特許第6683526号(P6683526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683526
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ゲル状組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20200413BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20200413BHJP
   C08L 1/26 20060101ALI20200413BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20200413BHJP
   C08J 3/075 20060101ALI20200413BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20200413BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20200413BHJP
   A61L 9/04 20060101ALI20200413BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20200413BHJP
   A01M 29/12 20110101ALI20200413BHJP
【FI】
   B01J13/00 D
   C08L101/14
   C08L1/26
   C08L83/04
   C08J3/075CEP
   C08J3/075CFH
   C08K3/26
   C08K3/22
   A61L9/04
   A01M1/20 C
   A01M29/12
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-71799(P2016-71799)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-177057(P2017-177057A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田井治 淑美
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−507375(JP,A)
【文献】 特開2013−049641(JP,A)
【文献】 特開2006−131697(JP,A)
【文献】 特開2002−209988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
A61L 9/
A01N
C08L
C08K
C08J
A01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性高分子、低揮散性シリコーンオイルおよび極性溶媒を含有し、極性溶媒として、炭素数5以下の低級アルコール、または下記式(1)
【化1】
式中、nは1ないし3の自然数を示す
で示される芳香族アルコールを組成物中に50〜85質量%含有する揮散用ゲル状組成物。
【請求項2】
水溶性高分子の含有量が0.1〜30質量%である請求項1記載の揮散用ゲル状組成物。
【請求項3】
水溶性高分子が水溶性セルロースエーテルである請求項1記載または2に記載の揮散用ゲル状組成物。
【請求項4】
水溶性高分子がヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる1種以上である請求項1〜3の何れか1項に記載の揮散用ゲル状組成物。
【請求項5】
低揮散性シリコーンオイルの含有量が0.3〜5質量%である請求項1〜4の何れか1項に記載の揮散用ゲル状組成物。
【請求項6】
低揮散性シリコーンオイルが、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜5の何れか1項に記載の揮散用ゲル状組成物。
【請求項7】
極性溶媒として、さらに水を含有する請求項1〜6の何れか1項に記載の揮散用ゲル状組成物。
【請求項8】
炭素数5以下の低級アルコールがエタノールである請求項1〜の何れか1項に記載の揮散用ゲル状組成物。
【請求項9】
さらに、アルカリ剤を含有する請求項1〜の何れか1項に記載の揮散用ゲル状組成物。
【請求項10】
アルカリ剤が、セスキ炭酸ナトリウムまたは水酸化カリウムである請求項1〜の何れか1項に記載の揮散用ゲル状組成物。
【請求項11】
さらに、香料及び/又は防虫成分を含有する請求項1〜10の何れか1項に記載の揮散用ゲル状組成物。
【請求項12】
ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低揮散性シリコーンオイル、エタノール、水、並びに、香料及び/又は防虫成分を含有し、エタノールの含有量が50〜85質量%である揮散用ゲル状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状組成物に関し、更に詳細には、ゲルの収縮時において、容器からの離型性に優れ、ゲルが一塊となって収縮し、かつ、使用終点の視認性の高いゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水やアルコール又はこれらの混合液中に、香料や消臭成分などの有効成分を分散又は可溶化させ、ゲル化剤を用いてゲル化したゲル状組成物が知られている。そして、このゲル状組成物は、有効成分を少しずつ放出させる芳香剤、消臭剤、殺虫剤などのゲル状製剤に広く利用されている。
