(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明に係る基板処理方法に使用する基板処理装置について説明する。
図1は、本発明に係る基板処理方法に使用する熱処理装置1の要部構成を示す図である。熱処理装置1は、基板Wに対してフラッシュ光を照射するフラッシュランプアニール(FLA)装置である。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0020】
熱処理装置1は、基板Wを収容するチャンバー10と、チャンバー10内にて基板Wを載置して保持する保持プレート21と、チャンバー10から排気を行う排気部77と、チャンバー10内に処理ガスを供給するガス供給部74と、基板Wにフラッシュ光を照射するフラッシュ照射部60と、を備えている。また、熱処理装置1は、これらの各部を制御してフラッシュ光照射を実行させる制御部90を備える。
【0021】
チャンバー10は、フラッシュ照射部60の下方に設けられており、基板Wを収容可能な筐体である。チャンバー10の上部開口にはチャンバー窓69が装着されて閉塞されている。チャンバー10の側壁および底壁とチャンバー窓69とによって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。チャンバー10の天井部を構成するチャンバー窓69は、石英により形成された板状部材であり、フラッシュ照射部60から出射されたフラッシュ光を熱処理空間65に透過する石英窓として機能する。
【0022】
チャンバー10の側壁には、基板Wの搬入および搬出を行うための搬送開口部68が設けられている。搬送開口部68は、図示を省略するシャッターによって開閉可能とされている。搬送開口部68が開放されると、図外の搬送ロボットによってチャンバー10に対する基板Wの搬入および搬出が可能となる。また、搬送開口部68が閉鎖されると、熱処理空間65が外部との通気が遮断された密閉空間となる。
【0023】
保持プレート21は、予備加熱機構22を内蔵した金属製(例えば、アルミニウム)の略円板形状の部材であり、チャンバー10内にて基板Wを載置して水平姿勢(主面の法線方向が鉛直方向に沿う姿勢)に保持する。予備加熱機構22としては、例えばニクロム線等の抵抗発熱体を用いることができる。予備加熱機構22は、少なくとも保持プレート21のうちの載置する基板Wに対向する領域には均一な配設密度にて設けられている。このため予備加熱機構22は、当該領域を均一に加熱することができる。予備加熱機構22を備えることによって保持プレート21はホットプレートとして機能する。
【0024】
また、保持プレート21の内部には熱電対を用いて構成された温度センサ23が配設されている。温度センサ23は保持プレート21の上面近傍の温度を測定する。温度センサ23による測定結果は制御部90に伝達される。温度センサ23によって測定される保持プレート21の温度が予め設定された予備加熱温度となるように、制御部90が予備加熱機構22を制御する。すなわち、制御部90は、温度センサ23の測定結果に基づいて、保持プレート21の温度をフィードバック制御する。なお、温度センサ23は、保持プレート21が載置する基板Wが対向する領域に複数設けるようにしても良い。
【0025】
保持プレート21の上面には、図示を省略する複数個(3個以上)のプロキシミティボールが配設されている。プロキシミティボールは、例えばアルミナ(Al
2O
3)等の部材によって構成され、その上端が保持プレート21の上面から微少量だけ突出する状態で配設される。このため、複数個のプロキシミティボールによって基板Wを支持したときには、基板Wの裏面と保持プレート21の上面との間にいわゆるプロキシミティギャップと称される微小間隔が形成される。なお、保持プレート21の上面に石英製のサセプタを設置し、そのサセプタを介して基板Wを支持するようにしても良い。
【0026】
保持プレート21には、その上面に出没する複数本(本実施の形態では3本)のリフトピン24が設けられている。3本のリフトピン24の上端高さ位置は同一水平面内に含まれる。3本のリフトピン24はエアシリンダ25によって一括して鉛直方向に沿って昇降される。各リフトピン24は、保持プレート21に上下に貫通して設けられた挿通孔の内側に沿って昇降する。エアシリンダ25が3本のリフトピン24を上昇させると、各リフトピン24の先端が保持プレート21の上面から突出する。また、エアシリンダ25が3本のリフトピン24を下降させると、各リフトピン24の先端が保持プレート21の挿通孔の内部に埋入する。
【0027】
ガス供給部74は、チャンバー10内に処理ガスを供給する。ガス供給部74は、処理ガス供給源75とバルブ76とを備えており、バルブ76を開放することによってチャンバー10内の熱処理空間65に処理ガスを供給する。本実施形態では、処理ガスとして窒素(N
2)を用いるが、その他にチャンバー10内を一旦窒素(N
