(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダウンフォース発生器は、締結部材によって前記バネ下部材に締結される締結部と、前記締結部から前後方向に離れた位置で前記バネ下部材に係合する係合部とを有し、
前記締結部における締結方向と前記係合部における係合方向とが平行である、請求項1又は2に記載の自動二輪車。
車幅方向から見た断面が逆翼型であるブレード部と、前記ブレード部の車幅方向の少なくとも一方の端部から下方に突出した少なくとも1つの案内壁部とを有するダウンフォース発生器と、
バネ下部材に設けられ、前輪機能部品の取付位置を調整する交換可能な調整部材と、を備え、
前記ダウンフォース発生器は、前記調整部材に固定される、自動二輪車のダウンフォース発生装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成は、走行風の衝突・偏向を利用するものであるため、下向き分力を大きくするほど走行抵抗が大きくなりやすく、車輪の接地力の向上と走行抵抗の抑制との両立を図りにくい。また、ヒレ状板手段の上面の面積が大きくなると、旋回時において車体に許容される傾斜角度(バンク許容角)を十分に確保しにくくなる。
【0005】
そこで本発明は、自動二輪車のバンク許容角を十分に確保し且つ走行抵抗を抑制しながらも、車輪の接地力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る自動二輪車は、バネ下部材と、車幅方向から見た断面が逆翼型であるブレード部と、前記ブレード部の車幅方向の少なくとも一方の端部から下方に突出した少なくとも1つの案内壁部とを有し、前記バネ下部材に取り付けられたダウンフォース発生器と、を備える。
【0007】
前記構成によれば、ブレード部が逆翼型に形成されており、ブレード部の上面に沿って流れる走行風とブレード部の下面に沿って流れる走行風との流速差に起因したブレード部の下面付近の圧力低下により、ダウンフォースが発生する。そのため、上面で走行風を偏向させてダウンフォースを得る従来の構造に比べ、接地力の増加に伴う走行抵抗の増加を抑制できる。更に、ダウンフォース発生器が案内壁部を有し、ブレード部の下面に沿って流れる走行風が車幅方向に拡散することが防がれる。そのため、ブレード部の下面に沿って流れる走行風の流速低下が抑えられ、ブレード部の上面側と下面側との間の圧力差の低下を防止できる。以上により、ブレード部の前方投影面積の大型化を防ぎ、バンク許容角を十分に確保して且つ走行抵抗を抑制にしながらも、ダウンフォースの発生により車輪の接地力を向上させることができる。
【0008】
また、バネ下部材にダウンフォース発生器が設けられることで、バネ上部材にダウンフォース発生器が設けられる場合に比べて、サスペンションの伸縮の影響やバネ上部材の姿勢変化及び上下動の影響を受けることが防止され、ブレード部の上側及び下側を流れる各走行風の流速差を利用したダウンフォースの発生を安定化させることができる。
【0009】
前記ダウンフォース発生器は、前記バネ下部材に上方から当接する当接面を有してもよい。
【0010】
前記構成によれば、ダウンフォース発生時には当接面がバネ下部材を上方から下方に向けて押圧するため、バネ下部材に下方から上方に当接する場合に比べ、ダウンフォース発生器からバネ下部材に安定して力を伝えることができる。
【0011】
前記ダウンフォース発生器は、締結部材によって前記バネ下部材に締結される締結部と、前記締結部から前後方向に離れた位置で前記バネ下部材に係合する係合部とを有し、前記締結部における締結方向と前記係合部における係合方向とが平行であってもよい。
【0012】
前記構成によれば、締結方向と係合方向とが平行であるので、ダウンフォース発生器をバネ下部材に締結する作業を行うことで、ダウンフォース発生器のバネ下部材への係合も達成でき、ダウンフォース発生器の着脱作業を容易化できる。また、係合構造を採用することで、1点締結のみの構成に比べ、ダウンフォース発生器の走行風による回り止めを簡易に実現できる。
【0013】
前記係合部は、車幅方向から見て、前記ブレード部と重なる位置に設けられてもよい。
【0014】
前記構成によれば、ブレード部に作用するダウンフォースに起因して係合部に生じるモーメントが抑制されるので、ダウンフォース発生器を安定して支持できる。
