(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0021】
<1 実施形態>
<1.1 基板処理装置1の構成>
図1は、本実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す縦断面図である。
図2は、加熱プレート7を示す平面図である。
図3は、シート11の一部分を示す平面図である。
図4は、発熱部5の構成を示す概略的な平面図である。
【0022】
基板処理装置1は、主たる構成として、後述する加熱プレート7上に後述するシート11を介在させて処理対象の基板Wを載置することで該基板Wを加熱する加熱部10と、加熱部10を構成する加熱プレート7の上面における複数の領域の温度を検出する温度センサ81〜86と、制御部9と、を備える。
【0023】
加熱部10は、平面視で基板Wよりやや大径の円形状であり、シート11を介在させて加熱プレート7の上面に載置される基板Wを加熱する部分である。加熱部10は、基台4と、発熱部5と、伝熱部6と、シート11と、を下から順に積層して有する。本明細書では、基台4、発熱部5、および伝熱部6を含んで構成される部分を特に加熱プレート7と呼ぶ。この加熱プレート7が本発明における温調プレートに相当し、加熱部10が本発明の温調部に相当する。
【0024】
図4にしめすように、発熱部5は、互いに離間して面一に配された複数(本実施形態では6個)の発熱体51〜56を含む。発熱部5の中央部には円形状の発熱体51が配される。また、円形状の発熱体51を囲むように環状の発熱体52が配される。さらに、発熱体51、52を囲むように円弧状の4つの発熱体53〜56が約90度の中心角で回転対称に配される。各発熱体51〜56は、例えば、マイカヒータ等で構成される。
【0025】
温度センサ81〜86(
図4に点線丸印で図示)は、複数の発熱体51〜56の配置位置に対応して伝熱部6内にそれぞれ埋設される。そして、温度センサ81〜86のそれぞれは、伝熱部6の上面(すなわち、加熱プレート7の上面)における各領域を担当し、担当する各領域の温度値を検出する。また、各発熱体51〜56の上側に設けられた伝熱部6には、例えば、熱伝導率の高い銅やアルミニウム等の金属が利用される。
【0026】
したがって、各温度センサ81〜86の検出結果に基づいて制御部9が各発熱体51〜56への給電量を制御することで、加熱プレート7を構成する伝熱部6の上面(すなわち、加熱プレート7の上面)内における複数(本実施形態では6個)の領域R1〜R6が目標温度に調整される。
【0027】
また、本実施形態では、制御部9が、各温度センサ81〜86で検出される各温度値に基づいて、基板Wが加熱プレート7上に適切に載置されているかを判定する。この判定処理については、後ほど詳細に説明する。
【0028】
加熱プレート7の上面には、樹脂製のシート11が設けられている。シート11は、凸部13とシール部15とを含んで構成される。また、シール部15より外側において、第1開口部A1と第2開口部A2とが設けられている。
【0029】
シート11は、温度に応じた変形に対して拘束されることなく加熱プレート7の上面に設けられている。より詳しくは、シート11は、温調処理の際に、比較的広い温度域(例えば、室温から最高加熱温度(約200度)までの範囲)で昇温または降温する。
【0030】
このとき、シート11が加熱プレート7とは異なる熱膨張率を有するので、加熱プレート7に対してシート11が水平方向(面内方向)に伸縮する。シート11の加熱プレート7に対する相対的な伸縮がシート11自体の皺や撓み等を伴わずに自由に許容されている状態で、該シート11が加熱プレート7上に載置されている。具体的には、シート11を加熱プレート7に固定、固着されることなく直接載置してもよいし、加熱プレート7との間に水平方向への滑りを良好にする物質を介して載置してもよい。
【0031】
凸部13は、複数個(本実施形態では37個)であり、規則的に配置されている。各凸部13は円柱形状であり、その径は上端から下端側にかけてやや太くなっている。各凸部13の高さは、たとえば、シート11の凹部から75μmであり、シート11の裏面からでは125μmである。基板Wは、各凸部13の上端に当接されて支持される。シール部15は、平面視で基板Wの外径よりやや小径であり、凸部13の周囲を囲む環状である。シール部15の高さは、各凸部13の高さと同じである。本実施形態では、シール部15からシート11の外周縁までは同じ高さで一体に形成されている。このシール部15が基板Wと当接することで、基板Wとシート11との間に側方が閉じた微小空間msが形成される。なお、シール部15は基板Wの周縁部と当接する部位であり、
