特許第6683534号(P6683534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6683534トリムカバー用表皮材の製造方法及び製造装置並びに製造用治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683534
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】トリムカバー用表皮材の製造方法及び製造装置並びに製造用治具
(51)【国際特許分類】
   A47C 31/02 20060101AFI20200413BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20200413BHJP
   D05B 15/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   A47C31/02 J
   B60N2/58
   D05B15/00
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-88331(P2016-88331)
(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-196050(P2017-196050A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】関野 博
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 紀雄
(72)【発明者】
【氏名】菊池 隆洋
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−99118(JP,A)
【文献】 特開2013−162957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00−97/12
B60N 2/00− 2/90
A47C27/00−27/22
A47C31/00−31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンにて多数の貫通孔が形成された表材と、前記表材に積層されたワディング材とを含み、前記表材及び前記ワディング材を合せ縫うステッチが貫通孔パターン間の隙間部分に形成されたトリムカバー用表皮材の製造方法であって、
前記表材の外周部を保持可能な第1枠と、前記第1枠に保持された前記表材に前記ワディング材を重ね合わせて前記ワディング材の外周部を保持可能な第2枠とを有する治具を用い、前記治具の第1枠によって前記表材の外周部を保持し、前記治具によって保持された前記表材に前記貫通孔を形成し、
前記表材が前記治具の第1枠によって保持された状態を保って前記治具の第2枠によって前記ワディング材の外周部を保持し、前記治具によって重ね合わされて保持された前記表材及び前記ワディング材に前記ステッチを形成するトリムカバー用表皮材の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のトリムカバー用表皮材の製造方法であって、
前記表材に前記貫通孔を形成する孔開け機に対し、前記表材を保持している前記治具によって前記表材を位置決めし、
前記表材及び前記ワディング材に前記ステッチを形成する縫製機に対し、前記表材及び前記ワディング材を保持している前記治具によって前記表材を位置決めするトリムカバー用表皮材の製造方法。
【請求項3】
所定のパターンにて多数の貫通孔が形成された表材と、前記表材に積層されたワディング材とを含み、前記表材及び前記ワディング材を合せ縫うステッチが貫通孔パターン間の隙間部分に形成されたトリムカバー用表皮材の製造装置であって、
製造ライン上に順に設置された孔開け機及び縫製機と、
前記表材及び前記ワディング材を保持する治具と、
を備え、
前記治具は、前記表材の外周部を保持可能な第1枠と、前記第1枠に保持された前記表材に前記ワディング材を重ね合わせて前記ワディング材の外周部を保持可能な第2枠と、を有し、
前記孔開け機は、前記治具が設置される設置部を有し、前記設置部に設置された前記治具に保持されている前記表材に前記貫通孔を形成し、
前記縫製機は、前記治具が設置される設置部を有し、前記設置部に設置された前記治具に保持されている前記表材及び前記ワディング材に前記ステッチを形成するトリムカバー用表皮材の製造装置。
【請求項4】