【0015】
前記少なくとも1つの案内壁部は、前記ブレード部の車幅方向内方の端部から下方に突出した内側案内壁部を含んでもよい。
【0016】
前記構成によれば、ブレード部の車幅方向内側に車体による壁が存在しない場合でも、ブレード部の下面に沿って流れる走行風が車幅方向内側に拡散することが防がれる。そのため、ブレード部の下面に沿って流れる走行風の流速低下が抑えられ、ブレード部の上面側と下面側との間の圧力差の低下を防止できる。
【0017】
前記内側案内壁部には、前記ダウンフォース発生器を前記バネ下部材に取り付けるための取付部が形成されてもよい。
【0018】
前記構成によれば、ダウンフォース発生器をブレード部よりも下方で固定することができ、ブレード部の傾斜の自由度を向上しつつ、ダウンフォース発生器の取付構造を小さくできる。
【0019】
前記バネ下部材は、前輪側の車軸と、前記車軸の後方に配置された前輪機能部品とを含み、前記ブレード部は、前後方向に延び、前記ダウンフォース発生器は、前記車軸と前記前輪機能部品との間の領域のうち前位置と後位置との2つの位置で前記バネ下部材に取り付けられてもよい。
【0020】
前記構成によれば、ダウンフォース発生器が前後2つの位置で固定されるので、回り止めを図りつつ、ダウンフォース発生時にダウンフォース発生器に生じるモーメント力の発生を抑制できる。
【0021】
前記前輪機能部品は、前記車軸の上方かつ後方に配置されたブレーキキャリパであり、前記ブレード部は、上方かつ後方に向けて延びるように傾斜し、前記ダウンフォース発生器は、前記バネ下部材のうち前記領域に配置される部品に固定されてもよい。
【0022】
前記構成によれば、ブレード部に近い位置でダウンフォース発生器を支持できるので、取り付けのための部材が大型化することを防止できる。
【0023】
前記バネ下部材は、前記前輪機能部品の取付位置を調整する交換可能な調整部材を含み、前記ダウンフォース発生器は、前記調整部材に固定されてもよい。
【0024】
前記構成によれば、バネ下部材の前輪機能部品(例えば、キャリパ等)にダウンフォース発生器を固定する場合に比べ、前輪機能部品を新規に用意する必要がなく、汎用性を高めることができる。
【0025】
本発明の一態様に係る自動二輪車のダウンフォース発生装置は、車幅方向から見た断面が逆翼断面であるブレード部と、前記ブレード部の車幅方向の少なくとも一方の端部から下方に突出した少なくとも1つの案内壁部とを有するダウンフォース発生器と、前記バネ下部材に設けられ、前輪機能部品の取付位置を調整する交換可能な調整部材と、を備え、前記ダウンフォース発生器は、前記調整部材に固定される。
【0026】
前記構成によれば、ブレード部の前方投影面積の大型化を防ぎ、バンク許容角を十分に確保して且つ走行抵抗を抑制にしながらも、ダウンフォースにより車輪の接地力を向上させることができる。更に、前輪機能部品を新規に用意する必要がなく、汎用性を高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、自動二輪車のバンク許容角を十分に確保し且つ走行抵抗を抑制しながらも、車輪の接地力を向上させることを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、自動二輪車に乗車した運転者から見た方向を基準とする。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る自動二輪車の要部の斜視図である。
図2は、
図1に示す自動二輪車の要部の側面図である。
図3は、
図2に示す自動二輪車の要部のダウンフォース発生器を取り外した状態の側面図である。
図1乃至3に示すように、自動二輪車1は、車体フレーム2及び原動機(図示せず)等を含むバネ上部材3と、前輪6側のバネ下部材4と、駆動輪である後輪側のバネ下部材(図示せず)とを備える。前輪6は操舵従動輪であり、後輪は駆動輪である。
【0031】
バネ下部材は、車輪を支持するサスペンションよりも車輪寄りの部材であって、路面に近い位置に配置される部材である。例えば、前輪6側のバネ下部材4として、フロントフォーク下部、ブレーキキャリパブラケット、車軸、フロントフェンダなどが挙げられる。前輪側のバネ下部材4は、弾性及び減衰性をもって上下方向に伸縮するフロントサスペンションの一例であるフロントフォーク5を介してバネ上部材3に接続されている。後輪側のバネ下部材は、弾性及び減衰性をもって上下方向に伸縮するリヤサスペンション(図示せず)によりバネ上部材3に接続されている。