図2において内周円15aと外周円15bとの間によって囲まれる部分である。
【0032】
第1開口部A1は複数個(本実施形態では6個)であり、それぞれシール部15の外周円15bに接するように等間隔で形成されている。第2開口部A2も複数個(6個)であり、各第1開口部A1の間であって、第1開口部A1よりシート11の周縁側に設けられている。第1開口部A1は、この発明における開口部に相当する。
【0033】
シート11は、例えば、耐熱性のある樹脂をエッチング処理することで作られる。樹脂としては、さらに耐薬性が有していることが好ましい。具体的には、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、または耐熱性ゴム材料が、シート11に用いられる。
【0034】
加熱プレート7上には、シート11のほかに、それぞれ複数個(本実施形態では6個)のガイド21と、ボルト23と、止め輪25と、ガイド用リング27とが設けられる。ガイド21は、上部に傾斜面が形成された略円柱形状である。ガイド21としては、例えば、基板Wに傷をつけないピーク材が利用される。
【0035】
各ガイド21が、シート11の各第1開口部A1内に配置されて、加熱プレート7上に載置されている。各ガイド21も、加熱プレート7に固定、固着されていない。また、各ガイド21が配置されたとき、各ガイド21と各第1開口部A1との間に、シート11の伸縮を許容する程度に十分大きな隙間が形成される。この6個のガイド21によって基板Wの水平方向の位置決めが行われる。
【0036】
ガイド用リング27は、平面視で各ガイド21を囲むような中空部を有する円環状を呈した板状物である。ガイド用リング27の内周縁には各ガイド21の傾斜面の一部に当接するように、略半円形の切欠きが形成されている。さらに、ガイド用リング27には、第2開口部A2に対応する位置に6個の貫通孔が形成されている。各貫通孔にはボルト23が挿通される。各ボルト23にはガイド用リング27がボルト23から脱落するのを防止するために止め輪25が取り付けられる。そして、各ボルト23を第2開口部A2に挿通して、加熱プレート7に締結する。なお、ボルト23と第2開口部A2との間にも、ガイド21と第1開口部A1との間の隙間と同等、またはそれ以上の隙間が形成されている。
【0037】
ボルト23が加熱プレート7に所定量埋設されると、ガイド用リング27はガイド21に当接するとともに、止め輪から少し浮いた状態になる。これによって、ガイド用リング27はガイド21の位置合わせを行う。また、このとき、ガイド用リング27の下面とシート11の上面との間にわずかな間隔を形成するように構成されている。本実施形態では、シール部15より外側のシート11の厚みが125μmに対し、ガイド用リング27の下面を加熱プレート7の上面から300μmの高さとし、両者の間隔を175μmとしている。
【0038】
また、本実施形態では、排出孔31および貫通孔41が、加熱プレート7とシート11とにわたって貫通している。
【0039】
排出孔31は、微小空間msの気体を排出するために設けられている。排出孔31は複数個(本実施形態では6個)であり、各排出孔31には、加熱プレート7の下面側(すなわち、基台4の下面側)において、排出配管33の一端側が共通して連通接続されている。排出配管33の他端側には真空吸引源35が連通接続されている。この真空吸引源35は、例えば、クリーンルームに設けられたバキュームのユーティリティである。排出配管33には、圧力(負圧)を調整する開閉弁37と、圧力を計測する圧力計39とが設けられている。排出配管33と真空吸引源35とは、排出手段として機能する。
【0040】
貫通孔41は、昇降ピン43を挿通するために設けられている。貫通孔41は3個であり、平面視で加熱部10の中心を重心とする正三角形の各頂点にあたる位置にそれぞれ形成されている。各貫通孔41に挿通される昇降ピン43は、その下端側で図示省略の昇降機構に連結されている。昇降機構によって昇降ピン43が昇降することで、図示しない搬送手段との間で基板Wの受け渡しを行う。
【0041】
図5は、基板処理装置1の情報処理システムを示すブロック図である。
図6は、処理部90における機能的な構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図6には、処理部90がプログラムPを実行することで実現される各種機能が例示されている。
【0042】
