特許第6683550号(P6683550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683550
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】情報分析装置および情報分析方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20200413BHJP
【FI】
   G06Q30/02 312
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-123237(P2016-123237)
(22)【出願日】2016年6月22日
(65)【公開番号】特開2017-228056(P2017-228056A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】武井 博一
【審査官】 岸 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−169699(JP,A)
【文献】 国際公開第03/027926(WO,A1)
【文献】 特開2007−233944(JP,A)
【文献】 特開平05−067119(JP,A)
【文献】 特開2013−182415(JP,A)
【文献】 米国特許第05377095(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地理的に区画された複数のエリアを住民属性が類似するエリアごとにグループ化したエリアタイプデータを取得する第1取得部と、
分析対象商品を顧客へ販売した店舗を示すデータと、前記店舗における前記分析対象商品の販売価格および販売数量と、前記顧客の居住エリアを含む販売実績データを取得する第2取得部と、
前記エリアタイプデータと、前記販売実績データに基づいて、エリアタイプごとの販売実績を導出するエリアタイプ別販売実績導出部と、
前記エリアタイプごとの販売実績に基づいて、前記分析対象商品の複数の販売価格のそれぞれに応じた販売数量をエリアタイプごとに特定し、前記分析対象商品のエリアタイプごとの価格弾性値を導出する価格弾性値導出部と、
前記エリアタイプごとの販売実績に基づいて、何らかの商品を購買した顧客である購買顧客の数であって、分析対象店舗におけるエリアタイプごとの購買顧客数を導出する顧客数導出部と、
前記エリアタイプごとの販売実績に基づいて、前記分析対象商品のエリアタイプごとの購買数量を示す購買頻度を導出する購買頻度導出部と、
前記価格弾性値と、前記購買顧客数と、前記購買頻度に基づいて、前記分析対象店舗における前記分析対象商品の販売価格ごとの販売数量を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする情報分析装置。
【請求項2】
前記購買頻度導出部は、所定の基準価格で販売された前記分析対象商品のエリアタイプごとの購買数量を示す購買頻度を導出し、
前記推定部は、前記購買顧客数と、前記購買頻度に基づいて、前記分析対象店舗において前記分析対象商品を前記基準価格で販売した場合の販売数量を推定し、さらに、前記価格弾性値に基づいて、前記分析対象店舗において前記分析対象商品を前記基準価格とは異なる価格で販売した場合の販売数量を推定することを特徴とする請求項1に記載の情報分析装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記販売価格ごとの販売数量の推定値に基づいて、前記販売価格ごとの売上高をさらに推定することを特徴とする請求項1または2に記載の情報分析装置。
【請求項4】
前記価格弾性値導出部は、所定の年中行事または季節に対応する分析対象期間におけるエリアタイプごとの販売実績に基づいて、前記分析対象商品のエリアタイプごとの価格弾性値を導出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の情報分析装置。
【請求項5】
地理的に区画された複数のエリアを住民属性が類似するエリアごとにグループ化したエリアタイプデータを取得する第1取得部と、
分析対象商品を顧客へ販売した店舗を示すデータと、前記店舗における前記分析対象商品の販売価格および販売数量と、前記顧客の居住エリアを含む販売実績データを取得する第2取得部と、
前記エリアタイプデータと、前記販売実績データに基づいて、エリアタイプごとの販売実績を導出するエリアタイプ別販売実績導出部と、
前記エリアタイプごとの販売実績に基づいて、何らかの商品を購買した顧客である購買顧客の数であって、分析対象店舗におけるエリアタイプごとの購買顧客数を導出する顧客数導出部と、
前記エリアタイプごとの販売実績に基づいて、所定価格で販売された前記分析対象商品のエリアタイプごとの購買数量を示す購買頻度を導出する購買頻度導出部と、
前記購買顧客数と、前記購買頻度に基づいて、前記分析対象店舗において前記分析対象商品を前記所定価格で販売した場合の販売数量を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする情報分析装置。
【請求項6】
地理的に区画された複数のエリアを住民属性が類似するエリアごとにグループ化したエリアタイプデータを取得するステップと、
分析対象商品を顧客へ販売した店舗を示すデータと、前記店舗における前記分析対象商品の販売価格および販売数量と、前記顧客の居住エリアを含む販売実績データを取得するステップと、
前記エリアタイプデータと、前記販売実績データに基づいて、エリアタイプごとの販売実績を導出するステップと、
前記エリアタイプごとの販売実績に基づいて、前記分析対象商品の複数の販売価格のそれぞれに応じた販売数量をエリアタイプごとに特定し、前記分析対象商品のエリアタイプごとの価格弾性値を導出するステップと、
前記エリアタイプごとの販売実績に基づいて、何らかの商品を購買した顧客である購買顧客の数であって、分析対象店舗におけるエリアタイプごとの購買顧客数を導出するステップと、
前記エリアタイプごとの販売実績に基づいて、前記分析対象商品のエリアタイプごとの購買数量を示す購買頻度を導出するステップと、
前記価格弾性値と、前記購買顧客数と、前記購買頻度に基づいて、前記分析対象店舗における前記分析対象商品の販売価格ごとの販売数量を推定するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする情報分析方法。
