(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定部は、前記パラメータの少なくとも一つとして、前記半導体素子のオン電圧およびオン抵抗の少なくとも一方を測定する請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記調整部は、外部からスイッチング信号を入力するスイッチング端子と前記半導体素子のゲートの間に接続するゲート抵抗の抵抗値、又は可変パルス電流源によるゲート電流値を変更する請求項8に記載の半導体装置。
前記予測部により予測された寿命が目標寿命よりも短い場合に、前記半導体装置における、前記半導体素子のゲート電圧の変化速度の設定値を変更する設定部を更に備える請求項12に記載のメンテナンス装置。
前記設定部は、前記半導体装置が外部からスイッチング信号を入力するスイッチング端子と前記半導体素子のゲートとの間に接続するゲート抵抗の抵抗値、又は可変パルス電流源によるゲート電流値を定める前記設定値を変更する請求項13に記載のメンテナンス装置。
前記予測段階において予測された寿命が目標寿命よりも短い場合に、前記半導体装置における、前記半導体素子のゲート電圧の変化速度の設定値を変更する設定段階を更に備える請求項16に記載のメンテナンス方法。
前記設定段階は、前記半導体装置が外部からスイッチング信号を入力するスイッチング端子と前記半導体素子のゲートの間に接続するゲート抵抗の抵抗値、又は可変パルス電流源によるゲート電流値を定める前記設定値を変更する請求項17に記載のメンテナンス方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る半導体装置100の構成を示す。半導体装置100は、半導体素子の特性変動の指標となるパラメータを測定し、その結果に基づいて半導体素子の寿命を予測し、特性変動を制御することで半導体素子を保護する又は目標寿命を尽くすよう調整することを目的とする。半導体装置100は、半導体素子10、調整部12、測定部20、及び予測部30を備える。
【0013】
なお、半導体素子10、その他の構成各部は、外部からスイッチング信号を入力するためのスイッチング端子19G、電流を通電するためのドレイン端子19D及びソース端子19S、並びに外部に信号を出力するための出力端子19Oの間に接続されている。
【0014】
半導体素子10は、本実施形態の半導体装置100に組み込まれるスイッチング素子であり、一例として、SiC基板、GaN基板等のポリタイプ結晶構造を有する基板に形成された金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を採用する。なお、半導体素子10として、MOSFETに限らず、化合物半導体から構成され得る素子、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を採用してもよい。半導体素子10は、ゲート電極(単にゲートとも呼ぶ)G、ドレイン電極(単にドレインとも呼ぶ)D、及びソース電極(単にソースとも呼ぶ)Sを有し、それぞれ後述する調整部12、ドレイン端子19D、及びソース端子19Sに接続されている。
【0015】
調整部12は、半導体素子10のゲートGに抵抗値の異なる抵抗素子を切り換え接続するユニットであり、複数の抵抗素子12R及び複数のスイッチ12Sを有する。
【0016】
複数の抵抗素子12Rは、例えば0.01〜10Ωの範囲内で互いに異なる抵抗値を有する素子であり、それぞれの一端が半導体素子10のゲートGに接続される。
【0017】
複数のスイッチ12Sは、後述する予測部30から入力される予測結果により制御されて開閉する素子であり、それぞれの一端が複数の抵抗素子12Rにそれぞれ接続され、それぞれの他端がスイッチング端子19Gに接続される。
【0018】
それにより、複数の抵抗素子12Rがスイッチング端子19GとゲートGとの間に並列される。調整部12は、複数のスイッチ12Sによりいずれかの抵抗値を有する抵抗素子12Rをスイッチング端子19GとゲートGとの間にゲート抵抗Rgとして接続することで、ゲート抵抗の抵抗値を変更可能とする。または、1つの抵抗素子12Rと可変パルス電流源とを組み合わせてゲートGへ流れるゲート電流を変化させることで、等価的にゲート抵抗の抵抗値を変更可能となるようにしてもよい。ここでゲート電流とは、半導体素子10をスイッチングさせるためにスイッチング端子19Gに入力するスイッチング信号である。なお、ゲート抵抗の抵抗値と半導体素子10の性能との関係及び調性部12が果たす機能については後述する。