【0032】
バネ下部材4は、前輪6と、車軸7(
図6及び7参照)と、ブレーキディスク8と、フロントフォーク5の下部9と、フロントフェンダ10と、ディスタンスカラー11,12と、ブレーキキャリパ13と、スペーサ14,15とを含む。前輪6は、ホイール6aと、ホイール6aに取り付けられたタイヤ6bとを有する。車軸7は、ホイール6aの中心孔に挿通されて左右方向に延びている。ブレーキディスク8は、本実施形態では前輪6の左右両側に配置されて、ホイール6aに固定されている。
【0033】
フロントフォーク5は、車体フレーム2に接続された上部16と、車軸7に接続された下部9とを有する。フロントフォーク5は、上部16に対して下部9が弾性及び減衰性をもって上下方向に進退することで伸縮する。フロントフォーク5の下部9には、前輪6を上方から覆うフロントフェンダ10が取り付けられている。フロントフォーク5の下部9は、シリンダ9aと、ホルダ9bと、サブタンク9cと、調整部9dとを有する。フロントフォーク5の下部9は、前輪機能部品の一例である。シリンダ9aは、上下方向に延び、その内部にダンパーオイルが流通する。ホルダ9bは、ディスタンスカラー11,12と車軸7とが車幅方向(左右方向)に挿通される保持孔9baを有し、ディスタンスカラー11,12を介して車軸7を支持する。サブタンク9cは、ホルダ9b内の流路を介してシリンダ9aと連通してダンパーオイルを貯留する。サブタンク9cは、シリンダ9aよりも後方に配置され、シリンダ9aに沿うようにホルダ9bから上方に突出する。調整部9dは、ユーザが操作してフロントフォーク5のサスペンション特性を調整するためのものである。調整部9dは、シリンダ9aの後側において後方に向けて配置されている。
【0034】
ディスタンスカラー11,12は、車軸7とフロントフォーク5のホルダ9bとの間に介設されている。ディスタンスカラー11,12は、ホルダ9bに対する車軸7の取付位置を調整する交換可能な調整部材である。ブレーキキャリパ13は、油圧で駆動される摩擦パッド(図示せず)によりブレーキディスク8を押圧挟持することで、前輪6を制動する。ブレーキキャリパ13は、スペーサ14,15を介してフロントフォーク5のホルダ9bに固定されている。ブレーキキャリパ13は、車軸7の後方に配置された前輪機能部品の一例である。スペーサ14,15は、ホルダ9bに対するブレーキキャリパ13の取付位置を調整する交換可能な調整部材である。上側のスペーサ14は、車軸7よりも高い位置に配置され、下側のスペーサ15は、車軸7よりも低い位置に配置されている。
【0035】
バネ下部材4の左側及び右側には、走行風によりダウンフォースを発生させるダウンフォース発生器20A,20Bが設けられている。左側のダウンフォース発生器20Aと右側のダウンフォース発生器20Bとは、前後方向に延びる車体中心線を基準として対称形状であるため、以下では、主に左側のダウンフォース発生器20Aについて説明する。
【0036】
ダウンフォース発生器20Aは、ディスタンスカラー11及びスペーサ14に着脱可能に取り付けられている。即ち、ダウンフォース発生器20Aは、車軸7とブレーキキャリパ13との間の領域のうち前位置と後位置との2つの位置でバネ下部材4に取り付けられ、バネ下部材4のうち当該領域に配置される部品に固定されている。ダウンフォース発生器20Aは、前輪6の車幅方向外方に配置されている。ダウンフォース発生器20Aは、前輪6の上端よりも下方に配置されている。ダウンフォース発生器20Aは、フロントフェンダ10よりも下方に配置されている。
【0037】
ダウンフォース発生器20Aの上端は、ブレーキディスク8の上端よりも下方に位置し、前輪6のホイール6aのハブの上端よりも下方に位置すると好ましい。ダウンフォース発生器20Aは、車軸7の中心よりも前方に突出する部分を有する。即ち、ダウンフォース発生器20Aの前端は、車軸7の中心よりも前方に位置する。ダウンフォース発生器20Aの後端は、ブレーキキャリパ13の後端よりも前方に位置する。ダウンフォース発生器20Aの下端は、ブレーキキャリパ13の下端よりも上方に位置する。ダウンフォース発生器20Aの下端は、ホルダ9bの下端よりも上方に位置する。なお、前述したフロントフォーク5の調整部9dは、後方から見て、車幅方向においてダウンフォース発生器20Aとブレーキキャリパ13との間に配置されている。