【請求項7】
地理的に区画された複数のエリアを住民属性が類似するエリアごとにグループ化したエリアタイプデータを取得する機能と、
分析対象商品を顧客へ販売した店舗を示すデータと、前記店舗における前記分析対象商品の販売価格および販売数量と、前記顧客の居住エリアを含む販売実績データを取得する機能と、
前記エリアタイプデータと、前記販売実績データに基づいて、エリアタイプごとの販売実績を導出する機能と、
前記エリアタイプごとの販売実績に基づいて、前記分析対象商品の複数の販売価格のそれぞれに応じた販売数量をエリアタイプごとに特定し、前記分析対象商品のエリアタイプごとの価格弾性値を導出する機能と、
前記エリアタイプごとの販売実績に基づいて、何らかの商品を購買した顧客である購買顧客の数であって、分析対象店舗におけるエリアタイプごとの購買顧客数を導出する機能と、
前記エリアタイプごとの販売実績に基づいて、前記分析対象商品のエリアタイプごとの購買数量を示す購買頻度を導出する機能と、
前記価格弾性値と、前記購買顧客数と、前記購買頻度に基づいて、前記分析対象店舗における前記分析対象商品の販売価格ごとの販売数量を推定する機能と、
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ処理技術に関し、特に、顧客情報を分析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータに様々な情報を分析させることにより、ビジネスにおける有用な情報を得ようとする試みがなされている。本出願人は、商品の販売情報を分析して、ユーザの販売活動を支援するための情報を作成する技術を提案している。具体的には、商品の購入者が居住する地域(以下「エリア」とも呼ぶ)に関し、住民の属性が類似するエリアのグループ(以下「エリアタイプ」とも呼ぶ)に注目して、購入者が居住するエリアタイプに基づいて販売情報を分析することにより、商品の販売者にとって有用な情報を作成する技術を提案している(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−169699号公報
【特許文献2】特開2011−221883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
商品の販売価格は、全国どこの店舗でも同一の価格に設定されることがあり、また、店舗の店長や担当者の勘や経験に基づいて価格が調整されることもあるが、店舗の売上や利益を最大化するような最適な価格を設定することは容易ではなかった。本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、商品の価格を適切に設定することを支援する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の情報分析装置は、地理的に区画された複数のエリアを住民属性が類似するエリアごとにグループ化したエリアタイプデータを取得する第1取得部と、分析対象商品を顧客へ販売した店舗を示すデータと、店舗における分析対象商品の販売価格および販売数量と、顧客の居住エリアを含む販売実績データを取得する第2取得部と、エリアタイプデータと、販売実績データに基づいて、エリアタイプごとの販売実績を導出するエリアタイプ別販売実績導出部と、エリアタイプごとの販売実績に基づいて、分析対象商品の複数の販売価格のそれぞれに応じた販売数量をエリアタイプごとに特定し、分析対象商品のエリアタイプごとの価格弾性値を導出する価格弾性値導出部と、エリアタイプごとの販売実績に基づいて、何らかの商品を購買した顧客である購買顧客の数であって、分析対象店舗におけるエリアタイプごとの購買顧客数を導出する顧客数導出部と、エリアタイプごとの販売実績に基づいて、分析対象商品のエリアタイプごとの購買数量を示す購買頻度を導出する購買頻度導出部と、価格弾性値と、購買顧客数と、購買頻度に基づいて、分析対象店舗における分析対象商品の販売価格ごとの販売数量を推定する推定部と、を備える。
【0006】
本発明の別の態様もまた、情報分析装置である。この装置は、地理的に区画された複数のエリアを住民属性が類似するエリアごとにグループ化したエリアタイプデータを取得する第1取得部と、分析対象商品を顧客へ販売した店舗を示すデータと、店舗における分析対象商品の販売価格および販売数量と、顧客の居住エリアを含む販売実績データを取得する第2取得部と、エリアタイプデータと、販売実績データに基づいて、エリアタイプごとの販売実績を導出するエリアタイプ別販売実績導出部と、エリアタイプごとの販売実績に基づいて、何らかの商品を購買した顧客である購買顧客の数であって、分析対象店舗におけるエリアタイプごとの購買顧客数を導出する顧客数導出部と、エリアタイプごとの販売実績に基づいて、所定価格で販売された分析対象商品のエリアタイプごとの購買数量を示す購買頻度を導出する購買頻度導出部と、購買顧客数と、購買頻度に基づいて、分析対象店舗において分析対象商品を所定価格で販売した場合の販売数量を推定する推定部と、を備える。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、情報分析方法である。この方法は、地理的に区画された複数のエリアを住民属性が類似するエリアごとにグループ化したエリアタイプデータを取得するステップと、分析対象商品を顧客へ販売した店舗を示すデータと、店舗における分析対象商品の販売価格および販売数量と、顧客の居住エリアを含む販売実績データを取得するステップと、エリアタイプデータと、販売実績データに基づいて、エリアタイプごとの販売実績を導出するステップと、エリアタイプごとの販売実績に基づいて、分析対象商品の複数の販売価格のそれぞれに応じた販売数量をエリアタイプごとに特定し、分析対象商品のエリアタイプごとの価格弾性値を導出するステップと、エリアタイプごとの販売実績に基づいて、何らかの商品を購買した顧客である購買顧客の数であって、分析対象店舗におけるエリアタイプごとの購買顧客数を導出するステップと、エリアタイプごとの販売実績に基づいて、分析対象商品のエリアタイプごとの購買数量を示す購買頻度を導出するステップと、価格弾性値と、購買顧客数と、購買頻度に基づいて、分析対象店舗における分析対象商品の販売価格ごとの販売数量を推定するステップと、をコンピュータが実行する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現をシステム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、商品の価格を適切に設定することを支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施例の情報処理システムの構成を示す図である。