この情報処理システムは、例えば、コンピューター等で構成され、バスラインBsを介して接続された、入力部93、出力部94、記憶部95、制御部9およびドライブ92を備えている。
【0043】
入力部93は、例えば、情報処理システム1を使用するユーザーの操作等に応じた信号を入力することができる。入力部93には、例えば、ユーザーの操作に応じた信号を入力可能なマウスおよびキーボード等を含む操作部、ユーザーの音声に応じた信号を入力可能なマイク、ユーザーの動きに応じた信号を入力可能なセンサー、および外部の機器からの信号を入力可能な通信部等が含まれ得る。
【0044】
出力部94は、各種情報を出力することができる。出力部94には、例えば、各種情報をユーザーが認識可能な態様で出力可能な表示部およびスピーカー、ならびに各種情報をデータの形式で出力可能な通信部等が含まれ得る。該表示部は、例えば、入力部93と一体化されたタッチパネルの形態を有していても良い。スピーカーでは、各種情報が可聴的に出力され得る。通信部では、各種情報が情報処理システム1の外部に配された各種機器に対してデータの形式で出力され得る。該通信部は、例えば、通信回線を介して各種外部装置との間においてデータを授受することができる。
【0045】
記憶部95は、各種の情報を記憶することができる。該記憶部95、例えば、ハードディスクおよびフラッシュメモリ等の記憶媒体によって構成され得る。記憶部95では、例えば、1つの記憶媒体を有する構成、2つ以上の記憶媒体を一体的に有する構成、ならびに2つ以上の記憶媒体を2つ以上の部分に分けて有する構成の何れの構成が採用されても良い。
【0046】
記憶部95には、例えば、後述する加熱処理を行うための基本プログラム、後述する判定処理を行うためのプログラムP、およびその他の各種データが記憶され得る。なお、記憶部95には、メモリ91が含まれても良い。
【0047】
制御部9は、例えば、プロセッサーとして働く処理部90および情報を一時的に記憶するメモリ91等を含む。処理部90としては、例えば、中央演算部(CPU)等の電子回路が採用され、メモリ91としては、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)などが採用され得る。本実施形態では、制御部9において記憶部95に記憶されているプログラムPが処理部90に読み込まれて実行されることで、基板Wが加熱プレート7に適切に載置されているか否かが判定される。なお、制御部9における各種情報処理によって一時的に得られる各種情報は、適宜メモリ91等に記憶され得る。
【0048】
ドライブ92は、例えば、可搬性の記憶媒体SMの脱着が可能な部分である。ドライブ92では、例えば、記憶媒体SMが装着されている状態で、該記憶媒体SMと制御部9との間におけるデータの授受が行われ得る。また、プログラムPが記憶された記憶媒体SMがドライブ92に装着されることで、記憶媒体SMから記憶部95内にプログラムPが読み込まれて記憶される態様が採用されても良い。
【0049】
処理部90は、プログラムPを実行することで実現される機能的な構成として、取得部901と、算出部902と、比較部903と、報知部904とを有している。これらの各部での処理におけるワークスペースとして、例えば、メモリ91が使用される。
【0050】
<1.2 加熱処理および判定処理の一例>
図7は、基板処理装置1の処理例を示すフロー図である。
図7において、ステップST1〜ST4は基板Wの加熱処理の一例を示し、ステップST5〜ST7は基板Wの載置に関する判定処理の一例を示している。
図8は、加熱処理の際に得られた各値を示すグラフである。
【0051】
以下では、
図7のステップST1〜ST4および
図8を参照しつつ、加熱処理の流れについて説明する。
【0052】
まず、加熱プレート7の上面内における各領域R1〜R6が目標温度に調整される(ステップST1:温調工程)。すなわち、制御部9が、発熱部5の各発熱体51〜56を加熱させて、加熱プレート7の温度を制御する。
【0053】
このとき、取得部901が、各領域R1〜R6について各温度センサ81〜86が検出した6つの温度値(検出温度値と呼ぶ)を基に、6つの温度値(取得温度値と呼ぶ)を取得する(取得工程)。各取得温度値は、各検出温度値と同値であってもよいし、各検出温度値に所定の補正処理を施して得られる値であってもよい。ここでは、各取得温度値が各検出温度値と同値である場合について説明し、各取得温度値が各検出温度値に所定の補正処理を施して得られる値である場合については後述する変形例で説明する。
【0054】