【0003】
通常、ゲル状組成物は、溶媒や香料等の揮散性物質の揮発に伴い、体積が減少して収縮するが、その際、容器の内壁に薄いゲルの残渣が付着し、容器からゲルが綺麗に剥がれにくいといった現象が生じていた。また、離型性の悪いゲルは、収縮時のゲルの形状もいびつであるため、美観に十分優れたものではなく、さらに、ゲルが一塊になって収縮しないので使用終了時の終点の視認性も不明瞭であった。
【0004】
そのため、ゲルの離型性を改善し、また、ゲルを一塊となって収縮させるために、特許文献1には、特定の共重合体にポリアルキル変性シリコーンを配合したゲル状組成物が公開されている。しかし、上記共重合体は、アルキルアクリルアミド系の特殊なポリマーであるため、製造や一般的な入手が困難であった。また、このゲル状組成物は、未重合のアクリルアミドモノマーがゲル内に残留する可能性もあるため、屋内や車内などで使用するゲル状製剤としては積極的に利用されるものではなかった。
【0005】
さらに、ゲルの離型性を良くするために、特許文献2には、ゲルを充填する容器の内壁に、予めシリコーンをコーティングする技術が公開されている。しかし、ゲルを容器に充填するたびに、予め容器にシリコーンをコーティングしなければならず、煩雑で手間や時間がかかるため、製造において問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−131697号公報
【特許文献2】特表2008−540066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、ゲルの収縮時において、容器からの離型性が良く、また、ゲルが一塊となって収縮し、美観に優れるとともに、使用終点の視認性もよい、安全性に優れたゲル状組成物を得るための技術を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、水溶性高分子、低揮散性シリコーンオイルおよび極性溶媒を用いて得られたゲル状組成物が、ゲルの収縮時において、ゲルが容器に付着しにくく、また、ゲルが一塊となって綺麗に収縮していくことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、水溶性高分子、低揮散性シリコーンオイルおよび極性溶媒を含有することを特徴とするゲル状組成物である。
【0010】
また、本発明は、上記ゲル状組成物を、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレンより選ばれる合成樹脂の容器に充填してなることを特徴とする芳香剤、消臭剤、殺虫剤、防虫剤又は殺菌剤である。
【0011】
さらに、本発明は、水溶性高分子、低揮散性シリコーンオイルおよびアルコールの混合物中に、1〜30℃の水を加えることを特徴とするゲル状組成物の製造方法である。
【0012】
また、さらに、本発明は、水溶性高分子とアルコールとの混合物中に、1〜30℃の水と低揮散性シリコーンオイルを含有するシリコーンエマルジョンとの混合物を加えることを特徴とするゲル状組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゲル状組成物は、ゲルが収縮する際、容器にゲルが付着しにくいため、離型性に優れたものである。また、本発明のゲル状組成物は、ゲルが一塊となって収縮するため、使用終点の視認性が良く、美観も十分優れたものである。さらに、本発明のゲル状組成物は、低揮散性シリコーンオイルを使用するため、安全性に優れたものである。
【0014】
従って、本発明のゲル状組成物は、消臭剤、殺虫剤、防虫剤、殺菌剤、芳香剤等として利用することができるものである。さらに、本発明のゲル状組成物は、冷蔵庫、冷凍庫、米びつ等の食料品を貯蔵している場所においても、食料品にシリコーンオイルが付着することなく安心して使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】aは、作成されたゲルの上端の位置、bは、ゲルをビーカーごと横倒しに倒して5分経過した後のゲル表面先端の位置である。
図2】発明品5における、3日目と7日目のゲルの収縮の様子である。
図3】発明品6における、3日目と7日目のゲルの収縮の様子である。
図4】発明品7における、3日目と7日目のゲルの収縮の様子である。
図5】発明品8における、3日目と7日目のゲルの収縮の様子である。
図6】発明品9における、3日目と7日目のゲルの収縮の様子である。