【0019】
測定部20は、半導体素子10の特性変動の指標となるパラメータを測定するユニットであり、第1測定部21及び第2測定部22を有する。なお、パラメータとして、ゲート電圧のオーバーシュート時間及びその累計、閾値電圧及びその変動、オン電圧及びオン抵抗等を選択することができる。
【0020】
第1測定部21は、半導体素子10のゲート電圧のオーバーシュート時間を測定し、その結果を後述する予測部30に送信する。第1測定部21は、半導体素子10のゲートGに接続し、ゲート電圧を検出してその過渡特性を分析することでオーバーシュート時間を算出する。さらに、第1測定部21は、測定対象期間内においてオーバーシュート時間を積算することで、半導体素子10のスイッチングに応じた累計のオーバーシュート時間を測定する。ここで、測定対象期間は、例えば、半導体装置100を外部システムに組み込んで実稼働を開始した後の期間としてよい。
【0021】
なお、第1測定部21は、さらに半導体装置100の稼働時間を測定し、その結果を予測部30に出力してもよい。
【0022】
第2測定部22は、半導体素子10の閾値電圧及びオン電圧を測定し、それらの結果を後述する予測部30に送信する。なお、第2測定部22の構成及び半導体素子10の閾値電圧及びオン電圧を測定方法については後述する。
【0023】
予測部30は、測定部20に接続して、これから入力される半導体素子10に係る各種パラメータを用いて半導体素子10の寿命を予測するユニットである。本実施形態では、半導体素子10に係るパラメータとして、ゲート電圧のオーバーシュート時間(及びその累計)、閾値電圧V
th及びオン電圧V
ONを利用する。なお、半導体素子10の寿命を予測する方法については後述する。
【0024】
図2に、半導体素子10のゲートGに入力されるゲート電圧の過渡特性の一例を示す。ゲート電圧は、半導体素子10のドレイン−ソース間の接続を開閉制御するためのスイッチング信号であり、半導体装置100を組み込んだ外部システムからスイッチング端子19G及び調整部12を介して半導体素子10のゲートGに入力される。ゲート電圧は、半導体装置100内のインピーダンスだけでなく外部システム内のインピーダンスも受けて、過渡的に時間変化する。ゲート電圧は、一例として半導体素子10のドレイン−ソース間の接続を開くターンオフ信号であり、ターンオン電圧から急激に立下り、閾電圧を越え、アンダーシュートを伴ってターンオン電圧より低いターンオフ電圧に飽和する。
【0025】
ゲート電圧の過渡特性において、ゲートGに接続するゲート抵抗Rgの抵抗値に対して、特にゲート電圧の立ち上がり又は立下りの傾き、ゲート電圧のオーバーシュート又はアンダーシュート(特に断らない限り、基準電圧を一時的に越える変化を伴うという意図で、オーバーシュートと称する)の程度が変動する。ゲート電圧が基準電圧を上回る又は下回る時間をオーバーシュート時間と呼ぶ。基準電圧は、半導体素子10の定格電圧より一意に定められる電圧であり、例えば−10Vである。
【0026】
ゲート電圧は、ゲート抵抗の大きな抵抗値Rg1(例えば6.8Ω)に対して、緩やかな立下り及び短いオーバーシュート時間(例えばdT1=50〜100ナノ秒)を呈する。緩やかな立下りは半導体素子10の遅いスイッチング速度をもたらし、短いオーバーシュート時間は後述するように半導体素子10の長い耐用時間をもたらす。ただし、大きな抵抗値のゲート抵抗は、半導体素子10の性能低下(すなわち、低効率)をもたらす。一方、ゲート電圧は、ゲート抵抗の小さな抵抗値Rg2(例えば4.7Ω)に対して、急な立下り及び長いオーバーシュート時間(例えばdT2=150〜500ナノ秒)を呈する。急な立下りは半導体素子10の速いスイッチング速度をもたらし、長いオーバーシュート時間は後述するように半導体素子10の短い耐用時間をもたらす。ただし、小さい抵抗値のゲート抵抗により、半導体素子10の性能改善(すなわち、高効率)が図られる。
【0027】