そして、各取得温度値に基づいて制御部9が各発熱体51〜56への給電量をフィードバック制御することで、加熱プレート7の上面内における各領域R1〜R6が目標温度(例えば、90度)に調整される。この温調工程および取得工程は、基板Wの搬入および搬出の前後も含めて継続的に実行される。
【0055】
各領域R1〜R6が目標温度に調整されると、基板Wが基板処理装置1に搬入されて、加熱プレート7上に基板Wが載置される(ステップST2:載置工程)。具体的には、まず、各昇降ピン43の各上端部が同じ高さを維持した状態で、各上端部が各貫通孔41を通じてシート11よりも高い位置まで上昇される。そして、図示しない搬送手段によって、基板Wが各昇降ピン43の各上端部に支持されるように受け渡される。その後、各昇降ピン43の各上端部が同じ高さを維持した状態で、各昇降ピン43が各貫通孔41を通じて加熱プレート7の上面よりも低い位置まで下降される。その結果、基板Wがシート11を介して加熱プレート7上に載置される。
【0056】
この載置状態では、基板Wはシート11の凸部13によって当接支持され、シール部15によって基板Wとシート11の間に形成される微小空間msの側方が閉塞される。このため、制御部9が圧力計39の計測結果を基に開閉弁37を操作して微小空間msの気体を排出することで、微小空間msの圧力は負圧に調整され、基板Wは加熱プレート7側に吸着されて該加熱プレート7上に載置される。
【0057】
図8における時刻T1が、載置工程によって加熱プレート7上に基板Wが載置されたタイミングである。このタイミングから一定期間(時刻T1〜T3の期間)は、前述した温調工程の期間中ではあるものの、基板Wが加熱プレート7から熱を吸収することで、一時的に各領域R1〜R6の各取得温度値が目標温度よりも低い状態となる。そして、一定期間(時刻T1〜T3の期間)が経過すると、制御部9による発熱部5のフィードバック制御によって、各取得温度値が再び目標温度付近に安定する。
【0058】
こうして所定期間、加熱プレート7による基板Wの加熱処理が継続される(ステップST3)。
【0059】
基板Wの加熱処理が完了すると、基板Wの吸着保持が解除されて、基板Wが基板処理装置1から搬出される(ステップST4)。具体的には、制御部9によって開閉弁37が閉止されて微小空間msの圧力が大気圧に復圧する。次いで、各昇降ピン43の各上端部が同じ高さを維持した状態で、各上端部が各貫通孔41を通じてシート11よりも高い位置まで上昇される。これにより、基板Wがシート11に支持された状態から基板Wが各昇降ピン43の各上端部に支持された状態に切り替わる。そして、図示しない搬送手段によって、基板Wが各昇降ピン43の各上端部から該搬送手段の支持部に受け渡される。
【0060】
こうして、加熱処理が完了した1枚の基板Wが搬出されると、後続の基板Wがまた基板処理装置1に搬入されて加熱処理が実行される。その後も同様に、基板処理装置1は1枚ずつ順次に基板Wの加熱処理を実行する。
【0061】
次に、ステップST5〜ST7および
図8を参照しつつ、基板Wが加熱プレート7上に正常に載置されているかを判定する判定処理の流れについて説明する。なお、この判定処理は、基板Wを加熱する期間(ステップST3)と並行して実行される処理である。
【0062】
上述したように、目標温度に調整された加熱プレート7上に基板Wを載置した後の期間(時刻T1〜T3の期間)は、基板Wが加熱プレート7から熱を吸収することで、一時的に各領域R1〜R6の各取得温度値が目標温度よりも低い状態となる。
【0063】
このとき、算出部902は、時刻T1〜T3の期間における各領域R1〜R6の各取得温度値の推移を基に、該期間における各取得温度値の平均値がピークに到達するタイミングを算出する(ステップST5:算出工程)。
【0064】
本実施形態では、加熱プレート7が基板Wを加熱する加熱タイプの温調プレートであるので、このピークは上記期間中における各取得温度値の平均値の最下点(具体的には、
図8の点P1)となる。したがって、算出部902は、ピークに到達するタイミングとして
図8の時刻T2を算出する。
【0065】
その後、比較部903が、このタイミングにおける各取得温度値のばらつきと予め設定された閾値とを比較する(ステップST6:比較工程)。各取得温度値のばらつきとしては、各取得温度値の標準偏差や各取得温度値における最小値と最大値との差など、種々の指標値を採用することができる。ここでは、一例として、各取得温度値のばらつきとして各取得温度値における最大値と最小値との差が採用され、且つ閾値として0.4℃という値が予め記憶部95に記憶されている場合について説明する。
【0066】
各取得温度値における最大値と最小値との差は