2)雰囲気に置換して低酸素雰囲気にした後、処理ガスとしてトルエン、ヘプタン、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、二硫化炭素またはテトラヒドロフラン等の溶剤の蒸気を供給するようにしても良い。なお、処理ガス供給源75としては、熱処理装置1に設けられたタンクと送給ポンプなどによって構成するようにしても良いし、熱処理装置1が設置される工場の用力を用いるようにしても良い。
【0028】
排気部77は、排気装置78およびバルブ79を備えており、バルブ79を開放することによってチャンバー10内の雰囲気を排気する。排気装置78としては、真空ポンプや熱処理装置1が設置される工場の排気ユーティリティを用いることができる。排気装置78として真空ポンプを採用し、ガス供給部74から何らのガス供給を行うことなく密閉空間である熱処理空間65の雰囲気を排気すると、チャンバー10内を真空雰囲気にまで減圧することができる。また、排気装置78として真空ポンプを用いていない場合であっても、ガス供給部74からガス供給を行うことなく排気を行うことにより、チャンバー10内を大気圧よりも低い気圧に減圧することができる。
【0029】
フラッシュ照射部60は、チャンバー10の上方に設けられている。フラッシュ照射部60は、複数本のフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ62と、を備えて構成される。フラッシュ照射部60は、チャンバー10内にて保持プレート21に保持される基板Wに石英のチャンバー窓69を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射する。
【0030】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持プレート21に保持される基板Wの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0031】
図2は、フラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。同図に示すように、コンデンサ93と、コイル94と、フラッシュランプFLと、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)96とが直列に接続されている。また、
図2に示すように、制御部90は、パルス発生器98および波形設定部99を備えるとともに、入力部67に接続されている。入力部67としては、キーボード、マウス、タッチパネル等の種々の公知の入力機器を採用することができる。入力部67からの入力内容に基づいて波形設定部99がパルス信号の波形を設定し、その波形に従ってパルス発生器98がパルス信号を発生する。
【0032】
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部に陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。コンデンサ93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧(充電電圧)に応じた電荷が充電される。また、トリガー電極91にはトリガー回路97から高電圧を印加することができる。トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングは制御部90によって制御される。
【0033】
IGBT96は、ゲート部にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)を組み込んだバイポーラトランジスタであり、大電力を取り扱うのに適したスイッチング素子である。IGBT96のゲートには制御部90のパルス発生器98からパルス信号が印加される。IGBT96のゲートに所定値以上の電圧(Highの電圧)が印加されるとIGBT96がオン状態となり、所定値未満の電圧(Lowの電圧)が印加されるとIGBT96がオフ状態となる。このようにして、フラッシュランプFLを含む駆動回路はIGBT96によってオンオフされる。IGBT96がオンオフすることによってフラッシュランプFLと対応するコンデンサ93との接続が断続され、フラッシュランプFLに流れる電流がオンオフ制御される。
【0034】
コンデンサ93が充電された状態でIGBT96がオン状態となってガラス管92の両端電極に高電圧が印加されたとしても、キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガー回路97がトリガー電極91に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には両端電極間の放電によってガラス管92内に電流が瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
【0035】
図1に戻り、リフレクタ62は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ62の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ62はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0036】