図2】エリアタイプデータの構成を示す図である。
図3図1の情報分析装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】価格弾性値導出部により導出される価格弾性値データの例を示す図である。
図5】価格弾性値導出部により導出される価格弾性値データの例を示す図である。
図6】顧客数導出部により導出される顧客数データの例を示す図である。
図7】購買頻度導出部により導出される購買頻度データの例を示す図である。
図8】販売数量推定部による推定結果の例を示す図である。
図9】売上高推定部による推定結果の例を示す図である。
図10】売上高推定部による推定結果の例を示す図である。
図11】粗利推定部による推定結果の例を示す図である。
図12】粗利推定部による推定結果の例を示す図である。
図13】第1実施例における商品価格最適化支援モデルを示す図である。
図14】第2実施例における商品価格最適化支援モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を説明する前に、まず概要を説明する。
多くの小売業者がロイヤリティプログラム(ポイントプログラム等)を実施し、商品購入時に購入者はロイヤリティカード(ポイントカード等)を提示することがある。これに伴い、小売業者等の情報システムでは、商品の販売実績を示すPOSデータ(何が、いつ、どこで、いくつ、いくらで売れたかを示すデータ)に、誰に売れたかという買い手の情報を追加したID付きのPOSデータ(以下「IDPOSデータ」と呼ぶ。)が蓄積されることがあり、IDPOSデータの活用が模索されている。
【0012】
以下の第1実施例および第2実施例では、地理的に区画された複数のエリアのそれぞれと、エリアをグループ化したエリアタイプ(エリアクラスタとも言える)とを対応付けたエリアタイプデータと、IDPOSデータとを結びつけて分析することにより、商品に対する最適な価格設定を支援する技術を提案する。エリアタイプデータは、複数のエリアと、複数のエリアタイプとの対応関係を示すデータとも言える。
【0013】
(第1実施例)
図1は、第1実施例の情報処理システム100の構成を示す。情報処理システム100は、エリアタイプDB10、IDPOS−DB12、情報分析装置14、ユーザ端末16を備える。これらの装置は、LAN・WAN・インターネット等を含む通信網18を介して接続される。
【0014】
エリアタイプDB10は、エリアタイプデータを保持するデータベースサーバである。図2は、エリアタイプDB10に保持されるエリアタイプデータの構成を示す。同図の「エリアタイプ」欄には、エリアタイプの識別情報が設定される。「エリア」欄には、エリアタイプに属する1以上のエリアが設定される。例えば、日本全国約18万個の町丁目のそれぞれがエリアとして設定され、50個程度のエリアタイプのいずれかに分類されてもよい。「人口」欄には、エリアの人口が設定される。
【0015】
「住民属性」欄には、エリアタイプの住民属性が設定され、同一のエリアタイプに属するエリアに共通して当てはまる住民属性が設定される。この住民属性には、各エリアタイプについての人口統計学的な属性データを示すデモグラフィック属性と、各エリアタイプの住人が有する価値観やライフスタイルといった人間心理にかかわる属性データを示すサイコグラフィック属性が含まれる。
【0016】
デモグラフィック属性の例としては、「30〜40代の比較的小さな子供がいる核家族」、「収入が平均よりもやや高く、大学卒以上の人が多い」、「子供が2人」などがある。一方で、サイコグラフィック属性の例としては、「女性20代について、ブランド・安全性・経済性を非常に重視するが、環境指向はほとんどない」、「女性30代について、ブランドをやや重視し、環境指向である」、「リスク寛容度が比較的高い」などがある。つまり、エリアタイプの住民属性は、エリアタイプに居住する消費者像を示す情報であり、消費者の年齢、所得水準、職業、学歴、家族構成、生活環境、趣向、考え方等が含まれる。
【0017】
「住民指標値」欄には、エリアタイプの住民属性を指標化した住民指標値が設定される。住民指標値は、エリアタイプの住民属性が複数種類の評価基準のそれぞれと適合する度合いを所定の評価関数により指標化した複数種類の指標値である。住民指標値の具体例としては、平均年収、平均世帯人数、世帯あたりの平均子供数、30歳代割合、40歳代割合等である。言い換えれば、住民指標値は、コンピュータによる計算処理のために、住民属性を複数種類の数値に変換したものであるといえる。
【0018】
エリアタイプデータの作成方法の一例を説明する。エリアタイプデータの作成には、各エリアについての属性情報であって、公開された各種の統計情報と、独自の推計情報と、アンケートの結果情報を用いる。統計情報には、年代の比率、性別の比率、職業の比率、学歴比率等が含まれる。推計情報には、平均所得、平均資産、平均地価等が含まれる。アンケートの結果情報には、ライフスタイル、価値観、消費趣向等の回答結果が含まれる。定性的な情報は、所定の評価関数により指標値化する。エリアタイプデータを作成する不図示の装置は、各エリアについて指標値化された各種属性情報を変量とするクラスタ分析により、各エリアをグループ分けしてもよい。なお、クラスタ分析に使用された各種指標値を住民指標値欄の値としてもよく、住民指標値欄の値に基づいて住民属性欄に設定すべきデータを人間の判断により設定してもよい。また、各エリアにおける各種商品の販売実績についてもクラスタ分析の変量としてもよい。
【0019】
