾いた状態にあり、すでに乾いた部分は濡れている部分よりも熱によって傷みやすい点に着目するとともに、まだ未乾燥部分が残っている可能性が高い状態で再着火温度を引き下げてドラム20内の温度を低下させるという発想は従来技術にはないものである。
【0055】
図3は、衣類乾燥機1での乾燥運転における処理手順を示すフローチャートである。以下、
図3を用いて乾燥運転の処理手順を具体的に説明する。その際、再着火温度の初期値を45℃、再着火温度を段階的に引き下げる減算値(所定値)を1℃、減算値の累積値を再着火下降温度N、再着火温度の下限値を40℃とする。
【0056】
本フローは、ドアー22が開かれて乾燥させるべき衣類Lがドラム20内に投入され、ドアー22が閉じられた後、図示しないスタートボタンが押されると開始される。
【0057】
<ステップS1>
ステップS1では、制御手段5は、ドラムモータ23にドラムモータ駆動信号を出力してドラム20の回転を開始させるとともに、ファンモータ48bにファンモータ駆動信号を出力して排風ファン48aの回転を開始させる。これにより、ファンモータ室16内の空気が装置外部に排出されて、燃焼室13からファンモータ室16に向かって給排路40に空気が流れ、ドラム20に対する乾燥用空気の給排気が開始される。
【0058】
<ステップS2>
ステップS2では、加熱制御手段55は、ガスバルブ30bにガス供給信号を出力してガスバルブ30bをオンにするとともに、点火器30aに点火信号を出力してバーナー30を着火させる。これにより、ドラム20に高温の乾燥用空気の給気が開始される。
【0059】
<ステップS3>
ステップS3では、制御手段5は、再着火下降温度Nの初期値を0(℃)に設定する。
【0060】
<ステップS4>
ステップS4では、制御手段5は、タイマ51に運転時間のカウントを開始させる。
【0061】
<ステップS5>
ステップS5では、制御手段5は、タイマ51のカウント値に基づいて、運転時間が終了時間に達したかどうか判断し、運転を終了するか否か判断する。運転を終了すると判断された場合、ステップS14に進み、運転を終了すると判断されなかった場合、ステップS6に進む。
【0062】
<ステップS6>
ステップS6では、制御手段5は、温度センサ31によって検出される排気温度が上限温度に到達したかどうか判断する。排気温度が上限温度に到達したと判断された場合、ステップS7に進み、排気温度が上限温度に到達したと判断されなかった場合、ステップS5に戻る。なお、ドラム20内の水分量が多いと、高温の乾燥用空気を給気しても熱量が水の蒸発に利用されてドラム20内の温度が上がりにくく、衣類の量やそれに含まれる水分量が多いほど、排気温度が上限温度に到達するまでに時間が掛かる。また、衣類Lの生地や量などにもよるが、排気温度が最初に上限温度まで到達した時点では、衣類Lの表面は乾いていたとしても、内部はまだ濡れた状態である場合が多い。
【0063】
<ステップS7>
ステップS7では、加熱制御手段55は、ガスバルブ30bによるバーナー30へのガスの供給を停止させ、バーナー30を停止(消火)させる。
【0064】
<ステップS8>
ステップS8では、制御手段5は、タイマ51のカウント値に基いて、運転時間が終了時間に達したかどうか判断し、運転を終了するか否か判断する。運転を終了すると判断された場合、ステップS14に進み、運転を終了すると判断されなかった場合、ステップS9に進む。
【0065】
<ステップS9>
ステップS9では、制御手段5は、温度センサ31によって検出される排気温度が再着火温度まで低下したかどうか判断する。排気温度が再着火温度まで低下したと判断された場合、ステップS10に進み、排気温度が再着火温度まで低下したと判断されなかった場合、ステップS8に戻る。
【0066】
<ステップS10>
ステップS10では、再着火温度調整部56を通じてガス供給信号および点火信号の再着火温度を再着火下降温度N℃だけ引き下げる。
【0067】
<ステップS11>
ステップS11では、加熱制御手段55が、ガスバルブ30bにガス供給信号を出力するとともに、点火器30aに点火信号を出力して、バーナー30を再着火させる。
【0068】
<ステップS12>
ステップS12では、加熱制御手段5は、再着火温度が下限値に達したか否かを、再着火下降温度Nが設定値(例えば5℃)に達したかどうかを通じて判断する。再着火下降温度Nが5℃以上と判断された場合、ステップS5に進み、再着火下降温度Nが5℃以上と判断されなかった場合、ステップS13に進む。
【0069】
すなわち、再着火温度が下限値まで到達すると、再着火温度調整部56は当該再着火下降温度Nを設定値に保ことを通じて再着火温度を下限値(40℃)に保ち、加熱制御手段5はその再着火温度で以後の温度調整処理を行う。このため、衣類温度の下がりすぎが防止されて乾燥不足に陥ることなく、必要な乾燥性能が確保される。なお、再着火温度の下限値すなわち再着火下降温度Nの設定値は、本発明の効果を発揮できれば、5℃に限定されない。
【0070】
<ステップS13>