【0038】
図4は、
図2に示すダウンフォース発生器20Aの車幅方向外方から見た断面図である。
図5は、
図1に示す自動二輪車1のスペーサ14及びその近傍の前方から見た断面図である。
図6は、
図1に示す自動二輪車1の左側のディスタンスカラー11及びその近傍の斜め上前方から見た断面図である。なお、
図4では、外側案内壁部24を二点鎖線で図示している。
図1,4及び5に示すように、ダウンフォース発生器20Aは、ブレード部21,22と、内側案内壁部23と、外側案内壁部24とを有する。なお、本実施形態では、ダウンフォース発生器20Aのブレード部21,22は2つとしたが、1つのみとしてもよい。
【0039】
ブレード部21,22は、それぞれ前後方向に延び、前後に並んで配置されている。ブレード部21,22の各々は、車幅方向から見た断面が逆翼型である。ここで、「逆翼型」は、下面が上面よりも大きい曲率で下方に突出する曲面に形成された形状を意味する。言い換えると、「逆翼型」は、車幅方向に垂直な断面において、下面の輪郭線の線長が、上面の輪郭線の線長よりも長くなる形状を意味する。
【0040】
ブレード部21,22の各々は、その下面に走行風を導くように迎え角が設定される。ブレード部21,22の各々は、上方かつ後方に向けて延びるように水平面に対して傾斜し、後側のブレード部22は、前側のブレード部21よりも大きく傾斜している。前側のブレード部21は、後側のブレード部22よりも前後方向に長い。前側のブレード部21の後端は、後側のブレード部22の前端よりも下方に位置する。前側のブレード部21の後端は、後側のブレード部22の前端よりも後方に位置する。前側のブレード部21の前端は、車軸7の中心よりも前方に位置する。
【0041】
内側案内壁部23は、ブレード部21,22の車幅方向内方の端部から下方に突出している。外側案内壁部24は、ブレード部21,22の車幅方向外方の端部から下方に突出している。ブレード部21,22からの内側案内壁部23及び外側案内壁部24の下方突出量は、後方にいくにつれて大きくなる。ブレード部21,22からの外側案内壁部24の下方突出量は、ブレード部21,22からの内側案内壁部23の下方突出量よりも大きい。
【0042】
外側案内壁部24は、その下端部が車幅方向内側に向けて湾曲したフック形状を有する。内側案内壁部23及び外側案内壁部24の前端は、車幅方向から見て、前側のブレード部21の中心と前端との間の部分に位置する。内側案内壁部23及び外側案内壁部24の後端は、後側のブレード部22の後端よりも後方に位置する。内側案内壁部23及び外側案内壁部24は、ブレード部21,22の車幅方向両方の端部から上方にも突出している。但し、内側案内壁部23及び外側案内壁部24の上方突出量は、内側案内壁部23の下方突出量よりも小さい。
【0043】
ダウンフォース発生器20Aは、締結部材30(例えば、ボルト)によってバネ下部材4に締結される締結部25と、締結部25から前後方向に離れた位置でバネ下部材4に係合する係合部26とを更に有する。即ち、締結部25及び係合部26は、ダウンフォース発生器20Aをバネ下部材4に取り付けるための取付部の役目を果たす。締結部25は、内側案内壁部23に形成された締結孔である。係合部26は、ブレード部21又は内側案内壁部23から車幅方向内方に突出した突起である。係合部26は、車幅方向から見て、ブレード部21と重なる位置に設けられている。
【0044】
締結部25における締結方向と係合部26における係合方向とは、互いに平行であり、ブレード部21,22が延びる方向に沿って設定されている。即ち、締結部材30の挿入方向と係合部26の挿入方向とは、互いに平行であり、車幅方向に一致する。外側案内壁部24には、締結部材30の軸線の延長線X上に作業孔24aが形成されている。車幅方向から見て、作業孔24aは、締結部材30よりも大径であり、締結部材30の全体を包含する位置に形成されている。
【0045】