図7】比較品2における、3日目と7日目のゲルの収縮の様子である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書中において、ゲル状組成物は、アルコールや水などを含有する極性溶媒を利用した、ゲル状の外観を有するものを意味する。また、「ゲル状」とは、ゾルが流動性を失って固化した状態、または高い粘性を持って流動性を失い、その外観が一般にゲルといわれる状態を意味し、例えば、100mlビーカーに総量50gのゲルを作成し、ビーカーにおける作成後のゲル上端の位置から、そのゲルをビーカーごと横倒しに倒して5分経過した後のゲル表面先端の位置との距離が、0mm〜45mmであるものを意味する。
【0017】
本発明のゲル状組成物は、ゲル化剤としての水溶性高分子、低揮散性シリコーンオイル及び極性溶媒で構成されるものであり、必要により、芳香成分、消臭成分、殺虫・殺菌成分等の有効成分を含有するものである。
【0018】
本発明において用いられる水溶性高分子は、例えば、カラギーナン、寒天、アルギン酸、ゼラチン、グアーガム等の天然ポリマーや、ヒドロキシプロピル化グアーガム等のその誘導体、ジェランガム等の微生物由来多糖類、セルロース系である半合成ポリマー等が挙げられる。特に、セルロース系の高分子である水溶性セルロースエーテルを用いたゲルにおいては、通常ゲルの離型性が悪くなりやすいが、本発明により高い離型性向上効果を得ることができる。
【0019】
上記水溶性セルロースエーテルは、セルロースを苛性ソーダで処理後、塩化アルキル、酸化アルキレン等のエーテル化剤と反応させて得られる非イオン性の水溶性セルロースエーテルであり、セルロースの水酸基の水素原子の一部をアルキル基やヒドロキシアルキル基等で置換することにより、水素結合を消失させ、水溶性としたものである。
【0020】
また、上記水溶性セルロースエーテルの好ましい置換度、すなわちセルロースのグルコース環単位当たりに存在するアルコキシル基で置換された水酸基の平均個数は、好ましくは0.5〜2.5、さらに好ましくは0.8〜2.5の範囲である。また置換モル数、すなわちセルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシアルコキシ基の平均モル数は、好ましくは0.05〜3.0、更に好ましくは0.1〜2.8の範囲である。
【0021】
さらに、上記水溶性セルロースエーテルとしては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルC1−4アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのメチルセルロースなどが挙げられる。この中でも、ヒドロキシエチルセルロース(以下、「HEC」と略称する)とヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、「HPMC」と略称する)が好ましく、HECは、例えば、「HECダイセル」(ダイセルファインケム(株)製)などとして、また、HPMCは、例えば、「メトローズ」(信越化学工業(株)製)などとして市販されているので、これらをそのまま使用することもできる。
【0022】
上記水溶性高分子の含有量は、全組成に対して、好ましくは0.1〜30質量%(以下、単に%という)、より好ましくは1〜20%である。
【0023】
また、本発明において用いられる水溶性高分子を水に溶解させた際の好ましい水溶液の粘度は、2%水溶液として20〜100000mPa・sが好ましく、80〜100000mPa・sがより好ましい。なお、粘度は、25℃で、B型粘度計を用いて測定した値である。
【0024】
一方、本発明において用いられる低揮散性シリコーンオイルとは、20℃における蒸気圧が100Pa以下である低揮散性の性質を有するものである。従って、本発明で使用する低揮散性シリコーンオイルは蒸発しにくいため、たとえば食料品を貯蔵している場所で使用しても、食料品にシリコーンオイルが付着することがない安全性の高いものである。
【0025】
また、低揮散性シリコーンオイルは、20℃で液状、クリーム状、ペースト状等の流動性であるものが好ましく、オイルのまま、又は、オイルを予め乳化されたシリコーンエマルジョンの形態で使用してもよい。シリコーンエマルジョンは、低揮散性シリコーンオイルを粉末シリカにて増稠化させたシリコーンオイルコンパウンドを、ソルビタン脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤により水中で乳化分散させた、水性エマルジョンとして得ることができる。また、低揮散性シリコーンオイルの水性エマルジョンは、例えば、エマルジョン型消泡剤「KM−72」(信越シリコーン(株)製)などとして市販されているので、これをそのまま使用することもできる。
【0026】
さらに、低揮散性シリコーンオイルの含有量は、全組成に対して、好ましくは0.3〜5%、より好ましくは0.3〜3%である。
【0027】
上記低揮散性シリコーンオイルの種類としては、例えば、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、フェニル変性シリコーンなどの変性シリコーン、非反応性シリコーンであるメチルフェニルシリコーンや環状ジメチル等のストレートシリコーンが挙げられる。
【0028】
上記アルキル変性シリコーンとしては、例えば、カプリリルメチコン、セチルジメチコンなどが挙げられ、この中でもカプリリルメチコンが好ましい。
【0029】