なお、ゲート電圧として、アンダーシュートを伴うオフ信号について説明したが、半導体素子10のドレイン−ソース間の接続を閉じるオン信号であり、オフ電圧から急激に立ち上がり、閾電圧を越え、オーバーシュートを伴ってオフ電圧より高いオン電圧に飽和するゲート電圧においても、ゲート抵抗の抵抗値に対して同様の振る舞いを呈するとともに、半導体素子10の性能変化をもたらす。
【0028】
従って、調整部12によりゲート抵抗Rgの抵抗値を変更する、例えば、より小さな抵抗値に変更することにより半導体素子10の効率を改善するとともにスイッチング速度を上げることができ、より大きな抵抗値に変更することにより半導体素子10の耐用時間を延ばす、すなわち延命することができる。
【0029】
図3に、第2測定部22の構成を示す。第2測定部22は、DESATダイオード22a、電流源22b、及び比較器22cを有する。
【0030】
DESATダイオード(単にダイオードとも呼ぶ)22aは、例えば複数のダイオードを直列して構成され、カソード及びアノードをそれぞれ半導体素子10のドレインD及び比較器22cに接続する。DESATダイオード22aは、直列された複数のダイオードのそれぞれの降下電圧の和に等しい降下電圧Vfを有する。
【0031】
電流源22bは、ダイオード22aのアノードに接続され、定電流I
desatを、ダイオード22aを介して半導体素子10のドレインDに流し入れる。
【0032】
比較器22cは、ダイオード22aのアノード電位(DESAT電位とも呼ぶ)V
desatをリファレンスV
refと比較し、その結果OUTを出力する。DESAT電位V
desatは、半導体素子10のドレイン電圧V
D(ドレイン−ソース間電圧V
DSに相当する)とダイオード22aの降下電圧Vfの和に等しい。
【0033】
従って、第2測定部22は、例えばリファレンスV
refを変化させつつ比較器22cの出力OUTを監視することで、出力OUTが変化したときのリファレンスV
refよりドレイン電圧V
D=V
ref−Vfを得ることができる。
【0034】
なお、DESAT電位V
desatを更に別の比較器で増幅し、リファレンスV
refと比較器22cで比較し、その出力OUTが変化したときのリファレンスV
refよりドレイン電圧V
Dを得る構成としてもよい。
【0035】
第2測定部22は、次のように半導体素子10の閾値電圧V
thを測定する。第2測定部22は、半導体素子10のドレインD及びソースSの間に例えば20Vの電圧(すなわち、ドレイン−ソース間電圧V
DS)を印加し、電流源22bからダイオード22aを介して例えば18mAの電流(すなわち、ドレイン電流I
D)を半導体素子10のドレインDに流し込む。この状態において、第2測定部22は、半導体素子10のゲートGに徐々に増大する電圧(すなわち、ゲート電圧)を印加しつつドレイン電圧V
Dを測定する。なお、ゲート電圧は、第1測定部21により検出される。このとき、閾値電圧V
thに等しいゲート電圧にて、ドレイン電圧V
Dが降下する。第2測定部22は、ドレイン電圧V
Dの降下を検知しながらゲート電圧を検出することで、半導体素子10の閾値電圧V
thを得る。
【0036】
なお、第2測定部22は、閾値電圧V
thに代えて又はこれとともに、例えば、半導体装置100を外部システムに組み込んだ初期の閾値電圧V
thからの変動を算出し、出力してもよい。
【0037】
第2測定部22は、次のように半導体素子10のオン電圧V
ONを測定する。第2測定部22は、半導体素子10のゲートGに例えば20Vの電圧(すなわち、ゲート電圧)を印加し、電流源22bからダイオード22aを介して例えば18Aの電流(すなわち、ドレイン電流I
D)を半導体素子10のドレインDに流し込む。第2測定部22は、この状態において、ドレイン電圧V
Dを検出することで半導体素子10のオン電圧V
ONを得る。なお、半導体素子10のオン抵抗は、得られたオン電圧V
ONをドレイン電流I
Dにより除算することにより得られる。
【0038】
なお、半導体素子10の閾値電圧V
th及びオン電圧V
ONを測定する際のゲート電圧V
G、ドレイン電流I
D、及びドレイン−ソース間電圧V
DSに対する条件は、半導体装置100の実稼働時におけるそれらと異なる。そのため、半導体装置100が組み込まれた外部システムの停止時、メンテナンス時等の非稼働時にテスト期間を設け、その期間内に閾値電圧V
th、オン電圧V
ON等の半導体素子10の各種パラメータを測定することとする。