図1に戻り、IDPOS−DB12は、IDPOSデータを保持するデータベースサーバである。IDPOS−DB12に保持されるIDPOSデータは、複数の店舗における複数種類の商品の販売実績を示すデータである。また、IDPOSデータは、商品を顧客へ販売した店舗を示すデータ(例えば店舗ID)と、販売された商品を示すデータ(例えば商品ID)と、販売された商品の価格と、商品を購入した顧客の居住エリア(例えば町丁目を示すデータ)とを含む。なお、IDPOSデータは、商品を購入した顧客のデータとして、顧客のID(例えばポイントカードのID)のみを含む構成でもよい。この場合、各顧客の居住エリアは別の装置や別のテーブルに保持されてよく、顧客のIDによりその顧客の居住エリアを特定可能(言い換えれば対応付け可能)な構成であってもよい。
【0020】
情報分析装置14は、分析対象となる特定の小売店舗(以下「分析対象店舗」と呼ぶ。)において、分析対象となる特定の商品(以下「分析対象商品」と呼ぶ。)を販売する際の価格を適切に設定することを支援するためのデータ処理(例えば分析処理、推定処理、シミュレーション)を実行する。分析対象店舗および分析対象商品は、ユーザ端末16から指定されてもよい。
【0021】
ユーザ端末16は、ユーザの操作に応じて、情報分析装置14に対して分析処理の開始を指示し、また、情報分析装置14から分析結果を取得してユーザに提示する情報端末である。ユーザ端末16は、PCやタブレット端末であってもよい。また、ユーザ端末16は、ウェブブラウザを介して情報分析装置14へアクセスするウェブクライアント装置であってもよく、この場合、情報分析装置14は、ウェブサーバの機能を備えてもよい。
【0022】
図3は、図1の情報分析装置14の機能構成を示すブロック図である。情報分析装置14は、制御部20、記憶部22、通信部24を備える。制御部20は、情報分析装置14における各種データ処理を実行する。記憶部22は、制御部20により参照または更新されるデータを記憶する記憶領域である。通信部24は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。制御部20は、通信部24を介してエリアタイプDB10、IDPOS−DB12、ユーザ端末16とデータを送受する。
【0023】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPU・メモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0024】
例えば、制御部20の各ブロックの機能はコンピュータプログラムとして実装され、そのコンピュータプログラムが情報分析装置14のストレージにインストールされてもよい。そして情報分析装置14のCPUが、そのコンピュータプログラムをメインメモリへ読み出して実行することにより制御部20の各ブロックの機能が発揮されてもよい。また、記憶部22の各ブロックは、情報分析装置14のメモリやストレージがデータを記憶することにより実現されてもよい。
【0025】
記憶部22は、分析結果保持部26を含む。分析結果保持部26は、後述する制御部20の各機能ブロックにより生成されたデータを保持する。
【0026】
制御部20は、エリアタイプ取得部28、IDPOS取得部30、エリアタイプ別販売実績導出部32、価格弾性値導出部34、顧客数導出部36、購買頻度導出部38、推定部40、分析結果提供部48を含む。エリアタイプ取得部28は、エリアタイプデータをエリアタイプDB10から取得する。IDPOS取得部30は、IDPOSデータを販売実績データとしてIDPOS−DB12から取得する。IDPOS取得部30が取得する販売実績データは、商品販売の事実ごとに記録されたものであり、言い換えれば、販売された商品ごとのデータであるため、以下では適宜「商品別販売実績データ」と呼ぶ。
【0027】
エリアタイプ取得部28とIDPOS取得部30は、ユーザ端末16から分析処理の開始が指示された場合に、エリアタイプデータおよびIDPOSデータを取得してもよい。エリアタイプ取得部28とIDPOS取得部30は、エリアタイプデータとIDPOSデータの全体を一括して取得してもよい。または、エリアタイプ取得部28とIDPOS取得部30は、情報分析装置14における分析処理で必要が生じる都度、エリアタイプデータとIDPOSデータそれぞれの必要部分を随時取得してもよい。なお、データを取得することは、データを参照すること、データをメモリに読み込むことを含む。
【0028】
実施例では、エリアタイプデータとIDPOSデータは、情報分析装置14とは別のエリアタイプDB10とIDPOS−DB12に保持されるが、エリアタイプデータとIDPOSデータの少なくとも一方は情報分析装置14の記憶部22に保持されてもよい。その場合、エリアタイプ取得部28とIDPOS取得部30は、記憶部22に保持されたエリアタイプデータとIDPOSデータをメモリへ読み込んでもよい。
【0029】
IDPOSデータが顧客IDを含むが顧客の居住エリア情報を含まない場合、IDPOS取得部30は、IDPOSデータをIDPOS−DB12から取得後、顧客の属性情報(住所等の居住エリアを示す情報)を保持する他の装置へアクセスしてもよい。そしてIDPOS取得部30は、顧客IDをキーとして顧客の居住エリア情報を当該他の装置から取得してもよい。いずれにしても、IDPOS取得部30は、商品を顧客へ販売した店舗と、商品の販売価格と、顧客の居住エリアを含む販売実績データを取得する。
【0030】
なお、本実施例では、IDPOS取得部30が取得する商品別販売実績データは、複数の店舗で販売された複数種類の商品に関するIDPOSデータとする。変形例として、IDPOS取得部30は、少なくとも、IDPOSデータが記録された複数の店舗のうち分析対象商品を顧客へ販売した店舗を示すデータと、分析対象商品の販売価格および販売数量(特に分析対象商品の販売実績がある店舗での販売価格と販売数量)と、分析対象商品を購入した顧客の居住エリアを含む商品別販売実績データ(すなわちIDPOSデータの一部)を取得すればよい。例えば、ユーザ端末16から分析対象商品が指定された場合、IDPOS取得部30は、その分析対象商品に関するIDPOSデータのみをIDPOS−DB12から取得してもよい。
【0031】
エリアタイプ別販売実績導出部32は、エリアタイプ取得部28により取得されたエリアタイプデータと、IDPOS取得部30により取得された商品別販売実績データとに基づいて、エリアタイプごとの販売実績(以下「エリアタイプ別販売実績データ」と呼ぶ。)を導出する。エリアタイプ別販売実績導出部32は、導出したエリアタイプ別販売実績データを分析結果保持部26へ格納する。