ステップS13では、制御手段5は、再着火下降温度Nに所定値として1℃を追加する。これにより、再着火下降温度Nが設定値(例えば5℃)に到達するまで、温度調整処理のたびに再着火下降温度Nが1℃ずつ増加(再着火温度が1℃ずつ低下)していく。このように、再着火下降温度Nは、再着火温度の初期値に対し、温度調整処理のたびに再着火下降温度Nを段階的に増やすことを通じて再着火温度を段階的に引き下げて再着火を行うので、熱による衣類Lの傷みを充分に低減しつつ、衣類L全体をムラなく乾かすことができる上記制御を簡単に実現にできる。さらに、所定値が1℃程度であることで、運転後半において、衣類Lの傷み低減と未乾燥部分への乾燥を両立できる適切な温度差で、温度調整処理毎のドラム20内のピーク温度を低下させていくことができる。また、排気温度の上限到達時点が実際の乾燥運転の前後半の境からずれたとしても、再着火下降温度Nの加算が少しずつなので、温度調整処理毎のドラム20内のピーク温度は徐々にしか下がらず、乾燥性能には大きな影響を与えないようにできる。勿論、所定値は1℃に限定されるものではない。
【0071】
<ステップS14>
ステップS14では、加熱制御手段55がバーナー30を停止させるとともに、制御手段5が排風ファン48aおよびドラム20の回転をそれぞれ停止させ、これにより本フローを終了する。
【0072】
このように、本実施形態の衣類乾燥機1は、衣類Lの過乾燥時に衣類温度を低下させて衣類の傷みを低減できる運転コースを有する。なお、衣類乾燥機1において、上限温度を70℃程度、再着火温度を40〜45℃程度、追加時間Aを5秒に設定して行った実験では、
図5に示すような従来の乾燥運転を行う場合に比べて、乾燥運転中のドラム20内のピーク温度を10℃程度低下させることができた。この実験数値は、ドラム20内に、最高到達温度を測定可能なサーモラベル(登録商標)より得られたものである。
【0073】
なお、過乾燥時に衣類温度を低下させる別の手法として、火力を複数段階で調整可能な火力調整式のバーナーを用い、排気温度が上限温度に到達した後はバーナーの火力を小さく調整することで衣類温度を低下させることも考えられる。
【0074】
この場合、バーナーの火力の調整次第では、着火・消火の回数を少なく抑えることも可能と考えられ、機械の耐久性の面での問題は少ないが、調整式のバーナーが使用されるので機器の製造コストが上昇してしまう。本発明は、再着火下降温度の更新によりドラム20内の温度を調整しており、加熱手段についてはON・OFFの制御だけで済むことから、加熱手段として非調整式のバーナー30を利用可能であり、特に機器の製造コストの面で有利である。
【0075】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0076】
例えば、再着火温度調整部56に、再着火から排気温度が所定の上限温度に達するまでの経過時間Τを取得させ、この経過時間Tに基づいて再着火下降温度に補正値を加えることも有効である。
【0077】
図4はその手順を示す
図3に対応したフローチャートであり、共通部分には同一符号を付して説明を省略するとともに、追加したステップについて以下に説明を加える。
【0078】
<ステップS13a>
ステップS13aでは、再着火からの経過時間(再着火経過時間)についてカウントを開始する。
【0079】
<ステップS7a>
ステップS7aでは、排気温度が上限温度に達するまでに要した経過時間を取得する。
【0080】
<ステップS9a>
ステップS9aでは、上記経過時間に応じて再着火下降温度Nに補正値αを加える。すなわち、再着火下降温度Nを下げると再着火後に所定の上限温度に達するまでの経過時間が伸びるはずであるが、洗濯物の量や外気温度によって経過時間が殆ど変化しない場合がある。そこで、再着火下降温度NをN+αと補正する。N、αがともに1℃であれば、ステップS9aとS10で再着火温度は2℃低くなる。経過時間が変化したかどうかは、閾値(例えば5秒)以上変化したか否かによって判断する。逆に、場合によってはステップS10で1℃下げただけでも経過時間が大幅に伸びるような場合には、αは状況に応じてマイナスの値をとるように構成することもできる。
【0081】
このようにすれば、再着火下降温度を引き下げたことによる効果の良否をフィードバックして、より的確にドラム内のなだらかな温度引き下げを実現することができる。
【0082】
また、本実施形態では、加熱手段としてバーナー30が用いられるが、乾燥用空気を加熱できれば、これ以外のものが用いられてもよい。
【0083】
さらに、上記実施形態では、再着火下降温度Nに所定値が追加されることで次の温度調整処理での再着火温度が決定されるが、これに限定されず、再着火温度をt=0を初期値とする所定の変数としたり、再着火温度に所定の係数が乗算されることで次の再着火温度が決定されるように構成されてもよい。また、温度調整処理の繰り返し回数と再着火温度とが関連づけられたテーブルに基づいて、新たな再着火温度が決定されるように構成されてもよい。
【0084】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。