【0039】
図4は、半導体装置100の稼働時間に対する半導体素子10の閾値電圧V
thの変動の一例を示す。ここで、閾値電圧V
thは、小さい(例えば4.7Ω)及び大きい(例えば6.8Ω)ゲート抵抗Rgのそれぞれに対して測定されている。閾値電圧V
thは稼働時間に対して増大し、その増大の程度は小さいゲート抵抗に対して急であり、大きなゲート抵抗に対して緩やかであることがわかる。
【0040】
SiC、GaN等のポリタイプ結晶構造を有する基板に形成されるSiC素子、GaN素子等は、繰り返し使用されることで、特にオーバーシュートにより基準電圧を超えるゲート電圧V
Gが素子にストレスを与え、これが蓄積されることで、閾値電圧V
thが変動する。閾値電圧V
thの増大は例えば半導体素子10のONタイミングの遅延をもたらし、半導体装置100の定格性能を損なう原因となる。
【0041】
先述の通り、小さいゲート抵抗は長いオーバーシュート時間をもたらし、大きいゲート抵抗は短いオーバーシュート時間をもたらす。従って、閾値電圧V
thの変動をゲート電圧V
Gのオーバーシュート時間によりスケールすることができると期待される。そこで、閾値電圧V
thについて、その増大の許容範囲を定め、閾値電圧V
thが許容範囲外となるまでの増大により半導体素子10の耐用を定め、その耐用時間(すなわち、寿命)を予測部30によりゲート電圧V
Gのオーバーシュート時間の測定結果より予測する。
【0042】
図5は、予測部30による閾値電圧V
thの変動による半導体素子10の寿命予測と寿命調整の一例を示す。ここでは、一例として、半導体素子10の耐用限界を閾値電圧V
thの5%増大と定め、閾値電圧V
thの増大がこの限界に達すると予測される設計時間T
4を半導体素子10の目標寿命と定める。図中、原点と、設計時間T
4にて閾値電圧V
thの5%増大を示す点と、を結ぶ一点鎖線を目標寿命曲線L0と呼ぶ。なお、設計時間T
4は、例えば、
図4に示した閾値電圧V
thの変動の一例より40000時間又は10000時間のオーダーである。
【0043】
予測部30は、まず、測定部20から、ゲート電圧V
Gのオーバーシュート時間の測定結果及び半導体装置100の稼働時間の測定結果を受信する。なお、予測部30は、これらの測定結果を、半導体装置100の稼働時に定期的に受信してもよいし、メンテナンス時等の非稼働時に適宜受信してもよい。次に、予測部30は、受信した累計のオーバーシュート時間の測定結果から閾値電圧V
thの変動を、それらの相間関係を利用して予測する。累計のオーバーシュート時間tと閾値電圧V
thの変動との相間関係は、予め、例えば試験用の半導体装置100を用いて試験することで得ることができ、例えば一次関数を用いてΔV
th=a+btと与えることができる。次に、予測部30は、予測した閾値電圧V
thの変動を目標寿命曲線L0と比較する。
【0044】
例えば、
図5に点P1〜P3を用いて示すように、予測された閾値電圧V
thの変動が目標寿命曲線L0上またはこの近傍に位置する場合、予測部30は、半導体素子10の寿命τ
0を目標寿命T
4に等しい又はほぼ等しいと予測し、この予測結果を調整部12に送信する。最後に、調整部12は、受信した寿命の予測結果から、半導体装置100は定格に従って使用されていると判断して、現行のゲート抵抗Rgの抵抗値を維持する。
【0045】
また、例えば
図5に点P4を用いて示すように、予測された閾値電圧V
thの変動が目標寿命曲線L0より高い位置にある場合、予測部30は、半導体素子10の寿命τ
1を目標寿命T
4より短いと評価し、目標寿命曲線L0からの予測された変動のずれより寿命τ
1を具体的に予測し、この予測結果を調整部12に送信する。最後に、調整部12は、受信した寿命の予測結果から、半導体装置100は定格より厳しい条件で使用されていると判断して、ゲート抵抗Rgの抵抗値を大きな値に変更する。それにより、ゲート電圧V
Gの変化速度を調整する、すなわちオーバーシュート時間を短くして、閾値電圧の変動を抑制することで半導体素子10を延命することができる。なお、残りの寿命が目標寿命T
4と現在の稼働時間T
1との差にほぼ等しくなるように、調整部12により、適当な抵抗値にゲート抵抗を変更してもよい。
【0046】