請求項3記載のトリムカバー用表皮材の製造装置であって、
前記治具と、前記孔開け機及び前記縫製機それぞれの前記設置部とに、互いに係合する係合部が設けられており、
前記治具に保持された前記表材及び前記ワディング材は、前記係合部同士が係合することによって前記孔開け機及び前記縫製機に対して位置決めされるトリムカバー用表皮材の製造装置。
【請求項5】
所定のパターンにて多数の貫通孔が形成された表材と、前記表材に積層されたワディング材とを含み、前記表材及び前記ワディング材を合せ縫うステッチが貫通孔パターン間の隙間部分に形成されたトリムカバー用表皮材の製造用治具であって、
前記表材の外周部を保持可能な第1枠と、
前記第1枠に保持された前記表材に前記ワディング材を重ね合わせて前記ワディング材の外周部を保持可能な第2枠と、
を有するトリムカバー用表皮材の製造用治具。
【請求項6】
請求項5記載のトリムカバー用表皮材の製造用治具であって、
前記貫通孔を形成する孔開け機、及び前記ステッチを形成する縫製機のそれぞれと係合し、前記第1枠に保持した前記表材及び前記第2枠に保持した前記ワディング材を前記孔開け機及び前記縫製機に対して位置決めする係合部をさらに有するトリムカバー用表皮材の製造用治具。
【請求項7】
請求項5又は6記載のトリムカバー用表皮材の製造用治具であって、
前記第1枠と前記第2枠とは、開閉可能に連結されているトリムカバー用表皮材の製造用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリムカバー用表皮材の製造方法及び製造装置並びに製造用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、典型的には、クッションパッドと、クッションパッドを覆うトリムカバーとを備え、トリムカバーは複数の表皮材を縫製して製造されている。表皮材の一例として皮革(天然皮革、合成皮革)が用いられており、通気性や意匠性を高める観点から、多数の貫通孔が所定のパターンにて皮革に形成される場合がある。さらに、シートの意匠性を高める観点から、ステッチが表皮材に形成される場合があり、ステッチは、表皮材の貫通孔を避け、貫通孔パターン間の隙間部分に形成される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたトリムカバー用表皮材は、多数の貫通孔が形成された皮革を表材とし、スラブウレタン等の発泡樹脂からなるワディング材が皮革に積層されて構成され、皮革とワディング材は接着されており、皮革の通気性を確保するため、皮革は貫通孔形成箇所を除いた外周部にてワディング材と接着されている。そして、表皮材の貫通孔パターン間の隙間部分にステッチが形成されている。
【0004】
また、表皮材のステッチは、典型的にはプログラムに従って駆動されるミシンを用いて形成される。この種のミシンを用いた自動縫製では、表皮材等の被縫製物は、例えば枠状の治具によって外周部を保持されて弛みが除かれた状態でミシンに設置される(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−162957号公報
【特許文献2】特公平7−38907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された表皮材は、予め貫通孔が形成された皮革にワディング材が積層されて構成されるが、例えば予め貫通孔が形成された皮革が外部から調達される場合に、皮革に貫通孔が形成されてから表皮材にステッチが形成されるまでに比較的長い時間が経過することになる。
【0007】
皮革に貫通孔が形成されてからの経過時間が長くなると、皮革が温度及び湿度の影響を受けて変形し、皮革の変形に起因して貫通孔パターンに狂いが発生する場合がある。貫通孔パターンに狂いが発生すると、自動縫製によって表皮材に形成されるステッチと貫通孔パターンとの位置ずれが発生して意匠性が損なわれる虞がある。
【0008】