【0032】
例えば、エリアタイプ別販売実績導出部32は、エリアタイプデータを参照して、商品別販売実績データの各レコードに対して、各レコードに含まれる顧客の居住エリアに対応するエリアタイプを各レコードに付加することにより、商品別販売実績データをエリアタイプ別販売実績データに変換してもよい。またエリアタイプ別販売実績導出部32は、商品別販売実績データの複数のレコードを、各レコードに含まれる顧客の居住エリアに対応するエリアタイプごとにグループ化することによりエリアタイプ別販売実績データを生成してもよい。
【0033】
価格弾性値導出部34は、エリアタイプ別販売実績導出部32により導出されたエリアタイプ別販売実績データに基づいて、分析対象商品の複数の販売価格のそれぞれに応じた販売数量をエリアタイプごとに特定し、分析対象商品のエリアタイプごとの価格弾性値を導出する。価格弾性値導出部34は、分析対象商品のエリアタイプごとの価格弾性値を示す価格弾性値データを分析結果保持部26へ格納する。
【0034】
例えば、価格弾性値導出部34は、(1)エリアタイプ別販売実績データのレコードのうち、分析対象商品の販売に関するレコードを抽出し、(2)抽出したレコードをエリアタイプと販売価格の組み合わせごとにグループ分けし、(3)各グループのレコードが示す販売数量を合計して、エリアタイプと販売価格の組み合わせごとの販売数量を導出してもよい。そして価格弾性値導出部34は、所定の基準価格での販売数量と、基準価格とは異なる価格での販売数量との比を価格弾性値として導出してもよい。
【0035】
図4は、価格弾性値導出部34により導出される価格弾性値データの例を示す。同図は、ある分析対象商品(例えばユーザにより指定された500mlペットボトル飲料の特定の商品)について、140円を基準価格とした場合の各エリアタイプの価格弾性値データを示している。同図の価格弾性値データは、販売価格が下がるほど販売数量(比)が大きくなり、販売価格が上がるほど販売数量(比)が小さくなることを示している。基準価格は、ユーザ端末16において指定されてもよく、商品単位または商品のカテゴリの単位で予め定められてもよい。
【0036】
価格弾性値導出部34は、エリアタイプごとの価格弾性値データとして、販売価格を変量とする関数(回帰式、グラフ、近似曲線等)を導出してもよい。図5は、価格弾性値導出部34により導出される価格弾性値データの例を示す。同図は、ある分析対象商品について、140円を基準価格とした場合のあるエリアタイプでの価格弾性値データ(グラフ)を示している。言い換えれば、分析対象商品の販売価格を説明変数とし、分析対象商品の販売数量比を目的変数とする回帰曲線を示している。図4と同様に図5においても、販売価格が下がるほど販売数量(比)が大きくなり、販売価格が上がるほど販売数量(比)が小さくなることを示している。
【0037】
なお、価格弾性値導出部34は、所定の基準価格での販売数量と、基準価格とは異なる価格での販売数量とを比較する場合に、それぞれの価格での販売数量を、それぞれの価格で分析対象商品を販売した店舗数で正規化し、正規化後の販売数量の比を価格弾性値として導出してもよい。例えば、所定の基準価格での販売数量をその基準価格で販売した店舗数で割り、かつ、基準価格とは異なる価格での販売数量をその異なる価格で販売した店舗数で割り、それぞれの商の比を価格弾性値として導出してもよい。また、価格弾性値導出部34は、所定の基準価格での各店舗での平均販売数量と、基準価格とは異なる価格での平均販売数量との比を価格弾性値として導出してもよい。この態様によると、各販売価格を採用した店舗数の差を埋めて、価格弾性値の正確度を高めることができる。
【0038】
図3に戻り、顧客数導出部36は、エリアタイプ別販売実績導出部32により導出されたエリアタイプ別販売実績データに基づいて、複数の店舗のうち所定の分析対象店舗の顧客数であって、複数のエリアタイプのそれぞれに居住する顧客数を導出する。以下では、分析対象店舗を含む複数の店舗において何らかの商品を購入した顧客(すなわち商品購入の事実がIDPOSに記録された顧客)を「購買顧客」とも呼ぶ。顧客数導出部36は、分析対象店舗におけるエリアタイプごとの購買顧客数を導出する。
【0039】
例えば、顧客数導出部36は、(1)エリア別販売実績データのレコードのうち、分析対象店舗における何らかの商品販売の事実が記録されたレコードを抽出し、(2)抽出したレコードをエリアタイプごとにグループ分けしてもよい。そして(3)各グループに属するレコード数(言い換えれば購買顧客数)を計数して、エリアタイプごとの購買顧客数を導出してもよい。
【0040】
顧客数導出部36は、分析対象店舗のエリアタイプごとの顧客数を示す顧客数データを分析結果保持部26へ格納する。図6は、顧客数導出部36により導出される顧客数データの例を示す。図6の例では、分析対象店舗の顧客が30種のエリアタイプのいずれにも存在するが、店舗によっては特定のエリアタイプに居住する顧客は0かもしれない。
【0041】
図3に戻り、購買頻度導出部38は、エリアタイプ別販売実績導出部32により導出されたエリアタイプ別販売実績データに基づいて、分析対象商品のエリアタイプごとの購買数量を示す購買頻度を導出する。具体的には、エリアタイプ別販売実績導出部32は、何らかの商品を購入した購買顧客あたりの分析対象商品の購買数量を示す購買頻度をエリアタイプごとに導出する。購買数量は、店舗から見た場合、販売数量とも言える。また、購買頻度は、複数の店舗のいずれかで何らかの商品を購買する顧客が、分析対象商品を購買する確率とも言える。本実施例では、エリアタイプ別販売実績データに集計された全ての店舗の購買顧客を対象として購買頻度(全店ベース)を導出する。変形例として、購買頻度導出部38は、分析対象店舗の購買顧客を対象として購買頻度(個店ベース)を導出してもよい。
【0042】
購買頻度導出部38は、分析対象商品のエリアタイプごとの購買頻度を示す購買頻度データをエリアタイプ取得部28へ格納する。図7は、購買頻度導出部38により導出される購買頻度データの例を示す。例えば、購買頻度導出部38は、エリアタイプ別販売実績データの各エリアタイプのレコードから、各エリアタイプにおける分析対象商品の購買数量(言い換えれば販売数量)を算出するとともに、各エリアタイプにおける購買顧客数(言い換えれば何らかの商品の購買事実が記録されたレコード数)を算出してもよい。そして購買頻度導出部38は、各エリアタイプにおける分析対象商品の購買数量と、各エリアタイプにおける購買顧客数との割合を求めることで、各エリアタイプにおける購買頻度を導出してもよい。