制御部90は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部90は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用アプリケーションやデータなどを記憶しておく磁気ディスク等を備えて構成される。制御部90のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0037】
次に、
図3は、本発明に係る基板処理方法に使用する塗布処理装置2の要部構成を示す図である。塗布処理装置2は、基板Wに対して誘導自己組織化材料からなる処理液を塗布して当該材料の処理膜を形成する。
【0038】
塗布処理装置2は、基板Wを保持するスピンチャック31、スピンチャック31の周囲を取り囲むように設けられたカップ37、および、処理液を吐出する塗布ノズル35を備える。スピンチャック31は、基板Wの下面中央部を真空吸着することによって当該基板Wを水平姿勢に保持する。スピンチャック31は、駆動モータ33によって水平面内にて回転駆動される。カップ37は、回転する基板Wから飛散した余剰の処理液を受け止めて回収する。
【0039】
塗布ノズル35は、スピンチャック31によって保持されて回転する基板Wの上面中心部に処理液を吐出する。塗布ノズル35は、誘導自己組織化技術に用いられる誘導自己組織化材料からなる処理液を基板Wに吐出する。回転する基板Wの上面中心部に誘導自己組織化材料からなる処理液が吐出されると、遠心力によって当該処理液が基板Wの上面に拡がって当該処理液が塗布される。これにより、基板W上に誘導自己組織化材料からなる処理膜が形成されることとなる。誘導自己組織化材料は、複数種類の重合体によって構成されるブロック共重合体を含む。ブロック共重合体を構成する複数種類の重合体は、互いに非相溶であることが好ましい。
【0040】
本実施形態では、2種類の重合体によって構成されるブロック共重合体を含む誘導自己組織化材料からなる処理液が塗布ノズル35から吐出される。2種類の重合体の組み合わせとして、例えば、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート(PS−PMMA)、ポリスチレン−ポリジメチルシロキサン(PS−PDMS)、ポリエチレン−ポリフェロセニルジメチルシラン(PS−PFS)、ポリスチレン−ポリエチレンオキシド(PS−PEO)、ポリスチレン−ポリビニルピリジン(PS−PVP)、ポリエチレン−ポリヒドロキシスチレン(PS−PHOST)、およびポリメチルメタクリレート−ポリメタクリレートポリヘドラルオリゴメリックシルスセスキオキサン(PMMA−PMAPOSS)等が挙げられる。
【0041】
次に、基板W上にパターンを形成する処理手順について説明する。
図4は、基板W上にパターンを形成する処理手順を示すフローチャートである。まず、本発明に係る基板処理方法に先立って、処理対象となる基板Wには下地層およびガイドパターンが形成される(ステップS1)。
図5は、ガイドパターンが形成された基板Wを模式的に示す断面図である。
【0042】
基板Wの上面には下地層51が形成されている。その下地層51の上にガイドパターン52が形成される。ガイドパターン52は、公知のフォトリソグラフィの手法によって形成される。すなわち、下地層51の上にレジストを塗布し、そのレジストに対してガイドパターン52の形状を描いたマスクを用いて露光処理を行い、その後現像処理によって余分なレジストを除去してガイドパターン52を形成する。
【0043】
図5に示すようなガイドパターン52が形成された基板Wが塗布処理装置2に搬入されて誘導自己組織化材料の処理膜が成膜される(ステップS2)。
図6は、誘導自己組織化材料の処理膜が形成された基板Wを模式的に示す断面図である。塗布処理装置2においては、
図5に示すような基板Wがスピンチャック31に保持されて水平面内で回転される。その回転する基板Wの上面中心部に塗布ノズル35から2種類の重合体によって構成される誘導自己組織化材料の処理液が吐出される。これにより、
図6に示すように、ガイドパターン52が形成されていない下地層51上の領域に誘導自己組織化材料からなる処理膜53が形成される。
【0044】
次に、処理膜53が形成された基板Wが熱処理装置1に搬入される。熱処理装置1のチャンバー10内に搬入された基板Wは保持プレート21の上面よりも上側に突き出た3本のリフトピン24に渡される。基板Wを受け取ったリフトピン24が下降してリフトピン24の先端が保持プレート21の挿通孔の内部に埋入することにより、当該基板Wは保持プレート21の上に載置される。
【0045】
また、基板Wがチャンバー10内に搬入されて熱処理空間65が密閉空間とされた後、ガス供給部74がチャンバー10内に窒素ガスを供給するとともに排気部77が排気を行ってチャンバー10内を窒素雰囲気に置換する。これにより、チャンバー10内の熱処理空間65は低酸素雰囲気(酸素濃度10ppm以下)とされる。