図3及び5に示すように、スペーサ14は、ホルダ9bとブレーキキャリパ13との間に挟まれたスペーサ部14aと、スペーサ部14aから突出したブラケット部14bとを一体に有する。ブラケット部14bの車幅方向外側の端面には、締結部材30が締結される雌ネジ穴14cが形成されている。雌ネジ穴14cは、スペーサ部14aよりも下方かつ車幅方向外方に位置している。
【0046】
図3及び6に示すように、左側のディスタンスカラー11は、車軸7とホルダ9bとの間に差し込まれたカラー部11aと、カラー部11aの車幅方向外側の端部からフランジ状に突出したフランジ部11bと、フランジ部11bから車幅方向外方に突出したボス部11cとを一体に有する。車軸7は、パイプ状であり、その左端部の外周面に雄ネジ7aが形成されている。カラー部11aの内周面には、雌ネジ11aaが形成されており、車軸7の雄ネジ7aが螺合されている。フランジ部11bは、フロントフォーク5のホルダ9bの左側面に当接している。ボス部11cの車幅方向外側の端面には、係合部26が凹凸嵌合により係合される被係合部11dが形成されている。即ち、被係合部11dは、車幅方向外方に向けて開放された穴である。被係合部11dは、カラー部11aに対して上方かつ後方に位置する。ディスタンスカラー11の被係合部11dは、スペーサ14の雌ネジ穴14cよりも下方に位置する。
【0047】
ダウンフォース発生器20Aをバネ下部材4に取り付ける際には、先ず、ダウンフォース発生器20Aの係合部26をディスタンスカラー11の被係合部11dに係合(嵌合)する。なお、ダウンフォース発生器20Aの係合部26の下面は、ディスタンスカラー11の被係合部11dの底面に上方から当接する当接面26aとなる。そして、ダウンフォース発生器20Aの締結部25(締結孔)をスペーサ14の雌ネジ穴14cに合致させ、締結部材30を締結部25に通して雌ネジ穴14cに締結することで、締結部25をスペーサ14に固定する。その際、締結部材30の締結作業は、外側案内壁部24の作業孔24aを通じて行う。
【0048】
図7は、
図1に示す自動二輪車1の右側のディスタンスカラー12及びその近傍の斜め上前方から見た断面図である。
図7に示すように、右側のディスタンスカラー12は、車軸7とホルダ9bとの間に差し込まれたカラー部12aと、カラー部12aの車幅方向外側の端部からフランジ状に突出したフランジ部12bと、フランジ部12bから車幅方向外方に突出したボス部12cとを一体に有する。カラー部12aの内周面は、非ネジ面(雌ネジの形成されていない滑面)である。フランジ部12bは、フロントフォーク5のホルダ9bの右側面に当接している。ボス部12cの車幅方向外側の端面には、右側のダウンフォース発生器20Bの係合部26が凹凸嵌合により係合される被係合部12dが形成されている。車軸7の右端部には、フランジ部7bが形成されており、車軸7のフランジ部7bが、ディスタンスカラー12のフランジ部12bに対向している。
【0049】
以上に説明した構成によれば、ブレード部21,22が逆翼型に形成されており、ブレード部21,22の上面に沿って流れる走行風とブレード部21,22の下面に沿って流れる走行風との流速差に起因したブレード部21,22の下面付近の圧力低下により、ダウンフォースが発生する。そのため、上面で走行風を偏向させてダウンフォースを得る従来の構造に比べ、接地力の増加に伴う走行抵抗の増加を抑制できる。更に、ダウンフォース発生器20A,20Bが内側案内壁部23及び外側案内壁部24を有し、ブレード部21,22の下面に沿って流れる走行風が車幅方向に拡散することが防がれる。そのため、ブレード部21,22の下面に沿って流れる走行風の流速低下が抑えられ、ブレード部21,22の上面側と下面側との間の圧力差の低下を防止できる。以上により、ブレード部21,22の前方投影面積の大型化を防ぎ、バンク許容角を十分に確保して且つ走行抵抗を抑制にしながらも、ダウンフォースの発生により前輪6の接地力を向上させることができる。
【0050】
また、ダウンフォース発生時には係合部26の当接面がバネ下部材4を上方から下方に向けて押圧するため、バネ下部材4に下方からのみ当接する場合に比べ、ダウンフォース発生器20A,20Bからバネ下部材4に安定して力を伝えることができる。
【0051】