なお、予測部30は、予測した半導体素子10の寿命が目標寿命にほぼ等しい又は超えている場合、或いは測定部20から受信した累計のオーバーシュート時間の測定結果が目標寿命に相当するオーバーシュート時間にほぼ等しい又は超えている場合、半導体素子10に係るパラメータがアラートレベルに達したとして、アラート信号を出力端子19Oから外部システム等に出力してもよい。このとき、外部からの設定等により、調整部12は、予測部30による寿命予測に従ってゲート抵抗の抵抗値を変更しないで、高速スイッチング、高効率を優先して半導体装置100を稼働しつづけてもよい。
【0047】
また、例えば
図5に点P5を用いて示すように、予測された閾値電圧V
thの変動が目標寿命曲線L0より低い位置にある場合、予測部30は、半導体素子10の寿命τ
2を目標寿命T
4より長いと評価し、目標寿命曲線L0からの予測された変動のずれより寿命τ
2を具体的に予測し、この予測結果を調整部12に送信する。最後に、調整部12は、受信した寿命の予測結果から、半導体装置100は定格より緩い条件で使用されていると判断して、ゲート抵抗Rgの抵抗値を小さい値に変更する。それにより、ゲート電圧V
Gの立下り時間を短くして、スイッチング速度を上げるとともに効率を改善することができる。なお、許容される範囲で閾値電圧の変動を助長し、半導体素子10を寿命を短くする、例えば、残りの寿命が目標寿命T
4と現在の稼働時間T
2との差にほぼ等しくなるように、調整部12により、適当な抵抗値にゲート抵抗を変更してもよい。
【0048】
このように、半導体素子10のスイッチング速度、効率等、定格性能を可能な限り引き出しつつ半導体素子10の劣化を抑えて延命することができる。
【0049】
なお、予測部30は、半導体装置100の非稼働時に測定部20により半導体素子10の閾値電圧V
thを測定し、その結果を用いて半導体素子10の寿命を直接的に予測し、その結果に基づいて寿命を調整してもよい。寿命予測及び寿命調整の詳細は、先述の通りである。
【0050】
また、予測部30は、半導体装置100の非稼働時に測定部20により半導体素子10のオン電圧V
ONを測定し、その結果が許容範囲を超えた場合、半導体素子10に係るパラメータがアラートレベルに達したとして、アラート信号を出力端子19Oから外部システム等出力してもよい。
【0051】
図6は、半導体装置100の稼働時間に対する半導体素子10のオン電圧V
ONの変動の一例を示す。オン電圧V
ONは、半導体素子10のボディダイオード通電により生じる光によりその内部に欠陥が生じることで増大することが経験的に知られている。これは、ボディダオードとは、半導体素子の構造上内部に寄生して形成されるダイオードのことである。このボディダイオードに電流が流れ続けると、SiCウェハ、あるいはSiCエピタキシャル層、又はその両方に基底面転位を起点として積層欠陥が成長するためである。オン電圧V
ONは、稼働時間に対して不連続に増大する。詳細には、半導体装置100の実稼働開始後、稼働時間1(任意単位)程度で約1%増大し、稼働時間5から10の間にさらに約5%増大し、稼働時間10から35の間、ほぼ一定し、稼働時間35から40の間にさらに約10%増大する。オン抵抗V
ONの増大は、損失の増大をもたらす。そこで、オン電圧V
ONについて許容範囲を定め、測定結果がこれを超えた場合に予測部30によりアラート信号を出力することとする。
【0052】
半導体装置100は、ネットワーク220を介してモニタリング装置に接続し、そのモニタリング装置により半導体素子10の特性変動を監視してもよい。
【0053】
図7に、複数の半導体装置100を遠隔監視するメンテナンス装置200の構成を示す。メンテナンス装置200は、本実施形態に係る複数の半導体装置100及びモニタリング装置210を備える。複数の半導体装置100及びモニタリング装置210は、相互に通信可能にネットワーク220に接続されている。
【0054】
複数の半導体装置100は、複数の外部システム(不図示)にそれぞれ組み込まれている。複数の半導体装置100は、出力端子19Oを介してネットワーク220に接続し、予測部30による寿命予測の結果、測定部20による特性変動の指標となるパラメータの測定結果等をモニタリング装置210に送信する。
【0055】