【0046】
保持プレート21は、内蔵する予備加熱機構22によって予め設定された予備加熱温度に加熱されている。基板Wが保持プレート21に載置されることによって、誘導自己組織化材料からなる処理膜53を含む基板Wの全体が予備加熱される(ステップS3)。保持プレート21による処理膜53の予備加熱温度は、2種類の重合体によって構成される誘導自己組織化材料が相分離する温度であり、具体的には室温から350℃である(本実施形態では250℃)。なお、2種類の重合体の組み合わせによっては、室温で相分離するものもあり、そのような重合体の誘導自己組織化材料からなる処理膜53の場合には、予備加熱機構22は保持プレート21を加熱することなく処理膜53の予備加熱は行われない。或いは、予備加熱機構22は保持プレート21を所定の室温に正確に温調するようにしても良い。
【0047】
処理膜53が形成された基板Wが保持プレート21によって予備加熱されることにより、誘導自己組織化材料からなる処理膜53のミクロ相分離が生じる。
図7は、処理膜53に相分離が生じた基板Wを模式的に示す断面図である。処理膜53は、2種類の重合体によって構成されるブロック共重合体を含む誘導自己組織化材料からなる。2種類の重合体を含む処理膜53が所定の予備加熱温度で予備加熱されることによって、それら2種類の重合体が相分離し、一方の重合体からなるパターンP1と他方の重合体からなるパターンP2とが形成されるのである。
図7の例では、ガイドパターン52に沿うように、線状のパターンP1と線状のパターンP2とが交互に形成される。
【0048】
これにより、従来のフォトリソグラフィの手法によって形成されたガイドパターン52の線内により微細な線状のパターンP1およびパターンP2が形成されることとなる。従って、誘導自己組織化材料からなる処理膜53の相分離を利用することにより、従来のフォトリソグラフィによるパターン微細化の限界であった45nmよりもさらに微細なパターンを形成することが可能となる。
【0049】
但し、誘導自己組織化技術では、2種類の重合体が加熱されて相分離する際に、パターンに欠陥が生じやすい。例えば、隣り合う2本のパターンP1が合流して1本となるような欠陥が生じることがある。保持プレート21による加熱のみであっても、より高温で処理膜53を加熱する、または、加熱処理時間を長時間とすることによってこのような欠陥を低減することはできる。しかしながら、350℃よりも高い温度で処理膜53を加熱すると、処理膜53を構成する重合体が分解するという問題が生じる。また、350℃以下の加熱温度で欠陥を低減するには、加熱処理時間を1時間以上とする必要があり、現実的なスループットが得られない。
【0050】
このため、本実施形態においては、誘導自己組織化材料からなる処理膜53を予備加熱しつつ、処理膜53にフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射している(ステップS4)。フラッシュランプFLがフラッシュ光照射を行うに際しては、予め電源ユニット95によってコンデンサ93に電荷を蓄積しておく。そして、コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にて、制御部90のパルス発生器98からIGBT96にパルス信号を出力してIGBT96をオンオフ駆動する。
【0051】
パルス信号の波形は、パルス幅の時間(オン時間)とパルス間隔の時間(オフ時間)とをパラメータとして順次設定したレシピを入力部67から入力することによって規定することができる。このようなレシピをオペレータが入力部67から制御部90に入力すると、それに従って制御部90の波形設定部99はオンオフを繰り返すパルス波形を設定する。そして、波形設定部99によって設定されたパルス波形に従ってパルス発生器98がパルス信号を出力する。その結果、IGBT96のゲートにはオンオフを繰り返すパルス信号が印加され、IGBT96のオンオフ駆動が制御されることとなる。具体的には、IGBT96のゲートに入力されるパルス信号がオンのときにはIGBT96がオン状態となり、パルス信号がオフのときにはIGBT96がオフ状態となる。
【0052】
また、パルス発生器98から出力するパルス信号がオンになるタイミングと同期して制御部90がトリガー回路97を制御してトリガー電極91に高電圧(トリガー電圧)を印加する。コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にてIGBT96のゲートにパルス信号が入力され、かつ、そのパルス信号がオンになるタイミングと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されることにより、パルス信号がオンのときにはガラス管92内の両端電極間で必ず電流が流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
【0053】