また、締結部25における締結方向と係合部26における係合方向とが平行であるので、ダウンフォース発生器20A,20Bをバネ下部材4に締結する作業を行うことで、ダウンフォース発生器20A,20Bのバネ下部材4への係合も達成でき、ダウンフォース発生器20A,20Bの着脱作業を容易化できる。また、係合構造を採用することで、1点締結のみの構成に比べ、ダウンフォース発生器20A,20Bの走行風による回り止めを簡易に実現できる。
【0052】
また、係合部26は、車幅方向から見て、ブレード部21と重なる位置に設けられるので、ブレード部21に作用するダウンフォースに起因して係合部26に生じるモーメントが抑制されるので、ダウンフォース発生器20A,20Bを安定して支持できる。
【0053】
また、ブレード部21,22の車幅方向内方の端部から下方に突出した内側案内壁部23が設けられるので、ブレード部21,22の車幅方向内側に車体による壁が存在しない場合でも、ブレード部21,22の下面に沿って流れる走行風が車幅方向内側に拡散することが防がれる。そのため、ブレード部21,22の下面に沿って流れる走行風の流速低下が抑えられ、ブレード部21,22の上面側と下面側との間の圧力差の低下を防止できる。
【0054】
また、内側案内壁部23には、ダウンフォース発生器20A,20Bをバネ下部材4に取り付けるための取付部である締結部25が形成されているので、ダウンフォース発生器20A,20Bをブレード部21,22よりも下方で固定することができ、ブレード部21,22の傾斜の自由度を向上しつつ、ダウンフォース発生器20A,20Bの取付構造を小さくできる。更に、ブラケットを用いずにダウンフォース発生器20A,20Bをバネ下部材4に取り付けることができるので、ダウンフォース発生器20A,20Bをコンパクトにして振動を抑制できる。
【0055】
また、外側案内壁部24には、内側案内壁部23の締結部25を挿通する締結部材30の軸線の延長線上に作業孔24aが形成されているので、外側案内壁部24により空力性能を安定させながら、作業孔24aによりダウンフォース発生器20A,20Bの着脱作業性も良好に保つことができる。
【0056】
また、ダウンフォース発生器20A,20Bが前後2つの位置で固定されるので、回り止めを図りつつ、ダウンフォース発生時にダウンフォース発生器20A,20Bに生じるモーメント力の発生を抑制できる。
【0057】
また、ブレード部21,22は、上方かつ後方に向けて延びるように傾斜し、ダウンフォース発生器20A,20Bは、バネ下部材4のうち車軸7とブレーキキャリパ13との間の領域に配置される部品に固定されるので、ブレード部21,22に近い位置でダウンフォース発生器20A,20Bを支持でき、取り付けのための部材が大型化することを防止できる。
【0058】
また、ダウンフォース発生器20A,20Bは、調整部材であるディスタンスカラー11,12及びスペーサ14に固定されるので、バネ下部材4のうちフロントフォーク5の下部9やブレーキキャリパ13等にダウンフォース発生器20A,20Bを固定する場合に比べ、フロントフォーク5やブレーキキャリパ13等を新規に用意する必要がなく、汎用性を高めることができる。例えば、バネ下部材4のうちフロントフォーク5及びブレーキキャリパ13等の主要部品を既存のままとし、小部品であるディスタンスカラー11,12及びスペーサ14を交換するだけで、簡単かつ低コストにダウンフォース発生器20A,20Bを既存の自動二輪車に適用できる。
【0059】
また、前輪6近傍の方が後輪近傍よりも乱れの少ない走行風が流れ、前輪6の接地感の方が後輪の接地感よりもライダーのフィーリングに影響しやすいので、前輪6側のバネ下部材4にダウンフォース発生器20A,20Bが取り付けられることで、ダウンフォースを安定して発生させやすく、ライダーに接地感を与えやすい効果がある。
【0060】
また、バネ下部材4にダウンフォース発生器20A,20Bが設けられることで、バネ上部材3にダウンフォース発生器が設けられる場合に比べて、フロントフォーク5の伸縮による上下動の影響を受けることが防がれ、前輪6の接地力を安定的に高めることができる。また、接地力を高めることによって路面からの反力が大きくなっても、フロントフォーク5の緩衝作用によって当該反力の車体フレーム2への伝達を抑えることができる。また、ダウンフォース発生器20A,20Bは、フロントフォーク5の緩衝によって、バネ上部材3のピッチング振動及び上下振動の影響を受けることが抑えられる。即ち、車体の姿勢変化及び上下動によるダウンフォース発生器20A,20Bの姿勢変化及び上下動を抑えて、ダウンフォースの発生が不安定化するのを防止できる。
