【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の従来の光結合方式の説明から明らかなように、現在のところ、第1に、必要な全ての追加的な処理が(例えば、シリコン・フォトニクス・チップに対して適切な)CMOS互換であり、第2に、当該結合の効率が広帯域波長帯にわたって高い(即ち、光結合損失が低い)ように光結合が実現されていないことが課題である。
【0017】
これらの欠点に鑑み、本発明の目的は従来の光結合方式を改善することである。本発明は特に、低光損失の光結合のための構造を提供することを目的とする。当該構造はまた、CMOS処理と互換である。
【0018】
本発明の上述の目的は、添付の独立請求項で提供される解決策により実現される。本発明の有利な実装はさらに従属請求項で定義される。
【0019】
特に、本発明は、新規な低損失光結合方式を実現するための、導波管構造、当該導波管構造を含むチップ、および当該導波管構造の製造方法を提供する。当該結合方式は、具体的にはアクティブ装置をSiN PICに転写印刷またはフリップ・チップ接着するのに適している。この目的のため、本発明では導波管構造を実現する。当該導波管構造により、クラッディングで被覆された第1の導波管から第2の導波管、特に表面導波管へ光を伝送すること、特に、光を断熱的に伝送することができる。このように、全ての必要な処理をCMOS互換としつつ、チップ内での、または、チップからチップへの光断熱結合を実現することができる。
【0020】
本発明の第1の態様では、光結合のための導波管構造であって、第1の導波管より低い屈折率のクラッディングに組み込んだ第1の導波管と、当該クラッディングより高い屈折率を有し第1の導波管から離れている第2の導波管と、少なくとも一部が第1の導波管と第2の導波管の間で配置された中間導波管とを備え、第1の導波管と第2の導波管はそれぞれ、当該中間導波管へおよび/または当該中間導波管から光を結合するためのテーパ・エンドを含む、導波管構造を提供する。
【0021】
第1の態様の導波管構造の3つの導波管により、光を、特に断熱的に超低結合損失で、第1の導波管から第2の導波管に伝送することができる。当該結合損失と整合許容値は、正しく設計された断熱性テーパを使用すると1dB未満である。かかる性能は従来の端結合、グレーティング結合器または鏡では実現できない。
【0022】
第1の態様の導波管構造により、光を例えば、チップ内部から当該チップの表面に伝送することができる。換言すれば、光をチップの表面にもってくることができる。これにより、より効率的な光チップ間結合が、特に本質的に平面のウェハ上で可能となる。あるいは、或るチップから別のチップに超低光結合損失で光を直接伝送することができる。
【0023】
第1の態様の導波管構造を光チップ間結合に使用したとき、第1のチップ上の領域の大部分は、取付けた第2のチップの下にあり、回路を集積するために依然として使用することができる。なぜならば、一般的に、機械的安定性の理由で、当該2つのチップの取付け領域は光結合に実際に使用される領域より大幅に大きいからである。
【0024】
実際、第1の態様の導波管構造により、光を、500μm未満の長さにわたって第1の導波管から第2の導波管に効率的に伝送することができる。それにより、第1の導波管および第2の導波管が、互いに1方向に少なくとも実質的に平行に延伸し、第1の導波管のテーパ・エンドが第2の導波管のテーパ・エンドと当該延伸方向で重なり合うことが好ましい。より好ましくは、第1の導波管のテーパ・エンドは、当該延伸方向で第2の導波管のテーパ・エンドと、大よそ500μm以下だけ、さらにより好ましくは大よそ400μm以下だけ、最も好ましくは大よそ300μm以下だけ重なり合う。
【0025】
第1の態様の導波管構造を製造するのに必要な全てのプロセスを、CMOS処理および鋳造と、例えばそれぞれSiN導波管および二酸化ケイ素クラッディング(SiO2)が使用されるときに、互換とすることができる。当該処理により、追加の処理ステップなしにチップ・オン・ボードの高帯域ファイバ結合方式に使用される導波管構造を製造することができる。
【0026】