また、特許文献1に記載された表皮材では、皮革は貫通孔形成箇所を除いた外周部にてワディング材と接着されるが、自動縫製によってステッチが形成される際に、表皮材の外周部は治具によって保持される。このため、皮革とワディング材とが接着され、その後に皮革とワディング材とが接着されてなる表皮材が治具にセットされることとなるが、治具に対する表皮材の位置決めに誤差が生じる可能性があり、皮革が変形している場合に表皮材の位置決めは一層困難となる。表皮材の位置決めに誤差が生じると、やはりステッチと貫通孔パターンとの位置ずれが発生して意匠性が損なわれる虞がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、ステッチと貫通孔パターンとの位置ずれを抑制することができるトリムカバー用表皮材の製造方法及び製造装置並びに製造用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様のトリムカバー用表皮材の製造方法は、所定のパターンにて多数の貫通孔が形成された表材と、前記表材に積層されたワディング材とを含み、前記表材及び前記ワディング材を合せ縫うステッチが貫通孔パターン間の隙間部分に形成されたトリムカバー用表皮材の製造方法であって、前記表材の外周部を保持可能な第1枠と、前記第1枠に保持された前記表材に前記ワディング材を重ね合わせて前記ワディング材の外周部を保持可能な第2枠とを有する治具を用い、前記治具の第1枠によって前記表材の外周部を保持し、前記治具によって保持された前記表材に前記貫通孔を形成し、前記表材が前記治具の第1枠によって保持された状態を保って前記治具の第2枠によって前記ワディング材の外周部を保持し、前記治具によって重ね合わされて保持された前記表材及び前記ワディング材に前記ステッチを形成する。
【0011】
また、本発明の一態様のトリムカバー用表皮材の製造装置は、所定のパターンにて多数の貫通孔が形成された表材と、前記表材に積層されたワディング材とを含み、前記表材及び前記ワディング材を合せ縫うステッチが貫通孔パターン間の隙間部分に形成されたトリムカバー用表皮材の製造装置であって、製造ライン上に順に設置された孔開け機及び縫製機と、前記表材及び前記ワディング材を保持する治具と、を備え、前記治具は、前記表材の外周部を保持可能な第1枠と、前記第1枠に保持された前記表材に前記ワディング材を重ね合わせて前記ワディング材の外周部を保持可能な第2枠と、を有し、前記孔開け機は、前記治具が設置される設置部を有し、前記設置部に設置された前記治具に保持されている前記表材に前記貫通孔を形成し、前記縫製機は、前記治具が設置される設置部を有し、前記設置部に設置された前記治具に保持されている前記表材及び前記ワディング材に前記ステッチを形成する。
【0012】
また、本発明の一態様のトリムカバー用表皮材の製造用治具は、所定のパターンにて多数の貫通孔が形成された表材と、前記表材に積層されたワディング材とを含み、前記表材及び前記ワディング材を合せ縫うステッチが貫通孔パターン間の隙間部分に形成されたトリムカバー用表皮材の製造用治具であって、前記表材の外周部を保持可能な第1枠と、前記第1枠に保持された前記表材に前記ワディング材を重ね合わせて前記ワディング材の外周部を保持可能な第2枠と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ステッチと貫通孔パターンとの位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態を説明するための、車両用シートの一例の斜視図である。
図2図1の表皮材の断面図である。
図3図1の表皮材の製造装置の模式図である。
図4図1の表皮材の製造用治具の斜視図である。
図5図4の製造用治具の開いた状態の斜視図である。
図6A図1の表皮材の製造工程を説明する模式図である。
図6B図1の表皮材の製造工程を説明する模式図である。
図6C図1の表皮材の製造工程を説明する模式図である。
図6D図1の表皮材の製造工程を説明する模式図である。
図6E図1の表皮材の製造工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、車両用シートの一例を示す。
【0016】
図1に示す車両用シート1は、座面部分を構成するシートクッション2と、背もたれ部分を構成するシートバック3と、シートに着席した乗員の頭部を支持するヘッドレスト4とを備える。シートクッション2及びシートバック3並びにヘッドレスト4は、例えばウレタンフォームなどの発泡材からなるクッションパッド、及びクッションパッドを支持するフレームをそれぞれ有する。
【0017】
シートクッション2のクッションパッド及びシートバック3のクッションパッドは、トリムカバー5によって一体に覆われており、ヘッドレスト4のクッションパッドもまた、トリムカバー5とは別のトリムカバーによって覆われている。
【0018】