【0061】
また、締結部25が係合部26よりも車軸7から離れて配置され、締結部材30と車軸7付近の部材との千渉が防がれるので、締結面積を増やして締結力を高めることができる。また、側面視において車軸7から離れた位置でダウンフォース発生器20A,20Bを支持することで、車軸7の取付け又は取外しの作業にあって、ダウンフォース発生器20A,20Bが邪魔するのを防止できる。
【0062】
また、ブレード部21,22が、ブレーキディスク8の外形よりも径方向内側に配置されて路面近くに配置されるので、乱れの少ない走行風をブレード部21,22に導くことができる。また、ブレード部21,22の車幅方向内側に内側案内壁部23が設けられるので、前輪6の回転による走行風の乱れによって、ブレード部21,22に沿って流れる走行風が乱れることを抑制できる。また、ダウンフォース発生器20A,20Bが車軸7の近傍に位置することで、旋回走行時に車体をバンクさせたときに、片側のダウンフォース発生器が路面に近づくので、発生するダウンフォースを高めることができる。また、ダウンフォース発生器20A,20Bは、2つのスペーサ14,15のうち上側のスペーサ14に取り付けられるので、下側のスペーサ15に取り付ける場合に比べ、バンク許容角を大きく確保できる。
【0063】
また、ディスタンスカラー11の被係合部11dとして凹部を形成することで、凸部を形成する場合に比べて、ダウンフォース発生器20A,20Bを取り外して走行する場合の重量増加を抑えることができる。また、調整部材や支持部材のように機能部品とは別に交換可能な部材にダウンフォース発生器20A,20Bが取り付けられるので、ダウンフォース発生器20A,20Bを取り外して走行する場合には、ダウンフォース発生器20A,20Bとともに、ダウンフォース発生器20A,20Bが取り付けられる部材を取り外して交換することができる。また、ダウンフォース発生器20A,20Bが取り付けられる部材を形状の異なるものに交換して、ダウンフォース発生器20A,20Bの取付角度や取付位置を異ならせることで、ライダーの運転特性に応じてダウンフォースを調整することもできる。
【0064】
また、フロントフォーク5の調整部9dは、ダウンフォース発生器20A及びブレーキキャリパ13に対して車幅方向に間隔をあけて配置され、調整部9dが配置される空間は、後方に向けて開放されているので、ダウンフォース発生器20Aが車体に取り付けられた状態で、調整部9dが向く方向である後方から工具を調整部9dにアクセスさせることができる。よって、ダウンフォース発生器20Aを取り外すことなく、フロントフォーク5のサスペンション特性を容易に調整できる。
【0065】
また、ダウンフォース発生器20A,20Bの上端が、ホイール6aの上端よりも下方で、更にはブレーキディスク8の上端よりも下方に配置されることで、フロントフォーク5の収縮時にバネ上部材3との干渉を防止できる。また、ダウンフォース発生器20A,20Bとフロントフォーク5との連結部分が、ブレーキキャリパ13の上端よりも下方に配置されることで、当該連結部分が、フロントフォーク5の収縮時にバネ上部材3との干渉を防止できる。
【0066】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係るダウンフォース発生器120を左前方から見た斜視図である。
図8に示すように、ダウンフォース発生器20Aは、ブレード部121と、内側案内壁部123と、外側案内壁部124とを有する。ブレード部121は、車幅方向から見た断面が逆翼型である。ブレード部121は、上方かつ後方に向けて延びるように水平面に対して傾斜している。ブレード部121は、内側案内壁部123から車幅方向外方に突出する内側部121aと、内側部121aから車幅方向外側に連続する中間部121bと、中間部121bから車幅方向外側に連続する外側部121cとを有する。
【0067】
内側部121aは、中間部121bの前縁部分121baよりも前方に突出している。内側部121aは、中間部121bの前縁部分121baよりも前方かつ下方に配置されて車幅方向外方に向いた案内面121aaを有する。外側部121cは、中間部121bの前縁部分121baよりも前方に突出しているが、その突出量は内側部121aよりも小さい。外側部121cは、中間部121bの前縁部分121baよりも前方かつ下方に配置されて車幅方向内方に向いた案内面121caを有する。