上記ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、ポリグリセリル−3ジシロキサンジメチコン、PEG−12ジメチコン、PEG−11メチルエーテルジメチコンなどが挙げられ、この中でもポリグリセリル−3ジシロキサンジメチコンが好ましい。
【0030】
上記カルビノール変性シリコーンとしては、例えば、ビス(ヒドロキシエトキシプロピル)ジメチコンなどが挙げられる。
【0031】
上記フェニル変性シリコーンとしては、例えば、フェニルトリメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサンなどが挙げられ、この中でもフェニルトリメチコンが好ましい。
【0032】
上記メチルフェニルシリコーンとしては、例えば、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコンなどが挙げられ、この中でもジフェニルシロキシフェニルトリメチコンが好ましい。
【0033】
本発明で用いられる極性溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒および水などを用いることができ、この中でも、アルコール系溶媒として、炭素数が5以下の低級アルコール、または下記式(1)で示される芳香族アルコールが望ましい。
【0034】
【化1】
(式中、nは1ないし3の自然数を示す)
【0035】
具体的なアルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ペンタノール、フェノキシエタノール等のモノアルコールが挙げられ、この中でもエタノールが好ましい。
【0036】
本発明のゲル状組成物中におけるアルコールの量は、好ましくは50〜85%であり、60〜85%がより好ましく、60〜80%がさらに好ましい。
【0037】
本発明のゲル状組成物中における水の量は、好ましくは10〜30%であり、10〜25%がより好ましく、10〜20%がさらに好ましい。
【0038】
また、上記溶媒成分中に、アルカリ剤を加えてゲル化させることで、より流動性の低いゲル状組成物を得ることができる。アルカリ剤としては、例えば、重曹、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の無機水酸化物、アルカノールアミン、メチルアミン、エチルアミン等の有機アルカリ、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩を挙げることができ、この中でも、セスキ炭酸ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0039】
さらに、上記溶媒成分中に、芳香成分、消臭成分、殺虫・防虫成分、殺菌成分等の有効成分を加えてもよい。
【0040】
上記有効成分としては、特に制約はないが、例えば、香料、精油等の芳香成分、硫酸アルミニウム、塩化アンモニウム、ミョウバン、硫酸銅、硫化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、酸化チタン酸化亜鉛、フラボノイド化合物、カテキン、ポリフェノール、シクロデキストリン、ゼオライト、層状アルミノケイ酸亜鉛、活性炭、備長炭等の消臭成分、エンペントリン、トランスフルスリン、アレスリン、フェノトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳、2−フェノキシエタノール、唐辛子粉末、ゴボウ粉末、クミンアルデヒド、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等の殺虫・防虫・殺菌成分等が挙げられる。
【0041】
また、必要に応じて、界面活性剤等の乳化・分散成分、酸・アルカリ等のpH調整成分、合成色素、天然色素等の色素成分等を加えることもできる。
【0042】
本発明のゲル状組成物の製造は、従来公知の方法で製造することができる。水溶性高分子にセルロース系高分子を使用した場合の一つの好ましい製造方法としては、アルコール中に水溶性高分子及び低揮散性シリコーンオイルを加え分散させた後、特段加熱等をすることなく常温(25℃程度)で、1℃〜30℃、好ましくは、1℃〜20℃の水を加え攪拌して均一化することにより行われる。この方法においては、アルコール中に水溶性高分子及び低揮散性シリコーンオイルを加えた段階では、流動性が高い分散液であるが、水を加えることにより水溶性高分子は水に溶解し、組成物全体がゲル化する。また、もう一つの好ましい製造方法としては、アルコール中に水溶性高分子を加えて分散させた溶液に、1℃〜30℃、好ましくは、1℃〜20℃の水にシリコーンエマルジョンを分散させた水溶液を加えることにより、組成物全体がゲル化する。
【0043】
また、本発明のゲル状組成物を容器に充填して利用する場合、容器の材質としては、ゲル状組成物の収縮を目視できる透明又は半透明であることが好ましく、また、容器の形状としては、開口部やスリット部を有して内部を視認できるものであることが好ましい。
【0044】
上記容器の素材としては、合成樹脂製、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンなどの容器を使用するのが好ましく、この中でも、特に耐薬品性や耐衝撃性に優れているポリプロピレンが好ましい。