モニタリング装置210は、コンピュータ、マイクロコントローラ等を含む情報処理装置であり、例えば監視用プログラムを実行することによりモニタリング機能を発現する。モニタリング装置210は、複数の半導体装置100から半導体素子10の寿命予測の結果、特性変動の指標となるパラメータの測定結果等を受信し、モニタに一括表示する。
【0056】
なお、モニタリング装置210は、複数の半導体装置100から受信した半導体素子10の寿命予測の結果、特性変動の指標となるパラメータの測定結果等に基づいて、寿命調整するためのゲート抵抗Rgの抵抗値の設定信号を生成し、複数の半導体装置100に送信してもよい。複数の半導体装置100は、モニタリング装置210から受信する設定信号に従って、調整部12によりゲート抵抗の抵抗値を変更する。
【0057】
なお、先述の半導体素子10の特性変動の指標となるパラメータを測定する測定部20及び測定部20による各種パラメータの測定結果を用いて半導体素子10の寿命を予測する予測部30を組み込んだ、半導体装置100と独立に構成されるメンテナンス装置を用いて、半導体装置100が備える半導体素子10のパラメータを測定し、その結果に基づいて半導体素子の寿命を予測し、特性変動を制御してもよい。
【0058】
図8は、変形例1に係る半導体装置110及びメンテナンス装置120の構成を示す。ここで、先述の半導体装置100における構成各部と同一又は対応する構成については同一の符号を付し、その詳細説明を省略することとする。
【0059】
半導体装置110は、半導体素子10及び調整部12を備える。半導体素子10及び調整部12は、外部からスイッチング信号を入力するためのスイッチング端子19G、電流を通電するためのドレイン端子19D及びソース端子19S、半導体素子10のゲートGからゲート電圧を外部に出力するための出力端子19O、並びに外部から設定信号を調整部12に入力するための入力端子19Iの間に接続されている。
【0060】
メンテナンス装置120は、半導体素子10を備える半導体装置110に着脱可能に接続して、これをメンテナンスするための装置であり、測定部20、予測部30、及び設定部40を備える。
【0061】
測定部20は、先述の半導体装置100が備えるそれと同様に構成されている。ただし、第1測定部21は、半導体装置110の出力端子19Oに接続され、これを介して半導体素子10のゲート電圧が入力される。また、第2測定部22は、半導体装置110のドレイン端子19Dに接続され、これを介して半導体素子10のドレイン電圧が入力される。
【0062】
予測部30は、先述の半導体装置100が備えるそれと同様に構成されている。ただし、半導体素子10の寿命の予測結果を設定部40に出力する。
【0063】
設定部40は、予測部30により予測された寿命が目標寿命よりも短い場合に、半導体素子10のゲート電圧の変化速度の設定値を変更する。ここで、設定値として、例えばゲート抵抗Rgの抵抗値を用いることができる。設定部40は、変更した設定値を入力端子19Iを介して半導体装置110の調整部12に送信する。それにより、調整部12は、ゲート抵抗Rgの抵抗値を設定値に変更する。ここで、調整部12が1つの抵抗素子と可変パルス電流源で構成されている場合は、設定値であるゲート抵抗Rgの値となるように、可変パルス電流源の電流値を変更し、ゲート電流を変更することで等価的にゲート抵抗Rgの抵抗値を設定値に変更する。
【0064】
なお、メンテナンス装置120は、ネットワークを介して半導体装置110に接続されることとしてもよい。
【0065】
図9に、変形例1に係るメンテナンス装置120を用いた半導体装置110のメンテナンス方法の手順を示す。
【0066】
ステップS1では、測定部20により、半導体素子10の特性変動の指標となるパラメータを測定する。パラメータとして、ゲート電圧のオーバーシュート時間及びその累計、閾値電圧及びその変動、オン電圧及びオン抵抗等を選択することができる。
【0067】
ステップS2では、予測部30により、測定部20により測定されたパラメータを用いて半導体素子10の寿命を予測する。例えば、予測部30は、ゲート電圧のオーバーシュート時間の累計より、半導体素子10の寿命を予測する。寿命予測の詳細は、先述の通りである。
【0068】
ステップS3では、設定部40により、半導体素子10のゲート電圧の変化速度の設定値を変更する。設定部40は、予測部30により予測された半導体素子10の寿命が予め設定された目標寿命より短い場合、設定値として、ゲート抵抗Rgの抵抗値を大きな値に変更する。それにより、調整部12によりゲート抵抗Rgが大きな設定値に変更され、オーバーシュート時間が短くなり、閾値電圧の変動が抑制されることで半導体素子10が延命される。