【0043】
本実施例の購買頻度導出部38は、所定の基準価格で販売された分析対象商品のエリアタイプごとの購買数量を示す購買頻度(すなわち基準価格ベースの購買頻度)を導出する。基準価格は、ユーザ端末16において指定されてもよく、商品単位または商品のカテゴリの単位で予め定められてもよい。具体的には、購買頻度導出部38は、所定の基準価格で販売された分析対象商品の購買顧客あたりの購買数量を示す購買頻度をエリアタイプごとに導出する。
【0044】
例えば、購買頻度導出部38は、エリアタイプ別販売実績データの各エリアタイプのレコードに基づいて、各エリアタイプにおける分析対象商品(ただし基準価格が設定されたもの)の購買数量を算出するとともに、各エリアタイプにおける購買顧客数を算出してもよい。そして購買頻度導出部38は、各エリアタイプにおける分析対象商品の購買数量と、各エリアタイプにおける購買顧客数との比率を求めることで、各エリアタイプにおける基準価格ベースの購買頻度を導出してもよい。図7の購買頻度データでは、複数の店舗に亘るエリアタイプ「Type1」に居住する購買顧客が、所定の基準価格にて販売された分析対象商品を購入した実績としての平均販売数量(平均購買数量)が「0.19」と算出されている。より具体的には、購買顧客と来店回数の積が5に達すると(例えば5人の購買顧客が1回ずつ来店すると)、所定の基準価格の分析対象商品が1つ購買されることを示している。
【0045】
図3に戻り、推定部40は、価格弾性値導出部34により導出された分析対象商品のエリアタイプごとの価格弾性値と、顧客数導出部36により導出された分析対象店舗のエリアタイプごとの顧客数と、購買頻度導出部38により導出された分析対象商品のエリアタイプごとの購買頻度に基づいて、分析対象店舗における分析対象商品の売上に関する情報を推定する。言い換えれば、分析対象店舗における分析対象商品の販売を支援するための情報を生成する。推定部40は、販売数量推定部42、売上高推定部44、粗利推定部46を含む。
【0046】
販売数量推定部42は、分析対象店舗における分析対象商品の販売数量であり、分析対象商品に対して複数の販売価格のそれぞれを設定した場合の販売数量を推定する。例えば、販売数量推定部42は、(1)顧客数導出部36により導出された分析対象店舗のエリアタイプごとの顧客数と、購買頻度導出部38により導出された分析対象商品のエリアタイプごとの購買頻度(基準価格ベース)に基づいて、分析対象店舗において分析対象商品を基準価格で販売した場合の販売数量を推定してもよい。そして販売数量推定部42は、(2)価格弾性値導出部34により導出された分析対象商品のエリアタイプごとの価格弾性値に基づいて、分析対象店舗において分析対象商品を基準価格とは異なる価格で販売した場合の販売数量を推定してもよい。
【0047】
図8は、販売数量推定部42による推定結果の例を示す。販売数量推定部42は、上記(1)の処理として、エリアタイプごとに、分析対象店舗の顧客数に分析対象商品の購買頻度を乗ずることで、分析対象店舗において分析対象商品を基準価格で販売した場合の販売数量をエリアタイプごとに算出してもよい。図8では、販売価格140円の欄が該当する。また、販売数量推定部42は、上記(2)の処理として、エリアタイプごとに、基準価格での販売数量に価格弾性値を乗することで、分析対象店舗において分析対象商品を基準価格以外で販売した場合の販売数量をエリアタイプごとに算出してもよい。図8では、販売価格140円以外の欄(135円、145円等)が該当する。図8の表内の値の単位は「個」である。
【0048】
販売数量推定部42は、複数の販売価格のそれぞれに対応する販売数量の推定結果であり、例えば、エリアタイプごと販売価格ごとの販売数量の推定値と、販売価格ごとの販売数量合計の推定値を分析結果保持部26へ格納する。例えば、図8に示すデータを分析結果保持部26へ格納してもよい。
【0049】
図3に戻り、売上高推定部44は、販売数量推定部42による推定結果であり、複数の販売価格のそれぞれを設定した場合の販売数量の推定値に基づいて、複数の販売価格のそれぞれを設定した場合の売上高を推定する。例えば、売上高推定部44は、分析対象店舗において分析対象商品をある価格(ここでは「単価A」と呼ぶ。)で販売した場合の、複数のエリアタイプ(本実施例では30タイプ)での販売数量の合計に単価Aを乗じた結果を、分析対象商品を単価Aで販売した場合の売上高として算出してもよい。この計算を複数パターンの販売価格分繰り返し、複数の販売価格のそれぞれに対応する売上高を算出してもよい。
【0050】
図9は、売上高推定部44による推定結果の例を示す。同図では、分析対象商品の販売価格を100円〜180円のそれぞれに設定した場合のエリアタイプごとの売上(単位は千円)を示している。また、図の最下段では、各販売価格での30エリアタイプに亘る売上の合計値を示している。図10も、売上高推定部44による推定結果の例を示す。図10のグラフは、図9に示した販売価格の変化に伴う売上合計値の推移を示している。
【0051】
売上高推定部44は、複数の販売価格のそれぞれに対応する売上高の推定結果であり、例えば、エリアタイプごと販売価格ごとの売上高の推定値と、販売価格ごとの売上合計の推定値を分析結果保持部26へ格納する。例えば、図9または図10に示すデータを分析結果保持部26へ格納してもよい。
【0052】
図3に戻り、粗利推定部46は、販売数量推定部42および売上高推定部44による推定結果であり、分析対象商品に対して複数の販売価格のそれぞれを設定した場合の販売数量と売上高の推定値に基づいて、複数の販売価格のそれぞれを設定した場合の利益の大きさを推定する。本実施例では、分析対象店舗における分析対象商品の販売による粗利を推定する。例えば、粗利推定部46は、分析対象店舗において原価aの分析対象商品をある価格(ここでは「単価A」と呼ぶ。)で販売した場合の売上高(すなわち単価A×販売数量)から原価(すなわち原価a×販売数量)を減算した結果を、分析対象商品を単価Aで販売した場合の粗利として算出してもよい。この計算を複数パターンの販売価格分繰り返し、複数の販売価格のそれぞれに対応する粗利を算出してもよい。