第1の態様の導波管構造の第1の実装形態では、中間導波管はクラッディングの一部によってまたは当該クラッディングの一部の中で形成される。
【0027】
当該中間導波管を構成するために第1の導波管のクラッディングを用いることにより、即ち、当該クラッディングを用いて光を第1の導波管から第2の導波管に伝送することによって、第1の態様の導波管構造を高速に、CMOS互換で、少ない必要な材料で、処理することができる。さらに、よりコンパクトな導波管構造を実現することができる。
【0028】
第1の態様自体に従う導波管構造または第1の態様の第1の実装形態に従う導波管構造の第2の実装形態では、当該中間導波管は片持ち梁風の構造を有するクラッディングの一部により形成される。
【0029】
当該片持ち梁風の構造を、クラッディングが第1の導波管を囲む水平距離を限定することで、少なくとも専用結合領域で形成することができる。当該専用結合領域は導波管構造内の領域であり、当該領域は2つの先細りした導波管の端を含み、光は実際には、第1の導波管から第2の導波管に使用中に伝送される。さらに、基板が、当該クラッディングから当該基板への光漏洩を防止するために、当該専用結合領域において除去されている。
【0030】
当該片持ち梁風の構造により、当該2つの導波管の間の低損失断熱結合を良好に実現することができる。
【0031】
第1の態様の第2の実装形態に従う導波管構造の第3の実装形態では、第1の導波管のテーパ・エンドは当該片持ち梁風の構造に組み込まれている。
【0032】
結果として、光を非常に低い損失で中間導波管に断熱的に結合することができる。
【0033】
第1の態様の第2の実装形態または第3の実装形態に従う導波管構造の第4の実装形態では、当該片持ち梁風の構造の少なくとも一部は第1の導波管と第2の導波管のテーパ・エンドの間にそれぞれ配置され、当該クラッディングより低い屈折率の材料、好ましくはポリマ材料に組み込まれている。
【0034】
当該ポリマ材料は、例えば、片持ち梁風の構造の下に提供され、除去された基板を置換え、それにより、当該導波管構造を形成できる基板への光損失が回避される。
【0035】
第1の態様自体に従う導波管構造または第1の態様の第1の実装形態に従う導波管構造の第5の実装形態では、中間導波管はクラッディング内で充填トレンチにより形成され、トレンチ充填材料は、当該クラッディングよりは高い屈折率を有するが、第1の導波管および第2の導波管よりは低い屈折率を有する。
【0036】
当該アプローチでは、クラッディングの下に低屈折率材料を提供して基板への光損失を回避する必要性を回避する。当該クラッディングの屈折率はトレンチ充填材料より低いはずであるので、当該基板への光損失が本質的に回避される。
【0037】
第1の態様の第5の実装形態に従う導波管構造の第6の実装形態では、当該クラッディングは下方クラッディング層と上方クラッディング層を含み、当該クラッディング層は第1の導波管を挟み、充填トレンチは完全に当該上方クラッディング層内で提供され、それぞれ第1の導波管と第2の導波管のテーパ・エンドの間に配置される。
【0038】
したがって、当該上方クラッディング層のみを当該トレンチで構成するだけでよく、その結果、処理が高速になり生産量が多くなる。
【0039】
第1の態様自体に従う導波管構造または第1の態様の以前の実装形態の何れかに従う導波管構造の第7の実装形態では、第2の導波管および/または第1の導波管は1.8以上の屈折率を有し、クラッディングは1.5以下の屈折率を有する。
【0040】
その結果、少なくとも第1の導波管が、しかし好ましくは第2の導波管も、中程度または高程度の屈折率コントラストの導波管であり、即ち、導波管とクラッディングの間の高屈折率コントラストを有する。
【0041】
第1の態様自体に従う導波管構造または第1の態様の以前の実装形態の何れかに従う導波管構造の第8の実装形態では、第1の導波管および第2の導波管のテーパ・エンドは、大よそ200乃至800μmの長さにわたって大よそ0.4乃至1μmの幅から大よそ0.1乃至0.2μmの幅に先細りする。
【0042】
かかるテーパ・エンドにより、特に低光結合損失の断熱結合が可能となる。
【0043】