このように、回路中にスイッチング素子たるIGBT96を接続してそのゲートにオンオフを繰り返すパルス信号を出力することにより、コンデンサ93からフラッシュランプFLへの電荷の供給をIGBT96によって断続してフラッシュランプFLに流れる電流を制御している。その結果、いわばフラッシュランプFLの発光がチョッパ制御されることとなり、コンデンサ93に蓄積された電荷が分割して消費され、極めて短い時間の間にフラッシュランプFLが点滅を繰り返す。但し、フラッシュランプFLに流れる電流値が完全に”0”になる前に次のパルスがIGBT96のゲートに印加されて電流値が再度増加するため、フラッシュランプFLが点滅を繰り返している間も発光出力が完全に”0”になるものではない。従って、比較的間隔の短いパルス信号がIGBT96に出力されているときには、その間フラッシュランプFLが連続して発光していることとなる。
【0054】
IGBT96によってフラッシュランプFLに流れる電流をオンオフ制御することにより、フラッシュランプFLの発光パターン(発光出力の時間波形)を自在に規定することができ、発光時間および発光強度を自由に調整することができる。IGBT96のオンオフ駆動のパターンは、入力部67から入力するパルス幅の時間とパルス間隔の時間とによって規定される。すなわち、フラッシュランプFLの駆動回路にIGBT96を組み込むことによって、入力部67から入力するパルス幅の時間とパルス間隔の時間とを適宜に設定するだけで、フラッシュランプFLの発光パターンを自在に規定することができるのである。
【0055】
具体的には、例えば、入力部67から入力するパルス間隔の時間に対するパルス幅の時間の比率を大きくすると、フラッシュランプFLに流れる電流が増大して発光強度が強くなる。逆に、入力部67から入力するパルス間隔の時間に対するパルス幅の時間の比率を小さくすると、フラッシュランプFLに流れる電流が減少して発光強度が弱くなる。また、入力部67から入力するパルス間隔の時間とパルス幅の時間の比率を適切に調整すれば、フラッシュランプFLの発光強度が一定に維持される。さらに、入力部67から入力するパルス幅の時間とパルス間隔の時間との組み合わせの総時間を長くすることによって、フラッシュランプFLに比較的長時間にわたって電流が流れ続けることとなり、フラッシュランプFLの発光時間が長くなる。本実施形態においては、フラッシュランプFLの発光時間が0.1ミリ秒〜100ミリ秒の間に設定される。
【0056】
このようにしてフラッシュランプFLから処理膜53を含む基板Wの表面に0.1ミリ秒以上100ミリ秒以下の照射時間にてフラッシュ光が照射される。フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー10内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ62により反射されてからチャンバー10内へと向かう。
【0057】
フラッシュ光が照射された処理膜53を含む基板Wの表面は予備加熱温度から極短時間で昇温して瞬間的に200℃以上500℃以下にまで到達する。これにより、処理膜53は、瞬間的に200℃以上500℃以下に加熱されてエネルギーを受け取り、重合体の流動性が高まって欠陥を低減することができる。処理膜53を350℃よりも高い温度に加熱すると重合体が分解するおそれがあるが、フラッシュ光の照射時間は0.1ミリ秒以上100ミリ秒以下の極めて短時間であり、そのような極短時間処理膜53を350℃よりも高い温度に加熱したとしても重合体の分解は生じない。また、フラッシュ光の照射時間は0.1ミリ秒以上100ミリ秒以下の極めて短時間であるため、スループットの低下も発生しない。
【0058】
以上のように、誘導自己組織化材料からなる処理膜53を保持プレート21によって予備加熱しつつ、処理膜53にフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することにより、処理膜53を構成する2種類の重合体が適正に相分離し、欠陥の発生を抑制しつつ微細なパターンを形成することができる。
【0059】
フラッシュ光照射が終了すると、基板Wの表面温度が急速に降温する。そして、3本のリフトピン24が上昇し、保持プレート21に載置されていた基板Wを突き上げて保持プレート21から離間させる。基板Wが保持プレート21から離間することによって、基板Wは予備加熱温度からもさらに降温する。その後、搬送開口部68が開放され、基板Wがチャンバー10から搬出され、熱処理装置1における基板処理が完了する。
【0060】
次に、フラッシュ光照射による処理が完了した基板Wに対して露光処理が行われる(ステップS5)。露光処理は、熱処理装置1および塗布処理装置2とは異なる別途の露光処理装置によって行われる。ステップS5での露光処理は、マスクを用いてパターン露光ではなく、処理膜53を含む基板Wの表面の全面に一括して均一な露光処理を施すものである。露光処理により、処理膜53を構成する2種類の重合体のうちの一方の重合体と他方の重合体との間が切断され、パターンP1とパターンP2とが分離される。