図8において太い実線グラフで示されており、時刻T2の各取得温度値における最大値と最小値との差は該グラフの点P2(すなわち、約0.24℃)である。したがって、比較部903は、各取得温度値のばらつきの指標である0.24℃と閾値である0.4℃とを比較して、各取得温度値のばらつきが閾値以下であると判定する。
【0067】
基板Wが加熱プレート7上に正常に載置されていない場合(例えば、基板Wが加熱プレート7に対して非平行な状態で載置されている場合)、加熱プレート7のうち基板Wとの距離が近い領域では相対的に大きく吸熱され、加熱プレート7のうち基板Wとの距離が遠い領域では相対的に小さく吸熱されることになる。
【0068】
そのため、比較部903によって各取得温度値のばらつきが閾値以下であるという比較結果が得られた場合には、各領域R1〜R6における吸熱のばらつきが小さく、基板Wが加熱プレート7上に正常に載置されていると考えられる。他方、比較部903によって各取得温度値のばらつきが閾値より大きいという比較結果が得られた場合には、各領域R1〜R6における吸熱量のばらつきが大きく、基板Wが加熱プレート7上に正常に載置されていないと考えられる。本実施形態では、この前者に該当するので、基板Wが加熱プレート7上に正常に載置されていると考えられる。
【0069】
報知部904は、比較部903における比較結果(本実施形態では、基板Wが加熱プレート7上に正常に載置されているという結果)を、出力部94を通じて基板処理装置1の使用者に報知する(ステップST7)。報知の態様は、表示部への表示やスピーカーからの音声出力など、種々の態様を採用しうる。その結果、使用者は基板Wが正常に載置された状態で加熱処理が実行されているか否かを把握することができる。
【0070】
<1.3 効果>
本実施形態では、ステップST5で1つのタイミングを特定し、このタイミングにおける複数の取得温度値のばらつきと閾値とを比較することで、基板Wが正常に載置されているか否かを判定する。このように、1つのタイミングのみについて演算を行うので、一定の期間について演算を行う態様(例えば、特許文献1に記載の態様)に比べ、基板Wが正常に載置されているかを簡易迅速に判定することができる。
【0071】
また、このタイミングは、目標温度に調整された加熱プレート7に基板Wを載置した後の期間(時刻T1〜T3の期間)において、各取得温度値の平均値がピークに到達するタイミング(時刻T2)である。一般に、検出対象の温度が遷移する期間は、処理条件によって検出温度値が変化しやすく、この遷移期間の検出結果を基に演算を行うと判定精度が低下しやすい。具体的には、目標温度からピークに到達するまでの第1期間(時刻T1〜T2の期間)やピークから目標温度に復帰するまでの第2期間(時刻T2〜T3の期間)が、上記遷移期間に相当する。本実施形態では、このような遷移期間ではなく、各取得温度値の平均値がピークに到達するタイミング(時刻T2)の検出結果を基に演算を行うので、基板Wが正常に載置されているかを高精度に判定することができる。
【0072】
また、本実施形態では、複数の取得温度値のばらつきとして、複数の取得温度値の最大値と最小値との差を用いる。このため、複数の取得温度値のばらつきとして複数の取得温度値の標準偏差等を用いる態様(例えば、特許文献1に記載の態様)に比べて、基板Wが正常に載置されているかを簡易迅速に判定することができる。
【0073】
<2 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0074】
上記実施形態では、各取得温度値が各検出温度値と同値である場合について説明したが、各取得温度値が各検出温度値に所定の補正処理(例えば、オフセット補正処理)を施して得られる値であってもよい。
図9は、オフセット補正値を算出する際の一例を表形式で示す図である。
【0075】
図9の例では、正常に載置されて温度検出されたn枚の基板W1〜Wnについて、領域R1のピーク時の検出温度値の平均が73.99℃である。同様に、n枚の基板W1〜Wnについて、領域R2のピーク時の検出温度値の平均が73.96℃である。n枚の基板W1〜Wnについて、領域R3のピーク時の検出温度値の平均が74.08℃である。n枚の基板W1〜Wnについて、領域R4のピーク時の検出温度値の平均が74.08℃である。n枚の基板W1〜Wnについて、領域R5のピーク時の検出温度値の平均が74.05℃である。n枚の基板W1〜Wnについて、領域R6のピーク時の検出温度値の平均が74.14℃である。また、n枚の基板W1〜Wnについて、これら各領域R1〜R6の平均が74.05℃である。
【0076】