なお、シートクッション2のクッションパッド及びシートバック3のクッションパッドは、個別のトリムカバーによってそれぞれ覆われていてもよく、また、ヘッドレスト4が固定式のヘッドレストであってシートバック3と一体に構成される場合などには、ヘッドレスト4のクッションパッドは、一つのトリムカバーによって、シートバック3のクッションパッドと一体に覆われ、又はシートクッション2のクッションパッド及びシートバック3のクッションパッドと一体に覆われていてもよい。
【0019】
トリムカバー5は複数の表皮材が縫製接ぎ合わされてなり、トリムカバー5を形成する複数の表皮材のうち、例えばシートバック3の前面の幅方向中央部分を覆っている表皮材6、及びシートクッション2の座面の幅方向中央部を覆っている表皮材7は、所定のパターンにて形成された多数の貫通孔8と、貫通孔パターン間の隙間部分に形成されたステッチ9とを有する。図示の例では、四つの貫通孔8を一組として一組の貫通孔8によって四角形が形成されるパターンにて多数の貫通孔8が形成されており、隣り合う四角形の隙間をぬう網目状にステッチ9が形成されている。
【0020】
なお、貫通孔8及びステッチ9のパターンは図示の例に限られず、また、シートクッション2及びシートバック3の他の部位を覆う表皮材に貫通孔8及びステッチ9が設けられていてもよい。
【0021】
図2は、表皮材6の構成を示す。
【0022】
表皮材6は、表材10と、表材10に積層されたワディング材11とで構成されている。貫通孔8は表材10にのみ形成されている。ステッチ9は表材10及びワディング材11に跨って形成され、表材10及びワディング材11はステッチ9によって一体に縫い合わされている。
【0023】
表材10は、貫通孔8の形成によっても綻びが生じない材料であることが好ましく、例えば皮革(天然皮革、合成皮革)又は不織布が好適である。ワディング材11は、クッション性を有し、例えば軟質ウレタンフォーム等の樹脂発泡体が好適である。
【0024】
なお、表皮材6の補強等を目的として、ワディング材11にさらに裏材が積層される場合もあり、この場合に、表材10及びワディング材11並びに裏材がステッチ9によって一体に縫い合わされる。裏材には、目的に応じ、布帛(織物、編物、不織布)や樹脂フィルムなどの適宜な材料が用いられる。
【0025】
表皮材7は表皮材6と同様に構成される。
【0026】
図3は、表皮材6,7の製造装置の構成を示す。
【0027】
表皮材6,7の製造装置100は、製造ライン上に順に設置された孔開け機110及び縫製機120と、治具130と、を備える。治具130は、表材10及びワディング材11を保持可能に構成されており、孔開け機110から縫製機120に移動される。治具130の移動は、例えば作業者によって行われてもよいし、搬送機によって行われてもよい。
【0028】
孔開け機110は、治具130が設置される設置部111と、貫通孔形成用のパンチが装着されたヘッド112と、設置部111及びヘッド112を支持する基台113とを有し、設置部111は、治具130が載せられる平坦なテーブル114と、テーブル114上で治具130をX方向及びY方向に移動させるスライダ115とを有する。スライダ115は、表材10に形成される貫通孔8のパターンに対応したプログラムに従って駆動される。
【0029】
縫製機120は、治具130が設置される平板状の設置部121と、ステッチ形成用のミシン針装着されたヘッド122と、設置部121及びヘッド122を支持する基台123とを有し、設置部121は、治具130が載せられる平坦なテーブル124と、テーブル124上で治具130をX方向及びY方向に移動させるスライダ125とを有する。スライダ125は、表材10及びワディング材11に跨って形成されるステッチ9のパターンに対応したプログラムに従って駆動される。
【0030】
治具130と、孔開け機110のスライダ115及び縫製機120のスライダ125とには、孔開け機110のテーブル114上で治具130をヘッド112に対して位置決めし、また縫製機120のテーブル124上で治具130をヘッド122に対して位置決めするための係合部がそれぞれ設けられている。
【0031】
図示の例では、治具130は略矩形の枠状に形成されており、スライダ115及びスライダ125は治具130の四辺のうち一辺の外周部に沿うバー状にそれぞれ形成されている。そして、治具130の係合部は、一辺の外周部に間隔をあけて配置され、略U字状の係合溝がそれぞれ形成された一対のチャック136によって構成され、スライダ115の係合部は一対のチャック136それぞれの係合溝に嵌入して保持される一対の係合ピン116によって構成され、スライダ125の係合部は一対のチャック136それぞれの係合溝に嵌入して保持される一対の係合ピン126によって構成されている。