【0061】
その後、露光処理が終了した基板Wに対して現像処理が行われる(ステップS6)。現像処理は、熱処理装置1および塗布処理装置2とは異なる別途の現像処理装置によって行われる。現像処理装置は、塗布処理装置2と類似の構成を備える(
図3)。現像処理では、処理膜53を含む基板Wの表面に現像液を供給し、一方のパターンP1を溶解して除去する。
【0062】
図8は、一方のパターンP1が除去された基板Wを模式的に示す断面図である。現像処理により一方のパターンP1が除去されることによって、基板W上のガイドパターン52が形成されていない領域には他方のパターンP2が残存することとなる。このようにして、基板Wには最終的に微細なパターンが形成される。
【0063】
本実施形態においては、誘導自己組織化材料からなる処理膜53を単に相分離温度で加熱するだけでなく、処理膜53を保持プレート21によって相分離温度で予備加熱しつつ、処理膜53にフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射している。相分離が進行しつつある処理膜53にフラッシュ光を照射することにより、重合体の流動性が高まって欠陥を低減することができる。すなわち、誘導自己組織化技術にフラッシュ光照射を適用することにより、欠陥の少ないパターンを形成することができるのである。また、誘導自己組織化技術であれば、45nmよりもさらに微細なパターンを形成することができる。
【0064】
フラッシュ光照射によって、処理膜53は瞬間的に重合体が分解する温度以上に加熱されるものの、そのような温度に加熱されている時間は1秒未満の極めて短時間であるため、重合体の分解は防止される。また、フラッシュ光の照射時間は0.1ミリ秒以上100ミリ秒以下の極めて短時間であるため、スループットの低下も生じない。
【0065】
また、本実施形態においては、チャンバー10内が酸素濃度10ppm以下の低酸素雰囲気とされた状態にて処理膜53にフラッシュ光を照射している。大気雰囲気中で処理膜53を加熱すると、特に処理膜53の膜表面近傍にて重合体の酸化による劣化が生じるのであるが、低酸素雰囲気にて処理膜53を処理することにより、重合体の酸化に起因したパターンの劣化を防止することができる。その結果、より欠陥の少ないパターンを形成することができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、チャンバー10内を窒素雰囲気としていたが、これに代えてチャンバー10内に溶剤を含む雰囲気を形成して処理膜53の処理を行うようにしても良い。チャンバー10内に溶剤を含む雰囲気を形成するときには、ガス供給部74がチャンバー10内を一旦窒素(N
2)雰囲気に置換して低酸素雰囲気にした後に、溶剤の蒸気を供給する。チャンバー10内に形成する雰囲気は、トルエン、ヘプタン、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、二硫化炭素およびテトラヒドロフランからなる群のうち少なくとも1の溶剤を含む雰囲気である。このような溶剤を含む雰囲気中にて処理膜53にフラッシュ光照射を行うことにより、溶剤によって誘導自己組織化材料からなる処理膜53を膨潤させることができ、相分離を促進してより欠陥の少ないパターンを形成することができる。
【0067】
また、フラッシュランプFLのフラッシュ光照射時間を調整することによってパターンの線幅を制御するようにしても良い。上述したように、本実施形態では、IGBT96によってフラッシュランプFLに流れる電流をオンオフ制御することにより、フラッシュランプFLの発光時間を自由に調整することができる。もっとも、フラッシュランプFLは原理上長時間発光できるものではなく、フラッシュランプFLのフラッシュ光照射時間は0.1ミリ秒〜100ミリ秒の間で自由に調整することができる。
【0068】
フラッシュランプFLのフラッシュ光照射時間と保持プレート21による予備加熱温度との組み合わせによって、パターンの線幅を調整することができる。本願発明者等の鋭意調査によれば、フラッシュ光照射時間が長いほど、また、予備加熱温度が高いほど基板W上に残存するパターンP2の線幅が太くなる。
【0069】
また、上記実施形態においては、処理膜53を形成した基板Wを予備加熱した後にフラッシュ光照射を1回行っていたが、予備加熱後にフラッシュランプFLによるフラッシュ光照射を複数回繰り返すようにしても良い。1回のフラッシュ光照射で処理膜53に強いエネルギーを与えると重合体が分解するおそれのある場合には、比較的弱いエネルギーのフラッシュ光照射を複数回繰り返すのが好適である。
【0070】
さらに、処理膜53に対する予備加熱とフラッシュ光照射との組み合わせ自体を複数回繰り返すようにしても良い。すなわち、1回の予備加熱およびフラッシュ光照射が完了した後に、再び予備加熱およびフラッシュ光照射の手順を繰り返すのである。この場合、1回の予備加熱およびフラッシュ光照射が完了した後に、基板Wを一旦予備加熱温度よりも低い温度に冷却するのが好ましい。