【0069】
なお、設定部40は、半導体素子10の寿命がおよそ目標寿命で尽きるように、設定値としてのゲート抵抗Rgの抵抗値を変更してもよい。また、予測部30により予測された半導体素子10の寿命が予め設定された目標寿命より長い場合、設定値としてのゲート抵抗Rgの抵抗値を小さい値に変更してもよい。それにより、調整部12によりゲート抵抗Rgが小さい設定値に変更され、ゲート電圧V
Gの立下り時間が短くなり、スイッチング速度が上げるとともに効率が改善される。または、可変パルス電流源の電流値を小さい値に変更し、ゲート電流を少なくすることで等価的にゲート抵抗Rgの抵抗値を小さい設定値に変更してもよい。
【0070】
なお、本実施形態の半導体装置100は、例えば、パワーコンディショナ(PCS)、インバータ、スマートグリッド等の電力装置である外部システムに組み込むことができる。
【0071】
図10は、変形例2に係る半導体装置111の回路構成を示す。半導体装置111は、半導体装置100と同様に、半導体素子10、調整部12、測定部20、及び予測部30を備える。半導体装置111の基本的な構成は先述の半導体装置100と同様であるため、半導体装置100と同様又は対応する構成については詳細説明を省略する。
【0072】
調整部12は、半導体素子10のゲートGに接続される抵抗素子の抵抗値を、これに流れるゲート電流を調整することで等価的に変更するユニットであり、1つの抵抗素子12R並びに2つの可変パルス電流源12T及び12Uを有する。
【0073】
抵抗素子12Rは、例えば0.01〜10Ωの範囲内で抵抗値を有する素子であり、一端が半導体素子10のゲートGに接続される。
【0074】
可変パルス電流源12T及び12Uは、予測部30から入力される予測結果により制御されて所定のゲート電流を通電させるユニットである。可変パルス電流源12Tの一端は高電位側VHに接続され、他端がスイッチング端子19Gに接続される。また、可変パルス電流源12Uの一端はスイッチング端子19Gに接続され、他端がソース端子19Sに接続される。それにより、可変パルス電流源12T及び12Uは、スイッチング端子19Gを間に挟み、高電位側VHとソース端子19S(すなわち低電位側VL)の間に並列される。
【0075】
調整部12は、可変パルス電流源12T又は12Uにより、所定のゲート電流を抵抗素子12Rに通電又は逆方向に通電させることで、等価的にゲート抵抗の抵抗値を変更可能とする。なお、ゲート抵抗の抵抗値と半導体素子10の性能との関係及び調性部12が果たす機能については前述したものと同様である。
【0076】
スイッチング素子をターンオンする際、ゲート電圧はターンオフ電圧からターンオン電圧となる。このとき可変パルス電流源12Uにパルス電流を通電させると、ゲートGに流れ込む電流が可変パルス電流源12Uの通電期間のみ小さくなるため、等価的にゲート抵抗が大きくなる。また、スイッチング素子をターンオフする際は、可変パルス電流源12Tにパルス電流を通電させることで、ゲートGから引き出される電流が通電期間のみ小さくなるため、等価的にゲート抵抗が大きくなる。ここでは、等価的にゲート抵抗を大きくするための動作を説明したが、ゲート抵抗を等価的に小さくする動作に関しては、動作させる可変パルス電流源を上記と逆にすることで実現可能である。
【0077】
なお、抵抗素子12Rを省略し、可変パルス電流源12T及び12Uのみで調整部12を構成してもよい。
【0078】
従って、変形例2においても、調整部12によりゲート抵抗の抵抗値を等価的に変更する。例えば、ゲート抵抗に通電するゲート電流を大きくし、より小さな抵抗値に等価的に変更することにより半導体素子10の効率を改善し、スイッチング速度を上げることができる。また、より小さな電流値に変更し、より大きな抵抗値に変更することにより半導体素子10の耐用時間を延ばす、すなわち延命することができる。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0080】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。