第1の態様自体に従う導波管構造または第1の態様の以前の実装形態の何れかに従う導波管構造の第9の実装形態では、中間導波管は大よそ2μm乃至4μmの幅を有し、かつ/または第1の導波管および第2の導波管はそれぞれ大よそ0.2乃至1μmの幅および大よそ0.05乃至0.4μmの厚さを有し、かつ/または第1の導波管と第2の導波管の間の距離は大よそ2乃至4μm、好ましくは大よそ3μmである。
【0044】
かかる導波管構造により、良好な光送信性能が可能となり、低光損失での導波管の間の光結合が可能となる。
【0045】
第1の態様自体に従う導波管構造または第1の態様の以前の実装形態の何れかに従う導波管構造の第10の実装形態では、第2の導波管および/または第1の導波管は窒化ケイ素から作られている。
【0046】
窒化ケイ素により、特に電気通信の適用例に対して、性能を大幅に改善することができ、さらにCMOS処理と完全に互換である。
【0047】
第1の態様自体に従う導波管構造または第1の態様の以前の実装形態の何れかに従う導波管構造の第11の実装形態では、第1の導波管と第2の導波管は1つのチップに属し、第2の導波管は当該チップの表面の近くまたは当該チップの表面の上で提供される。
【0048】
このように、光をチップの内部から当該チップ表面にもってくることができる。光は主に第1の導波管におけるチップ内部で誘導される。したがって、当該チップの光送信性能が改善する。さらに、専用結合領域とは別に、当該チップの表面をより平面にでき、他の装置、例えば、パッシブ装置またはアクティブ装置または他のチップの構成または結合に使用することができる。光をチップ表面にもってくることにより、それにも関わらず光をチップからより容易に結合することができる。例えば、光を第2のチップに結合することができる。第2のチップを、フリップ・チップ技術によりまたは転写印刷技術により第1のチップに取り付けてもよい。光を、少なくとも1つの導波管を有する他の任意の適切な物に結合することもできる。例えば、光を、チップから、当該チップを何らかの距離離れた何らかの地点に光学的に接続するよう設計された導波管、例えば、クラッディングを除去したポリマ導波管または光ファイバに容易に結合することができる。
【0049】
で第1の態様自体に従う導波管構造または第1の態様の第1乃至第10の実装形態の何れかに従う導波管構造の第12の実装形態では、第1の導波管は第1のチップに属し、第2の導波管は第2のチップに属し、第2のチップは第1のチップに転写印刷されている。
【0050】
それにより、低損失の光チップ間結合が最も直接的な方式で実現される。転写印刷を用いる代わりに、第2のチップを、他の適切な技術により、例えばフリップ・チップにより、第1のチップに提供してもよい。
【0051】
本発明の第2の態様ではチップを提供する。当該チップは、当該チップを少なくとも1つの導波管を含む物例えば別のチップに光学的に結合するための、第1の態様自体に従う導波管構造または第1の態様任意の実装形態に従う導波管構造を含む。
【0052】
このように、第2の態様ではチップを提供する。当該チップは低損失の光チップ間結合を可能とする。例えば、第2の類似または同一のチップを、反転し、正しく整列し、第1のチップに取り付けてもよい。当該2つのチップ間の任意のギャップが、クラッディング層のものと類似または同一の反射材料で充填されることが好ましい。あるいは、少なくとも1つの導波管を含む物がポリマ導波管であってもよい。
【0053】
本発明の第3の態様では、光結合のための導波管構造の製造方法であって、テーパ・エンドを有する第1の導波管を形成するステップと、第1の導波管を第1の導波管より低い屈折率のクラッディングに組み込むステップと、第1の導波管と離れて、テーパ・エンドを有する第2の導波管を形成するステップと、中間導波管を形成するステップであって、当該中間導波管の少なくとも一部は第1の導波管と第2の導波管の間で形成されている、ステップとを含み、第1の導波管および第2の導波管のテーパ・エンドはそれぞれ、当該中間導波管へおよび/または当該中間導波管から光を結合するために設計されている、方法を提供する。
【0054】
第3の態様の方法の第1の実装形態では、当該中間導波管は当該クラッディングの一部によってまたは当該クラッディングの一部の中で形成される。
【0055】