【0068】
案内面121aa,121caは、車幅方向から見ると、後方にいくにつれて中間部121bの前縁部分121baに対して鉛直方向に近づくように傾斜している。案内面121aa,121caは、上方から見ると、後方にいくにつれて中間部121bの前縁部分121baに対して車幅方向に近づくように傾斜している。案内面121aa,121caは、前方からの走行風を案内することで、前後方向の成分を含む方向を軸方向とする軸周りに旋回して中間部121bの下面に沿って後方に流れる旋回流を生じさせる旋回流発生部としての機能を有する。
【0069】
内側案内壁部123は、ブレード部121の車幅方向内方の端部から下方に突出している。外側案内壁部124は、ブレード部121の車幅方向外方の端部から下方に突出している。ダウンフォース発生器120は、締結部材(例えば、ボルト)によってバネ下部材4(
図1参照)に締結される締結部125と、締結部125から前後方向に離れた位置でバネ下部材4に係合する係合部126とを更に有する。締結部125は、内側案内壁部123に形成された締結孔である。係合部126は、ブレード部121又は内側案内壁部123から車幅方向内方に突出した突起である。係合部126は、車幅方向から見て、ブレード部121と重なる位置に設けられている。
【0070】
前記したダウンフォース発生器120によれば、案内面121aa,121caにより発生される旋回流が中間部121bの下面に沿って後方に流れることにより、中間部121bの下方を流れる走行風の指向性を高めることができ、走行風がブレード部121から剥離することが防止される。よって、ブレード部121に与えられるダウンフォースの走行風の剥離に起因する低下を抑え、空力特性の向上が図られる。
【0071】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。ダウンフォース発生器は、バネ下部材の機能部品自体や機能部品を支持するブラケットに取り付けられてもよい。例えば、ダウンフォース発生器は、フロントフォーク自体に取り付けられてもよい。ダウンフォース発生器は、後輪側のバネ下部材に取り付けられてもよい。ダウンフォース発生器の係合部は、ディスタンスカラーではなく車軸に挿入されてもよい。ダウンフォース発生器において、係合部を前側に配置し、締結部を後側に配置する代わりに、係合部を後側に配置し、締結部を前側に配置してもよい。
【0072】
ダウンフォース発生器の係合部を突起とし、バネ下部材の被係合部を穴とした構成の代わりに、ダウンフォース発生器の係合部を穴とし、バネ下部材の被係合部を突起とした構成にしてもよい。ダウンフォース発生器は、内側案内壁部又は外側案内壁部のいずれか一方のみを設けたものとしてもよい。
【0073】
ダウンフォース発生器20A,20Bは、車輪の左右両側に配置したが、左右のいずれか一方のみに配置されてもよい。前輪6は、車体フレーム2に対してフロントフォークを介して接続されたが、車体フレームに対して車幅方向に延びるピボット軸周りに揺動するフロントアームに前輪6が接続される方式でもよい。
【0074】
ダウンフォース発生器の締結方向及び係合方向は、車幅方向に限らず、鉛直方向など他の方向に設定されてもよい。ダウンフォース発生器20A,20Bは、上側のスペーサ14に取り付けたが、下側のスペーサ15に取り付けてもよい。上側のスペーサ14と下側のスペーサ15とを一体に形成し、その一体形成されたスペーサにダウンフォース発生器20A,20Bを取り付けてもよい。
【0075】
締結部25の位置と係合部26の位置とは、互いに逆転させてもよい。締結部材30は、ボルトではなくナットでもよい。その場合、スペーサ14には、ボルトが設けられる。また、ブレード部21,22は、中空として締結部材が挿入される形状にしてもよい。
【0076】
ダウンフォース発生器20A,20Bは、フロントフォーク5、サブタンク9c、フロントフェンダ10、ブレーキキャリパ13、車軸7、車軸ナット、車輪速センサ及びそれらのブラケット等に取り付けられてもよい。例えば、ダウンフォース発生器は、車軸に形成される中空空間に挿入係止されることで取り付けられてもよい。