【0032】
治具130及び治具130に保持された表材10が孔開け機110のテーブル114上でヘッド112に対して位置決めされた状態で、スライダ115が駆動されることによってヘッド112が治具130に対して相対的に移動され、貫通孔8が所定のパターンにて表材10に形成される。
【0033】
また、治具130及び治具130に保持された表材10及びワディング材11が縫製機120のテーブル124上でヘッド122に対して位置決めされた状態で、スライダ125が駆動されることによってヘッド122が治具130に対して相対的に移動され、ステッチ9が所定のパターンにて表材10及びワディング材11に形成される。
【0034】
図4及び図5は、治具130の詳細な構成を示す。
【0035】
治具130は、表材10を保持する略矩形の第1枠131と、ワディング材11を保持する略矩形の第2枠132とを有する。第1枠131は第2枠132の内側に配置されており、第1枠131と第2枠132とは一対のヒンジ135を介して開閉可能に連結されている。
【0036】
第1枠131の四辺には開閉可能なクランプ133がそれぞれ設けられており、第1枠131は、第1枠131のフレームと四辺のクランプ133との間で表材10の外周部を挟持して表材10を保持する。
【0037】
同様に、第2枠132の四辺には開閉可能なクランプ134がそれぞれ設けられており、第2枠132は、第2枠132のフレームと四辺のクランプ134との間でワディング材11の外周部を挟持してワディング材11を保持する。
【0038】
以上の構成によれば、表材10を保持した第1枠131を第2枠132に対して回動させて第1枠131と第2枠132とを開くことにより、表材10を第1枠131から取り外すことなく、ワディング材11を第2枠132に保持させることができ、その後に第1枠131と第2枠132とを再び閉じることにより、表材10とワディング材11とを重ね合わせることができる。
【0039】
図6Aから図6Eは、製造装置100を用いた表皮材6,7の製造工程を示す。
【0040】
まず、図6Aに示すように、表材10のみを治具130の第1枠131によって保持する。そして、図6Bに示すように、表材10のみを第1枠131によって保持した治具130を図3に示した製造装置100の孔開け機110に設置し、表材10に所定のパターンにて多数の貫通孔8を形成する。
【0041】
次に、図6Cに示すように、表材10を保持した第1枠131を第2枠132に対して回動させて第1枠131と第2枠132とを開き、ワディング材11を第2枠132によって保持する。そして、図6Dに示すように、表材10を保持した第1枠131とワディング材11を保持した第2枠132とを再び閉じて表材10とワディング材11とを重ね合わせる。
【0042】
そして、図6Eに示すように、表材10及びワディング材11を保持した治具130を図3に示した製造装置100の縫製機120に設置し、表材10及びワディング材11に、表材10及びワディング材11を合せ縫うステッチ9を貫通孔パターン間の隙間部分に形成する。
【0043】
以上の表皮材6,7の製造方法によれば、治具130に保持した表材10に貫通孔8を形成した後、表材10を治具130から取り外すことなくワディング材11を治具130に保持し、そして治具130に保持した表材10及びワディング材11にステッチ9を形成しており、貫通孔8の形成からステッチ9の形成までの間、一貫して表材10を治具130によって保持し続けるので、表材10の位置決め誤差を低減でき、ステッチ9と貫通孔パターンとの位置ずれを抑制することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 車両用シート
2 シートクッション
3 シートバック
4 ヘッドレスト
5 トリムカバー
6 表皮材
7 表皮材
8 貫通孔
9 ステッチ
10 表材
11 ワディング材
100 製造装置
110 孔開け機
111 設置部
112 ヘッド
113 基台
114 テーブル
115 スライダ
116 係合ピン
120 縫製機
121 設置部
122 ヘッド
123 基台
124 テーブル
125 スライダ
126 係合ピン
130 治具
131 第1枠
132 第2枠
133 クランプ
134 クランプ
135 ヒンジ
136 チャック
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E