第3の態様自体に従う方法または第3の態様の第1の実装形態に従う方法の第2の実装形態では、当該中間導波管は片持ち梁風の構造を有するクラッディングの一部により形成される。
【0056】
第3の態様の第2の実装形態に従う方法の第3の実装形態では、第1の導波管のテーパ・エンドは片持ち梁風の構造に組み込まれている。
【0057】
第3の態様の第2の実装形態または第3の実装形態に従う方法の第4の実装形態では、当該片持ち梁風の構造の少なくとも一部は第1の導波管と第2の導波管のテーパ・エンドの間にそれぞれ配置され、クラッディングより低い屈折率の材料、好ましくはポリマ材料に組み込まれている。
【0058】
第3の態様自体に従う方法または第3の態様の第1の実装形態に従う方法の第5の実装形態では、中間導波管はクラッディング内で充填トレンチにより形成され、トレンチ充填材料は、当該クラッディングよりは高い屈折率を有するが、第1の導波管および第2の導波管よりは低い屈折率を有する。
【0059】
第3の態様の第5の実装形態に従う方法の第6の実装形態では、当該クラッディングは下方クラッディング層と上方クラッディング層を含み、当該クラッディング層は第1の導波管を挟み、充填トレンチが完全に当該上方クラッディング層内で提供され、それぞれ第1の導波管と第2の導波管のテーパ・エンドの間に配置される。
【0060】
第3の態様自体に従う方法または第3の態様の以前の実装形態の何れかに従う方法の第7の実装形態では、第2の導波管および/または第1の導波管は1.8以上の屈折率を有し、クラッディングは1.5以下の屈折率を有する。
【0061】
第3の態様自体に従う方法または第3の態様の以前の実装形態の何れかに従う方法の第8の実装形態では、第1の導波管および第2の導波管のテーパ・エンドは、大よそ200乃至800μmの長さにわたって大よそ0.4乃至1μmの幅から大よそ0.1乃至0.2μmの幅に先細りする。
【0062】
第3の態様自体に従う方法または第3の態様の以前の実装形態の何れかに従う方法の第9の実装形態では、中間導波管は大よそ2μm乃至4μmの幅を有し、かつ/または第1の導波管および第2の導波管はそれぞれ大よそ0.2乃至1μmの幅および大よそ0.05乃至0.4μmの厚さを有し、かつ/または第1の導波管と第2の導波管の間の距離は大よそ2乃至4μm、好ましくは大よそ3μmである。
【0063】
第3の態様自体に従う方法または第3の態様の以前の実装形態の何れかに従う方法の第10の実装形態では、第2の導波管および/または第1の導波管は窒化ケイ素から作られている。
【0064】
第3の態様自体に従う方法または第3の態様の以前の実装形態の何れかに従う方法の第11の実装形態では、第1の導波管および第2の導波管は1つのチップに属し、第2の導波管は当該チップの表面の近くまたは当該チップの表面の上で提供される。
【0065】
第3の態様自体に従う方法または第3の態様の第1乃至第10の実装形態の何れかに従う方法の第12の実装形態では、第1の導波管は第1のチップに属し、第2の導波管は第2のチップに属し、第2のチップは第1のチップに転写印刷されている。
【0066】
第3の態様に従う方法およびその実装形態は、第1の態様の導波管構造およびその夫々の実装形態と同一の利点および技術的効果を実現する。
【0067】
本願で説明する全ての装置、要素、ユニットおよび手段をソフトウェアまたはハードウェア要素またはそれらの任意の種類の組合せで実装できることに留意されたい。本願で説明する様々なエンティティにより実施される全てのステップならびに当該様々なエンティティにより実施されるとして説明される機能は、夫々のエンティティが夫々のステップおよび機能を実施するように適合または構成されることを意味するものである。以下の特定の実施形態の説明において、外部エンティティにより完全に生成される具体的な機能またはステップが当該具体的なステップまたは機能を実施する当該エンティティの特定の詳細な要素の説明において反映されていないとしても、これらの方法および機能を夫々のソフトウェアまたはハードウェア要素、またはそれらの任意の種類の組合せで実装できることは当業者には明らかである。
【0068】
本発明の上述の態様および実装形態を、添付図面と関連して特定の実施形態の以下の説明において説明する。