【0053】
図11は、粗利推定部46による推定結果の例を示す。同図では、分析対象商品の販売価格を100円〜180円のそれぞれに設定した場合のエリアタイプごとの粗利(単位は千円)を示している。また、図の最下段では、各販売価格での30エリアタイプに亘る粗利の合計値を示している。図12も、売上高推定部44による推定結果の例を示す。図12のグラフは、図11に示した販売価格の変化に伴う粗利合計値の推移を示している。
【0054】
粗利推定部46は、複数の販売価格のそれぞれに対応する粗利の推定結果であり、例えば、エリアタイプごと販売価格ごとの粗利の推定値と、販売価格ごとの粗利合計の推定値を分析結果保持部26へ格納する。例えば、図11または図12に示すデータを分析結果保持部26へ格納してもよい。
【0055】
図3に戻り、分析結果提供部48は、分析結果の提供を要求する旨のデータがユーザ端末16から受信されると、分析結果保持部26に格納された分析結果のデータをユーザ端末16へ送信する。例えば、販売数量推定部42による販売数量の推定結果(図8)、売上高推定部44による売上高の推定結果(図9図10)、粗利推定部46による粗利の推定結果(図11図12)のうち少なくとも1つをユーザ端末16へ提供してもよい。また、価格弾性値(図4図5)、顧客数(図6)、購買頻度(図7)のデータをユーザ端末16へ提供してもよい。分析結果提供部48は、複数種類の分析結果のデータを一括してユーザ端末16へ提供してもよく、分析結果の提供要求で指定された種類の分析結果のみをユーザ端末16へ提供してもよい。
【0056】
以上の構成による情報処理システム100の動作を以下説明する。
まずユーザは、分析対象店舗の識別情報、分析対象商品の識別情報、分析対象商品の原価をユーザ端末16へ入力し、ユーザ端末16は、それらのパラメータを指定した分析要求を情報分析装置14へ送信する。オプションとして分析対象商品の基準価格がさらに指定されてもよい。情報分析装置14は、ユーザ端末16から分析対象要求を受け付けると、図13に示す分析処理を実行する。図13は、第1実施例の情報分析装置14による分析処理を模式化した商品価格最適化支援モデルを示す。
【0057】
情報分析装置14のIDPOS取得部30は、IDPOSデータを商品別販売実績データとしてIDPOS−DB12から取得する(S10)。情報分析装置14のエリアタイプ取得部28は、エリアタイプデータをエリアタイプDB10から取得する(S12)。情報分析装置14のエリアタイプ別販売実績導出部32は、S10およびS12で取得されたデータに基づいて、エリアタイプ別販売実績データを生成する(S14)。エリアタイプ別販売実績データに基づいて、情報分析装置14の価格弾性値導出部34は、分析対象商品についてのエリアタイプ別の価格弾性値を導出し(S16)、顧客数導出部36は、分析対象店舗についてのエリアタイプ別の顧客数を導出し(S18)、購買頻度導出部38は、分析対象商品についてのエリアタイプ別の購買頻度を導出する(S20)。
【0058】
情報分析装置14の販売数量推定部42は、S16〜S20で導出されたデータに基づいて、分析対象店舗にて分析対象商品を販売する場合の、複数の販売価格のそれぞれに対して見込まれる販売数量を推定する(S22)。売上高推定部44は、S22で推定された販売数量に基づいて、分析対象店舗にて分析対象商品を販売する場合の、複数の販売価格のそれぞれに対して見込まれる売上金額を推定する(S24)。粗利推定部46は、S22およびS24で推定されたデータに基づいて、分析対象店舗にて分析対象商品を販売する場合の、複数の販売価格のそれぞれに対して見込まれる粗利を推定する(S26)。
【0059】
ユーザ端末16は、ユーザの操作にしたがって、情報分析装置14による各種分析結果の提供要求を情報分析装置14へ送信する。情報分析装置14の分析結果提供部48は、分析結果保持部26に保持された各種分析結果のデータをユーザ端末16へ送信する。ユーザ端末16は、情報分析装置14から受信した分析結果のデータを所定の表示装置に表示させる。
【0060】
なお、情報分析装置14は、キーボードやマウス等の入力装置(不図示)と、表示装置(不図示)とに接続されてよい。この場合、情報分析装置14は、操作取得部と表示制御部をさらに備えてもよい。操作取得部は、入力装置から入力された操作を取得し、情報分析装置14は、その操作で指定されたパラメータ(分析対象商品、分析対象店舗等)に応じて分析処理を実行してもよい。表示制御部は、入力装置から入力された操作に応じて、分析結果保持部26に保持された分析結果を表示装置に表示させてもよい。
【0061】
第1実施例の情報分析装置14によると、店舗ごとに異なる商圏特性(言い換えれば来店する顧客の特性)にあわせて、販売数量、売上、または粗利を最大化できるように商品の価格設定を支援できる。また、店舗の立地やブランドごとに来店層(言い換えれば顧客の属性)が異なるが、情報分析装置14によると、このような来店層にあわせた最適な価格設定を実現できるように支援できる。
【0062】
さらに、情報分析装置14によると、分析対象店舗では販売実績がない価格レンジにおける販売数量、売上高、または粗利を推定できる。例えば、図9の売上高推定結果について、分析対象店舗では、価格100円〜120円、150円〜180円での販売実績がないとしても、他店の販売実績をエリアタイプを介して反映させることで、販売実績がない価格範囲についても売上高を推定できる。さらにまた、分析対象店舗では販売実績がない(言い換えれば取扱実績がない)商品についても、他店の販売実績をエリアタイプを介して反映させることで、販売実績がない商品についても販売数量、売上高、または粗利を推定できる。
【0063】
(第2実施例)
第1実施例では、分析対象店舗についてのエリアタイプごとの顧客数と、分析対象商品についてのエリアタイプごとの購買頻度(基準価格ベース)に基づいて、基準価格における販売数量を推定し、さらに、価格弾性値に基づいて基準価格以外の価格での販売数量を推定した。第2実施例では、分析対象店舗についてのエリアタイプごとの顧客数と、分析対象商品についてのエリアタイプごとの購買頻度(基準価格ベース)に基づいて、基準価格における売上に関する情報を推定する処理までを実行する。
【0064】