この場合、処理枚数nが十分に大きければ、領域R1では、他の領域に比べて相対的に0.06℃低く温度検出をしていることになる。同様に、領域R2では、他の領域に比べて相対的に0.09℃低く温度検出をしていることになる。領域R3では、他の領域に比べて相対的に0.03℃高く温度検出をしていることになる。領域R4では、他の領域に比べて相対的に0.03℃高く温度検出をしていることになる。領域R5では、他の領域に比べてズレがない状態で温度検出をしていることになる。領域R6では、他の領域に比べて相対的に0.09℃高く温度検出をしていることになる。このような相対的な温度検出のズレは、各発熱体51〜56や各温度センサ81〜86の個体差によって生じうる。
【0077】
そこで、本変形例では、これらのズレを相殺するために、領域R1では、+0.06℃のオフセット補正値が設定される。同様に、領域R2では、+0.09℃のオフセット補正値が設定される。領域R3では、−0.03℃のオフセット補正値が設定される。領域R4では、−0.03℃のオフセット補正値が設定される。領域R5では、±0℃のオフセット補正値が設定される。領域R6では、−0.09℃のオフセット補正値が設定される。
【0078】
そして、取得部901は、各領域R1〜R6での各検出温度値にこれらのオフセット補正値を付与して、各取得温度値を得る。このため、本変形例では、各発熱体51〜56や各温度センサ81〜86の個体差に起因した相対的な温度ズレを相殺して、基板Wが正常に載置されているかをより高精度に判定することができる。また、オフセット補正値を付与して各取得温度値を得ることにより、複数の温調プレートを用いて温調処理を行う場合に同一の閾値で判定することが可能となる。また、さらに別の変形例として、取得部が各検出温度値にオフセット補正以外の補正処理を行って複数の取得温度値を得る態様であっても構わない。
【0079】
また、上記実施形態では温調プレートとして基板Wを加熱する加熱プレート7が利用され、平均値のピークとして該当期間中の平均値の最下点が利用される態様について説明したが、これに限られるものではない。例えば、温調プレートとして基板Wを冷却する冷却プレートが利用され、平均値のピークとして該当期間中の平均値の最上点が利用される態様でも構わない。
【0080】
また、上記実施形態では、基板処理装置1が1つのパターンの加熱処理を実行する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、基板処理装置1が、目標温度や加熱時間等が異なる複数パターンの加熱処理を実行可能な装置であってもよい。一般に、加熱温度が高くなればなるほど各領域R1〜R6での温度検出値もばらつきやすい。このため、加熱処理における目標温度の高低に応じて、閾値の大小も設定されることが望ましい。加熱処理での目標温度が高いほど大きい閾値が用いられ、加熱処理での目標温度が高いほど大きい閾値が用いられることで、目標温度も加味した上で、基板Wが正常に載置されているかを判定することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、加熱プレート7上に基板Wを保持する部材(ガイド21等)が設けられ、基板保持部と温調部が一体的に構成されていたが、基板保持部と温調部が別体で構成されても構わない。
【0082】
また、シート11の素材や形状は、上記実施形態に限られるものではない。また、シート11が設けられず、加熱プレート7上に直接的に基板Wが載置される態様であってもよい。また、領域R1〜R6の数が変更されてもよい。この場合、領域の数に合わせて発熱体や温度センサの数も変更される。また、他の各部材の個数や位置が変更されてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、基板Wが正常に載置されているか否かを報知部904がリアルタイムで報知する態様について説明したが、これに限られるものではない。例えば、処理部90が報知部904を有さなくても構わない。この場合、装置の操作者が加熱処理後に各領域R1〜R6の温度データを解析する際に、比較部903の比較結果を参照することで、基板Wが正常に載置されていたかを把握することができる。
【0084】
以上、実施形態およびその変形例に係る基板処理装置および基板処理方法について説明したが、これらは本発明に好ましい実施形態の例であって、本発明の実施の範囲を限定するものではない。本発明は、その発明の範囲内において、各実施形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施形態において任意の構成要素の省略が可能である。