【0045】
斯くして得られる本発明のゲル状組成物は、ゲルの収縮時において、離型性が良く、またゲルが一塊で収縮するため、美観にも優れ、さらに、使用終点の視認性も明確である。
【0046】
また、本発明のゲル状組成物は、低揮散性シリコーンオイルを使用しているため、たとえば、冷蔵庫、冷凍庫、米びつ等の食料品を貯蔵している場所で使用しても、食料品にシリコーンオイルが付着することなく安全に使用することができるものである。
【0047】
上記のような性質から、本発明のゲル状組成物を上記容器に充填して消臭剤、殺虫剤、防虫剤、殺菌剤、芳香剤等として有利に利用することができる。
【実施例】
【0048】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら
制約されるものではない。
【0049】
実 施 例 1
ゲル状組成物の調製および物性評価(1):
表1に示す組成に従い、室温下で下記の方法によりゲル状組成物を調製した。得られたゲル状組成物について、下記評価基準によりその物性を評価した。結果を併せて表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
[ 製 法 1]
室温下、プラスチック製の100ml用ビーカー中に、表1に記載のセスキ炭酸ナトリウムおよびイオン交換水以外の成分を加え、懸濁液を得た。また、室温のイオン交換水にセスキ炭酸ナトリウムを溶解させ、セスキ炭酸ナトリウム水溶液を得た。上記懸濁液をスターラーで攪拌しつつ、セスキ炭酸ナトリウム水溶液を加えてゲル化させ、ゲル状組成物を得た。
【0052】
ゲル状組成物の物性評価:
上記ゲル状組成物について、下記評価基準によりその物性を評価した。
【0053】
[ 物性評価 ]
(1)離型性
揮散に伴いゲルが収縮する途中において、ビーカー壁面にゲルが残らず離型するか下記の基準で評価した。
○:ビーカー壁面からゲルが残らず離型した
×:ビーカー壁面にゲルの一部が残った
【0054】
(2)残渣形状
揮散終点において、ゲルの残渣形状を下記の基準で評価した。
○:残渣は、一塊となり収縮した
×:残渣は、いびつな形状であり、また、ビーカー壁面に残渣の一部が残った
【0055】
実 施 例 2
ゲル状組成物の調製および物性評価(2):
表2に示す組成に従い、室温下で下記の方法によりゲル状組成物を調製した。得られたゲル状組成物について、実施例1と同様にその物性を評価した。結果を併せて表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
[ 製 法 2]
室温下、プラスチック製の100ml用ビーカー中に、表2に記載のシリコーンエマルジョン、セスキ炭酸ナトリウムおよびイオン交換水以外の成分を加え、懸濁液を得た(懸濁液1)。また、室温のイオン交換水にセスキ炭酸ナトリウムを溶解させ、セスキ炭酸ナトリウム水溶液を得た。このセスキ炭酸ナトリウム水溶液にシリコーンエマルジョンを分散させ懸濁液を得た(懸濁液2)。上記懸濁液1をスターラーで攪拌しつつ、懸濁液2を加えてゲル化させ、ゲル状組成物を得た。
【0058】
実 施 例 3
ゲル状組成物の調製および物性評価(3):
表3に示す組成に従い、発明品5〜9及び比較品2については実施例1と同様の方法により、また、発明品10については実施例2と同様の方法により、ゲル状組成物を調製した。得られたゲル状組成物について、上記同様にその物性を評価した。結果を併せて表3に示す。さらに、発明品5〜9および比較品2における、ゲル調整後3日目と7日目のゲルの収縮の様子を図2〜7に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
上記実施例1〜3の結果から明らかなように、低揮散性シリコーンオイルを用いることにより、ゲルは揮散に伴ってビーカー壁面に残らず離型し、揮散終点において一塊となって収縮し終点が明確であった。
【0061】
実 施 例 4
製 剤 例:
表4の組成により、ゲル状防虫剤およびゲル状脱臭剤をポリプロピレン製の容器内に調製した。いずれも均一な攪拌が可能であり、良好なゲル形成性を示すとともに、溶媒の揮散に伴いゲルがビーカー壁面に残らず離型し、一塊となって収縮することで使用終点が明確であり、利用価値の高い製剤を得ることができた。
【0062】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のゲル状組成物は、ゲルが収縮する際、容器にゲルが付着しにくく、離型性に優れたものである。また、ゲルが一塊となって収縮するため、使用終点が明確であり、美観も十分優れたものである。さらに、本発明のゲル状組成物は、低揮散性シリコーンオイルを使用するため、安全性に優れたものである。
【0064】
従って、発明のゲル状組成物は、消臭剤、殺虫・防虫剤、殺菌剤、芳香剤等に利用することができ、また、冷蔵庫、冷凍庫、米びつ等の食料品を貯蔵している場所においても食料品にシリコーンオイルが付着することがなく、安心して使用することができるものである。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7