第2実施例の情報処理システム100の構成は第1実施例(図1)と同様であり、第2実施例の情報分析装置14の構成も第1実施例(図3)と同様である。ただし、第2実施例の情報分析装置14は価格弾性値導出部34を備えない点で、第1実施例と異なる。以下、第1実施例と異なる点を主に説明する。
【0065】
図14は、第2実施例の情報分析装置14による分析処理を模式化した商品価格最適化支援モデルを示す。同図のS30〜S38は、図13のS10〜S14、S18、S20と同じであるため説明を省略する。販売数量推定部42は、顧客数導出部36により導出された分析対象店舗のエリアタイプごとの顧客数と、購買頻度導出部38により導出された分析対象商品のエリアタイプごとの購買頻度(基準価格ベース)に基づいて、分析対象店舗において分析対象商品を基準価格で販売した場合の販売数量を推定する(S40)。基準価格は、購買頻度の導出に用いた分析対象商品の販売価格である。
【0066】
売上高推定部44は、販売数量推定部42による推定結果であり、分析対象商品に基準価格を設定した場合の販売数量の推定値に基づいて、その基準価格を設定した場合の分析対象商品の売上高を推定する(S42)。粗利推定部46は、販売数量推定部42および売上高推定部44による推定結果であり、分析対象商品に対して基準価格を設定した場合の販売数量と売上高の推定値に基づいて、当該基準価格を設定した分析対象商品販売時の粗利を推定する(S44)。すなわち第2実施例では、図8図12に示した分析結果のうち基準価格に関する分析結果(例えば140円の欄のデータ)のみを生成する。
【0067】
第2実施例では、ユーザは分析対象商品の基準価格をさらに入力し、ユーザ端末16は、分析対象商品の基準価格をさらに指定した分析要求を情報分析装置14へ送信してもよい。ユーザは、基準価格を変更しつつ分析要求を複数回行うことで、複数種類の基準価格のそれぞれに基づく分析結果(販売数量、売上高、粗利の推定値)を得ることができる。
【0068】
以上、本発明を第1実施例、第2実施例をもとに説明した。これらの実施例は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0069】
第1実施例の変形例を説明する。価格弾性値導出部34は、所定の年中行事または季節に対応する分析対象期間におけるエリアタイプごとの販売実績に基づいて、分析対象商品のエリアタイプごとの価格弾性値を導出してもよい。すなわち分析対象期間における価格弾性値を導出してもよい。例えば、ユーザは、所定の年中行事または季節に対応する分析対象期間を入力し、ユーザ端末16は、入力された分析対象期間を指定した分析要求を情報分析装置14へ送信してもよい。分析対象期間は、1週間から数ヶ月に亘る任意の期間が指定されてもよい。例えば、行事「クリスマス」に対応する期間して12月1日から12月25日に亘る期間が指定されてもよい。また、季節「夏」に対応する期間として6月1日から8月31日に亘る期間が指定されてもよい。
【0070】
IDPOSデータには分析対象商品の販売日付が記録され、そのIDPOSデータに基づくエリアタイプ別販売実績データも販売日付を含む。価格弾性値導出部34は、エリアタイプ別販売実績データの複数のレコードのうち、販売日付が分析対象期間に含まれるレコードを抽出して、抽出したレコードに基づいて分析対象商品についての価格弾性値データを生成してもよい。既述したように、分析対象期間はユーザ端末16により指定されてもよく、また、分析対象商品(または商品カテゴリ)ごとに直近のどれだけの期間を分析対象期間とするかが予め定められてもよい。本変形例によると、年中行事や季節性を考慮した価格弾性値が導出されるため、販売数量、売上高、または粗利の推定の正確度を一層高めることができる。
【0071】
第1実施例および第2実施例の変形例を説明する。上記変形例の価格弾性値導出部34とともに、または上記変形例の価格弾性値導出部34に代えて、購買頻度導出部38は、所定の年中行事または季節に対応する分析対象期間におけるエリアタイプごとの販売実績に基づいて、分析対象商品のエリアタイプごとの購買頻度を導出してもよい。すなわち分析対象期間における分析対象商品の購買頻度を導出してもよい。購買頻度導出部38は、エリアタイプ別販売実績データの複数のレコードのうち、販売日付が分析対象期間に含まれるレコードを抽出して、抽出したレコードに基づいて分析対象商品についての購買頻度データを生成してもよい。これにより、年中行事や季節性を考慮した購買頻度が導出されるため、販売数量、売上高、または粗利の推定の正確度を一層高めることができる。
【0072】
第1実施例および第2実施例の変形例を説明する。購買頻度導出部38は、エリアタイプ別販売実績データに基づいて、何らかの商品を購入した顧客である購買顧客に占める分析対象商品を購買した顧客の割合を購買頻度(購買確率ともいえる)としてエリアタイプごとに導出してもよい。例えば、購買頻度導出部38は、エリアタイプ別販売実績データの各エリアタイプのレコードから、全購買顧客数に占める分析対象商品を購入した顧客数の割合を求めることにより、各エリアタイプの購買頻度を導出してもよい。また、購買頻度導出部38は、各エリアタイプの全レコード数に占める、分析対象商品を購入したことを示すレコードの割合を、各エリアタイプの購買頻度として導出してもよい。また、購買頻度導出部38は、エリアタイプ別販売実績データに基づいて、所定の基準価格で販売された分析対象商品を購買した顧客が購買顧客に占める割合を購買頻度(購買確率ともいえる)としてエリアタイプごとに導出してもよい。本変形例の購買頻度によっても、販売数量、売上高、または粗利を推定することができる。
【0073】
なお、情報分析装置14で分析対象となる商品は有体物だけでなく、顧客が対価を支払って購入する無体物であってもよい。例えば、情報分析装置14による分析対象となる商品はサービス(役務)を含んでもよい。
【0074】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0075】
14 情報分析装置、 28 エリアタイプ取得部、 30 IDPOS取得部、 32 エリアタイプ別販売実績導出部、 34 価格弾性値導出部、 36 顧客数導出部、 38 購買頻度導出部、 40 推定部、 100 情報処理システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図14